説明

コイル装置

【課題】本体部を本体部収容ケース内に位置決めするのに好適なコイル装置を提供する。
【解決手段】絶縁部材で覆われたコアと、コアの中央部外周を絶縁部材の上から巻回するコイルと、コイルが巻回されていないコアの両端部を覆う絶縁部材上に形成された所定の位置決め面26aを有する凸部26とを有する本体部と、内壁面上の、位置決め面に対応する位置に当付面51を有する本体部収容ケースとを備え、本体部を本体部収容ケースに収容すると、位置決め面26aが当付面51に当て付けられて、本体部が本体部収容ケース内の所定位置に配置されるようにコイル装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱ケースを備えたコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のコイル装置(例えばリアクトル)においては、コアとコイルを備える本体部が放熱ケースに収容され固定される。本体部を固定する際には、コイル装置の振動特性を改善するため、本体部と放熱ケースとの隙間に樹脂等の充填剤が充填される。
【0003】
しかし、充填剤は熱の伝達速度が遅いため、コアの鉄損や銅損による発熱を外部へ効率的に逃がすうえで妨げとなる。コイル装置の振動特性を良好に維持しつつ放熱性能の低下を抑えるためには、本体部を放熱ケースに収容したときの本体部と放熱ケースとの隙間を狭く設定し、放熱性能のボトルネックである充填剤層の厚みをできるだけ薄くすることが望ましい。そのためには、放熱ケース内における本体部の位置決め機構が重要である。例えば特許文献1に記載のコイル装置は、U字コアの外周面又はU字コアに対応するケースの凹溝部の内壁面に接着剤を塗布したうえで、U字コアを凹溝部に嵌め込んで位置決めするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−351675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、U字コア外周面と凹溝部内壁面との間には、部品の製造誤差に依存して意図しない微小な隙間が生じる。この隙間に接着剤が回り込んでいないと、放熱特性の悪い空気層になってしまう。また、U字コア外周面と凹溝部内壁面との接触面にムラが多いほどU字コア外周面と凹溝部内壁面とが振動により衝突した際の騒音が大きい。振動や熱衝撃等によって接着剤の剥離が進行し、時間の経過と共に熱・振動特性が劣化する虞もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係るコイル装置は、以下のような本体部と本体部収容ケースを備える。本体部は、絶縁部材で覆われたコアと、コアの中央部外周を絶縁部材の上から巻回するコイルと、コイルが巻回されていないコアの両端部を覆う絶縁部材上に形成された、所定の位置決め面を有する凸部を有する。本体部収容ケースは、内壁面上の、位置決め面に対応する位置に当付面を有する。本体部を本体部収容ケースに収容すると、位置決め面が当付面に当て付けられて、本体部が本体部収容ケース内の所定位置に配置される。
【0007】
本発明に係るコイル装置によれば、絶縁部材上の凸部によって本体部の位置決めを行うと、本体部収容ケースとの距離(隙間)を設計上管理しやすい。本体部と本体部収容ケースとの隙間を精度良く設計できるため、充填剤の流入経路が確保され、充填ムラ(例えば空気層)による放熱特性の部分的な劣化が避けられる。また、本体部と本体部収容ケースとの接触面積を絶対的に小さくできるため、本体部と本体部収容ケースとが振動により衝突する際の騒音が大幅に抑えられると共に振動や熱衝撃等による充填剤の剥離も有効に抑えられる。
【0008】
コイルは、第一軸、第二軸、第三軸により規定される直交座標系において、第二軸と第三軸により規定される平面とほぼ平行な平面内で巻回された巻線が第一軸に沿って連続している構成としてもよい。この場合、凸部は、少なくとも第二軸方向に突出し、位置決め面は、第二軸方向において当付面と当接する。
【0009】
本発明に係るコイル装置は、例えば本体部を本体部収容ケースに対して第三軸方向に沿って近付けて収容する構成となっており、当付面と対向する凸部の一部の面は、装置組立時の作業性を高めるべく、当付面への位置決め面の第三軸方向に沿った移動をガイドするテーパ面としてもよい。
