説明

コイル装置および、その製造方法

【課題】コア部材間、およびコア部材とプリント基板との間を固定したコイル装置を、作業時間を短縮して製造でき、また、安定した品質で製造できる製造方法の提供を図る。
【解決手段】プリント基板1のコイルの磁路となる位置に設けたコア孔2の付近に上部コア部材3を載置する。プリント基板1との間で上部コア部材3を保持するようにプリント基板1に上部固定具5をはんだ付けする。プリント基板1を反転させ下部コア部材4を載置する。下部コア部材4と上部固定具5との間に上部コア部材3を狭持するように下部固定具6を固定する。以上の工程により上部コア部材3と下部コア部材4とをコア孔2を介して当接させ、上部コア部材3と下部コア部材4とを磁路とするコイル装置10を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスやチョークコイルとして機能するコイル装置および、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に回路パターンを形成し電子部品を搭載するとともに、回路パターンの一部にコイル配線を形成し、コイルの磁心となるコア部材を搭載してモジュール構造のトランスやチョークコイルを製造する技術が特許文献1に示されている。
【0003】
ここで、特許文献1に示されたトランスやチョークコイルなどのモジュール構造(以下コイル装置という。)の構成を図1(A)に基づいて説明する。
図1(A)にコイル装置が設けられるプリント基板11の端縁部分を示す。プリント基板11の図上側の面には電子部品(不図示)を搭載するための回路パターンが形成され、その回路パターンの一部であるコイル配線(不図示)がコア孔12を周回するように設けられる。また、このコア孔12には上部コア部材13が挿通され、上部コア部材13がプリント基板11の逆面に配置した下部コア部材14に当接させられる。この一対の上部コア部材13と下部コア部材14とは、ともにフェライト等の磁性体材料を焼結成型して製作されたものであり、固定具15により挟み合わされ、ギャップ面(コア部材同士の接続面)のずれが無いように組み合わされることで、コイルの磁心として用いられることになる。このような構成でコイル配線に通電することにより、コア孔12に磁界が生じ、上部コア部材13と下部コア部材14とがコイルの磁心として作用することになる。
【0004】
このコイル装置では、コア部材によりプリント基板11が挟まれる部分の隙間がプリント基板11の厚みよりも広く、コア部材(上部コア部材13,下部コア部材14)がプリント基板11に対して動くことになってしまい、コイル装置の信頼性や安定性が損なう原因となっていた。
【0005】
そこで、コア部材同士を固定するだけでなく、さらにプリント基板に固定保持する技術が知られている。
図1(B)は特許文献2を参考にしたコイル装置の構成である。プリント基板21の図上側の面にはコイル配線(不図示)が複数のコア孔22それぞれを周回するように設けられる。また、各コア孔22には上部コア部材23の脚部分が挿通され、上部コア部材23の先端が下部コア部材24に当接するように配置される。上部コア部材23と下部コア部材24の固定には固定具25が用いられ、上部コア部材23と下部コア部材24とが挟み合わされる。この上部コア部材23と下部コア部材24はさらにカバー部材26により固定される。この場合に、2つのコア部材(上部コア部材23,下部コア部材24)は固定具25により相対的に固定され、さらにカバー部材26によりプリント基板21に固定される。このようにして、単に一対のコア部材を固定するだけでなく、さらにプリント基板に固定することで、コイル装置の信頼性や安定性が高められる。また、特許文献2にはコア部材をプリント基板に固定する方法として、接着剤を用いる構成も記載されている。
【特許文献1】特開平11−40425号公報
【特許文献2】特開2002−93632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来は、コア部材同士を固定するために、その製造時にプリント基板の表面および裏面に上部コア部材と下部コア部材とを仮止めしておき、次に固定具を変形させてコア部材同士を固定するという工程が必要であった。この工程はマウント装置などの汎用の自動機によっては自動化できず、作業者による手作業を必要としていた。
【0007】
また、コア部材をプリント基板に対してさらに固定するためにも、カバー部材を変形させてプリント基板に係止する工程が必要で、この工程も汎用の自動機によっては自動化できなかった。
【0008】
このように、従来はプリント基板にコア部材を固定するために、多くの手作業を必要とし、作業時間の短縮が困難で製品全体の納期遅延やコストアップの要因となっていた。また、作業者ごとまたは作業ごとに製品の仕上がり状態が大きく異なり、例えばコア部材の角が基板を削ってしまったり、コア部材自体がかけてしまったりすることで、コイル装置の品質を不安定にするという問題があった。
