説明

コイル

【課題】 インダクタンスがより大きいコイルを提供する。
【解決手段】 コイル1は、スルーホール6a〜6vが形成された本体部材10と、本体部材10に形成された金属配線20と、を有し、金属配線20が、コイルパターンを形成するように、本体部材10の外表面及びスルーホール6a〜6vの内表面に沿って連続的に延在する構成を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに関し、特に、スイッチング電源装置の回路に好適なコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧から所望の出力電圧を得る電源装置の方式として、シリーズ方式とスイッチング方式とが知られている。シリーズ方式は、交流電圧をトランスによって電圧変換して、変換後の電圧を直流電圧に整流する方式である。スイッチング方式は、例えば特許文献1にも記載されているように、直流電圧をスイッチングによって高周波の交流電圧に変換し、それを再び直流電圧に変換する方式である。このうち、スイッチング方式によれば、シリーズ方式に比べてエネルギー効率が良く、電源装置の小型化や軽量化も図ることができるというメリットが得られる。このような理由もあり、スイッチング方式の電源装置は広範な分野で用いられている。
【0003】
図6に、一例として、スイッチング方式の電源装置の回路構成を示す。なお、図6に示される回路は、入力電圧を降圧して出力する降圧チョッパ回路である。
図6の降圧チョッパ回路Pは、スイッチング素子Trと、ダイオードDと、コイルLと、コンデンサCと、制御回路Mとを備える。制御回路Mは、検出される出力電圧(検出位置pにおける電圧)に応じて、その出力電圧が所望の電圧となるようにスイッチング素子Trのオン/オフを制御する。スイッチング素子Trは、例えばトランジスタからなる。
【0004】
スイッチング素子Trの状態がオン状態(接続状態)のとき、直流電源Vccから入力される直流電流は、コイルLに流れて負荷RLに供給される。このとき、コイルLを流れる直流電流によってそのコイルLに磁気エネルギーが蓄えられる。なお、このときダイオードDは非導通状態である。
【0005】
スイッチング素子Trの状態がオン状態からオフ状態(非接続状態)になると、コイルLに蓄えられていた磁気エネルギーに応じた電流が負荷RLに供給される。このとき、ダイオードDは導通状態である。
【0006】
コンデンサCは充放電を繰り返して負荷RLに供給される電流を平滑化する機能を有する。
このような例えば降圧チョッパ回路にて構成されるスイッチング方式の電源装置においては、スイッチング周波数をなるべく大きくする試みがなされている。スイッチング周波数を大きくすることによって、制御応答が早くなるだけでなく、コイルやコンデンサをより小型化することができるためである。また、小型化できる理由は、スイッチング周波数を大きくするほどコイルにより多くのエネルギーを蓄えることができるようになるためである。そして、コイルやコンデンサの小型化に伴い、電源装置全体についても小型化を図ることができる。小型化を図ることができれば、その分コストも低減され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−320061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スイッチング方式の電源装置の回路においては、一方で、スイッチング周波数を大きくするほど単位時間あたりの電力損失が増えてしまうという問題もある。即ち、単位時間あたりの電力損失は、スイッチング1回あたりに失われるエネルギーに単位時間あたりのスイッチング回数を乗じた値となる。
【0009】
また、スイッチング周波数を大きくするほど、コイルにおいて表皮効果がより顕著に発現し、エネルギー損失(いわゆる銅損)が大きくなる。具体的には、コイルの導体に流れる電流が直流であれば電流はコそのイルの導体断面に一様に分布するが、周波数が大きくなるほど電流はコイルの導体表面に集中してコイルの断面内部の電流密度が小さくなる(表皮効果)。つまり、コイルの導体の抵抗が大きくなる。このため、エネルギー損失が大きくなってしまってコイルに蓄えられ得る磁気エネルギーも小さくなる。
【0010】
