説明

コイル装置及びコア付コイル装置

【課題】複数層に単位コイルを重ねる場合、各層を連結する巻線が、コイルの半径方向を横切ることがなく、コンパクトに製造できるコイル装置及びコア付コイル装置を提案する。
【解決手段】中央に開口部13を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した複数の平面状の単位コイルを重ねて構成したコイル装置10において、複数の単位コイルのうち直列接続される第1、第2の単位コイル11、12はそれぞれ内側に向かって左巻き及び右巻きとなって、第1、第2の単位コイル11、12の内側端の導線16は連結されて、第1、第2の単位コイル11、12の電流供給端となる導線14、15は、第1、第2の単位コイル11、12の外側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦巻き平面状に巻いた単位コイル(即ち、同一平面上で渦巻き状態に巻いたコイルをいう)を同心上に複数層重ねたコイル装置及びコア付コイル装置に関し、例えば、非接触で電力を供給する一次コイル、二次コイルに適したコイル装置及びコア付コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一次コイルに高周波電流を流し、少しの距離をおいて配置された二次コイルに誘導電圧を発生させ、移動車両などに電力を供給する装置が提案されている。そして、特許文献1の図2、図3には平面状で渦巻き状に巻いた単位コイルを直列に配置したコイルが提案されている。これによって、より狭い面積で磁束密度の高い磁場を発生させることができる。
【0003】
また、特許文献2には二次コイルを角巻として、E形コアに巻線を施した二次コイルが提案され、これによって、一次コイルからの磁束をより多く集めて高効率とした非接触電力供給装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4318742号公報(図2、図3)
【特許文献2】特開2010−273441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術においては、各単位コイルに渦巻き平面状に巻いた同一の単位コイルを使用しているので、単位コイルを複数重ねる場合には、一つの単位コイルの内側端部にある巻線を、次の層の単位コイルの外側端部に接続する必要がある(特許文献1の図2参照)。このため、2つの単位コイルを重ねると、各単位コイルの内側端部の線材が、コイルを半径方向に横切る必要があり、厚み方向に嵩張るという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術においては、特許文献1に記載のような渦巻き平面状のコイル(平面視して円形、矩形を含む)に鉄心(コア)を設ける場合、特殊な形状の鉄心を作る必要があり、鉄心の製造が困難であり、仮にできたとしても嵩張って大型となるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、複数層に単位コイルを重ねる場合、各層を連結する巻線(導線、線材)が、コイルの半径方向を横切ることがなく、コンパクトに製造できるコイル装置を提案することを第1の目的とする。
また、平面視して円形状又は矩形状に渦巻き平面状に巻いたコイルに鉄心(コア)を施す場合、複数の鉄心に分割して製造及び取り扱いを容易にしたコア付コイル装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した第1の目的に沿う第1の発明に係るコイル装置は、中央に開口部を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した複数の平面状の単位コイルを重ねて構成したコイル装置において、
前記複数の単位コイルのうち直列接続される第1、第2の単位コイルはそれぞれ内側に向かって左巻き及び右巻きとなって、前記第1、第2の単位コイルの内側端の導線は連結されて、前記第1、第2の単位コイルの電流供給端となる導線は、前記第1、第2の単位コイルの外側にある。
【0009】
前記した第2の目的に沿う第2の発明に係るコア付コイル装置は、中央に開口部を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した1層又は複数層にコイルを有するコイル装置と、該コイル装置によって発生する磁場を一方向に向けるコアとを有するコア付コイル装置において、
前記コアは前記コイル装置の束線方向(円周方向)に分割され、一方の磁極が前記コイル装置の内側にあって他方の磁極が前記コイル装置の外側にある断面コ字状の複数の分割コアからなっている。
【0010】
第2の発明に係るコア付コイル装置において、前記分割コアは平面視して矩形状となっていてもよいし、扇状となっていてもよい。
【0011】
また、第2の発明に係るコア付コイル装置において、前記コイル装置は、中央に開口部を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した複数の平面状の単位コイルを重ねて構成され、前記複数の単位コイルのうち直列接続される第1、第2の単位コイルはそれぞれ内側に向かって左巻き及び右巻きとなって、前記第1、第2の単位コイルの内側端の導線は連結されて、前記第1、第2の単位コイルの電流供給端となる導線は、前記第1、第2の単位コイルの外側にあるのが好ましい。
【0012】
