説明

コイル固定構造

【課題】電磁コイルの入出力端子を折り曲げる必要がなく、かつ製造コストの上昇を抑制できるコイル固定構造を提供する。
【解決手段】コイル固定構造1は、環状に形成された電磁コイル2と、該電磁コイル2を収納する収納ケース3と、封止部材10と、電子回路基板4と、被固定体5とを備える。収納ケース3の挿入開口部30は、被固定体5側または電子回路基板4側に開口している。収納ケース3は、電子回路基板4の実装面40よりも固定面50から離れた位置まで開放した端子用開放部34を備える。端子用開放部34から一対の入出力端子20が、固定面50に平行な方向に延出し、折り曲げられずに、端子接続部41に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルと電子回路基板とを被固定体に固定したコイル固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両等の、振動が生じる環境下において使用する電子装置内の構造として、図13に示すごとく、電磁コイル92及び電子回路基板94の耐振性を高めるために、これらを被固定体95に固定したコイル固定構造91が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
電子装置90に用いる電磁コイル92は、軸線方向(X方向)における長さよりも直径の方が大きい。このように直径が大きな電磁コイル92を使用する場合は、仮に、被固定体95の固定面950に対して中心軸線Aが垂直になるように電磁コイル92を固定すると、固定面950の法線方向(Z方向)から見た場合の占有面積が大きくなり、電子装置90が大型化しやすくなる。そのため電磁コイル92は、図13に示すごとく、軸線方向(X方向)が固定面950に平行になるように、被固定体95に固定されている。
【0004】
電磁コイル92の一部は、収納ケース93内に収納されているとともに、封止部材910によって封止されている。封止部材910には、熱伝導率が高い合成樹脂が用いられる。封止部材910を使って封止することにより、電磁コイル92を収納ケース93内にしっかりと保持すると共に、電磁コイル92から発生する熱を冷却できるようになっている。
【0005】
コイル固定構造91を製造する場合は、まず、収納ケース93の挿入開口部930に電磁コイル92を挿入し、流動状態の封止部材910を収納ケース93内に注入する。そして、封止部材910が固化した後に、収納ケース93を被固定体95に固定し、電磁コイル92の入出力端子920を電子回路基板94に接続する。
【0006】
図13に示すごとく、電子回路基板94は、耐振性を高めるために、被固定体95に、その固定面950に近い位置において固定されている。また、挿入開口部930は、電子回路基板94よりも固定面950から離れた位置に存在している。この挿入開口部930から、電磁コイル92の入出力端子920が延出し、電子回路基板94に接続している。電子回路基板94と入出力端子920とは、例えばはんだにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−340458号公報
【特許文献2】特開平1−286302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記コイル固定構造91は、電子回路基板94からZ方向に離れた位置にある挿入開口部930から入出力端子920を取り出し、かつ入出力端子920と電子回路基板94とを平行にした状態で接続しているため、入出力端子920を2箇所の折曲部928,929において折り曲げる必要があった。そのため、製造時に入出力端子920を折り曲げる工程が必要となり、電子装置90の製造コストが上昇するという問題があった。
【0009】
また、入出力端子920を折り曲げると、折曲部928,929のX方向における位置ばらつき、曲げRが生じるため、これを許容するために、収納ケース93と電子回路基板94との間隔dを大きくする必要が生じる。そのため、電子装置90が大型化しやすいという問題があった。
【0010】
かかる問題を解決するために、例えば図14に示すごとく、入出力端子920を湾曲させ、コネクタ99を使って、電子回路基板94と入出力端子920とを接続させる方法が考えられる。しかしながらこの方法では、コネクタ99を用いるため、部品点数が増え、製造コストが上昇してしまう。
【0011】
