説明

コイン選別装置およびコイン選別計数装置

【課題】搬送中のコインが挟まるなどして、異常停止した場合に、挟まったコインを容易に取り除くことのできるコイン選別装置およびコイン選別計数装置を提供する。
【解決手段】回転軸402の回転により回転体164をベース124上で正方向に回転させることにより、コインを送り羽根により押動して複数のコイン選別孔に順次搬送し、所定のコイン選別孔にコインを落下させるようにしたコイン選別装置において、回転軸402は、ベース124に対して回転体164の正方向への回転を許容し、かつ、逆方向への回転を阻止するワンウェイクラッチを介して取り付けられ、回転体164は、回転軸402に固定された第1の状態と、第1の状態を解除して回転体164が回転軸402に対して正方向および逆方向に回転自在な第2の状態とを切り換える機構400を介して回転軸402に取り付けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン選別装置に関し、詳しくは、直径の異なる複数種類のコインを混合して供給しても、その種類(すなわち、金種)毎に選別されるコイン選別装置に関する。
【0002】
また、本発明は、コイン選別計数装置に関し、詳しくは、直径の異なる複数種類のコインを混合して供給しても、その種類(すなわち、金種)毎に選別され、選別された金種毎のコインの数(枚数)を計数可能なコイン選別計数装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、所定金種のコインを所定枚数計数して計数を停止するコイン選別計数装置に関する。
【0004】
なお、本明細書において、「コイン」とは、通貨としての硬貨、ゲーム機のメダルおよびトークン等の総称である。
【背景技術】
【0005】
この種の従来のコイン選別計数装置としては、本発明の出願人が先に出願し、公開された特許文献1がある。
【0006】
特許文献1に開示された従来のコイン選別計数装置では、平板状のベースプレートと、回転軸線から所定の半径を有する基準周縁を有し、当該基準周縁から周方向に伸び、かつコインを一つずつ搬送する送り羽根を有し、前記ベースプレートの上側で回転する回転体と、前記ベースプレートの前記基準周縁の外側において、前記基準周縁からの半径方向の距離が小径コインから大径コインの順に対応するコインの直径よりも僅かに大きく、かつ下流の対象コインよりも小さい間隔で形成された外側基準縁を有する複数のコイン選別孔と、前記ベースプレート上の前記コイン選別孔の外側基準縁以遠において、前記基準周縁に向かって所定の力で前記送り羽根によって搬送されるコインを付勢する押付装置と、前記コイン選別孔への落下を検知するセンサとが設けられている。
【0007】
上記従来のコイン選別計数装置では、回転体をベースプレート上で所定方向に回転させることにより、送り羽根によりコインを押動して4つのコイン選別孔に順次搬送し、所定のコイン選別孔にコインを落下させるようにしている。
【0008】
また、4つのコイン選別孔の各々近傍において、コインの通過を検知する5つのセンサが設けられており、それら5つのセンサの各々から出力されるコイン検知信号をマイクロプロセッサにより処理し、所定金種のコインが所定のコイン選別孔に落下したかを確認するとともに、選別したコイン数を計数している。
【0009】
コイン数の計数は、所定時間内に5つのセンサから順にコイン検知信号が出力されるか否かを基準にして行われる。すなわち、コインを搬送しながら、コイン選別孔を隔てて隣接して設けられた2つのセンサのうち、先のセンサからコイン検出信号が出力された後、所定時間以内に後のセンサからコイン検出信号が出力された場合には、そのコイン選別孔にコインが落下していないと判断する。他方、所定時間以内に後のセンサからコイン検出信号が出力されない場合には、そのコイン選別孔にコインが落下したと判断し、そのコイン選別孔に対応する金種のコインを計数するものである。
【0010】
上記所定時間内であるか否かの判断は、回転体にエンコーダを取り付け、当該エンコーダから出力されるパルス信号の数をカウントすることにより判別される。すなわち、パルス数をカウントすることにより回転体の回転角を測定することができ、これにより、時間を回転体の回転角(すなわち、角度座標)に置換することができるのである。その結果、回転ディスクおよび回転体の回転速度に関わらず、コインの落下を判定できる。
【0011】
一般に、コイン選別計数装置は、搬送中のコインがコイン選別孔と送り羽根(コイン搬送部)との間に挟まるなどして正常動作を維持できない場合に、装置の異常を報知して自動的に停止する異常停止機能を有している。異常停止した際には、オペレータが停止の原因となったコインを除去して装置を再始動することにより、選別計数が再開される。これにより、安定した動作を確保できる。
【0012】
なお、コイン選別計数装置は、金種毎にコインを選別し、選別された金種毎のコインの枚数を計数可能とする装置であるから、その機能を応用すれば、所定金種のコインを所定枚数だけ選別することができる。その場合、所定金種のコインが所定枚数だけ計数された時点(すなわち、コインが落下したと判別された時点)でコイン選別計数装置の作動を停止する。
【0013】
この従来のコイン選別計数装置では、次の問題がある。
【0014】
第1の問題は、搬送中のコインがコイン選別孔と送り羽根(コイン搬送部)との間に挟まるなどして、異常停止した場合に、挟まったコインを容易に取り除けないことである。挟まったコインを取り除くには、回転体を逆転(すなわち、逆方向に回転)させるのが有効であるが、回転体はギヤを介して電気モータで駆動されるので、停止状態の回転体を手動で逆転させるには、多大な力を要し容易ではない。
【0015】
この第1の問題は、回転軸と回転体との間にクラッチを介在させることにより、解決できるとも思われる。しかしながら、クラッチを介在させた場合、再固定する際に位相が合わないという問題がある。
【0016】
第2の問題は、回転体がわずかでも逆転すると、回転体の回転角の測定に誤差が生じることである。すなわち、回転体が逆転した場合、本来は回転角を減らす必要があるが、逆転した場合にもエンコーダからはパルスが出力されるのでカウント値は増加することになる。したがって、測定された回転角も増加するので、実際の回転角と測定値との間に誤差が生じることとなる。
【0017】
この第2の問題は、いわゆるアブソリュート型のエンコーダを使用すれば解消されるが、その場合にはコストの増加を招くため俄かに採用できない。
【0018】
特に、回転体は歯車を介して電気モータで駆動されるので、歯車同士の滑らかな噛み合わせに必要な隙間(いわゆる、バックラッシュ)に起因する逆転は避けられず、それに伴う回転角の齟齬が必然的に生じる。その結果、実際は所定パルス数以下であるため、コインがコイン選別孔に落下したと判別しなければならないところを所定パルス数以上になっても落下しないと判断し、選別されたコインの数を正確に計数できなくなってしまう。
【0019】
なお、特許文献2には、所定間隔に配置された複数のコイン係止によりコインを1枚ずつ送り出す回転ディスクと、伝動内歯ギヤと、駆動ギヤと、伝動ギヤと、枢軸と伝導ギヤの逆転防止の機能を有するワンウェイクラッチを具備する構成とし、回転ディスクのバックラッシュを軽減するようにしたコインホッパが開示されている。
【0020】
しかしながら、特許文献2には回転角の測定誤差に関する記載はなく、また、このコインホッパにおいても、上記第1の問題は生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−217807(図1〜図10、段落番号0021〜段落番号0056)
【特許文献2】特開2005−196731(図11〜図13、段落番号0116〜段落番号0119)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上述した従来技術の問題を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、搬送中のコインが挟まるなどして、異常停止した場合に、挟まったコインを容易に取り除くことのできるコイン選別装置およびコイン選別計数装置を提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的は、回転体にエンコーダを取り付け、そのエンコーダから出力されるパルス信号の数をカウントすることにより回転体の回転角を測定する場合にも、パルス信号のカウントに齟齬が生じないようにしたコイン選別装置およびコイン選別計数装置を提供することにある。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、コストの増加を抑制しながら、パルス信号のカウントに齟齬が生じるのを抑制したコイン選別装置およびコイン選別計数装置を提供することにある。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、選別されたコインの数を正確に計数することのできるコイン選別計数装置を提供することにある。
【0026】
ここに明記しない本発明の他の目的は、以下の説明および添付図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この目的を達成するため、本発明にかかるコイン選別装置およびコイン選別計数装置は以下のように構成される。
【0028】
(1)本発明のコイン選別装置は、コインを載置可能なベースと、回転軸線から所定の半径を有する周縁と、その周縁から半径方向に突出し、かつコインを一つずつ搬送する送り羽根とを有し、前記ベースの上側で回転する回転体と、前記ベース上において前記回転体の周縁の外側に位置し、前記回転体の周縁から半径方向に所定の距離をおいて配置された弧状案内面と、前記回転体の周縁と前記弧状案内面との間に配置され、前記ベース上に設けられた複数のコイン選別孔と、前記回転体に形成された軸挿入孔に挿入される回転軸とを備え、