【0010】
コアは、例えば、両端部が一対の略U字形状部であり、中央部が一対の略U字形状部を連結する一対の直線部であって、一対の直線部の各々にコイルが巻回されたリングコアである。この場合、凸部は、一対の略U字形状部の各々の曲面を覆う絶縁部材上に形成されている。
【0011】
凸部の幅(第三軸方向)は、充填剤の流入経路の確保のため、略U字形状部の曲面の幅(第三軸方向)よりも狭く設定されてもよい。
【0012】
本体部は、位置決め面と当付面とのはめあいにより本体部収容ケース内に位置決めと同時に固定されてもよい。
【0013】
本発明に係るコイル装置は、本体部収容ケース内に位置決めされた本体部を固定する固定具を備えた構成としてもよい。
【0014】
絶縁部材は、インサート成形によりコアと一体に成形されてもよい。この構成によれば、部品点数を削減できると共に絶縁部材のコアへの取り付け作業が不要になる。
【0015】
上記の課題を解決する本発明の別の形態に係るコイル装置は、以下のような本体部、本体部収容ケース、固定具を備える。本体部は、絶縁部材で覆われたコアと、コアの中央部外周を絶縁部材の上から巻回するコイルと、コアの中心軸を挟んで位置する、コイルが巻回されていないコアの両端部を覆う絶縁部材上に形成された、所定の位置決め面を有する少なくとも一対の凸部を有する。本体部収容ケースは、内壁面上の、位置決め面に対応する位置に当付面を有する。固定具は、本体部を本体部収容ケースに対して固定する。本体部を本体部収容ケースに収容すると、各位置決め面が対応する当付面に当て付けられて、本体部収容ケース内における本体部の少なくともコアの中心軸と直交する一方向の動きが規制される。固定具は、位置決め面と当付面との当て付けでは規制できない本体部の残りの方向の動きを規制する。
【0016】
両端部の各々は、例えばコアの中心軸を挟んで位置する一対の側面部を有する。この場合、凸部は、両端部の各々の各側面部に少なくとも一つずつ形成されている。
【0017】
固定具は、本体部収容ケース内で本体部を位置決め面と当付面との当て付けでは規制できない残りの方向に付勢する付勢部材としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本体部を本体部収容ケース内に位置決めするのに好適なコイル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリアクトルの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリアクトルの平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】図3におけるB−B断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る放熱ケース単体の上面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るリアクトル本体単体の上面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るリアクトル本体単体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るリアクトル1について図面を参照しながら説明する。図1〜図3はそれぞれ、リアクトル1の斜視図、分解斜視図、平面図である。図4は、図3におけるA−A断面図であり、図5は、図3におけるB−B断面図である。以下の説明においては、図1における右下側から左上側に向かう方向を奥行き方向(X軸方向)と定義し、X軸方向に直交しかつ左下側から右上側に向かう方向を幅方向(Y軸方向)と定義し、X軸及びY軸の二方向に直交しかつ下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸方向)と定義する。なお、リアクトル1を使用する際には、リアクトル1をどの方向に向けて配置してもよい。
【0021】
図1又は図2に示すように、リアクトル1は、コイル10、コアモジュール20、固定具30A、30B、放熱ケース50、端子台60を備えている。コイル10とコアモジュール20によってリアクトル本体15が構成される。
【0022】