また、図15に示すごとく、収納ケース93に端子用開放部98を切り欠き形成し、端子用開放部98を通して入出力端子920を電子回路基板94に接続する方法も考えられるが、このようにすると、電磁コイル92を封止する際に、封止部材910が端子用開放部98から漏出するため、現実的ではない。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、電磁コイルの入出力端子を折り曲げる必要がなく、かつ製造コストの上昇を抑制できるコイル固定構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、環状に形成された電磁コイルと、
該電磁コイルを収納する収納ケースと、
該収納ケース内において上記電磁コイルの少なくとも一部を封止する封止部材と、
上記電磁コイルの一対の入出力端子とそれぞれ電気的に接続された一対の端子接続部を備えた電子回路基板と、
上記電磁コイル及び上記封止部材を内側に保持した上記収納ケースと上記電子回路基板とを固定する固定面を有する被固定体とを備え、
上記電磁コイルは軸線方向における長さよりも直径の方が長く、上記電磁コイルは、上記軸線方向を上記固定面に平行にした状態で上記被固定体に固定され、
上記電子回路基板は、上記電磁コイルの上記軸線方向における一方側において上記被固定体に固定されていると共に、上記電磁コイルの中心軸よりも上記固定面に近い位置に、上記端子接続部が形成された実装面を有し、
上記収納ケースは、該収納ケースの内側へ上記電磁コイルを挿入するための挿入開口部を有し、該挿入開口部は、上記電子回路基板側もしくは上記被固定体側に向かって開口しており、
上記収納ケースは、上記電子回路基板側に、少なくとも、上記実装面に設けられた上記端子接続部よりも上記固定面から離れた位置まで開放した端子用開放部を有し、
上記電磁コイルの一対の上記入出力端子は、上記端子用開放部から上記固定面に平行な方向に突出し、上記一対の端子接続部に接続していることを特徴とするコイル固定構造にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の作用効果について説明する。上記コイル固定構造においては、電子回路基板は、電磁コイルの中心軸よりも上記固定面に近い位置に実装面を有する。すなわち、電子回路基板は上記中心軸よりも固定面に近い位置において被固定体に固定されている。そのため、電子回路基板の耐振性を高めることができる。
【0015】
そして、このように固定面に近い位置に電子回路基板を固定した構造において、固定面に平行な方向に延びる入出力端子が、電子回路基板の端子接続部に接続している。これを実現するために、収納ケースには、収納ケース内に収納された電磁コイルから入出力端子を収納ケース外に出すための端子用開放部が形成されている。そして、更に、このような端子用開放部を形成するために、上記挿入開口部が、電子回路基板側もしくは被固定体側に向かって開口している。
すなわち、入出力端子を折り曲げずに端子接続部に接続するためには、以下に述べる2つの条件を満たす必要があり、上記構成にすることにより、この2つの条件を満たすことが可能になる。
【0016】
一つめの条件は、収納ケースのうち、固定面からの距離が端子接続部と略同じ部位に端子用開放部を形成することである。この部位に端子用開放部を形成すれば、電磁コイルから入出力端子を、固定面に平行な方向へ引き出して、端子用開放部を通しつつ端子接続部に接続することができる。そのため、入出力端子を折り曲げる必要がなくなる。
【0017】
2つめの条件は、端子用開放部を、収納ケースの底部付近、つまり挿入開口部と反対側の位置に形成しないことである。例えば図15に示すごとく、収納ケース93の側壁を大きく切り欠き、底部990付近まで端子用開放部98を形成すると、電磁コイル92を封止する際に、端子用開放部98から封止部材910が漏出してしまうからである。
【0018】
上記コイル固定構造においては、挿入開口部を、電子回路基板側もしくは被固定体側に開口させたため、上記2つの条件を満たすことが可能となる。例えば、挿入開口部を被固定体側に開口させた場合は、底部が固定面から遠い位置に配置されるため、挿入開口部を固定面に近い位置に配置できる。つまり、挿入開口部付近に端子用開放部を形成することにより、収納ケースのうち、固定面からの距離が端子接続部と略同じ部位を開放でき、また、端子用開放部を底部付近に形成しなくてすむ。
【0019】
また、挿入開口部を電子回路基板側に開口させる場合は、挿入開口部を端子用開放部として兼用することができる。つまり、端子用開放部が上記底部と逆側に配されることとなり、しかも、固定面に近い位置において電子回路基板側へ開放することが可能となる。また、挿入開口部を端子用開放部として兼用できるため、収納ケースの形状を簡単にすることができる。
【0020】
