説明

コイル部品

【課題】低背化が可能であり、しかもコイルのリード部と端子との接続が容易であるコイル部品を提供すること。
【解決手段】一次コイル20が外周に巻回される第1中空筒部44が形成してあるボビン基板42を有するボビン40と、一次コイル20の外周に装着可能で二次コイル30が外周に巻回される第2中空部54が形成してあると共に、ボビン基板42の上面に装着されるように第2中空部44の下端に形成してある下鍔部58が形成してあるケース50と、を有するコイル部品10である。ボビン基板42には、一次コイル20に接続するための一次端子70と、二次コイル30に接続するための二次端子72とが形成してあり、二次端子72が形成してあるボビン基板42の端部までケース50の下鍔部58の先端部55aが延びており、先端部55aには、二次コイル30のリード線33を二次端子72との接続部72aに案内する複数のリード用第1溝部57aが形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば共振トランス等として好適に用いられるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、様々の電気製品に、様々な用途で用いられている。たとえば、液晶ディスプレイのバックライトの駆動等においては、高電圧を得るために、インバータ用共振トランスが使用される。
【0003】
共振トランスは、適切なリーケージインダクタンスの発生などの電気的な特性に加えて、低背化などの外形的な要求を実現することが求められる。従来技術では、このような要求に応えるために、コアの軸方向が設置面に平行な横型であって、一次コイルと二次コイルがコアの軸方向に沿って分離して配列される分割構造のコイル部品が提案されている。また、分割構造のコイル部品は、比較的絶縁が容易であるという利点を有する。
【0004】
しかし、従来技術では、コイル部品を設置する設置面が存在する下方向や、その反対方向である上方向に向かって多くの漏れ磁束が発生するという問題を有している。例えば液晶テレビのバックライトに使用される共振トランスなどにおいては、コイル部品の上下方向に鉄を含む構造材等が配置される場合がある。そうすると、コイル部品からの漏れ磁束が、構造材等に渦電流を発生させ、渦電流の発生に伴う熱やノイズを発生させるという問題が生じている。また、上下方向への漏れ磁束を防止するために、コイル部品の上下方向にアルミ板を張り付けるなどの対策を行うことも可能であるが、このような対策は、コイルの放熱性を悪化させるなどの問題がある。
【0005】
このような問題点を解消するために、一次コイルが巻回されるボビン基板と、二次コイルが巻回されるケースとを組み合わせることにより、一次コイルの外周に二次コイルを配置させ、コイル部品の低背化を図ったコイル部品が本出願人により提案されている。
【0006】
しかしながら、この開発中のコイル部品では、ボビン基板の端部に形成してある二次端子に、ケースに巻回してある二次コイルのリード部を引き出して接続する必要があり、その作業の自動化が困難であるという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−112753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、低背化が可能であり、しかもコイルのリード部と端子との接続が容易であるコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル部品は、
一次コイルが外周に巻回される第1中空筒部が形成してあるボビン基板を有するボビンと、
前記一次コイルの外周に装着可能で二次コイルが外周に巻回される第2中空部が形成してあると共に、前記ボビン基板の上面に装着されるように前記第2中空部の下端に形成してある下鍔部が形成してあるケースと、
を有するコイル部品であって、
前記ボビン基板には、前記一次コイルに接続するための一次端子と、前記二次コイルに接続するための二次端子とが形成してあり、
前記二次端子が形成してある前記ボビン基板の端部まで前記ケースの下鍔部の二次端子側先端部が少なくとも延びており、前記先端部には、前記二次コイルのリード線を前記二次端子との接続部に案内する複数のリード用第1溝部が形成してあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコイル部品では、一次コイルの外周側に二次コイルを配置するので、一次コイルが巻回される第1中空筒部および二次コイルが巻回される第2中空筒部の軸方向長さを短くすることができる。これらの軸方向長さが、コイル部品の高さ方向になるために、コイル部品の低背化が可能である。さらに、外形状の一部を規定するケースが、二次コイルのボビンを兼ねるため、2重構造でありながら部品数を少なくすることができる。
【0011】