このような理由から、コイル、コンデンサ、及び電源装置の小型化、並びにその小型化によるコスト低減のメリットを享受するために、スイッチング周波数を大きくこと以外に、コイルのインダクタンスをより大きくすることが課題の1つとされている。インダクタンスとは、回路における磁束と、その磁束を生じさせる電流との比であり、別の言い方では、電流変化率に対する誘導起電力の比である。コイルのインダクタンスをより大きくするとは、つまり、コイルに蓄え得る磁気エネルギーをより大きくすることであり、コイルのインダクタンスが大きいほどコイルを小さくし得る(コイルが相対的に小さくても十分な性能が得られ得る)。従って、例えばスイッチング方式の電源装置の回路に用いられるコイルにおいては、インダクタンスが大きいことが好ましい。
【0011】
そこで、本発明は、スイッチング方式の電源装置の回路に用いるのに適した、インダクタンスがより大きいコイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明のコイルは、スルーホールが複数形成された本体部材と、本体部材に形成された金属配線と、を有し、金属配線が、コイルパターンを形成するように、本体部材の外表面及びスルーホールの内表面に沿って連続的に延在していることを特徴としている。
【0013】
本願出願人は、このような構成が採用された本発明のコイルによれば、従来品よりも、コイル全体の大きさに比してより大きな磁気エネルギーを蓄えることができることを見出した。換言すれば、本発明の構成を採用することにより、コイルのインダクダンスを大きくし得ることを見出した。
【0014】
この理由としては、例えば次のような点が考えられ得る。
例えば、本発明では、金属配線は、スルーホール以外の箇所においては、本体部材の表面を覆って延在する。金属配線が、本体部材の内部ではなく本体部材の表面(即ち、外表面)を延在するという構成により、金属配線は、本体部材の外形のさらに外側に存在することとなる。コイルのインダクタンスは、そのコイル形状の断面積が大きいほど大きくなるため、金属配線が本体部材の内部ではなく外表面を延在するという構成は、コイルのインダクタンスをより大きくする方向に作用し得る。このような点から、金属配線が本体部材の外表面を延在するという構成によればインダクタンスをかせぎ得る、ということが考えられる。
【0015】
特に、このような本発明のコイルは、高周波のスイッチング電源装置の回路に用いるのに非常に適している。
この理由としては、例えば次のような点が考えられ得る。
【0016】
例えば、金属配線がスルーホール内を延在することから、金属配線がスルーホールの内表面を覆うこととなる。金属配線がスルーホール内を覆って延在するという構成により金属配線の表面積が大きくなり、電流の周波数が大きくなった際に電流が金属配線の表面領域に集中するという表皮効果が、金属配線における電流がむしろ流れやすくなるという点においてプラスに作用する可能性が考えられる。
【0017】
また、本発明のコイルでは、金属配線は、複数のスルーホールのうち第1番目のスルーホールとして定義される第1スルーホールを延在し、その第1スルーホールの出口から、第2番目のスルーホールとして定義される第2スルーホールに向かって本体部材の表面を延在し、さらに、第2スルーホールから順次、第n番目のスルーホールとして定義される第nスルーホールまで連続的に延在している、という構成を備え得る。
【0018】
金属配線が、本体部材の表面及びスルーホールを順次連続的に延在してコイルパターンを形成することにより、前述したような作用効果を奏し得る。
また、本発明のコイルにおいては、本体部材は直方体状に形成され、スルーホールは、本体部材における相対する2面と略垂直に、本体部材を貫通していても良い。
【0019】
この場合、金属配線は、本体部材及びスルーホールを順次連続的に延在して、コイルパターンの形状が直方体状となるようにそのコイルパターンが形成されることとなる。コイル形状が直方体となるようにコイルパターンが形成されることで、コイルパターンが円筒形状となるようにコイルパターンが形成されるよりも、コイル形状の断面積を容易にかせぎ得る。この趣旨について説明する。例えば、平面上にて、ある四角形とその四角形の中に収まる円とを考えると、その四角形と円とでは、四角形のほうが面積が大きくなり得る。同様に、ある直方体とその直方体に収まる円筒とを考えると、その直方体と円筒とでは、直方体のほうが断面積が大きくなり得る。このため、コイル形状が直方体となるようにすれば、コイル形状の断面積をかせぐことができるとも言え、コイルのインダクタンスの向上に寄与できると考えられる。