このように、上記コイル固定構造は、電子回路基板を固定面に近い位置に配設しているにもかかわらず、入出力端子を折り曲げずに端子接続部に接続することができる。そのため、製造時において入出力端子の折り曲げ工程を行う必要がなく、製造コストを低減することができる。また、折り曲げ部位の位置ばらつきが発生しないため、この位置ばらつきを許容するためのスペースを収納ケースと電子回路基板との間に設ける必要がない。したがって、収納ケースと電子回路基板とを接近させることができ、コイル固定構造を小型化することが可能になる。
【0021】
以上のごとく、本発明によれば、電磁コイルの入出力端子を折り曲げる必要がなく、かつ製造コストの上昇を抑制できるコイル固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1における、コイル固定構造の斜視図。
【図2】実施例1における、コイル固定構造の断面図。
【図3】実施例1における、電磁コイルを収納ケース内に封止する工程の説明図。
【図4】図3に続く図。
【図5】実施例1における、電磁コイル周辺の電子回路図。
【図6】実施例2における、コイル固定構造の斜視図。
【図7】実施例2における、コイル固定構造の断面図。
【図8】実施例3における、コイル固定構造の斜視図。
【図9】実施例3における、コイル固定構造の断面図。
【図10】実施例3における、電磁コイルを収納ケース内に封止する工程の説明図。
【図11】図10に続く図。
【図12】実施例3における、電磁コイルを全て封止したコイル固定構造の断面図。
【図13】従来例における、コイル固定構造の斜視図。
【図14】図13とは別の従来例における、コイル固定構造の断面図。
【図15】仮に、挿入開口部から底部まで大きく切り欠いた場合の、収納ケースの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記端子用開放部は、上記挿入開口部と別に形成されたものでもよく、挿入開口部が兼ねていてもよい。端子用開放部は、収納ケースの、電子回路基板側の全面が開放したものでもよく、部分的に開放したものでもよい。また、上記被固定体は、例えばアルミニウム等の金属板から構成される。上記コイル固定構造は、例えば、電気自動車やハイブリッド車のバッテリーを、商用電源(交流電源)を使って充電するための充電装置等に用いられる。
【0024】
上記挿入開口部は、上記被固定体に向かって開口し、上記端子用開放部は、上記収納ケースにおける上記電子回路基板側の一部に形成され、上記電磁コイルにおける上記端子用開放部に面する部分は上記封止部材から露出していることが好ましい(請求項2)。
この場合には、電磁コイルのうち端子用開放部に面する部分が封止部材によって封止されていないため、封止部材の使用量を少なくすることができる。そのため、コイル固定構造の製造コストを低減できる。
【0025】
また、上記収納ケースは、上記電磁コイルの一部及び上記封止部材を収納したケース本体部と、該ケース本体部を支持する一対の支持壁部とを備え、該支持壁部は、上記固定面の法線方向と上記軸線方向との双方に直交する方向における、上記ケース本体部の両端から、上記固定面に向かって延出しており、上記一対の支持壁部の間に上記端子用開放部が形成されており、上記一対の支持壁部に、上記収納ケースを固定するための固定部が形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記一対の支持壁部の間、すなわち、上記法線方向と上記軸線方向との双方に直交する方向における、ケース本体部の両端の間を、端子用開放部とすることができる。そのため、端子用開放部を大きく形成することができ、入出力端子を端子接続部に接続する作業を行いやすくなる。
また、一対の支持壁部に上記固定部が形成されているため、収納ケースを被固定部に対してしっかりと固定することができる。
【0026】
また、上記挿入開口部は上記電子回路基板側に向かって開口すると共に上記端子用開放部をも兼ねていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、挿入開口部が端子用開放部を兼ねているため、収納ケースの形状をシンプルにすることができる。そのため、収納ケースの製造コストを低減でき、ひいてはコイル固定構造の製造コストを低減できる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるコイル固定構造につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例のコイル固定構造1は、図1、図2に示すごとく、環状に形成された電磁コイル2と、電磁コイル2を収納する収納ケース3と、封止部材10と、電子回路基板4と、被固定体5とを備える。
封止部材10は、収納ケース3内において電磁コイル2の一部を封止している。電子回路基板4は一対の端子接続部41を備える。一対の端子接続部41は、電磁コイル2の一対の入出力端子20とそれぞれ電気的に接続されている。また、被固定体5の固定面50に、電磁コイル2及び封止部材10を内側に保持した収納ケース3と、電子回路基板4とが固定されている。
