説明

コイル用ボビン、コイル部品、及びスイッチング電源装置

【課題】部品点数を増やすことなく、コイル巻線からの放熱性を高める。
【解決手段】コイル用ボビン1では、筒状部10の軸線Aに沿った方向から、第1コイル巻線2の放熱用端子として機能する放熱部28に対して当接するスペーサ部として、カバー部17Bが設けられる。ここで、このコイル巻線からの放熱を行う場合、コイル巻線を放熱物に固定する際にこの放熱用端子に対して当接するカバー部17Bが絶縁部材として機能するため、部品点数を増やすことなくコイル巻線からの放熱が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル用ボビン、コイル部品、及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用バッテリの充電器等に組み込まれるスイッチング電源装置では、2ターン等の複数のコイル巻線が形成するコイルを用いることが増えている。これに対して、例えば特許文献1では、2ターンのコイル巻線において巻線同士が接触して短絡しないように、筒状の本体部の外周面から外方に突出する突起部が設けられたコイル用ボビンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−45188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、出力電流の向上を目的として、より高出力のスイッチング電源装置が要求されている。この高出力のスイッチング電源装置では、コイルに高容量の電流を流した際の発熱が問題となることから、例えば、スイッチング電源装置が設けられる筐体等の放熱物とコイル巻線とを伝熱部材等を介して熱的に接続することで、コイルからの放熱がなされる。一般的に筐体等の放熱物とコイル巻線とを熱的に接続する際にはネジ止めで固定をする。しかしながら、ネジとコイル巻線の絶縁性は維持する必要があるため、コイル巻線とネジとの間に絶縁部材を設ける必要がある。このように、従来の方法で、コイル巻線からの放熱を達成しようとすると部品点数が増えてしまい、作業性が必ずしも高いとはいえない。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、部品点数を増やすことなく、コイル巻線からの放熱性が高められたコイル用ボビン、そして、このコイル用ボビンを用いたコイル部品及びスイッチング電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコイル用ボビンは、放熱用端子を備えた導電性のコイル巻線が巻回される筒状部を備える絶縁性のコイル用ボビンであって、前記筒状部から突出し、前記筒状部の軸線に沿った方向から、前記コイル巻線の前記放熱用端子に当接するスペーサ部を備えることを特徴とする。
【0007】
上記のコイル用ボビンによれば、筒状部の軸線に沿った方向から放熱用端子に対して当接するスペーサ部が設けられる。ここで、このコイル巻線からの放熱を行う場合、コイル巻線を放熱物に固定する際にこの放熱用端子に対して当接するスペーサ部が絶縁部材として機能するため、部品点数を増やすことなくコイル巻線からの放熱が高められる。
【0008】
ここで、前記筒状部から外方に突出し、前記筒状部に対してコイル巻線を挿通して回動させたときに、前記コイル巻線と当接して、前記コイル巻線の一方向の回動を規制する回動規制手段を備える態様とすることができる。
【0009】
上記のように、コイル巻線の一方向の回動を規制する回動規制手段を備えることにより、コイル巻線が回動することにより他の部材と接触することを防ぐことができ、コイル巻線の放熱を達成すると共に絶縁性をより確実に高めることが可能となる。
【0010】
上記作用を効果的に奏する構成としては、具体的に、前記筒状部の軸線に対して垂直な面に沿って前記筒状部の中央部から外方に突出する平坦状のフランジ部を備え、前記スペーサ部は、前記軸線に垂直な方向から見たときに前記フランジ部とは異なる高さ位置に設けられる構成が挙げられる。
【0011】
また、前記コイル巻線と前記回動規制手段が当接したときに、前記一方向とは逆方向に回動することを規制する反転規制手段を備える態様とすることができる。
【0012】
上記のように反転規制手段を備えることにより、コイル巻線が逆方向に回動することを抑制され、所定の位置においてコイル巻線をより適切に固定することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係るコイル部品は、上記のコイル用ボビンと、前記軸線の周りに1ターン以上巻回されて、放熱用端子を備えたコイル巻線と、前記コイル巻線に設けられた放熱用端子を、前記スペーサ部を介して前記軸線方向に押圧する押圧部材と、前記コイル巻線を前記軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記のコイル部品によれば、スペーサ部を介してコイル巻線の放熱用端子が軸線方向に押圧されることで放熱用端子が固定され、放熱物へ向けての放熱が行われる。ここで、放熱用端子による押圧により、放熱物に対して放熱用端子が固定されるため、例えば放熱用端子にネジ穴を設けてネジにより固定をする場合と比較して、当接面積を広くすることができ、放熱性をより高めることが可能となる。
【0015】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、前記押圧部材が、前記押圧方向に弾性を有する態様が挙げられる。
