説明

コイル装置

【課題】優れた放熱性能を有するフローティング構造のコイル装置を提供する。
【解決手段】コイルが巻回されたコアと、コアをベースに対して位置決め固定する固定具とを備える。コアは、コイルの軸方向外側から内側へ突出する一対の突出部を備え、一対の突出部には、コイルの下面が載置されることで、ベースの上面に対するコイルの下面の位置を決める座面が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアを備えたコイル装置に関連し、特にコイル装置をケースに収容したときに、コアがコイルをケースに対して非接触に支持可能なコイル装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、交流成分に対して誘導性リアクタンスを与える受動素子であり、様々な用途に使用されている。近年実用化が進むハイブリッド自動車や電気自動車においても、駆動システムに大容量のリアクトルが使用されている。このような大容量のリアクトルは、使用中の発熱量が大きいため、通常はコイルとコアから構成されるリアクトル本体が放熱ケース内に収容され、コアの温度上昇による特性劣化が防止される。しかしながら、リアクトル本体を放熱ケースに接触させた状態で直接固定すると、リアクトル本体で発生する振動が放熱ケースを介して外部へ伝わるため、振動・騒音の原因となる。
【0003】
特許文献1には、リアクトル本体を外部構造体(例えば放熱ケース)に直接接触させず、板ばね部材を介して固定する取り付け構造(以下「フローティング構造」という。)が開示されている。フローティング構造を採用することで、リアクトル本体から外部へ伝わる振動を軽減することができる。
【0004】
このようなフローティング構造では、リアクトル本体と放熱ケースが直接接触しないため、通常はリアクトル本体と放熱ケースとの隙間に比較的に熱伝導性の良い充填剤を充填させ、作動中にリアクトル本体で発生した熱をこの充填剤を介して放熱ケースに放出させる。この場合、充填剤層の熱伝達速度が最も遅く、充填剤層の厚さ、すなわちリアクトル本体と放熱ケースとの間隔がリアクトルの放熱性能を決定付ける。従って、フローティング構造のリアクトルの放熱性能を向上させるためには、リアクトル本体と放熱ケースとの距離を、非接触状態を確保しつつ、なるべく短くすることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−26952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フローティング構造のリアクトル本体と放熱ケースとの距離を短くするために有効な具体的構成は十分に検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るコイル装置は、略板状のベースの上面に沿って該ベースと非接触にコイルを配置するよう構成されたコイル装置であって、コイルが巻回されたコアと、コアをベースに対して位置決め固定する固定具と、を備え、コアは、コイルの軸方向外側から内側へ突出する一対の突出部を備え、一対の突出部には、コイルの下面が載置されることで、ベースの上面に対するコイルの下面の位置を決める座面が形成される。
【0008】
この構成により、ベースの上面に対するコイルの下面の位置が、コアの座面において位置決めされる。そのため、コイルの加工精度が低くても、例えばコイルを天井部で支持する構成と比べて、ベースに対するコイルの下面の位置精度が格段に高くなる。従って、ベース上面とコイル下面との隙間を狭く設定することが可能になり、この隙間に充填される樹脂を介したコイルからベースへの放熱速度が上がり、コイル装置の放熱性能が向上する。
【0009】
コアは、コイルの軸と垂直に下方へ延び、コイルを軸方向両端から挟み込むことでコイルを軸方向において位置決めする一対のフランジ部を更に備え、突出部は、一対のフランジ部の下端からそれぞれ突出してもよい。
【0010】
この構成により、コイルを軸方向に位置決めするフランジ部により、コイルの下方に配置する突出部を支持することができるため、突出部の支持構造を別途設ける必要がない。従って、コイルを軸方向に位置決めする機能と、高さ方向に位置決めする機能との、2つの機能をシンプルな構造で実現することができる。
【0011】
コアの上面には突起部が形成され、突起部は、コイルが下方に撓んだときに、コイルの内周面の天井部と当接して、コイルの下面がベースへ接近するのを阻止してもよい。
【0012】
この構成により、振動等によるコイルの撓みによる、コイル下面の位置精度の低下を防止することができる。
【0013】
ベースの上面には、突出部と対向する位置に凹部が形成されていてもよい。
【0014】
この構成により、突出部を凹部内に退避させることができ、突出部を厚く形成しても、コイル下面とベース上面との隙間を狭く設定することが可能になる。