また、ボビン基板に対して一次端子と二次端子とを形成するために、ケースには端子を設ける必要がない。このため、ケースの形状を自由に設計することが可能になり、設計の自由度が増し、低背化が容易になると共に、ボビンに比較して、ケースとして比較的に安価な樹脂を選択することが可能になり、製造コストの低減も可能である。なお、端子が形成されるボビンは、端子へのハンダ処理などのために耐熱性が要求される。
【0012】
さらに、本発明では、二次端子が形成してあるボビン基板の端部までケースの下鍔部の二次端子側先端部が延びており、この先端部には、二次コイルのリード線を二次端子との接続部に案内する複数のリード用第1溝部が形成してある。このため、第2中空筒部の外周に巻き付けたコイルのリード線の端部をリード用第1溝部に係止させて二次端子に巻き付ける作業が容易になり、その作業の自動化が容易になる。
【0013】
しかも相互に隣り合うリード線を、異なるリード用第1溝部に係止させることで、隣接するリード線相互の絶縁性も良好に保たれる。なお、リード線自体は、絶縁被覆などで絶縁されているので、共通するリード用第1溝部に複数のリード線を係止させても良い。
【0014】
なお本発明において、溝部とは、切り欠きあるいはその他の凹部を含む概念で用いる。また、本発明において、「ボビン基板の端部までケースの下鍔部の二次端子側先端部が少なくとも延び」とは、ボビン基板の端部と下鍔部の二次端子側先端部とを厳密に一致させることを意味するのではない。リード線をリード用第1溝部に係止させることができる位置まで、「ケースの下鍔部の二次端子側先端部がボビン基板の端部近くまで少なくとも延び」ている趣旨である。
【0015】
前記ボビン基板の端部には、前記リード用第1溝部に案内される前記リード線を、前記二次端子との接続部にさらに案内するリード用第2溝部が形成してあっても良く、少なくとも前記リード用第2溝部に重なる位置まで、前記ケースの下鍔部の二次端子側先端部が延びていても良い。その場合には、リード線の端部をリード用第1溝部および第2溝部に係止させて二次端子に巻き付ける作業がさらに容易になる。
【0016】
また、前記ボビン基板の端部と同等以上に、前記ケースの下鍔部の二次端子側先端部を突き出してもよい。突き出された下鍔部の二次端子側先端部にリード用第1溝部を形成することから、ボビン基板の端部にリード用第2溝部を形成しなくとも、リード線の端部をリード用第1溝部に係止させて二次端子に巻き付ける作業が容易である。ボビン基板の端部にリード用第2溝部を形成しなくとも良くなることから、ボビン基板の成形が容易になり製造コストの低減を図れると共に、ボビン基板の強度を向上させることが可能となる。
【0017】
前記リード用第1溝部は、前記下鍔部の二次端子側先端部で、前記ボビン基板の端部に沿って形成してあることが好ましい。ボビン基板の端部に沿って複数の二次端子が配列してある場合には、リード線の端部をリード用第1溝部に係止させて二次端子に巻き付ける作業がさらに容易となる。
【0018】
二次端子の数に対応してリード用第1溝部を形成することが好ましいが、必ずしも対応させなくても良い。たとえば複数本の二次端子に対応して一つのリード用第1溝部を形成してもよい。
【0019】
前記ケースの前記第2中空筒部の上端には上鍔部が形成してあることが好ましい。上鍔部と下鍔部との間に位置する前記第2中空筒部の外周に二次コイルを巻回することができる。
【0020】
前記上鍔部と下鍔部との間に位置する前記第2中空筒部の外周には、少なくとも1つの中間鍔部を形成してもよい。これらの鍔部の間に位置する第2中空筒部の外周に二次コイルを巻回することで、二次コイルを複数に分割して配置することができる。
【0021】
前記二次端子が形成してある前記ボビン基板の端部まで前記中間鍔部の先端部を伸ばすことが好ましく、前記中間鍔部の先端部には、前記二次コイルのリード線を前記二次端子との接続部に案内するリード用第3溝部が形成してあることが好ましい。その場合には、リード線の端部をリード用第3溝部および第1溝部に係止させて二次端子に巻き付ける作業がさらに容易になる。
【0022】
好ましくは、前記第1中空筒部の貫通孔には、一対のフェライトコアの中脚が、前記第1中空筒部の上下からそれぞれ挿入され、当該一対のフェライトコアの側脚およびベース部は、前記ケースおよびボビンの一部を外周から覆うように組み立てられる。
【0023】
このようなフェライトコアが装着してあるコイル部品は、上下方向(ボビン基板に垂直方向)への漏れ磁束が小さく、周辺部材での渦電流の発生およびこれに伴う熱およびノイズの発生を抑制することができる。また、漏れ磁束を防止するためのアルミ板等を配置する必要がないため、好適な放熱特性を有する。さらにまた、一次コイルの外周に二次コイルが配置される構造であるために、コアの中脚および側脚を短くすることができ、コイル部品の強度および耐衝撃特性も良好である。
【0024】