【0009】
そこで、この発明の目的は、作業時間を短縮でき、また、品質を安定できるコイル装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためにこの発明は、コイル配線の磁路となる位置に開口部分を設けたプリント基板と、前記プリント基板の開口部分に配置される上部コア部材と、前記上部コア部材の前記プリント基板逆面に配置される下部コア部材と、を備え、上部コア部材と下部コア部材とを前記開口部分を介して当接させて前記磁路を形成するコイル装置の製造方法において、前記プリント基板との間で前記上部コア部材を保持するように前記プリント基板に上部固定具を固定する工程と、前記プリント基板の面を反転させ載置した前記下部コア部材と前記上部固定具との間に前記上部コア部材を狭持するように下部固定具を固定する工程とを備える。
【0011】
この製造方法によると、上部固定具を固定する際に上部固定具とプリント基板との間に上部コア部材を単に保持するのみなので、上部固定具の取り付け時に上部固定具を変形させたり係止したりして荷重を加える必要が無く、汎用の自動機を用いて上部固定具を固定できる。例えばマウント装置により上部コア部材と上部固定具とをプリント基板上に載置し、固定具のみを固定するようにして工程を自動化できる。
【0012】
一方、下部固定具を固定する際には、下部固定具により上部コア部材と下部コア部材とを同時に上部固定具に押し付ける必要があり、この工程は手作業や専門の装置を必要とするが、この一度の工程のみで下部コア部材と上部コア部材との両方を狭持できる。
【0013】
このように、上部コア部材と下部コア部材とをプリント基板に対して固定しながらも工程全体から手作業を減らすことができるため、製品全体のリードタイム短縮ができるとともに、納期遅延やコストアップの解消ができる。また、手作業を減らして、作業者ごとまたは作業ごとの仕上がり状態を安定させることができ、コイル装置の良品率を高くできる。
【0014】
また、この発明では前記下部固定具を前記プリント基板に係止する、または、前記上部固定具に係止する工程により下部固定具を固定する。
【0015】
この製造方法によると、作業者が容易に下部固定具を固定できる。なお、上部固定具および下部固定具に金属などの硬く剛性が高い材質を用いる場合には、固定具同士を係止するほうが、ガラスエポキシ等によるプリント基板に固定具を係止するよりも破損が生じにくい。また、この場合にはプリント基板と固定具との接触を無く、基板が削れてかすが生じることも防ぐことができ、そのかすがコア部材同士が当接する部分を汚す事がなくなり、製品の良品率を高めることができる。
【0016】
また、上部固定具もしくは下部固定具が、前記下部コア部材の中央部分に弾性力をかける突起部を備えるようにすることで、下部固定具からコア部材のエッジ部分に力が加わることを無くし、コア部材にひびが入ったり割れたりする可能性を減らすことができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、上部コア部材と下部コア部材とをプリント基板に対して固定しながらも工程全体から手作業を減らすことができる。そのため製品全体のリードタイム短縮、納期遅延やコストアップの解消ができ。また、手作業が減るために作業者ごとに、また作業ごとに仕上がり状態をより安定させることができ、コイル装置の良品率を高くできる。このようにコア部材同士を固定するとともに、コア部材とプリント基板との間も固定した構成のコイル装置を、製造工程を半自動化し、また、安定した品質で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、第1の実施形態として本発明の製造方法により製造されるコイル装置の構成について説明する。
【0019】
図2(A)に示すコイル装置10において、プリント基板1はガラスエポキシ製の基板である。このプリント基板1は、貫通する複数のコア孔2と、プリント基板1上に形成した回路パターン(不図示)が予め設けられたものであり、各コア孔2を周回するようにコイル配線が形成されている。このプリント基板1の各コア孔2に、断面コの字型の上部コア部材3の脚部分と、同様に断面コの字型の下部コア部材4の脚部分とを挿通し、この上部コア部材3と下部コア部材4との脚部分の先端同士を当接させる。上部固定具5はプリント基板1へのはんだ付けにより、また下部固定具6はプリント基板にその爪部を係止することにより固定する。これにより上部コア部材3と下部コア部材4とはコイル配線の磁路を形成する。
【0020】
図2(B)に示す上部固定具5は金属板を折り曲げて作製したものであり、平板状の天面部5Aと、天面部5Aの両端それぞれを屈曲させて形成した脚部5Bと、各脚部5Bの先端を外側に屈曲させて形成したはんだ付け部5Cから構成される。この上部固定具5は、はんだ付け部5Cがはんだ付けされることでプリント基板1に固定されることになる。なお、この上部固定具5の脚部5Bの図上下方向の寸法はY1である。