前記回転軸の回転により前記回転体を前記ベース上で正方向に回転させることにより、前記コインを前記送り羽根により押動して前記複数のコイン選別孔に順次搬送し、所定の前記コイン選別孔に前記コインを落下させるようにしたコイン選別装置において、
前記回転軸は、前記ベースに対して前記回転体の正方向への回転を許容し、かつ、逆方向への回転を阻止するワンウェイクラッチを介して取り付けられ、
前記回転体は、前記回転軸に固定された第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記回転体が前記回転軸に対して正方向および逆方向に回転自在な第2の状態とを切り換える機構を介して前記回転軸に取り付けられることを特徴とするものである。
【0029】
本発明のコイン選別装置では、前記回転軸が、前記ベースに対して前記回転体の正方向への回転を許容し、かつ、逆方向への回転を阻止するワンウェイクラッチを介して取り付けられる。したがって、前記回転体の逆転が抑止されて、逆転に伴う前記回転体の回転角の齟齬が抑制されるので、高精度な測定が可能となる。
【0030】
また、前記回転体が、前記回転軸に固定された第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記回転体が前記回転軸に対して正方向および逆方向に回転自在な第2の状態とを切り換える機構を介して前記回転軸に取り付けられる。したがって、前記第2の状態において、前記回転体を容易に逆転できるようになり、異常停止した場合に、挟まったコインを容易に取り除くことができる。しかも、この場合、前記回転軸は前記ワンウェイクラッチにより逆転を阻止されるので、前記回転体の回転角の齟齬が生じない。
【0031】
さらに、アブソリュート型のエンコーダを使用する必要がないので、コストの増加を抑制できる。
【0032】
(2)本発明のコイン選別装置の好ましい例では、前記機構が、前記回転体を前記回転軸に対して所定の回転位相でのみ接続する接続手段を有し、前記接続手段を介して前記回転体を前記回転軸に接続することにより、前記第1の状態が生起され、前記接続手段を介した接続を解除することにより、前記第2の状態が生起されることを特徴とする。この場合、前記回転体が前記回転軸に対して所定の回転位相でのみ接続されるので、前記回転体を他の回転機構(例えば、回転型のコイン整列装置)を用いて当該コイン選別装置を構成する際に、自動的に位相合わせができる。例えば、その回転機構の回転軸と前記回転軸とをギヤを介して駆動すれば、それらの回転軸は同期駆動されるので、前記接続手段を介して前記回転体を前記回転軸に接続した途端に、自動的に位相の合った駆動状態となる。換言すれば、前記接続手段は、前記回転体と前記回転軸との間において所定の位相でのみ回転伝達可能なクラッチとして機能する。
【0033】
(3)本発明のコイン選別装置の他の好ましい例では、前記接続手段が、前記回転体の上面側から前記回転体を前記回転軸の軸方向に押し付ける押圧体と、その押圧体の下面から突出する係止ピンとを有しており、前記回転軸を前記回転体の前記軸挿入孔に挿入した状態で、前記係止ピンを前記回転体に形成された係止穴に挿入しながら、前記押圧体を前記回転体に押し付けることにより、前記係止穴に前記係止ピンが係止されて前記第1の状態が生起され、前記押圧体を前記回転体から引き離すことにより、前記係止穴への前記係止ピンの係止が解除されて前記第2の状態が生起されることを特徴とする。この場合、比較的簡単な構成で前記接続手段を実現できるので低コストで作製できる利点がある。
【0034】
(4)本発明のコイン選別装置のさらに他の好ましい例では、前記回転軸には、前記回転軸の周面から突出する係合ピンが設けられており、前記押圧体の下面には、前記係合ピンが挿入される係合溝が形成されていることを特徴とする。この場合、前記係合ピンを前記係合溝に係合させることで、前記回転軸が前記押圧体に固定される。したがって、比較的簡単な構成で前記接続手段を実現できるので低コストで作製できる利点がある。
【0035】
(5)本発明のコイン選別装置のさらに他の好ましい例では、前記接続手段が、前記押圧体を前記回転体に向けて付勢する付勢部材をさらに有することを特徴とする。この場合、前記付勢部材の付勢力を利用して前記第1の状態を容易に維持できる利点がある。他方、その付勢力に抗する操作をするだけで、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り換えることができるので、操作性が向上するという利点もある。
【0036】
(6)本発明のコイン選別装置のさらに他の好ましい例では、前記回転軸がその本体部より相対的に小径の先端部を有しており、前記本体部と前記先端部との間に形成された段差面により前記回転体が支持されることを特徴とする。この場合、前記回転体を安定して回転できる利点がある。
【0037】
(7)本発明のコイン選別装置のさらに他の好ましい例では、前記ワンウェイクラッチが、前記回転軸を前記ベースに対して回転可能に支持する回転軸支持体と、前記回転軸との間に配置されることを特徴とする。この場合、前記ワンウェイクラッチを容易に形成できる利点がある。
【0038】
(8)本発明のコイン選別計数装置は、上記(1)〜(7)のコイン選別装置と、前記複数のコイン選別孔の各々に落下する前記コインをコイン検出センサで検出し、検出された前記コインの個数を計数するコイン計数装置とを備えることを特徴とするものである。
【0039】
本発明のコイン選別計数装置では、上記(1)〜(7)のコイン選別装置を備えているので、上記(1)〜(7)で述べたと同じ作用・効果が得られる。さらに、上記(1)で述べたように、回転体の回転角を齟齬なく測定できるので、コイン選別孔にコインが落下したか否かの判定に誤りが生じ難くなり、選別されたコインの数を正確に計数することが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のコイン選別装置では、(a)搬送中のコインが挟まるなどして、異常停止した場合に、挟まったコインを容易に取り除くことのできる、(b)回転体にエンコーダを取り付け、そのエンコーダから出力されるパルス信号の数をカウントすることにより回転体の回転角を測定する場合にも、高い精度の測定が可能となる、(c)コストの増加を抑制しながら、パルス信号のカウントに齟齬が生じるのを抑制できる、といった効果が得られる。
【0041】
本発明のコイン選別計数装置では、上記(a)〜(c)の効果に加えて、(d)選別されたコインの数を正確に計数することのできる、といった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例のコイン選別計数装置を示す斜視図である。
【図2】図1のコイン選別計数装置の要部斜視図である。
【図3】図1のコイン選別計数装置の要部分解斜視図である。
【図4】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン選別装置を示す斜視図である。
【図5】図4のコイン選別装置の部分拡大平面図である。
【図6】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン計数装置を示す斜視図である。
【図7】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン計数装置を示す要部分解斜視図である。
【図8】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン計数装置のブロック図である。
【図9】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、コインがコイン選別孔を通過する場合の動作を示す。
【図10】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、図9の続きである。
【図11】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、図10の続きである。
【図12】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、図11の続きである。
【図13】図10のA−A線に沿った断面図である。
【図14】図11のA−A線に沿った断面図である。
【図15】図12のA−A線に沿った断面図である。
【図16】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、コインがコイン選別孔に落下する場合の動作を示す。
【図17】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、図16の続きである。
【図18】図1のコイン選別計数装置の動作を説明するための平面図で、図17の続きである。
【図19】図16のA−A線に沿った断面図である。
【図20】図17のA−A線に沿った断面図である。
【図21】図18のA−A線に沿った断面図である。
【図22】図1のコイン選別計数装置のコイン検出信号を示す波形図である。
【図23】図1のコイン選別計数装置の動作を示すフローチャートである。
【図24】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン選別装置を示す裏面側斜視図である。
【図25】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン選別装置を示す裏面側分解斜視図である。
【図26】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン選別装置を示す平面図である。
【図27】図26のB−B線に沿った断面図である。
【図28】図27におけるD部の拡大断面図である。
【図29】図1のコイン選別計数装置を構成するコイン選別装置の要部分解斜視図で、固定/自在切換機構を説明するための図である。
【図30】図29の固定/自在切換機構の部分を拡大した分解斜視図である。
【図31】図29の固定/自在切換機構の部分を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0044】
