説明

コケ発現促進領域

開示するものは、野生型細胞核由来コケ発現促進領域(MEPR)をコードしている単離核酸分子、およびかかるMEPRを用いて組換えポリペプチドを産生するための方法である。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、遺伝子修飾された真核生物宿主細胞中でポリペプチドの発現を促進する単離核酸分子に関する。
【0002】
遺伝子修飾された細胞中で、タンパク質様物質(タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、そのフラグメント、さらにこれら分子の翻訳後に修飾された形態)の発現は、本明細書中で「ポリペプチド」(例えば実施例部分において、「タンパク質」と一緒に同義的に用いられる)の発現は、多くの場合、稀にみる貴重な物質の調製物を提供するための主な源である。遺伝子修飾された宿主細胞中でかかるポリペプチドを発現するためには、この発現を正に制御する(「活性化する」「促進する」) DNA領域の存在が必要である。プロモーターは、RNAポリメラーゼを、mRNA(Watson et al.," Recombinant DNA"(1992), Chapter I.1 and 2)で転写を開始するためにDNAへ結合させ得るような領域に対する重要な例である。
【0003】
それらの単純な性質(コケは、高等植物の進化の出発点に位置している)から、高等植物の複雑な生態への洞察力が提供されるので、コケ類は植物生理学および進化について探索するための有用な対象として注目を集めてきた。コケ類の単純な形態および有利な培養実現性により、植物生理学の実験および発生生物学の研究のために人気のあるモデル生物となった:コケ種は、無菌培養を含むイン・ビトロ技術を用いて、ペトリ皿だけでなく、液体培養、例えばバイオリアクターを用いても、制御された条件下で問題なく培養され得る。半数体配偶体は、滅菌培養において光合成無機栄養で生育され、細胞レベルで容易に観察される。
【0004】
コケ類の別の主な利点は、それらの形質転換能である:多くの試験にも拘わらず、植物において起こる標的組込み比率は、10-4に達成することはほとんどなく、このことは植物の機能的ゲノムに対する遺伝子標的法の一般的な使用を妨げるものである。これまで試験されてきた他の全ての植物とは異なって、コケ(特に、確立されたコケのモデル生物、例えばヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)(その分子遺伝学の概説については:Reski, 1999)のゲノムにおける相同的なDNA配列の組込みは、相同組換えによって、標的位置で優先的に発生する。コケの形質転換体は、プロトプラストによるプラスミドDNAのPEG媒介取込み、ミクロプロジェクション爆弾、エレクトロポーレーションおよびミクロインジェクションによる DNA移入を介して一般的かつ容易に実施される(Cove et al., 1997)。形質転換構築体の設計によって、ランダムまたは標的組込みが優先的に起こる。
【0005】
有効な産生方法が利用できる(例えば、EP 1 206 561 Aに記載の原糸体コケ類組織を培養すること)ようになってきたにもかかわらず、植物生理学的研究用の科学的ツールとしてのコケ類の使用、コケ細胞における組換え異種ポリペプチドを産生するためのコケ類の使用はむしろ制限されている。
【0006】
真核生物宿主細胞、特に動物細胞または高等植物細胞における形質転換技術に関する主な制限は、かかる形質導入宿主細胞において、外来遺伝子の高い構成的発現のために有効なプロモーターが存在しないことである。カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)35Sプロモーターは、数多くの植物形質転換系(例えば、WO 01/25456 Aを参照されたい)において、広くこの目的に使用されてきたが、しかし該CaMV35Sプロモーターは、いくつかの植物種(特に単子葉植物、例えばコメ(McElroy et al., 1991,))では低い活性を示していた。単子葉植物の形質転換のために、コメのアクチン1 5'領域は、異種タンパク質の発現に使用されてきた(McElroy et al., 1991,)。しかしながら、遺伝子修飾された真核生物宿主細胞における組換え(外来)ポリペプチドの発現については、新規発現促進手段を提供するという永続的な必要性が未だ存在している。