【0015】
コアは、磁性体から形成されたコア本体と、コア本体を覆う絶縁被覆とを有し、フランジ部及び突出部は絶縁被覆と同一材料で形成されてもよい。
【0016】
この構成により、例えば樹脂の射出成型により絶縁被覆、フランジ部及び突出部を一括して効率的に成形することができる。
【0017】
ベースはコア及びコイルを収容するケースの底面であってもよい。
【0018】
この構成により、モールド型を使用せずに、ベースとコイル及びコアの隙間に充填剤を充填することができる。また、コイルの下面だけでなく側面からも効率的に放熱できるようになり、高い放熱特性が得られる。
【発明の効果】
【0019】
放熱ベースに対してコイルの下面を精度良く位置決めできるため、コイルの下面と放熱ベースの上面との隙間を狭く設定することができ、リアクトルの放熱性能を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリアクトルの分解図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリアクトルの平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】図3におけるB−B断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るリアクトル本体の分解図である。
【図7】本発明の実施形態に係るU型コアユニットの正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るI型コアユニットの正面図である。
【図9】図3におけるC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るリアクトル1について、図面を参照しながら説明する。図1、図2及び図3は、それぞれリアクトル1の斜視図、分解図及び平面図である。また、図4及び図5は、それぞれ図3のA−A断面図及びB−B断面図である。なお、以下の説明において、図1における左下側から右上側に向かう方向を幅方向(X軸方向)、右下側から左上側に向かう方向を奥行方向(Y軸方向)、下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸方向)と定義する。また、Z軸正方向を上側、Z軸負方向を下側と呼ぶ。なお、リアクトル1を使用する際には、リアクトル1をどのような方向に向けて配置してもよい。
【0022】
図1及び図2に示されるように、リアクトル1は、コイル10とコア20から構成されるリアクトル本体1a、放熱ケース50、リアクトル本体1a(直接的にはコア20)を放熱ケース50に固定する一対のコア固定具30、サーミスタ40、及び端子台60を備えている。本実施形態のリアクトル1には、リアクトル本体1aが放熱ケース50と直接接触しない状態で放熱ケース50内に取り付けられる、フローティング構造が採用されている。すなわち、リアクトル1のX軸方向両端に取り付けられたコア固定具30は、放熱ケース50と直接接触せずに浮いた状態で放熱ケース50内に収容されたリアクトル1を支持する。なお、コア固定具30は、ステンレス鋼板から形成された金具であり、リアクトル本体1aが発生する振動(特に騒音の原因となる高周波成分の振動)を緩和し、ケースに伝わり難くする形状に成形されている。従って、この支持構造により、リアクトル本体1aで発生した振動は、減衰されずに直接放熱ケース50に伝わることはなく、コア固定具30により緩和されるため、リアクトル1から外部へ伝わる騒音や振動は大幅に軽減される。また、外部から放熱ケース50が受ける衝撃もコア固定具30により緩和されるため、リアクトル1は優れた耐衝撃性を備えている。また、放熱ケース50にリアクトル本体1aが固定された後、放熱ケース50内の隙間には比較的に柔らかく熱伝導性の良好な樹脂である充填材(付図示)が充填される。これにより、リアクトル本体1aから放熱ケース50への振動伝搬を防ぎつつ、必要な放熱性能が確保される。また、作動中のリアクトル本体1aの温度はサーミスタ40によって検出される。
【0023】
図6は、リアクトル本体1aの分解図である。コア20は、2つのU型コアユニット220と4つのI型コアユニット240とを、ギャップ部材20gを介して貼り合わせて略O字形に形成したリングコアである。図7はU型コアユニット220の正面図であり、図8はI型コアユニット240の正面図(背面図を兼ねる)である。なお、U型コアユニット220及びI型コアユニット240は、後述するように、それぞれ磁性体で形成された分割コア断片を絶縁樹脂により被覆したものである。また、各コアユニットの被覆には、コイルを位置決めして支持するための各種構造が形成されている。すなわち、各コアユニットの被覆はボビンの機能を有しており、コア20は磁性体から形成されるコア本体と絶縁樹脂製のボビンが一体成形されたものである。