【0016】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、上記のコイル部品を備えることを特徴とする。この場合、部品点数を増やすことなくコイル巻線からの放熱性が高められたスイッチング装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品点数を増やすことなく、コイル巻線からの放熱性が高められたコイル用ボビン、そして、このコイル用ボビンを用いたコイル部品及びスイッチング電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るコイル用ボビンとこのコイル用ボビンに対して取り付けられる第1コイル巻線を示す分解斜視図である。
【図2】図1におけるコイル用ボビンの底面側からの斜視図である。
【図3】図3(a)は、コイル用ボビンの平面図であり、図3(b)は、コイル用ボビンの正面図(図1のX方向から見た図)である。
【図4】図4(a)は、コイル用ボビンの底面図であり、図4(b)はコイル用ボビンの背面図である。
【図5】図5(a)は、図1における第1コイル巻線の平面図であり、図5(b)は、第1コイル巻線の底面図である。
【図6】第1コイル巻線の側面図である。
【図7】コイル用ボビンへの第1コイル巻線の取り付け方法を説明する図である。
【図8】コイル用ボビンに第1コイル巻線が取り付けられた部品と、第2コイル巻線と、の構成を説明する図である。
【図9】図9(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図9(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【図10】コイル用ボビン及び第1コイル巻線からなる部品への第2コイル巻線の取り付け方法を説明する図である。
【図11】第1コイル巻線と第2コイル巻線との接続方法を説明する図である。
【図12】コイル用ボビン、第1コイル巻線及び第2コイル巻線からなるコイルの底面側の斜視図である。
【図13】コイルの正面図(図1のX方向から見た図)である。
【図14】コイル部品の構成を説明する分解斜視図である。
【図15】スイッチング電源装置の回路図である。
【図16】スイッチング電源装置の斜視図である。
【図17】コイル部品に対して放熱部材を取り付ける際の分解斜視図である。
【図18】放熱部材が取り付けられたコイル部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るコイル用ボビンとこのコイル用ボビンに対して取り付けられる第1コイル巻線を示す分解斜視図である。図2は、図1におけるコイル用ボビンの底面側(裏面側)からの斜視図である。また、図3(a)は、コイル用ボビンの平面図であり、図3(b)は、コイル用ボビンの正面図(図1のX方向から見た図)である。また、図4(a)は、コイル用ボビンの底面図であり、図4(b)はコイル用ボビンの背面図である。なお、図1に示す第1コイル巻線の詳細な構成については後述する。
【0021】
図1に示すコイル用ボビン1、第1コイル巻線2を含んで構成されるコイル部品は、インダクタンス素子、スイッチング電源装置、ノイズフィルタ、インバータ等に用いられるものである。コイル部品には、上記のコイル用ボビン1、第1コイル巻線2のほか、第2コイル巻線3、接続部材4、及び一対の磁性体コア部材5A,5Bを含んで構成される。これらの構成については後述する。
【0022】
上記のコイル部品1を構成する各部品について説明すると共に、上記のコイル部品1の組立方法を説明する。
【0023】
(コイル用ボビン)
まず、図1〜図4を用いて、本実施形態に係るコイル部品に含まれるコイル用ボビン1の構成を説明する。コイル用ボビン1は樹脂等の絶縁性材料からなり、筒状部10と、筒状部から軸線Aに対して外方に突出するフランジ部11と、突起部12A〜12C、13、14A,14Bと、を含んで構成される。このうち、突起部(第1の突起部)12A〜12C及び突起部(第2の突起部)13は、図1においてフランジ部11に対して図示上側に設けられ、突起部(第3の突起部)14A,14Bはフランジ部11に対して図示下側(底面側)に設けられている。また、突起部12A〜12Cは、筒状部10において、図示上側の端部に設けられ、突起部13は、筒状部10の上側の端部とフランジ部11との間となる位置である筒状部10の略中央部に設けられている。この突起部13が設けられる位置は、後述の第1コイル巻線の形状(巻線の厚さ等)によって決定される。そして突起部12A〜12C及び突起部13は、図3(a)に示すように、軸線Aに沿って上方から見た場合に互いに異なる位置になるように設けられている。また、突起部14A,14Bは、それぞれ筒状部10の下側の端部に設けられている。
【0024】
フランジ部11は、平坦状であって筒状部10から外方へ突出する部材であり、第1コイル巻線2と第2コイル巻線3とを絶縁するスペーサとして機能する。また、フランジ部11は、軸線A方向から見たときに、第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3よりその外径が大きい領域を備える。フランジ部11は、その外側に軸線A方向に沿って下方へ延びる側壁部15を有する。この側壁部は、後述の第2コイル巻線3の形状に対応させた略円弧状の形をしており、第2コイル巻線3と後述のコア部材5Aとの絶縁を保つ機能を有する。さらに図2に示すように、側壁部15の下端部には、軸線A方向へ突出する爪部16が設けられている。この爪部16は、図3(b)に示すように、下方の突起部14A,14Bと同じ高さに設けられている。
【0025】