図1は、本発明の一実施例のコイン選別計数装置100を示す。このコイン選別計数装置100は、直径の異なる複数金種コインを金種毎に選別し、選別された金種毎のコインを計数する機能を有するもので、大まかにはコイン選別装置102とコイン計数装置104とを含んでいる。
【0045】
(コイン選別装置)
まず、コイン選別装置102について説明する。コイン選別装置102は、コインを金種別に振り分ける機能を有するもので、図1〜図3に示すように、基台106、コイン整列装置108、およびコイン振分装置112を含んでいる。
【0046】
(基台)
図1に示すように、基台106は、コイン整列装置108、コイン振分装置112等を支持する機能を有する。基台106は、側面視台形状の左サイドフレーム114、右サイドフレーム116および両者を接続するステ118、122よりなる。左サイドフレーム114と右サイドフレーム116の上端にベースプレート124が傾斜して固定されている。
【0047】
図2に示すように、ベースプレート124には、コイン整列装置108、コイン振分装置112等が取り付けられる。
【0048】
(コイン整列装置)
コイン整列装置108は、直径の異なる複数種類のバラ状態のコインを一つずつ区分けして送り出す機能を有する。コイン整列装置108は、実施例に限らず他の同様の装置を使用することができる。
【0049】
図1〜図4に示すように、本実施例のコイン整列装置108は、ベースプレート124、回転ディスク126および保留ボウル128を含んでいる。
【0050】
(ベースプレート)
ベースプレート124は、回転ディスク126の通孔132に落下し回転ディスク126によって押動されるコインの下面を支える機能を有する。換言すれば、ベースプレート126はコインを載置可能なベースとして機能する。ベースプレート124は、矩形平板形であり、コインがスライドするため、摩耗しないよう金属、例えばステンレスにより製作することが好ましい。
【0051】
(回転ディスク)
回転ディスク126は、保留ボウル128にバラ状態で保留されたコインを攪拌し、一つずつ区分けして送り出す機能を有する。回転ディスク126は円盤形であって、周縁部に等間隔にコインが落下する円形の通孔132が複数個形成されている。通孔132は、選別する最大直径コインよりも僅かに大径の円形孔である。通孔132の上面側の回転方向後位の後方周面134は斜めに形成し、すり鉢状に形成される。回転ディスク126の通孔132間のリブ136の下面にはコインの押動突条(図示せず)が形成される。
【0052】
回転ディスク126はベースプレート124の上面に固定された最大コイン厚みよりも僅かに厚い薄板からなるほぼ四分の三周を囲う案内リング144の案内孔(図示せず)内に同心状態に配置される。
【0053】
回転ディスク126は、側方に倒立状態に配置した電気モータ148によって減速機152を介して選択的に正転又は逆転される。本実施例において、正転とは図2において時計方向の回転であり、逆転とは反時計方向の回転である。
【0054】
回転ディスク126の中央には裁頭円錐形の攪拌体154が形成されている。
【0055】
(保留ボウル)
保留ボウル128は、多数のコインをバラ状態で保留する機能を有する。図1に示すように、保留ボウル128は縦向きの筒状体であり、下端部156は回転ディスク126よりも僅かに大きい円形に、上端部158は平面視矩形に形成され、下端部と上端部は斜面162によって接続されている。
【0056】
保留ボウル128は、下端部の掛止フック(図示せず)をベースプレート124の掛止孔160にフックし、反対側を固定装置(図示せず)で固定することにより、ベースプレート124の上面に着脱可能に固定される。
【0057】
回転ディスク126は保留ボウル128の下端部156の底部に配置されている。
【0058】
保留ボウル128にバラ積みされた各種コインは、回転ディスク126の回転によって攪拌される。詳述すれば、回転ディスク126上のコインが通孔132に落下したりリブ136に乗り上げたり、および攪拌体154の頂部の斜面により攪拌される。この攪拌によってコインCが通孔132内にベースプレート124と平行に落下した場合、ベースプレート124上面にコインCの下面が支えられる。換言すれば、コインCは一つずつ区分けされる。
【0059】
さらに、コインCの周縁が押動突条(図示せず)によって押動されるので、コインCは案内リング144の案内孔の内周面に案内されつつ回転ディスク126によって連れ回りされる。連れ回りされるコインCは、図5に示すように、送り出し部159において、ベースプレート124から上方に弾性的に突出される規制ピン161A、161Bによって周方向へ誘導され、一つずつ送り出される。
【0060】
なお、ペースプレート124は水平に配置できるが、傾斜した場合、回転ディスク126へのコイン荷重を減少出来ると共に、下方空間を有効に活用できる利点がある。
【0061】
(コイン振分装置)
コイン振分装置112は、コインを金種別に振り分ける機能、詳述すればコインの直径の差を利用して機械的に直径別に振り分ける機能を有する。図4に示すように、コイン振分装置112は、回転体164と、第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、第3コイン選別孔172、および第4コイン選別孔174と、各コイン選別孔に対応して設けた第1押付装置176、第2押付装置178および第3押付装置180とを含んでいる。
【0062】
(回転体)
回転体164は、コイン整列装置108によって一枚ずつ送り出されたコインCを受け取って第1コイン選別孔166から第4コイン選別孔174に順次搬送する機能を有する。すなわち、この回転体164がコイン搬送部として機能する。
【0063】
回転体164は、円盤形であって、回転軸線183から所定の半径に形成された円弧状の基準周縁184と、基準周縁184から半径方向に突出する回転ディスク126の通孔132と同数であって、等間隔に設けた送り羽根186とを有する。送り羽根186の間の保持凹部188には最大径コイン1枚および最小径コイン2枚が保持されない大きさに形成される。
【0064】
回転体164は、ベースプレート124の上面に対し最薄コインCの厚み以下の間隔の平面内において、回転ディスク126の駆動源から後述するギヤ手段を介して回転され、図4において反時計方向に回転ディスク126と同期して回転される。
【0065】
送り羽根186間の各基準周縁184は同一半径上に位置するため、回転体164が回転しても同一円上を移動する。送り羽根186は同一半径に形成され、先端は回転ディスク126の下方を通過するよう設定される。これにより、回転ディスク126の回転によって規制ピン161A、161Bによって周方向に送り出されたコインCは送り羽根186によって受け取られた後、送り羽根186によって押動されつつ選別通路190を搬送される。換言すれば、送り羽根186によりコインCが選別通路190(すなわち、搬送経路)上を反時計方向に搬送される。
【0066】
(コイン選別孔)
第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、第3コイン選別孔172、および第4コイン選別孔174は所定直径のコインCを落下させる機能を有する。すなわち、送り羽根186によって搬送されるコインCが、その搬送経路(選別通路190)の上流から下流に行くにしたがって、小径コインから大径コインの順に落下するように、第1〜第4のコイン選別孔166、168、172、174が順に配置されている。具体的には、第1コイン選別孔166が50円コインに対応し、第2コイン選別孔168が100円コインに対応し、第3コイン選別孔172が10円コインに対応し、第4コイン選別孔174が500円コインに対応している。
【0067】
まず、第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、および第3コイン選別孔172について説明する。なお、第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、および第3コイン選別孔172の基本構造は同一なので、ここでは第1コイン選別孔166についてのみ説明し、第2コイン選別孔168および第3コイン選別孔172についてはその説明を省略する。
【0068】
図5に示すように第1コイン選別孔166は、ベースプレート124に形成された内側案内縁である弧状内縁192および外側基準縁である弧状外縁194によって構成された弧状の長孔である。
【0069】
弧状内縁192は、回転体164の回転軸線183を中心とした基準周縁184よりも僅かに大きい所定の半径を有する。換言すれば、基準周縁184と弧状内縁192との間に弧状の内側コインガイド195が形成される。
【0070】
弧状内縁192は、基準周縁184よりも約1mm以上大きいことが好ましい。この場合、選別(落下)されるコインCが落下し易いからである。しかし、半径差が小さ過ぎる場合、誤選別される恐れがあり、大きすぎるとコインCが落下し難くなるので、1〜3mm程度が好ましい。換言すれば、弧状内縁192と基準周縁184とで形成される内側コインガイド195の幅は約1mm以上が好ましい。
【0071】
また、弧状内縁192は落下するコインCに対する抵抗を小さくするため、面取りした後、バフがけし、滑らかに形成することが好ましい。
【0072】
弧状外縁194は、ベースプレート124に形成してもよいが、本実施例ではベースプレート124に固定したスライドプレート198によって構成されている。
【0073】
ベースプレート124には、弧状外縁192の半径方向の外方に矩形のスライド孔(図示せず)が形成され、スライドプレート198が基準周縁184の半径方向にスライド可能に嵌め合わされている。換言すれば、スライドプレート198は、スライド孔の右側縁および左側縁(いずれも、図示せず)によって基準周縁184に対し弧状外縁194が同心円的状態を保ったまま平行移動可能である。
【0074】