そして、第2の発明に係るコア付コイル装置において、前記第1、第2の単位コイルは、それぞれ平面視して、円形、長円形(長尺のものも含む)、又は矩形に沿って渦巻き状に巻かれているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係るコイル装置は、直列接続される第1、第2の単位コイルがそれぞれ左巻き及び右巻きとなって、第1、第2の単位コイルの内側端の導線は連結されて、第1、第2の単位コイルの電流供給端となる導線は、第1、第2の単位コイルの外側にあるので、第1、第2の単位コイルを半径方向に横切る電線を極力少なくして、コンパクトなコイル装置とすることができる。
【0014】
また、第2の発明に係るコア付コイル装置は、コイルの束線方向に分割された分割コアを用いているので、個々の分割コアが小さくなり、しかも、標準化が可能となるので、安価に製造可能となる。
分割コアの使用数を変えることによって種々の大きさのコイルに適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るコイル装置の平面図、(B)は同正面図、(C)は図1(B)のA−A’断面図、(D)は図1(A)のB−B’断面図である。
【図2】(A)は本発明の第2の実施の形態に係るコア付コイル装置の平面図、(B)は同正面図、(C)は図2(A)におけるC−C’断面図である。
【図3】(A)は本発明の第3の実施の形態に係るコア付コイル装置の平面図、(B)は同正面図、(C)は図3(A)におけるD−D’断面図である。
【図4】本発明に係るコイル装置を適用した自動車の非接触電力供給装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1(A)〜(D)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るコイル装置10は、それぞれ中央に開口部13を備え、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した平面状の第1、第2の単位コイル11、12を重ねて2層にし、しかも第1、第2の単位コイル11、12は直列に接続されている。以下、これらについて詳しく説明する。なお、単位コイル11、12を形成する線材は絶縁被覆されて隣り合う線材(導線)の絶縁が保たれている。ここで、この絶縁された線材にリッツ線を使用することもできる。
【0017】
第1の単位コイル11は半径方向内側に向かって左巻きされて、その外側端部が電流供給端となる一方の導線(端子線)14となっている。一方、第1の単位コイル11の下側に位置する第2の単位コイル12は、図1(C)に示すように、半径方向内側に向かって右巻きとなってその外側端部が電流供給端となる他方の導線(端子線)15となっている。そして、第2の単位コイル12の内側は、第1の単位コイル11の内側導線16と一体となって連結されている。
【0018】
従って、このコイル装置10においては、上側の一方の導線14から第1の単位コイル11、内側導線16、第2の単位コイル12、下側の他方の導線15に向かって線材が繋がり、第1の単位コイル11、及び第2の単位コイル12によって発生する磁場が同一方向を向くように構成されている。更に、第1、第2の単位コイル11、12に給電する導線14、15はそれぞれ第1、第2の単位コイル11、12と同一高さ位置となるので、第1、第2の単位コイル11、12を半径方向に跨がる導線が無くなり、極めてコイル装置10がコンパクトとなる。
【0019】
このようなコイル装置10は、例えば、図4に示す非接触電力供給装置18に用いることができる。即ち、図4に示すように、複数の一次側コイル19〜21には、制御装置22内に設けられた図示しないインバータが接続され、10kHz〜100kHzの高周波電力を供給するようになっている。なお、各一次コイル19〜21には各一次コイル19〜21に電流を流すためのコンデンサ(図示せず)が接続され、各一次コイル19〜21とコンデンサで形成される共振周波数をインバータの発振周波数に近づけている。
【0020】
一方、車両の一例である自動車23の底部には、コイル装置10が配置され、一次コイル19〜21のいずれか1によって発生した交番磁場によって二次コイルとなるコイル装置10に電力を発生させている。この場合、二次コイルに更にコイルとコンデンサを直列に接続した共振コイルを設けることもできる。
コイル装置10によって発生した電力は図示しない制御部によって直流に変換され、自動車23に搭載されている電池を充電する。これによって、自動車23に搭載されている電池に非接触で充電することができる。なお、24は自動車23への充電状況を知らせる監視パネルを示す。
【0021】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係るコア付コイル装置26について説明する。図4に示す実施の形態においては、一次コイル19〜21から発生した磁場は一次コイル19〜21の上下方向に発するので、一次コイル19〜21の下側に導電体(例えば、加湿された土や、金属片)があると渦電流が発生して誘導加熱されるので、電力として損失を生じる。
【0022】
これを防止するため、例えば、一次コイル19〜21の底部及び側部にフェライトコア等を配置して漏れ磁束が生じないようにしている。更に、コイル装置10においても、上側が開放した状態では、例えば二次側に共振コイル等を設けると、発生する磁場の漏洩が減少する。