【0028】
電磁コイル2は、軸線方向(X方向)における長さLよりも直径Dの方が長い。また、電磁コイル2は、軸線方向(X方向)を固定面50に平行にした状態で被固定体5に固定されている。
電子回路基板4は、電磁コイル2の軸線方向(X方向)における一方側において被固定体5に固定されている。また、電子回路基板4は、電磁コイル2の中心軸Aよりも固定面50に近い位置に、端子接続部41が形成された実装面40を有する。
【0029】
収納ケース3は、収納ケース3の内側へ電磁コイル2を挿入するための挿入開口部30を有する。挿入開口部30は、被固定体5側に向かって開口している。
また、収納ケース3は電子回路基板4側に開放した端子用開放部34を有する。端子用開放部34は、実装面40に設けられた端子接続部41よりも固定面50から離れた位置まで開放している。
電磁コイル2の一対の入出力端子20は、端子用開放部34から固定面50に平行な方向に突出し、一対の端子接続部41に接続している。
【0030】
本例のコイル固定構造1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載した充電装置に用いられる。充電装置は、車両に搭載したバッテリーを、商用電源(交流電源)を使って充電する装置である。
【0031】
被固定体5はアルミニウム等の金属からなり、法線方向(Z方向)から見た形状が矩形状であり、板状に形成されている。被固定体5の固定面50には、電子回路基板4を固定するためのボス500が、複数本、Z方向に突出形成されている。また、固定面50には、ケース固定用ボルト300を螺合するための雌螺子部(図示しない)が形成されている。
【0032】
電子回路基板4は、ビルドアップ多層配線基板等からなり、実装面40にIC、抵抗、コンデンサ等の各種電子部品(図示しない)が実装されている。これにより、充電装置100の電子回路の一部を構成している。電子回路基板4には、板厚方向に貫通した貫通孔405が複数箇所、形成されている。この貫通孔405にボルト400を挿入し、ボス500に螺合することにより、電子回路基板4を被固定体5に固定している。
【0033】
また、上記端子接続部41は、電子回路基板4のコイル側端部406において、実装面40上に形成されている。本例では、入出力端子20と端子接続部41とをはんだ接続しているが、圧着端子や螺子によって接続してもよい。
【0034】
電磁コイル2は、ドーナツ状のコア22に導線21を巻回した、いわゆるトロイダルコイルである。導線21の両端は、上述した入出力端子20になっている。図2に示すごとく、電磁コイル2のうち、Z方向において固定面50から遠い略半分の領域は、収納ケース3内に収納され、封止部材10によって封止されている。また、電磁コイル2のうち、Z方向において固定面50に近い略半分の領域は、封止部材10から露出しており、挿入開口部30から収納ケース3外に突出している。
【0035】
封止部材10は熱伝導率が高い合成樹脂からなり、例えばエポキシ系樹脂、シリコン系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。封止部材10は、電磁コイル2を収納ケース3内に固定すると共に、電磁コイル2の冷却効率を高める役割を果たしている。封止部材10の量を増やして、電磁コイル2の、より多くの部分を封止すると、電磁コイル2の冷却効率を高めることができるものの、コイル固定構造の製造コストが高くなる。そのため、電磁コイル2の、封止する部分の体積は、冷却効率と製造コストとを考慮して決められる。
【0036】
なお、図1、図2には1個の電磁コイル2のみを示したが、複数個の電磁コイル2を被固定体5に固定することができる。また、本例では、電磁コイル2としてトロイダルコイルを用いたが、これに限らず、例えば、中実のコアの周囲に、X方向を巻回軸として導線21を周方向に巻回したコイルを用いてもよい。
【0037】
収納ケース3は、電磁コイル2を収納したケース本体部31と、該ケース本体部31を支持する一対の支持壁部32とを備える。ケース本体部31は略直方体形状を呈する。ケース本体部31は、支持壁部32によって、支持壁部32の長さHだけ固定面50から離れた位置に支持され、挿入開口部30が被固定体5側を向くように、被固定体5に固定されている。ケース本体部31と支持壁部32とは、樹脂材料により一体成形されている。
【0038】