【0007】
コケ類、特にPhyscomitrella patensについては、現在までに、同種の(この場合において、同種とは;コケ由来であると定義される)適当な細胞核由来発現プロモーターまたは他の細胞核由来発現促進配列は、今までに発表されていなかった(Holtdorf et al., 2002)。それ故、研究者は、選択マーカー遺伝子および重要な他の遺伝子の発現のために、異種の(異種とは、コケ類由来でないと定義される)プロモーターを使用してきた。しかし、いくつかのこのようなプロモーターだけが、特定のコケ類において確実に機能すると報告されてきた(例えば、CaMV35S−プロモーター;Holtdorf et al., 2002に要約されている; CaMV 35S−プロモーターは、ある他の種では機能しない(Zeidler et al., 1999);TET-プロモーター(Reski (1998)で概説される)。そのために、コケ類を遺伝子的に操作するための他の手段が、この分野、例えばジーン・トラップおよびエンハンサー・トラップ系で開発されてきた(Hiwatashi et al.,2001;しかし、CaMV35Sプロモーター(CaMV35Sプロモーターの短くしたバージョンも)も;著者は35Sプロモーターの短くしたバージョンも、弱いプロモーターとして機能する一時的な発現実験を示した; 実際、この文献は、エンハンサー-トラップ株においてレポーター遺伝子の発現に関するが、コケ類のあらゆる調節要素に対してこの発現のいずれの相関関係を明らかにするものでもない。
【0008】
相同組換えを用いるコケ類における上記研究にもかかわらず、異種プロモーターの使用は必要であり(それ故に、同種プロモーターは必要とされておらず、さらにそれらは、ほとんどの場合有用でない)、組換えポリペプチド産生または相同ポリペプチドの過剰発現にコケ類を工業的に使用するための、適当なコケ由来発現促進手段に対する必要性が存在しており、いまだ解決されていない。かかる発現促進手段は、適用される培養条件下で安定かつ構成的な発現を可能にし、CaMV35Sプロモーターと同等か、それよりも高い発現の再現性を可能にすべきである。
【0009】
それ故に、本発明は、コケ発現促進領域(MEPR)、すなわち野生型コケ由来の発現促進領域をコードする単離核酸分子を提供する。本発明によって、遺伝子修飾された宿主細胞、特にコケ類における構成的発現を可能にするコケ由来発現領域(すなわち、野生型コケ由来の細胞核由来領域)を提供し、それにより、先行技術(Holtdorf et al., 2002; Schaefer et al., 2002)で生じたかかるツールについての必要性を解決するものである。
【0010】
本発明のMEPRの基本的特徴は、MEPRの発現促進活性が、特異的宿主細胞において機能する異種プロモーター(例えば、Physcomitrella patensにおける組換えポリペプチドの発現のためのCaMV35S)の発現促進活性の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%であって、このような発現促進活性を示さないコケ・プロモーターは本発明の目的を解決するために使用できないので、それ故MERPとしてみなされない。
【0011】
それ故、本発明のMEPRは、野生型コケ、すなわちコケ以外の種由来のプロモーター[例えば、高等植物または(植物)病原体のプロモーター、例えばCaMV35Sプロモーター、またはTETプロモーター]の導入によって遺伝子的に修飾されていないコケ、の細胞核から単離される。また、例えば自然株配列変動によるかまたはMEPR単離中のイベントにより起こり得る少数の配列の差違(例えば、発現促進活性が負に影響(消失)しない領域での1、2、3、4または5個の塩基交換)を有するMEPRは、本発明のMEPRとして見なされる。発現促進活性の分析方法、またはこの活性に対するかかる少数の配列差違の効果の分析方法は、当業者に利用し得るし(例えば、既知のCaMV35S構築体との比較によって)、またこれ以降の実施例においても説明される。
【0012】
本発明によれば、胞子体(sphorophyte)に特異的でない発現を促進するMEPRは、構成的MEPR、好ましくは配偶体由来細胞において発現を促進するMEPR、より好ましくは原糸体細胞において発現を促進するMEPRとして定義される。