【0020】
また、本発明のコイルにおいては、金属配線は、スルーホールの内表面において、その内表面全部を覆っていても良い。
これによれば、金属配線の表面積をより大きくすることができ、金属配線の表面積が大きくなることによる前述したような効果(表皮効果がプラスに作用し得ること)がより得られやすくなることが考えられる。
【0021】
また、本発明では、スルーホールは円筒形状に形成されていても良い。
このような構成によれば、スルーホール内に金属配線を形成することがより容易となり得る。また、スルーホール自体の加工が容易となり得る。例えば、スルーホールを多角形の筒状に形成すると、スルーホール内に角が生じるため、その角部においては金属配線の形成が難しくなり得る。また、スルーホールを多角形の筒状に形成することは、スルーホールを円筒状に形成する場合に比べて簡単でないことは容易に想像し得る。このため、スルーホールの形状を円筒形状とすることにより、コイルの製造が容易となり、コストの点、及びコイルの性能や品質の安定化を図るという点などにおいて有利である。このような本発明のコイルは、製造が容易であるが故にプリント基板の製造工程においても製造可能となり得る。また、量産性にも優れる。なお、スルーホールを多角形の筒状に形成する場合における上記のような問題が解消されるのであれば、スルーホールを多角形の筒状に形成しても良いことは勿論である。
【0022】
また、本発明のコイルでは、本体部材において、複数のスルーホールは、互いに交錯しないように設けられていることが好ましい。スルーホールが交錯していると、金属配線も交錯することとなり、コイルの機能が阻害される可能性が懸念されるためである。
【0023】
また、本発明のコイルでは、金属配線は、メッキ加工により形成されていても良い。メッキ加工によれば、金属配線を容易に形成し得る。また、金属配線の厚みを高い精度で一様とすることができ、コイルの性能や品質の安定化を図るという点において有利である。
【0024】
また、本発明のコイルでは、本体部材は、スルーホールが存在しない領域に磁性体を含んでいても良い。つまり、磁性体がコイルのコアとして機能し得、コイルのインダクタンスをより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のコイル1の斜視図である。
【図2】第1実施形態のコイル1の平面図(図1のX矢視図)である。
【図3】第1実施形態のコイル1の底面図(図1のY矢視図)である。
【図4】第1実施形態のコイル1の断面図(図2のA−A断面図)である。
【図5】第2実施形態のコイル1の斜視図である。
【図6】スイッチング方式の電源装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、第1実施形態のコイル1を示す斜視図である。なお、図1において、上下方向及び左右方向を図示している。以下の説明では、適宜、図1において図示されている上下方向及び左右方向を用いる。
【0027】
図1に示す第1実施形態のコイル1は、図6に示すようなスイッチング方式の電源装置の回路におけるコイルとして用いられ得る。なお、図6については[背景技術]の欄にて説明しているためここでは図6に関する説明を省略することとする。
【0028】
第1実施形態のコイル1は、本体部材10に金属配線20が形成されてなる。
本体部材10はガラスエポキシ樹脂にて形成されている。また、本体部材10は直方体形状に形成されている。本体部材10の縦、横、高さの寸法はそれぞれ数mmオーダーであり、例えば3〜5mmの範囲の寸法であっても良い。図1において、符号11〜16は、本体部材10の各面を示し、具体的には、上面11、底面12、右側面13、左側面14、前面15、背面16を示す。
【0029】
本体部材10には、スルーホール群6が形成されている。スルーホール群6は、本体部材10における左側(左側面14近辺)、及び右側(右側面13近辺)のそれぞれにおいて設けられ、スルーホール6a〜6v(図2,3参照)を含む。なお、図1においては、スルーホール6a〜6vのうち、スルーホール6a,6k,6l,6vについて符号を付して示している。
