説明

コイル部品並びにそれを用いた給電装置及び充電装置

【課題】 磁性シートの飽和抑制を行なうことができると同時に、さらに
磁気シールド性能に優れたコイル部品を提供する。
【解決手段】 環状のコイルと、前記コイルの厚さ方向の一方側に対置された第一の磁性シートと、磁気吸着手段を備えるコイル部品であって、
前記磁気吸着手段は、コイルの内周側、外周側の少なくとも一方の側面側に配置され、
前記磁気吸着手段の前記厚さ方向の一方側に第二の磁性シートが配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルと磁気シールドを必要とする用途やコイルとヨークを必要とする用途等に広く適用できるコイル部品に関する。例えば、一次コイルと二次コイルによって、非接触状態で充電を可能とする非接触充電のシステムに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、小型情報通信機器の高性能化、高機能化が進められており、特に、携帯電話、Web端末、ミュージックプレイヤー等の携帯機器は利便性のため、長時間での連続使用が求められている。これら小型情報通信機器では電源としてリチウムイオン電池などの二次電池が使用されている。この二次電池の充電方法には受電側の電極と給電側の電極とを直接接触させて充電を行う接触充電方式と、給電側と受電側の両方に伝送コイルを設け、電磁誘導を利用した電力伝送によって充電する非接触充電方式とがある。非接触充電方式は給電装置と充電装置を直接接触させるための電極が必要ないため、同じ給電装置を用いて異なる充電装置に充電することも可能である。また、非接触充電方式は、電極腐食の問題や電極同士の接触不良の問題を回避できるなどの利点もある。
【0003】
非接触充電方式において、一次コイルに発生した磁束は給電装置と充電装置の筐体を介して二次コイルに起電力を発生させることで給電が行われる。但しこの伝送コイルのみでは十分な伝送効率が得られないため、伝送コイルに対して、給電装置と充電装置の接触面とは反対側に磁性シートが設置される。コイルと磁性シートを備えるコイル部品において、磁性シートには以下のような役割がある。第一の役割は、磁気シールド材としての役割である。非接触充電装置の充電作業中に発生した漏れ磁束が二次電池を構成する金属部材などの他の部品に流れると、これらの部品が渦電流によって発熱する。磁性シートは、磁気シールド材としてこの発熱を抑制できる。磁性シートの第二の役割は、充電中にコイルで発生した磁束を還流させるヨーク部材として作用することである。
【0004】
コイルと磁性シートを備えたコイル部品の具体例として、例えば特許文献1には、スパイラルコイルと二次電池の間に磁性箔体が配置された充電装置が開示されている。
【0005】
非接触充電装置は充電効率を高めるために、一次コイルと二次コイルの中心軸が一致するようにすることが好ましい。特許文献2はその解決策として、給電装置の給電面及び充電装置の充電面の裏側にそれぞれ永久磁石を取り付け、一次コイルと二次コイルの中心軸が一致するように磁気吸着により両者を位置決めするための取付手段を有する非接触充電アダプタを開示している。取り付け手段は、装置の外周に沿って環状に延在するように組合せた細いL字型の二つの永久磁石からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/080820公報
【特許文献2】特開2009−159677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のように磁気吸着手段により一次コイルと二次コイルの位置決めを行なうことは構造の簡略化に有効である。しかし、特許文献2は永久磁石から出る磁束をシールドする点については記載がない。携帯電子部品などの精密機器は、磁束の影響を受けやすい電子回路や磁気メモリなどが使用されているため、コイルだけでなく永久磁石などの磁気吸着部材から出る磁束をシールドすることも重要である。
【0008】
本発明は、磁気吸着部材に対する磁気シールド性能を向上したコイル部品を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコイル部品は、環状のコイルと、前記コイルの厚さ方向の一方側に対置された第一の磁性シートと、磁気吸着手段を備えるコイル部品であって、前記磁気吸着手段は、コイルの内周側、外周側の少なくとも一方の側面側に配置され、前記磁気吸着手段の前記厚さ方向の一方側に第二の磁性シートが配置されていることを特徴とする。第二の磁性シートにより、磁気吸着手段のシールド性能を高めることができる。