【0013】
本発明によれば、構成的発現は、光合成無機栄養的に増殖したコケ類について一般的に使用される液体培養条件下、例えば、次に説明される一過的発現系に使用されるフラスコ培養、バイオリアクター培養(EP 1 206 561 A)条件下で、このタンパク質を検出し得る量を生じる発現として定義されるのが好ましい。それ故に、構成的発現は、好ましくは特定の培養添加物の必要性もなく、好ましくは培養培地に添加される糖、植物ホルモンまたはこのような物質混合物の必要性もなく、本発明のMERPに与えられるべきである。構成的発現は、定常モードで実施されるべきである;しかし一過的であってもよい。
【0014】
明細書に示される「コケ」または「コケ類」は、全ての蘚苔類(コケまたは苔綱類、マツモ類およびコケ類)を包含する。コケ類の特徴は、それらの異型世代交代、即ち、細胞核DNA量および形態学に関して互いに異なる2世代の交代である。二倍体の胞子体は、その初期にのみ光合成活性であり、優勢で緑色の半数体の配偶体からの補給を必要とする。配偶体は、2つの形態学的に異なる形で存在する:原糸体と呼ばれる初生配偶体そして茎葉体と呼ばれる成体配偶体である。原糸体に対して、成体配偶体(茎葉体)は生殖器を有する。
【0015】
本発明に関して、一過的な発現は、下記のように、エピソーマル核酸を基にした構築体(例えば、MEPRおよび目的の遺伝子)を、コケのプロトプラスト中への導入すること、好ましくは、培地中への細胞外タンパク質の分泌を生じさせるベクターからの一過的な発現をひきおこすか、可能にすることとして定義されている。プロトプラストは、コケ細胞、好ましくは配偶体細胞、より好ましくは原糸体細胞から得られる。
【0016】
本発明のMEPRは、あらゆるコケ類から採取され得るが、MEPRは、共通したモデルのコケ種類から単離されるのが好ましい。そのため、好ましくは、MEPRは、ツリガネゴケ属(Physcomitrella)、ヒョウタンゴケ科(Funaria)、ミズゴケ科(Sphagnum)、キンシゴケ科(Ceratodon)、ゼニゴケ科(Marchantia) および ダンゴコケ科(Sphaerocarpos)、特にヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica) および ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)から単離される。
【0017】
本発明の適当なMEPRは、配列番号1〜27またはそれらの発現促進フラグメントから選択される。"発現促進フラグメント"は、特異的宿主細胞において機能する異種プロモーター(例えば、Physcomitrella patensにおける組換えポリペプチドの発現にはCaMV 35S)の発現促進活性の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%のMEPRの発現促進活性を有するMEPRのフラグメントである。
【0018】
本発明のMEPRは、特異的領域、例えばプロモーター領域("プロモーター")、5'非翻訳領域("5'-UTR")、5'-イントロンまたは3'-UTRを含む。いくつかのMEPRについては、5'-イントロンだけを含有する発現促進フラグメントが存在する。通常、プロモーターは、常に発現促進フラグメントとして単独で活性である。そのために、本発明のMEPRは、コケ・プロモーターを含むのが好ましく、5'-UTR領域および/または5'-イントロンおよび/または3'-UTRを含むのが好ましい。
【0019】
特定の構成的発現が達成されるなら、それで十分であることは多いが、多くの場合において、高い発現割合を達成することは、特に組換えポリペプチドの工業的産生には好ましい。大部分の本発明のMEPRは、特に同種の系(例えば、Physcomitrellaにおけるポリペプチドの発現には Physcomitrella MEPR)において、CaMV35Sプロモーターよりも、得られる組換えポリペプチドに対して発現速度が顕著に高くなり得ることが証明されてきた。それ故に、本発明の好ましいMEPRは、MEPRが単離されたコケの種類において、特にこれに限定するものではないが、少なくともカリフラワー・モザイク・ウイルス (CaMV)35Sプロモーターの発現促進活性と同等な発現促進活性を有する。さらに好ましいMEPRは、特にそのMEPRが単離されたコケの種類において、特にこれに限定するものではないが、カリフラワー・モザイク・ウイルス (CaMV)35Sプロモーターの発現促進活性の少なくとも200%、好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも1000%である発現促進活性を有する。