前記一次コイルの外周縁と、前記二次コイルの内周縁との距離を、周方向に沿って変化させてもよい。これにより、一次コイルの外周縁と二次コイルの内周縁との距離が広い部分を用いて一次コイルへの配線の引き回しを行うことができる。そのため、二次コイルが一次コイルの外周を周回する2重構造であるが、一次コイルと二次コイルとの好適な絶縁特性を奏する。
【0025】
また、一次コイルは、基準軸に対して左右対称であっても良く、二次コイルは、前記基準軸に関して左右非対称であっても良い。
【0026】
基準軸に対して二次コイルを左右非対称とすることによって、コアから離れた位置に、一次コイルの外周縁と二次コイルの内周縁の距離が広い部分が形成される。このようなコイル部品は、一次コイルの外周縁と二次コイルの内周縁の距離が広い部分を用いて一次コイルを配線することにより、配線とコアの沿面距離を長くし、好適な絶縁特性を得られる。
【0027】
また、たとえば、二次コイルの巻回形状は、長軸の一方の端部に位置する巻回基部と、長軸の他方の端部に位置し巻回基部より曲率の大きい巻回頂部と、を有するたまご形状であっても良く、
二次コイルは、長軸が、前記基準軸に対して垂直になるように配置されていても良く、二次コイルの巻回頂部は、一次コイルの外周縁に対して、巻回基部より大きく離間するように配置されていても良い。
【0028】
このようなコイル部品は、二次コイルの巻回頂部と一次コイルの間に、一次コイルの外周縁と二次コイルの内周縁の距離が広い部分が形成される。巻回頂部は第1方向に対して垂直な長軸の端部に位置するために、コアからの距離が長い。したがって、このようなコイル部品は、配線とコアの沿面距離を長くし、好適な絶縁特性を得られる。また、二次コイルをたまご形状とすることによって、楕円形状等と比較して巻き線の長さを抑制することが可能である。
【0029】
また、たとえば、ボビン用基板には、外部から一次コイルの外周縁と前記二次コイルの内周縁の間に形成された領域へ連通する連通路が形成されていても良く、一次コイルと一次端子とを接続するリード線は、連通路を通過するようになっていても良い。
【0030】
このようなコイル部品は、コアとリード線の沿面距離を大きくすることが可能であり、また、リード線の長さを短くすることが可能である。
【0031】
一次コイルと一次端子とを接続するリード線は、一次コイルの外周縁と二次コイルの内周縁との間に配置されており一次コイルの外周縁から設置面に平行な方向に引き出される横引出部と、前記横引出部から前記設置面に垂直な方向に引き出される縦引出部と、を有しても良い。
【0032】
このようなコイル部品は、リード線が、横引出部と縦引出部とを有するため、コアとリード線の沿面距離を大きくすることが可能であり、好適な絶縁特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品の全体斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すコイル部品の分解斜視図である。
【図3】図3は、一次コイルの斜視図である。
【図4】図4は、二次コイルの斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す切断面Vに対応するコイル部品の断面図である。
【図6】図6は、図5に示すVI−VI線に沿うコイル部品の断面図である。
【図7】図7は、図1に示すコイル部品の底面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係るコイル部品の全体斜視図である。
【図9】図2は、図8に示すコイル部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
【0035】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るコイル部品10は、コア12と、ボビン40と、ケース50とを有する。
【0036】
コイル部品10のコア12は、後述するコイルにより発生する磁束を通過させる磁路を形成し、別々に成形された2つの部品である第1コア12aと第2コア12bとを、組み立てて形成される。第1コア12aと第2コア12bとは、対称な形状を有しており、ケース50およびボビン40を上下方向(図1においてZ軸方向)から挟むようにして互いに接合される。
【0037】
図1に示すように、コア12は、それぞれ縦断面(図1においてX軸およびZ軸を含む切断面)が略E字形状の第1コア12aおよび第2コア12bを有する。図2に示すように、各コア12a,12bは、フェライトコアで構成され、X軸方向に延びる平板状のベース部13a,13bと、各ベース13a,13bのX軸方向の両端からZ軸方向に突出する側脚16a,16b,18a,18bと、各ベース13a,13bのX軸方向の中間位置からZ軸方向に突出する中脚14a,14bとを有する。
【0038】