【0024】
ギャップ部材20gは、所定の厚さを有する非磁性体の板である。本実施形態のギャップ部材20gは、アルミナから形成されているが、他の種類のセラミックスや樹脂から形成されてもよい。
【0025】
U型コアユニット220は、1つのU字状に形成された圧粉磁心であるU型コア断片20uを、射出成形(インサート成形)により樹脂で被覆したものである。なお、U型コア断片20uは、磁路が通過しない側面のみが樹脂で被覆され、ギャップ部材20gと対向するギャップ面20a、20bは樹脂で被覆されずに露出している。なお、本実施形態では、U型コアユニット220の被覆樹脂として、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用されているが、絶縁性を有する他の種類の樹脂を使用してもよい。また、U型コア断片20uには、ケイ素鋼板やフェライトを使用してもよい。
【0026】
U型コアユニット220のU字の各端部には、I型コアユニット240と接合するための接合構造が、露出したギャップ面20a、20bを囲む被覆樹脂部に形成されている。また、ギャップ面20aの周辺と、ギャップ面20bの周辺では、接合構造は異なる形状に形成されている。図7において右側に配置されたギャップ面20aを囲む被覆の外周部には、X軸方向に突出した板状の突出部224a、b、c、dが形成されている。また、図7におけるギャップ面20aの左端上部と突出部224dの間には、X軸方向へ突出したギャップ部材支持部226が形成されている。また、ギャップ面20aの右端下部と突出部224bの間にも、X軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成されている。更に、ギャップ面20aの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部227が、X軸方向に突出している。ギャップ部材支持部226及び227のX軸方向の寸法(ギャップ面20aから突出する高さ)は、ギャップ部材20gの厚さよりも若干薄く設定されている。ギャップ部材20gは、ギャップ部材支持部226及び227によって囲まれる空間に配置され、ギャップ部材支持部226及び227によって側面から挟持され、位置決めされる。なお、以下の説明において、このようにギャップ面を囲む被覆樹脂に突出部224a、b、c、d及びギャップ部材支持部226、227が形成されたコアユニットの端面形状を「凸型コア端面形状」と呼ぶ。
【0027】
一方、図7において左側に配置されたギャップ面20bを囲む被覆の外周部には、突出部224a、b、c、dにそれぞれ対応した形状を有する凹部225a、b、c、dが形成されている。また、ギャップ面20bの左端上部と凹部225bの間にはX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成され、右端下部と凹部225dの間にもX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成されている。更に、ギャップ面20bの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部227が、X軸方向に突出している。なお、以下の説明において、このようにギャップ面20bを囲む被覆樹脂に凹部225a、b、c、d及びギャップ部材支持部226、227が形成されたコアユニットの端面形状を「凹型コア端面形状」と呼ぶ。突出部224a、b、c、d、凹部225a、b、c、d及びギャップ部材支持部226、227の詳細な機能については後述する。
【0028】
図2に示されるように、U型コアユニット220のX軸方向外側面220m(接合構造を有しない側面)には、コア固定具30を取り付けるための雌ねじを有する1対のブラケット221が形成されている。また、図6及び図7に示されるように、U型コアユニット220の下面及びY軸方向と垂直な両側面からは、それぞれ板状のフランジ部222及び223が略垂直に突出して形成されている。フランジ部222の下端には、各ギャップ面20a、20bの中心の略直下より、X軸方向内側(コイル10が配置される側)へ突出する2つのコイル支持部222aがそれぞれ形成されている。また、U型コアユニット220のX軸方向内側面220nのY軸方向中央部からは、ZX平面と平行に広がる平板状のセンサ支持部228が略垂直に突出して形成されている。更に、U型コアユニット220の上面からは、後述するサーミスタ40のリード44を巻き付けるためのセンサリード巻き付け部229が突出して形成されている。センサリード巻き付け部229の上部には、リード44を差し込むためのY軸方向に延びるスリット229sが形成されている。またスリット229sの入り口には、リード44をスリット229sから外れ難くする狭窄部229nが形成されている。フランジ部222、コイル支持部222a及びセンサリード巻き付け部229の詳細な機能については後述する。