第二の磁性シートは、厚さ方向に見て、第一の磁性シートと重ならない領域に配置されていることが好ましい。コイル部品の低背化が可能となり、かつ第一の磁性シートでシールドできない磁気吸着部材の磁束を第二の磁性シートで効果的にシールドできる。磁気吸着手段は、コイルの内周側、外周側の少なくとも一方の側面側に配置されているため、コイル部品の低背化を行なうことができる。
【0010】
前記第二の磁性シートは、前記第一の磁性シートに対して前記第1の磁性シートの面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置されていることが好ましい。これにより、第一の磁性シートが磁気飽和するのを抑制できるので、磁性シートの透磁率が低下することを抑制でき、充電効率を向上させることができる。
【0011】
前記磁気吸着手段は、前記第一の磁性シートに対して前記第1の磁性シートの面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置されていることが好ましい。これにより、第一の磁性シートが磁気飽和するのを抑制できるので、磁性シートの透磁率が低下することを抑制でき、充電効率を向上させることができる。
【0012】
前記第一の磁性シートは、厚さ方向に見てコイルの中央部に穴が形成されていることが好ましい。
コイル中央に穴を形成することで、コイル中央に磁気吸着手段を配置してコイル中央部で充電装置と給電装置の位置決めが容易になると共に、第一の磁性シートが磁気吸着手段からの磁束により磁気飽和することを抑制できる。
【0013】
前記第二の磁性シートは、厚さ方向に見て、その少なくとも一部が前記磁気吸着手段の外縁よりも外側に張り出していることが好ましい。外側に張り出すことで、磁気吸着手段からの磁束をシールドする面積が増え、シールド性能が向上する。
【0014】
前記第二の磁性シートは、前記コイルの側面と前記磁気吸着手段の間の少なくとも一部に折り込まれるように形成された屈折部を有することが好ましい。屈折部により、磁気吸着手段の側面もシールドされるため、シールド性能を高めることができる、また、屈折部を備える第二の磁性シートがカップ型ヨークの役割を果たして給電装置と充電装置の間に働く磁気吸着力を高めることができる。また、磁気吸着手段からの磁束がコイルの後面側に流れるのを抑制でき、第一の磁性シートが磁気飽和し難い状態となる。そのため、第一の磁性シートの透磁率の低下を抑えられるので、ヨークとしての機能が十分に得られ、電力伝送効率の低下を極力抑制することができる。
【0015】
前記磁気吸着手段は前記コイルの厚さ方向の他方側に平坦な前面が形成され、前記屈折部はその先端が磁気吸着手段の前面と同じ高さになるように形成されていることが好ましい。屈折部が磁気吸着手段の一端からその厚みの途中までしか覆わない形態よりも、上記のシールド性能の向上、磁気吸着力の向上の効果が得られ、また、伝送効率の低下をさらに抑制することができる。
【0016】
本発明の給電装置は、前記コイル部品を備える構造とすることができる。前記コイル部品を用いることでシールド性能の向上を図ることができる。
また、本発明の充電装置は、前記コイル部品を備える構造とすることができる。前記コイル部品を用いることでシールド性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第一の磁性シートだけでなく第二の磁性シートを用いることによって磁気吸着手段からの磁束をシールドできるので、従来よりも高いシールド性能をもつコイル部品を提供できる。さらには、かかるコイル部品を利用した給電装置および充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コイル部品の実施形態を示す図である。
【図2】図1のコイル部品を用いた給電装置と充電装置を示す図である。
【図3】別のコイル部品の実施形態を示す図である。
【図4】別のコイル部品の実施形態を示す図である。
【図5】さらに別のコイル部品の実施形態を示す図である。
【図6】非接触充電装置に用いる給電装置の一例を示す分解斜視図である。
【図7】非接触充電装置に用いる充電装置の一例を示す分解斜視図である。
【図8】非接触充電装置の回路の一例を示すブロック図である。