さらにフランジ部11には、図1及び図3に示すように、フランジ部11に対して高さ方向に上側で、軸線A方向に対して垂直な面に沿って延びるカバー部(スペーサ部)17Bが設けられている。そしてカバー部17Bとフランジ部11との間を接続する壁部17Aが軸線A方向に沿って設けられている。さらに、軸線Aに対してカバー部17Bの外側となる端部には、下方に突出する爪部17Cが設けられている。これらの機能については後述する。図3(b)に示すように、壁部17A、カバー部17B及び爪部17Cにより、略コの字状の領域が形成され、これは後述の第1コイル巻線2を固定する機能を有する(回動規制手段・反転規制手段)。
【0026】
また、フランジ部11には、側壁部15とは別の領域に、外方へ突出するカバー部(スペーサ部)18Aが設けられていて、さらにこのカバー部18Aの外側となる端部から下方へ突出する爪部18Bが設けられている。この爪部18Bは後述の第2コイル巻線3を固定する機能を有する。
【0027】
側壁部15の端部には、コイル用ボビン1をコア部材5A,5Bに係止するための脚部19A〜19Dが一体的に設けられている。この脚部19A〜19Dは、コア部材5A,5Bの形状に対応させた形状とされる。
【0028】
以上の構成を有するコイル用ボビン1を筒状部10の中心軸線Aの方向(図1の上方)から見ると、図3(a)に示すように、筒状部10、突起部12A〜C,13,14A,14B及びフランジ部11及びカバー部17Bは互いに重なりを有していない。そのため、コイル用ボビン1は、金型を用いて絶縁性樹脂を射出成形することにより容易に製造できる。
【0029】
(第1コイル巻線)
次に、図1に示す第1コイル巻線2について図1,5,6を用いて説明する。図5(a)は、図1における第1コイル巻線の平面図であり、図5(b)は、第1コイル巻線の底面図であり、図6は、第1コイル巻線の側面図である。
【0030】
図1,5に示すように、第1コイル巻線2は、略円環状であって、間を隔てて並設された有端リング状の2つの巻線部材21,22を、所定の巻き方向に連なるように連結させたものである。「略円環状」とは、コイル巻線のうち巻線を形成する領域(すなわち端子部や接続部等を除いた領域)の外周が、軸線Aの方向から見たときに概ね円形状となっているか、又は概ね楕円形状となっていることをいう。この有端リング状の巻線部材21,22はいわゆるC字状を呈していて、中央に円形状の開口201,202を有している。巻線部材21と巻線部材22は、この開口201,202が連通するように重なっている。なお、巻線部材21及び巻線部材22には、スリット23及びスリット24がそれぞれ設けられているが、これらは軸線方向からみたときに位置をずらした状態で(つまりこれらが連通しないように)重なり合っている。このスリット24は、コイル用ボビン1に対して第1コイル巻線2を取り付ける際に突起部13が通過するスリットとなる。
【0031】
さらに、巻線部材21の一端部には、開口201の軸線Aから外方へ突出する第1の端子部25が一体的に設けられている。そして、巻線部材21の他端部はU字状の接続部26を介して巻線部材22の一端部に連結されている。巻線部材22の他端部には、開口202の軸線Aから外方へ突出する第2の端子部27が一体的に設けられている。上記の構成を有する第1コイル巻線2では、第1の端子部25が第1コイル巻線2の始端、第2の端子部27が第1コイル巻線2の終端になっている。そして、第1の端子部25に電力を入力した場合、電力は、巻線部材21、接続部26、巻線部材22の順で流れ、第2の端子部27から出力される。
【0032】
さらに、巻線部材22には、軸線Aから外方へ突出する放熱部(放熱用端子)28が設けられている。この放熱部28は、第1コイル巻線2とコイル用ボビン1とが振動で外れないように固定するための機能を有するがその詳細は後述する。
【0033】
巻線部材21の内周縁には、外方に向けて切り込まれた複数(本実施形態では3つ)の切込部211,212,213が形成されている。切込部211〜213は、開口201の周方向に沿って互いに離間した状態で配されている。
【0034】
また、巻線部材22の内周縁には、外方に向けて切り込まれた複数(本実施形態では3つ)の切込部221,222,223が形成されている。切込部221〜223は、開口202の周方向に沿って互いに離間した状態で配されている。そして、巻線部材21の切込部211〜213と、巻線部材22の切込部221〜223は、図1及び図5に示すように、軸線A方向からみたときに、重なる位置に設けられている。そしてこれらの切込部211〜213及び切込部221〜223は、コイル用ボビン1の筒状部10に設けられた突起部12A〜12Cに対応する位置に設けられている。
【0035】
以上の構成を有する第1コイル巻線2は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。より具体的には、銅板、アルミニウム板等の基板から、第1の端子部25と、第1の端子部25に連続する巻線部材21,22と、巻線部材22に連続する第2の端子部27及び巻線部材22から延びる放熱部28と、巻線部材21,22を連結するI字状の接続部26と、を打ち抜き加工により得る。そして、接続部26をU字状に屈曲させることによって巻線部材21と22とを所定の間隙をもって重ね合わせる。これにより、導体板からなる第1コイル巻線2が完成する。なお、第1コイル巻線2はこのような折り曲げコイルに限られず、例えば、コイル部材と連結部とをねじ留めしたものであってもよいし、溶接したものであってもよい。また、リベットで固定してもよい。
【0036】
(コイル用ボビンへの第1コイル巻線の取り付け)
次に、コイル用ボビン1への第1コイル巻線1の取り付けについて、図1,7を参照しながら説明する。図7は、コイル用ボビンへの第1コイル巻線の取り付け方法を説明する図であり、コイル用ボビン及び第1コイル巻線の平面図に相当する。
【0037】