【0029】
I型コアユニット240は、1つの直方体状に形成された圧粉磁心であるI型コア断片20iを、インサート成形により樹脂で被覆したものである。I型コア断片20iも、磁路が通過しない周面のみが樹脂で被覆され、ギャップ部材20gと面するギャップ面20c、20dは樹脂で被覆されずに露出している。I型コアユニット240の被覆部は、U型コアユニット220の被覆部と同じ樹脂で形成されている。
【0030】
ギャップ面20c及び20dは、それぞれI型コアユニット240のX軸方向の各端面に形成されている。図6及び図8に示されるように、I型コアユニット240の一方のギャップ面20cの周囲の被覆は、上述したU型コアユニット220のギャップ面20aの周囲と同じ凸型コア端面形状に形成されている。具体的には、ギャップ面20cを囲む被覆の外周部は、X軸方向に突出して、板状の突出部244a、b、c、dを形成している。また、図8におけるギャップ面20cの左端上部と突出部244dの間には、X軸方向に突出したギャップ部材支持部246が形成されている。また、ギャップ面20cの右端下部と突出部244bの間にも、X軸方向に突出したギャップ部材支持部246が形成されている。更に、ギャップ面20cの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部247が、X軸方向に突出している。
【0031】
また、I型コアユニット240の上面には、Y軸方向中央に、コイル10の自重による撓みを防ぐため2つのコイル支持突起248が形成されている。
【0032】
一方、I型コアユニット240の他方のギャップ面20d周辺の樹脂被覆は、上述したU型コアユニット220のギャップ面20bの周囲と同じ凹型コア端面形状に形成されている。具体的には、ギャップ面20dを囲む被覆の外周面には、突出部244a、b、c、dにそれぞれ対応した形状を有する凹部245a、b、c、dが形成されている。また、ギャップ面20dの左端上部と凹部245bの間にはX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成され、右端下部と凹部245dの間にはX軸方向に突出したギャップ部材支持部226が形成されている。更に、ギャップ面20dの右上端部及び左下端部の付近には、それぞれ略L字状のギャップ部材支持部227が、X軸方向に突出している。
【0033】
なお、本実施形態においては、I型コアユニット240の突出部244a〜dの形状及びギャップ面20cに対する配置は、U型コアユニット220の突出部224a〜dの形状及びギャップ面20aに対する配置と同じである。同様に、I型コアユニット240の凹部245a〜dの形状及びギャップ面20dに対する配置は、U型コアユニット220の凹部225a〜dの形状及びギャップ面20b対する配置と同じである。また、ギャップ部材支持部226及び227の形状及びギャップ面に対する配置は、U型コアユニット220のギャップ面20a、20b及びI型コアユニット240のギャップ面20c、20dにおいて共通である。
【0034】
U型コアユニット220のギャップ面20a及びI型コアユニット240のギャップ面20cの周囲に形成された凸型コア端面形状と、U型コアユニット220のギャップ面20b及びI型コアユニット240のギャップ面20dの周囲に形成された凹型コア端面形状は、ギャップ面同士及び介在するギャップ部材20gのYZ面方向の位置決めをしつつ、各ギャップ面の間でギャップ部材20gが隙間に挟み込まれるように構成されている。例えば、ギャップ部材20gを介してU型コアユニット220のギャップ面20aとI型コアユニット240のギャップ面20dとを突き合わせると、ギャップ面20aの周囲に形成された突出部224a、b、c、dは、ギャップ面20dの周囲に形成された凹部245a、b、c、dにそれぞれ収容される。これにより、ギャップ面20aとギャップ面20dとのY方向及びZ方向の位置決めがなされる。
【0035】
また、ギャップ部材支持部226と246、227と247は、それぞれ同じ形状を有し、各接合面における配置も同じである。また、各接合面における各ギャップ部材支持部の配置は、図7及び図8において左右非対称になっている。例えば、図7の右側の接合面において、対称面C(互いに面対称の関係にある突出部224bと224dの対称面)に対する各ギャップ部材支持部226、227の対称な位置226’、227’には、ギャップ部材支持部は形成されていない。この構成により、凸型コア端面形状と凹型コア端面形状とを突き合わせたときに、各端面形状のギャップ部材支持部間の干渉が生じることがない。