右側縁および左側縁はスライドプレート198、具体的には弧状外縁194の案内装置206である。
【0075】
案内装置206は、本実施例に代えて同様の機能を有する装置に変更することができる。
【0076】
次に第4コイン選別孔174について説明する。
【0077】
第4コイン選別孔174は、上記の通り、最大径の500円コインを落下させるためのものである。よって、500円コインが落下できる大きさであればよいので、第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、および第3コイン選別孔172のような調整機構は必要でない。本実施例では略矩形の開口である。
【0078】
上述したように、本実施例では10円、50円、100円、および500円コインが選別対象であるので、小直径から大直径の順にほぼ等間隔に第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、第3コイン選別孔172および第4コイン選別孔174が配置されている。換言すれば、第1コイン選別孔166に最小の50円コイン、第2コイン選別孔168に二番目に小径の100円コイン、第3コイン選別孔172に三番目に小さい10円コインが落下するよう各基準周縁184と弧状外縁194との距離が設定される。そして、最大の500円コインは、第4コイン選別孔174に落下するよう設定される。
【0079】
第4コイン選別孔174は、500円の直径よりも大きく形成し、500円コインの直径を超えるコインが落下するよう設定される。
【0080】
第1コイン選別孔166、第2コイン選別孔168、第3コイン選別孔172および第4コイン選別孔174から落下したコインCは、個別の通路によって案内され、金種毎の集金袋に保留される(図示せず)。
【0081】
(押付装置)
第1押付装置176、第2押付装置178、および第3押付装置180は、送り羽根186によってベースプレート124上をスライドされるコインCを対応するコイン選別孔の弧状外縁194以遠において、基準周縁184に向かって所定の力で押し付ける機能を有する。すなわち、図5に示すように、弧状外縁194と同一の曲率に形成された弧状案内面228を有しており、この弧状案内面228により押し付けられた状態でコインCが案内される。
【0082】
第1押付装置176、第2押付装置178、および第3押付装置180に関しては、上述した特許文献1(特開2009−217807)に記載されたものを使用できる。そのため、ここではその説明を省略する。
【0083】
(ギヤ手段)
図24および図25に示すように、図4のコイン選別装置102の裏面側には、減速機152の出力軸(図示せず)に接続されたギヤ452と、ギヤ452と噛み合うギヤ454と、ギヤ454と同軸のギヤ456と噛み合うギヤ458と、ギヤ458と噛み合うギヤ460が配置されている。これらのギヤ452、454、456、458、460が前述のギヤ手段を構成する。
【0084】
ギヤ458は、回転ディスク126を回転させる回転軸440に固定されている。ギヤ460は、回転体164を回転させる回転軸402に固定されている。
【0085】
電気モータ148の駆動力は減速機152、ギヤ452、454、456を介してギヤ458伝達され、回転ディスク126が回転する。さらに、駆動力がギヤ460に伝達されて回転体164が回転する。こうして、回転ディスク126と回転体164とが同期して回転する。
【0086】
(ワンウェイクラッチ)
振分装置112には、回転体164の逆転を阻止するワンウェイクラッチ434が組み込まれている。
【0087】
回転軸402は、ワンウェイクラッチ434および軸受436を介して、ベースプレート124に固定された回転軸支持体432の内部に挿入されている。ワンウェイクラッチ434は回転軸支持体432の一端側(ギヤ460の側)に配置され、軸受436はワンウェイクラッチ434は回転軸支持体432の他端側(ベースプレート124の側)に配置されている。この配置により、回転軸402、402を円滑に回転させることができる。
【0088】
ワンウェイクラッチ434は、回転軸402の正方向(図5の時計方向)への回転(すなわち、正転)を許容し、かつ、逆方向(図5の半時計方向)への回転(すなわち、逆転)を阻止する機能を有するものである。この機能を有しているものであれば、ワンウェイクラッチ434の内部構造に制約はなく、任意のものを使用できる。
【0089】
回転軸440は、2つの軸受444、446を介して回転軸支持体442の内部に挿入されている。回転軸支持体442は、ベースプレート124に固定されている。
【0090】
(固定/自在切換機構)
振分装置112には、図26〜図31に示すように、回転体164が回転軸402に固定される第1の状態と、回転体164が回転軸402に対して正方向および逆方向に回転自在な第2の状態とを切り換える固定/自在切換機構400が組み込まれている。
【0091】
固定/自在切換機構400は、回転軸402に固定された係合ピン408、係止穴414A、414B、414Cが形成された回転体凸部412、下面に係合溝423が形成された押圧体420、および押圧体420の下面から突出する係止ピン412A、412B、412C、スプリング424、固定ネジ426を含んで構成される。
【0092】
回転軸402は、本体部403と、本体部403より相対的に径小な先端部404とを有している。本体部403と先端部404との間には、回転体164が載置される段差面405が形成されている。
【0093】
回転軸402の本体部403は、ベースプレート124に形成された軸挿入孔130に挿入され、ワンウェイクラッチ434および軸受436を介して回転軸支持体432に支持される。
【0094】
回転体164には、回転軸402の先端部404が挿入される軸挿入孔165が形成されている。この軸挿入孔165は、回転軸402の本体部403の直径よりも小さく、先端部403の直径よりも僅かに大きい直径を有している。そのため、回転軸402の先端部403に挿入された回転体164は、回転軸402の段差面405上で回転自在に支持される。
【0095】
回転体164の上面側には、回転体164の上方に突出する円盤状の回転体凸部412が設けられている。回転体凸部412は、軸挿入孔165と同径同軸の軸挿入孔413が形成されている。回転体凸部412には、その上面内の所定の位置に、3つの係止穴414A、414B、414Cが形成されている。これらの係止穴414A、414B、414Cは、回転体凸部412の上面から下面に達する円筒形の通孔で形成される。
【0096】
回転軸402の先端部404には、後述する係合ピン408が挿入される係合ピン挿入孔406が形成されている。係合ピン挿入孔406は、円筒形で、回転軸402の軸線に直交するように、先端部404の周面に形成されている。ほぼ円筒形の係合ピン408は、係合ピン挿入孔406に挿入され、係合ピン408の両端部分が先端部404の周面から突出するように、回転軸402の先端部404に固定される。換言すれば、係合ピン408の長さは、回転軸402の先端部404の直径よりも大きく設定される。
【0097】
回転軸402の先端部404の上端面には、ネジ穴409が形成されている。
【0098】
押圧体420は、上面に開口421Aが形成された、ほぼ円盤状の外形を有する。開口421Aの内部には、それより開口径の小さい開口421Bが形成されている。開口421A、421Bは、いずれも平面視円形状である。さらに、開口421Bの内部には、下面に達する軸挿入孔427が形成されている。軸挿入孔427は、回転体402の先端部404の直径よりも僅かに大きく設定される。換言すれば、押圧体420の軸挿入孔427に回転体402の先端部404を挿入した状態で、押圧体420が回転軸402に対して回転自在になるように、軸挿入孔427が形成される。
【0099】
押圧体420の下面には、係合ピン406と係合する係合溝423が形成されている。係合溝423は平面視ほぼ長方形であり、その幅は係合ピン408の直径よりも僅かに大きく設定される。係合溝423の長さは、係合ピン408の長さよりも大きく設定される。換言すれば、係合溝423は、係合ピン408と係合可能な大きさに設定される。係合溝423の深さは、押圧体420の下面と回転体凸部412の上面とが接触した状態において、係合ピン408が係合溝423の内部に完全に挿入されるように設定される。
【0100】
さらに、押圧体420の下面には、回転体凸部412の上面に形成された3つの係止穴414A、414B、414Cに対応する3つの係止ピン422A、422B、422Cが設けられている。係止ピン422A、422B、422Cは円筒形の外形を有し、それらの一部分は押圧体420の下面に形成された嵌合穴(図示せず)に埋設されている。
【0101】
係止ピン422A、422B、422Cの直径は、回転体凸部412の係止穴414A、414B、414Cよりも僅かに小さく設定される。また、係止ピン422A、422B、422Cの長さ(押圧体420の下面から突出する高さ)は、係止穴414A、414B、414Cの深さよりも小さく設定される。換言すれば、係止ピン422A、422B、422Cは、係止穴414A、414B、414Cに係止可能な大きさに設定される。
【0102】
係止ピン422A、422B、422Cは、押圧体420の下面において、回転体凸部412の係止穴414A、414B、414Cに対応する位置に配置される。換言すれば、係止ピン422A、422B、422Cは、回転体凸部412の係止穴414A、414B、414Cに係止可能な位置に配置される。
【0103】
スプリング424は、押圧体420を回転体164に向けて付勢する付勢部材として機能する。すなわち、押圧体420の軸挿入孔427に回転軸402の先端部404を挿入した状態で、スプリング424を先端部404に挿入し、固定ネジ426を先端部404のネジ穴409に螺合すると、スプリング424の一端は開口421Bの底部に当接し、他端は固定ネジ426の頭部に当接する。その結果、押圧体420の2つの開口421A、421Bの側壁と回転軸402の先端部404との間に形成される空間において、スプリング424が圧縮された状態で配置され、固定ネジ426の頭部が先端部404の上端面に固定されるので、押圧体420は図28において下方に付勢される。換言すれば、押圧体420を回転体164の上面に押し付ける方向の付勢力が働く。