なお、図面において、Z軸は、コイル部品10の高さ方向であり、コイル部品10におけるZ軸方向の高さが短くなるほど、コイル部品の低背化が可能となる。また、X軸とY軸は、相互に垂直であり、しかもZ軸に垂直であり、この実施形態では、X軸が、二次端子72の配列方向およびコア12の長手方向と一致し、Y軸が、コイル部品10の長手方向に一致している。
【0039】
図2に示すように、ボビン40は、略矩形平板状のボビン基板42を有する。ボビン基板42の底面側が、コイル部品の設置面となる。ボビン基板42のY軸方向の一方の端部には、複数(図示する例では4つ)の一次端子70がX軸方向に沿って所定間隔で固定してある。また、ボビン基板42のY軸方向の他方の端部45には、複数(図示する例では8つ)の二次端子72がX軸方向に沿って所定間隔で固定してある。
【0040】
これらの端子70および72は、たとえば金属端子で構成され、合成樹脂などの絶縁材料で構成されるボビン基板42に対してインサート成形などにより一体成形される。後述するように、一次端子70には、一次コイル20のリード部が接続され、二次端子72には、二次コイル30のリード部が接続される。
【0041】
ボビン基板42の表面で略中央位置には、第1中空筒部44がZ軸方向に突出して形成してある。第1中空筒部44の上端には、ボビン鍔48がX軸−Y軸平面に第1中空筒部44から径方向に突き出た形状を有しており、一次コイル20を保持する機能を有する。ボビン基板42と第1中空筒部44とボビン鍔部48とは、射出成形などにより一体成形してあることが好ましい。
【0042】
ボビン基板42と第1中空筒部44とボビン鍔部48には、これらをZ軸方向に貫通する貫通孔44aが形成してある。貫通孔44aの横断面形状は、後述するケース50に形成してある貫通孔52aの横断面形状とも一致し、しかも、図6に示すように、コア12b(12aも同様/以下同じ)における中脚14b(14aも同様/以下同じ)が挿入可能な楕円形状になっている。
【0043】
図2では省略してあるが、図5および図6に示すように、第1中空筒部44の外周には、一次コイル20が巻回してある。第1中空筒部44は、一次コイル20のボビン本体として機能する。
【0044】
一次コイル20の斜視図を図3に示す。一次コイル20の内周縁21は、図5および図6に示すように、第1中空筒部44の外周形状に一致し、図6に示す断面において楕円形状になる。一次コイル20の外周縁22は、図6に示す断面において、内周縁21よりも大きな長軸および短軸を有する楕円形状となる。図6に示すように、一次コイル20の外周縁22は、後述するケース50の第2中空筒部54の内部に収まるようになっている。
【0045】
図2に示すように、ボビン用基板42のX軸方向の両側面には、第1中空筒部44とY軸方向の位置が同じ位置で、コア12bの側脚16b,18bを通過させるための凹部43が形成されている。また、ボビン用基板42のX軸方向の両側面には、凹部43の両側位置に、後述するケース50の係合孔59aに着脱自在に係合する係合突起49が形成されている。
【0046】
図2に示すように、ケース50は、二次コイル30(図4等参照)を保持するとともに、コイル部品10の外形状の一部を規定する。ケース50は、図5および図6に示すように、二次コイル30が巻回される第2中空筒部54を有する。第2中空筒部54は、二次コイル30のボビン本体として機能する。
【0047】
第2中空筒部54のZ軸方向の上端には、X−Y軸平面に沿って上鍔部52が形成してある。上鍔部52は、ボビン40のボビン用基板42に対向して備えられ、設置面と平行に延在する。
【0048】
図2に示すように、上鍔部52には、コア12aの中脚14aを挿通させるための貫通孔52aが形成してある。また、上鍔部52には、コア12aのベース部13aを設置するための設置溝部52bが形成してある。
【0049】
図2では図示されていないが、図5および図6に示すように、ケース50の第2中空筒部54は、上鍔部52の下面から垂直に、Z軸方向の下方に向かって突出している。第2中空筒部54は、図2に示すボビン鍔部48を外周から覆うような形状を有し、図6に示すように、一次コイル20および中脚14a(14b)を、内部に収納するようになっている。言い換えると、第2中空筒部54の内部は、中脚14a(14b)および一次コイル20によって挿通されている。
【0050】
図2および図5に示すように、第2中空筒部54のZ軸方向の下端には、矩形状の下鍔部58がX−Y軸平面に沿って形成してある。下鍔部58は、ボビン40のボビン用基板42の上側表面を覆うように装着される。
【0051】
下鍔部58のX軸方向の両側端部には、Z軸方向の下方に向かって張り出す側面部59が形成されている。側面部59には、ボビン40の係合突起49と係合する係合孔59aが形成してある。また、ボビン40のボビン用基板42と同様に、下鍔部58のX軸方向の両端部には、コア12bの側脚16b,18bを通過させるための凹部58aが形成されている。
【0052】