すなわち、U型コアユニット220のギャップ面20aにI型コアユニット240のギャップ面20dを突き合わせたときに、ギャップ面20dの周囲に形成されたギャップ部材支持部226、227は、ギャップ面20aの周囲のギャップ部材支持部226、227が配置されていない空間に収容され、ギャップ面20a及びギャップ面20dの周囲のギャップ部材支持部226、227は互いに重ならない。このため、各ギャップ部材支持部226、227を、ギャップ部材20gと同程度まで厚く形成することができる。コア20の組み立て時に、例えばU型コアユニット220(又はI型コアユニット240)のギャップ部材支持部226と227の間にギャップ部材20gを挟持させるため、ギャップ部材支持部226、227を厚く形成した方がギャップ部材20gの挟持が確実になり、組み立て作業が容易になる。また、ギャップ部材支持部226、227はギャップ部材20gよりも若干薄く形成されているため、ギャップ部材20gのギャップ面20a及び20dとの密着を阻害することがない。更に、ギャップ部材20gの周縁部は、各ギャップ部材支持部226及び227によりY軸方向及びZ軸方向の両側から挟持されるため、ギャップ部材20gはギャップ面20a及び20dに対してY軸方向及びZ軸方向の位置決めがなされる。
【0036】
また、図7に示されるように、ギャップ面20aの周囲には、一対のギャップ部材支持部226及び227が、ギャップ面20aの中心点Cに対して点対称の位置にそれぞれ形成されている。この配置により、ギャップ部材20gは、ギャップ部材支持部226及び227により、重心を挟んで両側から安定に保持される。更に、ギャップ面20aの周囲に形成されたギャップ部材支持部226及び227は、図7に示される対称面C(互いに面対称の関係にある突出部224aと224cの対称面)に対しても非対称に配置されている。この構成により、中心点Cに対して点対称の位置に一対のギャップ部材支持部を配置しても、凸型コア端面形状と凹型コア端面形状とを突き合わせたときに、各端面形状のギャップ部材支持部間の干渉が生じることがない。
【0037】
コイル10は、平角エナメル線から形成された2つの直線コイル部10a、10bを平行に配置して、巻き始め(図6における左下端)同士を連結させた構造を有している。各直線コイル部10a、10bの中空部には、2個のI型コアユニット240が連結して形成されるコア20の2つの直線部のそれぞれが収容される。
【0038】
放熱ケース50には、コア固定具30を取り付けるためのねじ穴52fを有する台座52と、端子台60を取り付けるためのねじ穴54が形成されている。また、放熱ケース50の内側底面には、内側底面側に突出したコイル支持部222aとの接触を防止するために、コイル支持部222aと対向する位置に凹部56が形成されている。
【0039】
次に、リアクトル本体1aの組み立ての手順を説明する。まず、一方のU型コアユニット220のギャップ面20a及び20bに接着剤を塗布して、それぞれにギャップ部材20gを載せる。具体的には、各ギャップ部材支持部226及び227で囲まれた空間に各ギャップ部材20gを差し込む。次に、ギャップ面20aに載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これに1つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dを重ねる。また、ギャップ面20bに載せたギャップ部材20gの露出面にも接着剤を塗布し、これに2つ目のI型コアユニット240のギャップ面20cを重ねる。
【0040】
次に、1つ目のI型コアユニット240のギャップ面20c及び2つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dに接着剤を塗布して、それぞれにギャップ部材20gを載せる。そして、ギャップ面20cに載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これに3つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dを重ねる。また、ギャップ面20dに載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これに4つ目のI型コアユニット240のギャップ面20cを重ねる。更に、3つ目のI型コアユニット240のギャップ面20c及び4つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dに接着剤を塗布して、それぞれにギャップ部材20gを載せる。
【0041】