【0021】
また、図2(C)に示す下部固定具6も金属板から作製されており、平板状の天面部6A、天面部6Aの両端それぞれの位置の脚部6Bとともに、脚部6Bの先端を外側に突出させて形成した爪部6Cから構成される。この下部固定具6は、爪部6Cがプリント基板1に係止されることでプリント基板1に固定されることになる。なお、この下部固定具6の脚部6Bの図上下方向の寸法はY2である。
【0022】
また、図2(D)に示す上部コア部材3はフェライト等の磁性体材料を焼結成型して製作されたものであり、コの字型の断面形状を有する。上部コア部材3は平板状の天面部3Aと、天面部3Aの両端に設けた脚部3Bとから構成される。この上部コア部材3は脚部3Bがプリント基板1のコア孔2に挿通するように載置され、脚部3Bが下部コア部材4の脚部4Bと当接することになる。なお、この上部コア部材3の脚部3Bの図上下方向の寸法はY3である。この脚部3Bの寸法Y3は、上部固定具5の脚部の寸法Y1よりも小さく設計する。
【0023】
図2(E)に示す下部コア部材4は、上部コア部材3と同様にフェライト等の磁性体材料を焼結成型して製作されたものであり、コの字型の断面形状を有する。下部コア部材4も平板状の天面部4Aと、天面部4Aの両端に設けた脚部4Bとから構成され、脚部4Bがプリント基板1のコア孔2に挿通するように載置され、脚部4Bが上部コア部材3の脚部3Bと当接することになる。なお、この下部コア部材4の脚部4Bの図上下方向の寸法はY4である。この脚部4Bの寸法Y4は、下部固定具6の脚部の寸法Y2よりも小さく設計する。
【0024】
ここで上部固定具5と下部固定具6との間の図上下方向の隙間の幅は、その隙間に何も無い場合にはY1+Y2で表されることになる。また、上部コア部材3と下部コア部材4とをそれぞれの脚部分を当接させた状態での図上下方向の幅はY3+Y4で表されることになる。この上部コア部材3と下部コア部材4とによる幅Y3+Y4は固定具間の隙間の幅Y1+Y2よりも若干小さく設計している。また、折り曲げ加工の残留応力により固定具の天面部はコア部材の方向に反っている。したがって図2(A)に示すように固定具間の隙間に上部コア部材3と下部コア部材4とを挟み込み固定した状態では、上部固定具5と下部固定具6とが互いに微小に撓み、その隙間の幅が上部コア部材3と下部コア部材4の幅Y3+Y4に等しくなるように弾性変形する。この弾性変形により上部コア部材3と下部コア部材4とが、上部固定具5と下部固定具6の間に狭持される。このように、コア部材同士を固定するだけでなく、各コア部材をプリント基板1に対しても固定することで、コイル装置としての信頼性や性能の安定性を高めることができる。
【0025】
また、ここでは隣接するコア孔間にある基板の図左右方向の寸法は、上部コア部材3および下部コア部材4の脚部間の寸法よりも若干小さく設計しており、その寸法差を極めて小さく設定することで、上部コア部材3および下部コア部材4がプリント基板1に対して図左右方向へはあまり動かないようにしている。
【0026】
また、以上の説明では上部コア部材3および下部コア部材4をそれぞれ断面コの字型形状で2列の脚部を備える構成としたが、実際には、断面E型形状で3列の脚部を備える構成であってもよく、さらには2列や3列以上の脚部を設けるような構成であってもよい。あるいは、上部コア部材3が断面コの字形型状で下部コア部材4が断面I字型形状であってもよい。さらにまた、上部コア部材3が断面E字型形状で3列の脚部を備える構成で下部コア部材4が断面I字型形状であってもよい。上部コア部材3および下部コア部材4間の隙間にプリント基板が挟み込まれる構造であれば好適に実施できる。また、上部固定具5と下部固定具6とは金属製として説明したが、これらは樹脂など他の素材のものであってもよいが、非磁性体材料によるものであればコイル装置の特性に悪影響を与えないので好ましい。
【0027】
次に、本実施形態に係るコイル装置の製造工程を図3に基づいて説明する。
【0028】
(A)まず、プリント基板1の上面1Aにはんだペースト7を印刷塗布する工程を実施する。この工程では、プリント基板1の上面1Aに印刷装置などを用いてはんだペーストをスキージ等でメタルマスクに伸ばして、電子部品装荷用のランド部分(不図示)にはんだペーストを印刷塗布するとともに、上部固定具を固定する位置にもはんだペースト7を印刷塗布する。
【0029】
(B)次に、上部コア部材3および電子部品(不図示)をプリント基板1の上面1Aに載置する工程を実施する。この工程ではマウント装置を用いて、上部コア部材3の脚部3Bをプリント基板1のコア孔2に挿通して上部コア部材をプリント基板1上に載置する。
【0030】
(C)次に、上部コア部材3を覆うように上部固定具5を載置する工程を実施する。この工程ではマウント装置を用いて、上部固定具5のはんだ付け部5Cをプリント基板1上のはんだペースト7に載置する。
【0031】