【0020】
本発明の単離核酸分子は、好ましくは組換え形質導入ポリペプチドを産生するために、特異的宿主細胞を形質転換するために使用され、好ましくはこれに限定するものではないが工業的スケールで使用されるのが好ましい。そのために、核酸分子は、宿主細胞中で形質転換およびトランスジーンの発現を可能にする適当なベクターとして提供される。本発明のMEPRは、コケにおける天然のプロモーターを置換し、これにより野生型株では通常存在しないコケのゲノム中の場所に位置づけられているMEPRの制御下で、同種コケ・ポリペプチドの発現をもたらすために使用されるという可能性の1つには、本願MEPRの有力な工業的利用性は、産生宿主細胞、特異的植物細胞、特にコケ細胞中での異種("外来")遺伝子発現の制御である。従って、本発明の核酸分子は、さらに組換えポリペプチド産物のコード領域を含み、該コード領域はMEPRの制御下にある。
【0021】
本発明の単離核酸分子が、選択マーカーおよび/または選択された形質転換方法(例えば、Cove et al., 1997; Schaefer, 2002を参照されたい)を適切にするのに必要な別の領域をさらに含むならば、それもまた有利である。例えば、標的組込みが好まれるならば、本発明の核酸分子は、形質転換されるべき種のゲノム配列と相同な配列をさらに含むべきである。このようにして、形質転換されるべき種のゲノム中へ、相同組換えによる単離核酸分子の標的組込みが可能となる。
【0022】
さらに、本発明の単離核酸分子は、発現促進領域に対するコンセンサス配列のスクリーニングおよび明示に使用され得る。発現促進活性に重要および/または必須であるかかるコンセンサス配列(領域、四角)についての発見およびスクリーニングは、組換えDNA技術、特にコケを使用した工業的生物工学に関して貴重な財産である。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、真核生物宿主細胞における組換えポリペプチド産物の発現のための方法にも関し、次のステップ:
−本発明のMEPRをコードしている単離核酸分子、および所望により該組換えポリペプチド産物についてのコード領域を含む組換えDNAクローニングビヒクルを提供することであり、該コード配列は該宿主において該核酸分子のMEPRの制御下にある、
−該コード配列を天然には担持しない上記真核生物宿主細胞を、該MEPRの制御にあるように、該コード配列で形質転換すること、
−形質転換された真核生物宿主細胞を適当な培養培地中で培養すること、
−該組換えポリペプチドの発現を可能にすること、そして
−発現した組換えポリペプチドを単離すること、を含む。
【0024】
上記のとおり、本発明のMEPRは、基本的に、様々な細胞タイプにおいて構成的発現を達成する能力を有し、該真核生物宿主細胞は、植物細胞、好ましくはコケ細胞、特にPhyscomitrella patens細胞から選択されるのが好ましい。
【0025】
本発明に特に好ましい系は、コケ原糸体培養物(原糸体コケ組織)における培養系である。その際、EP 1 206 561 Aに記載の方法およびそれらの好ましい実施態様は、出典明示により本明細書の一部とし、直ちに本発明に用いうる。
【0026】
本発明の手段を用いるポリペプチドの構成的発現は、培養培地において様々な添加物、特に特異的分化または分化組織の成長を促進するための添加物を必要とせずに行い得る。それ故に、電解質、選択剤および培地安定化剤以外には、その培養培地は、好ましくは、細胞供給物のためのあらゆる他の添加物を含有しない。安定に形質転換された植物のための培養培地は、追加の糖、植物ホルモンまたはそれらの混合物を含まないのが好ましい。一過的に形質転換されたプロトプラストのための培養培地は、追加の植物ホルモンを含まないのが好ましい。
【0027】
好ましいコケ細胞は、Physcomitrella、Funaria、Sphagnum、Ceratodon、MarchantiaおよびSphaerocarpos、特に原糸体培養物一群のコケ細胞である。
【0028】