コアモジュール20は、2つの略U字状に形成されたU型コアユニット20Aと20Bを備えている。U型コアユニット20A、20Bはそれぞれ、磁性体で形成されたコアブロック21A、21Bを射出成形(インサート成形)により絶縁性を有する樹脂で被覆した構成を有している。樹脂は、磁束が通過しない側面のみ被覆し、磁束が通過するU字の先端面(直線部の端面であって他方のU型コアユニットとの連結面)を被覆していない。U型コアユニット20A、20Bの被覆樹脂には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の耐熱樹脂が使用される。各コアブロック21A、21Bには、圧粉磁心が使用されている。圧粉磁心は、電磁鋼板やフェライト等の別の材料に代えてもよい。なお、被覆樹脂は、コアとコイルとの電気的絶縁を確保するために従来使用されていた絶縁ボビンの代替であり、絶縁ボビンとコアを一体に形成したものに相当する。
【0023】
コアモジュール20は、U型コアユニット20Aと20BのU字の先端面同士をギャップ部材(コイル10が巻回されているため図面上不可視)を介して突き合わせて接着剤で貼り合わせることにより、略O字形のリングコアを構成している。ギャップ部材は、例えば非磁性体(アルミナ等の各種セラミックスや樹脂等)の板材である。
【0024】
U型コアユニット20Aは、互いに平行に配置されたX軸方向に延びる略直方体状の一対の直線部(コイル10が巻回されているため図面上不可視)を備え、一対の直線部の端部を連結部24Aで連結した構成を有している。U型コアユニット20Aの側面には、被覆樹脂で形成されたフランジ部25Aが設けられている。フランジ部25Aは、YZ平面に広がる板状部分であり、連結部24Aと直線部との境界をなす平面上に配置されている。U型コアユニット20BもU型コアユニット20Aと同様に、一対の直線部を連結部24Bで連結した構成を有し、側面にフランジ部25Bが設けられている。なお、本実施形態のリングコアはU型コアユニット20Aと20Bの2ピース構成であるが、別の実施形態では3ピース以上の部品で構成されてもよい。例えば連結部24A、24Bと直線部を別部品とし、連結部24A、24B、一対の直線部からなる4ピース構成としてもよい。
【0025】
コイル10は、同一構造の直線コイル部12、14を平行に並べて一端同士を連結線16で連結した構成を有している。直線コイル部12、14は、平角エナメル線を一巻き当たり4箇所で直角方向に折り曲げて略正方形状に巻いたものである。
【0026】
U型コアユニット20A(又は20B)の一対の先端面(直線部の端面)の各々にギャップ部材を載せて直線部をコイル10の2つの直線コイル部12、14の中空部にそれぞれ差し込んだ後、コイル10の反対側からU型コアユニット20B(又は20A)の各直線部を各中空部に差し込み、ギャップ部材を介してU型コアユニット20Aと20Bの先端面同士を突き合わせて接着すると、リアクトル本体15が完成する。コイル10は、U型コアユニット20Aのフランジ部25Aと、U型コアユニット20Bのフランジ部25Bとの間に挟み込まれ、コアモジュール20に対するX軸方向の位置が決まる。
【0027】
上記のように組み立てられたリアクトル本体15は、放熱ケース50内に収容され、固定具30A及び30Bにより放熱ケース50に固定される。具体的には、放熱ケース50は、熱伝導性が高く軽量な金属(例えばアルミニウム合金)で形成された略直方体の収容スペースを有する部材である。固定具30A、30Bは共に、ステンレス板のプレス加工により成形された部材である。固定具30A、30Bをそれぞれボルトで放熱ケース50に固定すると、リアクトル本体15(直接的にはコアモジュール20)は、固定具30A及び30Bの弾性力により放熱ケース50の下面及び内側面(図2における右下側の内側面)に強く押さえ付けられて放熱ケース50に固定される。
【0028】
放熱ケース50にリアクトル本体15が固定された後、比較的に柔らかく熱伝導性の高い樹脂である充填材(便宜上不図示)が放熱ケース50内の隙間に充填される。これにより、リアクトル本体15の必要な放熱性能が確保されつつリアクトル本体15から放熱ケース50への振動伝搬が軽減される。
【0029】