図1に示すように、第1コイル巻線2のうち巻線22の裏面(図1における底面側)をコイル用ボビン1のうち、突起部12A〜12C、13が設けられる端部側(第1の端部側)と対向させる。そして、コイル用ボビン1の突起部12Aの位置を巻線部材21,22の切込部211,221に合わせる。これらの位置を合わせることにより、突起部12Bは切込部212,222に位置合わせされ、突起部12Cは切込部213,223に位置合わせされることになる。また、コイル用ボビン1の突起部13と巻線部材22のスリット24との位置も一致することになる。位置合わせ後、第1コイル巻線2及びコイル用ボビン1を相対的に移動させ、巻線部材21,22の開口201,202に、コイル用ボビン1の筒状部10を筒状部10の中心軸線Aの方向に挿通する。筒状部10の挿通に伴い、突起部12A〜12Cが切込部211〜213及び221〜223に通され、突起部13がスリット24に通される。
【0038】
筒状部10を挿通していくと、コイル用ボビン1のフランジ部11が巻線部材22裏面に当接する。これにより、コイル用ボビン1は更なる進入が不可能になり、図7(a)に示す状態となる。この状態において、コイル用ボビン1の突起部12A〜12Cは、巻線部材21の切込部211〜213からわずかに突出している。また、突起部13は巻線部材21と巻線部材22との間に位置している。
【0039】
次に、コイル用ボビン1を第1コイル巻線2に対して相対的に回動させる。図7(b)は、コイル用ボビン1をコイル巻線2に対して約180度回動させた状態を示す図である。
【0040】
具体的には、コイル用ボビン1を図1の上方から見て左回りに回動させる。回動を開始すると、コイル用ボビン1の突起部12Aが巻線部材21の切込部211から外れると共に、突起部12B,12Cも巻線部材21の切込部212,213から外れる。そして、180度回動させると、巻線部材22の放熱部28がコイル用ボビン1のカバー部17Bの下に入り込む。この際、カバー部17Bから突出する爪部17Cがあるものの、絶縁性樹脂からなるカバー部17Bが撓むことで、カバー部17Bの下方に放熱部28が入ることが可能となる。そして、コイル用ボビン1の壁部17Aが巻線部材22の放熱部28と当接する。壁部17Aに放熱部28が当接することにより、この方向へのさらなる回動が抑制される。すなわち、壁部17Aが回動規制手段として機能する。また、放熱部28が壁部17Aに当接するとき、放熱部28はカバー部17Bの下方に全て入り込むので、カバー部17Bの撓みが元に戻り、爪部17Cは、軸線A方向に対して放熱部28の外側の一部を覆うようになる。この結果、コイル用ボビン1に対する第1コイル巻線2の逆方向の回動が、爪部17Cによって抑制される。すなわち爪部17Cが反転規制手段として機能する。このとき、図7(b)に示すように、第1コイル巻線2の巻線部材21,22は、フランジ部11よりも外径が小さくされている。
【0041】
このとき、巻線部材21と巻線部材22との間の絶縁は、コイル用ボビン1の突起部13により達成される。さらに、第1コイル巻線2に対してコイル用ボビン1を回動させることで、図7(b)に示すように、コイル用ボビン1の突起部12A〜12Cと、巻線部材21の切込部211〜213とが、軸線A方向から見て互いに異なる位置になるため、突起部12A〜12Cにより軸線A方向の第1コイル巻線2の移動も抑制される。
【0042】
(第2コイル巻線)
次に、第2コイル巻線について図8,9を参照しながら説明する。図8は、コイル用ボビンに第1コイル巻線が取り付けられた部品と、第2コイル巻線と、の構成を説明する図であり、図9(a)は、第2コイル巻線の平面図であり、図9(b)は、第2コイル巻線の底面図である。
【0043】
図8,9に示すように、第2コイル巻線3は、略円環状であって、有端リング状の巻線部材31からなるものである。この巻線部材31はいわゆるC字状を呈していて、中央に円形状の開口301を有している。また、巻線部材31は1ターンの巻線であり、一端部には、開口301の軸線Aから外方へ突出する第3の端子部32が一体的に設けられている。そして、巻線部材31の他端部には、開口301軸線Aから外方へ突出する第4の端子部33が一体的に設けられている。第3の端子部31と第4の端子部32との間にはスリット34が設けられている。
【0044】
さらに、巻線部材31には、軸線Aから外方へ突出する放熱部35が設けられている。この放熱部35は、巻線部材31の幅(断面積)を確保するための領域であると共に、第2コイル巻線3からの放熱性を高める部材として機能する。
【0045】
巻線部材31の内周縁には、外方に向けて切り込まれた複数(本実施形態では2つ)の切込部311,312が形成されている。切込部311,312は、開口301の周方向に沿って互いに離間した状態で配されている。
【0046】
以上の構成を有する第2コイル巻線3は、電気伝導性が高い一枚の基板を打ち抜き加工することで形成可能である。
【0047】
(コイル用ボビンへの第2コイル巻線の取り付け)
次に、コイル用ボビン及び第1コイル巻線からなる部品への第2コイル巻線の取り付けについて、図8,10,11,12を参照しながら説明する。図10は、コイル用ボビン及び第1コイル巻線からなる部品への第2コイル巻線の取り付け方法を説明する図である。また、図11は、第1コイル巻線と第2コイル巻線との接続方法を説明する図であり、図12は、コイル用ボビン、第1コイル巻線及び第2コイル巻線からなるコイルの底面側の斜視図である。
【0048】