次の工程で、プリント基板1をリフロー炉に送り、はんだペースト7を溶融させ、上部固定具5および電子部品(不図示)をプリント基板1に溶着させる。これにより上部コア部材3は上部固定具5からの荷重が加わることが無い状態でプリント基板1上に保持され、上部コア部材3はプリント基板1に対して上部固定具の規制の範囲内で可動になる。なお、上部固定具5の脚部の寸法Y1と、上部コア部材3の厚み寸法(Y3)との寸法差を小さく設定しておくと、上部コア部材3がプリント基板1の厚み方向へはあまり動かず好適である。
【0032】
(D)次に、プリント基板1の面を反転させる工程を実施する。この工程は作業者による手作業または、専用の自動機を用いることができる。
【0033】
次の工程で、プリント基板1の下面1Bにはんだペーストを印刷塗布する工程を実施する。この工程では、プリント基板1の下面1Bの電子部品装荷用のランド部分(不図示)にはんだペーストを印刷塗布する。この後、マウント装置を用いて、電子部品(不図示)をプリント基板1上のハンダペースト(不図示)に載置する。
【0034】
(E)次に、下部コア部材4を上部コア部材3上に載置する工程を実施する。この工程では下部コア部材4の脚部4Bをプリント基板1のコア孔2に挿通し、上部コア部材3の脚部3Bに当接させる。この工程もマウント装置など自動機を用いて実施することができる。
【0035】
(F)次に、下部コア部材4を覆うように下部固定具6を載置する工程を実施する。この工程では下部固定具6の爪部6Cがコア孔2に係るように載置する。この工程もマウント装置などの自動機を用いて実施することができる。
【0036】
そして次工程で下部固定具6をプリント基板1に係止する。この工程では下部固定具6の図上面両端矢印部分にプリント基板の方向の荷重を加える必要がある。下部固定具をプリント基板や上部固定具に係止する機能を有するマウント装置または専用の自動機を用いることができる。
【0037】
次の工程で、プリント基板をリフロー炉に送り、プリント基板1の下面1Bに印刷塗布しておいたハンダペースト(不図示)を溶融させ、電子部品(不図示)をプリント基板1に溶着させる。
【0038】
以上の各工程によりプリント基板1には、図2(A)のように下部固定具6が係止されるとともに上部固定具5がはんだ付けされる。これにより、下部固定具6によって下部コア部材4が上部コア部材3に対して押し付けられ、また上部コア部材3が上部固定具5に対して押し付けられ固定される。したがって下部コア部材4および上部コア部材3、プリント基板1が互いに固定され、また少なくとも上部固定具6を固定して上部コア部材3を可動保持する工程が自動機によって自動化でき、製品全体のリードタイム短縮、納期遅延やコストアップの解消ができ。また、手作業が減らして、作業者ごとまたは作業ごとの仕上がり状態をより安定させることができ、コイル装置の良品率を高くできる。
【0039】
なお、以上の説明では、上部固定具をプリント基板に固定する工程としてリフローはんだ法を示したが、他の方法によって上部固定具を固定してもよい。また、それ以外の工程も本発明の技術思想を逸脱しない限り様々な態様で実施することができる。
【0040】
次に、第2の実施形態のコイル装置の構成について図4に基づいて説明する。
【0041】
図4(A)に示すコイル装置30においては、下部固定具36が上部固定具35に係止される点で第1の実施形態と異なる。上部固定具35には下部固定具36の爪部37を係止するための凹部(不図示)を設けており、下部固定具36は上部固定具35にその爪部37を係止することでプリント基板1に対して相対的に固定される。これにより上部コア部材33と下部コア部材34とはコイルの磁心としてコイル装置を構成している。
【0042】
また、下部固定具36には、プリント基板31を介して爪部37に対向する位置に爪部38を設けており、この爪部38がプリント基板31の下面31Bに当接する。この爪部38は、下部固定具36をマウント装置などで上部固定具35に係止するときに下部固定具35の押し込み量を規制するものであり、これにより、上部固定具35に過度の力が加わって、上部固定具35とプリント基板1との溶着されている部分に破損が生じることがなくなる。なお、この爪部38と同様な構造を第1の実施形態で示したコイル装置10に適用してもよい。
【0043】
このコイル装置30の製造工程においても、マウント装置などの自動機や専用の自動機、リフロー炉などの既存の設備を用いて自動化ができる。
【0044】
なお、上部固定具35および下部固定具36に金属などの硬く剛性が高い材質を用いる場合には、下部固定具36を上部固定具35に係止するほうが、ガラスエポキシによるプリント基板31に係止するよりも破損が生じにくい。また、この場合にはプリント基板31と下部固定具36との接触が無く、プリント基板31が削れてかすが生じることも無い。したがって、そのかすが上部コア部材33と下部コア部材34とが当接する部分を汚す事がなくなり、製品の良品率を高めることができる。
【0045】