支持壁部32は、軸線方向(X方向)と法線方向(Z方向)との双方に直交する方向(Y方向)における、ケース本体部31の両端から、固定面50に向かって延出している。Z方向における、支持壁部32の長さHは、固定面50から端子接続部41までの長さH1よりも長い。また、図1に示すごとく、支持壁部32は、ケース本体部31におけるY方向に直交する側壁310を被固定体5側へ延長した状態で形成されている。X方向における、ケース本体部31の長さと、支持壁部32の長さとは、略同一である。また、ケース本体部31を構成する壁部の板厚と、支持壁部32の板厚とは、略同一である。
【0039】
一対の支持壁部32の間に端子用開放部34が形成されている。端子用開放部34は、一対の支持壁部32の、X方向における電子回路基板4側の端部325a,325bの間を、固定面50から電磁コイル2の中心軸A付近まで開放しており、長方形状を呈している。そして、電磁コイル2は、端子用開放部34から電子回路基板4側へ露出している。また、電磁コイル2の入出力端子20は、この端子用開放部34を通って端子接続部41まで延びている。収納ケース3には、端子用開放部34と反対側にも、同形状の開放部39が形成されている。
【0040】
支持壁部32の、Z方向における固定面50側の端部には、Y方向に突出した固定部33が形成されている。固定部33には、Z方向に貫通したボルト挿入孔が形成されている。このボルト挿入孔にケース固定用ボルト300を挿入し、固定面50の上記雌螺子部に螺合することにより、収納ケース3を被固定体5に固定している。
【0041】
なお、上記コイル固定構造1では、入出力端子20を、電磁コイル2の軸線方向(X方向)に引き出したが、固定面50に平行であれば、X方向に対して斜め方向に引き出してもよい。
【0042】
電磁コイル2を収納ケース3内に封止する際には、まず図3に示すごとく、収納ケース3の挿入開口部30に電磁コイル2の一部を挿入する。このとき、電磁コイル2の入出力端子20を、端子用開放部34から引き出しておく。そして、挿入開口部30の開口方向を鉛直方向上側に向けた状態で、図4に示すごとく、流動状態の熱硬化性樹脂(封止部材10)を収納ケース3内に注入する。封止部材10は、収納ケース3と電磁コイル2との間に充填される。そして、熱を加えることにより、熱硬化性樹脂(封止部材10)を硬化させる。
【0043】
コイル固定構造1を製造するには、まず、図1、図2に示すごとく、電子回路基板4の貫通孔405にボルト400を挿入し、ボス500に螺合することにより、電子回路基板4を被固定体5に固定する。
その後、挿入開口部30を固定面50側に向けると共に、端子用開放部34を電子回路基板4側に向けた状態で、電磁コイル2を封止した収納ケース3を固定面50上に配置する。そして、固定部33のボルト挿入孔にケース固定用ボルト300を挿入し、固定面50側に螺合する。これにより、収納ケース3を電磁コイル2と共に被固定体5に固定する。
次いで、電磁コイル2の入出力端子20を電子回路基板4の端子接続部41にはんだ接続または溶接する。
【0044】
次に、電磁コイル2及び電子回路基板4を使った電子回路の説明をする。図5に示すごとく、本例のコイル固定構造1は、交流電源12を使って直流電源11を充電するための充電装置100の一部を構成している。直流電源11は、例えば車両に搭載される高圧バッテリーであり、交流電源12は、例えば一般家庭に配される商用電源である。つまり、充電装置100は、一般家庭用の交流電源から電気自動車またはハイブリッド車のバッテリーへの充電を行うための装置である。また、本例では、3個の電磁コイル2(2a,2b,2c)を備える。これら3個の電磁コイル2は、いずれも、上述した構成と同様の構成で被固定体5に固定されている。ただし、本発明はこれに限られず、複数の電磁コイル2のうち、一部の電磁コイルのみが上述の固定構造によって固定されていてもよい。
【0045】
充電装置100は、入力フィルタ77及び出力フィルタ78と、整流器13と、PFC回路14と、DC−DCコンバータ15と、制御回路72とからなる。
【0046】
PFC回路14は、入力電圧を昇圧すると共に、入力電流の波形を正弦波、すなわち入力電圧の波形になるべく近づけることにより、電力の力率を高めている。PFC回路14は、スイッチング素子70と、電磁コイル2(2a)と、平滑用コンデンサ71と、ダイオード79とからなる。本例のコイル固定構造1で固定する複数の電磁コイル2の一つは、PFC回路14に用いる電磁コイル2aである。
スイッチング素子70のゲート端子は、制御回路72に接続している。制御回路72は、目標とする電流波形(基準電流)と入力電流の差を検知して、この差がなるべく小さくなるように、スイッチング素子70をスイッチング制御する。これにより、電力を高力率化している。
【0047】
DC−DCコンバータ15は、4個のスイッチング素子を組み合わせたH型ブリッジ回路73と、トランス74と、ダイオードブリッジ75と、コンデンサ76と、電磁コイル2(2b,2c)とからなる。本例のコイル固定構造1で固定する複数の電磁コイル2のうち、2個の電磁コイル2b,2cは、DC−DCコンバータ15に用いられる。