図8に示すように、第2コイル巻線3の裏面(図8における底面側)を、コイル用ボビン1のうち突起部14A,14Bが設けられる端部側(第2の端部側)と対向させる。そして、コイル用ボビン1の突起部14Aの位置を巻線部材31の切込部311に合わせる。これらの位置を合わせることにより、突起部14Bは切込部312に位置合わせされることになる。位置合わせ後、第2コイル巻線3及びコイル用ボビン1を相対的に移動させ、巻線部材31の開口301に、コイル用ボビン1の筒状部10を筒状部10の中心軸線Aの方向で挿通する。筒状部10の挿通に伴い、突起部14A,14Bが切込部311,312に通される。これにより、コイル用ボビン1のフランジ部11の面11bが巻線部材31の裏面に当接する。これにより、コイル用ボビン1は更なる進入が不可能になり、図10(a)に示す状態となる。このとき、コイル用ボビン1の側壁部15が第2コイル巻線3の外周縁を覆うような位置となる(図10(a)参照)。
【0049】
次に、第2コイル巻線3をコイル用ボビン1及び第1コイル巻線2からなる部品1Aに対して相対的に回動させる。図10(b)は、第2コイル巻線3を部品1Aに対して約10度回動させた状態を示す図である。
【0050】
具体的には、第2コイル巻線3を図8の上方から見て右回りに回動させる。回動することにより、コイル用ボビン1の突起部14Aが巻線部材31の切込部311から外れると共に、突起部14Bも巻線部材31の切込部312から外れる。10度回動させると、巻線部材31の放熱部35がコイル用ボビン1のカバー部18Aの上に重なるところまで移動する。この際、カバー部18Aから突出する爪部18Bがあるものの、絶縁性樹脂からなるカバー部18Aが撓むことで、放熱部28が爪部18Bを乗り越えてカバー部18Aの上方に重なることが可能となる。また、このとき、巻線部材31の第4の端子部33へと延びる領域が側壁部15と当接し、さらに巻線部材31が側壁部15に設けられた爪部16の下に入り込む。これにより、この方向へのさらなる回動が抑制される。すなわち側壁部15が回動規制手段として機能する。また、巻線部材31が側壁部15に当接するとき、放熱部35は爪部18Bを完全に乗り越える領域まで移動するので、カバー部18Aの撓みが元に戻り、爪部18Bは、軸線A方向に見たときに放熱部35の外側の一部を覆うようになる。この結果、コイル用ボビン1に対する第2コイル巻線3の逆方向の回動が、爪部18Bによって抑制される。すなわち爪部18Bが反転規制手段として機能する。このとき、図10(b)に示すように、第2コイル巻線3は、側壁部15よりも内側に収容される。
【0051】
また、第2コイル巻線3をコイル用ボビン1に対して回動させることで、図10(b)に示すように、コイル用ボビン1の突起部14A,14Bと、巻線部材31の切込部311,312とが、軸線A方向から見て互いに異なる位置にあり、さらに巻線部材31が爪部16の下部に入り込むため、この突起部14A,14Bにより軸線A方向の第2コイル巻線3の移動も抑制される。
【0052】
そして、第2コイル巻線3をコイル用ボビン1に対して回動させることで、第1コイル巻線2の第2の端子部27と、第2コイル巻線3の第3の端子部32とが、軸線A方向から見て重なる位置となる。そこで、図11に示すように第1コイル巻線2の第2の端子部27と第2コイル巻線3の第3の端子部32とをネジ(接続部材)4により電気的に接続することにより、第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3は、合計3ターンのコイル巻線として機能する。具体的には、第1コイル巻線2の第1の端子部25から電力が入力された場合、電力は、巻線部材21、接続部24、巻線部材22を経て第2の端子部27に到達し、この第2の端子部27と電気的に接続する第2コイル巻線3の第3の端子部32から、巻線部材31を経て、第4の端子部33に到達し、この第4の端子部33から出力される。
【0053】
また、ネジ4によって第1コイル巻線2の第2の端子部27と第2コイル巻線3の第3の端子部32とが固定されることによって、筒状部10の外側における第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3の移動が抑制される。この固定はネジ留めではなく、溶接によって接続してもよい。また、リベットでこれらを固定してもよい。
【0054】
以上により、すなわちコイル用ボビン1、第1コイル巻線2、第2コイル巻線3、及び接続部材としてのネジ4とからなるコイル1Bが形成される。
【0055】
このコイル1Bの正面図(図1のX方向から見た図)を図13に示す。図13に示すように、コイル1Bでは、第1コイル巻線2の巻線部材21と巻線部材22との間には、コイル用ボビン1の突起部13が設けられ、これにより、絶縁が達成される。さらに、巻線部材22と第2コイル巻線3(巻線部材31)との間には、フランジ部11が設けられ、これにより絶縁が達成される。また、巻線部材21の上方には突起部12A〜12C(図13では突起部12Aのみ示されている)が設けられていることで、巻線部材21の上方への移動が抑制される。そして、巻線部材31の下方には突起部14A,14B(図13では突起部14Aのみ示されている)及び爪部16が設けられていることで、巻線部材31の下方への移動が抑制されている。
【0056】
(コイル部品)
次に、図14を参照しながら、コイル部品1Cについて説明する。図14は、コイル部品の構成を説明する分解斜視図である。このコイル部品1Cは、上記のコイル1Bが更に一対の磁性体コア部材5A,5Bを備えるものである。コイル部品1Cは、例えば、後述するスイッチング電源装置のチョークコイルとして機能する。
【0057】
図14に示すように、磁性体コア部材5A,5Bは、コイル1Bを構成するコイル用ボビン1の開口を貫くように、軸線Aに沿ってコイル1Bを挟むように配置される。
【0058】
磁性体コア部材5A,5Bは、それぞれフェライト粉末を圧粉成形して得られるいわゆるE型コアである。より具体的には、磁性体コア部材5Aは、長手方向を有する平板状の基部50と、基部50の一方の主面の中心に突設された円柱状の主脚51と、主脚51を挟んで基部50の端部に設けられた2本の外脚52,53とからなっている。また、磁性体コア部材5Bについても、基部54と、主脚55と、2本の外脚56,57とからなっている。