【0030】
スルーホール6a〜6vは円筒形状の孔である。換言すれば、スルーホール6a〜6vは、輪切りされた断面形状が円形形状を有する孔である。スルーホール6a〜6vの孔の直径は例えば0.1〜0.2mm程度であっても良い。なお、スルーホール6a〜6vは、例えばドリル加工により形成される。ただし、スルーホール6a〜6vの加工方法は何ら限定されるものではなく、例えば、レーザ加工、ウォータジェット加工など、どのような加工方法が用いられても良い。
【0031】
このスルーホール6a〜6vは、本体部材10の上面11及び底面12に対し垂直な方向に沿ってその本体部材10を貫通するように形成されている。また、スルーホール6a〜6vは、本体部材10の右側面13、左側面14、前面15、及び背面16と接したり交錯したりしないように本体部材10に形成されている。また、スルーホール6a〜6vは、お互い同士でも接したり交錯したりしないように本体部材10に形成されている。
【0032】
金属配線20は、本体部材10の表面及びスルーホール6a〜6vの内面に沿って連続的に形成されてなる。
具体的には、図1に示すように、金属配線20は、本体部材10の上面11においてその上面11の長手方向に沿って、スルーホール6a〜6vのうち対応する2つのスルーホール同士をつなぐように、その2つのスルーホール同士の間それぞれに連続的に形成されている。なお、金属配線20は、メッキ加工により形成される。
【0033】
図1において、上面11上に現れて見える金属配線20は、スルーホール6a〜6vを介して底面12まで達している。
金属配線20は、底面12においても、その底面12の長手方向に沿って、スルーホール6a〜6vのうち対応する2つのスルーホール同士をつなぐように、その2つのスルーホール同士の間それぞれに連続的に形成されている。
【0034】
この金属配線20の詳細について、図2〜4を用いて説明する。
図2は、図1についてのX矢視図(上面11を上方から見た図)である。
図3は、図1についてのY矢視図(底面12を下方から見た図)である。
【0035】
図4は、図2についてのA−A断面図である。なお、図4においては、理解を助けるため、上面11における金属配線20の一部、及び底面12における金属配線20の一部も示している。
【0036】
金属配線20は、図2に示すように、配線部2a〜2lを有する。
配線部2aは、上面11において、前面15寄りかつ左右方向中央よりも右側に位置する端部2Sを起点とし、スルーホール6aまで延在している。なお、ここでいう「起点」とは、説明の便宜上「起点」と表現されているにすぎないものであって、「起点」という用語によって、コイル1の始点及び終点、換言すればコイル1の方向性が限定されるものではない。
【0037】
配線部2aは、上面11においてスルーホール6aまで延在し、さらにそのスルーホール6a内を延在して上面11の反対側の底面12まで達している。ここで、配線部2aは、円形状に形成されている部分(以下、円状部と記載する)4aを有している。円状部4aは、スルーホール6aの開口を囲むように形成されている部分である。円状部4aが存在することにより、配線部2aのうち、上面11に延在する部分とスルーホール6a内を延在する部分との連続性がより確実に確保される。具体的には、配線部2aが、スルーホール6aの開口周辺にて十分な余裕しろをもって形成されていることにより(円状部4aが形成されていることにより)、配線部2aが上面11からスルーホール6a内部へ至る箇所において、何らかの原因(例えば、製造上の原因や、応力発生による破損等が考えられ得る)でその配線部2aが途切れてしまうような事態が生じることを抑制し得る。
【0038】
上面11からスルーホール6a内を延在して底面12に達している配線部2aは、底面12において配線部3a(図3参照)と連続している。なお、第1実施形態では、説明上、配線部2aは、図2において符号「2a」にて示された部分、及びスルーホール6a内を延在する部分からなるものとする(例えば図4も参照)。
【0039】