【図9】比較用の給電装置と充電装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願人は、上記問題を解決するために、図9に示すような、磁性シート1c、1dに穴を形成し、この穴に面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置された磁気吸着手段2c、2dを具備する構造を着想し、出願している。上記構造により、磁性シート1c、1dと磁気吸着手段2c、2dの間に磁気ギャップを設けることで、磁性シートの磁気飽和を抑制し、高い伝送効率を持つ非接触充電装置を製造することができる。本発明は、基板8c、8d側に漏洩する磁束のシールド特性をさらに高めることを検討した。
【0020】
以下、本発明に係るコイル部品、給電装置および充電装置の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施形態において説明する構成は、他の実施形態の趣旨を損なわない限りにおいて他の実施形態においても適用することが可能であり、その場合、重複する説明は適宜省略する。
【0021】
本発明を適用し得る非接触充電装置は図8に示す回路構成を有する。給電装置20は、交流電流を供給する給電部21と、交流電流を直流電流に整流するために給電部21に接続された整流回路22と、直流電流を入力して所定周波数の高周波電流に変換するスイッチング回路23と、高周波電流が流れるようにスイッチング回路23に接続された一次コイル201と、スイッチング回路23と同じ周波数で共振するように一次コイル201に並列接続された共振用コンデンサ26と、スイッチング回路23に接続された制御回路24と、制御回路24に接続された制御用二次コイル25とを具備する。制御回路24は、制御用二次コイル25から得られる誘導電流に基づきスイッチング回路23の動作を制御する。
【0022】
充電装置30は、一次コイル201から発生した磁束を受ける二次コイル301と、二次コイル301に接続された整流回路32と、整流回路32に接続された二次電池33と、二次電池33の電圧から蓄電状況を検出するために二次電池33に接続された電池制御回路34と、電池制御回路34に接続された制御用一次コイル35とを具備する。二次コイル301には共振用コンデンサ(図示せず)を並列接続しても良い。整流された電流は、二次電池33に蓄電される他、電子回路や駆動部材(図示せず)等に利用される。電池制御回路34は、二次電池33の蓄電状況に応じて最適な充電を行うための信号を制御用一次コイル35に流す。例えば、二次電池33がフル充電になった場合、その情報の信号を制御用一次コイル35に流し、制御用一次コイル35に電磁結合する制御用二次コイル25を介して信号を給電装置20の制御回路24に伝える。制御回路24はその信号に基づきスイッチング回路23をOFFにする。
【0023】
図2は非接触充電装置に用いる給電装置20および充電装置30を示す断面図である。非接触充電装置の具体例は、例えば携帯通信端末とその充電器である。給電装置20および/または充電装置30に本発明に係るコイル部品を備える。充電装置には携帯端末など、受電機能を備えた電子機器本体も含まれる。交流電源6に接続される給電装置20は回路部7を有する。回路部7は、交流電流を整流する整流回路、整流された直流電流を所定の周波数の高周波電流に変換するスイッチング回路を備える。回路部7から出力された高周波電流は一次コイルであるコイル3aに流れる。コイル3aは共振用コンデンサ(図示せず)に接続され、スイッチング回路によって変換される所定周波数と同じ周波数で共振する。給電装置20はスイッチング回路の動作を制御するための制御回路が備えられていても良い。
【0024】
充電装置30は、二次コイルであるコイル3bを備える。共振用コンデンサを配置することで共振回路を構成できる。コイル3bには、整流回路(図示せず)を介して二次電池4に接続されており、電磁誘導によってコイル3bに誘起された誘導電流は整流回路で整流され、二次電池4が充電される。
【0025】
給電装置20および充電装置30は樹脂等の非磁性の筐体(破線部)に収容される。給電装置20の筐体は平坦な給電面203を有し、充電装置30の筐体も平坦な受電面303を有する。非接触充電装置は、給電面203と受電面303を対向させて充電を行う。給電装置と充電装置とは、磁石等の磁気吸着手段2a、2bを用いて互いに位置決め、固定される。上記コイル3a、3bは、その巻回軸が前記平坦面に垂直になるように(平面状のコイルの面が前記平坦面に平行になるように)筐体の内側に配置される。コイル3a、3bの、前記平坦面の反対側には、それぞれ第一の磁性シート1−1a、1−1bが隣接して配置される。筐体内部には、例えば樹脂基板などの基板8a、8bが配置される。磁性シート1−1a、1−1bは、二次電池4等を設置した基板8a、8bとコイル3a、3bとの間において、その主面がコイル3a、3bと重なるように、または覆うように配置される。したがって、コイル3a、3bによって発生した磁束が第一の磁性シート1−1a、1−1bに収束して通るようになり、磁性シートが磁気ヨークまたは磁気シールドとして機能する。また、コイルと重ならない位置に磁気吸着手段2a,2bが配置される。上記のコイル、第一の磁性シート、磁気吸着手段に加え、第二の磁性シートを備えるコイル部品について、以下具体的に説明する。