【0059】
磁性体コア部材5A,5Bの主脚51,55はコイル1Bの開口、すなわち、コイル用ボビン1の筒状部10の開口201,202に挿入される。このとき、第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3は、筒状部10の外側に設けられているため、主脚51,55がこれらの巻線に接触することはない。
【0060】
また、磁性体コア部材5Aの外脚52,53、及び磁性体コア部材5Bの外脚56,57は、第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3の外周に沿って、磁性体コア部材5Aの外脚52と磁性体コア部材5Bの外脚56とが当接し、さらに、磁性体コア部材5Aの外脚53と磁性体コア部材5Bの外脚57とが当接するように配置される。このとき、コイル用ボビン1のフランジ部11が第1コイル巻線2よりも大きく、さらに第2コイル巻線3の外側には側壁部15が形成されていることから、このフランジ部11及び側壁部15が磁性体コア部材5A,5Bと第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3とが接触することを防止する絶縁部材としての機能を有する。
【0061】
そして、コイル用ボビン1の突起部12A〜12Cは、磁性体コア部材5Aと巻線部材21とが当接することを防止する絶縁部材として機能し、突起部14A,14B及び爪部16Cは、磁性体コア部材5Bと巻線部材31とが当接することを防止する絶縁部材として機能する。
【0062】
さらに、コイル用ボビン1のフランジ部11に、外方へ突出するガイド部19A〜19Dが設けられ、このガイド部19A〜19Dが、磁性体コア部材5Bの外脚56,57を固定するため、磁性体コア部材5Bとコイル1Bとの間の幅方向の位置ズレの発生が抑制される。なお、ガイド部19A〜19Dの形状は、上記に限られず、磁性体コア部材の形状に応じて適宜変更することができる。
【0063】
(スイッチング電源装置)
次に、本実施形態に係るコイル部品1が好適に用いられるスイッチング電源装置について説明する。図15は、スイッチング電源装置100の回路図である。また、図16は、スイッチング電源装置100の斜視図である。本実施形態に係るスイッチング電源装置100は、DC−DCコンバータとして機能するものであり、例えば100Vから500V程度の電圧を蓄電する高圧バッテリ等から供給される高圧の直流入力電圧Vinを低圧の直流出力電圧Voutに変換し、12〜16V程度の電圧を蓄電する低圧バッテリ等へ供給する。
【0064】
このスイッチング電源装置100は、図16に示すように、ベースプレート101を有し、このベースプレート上に、入力平滑コンデンサ(入力フィルタ)130と、スイッチング回路120と、メイントランス140と、整流回路150と、チョークコイル(コイル部品)170と、出力平滑コンデンサ162と、からなる平滑回路160と、が固定されている。
【0065】
このスイッチング電源装置100は、より具体的には、1次側高圧ライン121と1次側低圧ライン122との間に設けられたスイッチング回路120及び入力平滑コンデンサ130と、1次側及び2次側トランスコイル部141,142を有するメイントランス140と、2次側トランスコイル部142に接続された整流回路150と、整流回路150に接続された平滑回路160と、を備えている。
【0066】
スイッチング回路120は、スイッチング素子S1〜S4で構成されたフルブリッジ型の回路構成とされている。スイッチング回路120は、例えば駆動回路(不図示)から供給される駆動信号に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換する。
【0067】
入力平滑コンデンサ130は、入力端子T1、T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化する。メイントランス140は、スイッチング回路120で生成された入力交流電圧を変圧し、出力交流電圧を出力する。1次側及び2次側トランスコイル部141,142の巻数比は、変圧比によって適宜設定されている。ここでは、1次側トランスコイル部141の巻数を、2次側トランスコイル部142の巻数よりも多くしている。2次側トランスコイル部142は、センタータップ型のものであり、接続部C及び出力ラインLOを介して出力端子T3に導かれている。
整流回路150は、整流ダイオード151A,151Bからなる単相全波整流型のものである。各整流ダイオード151A,151Bのカソードは、2次側トランスコイル部142に接続されている一方、アノードは、接地ラインLGに接続され、出力端子T4に導かれている。これにより、整流回路150は、メイントランス140からの出力交流電圧の各半単波期間を、個別に整流して直流電圧を生成する。
【0068】
平滑回路160は、チョークコイル170と出力平滑コンデンサ162とを含んで構成されている。チョークコイル170は、出力ラインLOに挿入配置されている。出力平滑コンデンサ162は、出力ラインLOにおいてチョークコイル170と接地ラインLGとの間に接続されている。これにより、平滑回路160は、整流回路150で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、この直流出力電圧Voutを出力端子T3,T4から低圧バッテリ等へ供給する。
【0069】