【0104】
このように、スプリング424により押圧体420が回転体164に向けて付勢されているので、回転軸402を回転体164の軸挿入孔165に挿入した状態で、係止ピン422A、422B、422Cの各々を回転体164の回転体凸部412に形成された係止穴414A、414B、414Cの各々に挿入しながら、押圧体420を回転体164に容易に押し付けることができ、それにより、係止穴414A、414B、414Cに係止ピン422A、422B、422Cが係止されて、押圧体420が回転体164に固定される。さらに、回転軸402の係合ピン408が押圧体420の係合溝423に係合されて、押圧体420が回転軸402に固定される。したがって、回転体164が押圧体420を介して回転軸402に固定される第1の状態が容易に生起される。
【0105】
この第1の状態において、回転軸402が回転すると、その回転力(すなわち、モーメント)は係合ピン408を介して押圧体420に伝達され、さらに、係止ピン422A、422B、422Cを介して回転体168に伝達される。
【0106】
他方、押圧体420を上方にスライドさせ、スプリング424の付勢力に抗して、押圧体420を回転体164から引き離すことにより、係止穴414A、414B、414Cへの係止ピン422A、422B、422Cの係止が解除されて、回転体164が回転軸402に対して正方向および逆方向に回転自在となる第2の状態が容易に生起される。
【0107】
図31に示すように、回転体164の上面には位置合わせ用マークM1が形成され、押圧体420の上面には位置合わせ用マークM2が形成されている。これらのマークM1、M2を利用することにより、押圧体420の係止ピン422A、422B、422Cと回転体凸部412の係止穴414A、414B、414Cとの位置合わせを容易に行うことができる。
【0108】
すなわち、押圧体420が回転体164から引き離された状態で、マークM1、M2の位置を目視で確認しながら、回転体164または押圧体420を適宜に回転させ、マークM1、M2および回転中心がほぼ一直線に並んだところで、スプリング424の付勢力により押圧体420を回転体164に押し付ければ、係止ピン422A、422B、422Cを係止穴414A、414B、414Cに容易に挿入することが可能となる。
【0109】
なお、係止ピン422A、422B、422Cおよび係止穴414A、414B、414Cの数は、3つに限定されるものではなく、係止ピンおよび係止穴が各々少なくとも1つあれば、第1状態を生起することができる。
【0110】
すなわち、係止穴414A、414B、414Cと係止ピン422A、422B、422Cとにより回転体と回転軸とは1位相でのみ回転伝達可能なクラッチとして機能する。換言すれば、回転体164と回転軸402とは1位相でのみ回転伝達可能な接続手段である。
【0111】
上述したように、回転軸402の回転力が係止ピンを介して回転体168に伝達されるので、係止ピンおよび係止穴の数が多くなれば、より効率良く回転力が伝達される。換言すれば、回転力の伝達ロスが低減できる。他方、係止ピンおよび係止穴の数が多い程、係止ピンおよび係止穴の寸法および位置において高い精度が必要となり、製造コストが増加する虞がある。したがって、係止ピンおよび係止穴の数を適宜設定することにより、製造コストの増加を抑制しながら、回転力の伝達ロスを低減することができる。
【0112】
(エンコーダ)
図27に示すように、回転体164には、エンコーダ300が取り付けられている。エンコーダ300は、回転軸402の下端に固定されたエンコーダ円盤301Aと、透過型の光電センサ301Bとを有している。エンコーダ円盤301Aには、その周縁に沿って等間隔で配置された複数の通孔(図示せず)が形成されている。光電センサ301Bは、エンコーダ円盤301Aの通孔に向けて光を照射する投光器(図示せず)と、投光器からの光を受光して電気信号を生成する受光器(図示せず)とから構成される。エンコーダ300は、回転体164が回転すると、その回転角に同期したパルス信号を後述する信号処理装置302に出力する。
【0113】
(コイン計数装置)
コイン計数装置104は、コイン選別装置102により金種毎に選別されたコインCの数を計数する機能を有する。図6および図7に示すように、コイン計数装置104は、第1〜第4のコイン検出センサ292、294、296、298と、それらを固定・支持するとともに、選別通路(すなわち、搬送経路)190の上面を画定する機能を有するサブプレート182と含んでいる。
【0114】
(サブプレート)
サブプレート182は、コイン振分装置112の上側において、ベースプレート124に対し最大コインの厚みを超え、最薄コイン厚みの二枚以下の間隔で平行に配置される。送り羽根186によって押動されるコインCが二枚重ならないためである。しかし、最厚コインの厚みよりも僅かに大きく設定することが好ましい。移送されるコインCの姿勢を安定させるためである。
【0115】
サブプレート182には、第1〜第4のコイン選別孔166、168、172、174の各々に対応する位置に、略矩形の4つの開口286が形成されている。
【0116】
(コイン検出センサ)
第1〜第4のコイン検出センサ292、294、296、298の各々は、サブプレート182に形成された4つの開口286の各々に対応して配置される。換言すれば、第1〜第4のコイン選別孔166、168、172、174の各々に対応して配置される。
【0117】
第1コイン検出センサ292は、第1コイン選別孔166に搬送されたコインCの存在を検出し、検出されたコインCの第1コイン選別孔166と相対する時間(換言すれば、検出されたコインCが第1コイン選別孔166上に存在する時間)を示すコイン検出信号V1を出力する。すなわち、コインCが第1コイン選別孔166に落下せずに通過した場合には、コインCの検出時間が長くなり、その長い検出時間を示すコイン検出信号V1を第1コイン検出センサ292が出力する。他方、コインCが第1コイン選別孔166に落下した場合には、コインCの検出時間が短くなり、その短い検出時間を示すコイン検出信号V1を第1コイン検出センサ292が出力する。
【0118】
したがって、第1コイン検出センサ292から出力されるコイン検出信号V1に基づき、第1コイン選別孔166にコインCが落下したか否かを検出することができる。これは、第1コイン検出センサ292が第1コイン選別孔166のコイン落下センサとして機能することを意味する。
【0119】
同様に、第2コイン検出センサ294は、第2コイン選別孔168に搬送されたコインCの存在を検出し、検出されたコインCの第2コイン選別孔168と相対する時間を示すコイン検出信号V2を出力する。第3コイン検出センサ296は、第3コイン選別孔172に搬送されたコインCの存在を検出し、検出されたコインCの第3コイン選別孔172と相対する時間を示すコイン検出信号V3を出力する。第4コイン検出センサ298は、第4コイン選別孔174に搬送されたコインCの存在を検出し、検出されたコインCの第4コイン選別孔174と相対する時間を示すコイン検出信号V4を出力する。すなわち、第2〜第4のコイン検出センサ294、296、298の各々は、第2〜第4のコイン選別孔168、172、174の各々のコイン落下センサとして機能する。
【0120】
(コイン検出センサの構成)
第1〜第4のコイン検出センサ292、294、296、298は、同一の構成を有している。そのため、第1コイン検出センサ292についてのみ説明することとし、第2〜第4のコイン検出センサ294、296、298については、その説明を省略する。
【0121】
図6および図7に示すように、第1コイン検出センサ292は、固定ブラケット324、揺動ブラケット328、上流ローラ322U、および下流ローラ322Cを含んで構成される。
【0122】
サブプレート182にL形の固定ブラケット324の水平部324Hが固定され、垂立部324Vが構成される。垂立とは、サブプレート182に対し垂立(すなわち、垂直)との意味である。垂立部324Vから横向きに延在する支軸326の一端部が固定される。換言すれば、支軸326は片持ち状態でサブプレート182に対し平行に配置されている。
【0123】
この支軸326に揺動ブラケット328の第1垂立部330が揺動自在に取り付けられている。第1垂立部330には軸受327が設けられ、この軸受327に支軸326が挿入されている。揺動ブラケット328の第2垂立部332は、サブプレート182に対しほぼ垂立状態をなし、開口286に沿って延在する。詳しくは、第2垂立部332は中央部332C、上流部332Uにより形成され、選別通路190を移送されるコインCの円形の経路と同様の曲率となるよう、中央部332Cに対し上流部332Uは鈍角に折曲されている。
【0124】
さらに、揺動ブラケット328には、揺動レバ352が形成されている。揺動レバ352の一端は第2垂立部332の中央部332Uに接続され、揺動レバ352の他端はサブプレート182に平行な方向に延在している。換言すれば、揺動レバ352は、サブプレート182の中央から外側に向かって水平に形成されている。揺動レバ352は、揺動ブラケット328と一体に形成されているため、支軸326を中心に回転可能である。揺動レバ352の先端部352Aは、サブプレート182の上面に向かって延在するL字形状を有している。
【0125】
選別通路190におけるコインCの移動に対し、上流部332U、中央部332Cの順に配置されている。上流部332U、中央部332Cの各々に横向きの上流支軸334U、下流支軸334Cが固定され、上流支軸334Uに上流ローラ322U、下流支軸334Cに下流ローラ322Cが回転自在に取り付けられている。これら上流ローラ322U、下流ローラ322Cの下端部は、第1コイン選別孔166に相対する開口286から選別通路190に突出している。