図5に示すように、上鍔部52と下鍔部58との間に位置する第2中空円筒部54の外周面には、二次コイル30をZ軸方向に沿って分割配置するための1以上の中間鍔部56が、コイル部品10の用途等に応じて設けられる。これらの鍔部52,56,58は、X−Y軸平面に沿って平行である。これらの鍔部52,56,58と第2中空筒部54とからなるケース50は、射出成形などにより一体成形される。図5に示すように、コイル部品10は、コア12a(12b)の中脚14a(14b)の周辺を、一次コイル20と二次コイル30が2重に周回する2重構造を有している。
【0053】
図6に示すように、第2中空筒部54の断面形状は、楕円を、その長軸方向の両端部の曲率が非対称になるように変形させたようなたまご形状を有している。なお、コイル部品10の内部形状については、後ほど詳述する。
【0054】
図4は、第2中空筒部54に巻回される二次コイル30の斜視図である。本実施形態において、二次コイル30は、2つの独立したコイルによって構成されるが、二次コイル30は1つのコイルで構成されていても良く、3つ以上のコイルで構成されても良い。二次コイル30の内周縁である二次コイル内周縁31は、第2中空筒部54に接触しており、二次コイルの内周縁31の巻回形状は、第2中空筒部54の断面形状と同様に、たまご形状である。
【0055】
図1,図2および図5に示すように二次端子72が形成してあるボビン基板42のY軸方向の一方の端部45まで、ケース50の下鍔部58のY軸方向先端部55aが延びている。この先端部55aには、二次コイル30のリード線33を二次端子72との接続部72aに案内する複数のリード用第1溝部57aが、X軸方向に沿って形成してある。
【0056】
しかも、本実施形態では、リード用第1溝部57aに案内されるリード線33を、二次端子72との接続部72aにさらに案内するリード用第2溝部47が、ボビン基板42の端部45で、二次端子72の間に形成してある。
【0057】
さらに、二次端子72が形成してあるボビン基板42の端部45まで、中間鍔部56の先端部55bも、下鍔部58の先端部55aと同様に延ばしてある。しかも中間鍔部56の先端部55bにも、下鍔部58の先端部55aと同様に、二次コイル30のリード線33を二次端子72との接続部72aに案内するリード用第3溝部57bが形成してある。
【0058】
この実施形態では、リード用第1溝部57a、第2溝部47および第3溝部57bが、二次端子72の数に対応して、X軸方向の略同位置に、Y軸方向に同様な深さで形成してあるが、必ずしも対応させる必要はない。たとえば第1溝部57a、第2溝部47および第3溝部57bの数や位置やY軸方向の溝深さは、それぞれ自由に設計することができる。
【0059】
また、下鍔部58の先端部55aと、中間鍔部56の先端部55bと、ボビン基板42の端部とは、Y軸方向の位置を厳密に一致させる必要はない。それぞれの溝57a,57b,47のY軸方向の溝深さが相互に一部重なる範囲内で位置ずれしても良い。また、リード線33が溝57aおよび47の双方に係止可能な位置関係で、下鍔部58の先端部55aとボビン基板42の端部とを位置ずれさせても良いし、リード線33が溝57bおよび47の双方に係止可能な位置関係で、中間鍔部56の先端部55bとボビン基板42の端部とを位置ずれさせても良いし、リード線33が溝57a,57bおよび47の全てに係止可能な位置関係で、下鍔部58の先端部55aと中間鍔部56の先端部55bとボビン基板42の端部とを位置ずれさせても良い。
【0060】
本実施形態に係るコイル部品10は、図2に示す各部材を組み立てると共に、ボビン40およびケース50に巻き線を巻回することによって作成される。以下に、コイル部品10の製造方法の一例を、図2などを用いて説明する。コイル部品10の作成においては、まず、一次端子70および二次端子72を取り付けたボビン40を準備する。ボビン40の材質は特に限定されないが、ボビン40は、樹脂等の絶縁材料によって形成される。
【0061】
次に、ボビン40の第1中空筒部44に巻き線を巻回し、一次コイル20(図3参照)を形成する。一次コイル20の形成に使用される巻き線としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。また、一次コイル20を形成する際の巻き線の末端部である一次リード線24は、ボビン40の連通路46を通って一次端子70に絡げられて接続される(図7等参照)。
【0062】
次に、一次コイル20が形成されたボビン40に対して、図2に示すケース50を取り付ける。ケース50とボビン40とは、ケース50の係合孔59aを、ボビン40の係合突起49に係合させることによって組み立てられる。また、ケース50とボビン40とは、必要に応じて接着等により固定される。ケース50の材質も特に限定されず、樹脂等の絶縁材料によって形成される。
【0063】