以上のように構成されたスイッチング電源装置100において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、メイントランス140の1次側トランスコイル部141へと供給される。そして、生成された入力交流電圧が変圧され、2次側トランスコイル部142から出力交流電圧として出力される。そして、この出力交流電圧が整流回路150によって整流されると共に平滑回路160によって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力されることとなる。
【0070】
上記のようなスイッチング電源装置100において、本実施形態にかかるコイル部品1Cを取り付けて駆動させるとコイル巻線が高熱になるため、放熱手段を設ける必要がある。そこで、本実施形態に係るコイル部品1Cでは、第1コイル巻線2の巻線部材22に設けられた放熱部28及び第2コイル巻線3の巻線部材31に設けられた放熱部35が効果的な放熱手段として機能する。
【0071】
この構成について、図17及び図18を用いてさらに具体的に説明する。図17は、コイル部品に対して放熱部材を取り付ける際の分解斜視図であり、図18は、放熱部材が取り付けられたコイル部品の斜視図である。
【0072】
具体的には、コイル部品1Cをスイッチング電源装置100の筐体に設置する際に、図17及び図18に示すように、放熱部28及び放熱部35の下に、放熱シート9A及び9Bを設ける。そして、放熱部28を覆うカバー部17Bと、放熱部35を覆うカバー部18Aとの上部をそれぞれ押さえるための弾性を有する押圧部材8Aを上に置き、これをネジ8Bにより筐体(放熱物)に対して固定する。これらを組み合わせたコイル部品が図18に示すコイル部品1Dである。このとき押圧部材8Aの中心は、ネジ8Bによって筐体に対して固定されるが、その両端側が撓むことにより、放熱部28及び放熱部35が放熱シート9A,9Bを介して筐体に対して押しつけられる。これにより、第1コイル巻線2で発生した熱は、放熱部28を介して筐体へ放出することができると共に、第2コイル巻線3で発生した熱は、放熱部35を介して筐体へ放出することができる。
【0073】
一般的に、コイル巻線から放熱を行うためには、放熱シート等の絶縁部材を介して筐体等とコイル巻線とを熱的に接続することで放熱が行われる。このとき、熱的に接続する方法として、放熱用端子となる放熱部28,35をそれぞれ筐体に対してネジ止めにより固定する方法が用いられる。この場合、ネジと放熱用端子との絶縁を達成するため、絶縁性のスペーサが必要となる。一方、本実施形態に係るコイル部品1Cでは、押圧部材8Aは、コイル用ボビン1のカバー部17B,18Aを介して放熱用端子である放熱部28,35を押圧することで、筐体に対して押圧する構成となっている。したがって、ネジと放熱用端子との絶縁を達成するためのスペーサが不要であると共に、ネジ穴が不要であるために筐体と熱的に接続される放熱用端子の面積をより大きく確保することができるため、より放熱性を高めることができる。
【0074】
以上のように、本実施形態に係るコイル用ボビン、コイル部品及びスイッチング電源装置によれば、第1コイル巻線2の隣接する巻線部材21,22の間は突起部13により絶縁される。また、第1コイル巻線2と、第2コイル巻線3との間はフランジ部11により絶縁される。さらに、第1コイル巻線2及び第2コイル巻線3を軸線A方向に垂直な方向から見たときに両端となる位置には突起部12A〜12Cと突起部14A,14Bとがそれぞれ設けられる。したがって3ターンのコイル巻線であっても、このコイル用ボビン1によれば巻線間の絶縁を達成すると共に、軸線方向に垂直な方向から見たときにコイル巻線の外方となる領域の絶縁も達成されることから、部品点数を増やすことなく、絶縁性を高めることが可能となる。
【0075】
また、フランジ部11がコイル巻線の外径よりも大きく、フランジ部11の外周縁から軸線A方向に延びる側壁部15を備えることで、コイル巻線の外側に設けられる磁性体コア部材等の部材との間での絶縁性も達成することができると共に、このコイル用ボビンに対してコイル巻線を取り付ける際の安定性も達成される。
【0076】
また、側壁部15から軸線A方向に延びる爪部16を備えることにより、この爪部16が、側壁部15が延びる方向に設けられる第2コイル巻線3を、軸線A方向に垂直な方向から見たときに押さえ込むことになるため、コイル用ボビン1に対する第2コイル巻線3の軸線A方向の振動を抑制することができる。
【0077】
また、上記コイル用ボビン1では、壁部17Aや側壁部15がコイル巻線の一方向の回動を規制する回動規制手段として機能する。これにより、コイル巻線がコイル用ボビン1の筒状部10の周囲を回動することにより、例えば他の部品等に接触すること等を防ぐことができるため絶縁性をさらにたかめることができる。
【0078】
さらに、爪部17Cや爪部18Bが、コイル巻線の上記一方向の回動とは逆方向の回動を規制する反転規制手段として機能することで、コイル巻線が逆方向に回動することも抑制され、所定の位置においてコイル巻線をより適切に固定することが可能となる。
【0079】
また、上記のコイル用ボビン1では、筒状部10の軸線に沿った方向から放熱用端子である放熱部28,35に対して当接するスペーサ部としてカバー部17B,18Aが設けられる。ここで、このコイル巻線からの放熱を行う場合、コイル巻線を放熱物に固定する際にこの放熱用端子に対して当接するカバー部17B,18Aが絶縁部材として機能するため、部品点数を増やすことなくコイル巻線からの放熱が高められる。
【0080】