【0023】
図2(A)〜(C)にはこのような目的に適したコア付コイル装置26を示すが、コイル装置10の内側の開口部13と外側領域を跨いで、平面視して矩形状で断面コ字状の複数の分割コア27が束線方向に設けられている。この分割コア27はコア装置10の側部(内側と外側)に当接又は近接する磁極28、29とこの磁極28、29を繋ぐヨーク30とを有し、これらによって形成される溝内にコイル装置10の第1、第2の単位コイル11、12が嵌入している。
これらの分割コア27は例えばフィライトコアからなって、同一形状のものが複数使用されている。
【0024】
これによって、コイル装置10の磁場は一方向(この実施の形態では下側)に集中するので、これを一次コイル又は二次コイルに使用しても、効率のよい磁気回路を構成できる。なお、コイル装置10に、第1、第2の単位コイル11、12の他に共振コイルを別途設けることも可能である。
【0025】
次に、図3を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係るコア付コイル装置32について説明するが、第2の実施の形態に係るコア付コイル装置26と相違する点は、各分割コア33がコイル装置10の中心を通る半径線によって円周方向に複数に分割されており、各分割コア33が平面視して扇状になっていることである。
【0026】
従って、各分割コア33は円周方向に幅広の磁極34と、円周方向に幅狭の磁極35と、これらを連結するヨーク36とを有している。これによって、より強固にコイル装置10から発生する磁束を一方向に向けて、非接触電力供給装置の電力変換効率を高めることができる。
【0027】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
例えば、前記実施の形態においては、コイル装置は上下に重なる第1の単位コイル、第2の単位コイルによって構成されていたが、更に多くの単位コイルを重ねることもできる。この場合、単位コイルを偶数層とすることによって、コイル装置に電力を供給する端部側導線をコイル装置の外側から出すことができる。
また、前記実施の形態において、第1、第2の単位コイルは、それぞれ平面視して円形に沿って渦巻き状に巻かれていたが、長円形又は矩形に沿って渦巻き状に巻いてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10:コイル装置、11:第1の単位コイル、12:第2の単位コイル、13:開口部、14、15:導線、16:内側導線、18:非接触電力供給装置、19〜21:一次コイル、22:制御装置、23:自動車、24:監視パネル、26:コア付コイル装置、27:分割コア、28、29:磁極、30:ヨーク、32:コア付コイル装置、33:分割コイル、34、35:磁極、36:ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した複数の平面状の単位コイルを重ねて構成したコイル装置において、
前記複数の単位コイルのうち直列接続される第1、第2の単位コイルはそれぞれ内側に向かって左巻き及び右巻きとなって、前記第1、第2の単位コイルの内側端の導線は連結されて、前記第1、第2の単位コイルの電流供給端となる導線は、前記第1、第2の単位コイルの外側にあることを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
中央に開口部を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した1層又は複数層にコイルを有するコイル装置と、該コイル装置によって発生する磁場を一方向に向けるコアとを有するコア付コイル装置において、
前記コアは前記コイル装置の束線方向に分割され、一方の磁極が前記コイル装置の内側にあって他方の磁極が前記コイル装置の外側にある断面コ字状の複数の分割コアからなることを特徴とするコア付コイル装置。
【請求項3】
請求項2記載のコア付コイル装置において、前記分割コアは平面視して扇状となっていることを特徴とするコア付コイル装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載のコア付コイル装置において、前記コイル装置は、中央に開口部を有し、同一高さ位置で渦巻き状に巻回した複数の平面状の単位コイルを重ねて構成され、前記複数の単位コイルのうち直列接続される第1、第2の単位コイルはそれぞれ内側に向かって左巻き及び右巻きとなって、前記第1、第2の単位コイルの内側端の導線は連結されて、前記第1、第2の単位コイルの電流供給端となる導線は、前記第1、第2の単位コイルの外側にあることを特徴とするコア付コイル装置。
【請求項5】
請求項4記載のコア付コイル装置において、前記第1、第2の単位コイルは、それぞれ平面視して、円形、長円形、又は矩形に沿って渦巻き状に巻かれていることを特徴とするコア付コイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51285(P2013−51285A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187667(P2011−187667)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(596014221)株式会社ヘッズ (7)
【出願人】(591221916)有限会社日本テクモ (13)