次に、ケース50の第2中空筒部54に巻き線を巻回し、二次コイル30(図4参照)を形成する。二次コイル30の形成に使用される巻き線としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。二次コイル30を形成した際の巻き線の末端部である二次リード線33は、リード用第1溝部57aまたは第3溝部57bに係止させて二次端子72の接続部72aに巻き付ける。そのため巻き付け作業が容易になり、その作業の自動化が容易になる。
【0064】
しかも相互に隣り合うリード線33を、異なるリード用第1溝部57aまたは第3溝部57bに係止させることで、隣接するリード線33相互の絶縁性も良好に保たれる。なお、リード線自体は、絶縁被覆などで絶縁されているので、共通するリード用第1溝部57aまたは第3溝部57bに複数のリード線33を係止させても良い。さらに本実施形態では、ボビン基板42の端部45にも、第2溝部47が形成してあるために、リード線33の端部を二次端子72の接続部72aに巻き付ける作業がさらに容易になる。
【0065】
次に、一次コイル20、二次コイル30、ケース50およびボビン40が組み合わせられた中間組立品に対して、Z軸方向の上下方向からコア12の第1コア12aと第2コア12bとを取り付け、コア12を形成する。すなわち、第1コア12aおよび第2コア12bの中脚14a,14bの先端同士、側脚16a,16bの先端同士、側脚18a,18bの先端同士を接合する。なお、中脚14a,14bの先端同士の間には、ギャップを持たせても良い。
【0066】
コア12の材質としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。コア12の第1コア12aと第2コア12bは、接着材を用いて接着されるか、又は外周をテープで巻かれることによって、ケース50およびボビン40に固定される。なお、一連の組み立て工程の後に、コイル部品10に対してワニス含浸処理が施されても良い。以上のような工程により、本実施形態に係るコイル部品10を製造することができる。
【0067】
図5に示すように、コイル部品10は、中脚14a(14b)のZ軸方向(磁束が流れる方向)が設置面に対して垂直な縦型である。縦型であるコイル部品10は、図1および図5に示すように、一次および二次コイル20,30のZ軸上下方向にコア12のベース部13a,13bが配置され、これらのベース部13a,13bが上下方向への漏れ磁束を抑制する効果を奏する。したがって、コイル部品10は、コイルの上下方向がコアによってほとんど遮蔽されない横型に比べて、コイル部品10の上下方向への漏れ磁束を抑制することができる。
【0068】
また、図5に示すように、コイル部品10は、二次コイル30が一次コイル20の外周を周回する2重構造である。2重構造とすることによって、コイル部品10は、コア12の軸方向の長さを短縮し、縦型でありながら薄型のコイルを実現することができる。
【0069】
したがって、コイル部品10は、アルミ製の遮蔽板等を設けなくても、周辺の構造材等における渦電流の発生を防止することができる。また、渦電流の発生を防止することにより、コイル部品10は、渦電流の発生に伴う熱やノイズの発生を低減することができる。また、コイル部品10は、漏れ磁束を遮蔽するための遮蔽板を設ける必要がないため、良好な放熱特性を有する。さらに、コイル部品10は、コア12の中脚14および側脚16,18の長さが短いため、外部からの衝撃等によるコア12の損傷を防止することができる。
【0070】
ここで、従来技術に係る2重構造のコイル部品では、一次コイルの外周が二次コイルに覆われているために、一次コイルから端子までの配線は、二次コイルを上下方向に避けて行う必要がある。しかし、従来技術に係るコイル部品では、このような配線を実現しようとすると、薄型化か絶縁特性のいずれかが犠牲になるという問題を有していた。
【0071】
たとえば、一次コイル20の配線を、一次コイル20から垂直下方へ向かって、ボビン40のボビン用基板42を貫通するように引き回した場合には、コア12のベース部13bと一次リード線23との沿面距離が小さくなり、絶縁特性の確保が難しくなるという問題を生じる。
【0072】
本実施形態に係るコイル部品10では、一次コイルの外周縁22と、二次コイル内周縁31との距離が、周方向に沿って変化する構成とすることによって、一次コイル外周縁22と二次コイル内周縁31の間に中間領域80を設けてある。コイル部品10は、この中間領域80に、一次コイル20の一次リード線23を配置することによって、一次コイル20から一次端子70までの配線を容易にし、コア12と一次リード線23との沿面距離を大きくしている。
【0073】
図6に示すように、一次コイル20の巻回形状は楕円であり、楕円の短軸方向は、中脚14および側脚16,18の配列方向である第1方向(X軸方向)に対して平行である。したがって、一次コイル20は、コア12の中脚14の中心軸14cを通り、第1方向に平行な基準軸82に関して、左右対称である。
【0074】