また、上記の放熱手段を備えたコイル部品1Dでは、スペーサ部として機能するカバー部17B,18Aを介して、第1コイル巻線2の放熱用端子である放熱部28及び第2コイル巻線3の放熱用端子である放熱部35が軸線A方向に押圧される。これにより、これらの放熱用端子が固定され、放熱物である筐体へ向けての放熱が行われる。ここで、放熱用端子による押圧により、放熱物に対して放熱用端子が固定されるため、例えば放熱用端子にネジ穴を設けてネジにより固定をする場合と比較して、当接面積を広くすることができ、放熱性をより高めることが可能となる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、フランジ部11の形状は上記に限定されず適宜変更をすることができる。
【0082】
また、切込部211〜213,221〜223,311,312は、上記実施例では略矩形状としたが、これに限定されず、例えば三角形状やハの字状に切込部を設けても良い。この場合、切込部211〜213,221〜223,311,312の形状に合わせた突起部12A〜12C,14A,14Bの形状としても良い。
【0083】
また、第1コイル巻線2の切込部211〜213,221〜223の角度は、角度を全て等しくしても良いが、上記実施例で述べたように、回転対称性を持たない位置に設けることが好ましい。このように配置した場合、第1コイル巻線2にコイル用ボビン1を装着する途中で、突起部12A〜12Cと切込部211〜213の全てが再び重なり合うことが無くなるため、装着が容易になる。
【0084】
また、突起部12A〜12C(第1の突起部),13(第2の突起部),14A,14B(第3の突起部)については、軸線Aに対して垂直な方向から見たときに、それぞれの位置において最低1つあればよく、その数は適宜変更することができる。
【0085】
また、カバー部17B,18Aの形状は特に限定されない。また、回動規制手段及び反転規制手段として機能する爪部の位置は上記に限定されず、フランジ部11や側壁部15の形状、コイル巻線の形状等に応じて適宜変更することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、第1コイル巻線2のターン数が2ターンであり、第2コイル巻線3のターン数が1ターンである場合について説明したが、それぞれの巻線のターン数は変更することができる。また上記実施形態では、フランジ部11を挟むように第1コイル巻線2と第2コイル巻線3の2つのコイル巻線が取り付けられる構成について説明したが、コイル巻線の数は1つであってよい。コイル巻線が1つである場合でも、コイル巻線の放熱用端子に対して軸線A方向に沿って当接するスペーサ部をコイル用ボビンが具備することで、部品点数を増加させることなく放熱性を高めることができるという本発明に係る効果を奏することができる。
【0087】
また、一対の磁性体コア部材5A,5Bの形状は、上記実施形態に示すような所謂EE型の形状に限られない。例えば、EI型、UI型、UU型等の磁性体コア部材を用いることもできる。この場合、磁性体コア部材の脚部のうちのコイル巻線が巻回される脚部に対して、本実施形態に係る巻線部品が好適に用いられる。
【0088】
また、スイッチング電源装置の構成は図15,16に限られない。すなわち、上記実施形態に係るコイル用ボビン1は、例えばインバータ等にも好適に用いられる。また、スイッチング電源装置100においてコイル部品1C(1D)が用いられるのはチョークコイル70に限られず、メイントランス140に対しても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0089】
1…コイル用ボビン、2…第1コイル巻線、3…第2コイル巻線、4…接続部材、5A,5B…磁性体コア部材、10…筒状部、11…フランジ部、12A〜12C,13,14A,14B…突起部、15…側壁部、21,22,31…巻線部材、70…チョークコイル、100…スイッチング電源装置、140…メイントランス、170…チョークコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱用端子を備えた導電性のコイル巻線が巻回される筒状部を備える絶縁性のコイル用ボビンであって、
前記筒状部から突出し、前記筒状部の軸線に沿った方向から、前記コイル巻線の前記放熱用端子に当接するスペーサ部を備えるコイル用ボビン。
【請求項2】
前記筒状部から外方に突出し、前記筒状部に対してコイル巻線を挿通して回動させたときに、前記コイル巻線と当接して、前記コイル巻線の一方向の回動を規制する回動規制手段を備える請求項1記載のコイル用ボビン。
【請求項3】
前記筒状部の軸線に対して垂直な面に沿って前記筒状部の中央部から外方に突出する平坦状のフランジ部を備え、
前記スペーサ部は、前記軸線に垂直な方向から見たときに前記フランジ部とは異なる高さ位置に設けられる請求項2記載のコイル用ボビン。
【請求項4】
前記コイル巻線と前記回動規制手段が当接したときに、前記一方向とは逆方向に回動することを規制する反転規制手段を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のコイル用ボビン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のコイル用ボビンと、
前記軸線の周りに1ターン以上巻回されて、放熱用端子を備えたコイル巻線と、
前記コイル巻線に設けられた放熱用端子を、前記スペーサ部を介して前記軸線方向に押圧する押圧部材と、
前記コイル巻線を前記軸線方向から挟み込む一対の磁性体コア部材と、を備えるコイル部品。
【請求項6】
前記押圧部材は、前記押圧方向に弾性を有する請求項5記載のコイル部品。
【請求項7】
請求項5又は6記載のコイル部品を備えるスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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