【0126】
上流ローラ322Uと下流ローラ322Cの回転中心の間隔は、選別対象の最小コインCの直径よりも狭い間隔で配置される。換言すれば、上流支軸334Uと下流支軸334Cの回転軸間距離は選別対象コインの直径よりも小さいので、コイン上面に対し少なくとも二つのローラが同時に相対する位置関係が生じるよう設定されている。
【0127】
さらに、中央部332Cに対し上流部332Uは鈍角に折り曲げられているので、上流ローラ322U、下流ローラ322Cはこれらにならって円弧上に配置される。この円弧は選別通路190を移動するコインCの中心が描く円弧におおよそ一致するよう設定することが好ましい。結果として、コインCの中央を押し下げることになるので、最も効果的にコインCを押し下げることができるからである。
【0128】
揺動ブラケット328の水平部329には、下方に突出するスプリングガイド軸333Aが設けられている。揺動ブラケット328の水平部329と固定ブラケット324の水平部324との間には、スプリングガイド軸333Aに案内されたスプリング333が配置されている。スプリング333は、揺動ブラケット328を図7において時計方向に付勢している。固定ブラケット324の水平部324Hには、垂立するストッパ346が固定されている。
【0129】
揺動ブラケット328の水平部329の裏面側に弾性体からなる緩衝体(図示せず)を固定し、その緩衝体がストッパ346に係止された状態において、上流ローラ322U、下流ローラ322Cが選別通路190に対し垂立するよう設定される。このとき、上流ローラ322U、下流ローラ322Cの下端部とベースプレート124の上面との間隔は、コインの厚みよりも小さく設定される。換言すれば、選別通路190(すなわち、搬送経路)を移動する各種コインCによって、上流ローラ322U、下流ローラ322Cが押し上げられる。この押し上げに伴って、揺動レバ352も支軸326を支点として回転する。
【0130】
支軸326は揺動ブラケット328の水平部329の下側(すなわち、水平部329と固定ブラケット324の水平部324Hとの間)に配置されている。これは、揺動ブラケット328の上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cの支軸(図示せず)からサブプレート182までの距離と、支軸326からサブプレート182までの距離との差が小さくなるようにするためである。そのようにすることで、上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cの支軸と支軸326とを含む平面が、サブプレート182の表面に対してより平行に近くなるので、揺動ブラケット328が支軸326を中心に回転した場合に、その回転に伴う上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cの移動方向がサブプレート182に対してより垂直に近くなる。したがって、上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cがその近傍に配置される部材(例えば、第1〜第3の押付装置176、178、180)に接触する可能性が小さくなるという利点がある。換言すれば、第1〜第3の押付装置176、178、180の配置精度に余裕が生じる。
【0131】
搬送されたコインCの直径が第1コイン選別孔166よりも小さい場合、上流ローラ322U、下流ローラ322Cが押し上げられた後、コインCが第1コイン選別孔166に落下する。その際、コインCには上流ローラ322U、下流ローラ322Cによって押し下げる力が作用する。しかも、上流ローラ322Uと下流ローラ322Cの下端が選別通路190を移動するコインCの上面と同時に接触し、同時に押し下げる。換言すれば、コインCが二つのローラで同時に押し下げられるので、平行に押し下げられる。これにより、コインCの押し下げられる姿勢が安定するので、円滑に第1コイン選別孔166に落下することができる。
【0132】
換言すれば、揺動ブラケット328、上流ローラ322U、および下流ローラ322Cがコイン落下補助部材323として機能する。したがって、コインCの第1コイン選別孔166への落下が促進され、コインCがより落下し易くなる。その結果、コインCが落下するまでの期間、すなわち、第1コイン選別孔166近傍におけるコインCの存在期間が短くなる。
【0133】
コインCが落下すると、押し上げられた上流ローラ322U、下流ローラ322Cが元の位置に復帰する。
【0134】
搬送されたコインCの直径が第1コイン選別孔166よりも大きい場合、上流ローラ322U、下流ローラ322Cが押し上げられた後、コインCが第1コイン選別孔166に落下することなく、第1コイン選別孔166を通過する。その通過後に、押し上げられた上流ローラ322U、下流ローラ322Cが元の位置に復帰するが、コインCが落下する場合に比べ、押し上げられてから復帰するまでの時間は相対的に長くなる。すなわち、コインCが第1コイン選別孔166に相対する時間が、コインCが落下する場合に比べ相対的に長くなる。
【0135】
サブプレート182上において、揺動レバ352の先端部352Aの近傍には、透過型の光電センサ354が配置されている。光電センサ354は、支持体356を介してサブプレート182の上面に固定されている。光電センサ354は、中央に凹部355を有するコの字の断面形状を有し、その凹部355の内側に対向配置された投光器および受光器(いずれも図示せず)が設けられている。揺動レバ352の先端部352Aは、光電センサ354の凹部355に配置され、光電センサ354の投光器−受光器間の光軸を遮断可能である。
【0136】
すなわち、上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cがいずれも押し上げられていない状態では、揺動レバ352の先端部352Aが光電センサ354の光軸を遮らないように、光電センサ354と揺動レバ352の先端部352Aの位置関係が設定されている。そして、上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cの少なくとも一方が押し上げられた状態では、揺動レバ352の回転に伴って先端部352Aが上向きに変位し、それにより先端部352Aが光電センサ354の凹部355に挿入され、光電センサ354の光軸が揺動レバ352の先端部352により遮断される。
【0137】
したがって、選別通路190(すなわち、搬送経路)を移動する各種コインCによって、上流ローラ322U、下流ローラ322Cが押し上げられ、揺動レバ352が回転することにより、揺動レバ352の先端部352Aが光電センサ354の光軸を遮断し、光電センサ354の出力が変化することになる。
【0138】
光電センサ354の出力は、第1コイン検出センサ292のコイン検出信号V1として、図8に示すように、信号処理装置302に供給される。
【0139】
第2〜第4のコイン検出センサ294、296、298についても、同様の構成により、コイン検出信号V2、V3、V4が信号処理装置302に供給される。
【0140】
このように、第1〜第4のコイン検出センサ292、294、296、298は、揺動ブラケット328と一体に形成された揺動レバ352、および光電センサ354によって構成された機械式センサとしてとして作動する。
【0141】
(移動案内装置)
図5に示された移動案内装置304は、直径の異なるコインCがスムーズに第1押付装置176に案内されるようにする機能を有する。
【0142】
移動案内装置304に関しては、上述した特許文献1(特開2009−217807)に記載されたものを使用できる。そのため、ここではその説明を省略する。
【0143】
(コイン選別計数装置の動作)
上記の構成を持つコイン選別計数装置100は、次のように動作する。
【0144】
保留ボウル128内に10円から500円コインCをバラ積み状態で投入すると、回転ディスク126の回転により、コインCが攪拌されて通孔132に落下し、規制ピン161A、161Bに案内されて回転ディスク126の周方向に一枚ずつ送り出される。送り羽根186の回転経路に送り出されたコインCは送り羽根186に受け取られ、ベースプレート124上をスライドして円形の選別通路190(すなわち、搬送経路)を移送される。
【0145】
以下、第1コイン選別孔166にコインCが落下しない場合、および落下する場合について、各々説明する。
【0146】
(コインがコイン選別孔を通過する場合)
ここでは、500円コインC1が選別通路190に送り出されたケースを説明する。
【0147】
まず、図9に示すように、500円コインC1は、まず移動案内装置304を構成するローラ306に衝突して回転体164の基準周縁184側に移動され、図10に示すように、ローラ306によって回転体164の基準周縁184に押し付けられる。この時、図13に示すように、揺動レバ352の先端部352Aが光電センサ354の光軸を遮らない位置にある。この状態の光電センサ354の出力信号V1は、図22(A)に示すように、Vである。
【0148】
次に、図11に示すように、500円コインC1は第1コイン選別孔166に達し、揺動ブラケット328の上流ローラ322Uを押し上げながら、第1コイン選別孔166の上を移動する。この時、図14に示すように、揺動レバ352が回転して先端部352Aが上向き(矢印Yの方向)に変位し、光電センサ354の光軸が揺動レバ352の先端部352Aにより遮られる。その結果、図22(A)に示すように、光電センサ354の出力信号V1がVからVに変化する。
【0149】
さらに、500円コインC1が揺動ブラケット328の上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cを押し上げながら、選別通路190(すなわち、搬送経路)を移動し、下流ローラ322Cを通過した時点で、図12に示す状態となる。この状態では、図15に示すように、揺動レバ352は元の位置に戻り、図22(A)に示すように、光電センサ354の出力信号V1もVに戻る。