ただし、「配線部2a」、「配線部3a」というような記載について、説明の便宜上「2a」,「3a」というように符号が区別されて説明されているのにすぎないものであり、これは、配線部2aと配線部3aとが別々の或いは独立した構成であることを意図するものではない。配線部2aと配線部3aとはあくまで一体(一本)の配線を形成しているものとして理解され得る。配線部2b〜2l(図2参照)、配線部3b〜3k(図3参照)についても同様である。つまり、配線部2a〜2l,3a〜3kは、全て連続していて一体(一本)の配線として理解され得る。
【0040】
そのように理解されるべきことを前提として、図3に基づきさらに説明する。
前述のように配線部2aは底面12において配線部3aと連続し、図3に示すように、その配線部3aは、スルーホール6aと、底面12にてその底面12の長手方向においてスルーホール6aに対向するスルーホール6lとの間をつなぐように延在している。換言すれば、配線部3aは、スルーホール6aの開口からスルーホール6lの開口に向かって伸びているとも言える。そして、配線部3aは、スルーホール6l内を延在して、上面11に達している。なお、配線部3aは、図3において符号「3a」にて示された部分、及びスルーホール6l内を延在する部分を含むものとして理解されても良い(例えば図4も参照)。
【0041】
なお、図3の底面12の図に関し、スルーホール6aとスルーホール6lとは金属配線(配線部3a)にてつながり、そのスルーホール6a,6lは対応する(対向する)スルーホールとみなし得る。
【0042】
配線部3aは、円状部5a,5lを有する。
円状部5aは、スルーホール6aの開口を囲むように形成されている部分である。円状部5lは、スルーホール6lの開口を囲むように形成されている部分である。円状部5a,5lが存在することにより、前述のように、配線部3aの連続性(ひいては金属配線20の連続性)がより確実に確保される。
【0043】
図3の底面12の図に関し、スルーホール6b〜6kが、それぞれ、スルーホール6m〜6vと対応(対向)している。具体的には、スルーホール6bとスルーホール6mとが対応(対向)している。スルーホール6c〜6kとスルーホール6n〜6vとの対応関係については明白であるのでここでは説明を省略する。
【0044】
また、スルーホール6b〜6kとスルーホール6m〜6vとの間のそれぞれにおいて、配線部3b〜3kが延在している。配線部3b〜3kは、それぞれ、円状部を有している。円状部は、配線部3b〜3kに対応して、円状部5b〜5vとして示されている。
【0045】
スルーホール6bとスルーホール6mとについて見ると、それらの間に配線部3bが延在している。配線部3bは、スルーホール6bの開口周辺に形成された円状部5bと、スルーホール6mの開口周辺に形成された円状部5mとを有する。
【0046】
配線部3c〜3k、及び円状部5c〜5k,5n〜5vについては、ここでは説明を省略することとする。
底面12からスルーホール6l内を延在して上面11に達している配線部3aは、上面11において配線部2b(図2参照)と連続している。
【0047】
図2に戻りさらに説明する。
前述のように配線部3aは上面11において配線部2bと連続し、図2に示すように、その配線部2bは、スルーホール6lとスルーホール6bとの間をつなぐように延在している。配線部2bは、スルーホール6lの開口からスルーホール6bの開口に向かって伸びているとも言える。この配線部2bは、スルーホール6b内を延在して、底面12に達している。
【0048】
スルーホール6bは、本体部材10において、スルーホール6aが形成された側に形成されている。スルーホール6bは、スルーホール6aに最も近接するスルーホールである。第1実施形態では、スルーホール6bは、スルーホール6aよりも、右側面13からやや離れた位置にある。
【0049】
ここで、配線部2bは、段状部8bを有している。段状部8bは、配線部2bがスルーホール6lの開口からスルーホール6bの開口に向かって延在するにあたり配線部2aをかわすように段状に形成された部分である。配線部2bは、段状部8bを有することにより、配線部2aをかわしてその配線部2aと接触することなく、スルーホール6lの開口からスルーホール6bの開口に向かって延在している。
【0050】
また、配線部2bは、スルーホール6lの開口周辺に形成される円状部4l、及びスルーホール6bの開口周辺に形成される円状部4bを有している。