【0048】
H型ブリッジ回路73を構成する個々のスイッチング素子のゲート端子は、制御回路72に接続している。制御回路72がスイッチング素子のスイッチング動作を制御することにより、直流電圧を交流電圧に変換する。そして、トランス74を用いることにより、得られた交流電圧を変圧する。
【0049】
トランス74から出力した交流電圧は、ダイオードブリッジ75によって全波整流され、コンデンサ76によって平滑化される。電磁コイル2b,2cは、直流電流を安定化するために用いられる。このようにして得られた直流電力を使って、直流電源11を充電している。なお、H型ブリッジ回路73のスイッチング素子がオンする時間を制御回路72によって制御することにより、DC−DCコンバータの出力電圧を調整できるようになっている。
【0050】
次に、本例の作用効果について説明する。本例のコイル固定構造1においては、電子回路基板4は、電磁コイル2の中心軸Aよりも固定面50に近い位置に実装面40を有する。すなわち、電子回路基板4は中心軸Aよりも固定面50に近い位置において被固定体5に固定されている。そのため、電子回路基板4の耐振性を高めることができる。
【0051】
そして、このように固定面50に近い位置に電子回路基板4を固定した構造において、固定面50に平行な方向に延びる入出力端子20が、電子回路基板4の端子接続部41に接続している。これを実現するために、収納ケース3には、収納ケース3内に収納された電磁コイル2から入出力端子20を収納ケース3外に出すための端子用開放部34が形成されている。そして、更に、このような端子用開放部34を形成するために、上記挿入開口部30が、電子回路基板4側もしくは被固定体5側に向かって開口している。
すなわち、入出力端子20を折り曲げずに端子接続部41に接続するためには、以下に述べる2つの条件を満たす必要があり、上記構成にすることにより、この2つの条件を満たすことが可能になる。
【0052】
一つめの条件は、収納ケース3のうち、固定面50からの距離が端子接続部41と略同じ部位に端子用開放部34を形成することである。この部位に端子用開放部34を形成すれば、電磁コイル2から入出力端子20を、固定面50に平行な方向へ引き出して、端子用開放部34を通しつつ端子接続部41に接続することができる。そのため、入出力端子20を折り曲げる必要がなくなる。
【0053】
2つめの条件は、端子用開放部34を、収納ケース3の底部35付近、つまり挿入開口部30と反対側の位置に形成しないことである。例えば図15に示すごとく、収納ケース93の側壁を大きく切り欠き、底部990付近まで端子用開放部98を形成すると、電磁コイル92を封止する際に、端子用開放部98から封止部材910が漏出してしまうからである。
【0054】
本例では、上記2つの条件を満たすことが可能となる。すなわち、本例では、挿入開口部30を被固定体5側に開口させたため、底部35を固定面50から遠い位置に配置でき、挿入開口部30を固定面50に近い位置に配置できる。つまり、挿入開口部30付近に端子用開放部34を形成することにより、収納ケース3のうち、固定面50からの距離が端子接続部41と略同じ部位を開放できる。これにより、入出力端子20を、端子用開放部34から固定面50に平行な方向に引き出して、折り曲げずに端子接続部41に接続することが可能となる。また、端子用開放部34を底部35付近に形成しなくてすむ。そのため、電磁コイル2を封止する際に、封止部材10が端子用開放部34から漏出しない。
【0055】
また、本例では、端子用開放部34は、収納ケース3における電子回路基板4側の一部に形成され、電磁コイル2における端子用開放部34に面する部分は封止部材10から露出している。このようにすると、電磁コイル2のうち端子用開放部34に面する部分が封止部材10によって封止されていないため、封止部材10の使用量を少なくすることができる。そのため、コイル固定構造1の製造コストを低減できる。
【0056】
また、収納ケース3は、ケース本体部31と一対の支持壁部32とを備え、支持壁部32は、Y方向におけるケース本体部31の両端から、固定面50に向かって延出している。そして、一対の支持壁部32の間に端子用開放部34が形成されている。このようにすると、一対の支持壁部32の間、すなわち、Y方向におけるケース本体部31の両端の間を、端子用開放部34とすることができる。そのため、端子用開放部34を大きく形成することができ、入出力端子20を端子接続部41に接続する作業を行いやすくなる。
【0057】
また、本例では一対の支持壁部32に固定部33が形成されているため、収納ケース3を被固定部5に対してしっかりと固定することができる。
【0058】