また、二次コイル30の巻回形状はたまご形状であり、たまご形状の長軸および短軸方向は、一次コイル20の巻回形状である楕円の短軸および長軸方向と一致している。すなわち、二次コイル30のたまご形状の長軸は、中脚14および側脚16,18の配列方向である第1方向に対して垂直である。二次コイル30は、長軸の一方の端部に位置する巻回基部34と、他方の端部に位置し巻回基部34より曲率の大きい(曲率半径が小さい)巻回頂部36とを有する。したがって、二次コイル30は、基準軸82に関して、左右非対称である。
【0075】
二次コイル30の巻回頂部36の内周側では、一次コイル外周縁22と二次コイル内周縁31の距離が長くなり、中間領域80が大きく形成される。それに対して、二次コイルの巻回基部34の内周側では、一次コイル外周縁22が、第2中空筒部54を挟んで二次コイル内周縁に近接して配置されており、中間領域80は僅かである。一次コイル外周縁22と二次コイル内周縁31の距離の最大値D1は、必要とされる沿面距離D2等(図7参照)に応じて調整される。
【0076】
このように、コイル部品10では、一次コイル20と二次コイル30の巻回形状を互いに異なる形状とすることにより、一次コイル外周縁22と二次コイル内周縁31の距離を周方向に沿って変化させ、中間領域80を形成している。なお中間領域80は、二次コイル30の中心位置を、中脚14の中心軸14cからずらすことによって形成してもよい。
【0077】
図5に示すように、一次リード線23は、ボビン40に取り付けられた一次端子70と一次コイル20とを接続する。図2および図6に示すように、ボビン40のボビン用基板42には、コイル部品10の外部から中間領域80へ連通する連通路46が形成されている。連通路46は、ボビン用基板42に形成された切り欠き、貫通孔または溝等によって構成される。図7に示すように、一次リード線23は、連通路46を通過して、一次コイル20と一次端子70とを接続する。
【0078】
図5に示すように、一次リード線23は、一次コイル外周縁22から設置面に平行な方向に引き出される横引出部23aと、横引出部23aから設置面に垂直な方向に引き出される縦引出部23bとを有している。横引出部23aは、中間領域80に配置されているのに対して、縦引出部23bは、連通路46を通って、中間領域80の外部と中間領域80の内部に跨って配置される。
【0079】
図7は、コイル部品10を下方から観察した底面図である。一次リード線23は、図5に示す横引出部23aによって、ボビン40のY軸方向へ引き出された後、連通路46を通過してコイル部品10の底面側へ露出している。したがって、コイル部品10は、コア12のベース部13bと一次リード線23の沿面距離D2が長く、好適な絶縁特性を奏することができる。例えば、沿面距離D2は、4mm〜12mm程度とすることができる。また、コイル部品10では、中間領域80の形状・大きさおよび連通孔46の配置を調整することで、沿面距離D2を調整することができる。
【0080】
また、本実施形態では、ボビン基板42に対して一次端子70と二次端子72とを形成するために、ケース50には端子を設ける必要がない。このため、ケース50の形状を自由に設計することが可能になり、設計の自由度が増し、低背化が容易になると共に、ボビン40に比較して、ケース50として比較的に安価な樹脂を選択することが可能になり、製造コストの低減も可能である。なお、端子70および72が形成されるボビン40は、端子70および72へのハンダ処理などのために耐熱性が要求される。
第2実施形態
【0081】
図8および図9に示すように、第2実施形態では、以下に示す以外は第1実施形態と同様にしてコイル部品10aを構成してあり、共通する部材には共通する符号を付し、その説明は省略する。
【0082】
この実施形態では、図8および図9に示すように、ボビン基板40の端部45に対して、ケース50の下鍔部58の先端部55aと、中間鍔部56の先端部55bとを、Y軸方向に突き出させてある。本実施形態では、突き出された下鍔部58の先端部45aにリード用第1溝部57aを形成すると共に、中間鍔部56の先端部45bにリード用第3溝部57bを形成する。
【0083】
そのため、本実施形態では、ボビン基板42の端部45にはリード用第2溝部を形成しなくとも、リード線33の端部をリード用第1溝部57aまたは第3溝部57bに係止させて二次端子72の接続部72aに巻き付ける作業が容易である。ボビン基板42の端部45にリード用第2溝部を形成しなくとも良くなることから、ボビン40の成形が容易になり製造コストの低減を図れると共に、ボビン40の強度を向上させることが可能となる。
【0084】
なお、上述の第1および第2実施形態において、コア12の中脚14a(14b)の断面形状は楕円であるが、中脚14a(14b)の断面形状は特に限定されず、円、多角形等、その他の形状であっても良い。また、一次コイル20および二次コイル30の巻回形状についても、特に限定されず、円、多角形等、その他の形状であっても良い。
【0085】