図2の上面11の図に関し、スルーホール6lとスルーホール6bとは金属配線にてつながり、そのスルーホール6l,6bは対応する(対向する)スルーホールとみなし得る。
【0051】
図2の上面11の図に関し、スルーホール6c〜6kが、それぞれ、スルーホール6m〜6uと対応(対向)している。具体的には、スルーホール6cとスルーホール6mとが対応(対向)している。スルーホール6d〜6kとスルーホール6n〜6uとの対応関係については明白であるのでここでは説明を省略する。
【0052】
また、スルーホール6c〜6kとスルーホール6m〜6uとの間のそれぞれにおいて、配線部2c〜2kが延在している。配線部2c〜2kは、それぞれ、段状部8c〜8kを有している。また、配線部2c〜2kは、それぞれ、円状部を有している。円状部は、配線部2c〜2kに対応して、円状部4c〜4uとして示されている。
【0053】
スルーホール6cとスルーホール6mとについて見ると、それらの間に配線部2cが延在している。配線部2cは、スルーホール6cの開口周辺に形成された円状部4cと、スルーホール6mの開口周辺に形成された円状部4mとを有する。
【0054】
この配線部2cは、右側面13側では、配線部2bの円状部4bを超えてその配線部2bよりも右側面13により近い側まで延在している。一方、配線部2cは、左側面14側では、配線部2bの円状部4lよりも左側面14からやや離れた位置まで延在するにとどまる。配線部2cは、配線部2dに対しても同様の位置関係を有する。
【0055】
そして、配線部2cにおいて、配線部2bの円状部4b,4l及び配線部2dの円状部4d,4nと隣接する箇所は、その円状部4b,4l及び円状部4d,4nをかわすようにくびれている。
【0056】
配線部2d〜2lについては、ここでは説明を省略することとする。
以上のような構成により、金属配線20(図1参照)は、図2,3にて説明したように、上面11、底面12、及びスルーホール6a〜6v内を順次延在し、最終的に配線部2l(図2参照)まで連続する。
【0057】
配線部2lは、スルーホール6vの開口と接続し、終点としての端部2Eまで延在している。なお、「終点」という文言によって、コイル1の始点及び終点、換言すればコイル1の方向性が限定されるものではないことは前述のとおりである。
【0058】
配線部2lは、スルーホール6vの開口周辺に形成される円状部4vを有している。そして、配線部2lにおける直線状の部分は、図2の図面上、円状部4vの上方(背面16側)にてその円状部4vと連続するように、左側面14から端部2Eまで延びている。換言すれば、円状部4vは、図2の図面上(見かけ上)、配線部2lの直線状の部分にぶら下がるように形成されている。
【0059】
なお、配線部2lは、図2の図面上配線部2kにおける段状部8kの左側やや上方まで延在し、換言すればその配線部2kと接触しない範囲で延在している。
次に、スルーホール内における配線部の構成について図4を用いて説明する。
【0060】
配線部2aは、本体部材10の上面11において、端部2Sを起点としてスルーホール6aの開口まで延在している。そして、配線部2aは、図4の断面図に示すように、上面11からそのままスルーホール6a内に入り込むようにして、スルーホール6aの内表面を覆っている。さらに具体的には、配線部2aは、スルーホール6aの内表面全部を覆っている。
【0061】
そして、配線部2aは、スルーホール6a内を延在して本体部材10の底面12まで達し、配線部3aと連続している。なお、スルーホール6l内の配線部3aについても図4の断面図に現れているが、配線部3aの説明は配線部2aの説明と同様となるため、ここでは配線部3aの説明は省略する。
【0062】
以上説明したような第1実施形態のコイル1によれば、従来品よりも、コイル全体の大きさに比してより大きな磁気エネルギーを蓄えることができる
例えば、第1実施形態のコイル1では、金属配線20は、スルーホール6a〜6v以外の箇所においては、本体部材10の表面(上面11及び底面12)に沿って延在する。金属配線20が、本体部材10の内部ではなく本体部材10の表面(即ち、外表面)を延在するという構成により、金属配線20は、本体部材10の外形のさらに外側に存在することとなる。一般的には、コイルのインダクタンスは、コイル形状の断面積が大きいほど大きくなるため、金属配線20が本体部材10の内側ではなく外表面を延在するという構成は、コイル1のインダクタンスをより大きくする方向に作用し得る。このような点から、金属配線20が本体部材10の外表面を延在するという構成によればインダクタンスをかせぎ得る、という可能性が考えられる。