【0026】
簡単化のために、給電装置20、充電装置30において一次コイル、磁気吸着手段及び磁性シートの各々の給電面203側の面を「前面」と呼び、給電面203と反対側の面を「後面」と呼ぶ。また充電装置30において二次コイル、磁気吸着手段及び磁性シートの各々の受電面303側の面を「前面」と呼び、受電面303と反対側の面を「後面」と呼ぶ。さらに各コイルの巻回軸方向、磁気吸着手段及び磁性シートの厚さ方向を単に「厚さ方向」と呼ぶ。なお、請求項で記載する「厚さ方向の一方」は、コイル部品を給電装置20、充電装置30に設置することを前提とすれば、「後面」側に該当する。また、「面内方向」とは、「厚さ方向」の垂直方向である。
【0027】
(第1の実施形態)
図1(a)は本実施形態のコイル部品10の一例を示す断面図であり、図1(b)は図1(a)の下面図である。
本実施形態のコイル部品10は、環状のコイル3と、前記コイルの後面側に配置された第一の磁性シート1−1と、磁気吸着手段2を備え、さらに、磁気吸着手段2の後面側に第二の磁性シート1−2が配置される。
磁気吸着手段2はコイル3の内周側、外周側の少なくとも一方の側面側に配置される。図1は、磁気吸着手段2がコイル3の内周側に配置された状態を示している。
第二の磁性シート1−2は、第一の磁性シート1−1と同じ厚さ、材質の磁性シートを用いることができる。磁性シートについては後述する。
【0028】
第一と第二の磁性シートは面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置されている。また、磁気吸着手段は、第一の磁性シートに対して面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置されている。第一の磁性シートは、第二の磁性シート、磁気吸着手段とも磁気ギャップを介して配置されているので、コイルヨークの磁気飽和を抑制でき、充電効率を改善することができる。
給電装置、充電装置に用いられるコイル部品は低背化が求められる。第一の磁性シート1−1と第二の磁性シート1−2、第一の磁性シート1−1と磁気吸着手段2を厚さ方向に磁気ギャップを介して配置する場合、第一の磁性シート1−1がコイルヨークとして十分な役割が得られる磁束密度の低い状態とするためには、十分な磁気ギャップを必要とするため、上記の低背化を行なうことが難しい。そのため第二の磁性シート1−2または磁気吸着手段2は第一の磁性シート1−1と面内方向の磁気ギャップを介して配置されることが好ましい。
【0029】
コイル部品は、第一の磁性シートが厚さ方向に見てコイルの中央部に穴が形成されており、厚さ方向に見てこの穴の内部に磁気吸着手段及び第二の磁性シートが配置されることが好ましい。上記の形態のコイル部品は、第一の磁性シートがコイルで発生する磁束のコイルヨーク及びシールド材として機能し、かつ、第二の磁性シートが磁気吸着手段からの磁束をシールドする。このため、コイルと磁気吸着手段の両方からの磁束はシールドされ、図2の基板8の後面側に配置される回路部品を保護することができる。また、第二の磁性シートに沿って磁束が流れやすくなるので、磁気吸着手段2の後面側から出る磁束は前面側に回りこむことが容易になるので、他方の給電装置または充電装置に備えられたコイル部品の磁気吸着手段との間に働く磁気吸着力を高めることができる。
【0030】
図1(b)の実施形態の第一の磁性シートおよびコイルは円環状であるが、正方形・長方形などの矩形、円形、リング形状、異形状、さらにはそれらに凹凸をつけた形状など種々の磁性シートを用いることができる。
また、磁気吸着手段の厚さは、低背化のためにコイルと同じかもしくはコイルよりも薄いものが好ましい。また、磁気吸着力を高めるために、磁気吸着手段の前面は充電面側に極力近づけることが好ましく、充電効率も考慮すれば磁気吸着手段の前面はコイルの前面と同じ高さになるように配置することが好ましい。
【0031】