この段階で、コア20は、U型コアユニット220のギャップ面20a及び20bの上に2つずつI型コアユニット240を積み重ねて形成された2つの平行な直線部を有する、X軸方向に細長いU字形に形成されている。次に、コア20の2つの直線部を、コイル10の2つの直線コイル部10a、10bの中空部に差し込む。そして、3つ目のI型コアユニット240のギャップ面20c及び4つ目のI型コアユニット240のギャップ面20dにそれぞれ載せたギャップ部材20gの露出面に接着剤を塗布し、これらに2番目のU型コアユニット220のギャップ面20b及び20aをそれぞれ重ね、組み立てられたコア20にX軸方向両側から所定の圧縮荷重(接着荷重)を加えた状態で接着剤を硬化させる。接着荷重は、接着層厚が所定範囲内となるように適宜設定される。
【0042】
このようにして組み立てられたリアクトル本体1aにおいて、コイル10はX軸方向両端で2つのU型コアユニット220のフランジ部222及び223により挟まれ、コア20に対してX軸方向で位置決めされる(図2)。
【0043】
また、コイル10の各直線コイル部10a、10bの下端は、X軸方向両端の下面において、フランジ部222の下端から延びるコイル支持部222aにより下方から支持され、コイル支持部222aと当接する下面において、コア20に対して(延いてはコア20が固定される放熱ケース50の内側底面に対して)Z軸方向に位置決めされている。この構成により、リアクトル1の放熱性能が飛躍的に向上している。この効果について、次に詳細に説明する。
【0044】
図5に示されるように、本発明の実施形態に係るリアクトル1は、リアクトル本体1aが放熱ケース50と接触しないように支持されたフローティング構造を有している。作動時にコア20で発生した熱の大部分は、コイル10と放熱ケース50との隙間に充填される充填剤を介して放熱ケース50に伝達され、外部へ放熱される。充填剤には比較的に熱伝導性の良い樹脂が使用されているが、充填剤で充填された隙間は放熱経路の中では最も熱の伝達速度が遅い箇所であり、充填剤層の厚さがリアクトル1の放熱性能を決定付ける。従って、リアクトル1の放熱性能を向上させるためには、コイル10と放熱ケース50との隙間の寸法を出来るだけ小さく設定する必要がある。コイル10と放熱ケース50との隙間Gの設定値は、リアクトル1を構成する各部材の寸法精度、組み立て精度、充填剤の流動性、及び作動中の振動や外部から受ける衝撃によるコア20の変位量等のパラメータによって決定される。これらのパラメータのうち、加工精度の低い曲げ加工によって形成されるコイル10の寸法精度が、コイル10と放熱ケース50との隙間Gの設定値を大きくする主要因となる。
【0045】
本実施形態のように、コイル10が放熱ケース50から浮いたフローティング構造において、コイル10に起因する隙間Gの誤差を最小化するためには、ケース50の内側底面に対するコイル10の下面の位置決め誤差を最小化することが必要になる。また、コイル10の幅寸法(図5における高さ方向の寸法)には大きなバラツキがあるため、例えばコイル10を上部で支持する(すなわちコイル10の上部を基準にコイル10を位置決めする)よりも、コイル10を下部で支持する(すなわちコイル20の下部を基準に位置決めする)方が、放熱ケース50の内側底面に対してコイル10の下面を高い精度で位置決めすることができる。従って、本実施形態のようにコイル10の下面をコイル支持部222aにより下方から支持する構成により、コイル10は下面において放熱ケース50に対して位置決めされるため、放熱ケース50の内側底面に対するコイル10の下面の位置決め精度が高くなり、隙間Gの値を小さく設定することが可能になる。本実施形態の構成は、例えば、コア20の上面にコイル支持突起248のようなコイル10の上部内周面を下方から支持する座面を設け、この座面のみでコイル10を支持して位置決めする構成と比べて、放熱ケース50に対するコイル10の下面のZ軸方向における位置決め誤差(標準偏差)を約50%低減する。
【0046】
なお、本実施形態のコイル支持突起248は、コイル10の撓みによる位置決め精度の低下を防止するための補助的な構成であり、例えば衝撃等により大きな撓みがコイルに発生した場合に、コイル10の上部内周面を下方から支持して、コイルと放熱ケース50との接触を防止する。コイル10の撓みが大きくない場合は、コイル10はコイル支持突起248には支持されず、コイル支持部222aのみに支持される。
【0047】
次に、サーミスタ40の固定構造を説明する。図9は、図3におけるC−C断面図である。リアクトル1のY軸方向の略中央には、各U型コアユニット220からX軸方向内側に対向して突出するセンサ支持部228が配置されている。センサ支持部228は、ZX平面と平行に広がる平板状の樹脂部であり、コイル10の2つの直線コイル部10aと10bの隙間にそれぞれ配置される。センサ支持部228は、U型コアユニット220の本体部からX軸方向に突出した長方形状の支持板228aと、支持板228aのX軸方向先端における上下端部からそれぞれX軸方向へ更に突出する突出部228b及び壁部228cを有している。また、一対のセンサ支持部228は図9において左右対称に形成されており、突出部228b及び壁部228cはX軸方向に対向して形成されている。一対の支持板228a、突出部228b及び壁部228cによって囲まれた配置空間S内にサーミスタ40のセンサヘッドが配置される。