また、コイル、リード線および端子に対する「一次」および「二次」の名称は便宜的なものであり、本発明では、ボビン40に装着されるコイルを一次コイルと称し、ケースに装着されるコイルを二次コイルと称し、必ずしも一次コイルが入力側である必要はなく、一次コイルが出力側であっても良く、二次コイルが入力側であっても良い。
【0086】
さらに、本発明によれば、二次コイル30は、基準軸82に関して必ずしも左右非対称である必要はなく、一次リード線23の引き出しが確保されれば、二次コイル30は、基準軸82に関して対称でもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…コイル部品
12…コア
12a…第1コア
12b…第2コア
13a,13b…ベース部
14…中脚
14c…中心軸
16,18…側脚
20…一次コイル
21…一次コイル内周縁
22…一次コイル外周縁
23…一次リード線
23a…横引出部
23b…縦引出部
30…二次コイル
31…二次コイル内周縁
33…二次リード線
34…巻回基部
36…巻回頂部
40…ボビン
42…ボビン用基板
42a…溝部
44…第1中空筒部
45…端部
46…連通路
47…リード用第2溝部
48…ボビン鍔部
49…係合突起
50…ケース
52…上鍔部
52a…貫通孔
54…第2中空筒部
55a,55b…先端部
56…中間鍔部
57a…リード用第1溝部
57b…リード用第3溝部
58…下鍔部
59…側面部
59a…係合孔
70…一次端子
72…二次端子
80…中間領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルが外周に巻回される第1中空筒部が形成してあるボビン基板を有するボビンと、
前記一次コイルの外周に装着可能で二次コイルが外周に巻回される第2中空部が形成してあると共に、前記ボビン基板の上面に装着されるように前記第2中空部の下端に形成してある下鍔部が形成してあるケースと、
を有するコイル部品であって、
前記ボビン基板には、前記一次コイルに接続するための一次端子と、前記二次コイルに接続するための二次端子とが形成してあり、
前記二次端子が形成してある前記ボビン基板の端部まで前記ケースの下鍔部の二次端子側先端部が少なくとも延びており、前記先端部には、前記二次コイルのリード線を前記二次端子との接続部に案内する複数のリード用第1溝部が形成してあることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記ボビン基板の端部には、前記リード用第1溝部に案内される前記リード線を、前記二次端子との接続部にさらに案内するリード用第2溝部が形成してあり、
少なくとも前記リード用第2溝部に重なる位置まで、前記ケースの下鍔部の二次端子側先端部が延びている請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記ボビン基板の端部と同等以上に、前記ケースの下鍔部の二次端子側先端部が突き出ている請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記リード用第1溝部は、前記下鍔部の二次端子側先端部で、前記ボビン基板の端部に沿って形成してある請求項1〜3のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記ケースの前記第2中空筒部の上端には上鍔部が形成してあり、
前記上鍔部と下鍔部との間に位置する前記第2中空筒部の外周には、少なくとも1つの中間鍔部が形成してあり、
前記二次端子が形成してある前記ボビン基板の端部まで前記中間鍔部の先端部が延びており、前記中間鍔部の先端部には、前記二次コイルのリード線を前記二次端子との接続部に案内するリード用第3溝部が形成してある請求項1〜4のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1中空筒部の貫通孔には、一対のフェライトコアの中脚が、前記第1中空筒部の上下からそれぞれ挿入され、当該一対のフェライトコアの側脚およびベース部は、前記ケースおよびボビンの一部を外周から覆うように組み立てられる請求項1〜5のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項7】
前記一次コイルの外周縁と、前記二次コイルの内周縁との距離が、周方向に沿って変化している請求項1〜6のいずれかに記載のコイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16737(P2013−16737A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150201(P2011−150201)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(511112261)TDK韓国株式会社 (3)
【Fターム(参考)】