【0063】
特に、第1実施形態のコイル1は、高周波のスイッチング電源装置の回路に用いるのに非常に適している。
例えば、金属配線20は、スルーホール6a〜6v内を延在している。具体的には、金属配線20は、スルーホール6a〜6vの内表面を覆っている。特に、金属配線20は、スルーホール6a〜6vの内表面全体を覆っている。金属配線20がスルーホール内を覆って延在するという構成により金属配線20の表面積が大きくなり、電流の周波数が大きくなった際に電流が金属配線20の表面領域に集中するという表皮効果により、金属配線20における電流がむしろ流れやすくなる可能性が考えられる。
【0064】
また、第1実施形態のコイル1においては、本体部材10は直方体状に形成され、スルーホール6a〜6vは、本体部材10における上面11と底面12とに略垂直に、本体部材10を貫通している。このため、金属配線20は、本体部材10及びスルーホール6a〜6vを順次連続的に延在して、コイルパターンの形状が直方体状となるようにそのコイルパターンが形成されることとなる。
【0065】
コイルパターンが直方体形状に形成されることで、コイルパターンが円筒形状に形成されるよりも、コイルパターンの断面積をかせぎ得る。例えば、平面上にて、ある四角形とその四角形の中に収まる円とを考えると、その四角形と円とでは、四角形のほうが面積が大きくなり得る。同様に、ある直方体とその直方体に収まる円筒とを考えると、その直方体と円筒とでは、直方体のほうが断面積が大きくなり得る。このような点を考慮すると、コイルパターンを直方体形状に形成するほうが、コイル形状の断面積をかせぐことができると言え、コイルのインダクタンスの向上に寄与できると考えられる。
【0066】
また、本第1実施形態のコイル1は、製造が容易であるが故にプリント基板の製造工程において製造可能であるとともに量産性に優れている。プリント基板の製造工程においてコイル1を製造するような方法によれば、プリント基板の製造コストも低減し得る。
【0067】
なお、本第1実施形態においては、例えば、スルーホール6aが第1番目のスルーホールとして理解されても良く、スルーホール6lが第2番目のスルーホールとして理解されても良い。以降、スルーホール6bが第3番目、スルーホール6mが第4番目、と理解されても良く、スルーホール6vが第n番目(n=22)と理解されても良い。
[第2実施形態]
以下、第2実施形態のコイル1について図5を用いて説明する。なお、第1実施形態のコイル1の構成と異なる点のみ説明する。
【0068】
第2実施形態のコイル1では、本体部材10において、スルーホール6a〜6vが存在しない領域に、磁性体30が設けられている。この磁性体30は、スルーホール6a〜6vをかわしてそのスルーホール6a〜6vと交錯しないように、本体部材10の前面15と背面16との間を貫くように設けられている。
【0069】
このような第2実施形態のコイル1によれば、磁性体30がコイル1のコアとして機能し、コイル1のインダクタンスがより大きくなるため有利である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定さえるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において種々の形態をとり得る。
【0070】
例えば、上記実施形態では本体部材10が直方体形状を有している例について説明したが、本体部材10は立方体形状であっても良い。また、金属配線20がコイルパターンを形成するように延在することが阻害されないかぎり、本体部材10の形状はどのような形状であっても良い。また、本体部材10は、その本体部材10における上面11、底面12、右側面13、左側面14、前面15及び背面16の全部又は一部が、膨らみやへこみを有していても良い。例えば、上面11、底面12、右側面13、左側面14、前面15及び背面16の全部又は一部が膨らみを持っているような形状によれば、金属配線20のコイルパターンの断面積をよりかせぐことができ、コイル1のインダクタンスの向上に寄与できる。
【0071】