別の態様に従って、本発明は、ポリペプチドを工業的に産生するための、特に該ポリペプチドを産生する組換え細胞を提供するためのMEPRをコードしている単離核酸分子の使用も提供する。工業的産生により、バイオリアクターにおいて目的とする特定のポリペプチドの大量産生、例えばg量またはそれ以上(市販用産量)を産生し得る。これは、該産生と比べて、研究用途(mg 量)または分析目的(μg量)には十分であり、これも当然、本発明によって実施され得る。一過的発現系において、このような分析目的のための十分なタンパク質量は、本願DNA分子を用いて容易に得られ得る。
【0029】
従って、本発明は、コケ・ポリペプチドの発現のため、該MEPRによって天然の制御されていない該コケ・ポリペプチドの発現のために、特に該ポリペプチドを発現する組換えコケ細胞を提供するためにMEPRをコードする単離核酸分子を使用することを含む。この使用は、コケ・ポリペプチドに関する研究目的および工業規模の産生の両方を実施するために修飾され得る。
【0030】
別の態様によれば、本発明は、特異的な翻訳後修飾(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)に関連のあるタンパク質の発現のための、特に、通常は存在しないか、または通常、非形質転換コケ細胞において別の比率で存在する翻訳後修飾を有するポリペプチドを発現する組換えコケ細胞を提供するための、MEPRをコードする単離核酸分子の使用を提供する。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、代謝経路に関連のあるタンパク質の発現のために、特に代謝物、例えば二次的代謝物のその含量が変化した組換えコケ細胞を提供するために、MEPRをコードする単離核酸分子を使用することを提供する。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、アンチセンス分子、siRNA分子またはリボザイムの発現のため、特に、変化した表現型、例えば形態学的、生物化学的変化をもたらす特異的タンパク質量の低下を伴う組換えコケ細胞を提供するために、MEPRをコードする単離核酸分子の使用を提供する。
【0033】
別の好ましい態様によれば、本発明は、翻訳後修飾タンパク質の組換え発現のための、特に翻訳後に修飾されたタンパク質の産生のための本発明のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用にも関する。かかる技術を用いて、翻訳後に(ネイティブ宿主細胞とは違って)特異的に修飾されるタンパク質を産生することが可能となり、それにより、例えば植物細胞またはコケ培養により、例えば哺乳動物またはヒトのグリコシル化パターンを有するタンパク質の産生が可能となる。かかる技術が特異的グリコシルトランスフェラーゼを用いて適用される例は、例えばWO 00/49153 A および WO 01/64901 Aにおいて記載されている。
【0034】
本発明のMEPRをコードしている単離核酸分子の別の好ましい使用は、組換えタンパク質のイン・ビトロ発現に関する。イン・ビトロ翻訳の技術は、宿主細胞に関連する不確実性を許容する必要性なく、より制御された組換え産物の産生を可能にする。
【0035】
本発明の核酸分子の別の好ましい使用は、代謝修飾タンパク質、例えば翻訳されたアミノ酸鎖の(翻訳後の)修飾を修飾するタンパク質(Berlin et al, 1994を参照されたい)、の組換え発現のためのそれらの使用である。
【0036】
本発明は、次の実施例および図によってさらに説明されるが、それらに制限するものではない。
【0037】
材料および方法
植物材料
Physcomitrella patens (Hedw.)B.S.G.は、以前から特徴分析されてきた(Reski et al. 1994))。それは、H.L.K. Whitehouse in Gransden Wood, Huntingdonshire, UK によって収集され、Engel (1968; Am J Bot 55, 438-446)によって増殖された株16/14の二次培養物である。
【0038】
標準的な培養条件