【0150】
(コインがコイン選別孔に落下する場合)
ここでは、50円C4が選別通路190に送り出されたケースを説明する。
【0151】
上述した500円コインC1の場合と同様にして、図16に示すように、50円コインC4は第1コイン選別孔166に達する。この時、図19に示すように、揺動レバ352の先端部352Aが光電センサ354の光軸を遮らない位置にある。この状態の光電センサ354の出力信号V1は、図22(B)に示すように、Vである。
【0152】
次に、図17に示すように、50円コインC4は、揺動ブラケット328の上流ローラ322Uを押し上げながら、第1コイン選別孔166の上を移動する。この時、図20に示すように、揺動レバ352が回転して先端部352Aが上向きに変位し、光電センサ354の光軸が揺動レバ352の先端部352Aにより遮られる。その結果、図22(B)に示すように、光電センサ354の出力信号V1がVからVに変化する。
【0153】
さらに、50円コインC4が揺動ブラケット328の上流ローラ322Uおよび下流ローラ322Cを押し上げながら、選別通路190(すなわち、搬送経路)を移動すると、50円コインC4の内側下面は内側コインガイド195によって支えられ、外側は弧状外縁194の内側にあるので支えられず、コインC4の全体が第1コイン選別孔166に相対した時に落下する。すなわち、下流ローラ322Cを押し上げた時点で50円コインC4は第1コイン選別孔166に落下する(図18)。コインC4が落下すると同時に、図21に示すように、揺動レバ352は元の位置に戻り、図22(B)に示すように、光電センサ354の出力信号V1もVに戻る。
【0154】
この場合、500円コインC1のように第1コイン選別孔166を通過する場合に比べ、光電センサ354の出力信号VがVに維持される期間、すなわち、コインC4の第1コイン選別孔166に相対する時間が相対的に小さくなる。したがって、図22(A)および(B)に示すように、T1>T2の関係が成立する。
【0155】
10円コインC2の場合は、第1コイン選別孔166および第2コイン選別孔168を通過した後、第3コイン選別孔172に落下する。100円コインC3の場合は、第1コイン選別孔166を通過した後、第2コイン選別孔168に落下する。500円コインC1の場合は、第1〜第3のコイン選別孔166、168、172を通過した後、第4コイン選別孔174に落下する。これらの落下時、通過時の動作は上述した場合と同様である。
【0156】
揺動ブラケット328において、上流ローラ322Uと下流ローラ322Cとの間隔Lは適宜に設定される。この間隔Lを調整することにより、2つのコインCを連続して検出する際のコイン検出信号がVとなるオフ期間(すなわち、図22(A)に示すように、パルスの間隔T3)が調整可能である。
【0157】
例えば、間隔Lを大きくすれば、コインCがコイン選別孔を通過する場合のコイン検出信号がVとなるオン期間T1が大きくなり、コインCがコイン選別孔に落下する場合のオン期間T2との差が大きくなるので、コインCの落下の判定が容易になる。しかしながら、オン期間T2が過剰になると、連続して搬送される先のコインCと後のコインCとの間のコイン検出信号のオフする期間T3が小さすぎて、誤検出する可能性が高まる。したがって、間隔Lは誤検出を生じない程度の大きさに設定する必要がある。
【0158】
本実施例では、コインCがコイン選別孔に落下する場合のオン期間T2がコイン選別孔を通過する場合のオン期間T1の1/2程度になるように、間隔Lが設定されている。しかし、本発明はそれに限定されるものではなく、間隔Lは適宜に設定することができる。
【0159】
(コイン検出信号の処理)
図8に示すように、第1〜第4のコイン検出センサ292、294、296、298から各々出力されるコイン検出信号V1、V2、V3、V4は、信号処理装置302に供給される。さらに、回転体164に対応して取り付けられたエンコーダ300から出力されるパルス信号Vencもまた、信号処理装置302に供給される。このパルス信号Vencは、コインCの搬送部として機能する回転体164の回転に対応して生成される信号であり、パルス信号Vencを計数することにより、回転体164の角度変位を計測することができる。すなわち、エンコーダ300は、コインCの搬送位置を検出する搬送位置検出部として機能する。
【0160】
信号処理装置302は、コイン落下判別部310Aおよびコイン数計数部310Bを有し、具体的には、信号増幅器、アナログ/ディジタル変換器、およびマイクロプロセッサなどの電子回路を含んで構成される。コイン落下判別部310Aは、供給されたコイン検出信号V1、V2、V3、V4およびパルス信号Vencに基づいて、各種コインCが第1〜第4のコイン選別孔166、168、172、174に落下したかを判別する。コイン数計数部310Bは、コイン落下判別部310Aの判別結果に基づいて、落下したコインCの数を計数する。
【0161】
(信号処理装置の動作)
図23は、信号処理装置302の動作を示すフローチャートである。
【0162】
最初に、第1コイン検出センサ292のコイン検出信号V1に対する処理が実行される。まず、ステップS1において、第1コイン検出センサ292がコインCを検出したか否かを判定する。すなわち、コイン検出信号V1がオン(V1=V)状態になった場合に、コインCを検出したと判定する。コインCを検出した場合(YESの場合)には、次のステップS2に進み、コインCを検出しない場合(NOの場合)には、ステップS5に進む。
【0163】
次のステップS2において、コイン検出信号V1のオン期間(すなわち、V1=Vの期間)を第1閾値TTH1と比較して、コイン検出信号V1のオン期間が第1閾値TTH1よりも小さい場合(YESの場合)には、ステップS3に進む。第1閾値TTH1よりも大きい場合(NOの場合)には、ステップS5に進む。
【0164】
このステップS2において、コイン検出信号V1のオン期間と第1閾値TTH1との比較は、エンコーダ300から供給されるパルス信号Vencを用いて行われる。すなわち、コイン検出信号V1のオン期間においてパルス信号Vencのパルス数をカウントし、カウントされたパルス数が所定のパルス数より小さい場合にYESと判定される。
【0165】
ステップS3において、コインCが第1コイン選別孔166に落下したと判定し、ステップS4において、50円コインの枚数に1を加算する。
【0166】
上記のステップS1〜S4により、第1コイン検出センサ292から供給されたコイン検出信号V1に対する処理が完了する。
【0167】
次に、ステップS5〜S8において、第2コイン検出センサ294のコイン検出信号V2に対する処理が実行される。この場合にも、第1コイン検出センサ292のコイン検出信号V1に対する処理(ステップS1〜S4)の場合とほぼ同様の処理が行われる。
【0168】
すなわち、ステップS5において、コイン検出信号V2がオン(V2=V)状態になった場合に、コインCを検出したと判定してステップS6に進み、コインCを検出しない場合には、ステップS9に進む。ステップS6において、コイン検出信号V2のオン期間(すなわち、V2=Vの期間)を第2閾値TTH2と比較して、コイン検出信号V2のオン期間が第2閾値TTH2よりも小さい場合には、ステップS7に進む。第2閾値TTH2よりも大きい場合には、ステップS9に進む。ステップS7において、コインCが第2コイン選別孔168に落下したと判定し、ステップS8において、100円コインの枚数に1を加算する。
【0169】
第3および第4のコイン検出センサ296、298のコイン検出信号V3、V4についても、各々における比較する閾値を第3閾値TTH3、第4閾値TTH4に変更(ステップS10、S14)した点を除き、上述したステップS1〜S4とほぼ同様の処理が実行される。そして、ステップS12において10円コインの枚数に1が加算され、ステップS16において500円コインの枚数に1が加算される処理が行われる。
【0170】
上記のように、第1〜第4のコイン検出センサ292、294、296、298のコイン検出信号V1、V2、V3、V4の各々についての処理が実行された後、ステップS17において、コインCの選別が完了したか否かが判断される。具体的には、第1コイン検出センサ292が所定時間以上コインを検出しない場合、コインCの全てが選別計数されたものとされる。コインCの選別が完了した場合(YESの場合)には処理を終了し、電気モータ148が停止される。コインCの選別が完了していない場合(NOの場合)にはステップS1に戻り、上記のステップS1〜S16までの処理が繰り返される。
【0171】
上記第1〜第4の閾値TTH1〜TTH4は、選別計数の対象となるコインCの金種に応じて設定される。換言すれば、コインCの直径に対応して適宜設定される。第1〜第4の閾値TTH1〜TTH4は、各々別の値に設定してもよいし、全てを同じ値に設定することもできる。
【0172】
(ワンウェイクラッチの作用)
上述したように、回転軸402はワンウェイクラッチ434により、逆方向の回転(すなわち、逆転)が阻止される。そのため、回転軸402に固定されたエンコーダ円盤301Aの逆転も阻止される。したがって、逆転に伴うエンコーダ300の回転角の誤検出が抑制されるので、正確な回転角を得ることが可能となる。このように、回転体の回転角を高精度に測定できるので、第1〜第4のコイン選別孔166、168、172、174にコインが落下したか否かの判定に誤りが生じ難くなり、選別されたコインCの数を正確に計数することが可能となる
(異常停止時の操作)
搬送中のコインCが第1〜第4のコイン選別孔166、168、172、174と回転体164の送り羽根186との間に挟まるなどして、異常停止した場合には、オペレータの手により挟まったコインCを取り除く必要がある。その場合の操作について、図1〜図3、図28、図30および図31を参照して説明する。
【0173】