図4(B)に示すコイル装置40においては、上部固定具45が上部コア部材43の中央部分に弾性力をかける突起部49を備える点で第1の実施形態と異なる。上部固定具45は金属板を折り曲げて作製したものであり、平板状の天面部と、天面部の両端それぞれの脚部と、各脚部の先端を屈曲させて形成したはんだ付け部とから構成される。さらにこの天面部には、その中央付近に、上部コア部材43の天面形状よりも寸法が小さく上部コア部材43の天面と面接触するように平面状に窪んだ突起部49を設けている。上部固定具45の突起部49と下部固定具46により、上部コア部材43と下部コア部材44とが固定され、これにより上部コア部材43と下部コア部材44とをコイルの磁心としてコイル装置を構成している。
【0046】
このコイル装置40の製造工程においても、マウント装置、自動機、リフロー炉などの既存の設備を用いて自動化ができる。
【0047】
第1実施形態のように上部固定具に突起部が無い場合には、上部コア部材のエッジ部分(角部分)に集中荷重が加わり、ヒビや割れが生じることがあるが、この実施形態のように突起部49を設けることで上部コア部材43の中央部分に荷重が加わることになり、そのようなヒビや割れを防ぐことができる。このようにして、コイル装置としての信頼性や性能の安定性をさらに高めることもできる。
【0048】
なお、本実施形態では、突起部49の形状を平面状に窪んだものとしたが、この突起部の形状はここで示した形態に限らず、例えば複数の点状の突出部により接触するような構成や、複数の線状の突出部により接触するような構成など、様々な形態で同様の作用効果を奏することができる。また、ここでは、上部固定具45に突起部49を設ける形態を示したが、下部固定具46に突起部を設けても同様な作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来のコイル装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るコイル装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係るコイル装置の製造方法を説明する図である。
【図4】第2の実施形態に係るコイル装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1,31,41−プリント基板
2−コア孔
3,33,43−上部コア部材
4,34,44−下部コア部材
5,35,45−上部固定具
6,36,46−下部固定具
7−ペースト
10,30,40−コイル装置
37,38−爪部
49−突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの磁路となる位置に開口部分を設けたプリント基板と、前記プリント基板の開口部分に配置される上部コア部材と、前記上部コア部材のプリント基板逆面に配置される下部コア部材と、を備え、上部コア部材と下部コア部材とを前記開口部分を介して当接させて前記磁路を形成するコイル装置の製造方法において、
前記プリント基板との間で前記上部コア部材を保持するように前記プリント基板に上部固定具を固定する工程と、前記プリント基板逆面に載置した前記下部コア部材と前記上部固定具との間に前記上部コア部材を狭持するように下部固定具を固定する工程とを備えるコイル装置の製造方法。
【請求項2】
前記下部固定具を固定する工程は、前記下部固定具を前記プリント基板に係止する工程である請求項1に記載のコイル装置の製造方法。
【請求項3】
前記下部固定具を固定する工程は、前記下部固定具を前記上部固定具に係止する工程である請求項1に記載のコイル装置の製造方法。
【請求項4】
コイル配線の磁路となる位置に開口部分を設けたプリント基板と、前記プリント基板の開口部分に配置される上部コア部材と、前記上部コア部材の設けられた前記プリント基板の逆面に配置される下部コア部材と、を備え、上部コア部材と下部コア部材とを前記開口部分を介して当接させて前記磁路を形成するコイル装置において、
前記上部コア部材を前記プリント基板との間で保持する上部固定具と、前記上部固定具と前記下部コア部材との間に前記上部コア部材を狭持する下部固定具と、を備えるコイル装置。
【請求項5】
前記下部固定具は、前記プリント基板に係止されるものである請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記下部固定具は、前記上部固定具に係止されるものである請求項4に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記上部固定具もしくは前記下部固定具は、前記上部コア部材もしくは前記下部コア部材の中央部分に当接する突起部を備える請求項4〜6のいずれか1項に記載のコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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