放熱ケース50の縁部の一端には、ボルトにより端子台60が取り付けられる。端子台60は、バスバー62a、62bを備えている。バスバー62a、62bはそれぞれ、コイル10のリード部121、141と溶接される。
【0030】
作動時にコアブロック21A、21Bで発生した熱の大部分は、リアクトル本体15と放熱ケース50との隙間に充填される充填剤を通じて放熱ケース50に伝達され、外部へ放熱される。充填剤によって充填された隙間は、放熱経路の中では最も熱の伝達速度が遅い箇所である。そのため、充填剤層の厚さがリアクトル1の放熱性能を決める主要因の一つとなっている。リアクトル1の振動特性を良好に維持しつつ放熱性能の低下を抑えるためには、リアクトル本体15を放熱ケース50に収容したときのリアクトル本体15と放熱ケース50との隙間を狭く設定し、充填剤層の厚みをできるだけ薄くすることが望ましい。そのため、リアクトル本体15は、放熱ケース50内に精確に位置決めされる。なお、リアクトル本体15と放熱ケース50との隙間(充填剤層の厚み)の設定値は、リアクトル1を構成する各部材の寸法精度、組み立て精度、充填剤の流動性、作動中の振動や外部から受ける衝撃によるコアモジュール20の変位量等のパラメータを総合的に考慮したうえで決定される。
【0031】
リアクトル本体の位置決め・固定方法には、特許文献1に記載されたものの他、次に掲げるものがある。例えば、放熱ケース内の隙間に充填剤を注入する前に、放熱ケースの内側面に設けられたリブをコア表面に直接押し当ててリアクトル本体の位置を固定する方法が考えられる。しかし、リブが押し当てられるコア表面にストレスが集中的にかかるため、コアが損傷する虞がある。また、絶縁ボビンのフランジ部を伸ばして放熱ケースに当て付けることで放熱ケース内におけるリアクトル本体の位置を固定する方法も考えられる。しかし、フランジ部は樹脂の薄板形状であるため、高精度に成形するのが難しいと共に耐荷重性・耐衝撃性が低いという問題がある。
【0032】
そこで、本実施形態においては、リアクトル本体15を放熱ケース50内に次の通りに位置決めして固定することで、リアクトル1の振動特性を良好に維持しつつ放熱性能の低下を抑えている。
【0033】
図6は、放熱ケース50単体の上面図である。図7、図8はそれぞれ、リアクトル本体15単体の上面図、側面図である。図3又は図6に示されるように、放熱ケース50が有する略直方体の収容スペースの内側面の四隅にXZ平面と平行な当付面51が形成されている。また、図7に示されるように、連結部24Aの側面の左右の曲面部の各々に位置決め凸部26(被覆樹脂)が形成されている。連結部24Bにも連結部24Aと同様の位置に一対の位置決め凸部26が形成されている。すなわち、位置決め凸部26は、リアクトル本体15の中心軸AXを挟んで位置する連結部24A及び24Bの各曲面上に合計で4つ配置されている。なお、リアクトル本体15の中心軸AXは、図3のB−B断面内に含まれるX軸方向の軸線である。各位置決め凸部26にはXZ平面と平行な位置決め面26aが形成されている。図8に示されるように、位置決め凸部26の下面は、テーパ状に形成されたテーパ面26bとなっている。
【0034】
各当付面51の上部に位置する放熱ケース50の内側面は、緩やかに傾斜しているか又は位置決め凸部26に対して逃げ形状となっている。リアクトル本体15を放熱ケース50の内底面に向けて下降させると、4つのテーパ面26bの各々が放熱ケース50の内側面に当たってリアクトル本体15の収容をラフにガイドする。この状態でリアクトル本体15を放熱ケース50の内底面に向けて押し込むと、内側面の各隅において位置決め面26aが当付面51に当て付けられて面接触しながら内底面側(Z軸方向)に押し込まれる。連結部24A及び24Bの下面が放熱ケース50の受け面52に当て付けられるまでリアクトル本体15を押し込むことで、放熱ケース50内におけるリアクトル本体15の位置が締結部材等を用いることなく簡易かつ精確に決まり、放熱ケース50へのリアクトル本体15の収容が完了する。更に固定具30A及び30Bをそれぞれボルトで放熱ケース50に固定して充填剤を充填すると、リアクトル本体15が放熱ケース50内で固定される。
【0035】