このように、本例のコイル固定構造1は、入出力端子20を折り曲げずに端子接続部41に接続することができるため、製造時において入出力端子20の折り曲げ工程を行う必要がなく、製造コストを低減することができる。また、折り曲げ部位の位置ばらつきが発生しないため、この位置ばらつきを許容するためのスペースを収納ケース3と電子回路基板4との間に設ける必要がない。したがって、収納ケース3と電子回路基板4とを接近させることができ、コイル固定構造1を小型化することが可能になる。
【0059】
以上のごとく、本例によれば、電磁コイルの入出力端子を折り曲げる必要がなく、かつ製造コストの上昇を抑制できるコイル固定構造を提供することができる。
【0060】
(実施例2)
本例は、収納ケース3の形状を変更した例である。図6、図7に示すごとく、本例では、収納ケース3の挿入開口部30を固定面50に当接させた。また、収納ケース3の、電子回路基板4側の側壁38に一対の端子用開放部34を切り欠き形成した。端子用開放部34は、挿入開口部30からZ方向に向かって、端子接続部41よりも固定面50から若干底部35側に寄った位置まで切り欠かれている。そして、収納ケース3内の電磁コイル2から一対の入出力端子20が、端子用開放部34を通って端子接続部41まで延出している。入出力端子20は、X方向に直線的に延出している。
また、図7に示すごとく本例では、電磁コイル2の半分以上を封止部材10によって封止している。電磁コイル2のうち、端子用開放部34に面する部分は封止部材10から露出している。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0061】
本例の作用効果を説明する。本例では、収納ケース3の4つの側壁38が固定面50に当接しているため、収納ケース3を被固定体5に安定して固定できる。そのため、電磁コイル2の耐振性を向上できる。
【0062】
また、本例では、電磁コイル2の、封止部材10によって封止されている体積が大きいため、電磁コイル2を収納ケース3内にしっかりと保持できると共に、電磁コイル2の放熱効率を高めることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0063】
(実施例3)
本例は、収納ケース3の形状を変更した例である。図8、図9に示すごとく、本例では、挿入開口部30は電子回路基板4側に向かって開口している。また、挿入開口部30は、端子用開放部34をも兼ねている。挿入開口部30と反対側の底部35は、その法線方向がX方向となる状態で、電子回路基板4側と反対側に配置されている。
【0064】
収納ケース3は直方体形状を呈しており、X方向から見た形状が略正方形である。収納ケース3の、Y方向に直交する側壁38には、Z方向における固定面50側の端部に、Y方向へ突出した固定部33が形成されている。
【0065】
図9に示すごとく、電磁コイル2のうち、X方向において電子回路基板4から遠い略半分の領域は、収納ケース3内に収納され、封止部材10に封止されている。また、電磁コイル2のうち、X方向において電子回路基板4に近い略半分の領域は、封止部材10から露出しており、挿入開口部30から電子回路基板4側へ突出している。電磁コイル2は、X方向における電子回路基板4側の面の全面が、収納ケース3及び封止部材10から露出している。
また、電磁コイル2のうち、固定面50からの高さが端子接続部41と略同じ部位から、一対の入出力端子20が固定面50に平行な方向(X方向)に延出し、端子接続部41に接続している。
【0066】
本例において、電磁コイル2を収納ケース3内に封止する際には、まず図10に示すごとく、収納ケース3の挿入開口部30に電磁コイル2の一部を挿入する。このとき、入出力端子20を、電磁コイル2の軸線方向へ引き出しておく。そして、挿入開口部30の開口方向を鉛直方向上側に向けた状態で、図11に示すごとく、流動状態の熱硬化性樹脂(封止部材10)を収納ケース3内に注入する。封止部材10は、収納ケース3と電磁コイル2との間に充填される。そして、熱を加えることにより、熱硬化性樹脂(封止部材10)を硬化させる。
【0067】
本例において、コイル固定構造1を製造するには、まず、実施例1と同様に、電子回路基板4を被固定体5に固定する(図8、図9参照)。
その後、挿入開口部30(端子用開放部34)を電子回路基板4側に向けた状態で、電磁コイル2を収納した収納ケース3を固定面50上に配置する。そして、ケース固定用ボルト300を使って、収納ケース3を被固定体5に固定する。
次いで、電磁コイル2の入出力端子20を端子接続部41にはんだ付けまたは溶接する。
【0068】