図2は給電装置20および充電装置30の両方とも同じコイル部品を用いているが、充電可能であれば異なる形態のコイル部品を用いることもできる。例えば充電速度を高めるために、給電装置側のコイルの巻き数を充電装置側のコイルよりも大きくしたり、共振用の容量を給電装置側のみに配置したりすることができる。また、磁気吸着手段2a、2bをそれぞれ別の形態、例えば一方を永久磁石のみとし、他方を磁気ヨーク部材のみとすることも可能である。
一般的には給電装置よりも充電装置の方が小型化を求められるため、充電装置側に配置されるコイル部品は極力小型、低背化に寄与する構造が採用される。
【0032】
(第2の実施形態)
図3は、別の実施形態のコイル部品の断面図である。
図1のコイル部品に対し、第一の磁性シートは穴が形成されていない点で異なる。第一と第二の磁性シートは接触していても良いが、第一の磁性シートが磁気吸着手段からの磁束で磁気飽和しないように、厚さ方向に磁気ギャップを介して配置させることが好ましい。また、前記のように、磁気吸着手段の前面はコイルの前面と同じ高さになるように配置することが好ましい。このため、磁気吸着手段の厚さは、コイルよりも薄い物を用いることが好ましく、磁気吸着手段は板状の永久磁石単体、もしくは磁石に吸着可能な板状の軟磁性体単体を用いることが好ましい。但し永久磁石、磁性体の被覆層は上記単体に含まれても良い。
【0033】
(第3の実施形態)
図4は、別の実施形態のコイル部品の断面図である。
図1のコイル部品に対し、第二の磁性シートが、厚さ方向に見て、その少なくとも一部が磁気吸着手段の外縁よりも外側に張り出している。第二の磁性シートは磁気吸着手段よりも全体的に大きくし、外縁全体から帽子のつばのように張り出していることが好ましい。シールド性能を高めることができる。
なお、図4では第一の磁性シートと第二の磁性シートの磁気ギャップを意図的に広げ、第一の磁性シートが磁気飽和しないようにした。具体的には、第一の磁性シートの内径を図1のコイル部品の第一の磁性シートの内径よりも大きくし、コイル3の後面の途中から覆うようにしている。第一の磁性シートの内径は適宜変更できる。
【0034】
(第4の実施形態)
図5は、別の実施形態のコイル部品の断面図である。
図1のコイル部品に対し、第二の磁性シート1−2がコイル3の側面と磁気吸着手段2の間の少なくとも一部に折り込まれるように形成された屈折部5を有する点で異なる。この屈折部5は、磁気吸着手段2の周囲全体で形成されていることが好ましい。第二の磁性シートは、磁気吸着手段2よりも大きな磁性シートを用い、その端部を屈折して屈折部とすることで形成できる。
屈折部5がヨーク材としての機能を持つので給電装置と充電装置の間に働く磁気吸着力を高めることができる。また、磁気吸着手段からの磁束がコイルの後面側に流れるのを抑制でき、第一の磁性シートが磁気飽和し難い状態となる。そのため、第一の磁性シートの透磁率の低下を抑えられるので、ヨークとしての機能が十分に得られ、電力伝送効率の低下を極力抑制することができる。
この屈折部5の厚さ方向の高さは、屈折部の先端が磁気吸着手段の前面と同じ高さになる形態が好ましい。屈折部が磁気吸着手段の側面を広範囲で覆うので、磁性シートの飽和抑制、シールド性能の向上、磁気吸着手段の磁気吸着力向上に効果がある。磁気吸着手段と第二の磁性シートが隣接している場合は、屈折部の高さはコイルの厚さと同じ寸法になる。磁気吸着手段と第二の磁性シートの間に別の非磁性材を介在している場合は、屈折部の高さは非磁性材の厚さと磁気吸着手段の厚さの和とすることが好ましい。
【0035】
図6は非接触充電装置に用いる給電装置20の一例を示す。
給電装置20のケース202は薄い非磁性樹脂板からなる上ケース202a及び下ケース202bからなる。上ケース202aの上面は給電面203を構成し、裏面は平坦である。上ケース202aの平坦な裏面中央部に、平坦な前面を有する磁気吸着手段211と、磁気吸着手段211を磁気ギャップを介して同軸的(同心円状)に囲む平面螺旋状で平坦な前面を有する一次コイル201とが固定されている。ここで、「同軸的」とは磁気吸着手段211の中心軸と一次コイル201の中心軸とが一致することを意味し、両者が円形の場合には両者は同心円となる。一次コイル201は、後述の二次コイル301との電磁結合を高めるために給電面203のできるだけ近くに配置されている。一次コイル201を厚さ寸法よりもそれに垂直な方向の寸法(外径寸法)の方が大きい平面コイルとすることにより磁気回路を薄型化でき、給電装置を低背化できる。一次コイル201を絶縁性樹脂でモールドしても良い。