植物を、単純無機液体修飾化 Knop 培地[1000mg/l Ca(NO) x 4HO、250mg/l KCl、250mg/l KHPO、250mg/l MgSO x 7HO および12.5mg/l FeSO x 7HO;pH5.8 (Reski and Abel (1985) Planta 165, 354-358)]中で、滅菌条件下に無菌的に培養した。植物を、培養培地(200ml)を含有するエーレンマイヤーフラスコ(500ml)または固形性 Knop培地(10g/l 寒天)を有する9cmのペトリ皿で培養した。フラスコを、120rpmに設定したCertomat R shaker (B.Braun Biotech International, Germany)上で振とうした。増殖チャンバー内の条件は、25+/−3℃および16:8時間の明暗期間であった。培養物を、35micromol/m-2s-1を提供する2本の蛍光管(Osram L 58 W/25)を用いて上方から照射した。Ultra-Turrax ホモゲナイザー(IKA, Staufen, Germany)を用いる分散および新しいKnop培地(100ml)を含有する2つの新規エーレンマイヤーフラスコ(500ml)への接種により、液体培養の二次培養を1週間に1回行った。さらに、培養物を、分散3または4日後に濾過し、新しい Knop 培地に移した。
【0039】
バイオリアクター培養物を、5リットルの作業容量を有する攪拌タンクガラスバイオリアクター(Aplikon, Schiedam, The Netherlands)内で Knop 培地または1/10Knop培地で各々増殖させた(Hohe and Reski, Plant Sci. 2002, 163, 69-74に記載されているとおり)。攪拌を、500rpmのスピードで回転するマリンインペラーにより行い、該培養物を、0.3vvm [(通気容量)/(培地容量)/分]の空気で通気した。容器中、25℃の培養温度を、二重ジャケット冷却システムによって制御した。光強度は蛍光管(Osram L 8W/25)によって提供された50micromol/m-2s-1であり、16/8時間の光/暗リズムを有する。培養物中のpH値(pH6.5−7.0)は調整しなかった。
【0040】
プロトプラスト単離
プロトプラスト単離のための異なるプロトコール(Grimsley et al.1977; Schaefer et al. 1991; Rother et al. 1994; Zeidler et al. 1999; Hohe and Reski 2002; Schaefer 2001)が、Physcomitrella patensについて説明されてきた。本明細書中で示した試験に対しては、以前に開示された方法の修飾/組合せを用いた:
コケ組織物を、7日間、Ca(NO)含量が低い(10%)Knop培地で培養した。培養物を、分散後3または4日で濾過し、Ca(NO)含量が低い(10%)新しいKnop培地に移した。濾過後、コケ原子体を、0.5Mマンニトール中でプレインキュベートした。30分後、4%の Driselase (Sigma, Deisenhofen, Germany)を懸濁液に添加した。Driselaseを、0.5M マンニトール(pH 5.6-5.8)に溶解し、3600rpm、10分間で遠心分離し、0.22μmフィルター(Millex GP, Millipore Corporation, USA)を通して滅菌した。1% Driselase(終濃度)を含有する該懸濁液を、室温暗所でインキュベートし、静かに攪拌した(プロトプラストの最良収率を、インキュベーション2時間後に達成した)。該懸濁液を、孔サイズが100ミクロメーターおよび50ミクロメーターのシーブに通した(Wilson, CLF, Germany)。該懸濁液を、滅菌遠心分離チューブ中で遠心分離し、プロトプラストを室温で10分間、55 gで(加速3;減速3;で; Multifuge 3 S-R, Kendro, Germany)で沈降させた。プロトプラストを、W5培地(125mM CaCl x 2HO;137mM NaCl; 5.5mM グルコース;10mM KCl;pH 5.6; 660-680 mOsm; 濾過滅菌; Menczel et al.1981)に穏やかに再懸濁した。該懸濁液を、再び室温で10分間、55 gで(加速3;減速3;;Multifuge 3 S-R, Kendro, Germany)遠心分離した。プロトプラストを、W5培地中に穏やかに再懸濁した。プロトプラストを計測するために、少量の懸濁液をFuchs-Rosenthal-chamberに移した。