【0048】
図9に示されるように、サーミスタ40は、サーミスタ素子(不図示)を金属管で収容したシース部(センサヘッド)42と、シース部42の一端(基端部42b)から延びる一対のリード44を備えている。リード44は、シース部42の重量を支持できる程度の剛性を有しており、根元(シース部42の基端部42b付近)でJ字状に折り返されている。サーミスタ40のシース部42は、2つのU型コアユニット220のセンサ支持部228で囲まれた配置空間S内に配置される。また、リード44は、突出部228b間を通って配置空間の外部へ引き出されて、U型コアユニット220の上面に形成されたセンサリード巻き付け部229に絡げられ、更にリアクトル1の外部へ引き出されて、図示しない温度計測器に接続される。
【0049】
サーミスタ40は、リアクトル本体1aが組み立てられた後に、リアクトル本体1aに装着される。サーミスタ40は、予めリード44を根元でJ字状に折り曲げた状態にして装着される。装着作業は一定の剛性を有するリード44を操作することで行われる。まず、リード44を押し込み、シース部42を基端部42b側から突出部228b間を通して配置空間S内に導入する。次に、シース部42の先端を一方(図9中左側)の支持板228aの端面に沿って上方へ移動させ、シース部42の先端部42aを突出部228bに当接させる。更に、張力を加えながらリード44を引っ張ると、シース部42の先端部42aを軸にシース部42が回転し、リード44のU字状屈曲部44aが他方(図9中右側)の支持板228aの端面に当接する。U字状屈曲部44aが他方の支持板228aと当接することにより、シース部42の回転が阻止され、静止する。この状態でリード44を緩まないようにセンサリード巻き付け部229に巻き付けると、シース部42は図9で示される配置空間S内の所定の位置に固定される。
【0050】
一対の突出部228bの先端間の間隔(開口幅W1)は、シース部42及びJ字状に折り返したリード44が通過できる広さを有している。具体的には、開口幅W1は、リード44がシース部42に沿って折り返された部分における、シース部42とリード44の外側側面間の幅Fよりも広く形成されている。これにより、シース部42及び折り返したリード44を、突出部228b間を通して配置空間S内に導入することを可能にしている。更に、開口幅W1は、シース部42の先端42aからリード44のU字状屈曲部44aまでの長さLよりも狭くなっている。これにより、一度配置空間S内に入ったシース部42は、配置空間Sから外へ容易に抜け出ることができない。
【0051】
また、一対の壁部228cは、それぞれX軸方向に長く延び、先端間の間隔(隙間幅W2)は、シース部42が通過できない程度に狭くなっている。具体的には、隙間幅W2は、シース部42と折り返したリード44との全体の幅Fよりも狭く形成されている。これにより、サーミスタ40が放熱ケース50と接触して導通することが防止される。
【0052】
また、配置空間Sにおける突出部228bの先端から対角までの距離(対角深さD)は、シース部42の先端42aからリード44のU字状屈曲部44aまでの長さLよりも長くなっている。これにより、シース部42及びリード44のシース部42に沿って折り返された部分を配置空間Sに収容することを可能にしている。
【0053】
また、一対の支持板228aの間隔(配置空間幅W3)は、シース部42の先端42aからリード44のU字状屈曲部44aまでの長さLよりも短くなっている。シース部42の先端42aが、共に隅部を構成する一方の支持板228a及び突出部228bの端面に、当接した状態でリード44が引っ張られると、シース部42の先端42aを軸として配置空間S内でシース部42が回転する。しかし、配置空間幅W3が長さLよりも短い場合は、他方の支持板228aにリード44のU字状屈曲部44aが当接し、更なる回転が阻止され、サーミスタ40は配置空間S内に固定される。
【0054】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0055】