【0036】
一次コイル201の後面には、一次コイル201をほぼ覆う大きさの(一次コイル201の外径より大きな外径と一次コイル201の内径とほぼ同じ内径を有する)ドーナツ板状の第一の磁性シート2121が同軸的に隣接しており、一次コイル201から発生する磁束の漏洩を防止している。磁気吸着手段211は、厚さ方向に見たとき磁気ギャップを介して磁性シート2121の中央穴に同軸的に受承されている。磁気吸着手段211は磁性シート2121に対しても同軸的に配置されている。磁気吸着手段211の後面には、第二の磁性シート2122が配置され、磁束が後面側に漏れないようにシールドしている。
下ケース202bの内面(図11における上面)に基板218が固定されている。誘電体からなる基板218には、一次コイル201の導線端部が接続されるコイル端子27、共振用コンデンサ26、整流回路22、スイッチング回路23等が実装されている。
【0037】
図7は非接触充電装置に用いる受電装置30の一例を示す。受電装置30のケース302は、充電の際に給電装置20の給電面203に接する充電面303を有する薄い平坦な樹脂板状の下ケース302aと、液晶表示部39等を有する上ケース302bとからなる。充電面303の平坦な裏側中央に、平坦な前面を有する磁気吸着手段311と、磁気吸着手段311を磁気ギャップを介して同軸的に囲む平面螺旋状で平坦な前面を有する二次コイル301とが固定されている。二次コイル301は、一次コイル201と対向する位置で充電面303の近くに配置されている。磁気吸着手段311と二次コイル301との磁気ギャップは、二次コイル301が磁気吸着手段311の磁束の影響を実質的に受けないように大きくするのが好ましい。二次コイル301を平面コイルとすることにより磁気回路を薄型化でき、給電装置を低背化できる。二次コイル301を絶縁性樹脂でモールドしても良い。
【0038】
二次コイル301の後面には、二次コイル301をほぼ覆う大きさの(二次コイル301の外径より大きな外径と二次コイル301の内径とほぼ同じ大きさの内径を有する)ドーナツ板状の第一の磁性シート3121が同軸的に隣接しており、二次コイル301から発生する磁束の漏洩を防止している。厚さ方向に見たとき、磁気吸着手段311は磁気ギャップを介して第一の磁性シート3121の中央穴に同軸的に受承されている。従って、磁気吸着手段311は第一の磁性シート3121に対しても同軸的に配置されている。磁気吸着手段311の後面には、第二の磁性シート3122が配置され、磁束が後面側に漏れないようにシールドしている。
【0039】
上ケース302bの裏面(図7における上面)には基板318が固定されている。誘電体からなる基板318には、二次コイル301の導線端部が接続されるコイル端子37、整流回路32及び二次電池33の他に、必要に応じて駆動装置(図示せず)等が実装されている。第一の磁性シート3121は、二次コイル301から発生する磁束が漏れないように二次コイル301に隣接していることが好ましい。基板318と第一の磁性シート3121とは固着されていなくても良い。
【0040】
給電装置20及び受電装置30のいずれの磁気回路においても、磁気吸着手段211,311の前面はコイル201,301の前面と同じ高さであるのが好ましい。つまり、磁気吸着手段211,311と伝送コイル201,301が平坦な給電面203及び充電面303の裏面に配置されていることが好ましい。前面側に配置された二次コイル301は一次コイル201と電磁結合しやすく、高い電力伝送効率が得られる。また、前面側に配置された磁気吸着手段311は、給電装置20の磁気吸着手段211に対して大きな吸着力を有し、小さい永久磁石で給電装置20と受電装置30の位置決めを容易に正確に行うことができ、もって磁気吸着手段311から漏れる磁束量を減らすことができる。このため、第一の磁性シート3121の磁気飽和する範囲が小さくなり、第一の磁性シート3121の透磁率の低下を防止し、高い電力伝送効率が得られる。
【0041】
給電装置20の一次コイル201の巻数は受電装置30の二次コイル301の巻数より多くしても良い。受電装置30ほど小型化が求められない給電装置20には巻数が多い一次コイル201を用いることができ、相互誘電作用により二次コイル301に発生する電圧で二次電池33に短時間で電力を蓄えることができる。磁気吸着手段211は、受電装置30の磁気吸着手段311と同じで良い。
【0042】