また、上記実施形態では、スルーホール6a〜6vが、上面11及び底面12に対して垂直にかつ直線的に形成されている例について説明したが、スルーホールは、上面11及び底面12に対し所定の角度を持って形成されていても良い。また、スルーホール6a〜6vは、直線的に形成されていなくても良い。例えば、スルーホールは、上面11及び底面12の間において、円弧状に延在するように形成されていても良い。
【0072】
また、上記第2実施形態では、磁性体30が、本体部材10の前面15と背面16との間を貫くように設けられているが、磁性体30は、本体部材10の内部に閉じこめられるように設けられても良い。例えば、磁性体30は、前面15及び背面16の何れも貫かない形態で、或いは少なくとも何れかを貫かない形態で、本体部材10の内部に設けられても良い。
【符号の説明】
【0073】
1・・・コイル、6・・・スルーホール群、10・・・本体部材、20・・・金属配線、30・・・磁性体、2a〜2l・・・配線部、3a〜3k・・・配線部、4a〜4v・・・円状部、5a〜5v・・・円状部、6a〜6v・・・スルーホール、8b〜8k・・・段状部、C・・・コンデンサ、D・・・ダイオード、L・・・コイル、M・・・制御回路、P・・・降圧チョッパ回路、RL・・・負荷、Tr・・・スイッチング素子、Vcc・・・直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルであって、
スルーホールが複数形成された本体部材と、
前記本体部材に形成された金属配線と、を有し、
前記金属配線が、コイルパターンを形成するように、前記本体部材の外表面及び前記スルーホールの内表面に沿って連続的に延在している
ことを特徴とするコイル。
【請求項2】
請求項1に記載のコイルにおいて、
前記金属配線は、前記複数のスルーホールのうち第1番目のスルーホールとして定義される第1スルーホールを延在し、その第1スルーホールの出口から、第2番目のスルーホールとして定義される第2スルーホールに向かって前記本体部材の表面を延在し、さらに、第2スルーホールから順次、第n番目のスルーホールとして定義される第nスルーホールまで連続的に延在していることを特徴とするコイル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコイルにおいて、
前記本体部材は直方体状に形成され、
前記スルーホールは、前記本体部材における相対する2面と略垂直に、前記本体部材を貫通している
ことを特徴とするコイル。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のコイルにおいて、
前記金属配線は、前記スルーホールの前記内表面において、その内表面全部を覆っていることを特徴とするコイル。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のコイルにおいて、
前記スルーホールは円筒形状に形成されていることを特徴とするコイル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のコイルにおいて、
前記本体部材において、前記複数のスルーホールは、互いに交錯しないように設けられていることを特徴とするコイル。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のコイルにおいて、
前記金属配線は、メッキ加工により形成されていることを特徴とするコイル。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のコイルにおいて、
前記本体部材は、前記スルーホールが存在しない領域に磁性体を含むことを特徴とするコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−169439(P2012−169439A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28811(P2011−28811)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(395023613)株式会社システムデザイン (5)
【出願人】(399031827)エイディシーテクノロジー株式会社 (163)