上記の実施形態においては、コイル支持部222aはX軸方向に比較的に短く形成され、コイル10を各直線コイル部10a、10bのX軸方向両端部のみで支持しているが、コイル支持部222aの大きさや形状は、上記の実施形態のものに限定されない。例えば、コイル支持部222aを各直線コイル部10a、10bのX軸方向中央付近まで延長し、各直線コイル部10a、10bの略全長がいずれかのコイル支持部222aで支持される構成としてもよい。また、コイル支持部222aの幅(Y軸方向寸法)も、コイル10の外径と同じ程度まで、あるいはコイル10の底面が略平面状に形成された部分の幅と同じ程度まで広げてもよい。逆に、コイル支持部222aのY軸方向寸法を更に短くしてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態においては、コイル支持部222aは、横方向(XY平面と平行)に広がる平板状の部分であるが、縦方向(ZX平面と平行)に広がる平板状部分としてもよい。また、X軸方向に延びる円柱形状としてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態においては、コイル支持部222aは、各直線コイル部に対して一対ずつ(両端に一つずつ)設けられているが、一つの直線コイル部に対して3つ以上設けられてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態においては、各I型コアユニット240の上面のY軸方向中央部に、X軸方向に延びる2つの細長いコイル支持突起248が形成されているが、コイル支持突起248の数や形状はこの構成に限定されない。例えば、各I型コアユニット240の上面にX軸方向全長にわたって延びる1本(又は複数本)のコイル支持突起248が形成されてもよい。また、短い多数のコイル支持突起248がX軸方向に一列(又は複数列)に並んで形成されてもよい。また、上記の実施形態のコイル支持突起248は、幅(Y軸方向)が狭く形成されているが、例えば直線コイル部の内周上面が略平面状に形成された部分の幅と同じ程度まで広げてもよい。
【0059】
また、上記に説明した実施形態は、本発明をリアクトルに適用した例であるが、別の種類のコイル装置(例えばトランス)にも本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 リアクトル
10 コイル
12、14 リード部
20 コア
20g ギャップ部材
220 U型コアユニット
20u U型コア断片
221 ブラケット
222 フランジ部(コイル位置決め部)
222a コイル支持部
223 フランジ部(コイル位置決め部)
224a〜d 突出部
225a〜d 凹部
226 ギャップ部材支持部
227 ギャップ部材支持部
228 センサ支持部
228a 支持板
228b 突出部
228c 壁部
240 I型コアユニット
20i I型コア断片
244a〜d 突出部
245a〜d 凹部
246 ギャップ部材支持部
247 ギャップ部材支持部
30 コア固定具
44 リード
44a U字状屈曲部
50 ケース
52 台座
52f ねじ穴
54 ねじ穴
60 端子台
62、64 バスバー
72 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状のベースの上面に沿って該ベースと非接触にコイルを配置するよう構成されたコイル装置であって、
前記コイルが巻回されたコアと、
前記コアを前記ベースに対して位置決め固定する固定具と、を備え、
前記コアは、前記コイルの軸方向外側から内側へ突出する一対の突出部を備え、
前記一対の突出部には、前記コイルの下面が載置されることで、前記ベースの上面に対する前記コイルの下面の位置を決める座面が形成された、ことを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記コアは、前記コイルの軸と垂直に下方へ延び、該コイルを軸方向両端から挟み込むことで該コイルを軸方向において位置決めする一対のフランジ部を更に備え、
前記突出部は、前記一対のフランジ部の下端からそれぞれ突出する
ことを特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記コアの上面には突起部が形成され、
前記突起部は、前記コイルが下方に撓んだときに、前記コイルの内周面の天井部と当接して、前記コイルの下面が前記ベースへ接近するのを阻止する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記ベースの前記上面には、前記突出部と対向する位置に凹部が形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記コアは、磁性体から形成されたコア本体と、前記コア本体を覆う絶縁被覆とを有し、
前記フランジ部及び前記突出部は前記絶縁被覆と同一材料で形成される、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ベースは前記コア及び前記コイルを収容するケースの底面である、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191139(P2012−191139A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55710(P2011−55710)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)