コイル部品に用いる磁性シートについて説明する。磁性シートに用いる軟磁性体は、フェライト、ケイ素鋼板、ロール急冷により製造された金属薄帯およびこれらと樹脂の複合材などを用いることができる。渦電流損を低減し、充電の伝送効率を向上させるためには、軟磁性体を薄くすることが好ましい。この点、前記軟磁性体のうちロール急冷により製造される金属薄帯が特に好ましい。具体的には高飽和磁束密度を有するFe系アモルファス材料、Co系アモルファス材料、Fe系ナノ結晶材料、Co系ナノ結晶材料などからなる厚さ50μm以下の金属薄帯を用いるとよい。金属薄帯の厚さは、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0043】
磁性シートは、薄板状の軟磁性体をそのまま用いても良いが、破損を防ぐために補強部材に固着されていることが好ましい。具体的には、樹脂シートなどで金属薄帯をラミネート加工した磁性シートを用いることが好ましい。磁性シートは一枚のみで使用しても良いが、樹脂シートを介して複数層重ねて構成しても良い。磁性シートに用いる全ての軟磁性体の厚さをそれぞれ足した厚さは150μm以下、さらには100μm以下とすることができる。50μm以下の薄型のものを構成することも可能である。
【0044】
磁気吸着手段211,311は、(a)永久磁石と軟磁性材からなる磁気ヨーク部材とからなるか、(b)永久磁石のみからなるか、(c)磁気ヨーク部材のみからなるもののいずれも採用できる。磁気ヨーク部材として、板状の形状、カップ状の形状のものなど、適宜変更することができる。
【0045】
本発明に係るコイル部品は、上述の非接触充電用の給電装置や充電装置に限らず、コイルと磁気ヨーク、コイルと磁気シールドを備える電子機器等に広く適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1−1:第一の磁性シート
1−2:第二の磁性シート
2:磁気吸着手段
3:コイル
4:二次電池
5:屈折部
6:交流電源
7:回路部
8:基板
10:コイル部品
20:給電装置
30:充電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のコイルと、前記コイルの厚さ方向の一方側に対置された第一の磁性シートと、磁気吸着手段を備えるコイル部品であって、
前記磁気吸着手段は、コイルの内周側、外周側の少なくとも一方の側面側に配置され、
前記磁気吸着手段の前記厚さ方向の一方側に第二の磁性シートが配置されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品であって、
前記第二の磁性シートは、前記第一の磁性シートに対して前記第1の磁性シートの面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイル部品であって、
前記磁気吸着手段は、前記第一の磁性シートに対して前記第1の磁性シートの面内方向及び/又は厚さ方向の磁気ギャップを介して配置されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコイル部品であって、
前記第一の磁性シートは、厚さ方向に見てコイルの中央部に穴が形成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコイル部品であって、
前記第二の磁性シートは、厚さ方向に見て、その少なくとも一部が前記磁気吸着手段の外縁よりも外側に張り出していることを特徴とするコイル部品。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコイル部品であって、
前記第二の磁性シートは、前記コイルの側面と前記磁気吸着手段の間の少なくとも一部に折り込まれるように形成された屈折部を有することを特徴とするコイル部品。
【請求項7】
請求項6に記載のコイル部品であって、
前記磁気吸着手段は前記コイルの厚さ方向の他方側に平坦な前面が形成され、
前記屈折部はその先端が前記磁気吸着手段の前面と同じ高さになるように形成されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のコイル部品を備えていることを特徴とする給電装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のコイル部品を備えていることを特徴とする充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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