なお、位置決め面26aと当付面51の位置寸法は、はめあい公差(中間ばめ又はしまりばめ)で規定されてもよい。この場合、位置決め面26aと当付面51とが接触したときに位置決め凸部26又は放熱ケース50の側壁面が弾性変形し、位置決め凸部26を通じてリアクトル本体15にY軸方向の適度な締め付け力が働く。締め付け力の設定次第では、Y軸方向だけでなくX軸方向やZ軸方向のリアクトル本体15の動きも強固に規制することができる。すなわち、リアクトル本体15は、受け面52、固定具30A、30Bがない場合であっても、放熱ケース50内に固定することができる。
【0036】
位置決め凸部26によりリアクトル本体15が精確に位置決めされるため、放熱ケース50との隙間を狭く設定することができる。隙間は、一部(連結部24A及び24Bの下面と受け面52との接触箇所、及び位置決め面26aと当付面51との接触箇所)を除き、リアクトル本体15の略全周に亘って確保される。充填剤がリアクトル本体15の略全周に亘る狭い隙間に流れ込むため、リアクトル1の振動特性を良好に維持しつつも放熱性能の低下が好適に抑えられる。
【0037】
本実施形態においては、リアクトル本体15と放熱ケース50との距離(隙間)を位置決め凸部26の高さ寸法(Y軸方向)で規定できるため、当該隙間を設計上管理しやすい。リアクトル本体15と放熱ケース50との隙間を精度良く設計できるため、充填剤の流入経路が確保され、充填ムラ(例えば空気層)による放熱特性の部分的な劣化が避けられる。また、リアクトル本体15と放熱ケース50との接触面積を絶対的に小さくできるため、リアクトル本体15と放熱ケース50とが振動により衝突する際の騒音が大幅に抑えられると共に振動や熱衝撃等による充填剤の剥離も有効に抑えられる。また、被覆樹脂の一部として形成された位置決め凸部26が当付面51に当て付けられるため、コアブロック21A又は21Bに対する直接的な外部ストレスが有効に避けられる。そのため、コアブロック21A又は21Bの損傷リスクが大幅に軽減される。
【0038】
フランジ部25A及び25Bには、直線コイル部12及び14のX軸方向の動きを規制する役割がある。この役割を果たすため、フランジ部25A及び25Bにはコイル径以上の高さ(Z軸方向)及び幅(Y軸方向)が求められる。そのため、フランジ部25A及び25Bは、薄板形状にならざるを得ない。また、フランジ部25A及び25Bを放熱ケース50に当て付けて位置決めする場合、フランジ部25Aは、コイル10周りと連結部24A周りとの隙間を分断し、フランジ部25Bは、コイル10周りと連結部24B周りとの隙間を分断する。そのため、充填剤がリアクトル本体15の全周に回り込まない。これに対して、位置決め凸部26の高さや幅の各寸法には下限に関する制限が特にない。そのため、位置決め凸部26は、耐荷重性・耐衝撃性、及び充填剤の流入経路を確保するため、フランジ部25A及び25Bよりも幅(Z軸方向)が狭いと共に所定の基準面(直線コイル部12又は14の巻線軸を含む平面)からの高さ(Y軸方向)が低く抑えられている。位置決め凸部26は、幅(Z軸方向)に関しては、連結部24Aの曲面の幅(Z軸方向)に対しても狭い。
【0039】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0040】
位置決め面26aは、上記の実施形態ではコアモジュール20の各曲面上に合計で4つ配置されているが、別の実施形態では5つ以上配置されてもよい。また、リアクトル本体15を位置決めする機能を実現するためには、当付面51に対してはめあいの関係にある位置決め面26a(例えば位置決め面26aが半球状の凸面で当付面51が半球状の凹面)が少なくとも一つあればよい。
【0041】
上記の実施形態は、本発明をリアクトルに適用した例であるが、別の種類のコイル装置(例えばトランス)にも本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 リアクトル
10 コイル
20 コアモジュール
26 位置決め凸部
26a 位置決め面
26b テーパ面
30A、30B 固定具
50 放熱ケース
51 当付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材で覆われたコアと、
前記コアの中央部外周を前記絶縁部材の上から巻回するコイルと、
前記コイルが巻回されていない前記コアの両端部を覆う前記絶縁部材上に形成された、所定の位置決め面を有する凸部と、
を有する本体部と、