なお、図8〜図11に示すコイル固定構造1では、電磁コイル2のうち、X方向において電子回路基板4に近い略半分の領域を封止部材10から露出させたが、図12に示すごとく、電磁コイル2の全てを収納ケース3内に収納し、封止部材10によって封止すると共に、入出力端子20をX方向に延出させ、挿入開口部30(端子用開放部34)を通して端子接続部41まで引き出すようにしてもよい。
また、本例では、入出力端子20を電磁コイル2の軸線方向(X方向)に引き出したが、実施例1と同様に、固定面50に平行であればよく、例えばX方向に対して斜め方向に引き出してもよい。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0069】
本例の作用効果について説明する。
本例では、挿入開口部30を端子用開放部34として兼用することができる。つまり、端子用開放部34が底部35と逆側に配されることとなり、しかも、固定面50に近い位置において電子回路基板4側へ開放することが可能となる。そのため、底部35付近に端子用開放部34を形成する必要がなくなると共に、固定面50に近い位置において入出力端子20を電子回路基板4側へ引き出して、折り曲げずに端子接続部41に接続することが可能となる。また、挿入開口部30を端子用開放部34として兼用できるため、収納ケース3の形状を簡単にすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【符号の説明】
【0070】
1 コイル固定構造
10 封止部材
2 電磁コイル
3 収納ケース
30 挿入開口部
34 端子用開放部
4 電子回路基板
41 端子接続部
5 被固定体
50 固定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された電磁コイルと、
該電磁コイルを収納する収納ケースと、
該収納ケース内において上記電磁コイルの少なくとも一部を封止する封止部材と、
上記電磁コイルの一対の入出力端子とそれぞれ電気的に接続された一対の端子接続部を備えた電子回路基板と、
上記電磁コイル及び上記封止部材を内側に保持した上記収納ケースと上記電子回路基板とを固定する固定面を有する被固定体とを備え、
上記電磁コイルは軸線方向における長さよりも直径の方が長く、上記電磁コイルは、上記軸線方向を上記固定面に平行にした状態で上記被固定体に固定され、
上記電子回路基板は、上記電磁コイルの上記軸線方向における一方側において上記被固定体に固定されていると共に、上記電磁コイルの中心軸よりも上記固定面に近い位置に、上記端子接続部が形成された実装面を有し、
上記収納ケースは、該収納ケースの内側へ上記電磁コイルを挿入するための挿入開口部を有し、該挿入開口部は、上記電子回路基板側もしくは上記被固定体側に向かって開口しており、
上記収納ケースは、上記電子回路基板側に、少なくとも、上記実装面に設けられた上記端子接続部よりも上記固定面から離れた位置まで開放した端子用開放部を有し、
上記電磁コイルの一対の上記入出力端子は、上記端子用開放部から上記固定面に平行な方向に突出し、上記一対の端子接続部に接続していることを特徴とするコイル固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル固定構造において、上記挿入開口部は、上記被固定体に向かって開口し、上記端子用開放部は、上記収納ケースにおける上記電子回路基板側の一部に形成され、上記電磁コイルにおける上記端子用開放部に面する部分は上記封止部材から露出していることを特徴とするコイル固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載のコイル固定構造において、上記収納ケースは、上記電磁コイルの一部及び上記封止部材を収納したケース本体部と、該ケース本体部を支持する一対の支持壁部とを備え、該支持壁部は、上記固定面の法線方向と上記軸線方向との双方に直交する方向における、上記ケース本体部の両端から、上記固定面に向かって延出しており、上記一対の支持壁部の間に上記端子用開放部が形成されており、上記一対の支持壁部に、上記収納ケースを固定するための固定部が形成されていることを特徴とするコイル固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載のコイル固定構造において、上記挿入開口部は上記電子回路基板側に向かって開口すると共に上記端子用開放部をも兼ねていることを特徴とするコイル固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−156349(P2012−156349A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14910(P2011−14910)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】