まず、オペレータは、保留ボウル128およびコイン計数装置104をその順に取り外し、コインCの挟まった状態を目視で確認する。コインCの挟まり具合が軽度でそのまま簡単にコインCを除去できる状態であれば、コインCを除去した後、コイン計数装置104および保留ボウル128をその順に装着する。そして、電源スイッチをオンし、コイン選択計数装置100を再始動する。
【0174】
目視確認の結果、コインCの挟まり具合が重度で、回転体164を逆転する必要がある場合、オペレータが押圧体420を把持して上方に持ち上げ、押圧体420を回転体164から引き離す。回転体凸部412の上面に対し押圧体420の下面が所定の距離以上離れると、押圧体420の3つの係止ピン422A、422B、422Cが回転体凹部412の係止穴414A、414B、414Cから抜かれて係止状態が解除される。すなわち、第1の状態が解除され、第2の状態が生起される。
【0175】
この第2の状態では、回転体164は回転軸402に対して正方向および逆方向とも回転自在となる。したがって、回転体164を少ない力で容易に回転させることができ、適宜の角度だけ回転体164を逆転させれば、挟まったコインCを容易に取り除くことができる。
【0176】
コインCを除去した後、マークM1、M2の位置を目視で確認しながら、回転体164に対する押圧体420の位置を合わせ、スプリング424の付勢力を利用して押圧体420をゆっくりと下方に移動させる。こうして、押圧体420の3つの係止ピン422A、422B、422Cが回転体凹部412の係止穴414A、414B、414Cに再び挿入され、回転体164が押圧体420を介して回転軸402に固定される第1の状態が生起される。
【0177】
その後、コイン計数装置104および保留ボウル128をその順に装着し、電源スイッチをオンして、コイン選択計数装置100を再始動する。
【0178】
なお、本実施例では、4つのコイン選択孔とそれらに対応する4つのコイン検出センサを備えているが、コイン選択孔およびコイン検出センサの数は適宜に変更できる。また、コイン検出センサとしては、機械式、光学式などの各種のものが使用可能である。
【0179】
本実施例では、コイン選別孔近傍でのコインの存在期間に応じたコイン検出信号に基づいてコインを計数するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、特許文献1に開示されているように、コインの通過を検知する5つのセンサを配置し、所定時間内に5つのセンサから順にコイン検知信号が出力されるか否かを基準にしてコインを計数するようにしてもよい。
【0180】
また、本実施例では、係止穴と係止ピンとにより回転体と回転軸とは1位相でのみ回転伝達可能なクラッチとして機能させているが、本発明はこれに限定されるものではなく、送り羽根の数(すなわち、回転体の保持凹部の数)に応じて適宜変更することが可能である。例えば、回転体の保持凹部の数が奇数の場合は1位相とし、偶数の場合は複数位相とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明は、直径の異なる金種毎に選別するコイン選別装置に好適に利用できる。また、本発明は、直径の異なる金種毎に選別し、選別された金種毎にコインの枚数を計数可能なコイン選別計数装置に好適に利用できる。また、所定金種のコインを所定枚数計数して停止するコイン選別計数装置にも好適である。
【符号の説明】
【0182】
C、C1、C4 コイン
100 コイン選別計数装置
102 コイン選別装置
104 コイン計数装置
108 コイン整列装置
112 コイン振分装置
124 ベースプレート(ベース)
126 回転ディスク
128 保留ボウル
130 軸挿入孔
148 モータ
154 攪拌体
164 回転体(コイン搬送部)
165 軸挿入孔
166 第1コイン選別孔
168 第2コイン選別孔
172 第3コイン選別孔
174 第4コイン選別孔
176 第1押付装置
178 第2押付装置
180 第3押付装置
182 サブプレート
184 基準周縁
186 送り羽根
190 選別通路(搬送経路)
192 弧状内縁
194 弧状外縁
195 内側コインガイド
198 スライドプレート
228 弧状案内面
286 サブプレートの開口
292 第1コイン検出センサ
294 第2コイン検出センサ
296 第3コイン検出センサ
298 第4コイン検出センサ
300 エンコーダ(搬送位置検出部)
302 信号処理装置
304 移動案内装置
306 ローラ
310A コイン落下判別部
310B コイン数計数部
322C 下流ローラ
322U 上流ローラ
323 落下補助部材
324 固定ブラケット
326 支軸
327 軸受
328 揺動ブラケット
329 揺動ブラケットの水平部
330 揺動ブラケットの第1垂立部
332 揺動ブラケットの第2垂立部
333 スプリング
333A スプリングガイド軸
352 揺動レバ
352A 揺動レバの先端部
354 光電センサ
355 光電センサの凹部
356 光電センサの支持体
400 固定/自在切換機構
402 回転軸
403 回転軸本体部
404 回転軸先端部
405 段差面
406 係合ピン挿入孔
408 係合ピン
409 ネジ穴
412 回転体凸部
413 軸挿入孔
414A、414B、414C 係止穴
420 押圧体
421A、421B 開口
422A、422B、422C 係止ピン
423 係合溝
424 スプリング(付勢部材)
426 固定用ネジ
427 軸挿入孔
432 回転軸支持体
434 ワンウェイクラッチ
436 軸受
440 回転軸
442 回転軸支持体
444、446 軸受
452、454、456、458、460 ギヤ
470 接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイン(C)を載置可能なベース(124)と、
回転軸線(183)から所定の半径を有する周縁(184)と、その周縁から半径方向に突出し、かつコインを一つずつ搬送する送り羽根(186)とを有し、前記ベースの上側で回転する回転体(164)と、
前記ベース上において前記回転体の周縁の外側に位置し、前記回転体の周縁から半径方向に所定の距離をおいて配置された弧状案内面(228)と、
前記回転体の周縁と前記弧状案内面との間に配置され、前記ベース上に設けられた複数のコイン選別孔(166、168、172、174)と、
前記回転体に形成された軸挿入孔(165)に挿入される回転軸(402)とを備え、
前記回転軸の回転により前記回転体を前記ベース上で正方向に回転させることにより、前記コインを前記送り羽根により押動して前記複数のコイン選別孔に順次搬送し、所定の前記コイン選別孔に前記コインを落下させるようにしたコイン選別装置において、
前記回転軸は、前記ベースに対して前記回転体の正方向への回転を許容し、かつ、逆方向への回転を阻止するワンウェイクラッチ(434)を介して取り付けられ、
前記回転体は、前記回転軸に固定された第1の状態と、前記第1の状態を解除して前記回転体が前記回転軸に対して正方向および逆方向に回転自在な第2の状態とを切り換える機構(400)を介して前記回転軸に取り付けられることを特徴とするコイン選別装置。
【請求項2】
前記機構が、前記回転体を前記回転軸に対して所定の回転位相でのみ接続する接続手段(470)を有し、
前記接続手段を介して前記回転体を前記回転軸に接続することにより、前記第1の状態が生起され、
前記接続手段を介した接続を解除することにより、前記第2の状態が生起されることを特徴とする請求項1に記載のコイン選別装置。
【請求項3】
前記接続手段が、前記回転体の上面側から前記回転体を前記回転軸の軸方向に押し付ける押圧体(420)と、その押圧体の下面から突出する係止ピン(422A、422B、422C)とを有しており、
前記回転軸を前記回転体の前記軸挿入孔に挿入した状態で、前記係止ピンを前記回転体に形成された係止穴(414A、414B、414C)に挿入しながら、前記押圧体を前記回転体に押し付けることにより、前記係止穴に前記係止ピンが係止されて前記第1の状態が生起され、
前記押圧体を前記回転体から引き離すことにより、前記係止穴への前記係止ピンの係止が解除されて前記第2の状態が生起されることを特徴とする請求項2に記載のコイン選別計数装置。
【請求項4】
前記回転軸には、前記回転軸の周面から突出する係合ピン(408)が設けられており、
前記押圧体の下面には、前記係合ピンが挿入される係合溝(423)が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のコイン選別装置。
【請求項5】
前記接続手段が、前記押圧体を前記回転体に向けて付勢する付勢部材(424)をさらに有することを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載のコイン選別装置。
【請求項6】
前記回転軸がその本体部(403)より相対的に小径の先端部(404)を有しており、前記本体部と前記先端部との間に形成された段差面(405)により前記回転体が支持されることを特徴とする請求項1に記載のコイン選別装置。
【請求項7】
前記ワンウェイクラッチが、前記回転軸を前記ベースに対して回転可能に支持する回転軸支持体(432)と、前記回転軸との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のコイン選別装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のコイン選別装置と、
前記複数のコイン選別孔の各々に落下する前記コインをコイン検出センサで検出し、検出された前記コインの個数を計数するコイン計数装置とを備えることを特徴とするコイン選別計数装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−59007(P2012−59007A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201436(P2010−201436)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000116987)旭精工株式会社 (210)
【Fターム(参考)】