内壁面上の、前記位置決め面に対応する位置に当付面を有する本体部収容ケースと、
を備え、
前記本体部を前記本体部収容ケースに収容すると、前記位置決め面が前記当付面に当て付けられて、該本体部が該本体部収容ケース内の所定位置に配置されることを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記コイルは、第一軸、第二軸、第三軸により規定される直交座標系において、該第二軸と該第三軸により規定される平面とほぼ平行な平面内で巻回された巻線が該第一軸に沿って連続している構成であり、
前記凸部は、少なくとも前記第二軸方向に突出し、
前記位置決め面は、前記第二軸方向において前記当付面と当接することを特徴とする、請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記本体部を前記本体部収容ケースに対して前記第三軸方向に沿って近付けて収容する構成となっており、
前記当付面と対向する前記凸部の一部の面は、該当付面への前記位置決め面の前記第三軸方向に沿った移動をガイドするテーパ面であることを特徴とする、請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記コアは、前記両端部が一対の略U字形状部であり、前記中央部が該一対の略U字形状部を連結する一対の直線部であって、該一対の直線部の各々に前記コイルが巻回されたリングコアであり、
前記凸部は、前記一対の略U字形状部の各々の曲面を覆う前記絶縁部材上に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第三軸方向において、前記凸部の幅は、前記曲面の幅よりも狭いことを特徴とする、請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記本体部は、前記位置決め面と前記当付面とのはめあいにより前記本体部収容ケース内に固定されることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記本体部を前記本体部収容ケースに対して固定する固定具を備えることを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記絶縁部材は、インサート成形により前記コアと一体に成形されていることを特徴とする、請求項1から請求項7の何れか一項に記載のコイル装置。
【請求項9】
絶縁部材で覆われたコアと、
前記コアの中央部外周を前記絶縁部材の上から巻回するコイルと、
前記コアの中心軸を挟んで位置する、前記コイルが巻回されていない該コアの両端部を覆う前記絶縁部材上に形成された、所定の位置決め面を有する少なくとも一対の凸部と、
を有する本体部と、
内壁面上の、各前記位置決め面に対応する位置に当付面を有する本体部収容ケースと、
前記本体部を前記本体部収容ケースに対して固定する固定具と、
を備え、
前記本体部を前記本体部収容ケースに収容すると、各前記位置決め面が対応する前記当付面に当て付けられて、該本体部収容ケース内における該本体部の少なくとも前記中心軸と直交する一方向の動きが規制され、
前記固定具は、前記位置決め面と前記当付面との当て付けでは規制できない前記本体部の残りの方向の動きを規制することを特徴とするコイル装置。
【請求項10】
前記両端部の各々は、前記中心軸を挟んで位置する一対の側面部を有し、
前記凸部は、前記両端部の各々の各前記側面部に少なくとも一つずつ形成されていることを特徴とする、請求項9に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記固定具は、前記本体部収容ケース内で前記本体部を前記残りの方向に付勢する付勢部材であることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載のコイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227493(P2012−227493A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96447(P2011−96447)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)