【0041】
一過的な形質転換
形質転換のための様々なプロトコール(Schaefer et al. 1991; Reutter and Reski 1996, Schaefer 2001)が、Physcomitrella patensについて記載されてきた。以前に開示された業は、以前から説明されている方法の修飾/組合せを用いた:
【0042】
形質転換のために、プロトプラストを、暗所30分間氷上でインキュベートした。次に、プロトプラストを、室温10分間、55 g(加速3;減速3;; Multifuge 3 S-R, Kendro)で遠心分離によって沈降させた。プロトプラストを、3M培地(15mM CaCl x 2 HO;0.1% MES;0.48M マンニトール;pH5.6;540mOsm;滅菌濾過, Schaefer et al. (1991) Mol Gen Genet 226, 418-424)中、1.2 x 10プロトプラスト/mlの濃度で再懸濁した。このプロトプラスト懸濁液(250 microliter)を、新しい滅菌した遠心分離用チューブに分配し、DNA溶液(50microliter)(HOにおいてカラム精製したDNA(Qiagen, Hilden, Germany, Hilden, Germany);10-100microliterの至適DNA量(60microgram)を添加し、最終的に250 microliterのPEG−溶液(40% PEG 4000;0.4M マンニトール;0.1M Ca(NO);オートクレーブ後にpH6)を添加した。該懸濁液を、ただちに、しかしゆっくりと混合し、次いで6分間室温で時々混合しながらインキュベートした。該懸濁液を、1、2、3および4mlの3M培地を添加して希釈した。該懸濁液を、20℃10分間55gで(加速3;減速3;; Multifuge 3 S-R, Kendro)遠心分離した。該ペレットを、3M培地(400microliters)に再懸濁した。形質転換したプロトプラストの培養を、48ウェルプレート(Cellstar, greiner bio-one, Frickenhausen, Germany)で行った。
【0043】
一過的な形質転換を、弱い光(4.6 micromols-1m-2)において、25℃でインキュベートした。サンプルを、24時間および48時間後に採取し、各々半分の培地(200 microliters)を新しい培地に注意深く置換した。プロトプラストは液体中に保持しなければならないため、該培地は、完全には置換しなかった。取出した培地(組換えタンパク質を包含する)を−20℃で貯蔵した。48時間のサンプルを、ELISAで測定した。
【0044】
安定な形質転換
形質転換のための異なるプロトコール (Schaefer et al. 1991; Reutter and Reski 1996, Protocol Schaefer 2001)が、Physcomitrella patensについて説明されてきた。本明細書中で示した試験に対しては、以前に開示された方法の修飾/組合せを用いた:
【0045】
形質転換のために、プロトプラストを、暗所で30分間氷上でインキュベートした。次いで、プロトプラストを、室温で10分間55g(加速3;減速3; Multifuge 3 S-R, Kendro)で遠心分離により沈降させた。プロトプラストを、3M培地(15mM CaCl x 2HO;0.1% MES;0.48Mマンニトール;pH5.6;540 msm;滅菌濾過、Schaefer et al. (1991) Mol Gen Genet 226, 418-424)中に1.2 x 10プロトプラスト/mlの濃度で再懸濁した。このプロトプラスト懸濁液(250 microliter)を、新しい滅菌遠心分離チューブに分配した。DNA溶液(HO中でカラム精製したDNA(Qiagen, Hilden, Germany, Hilden, Germany)(50 microliter);至適DNA量(60microgram)(10-100 microliter)を添加し、最終的にPEG溶液(40% PEG 4000;0.4M マンニトール;0.1M Ca(NO)(250 microliter);オートクレーブ後にpH6)を添加した。該懸濁液を、直ちに、しかし穏やかに混合し、次いで6分間室温で、時折ゆっくりと混合しながらインキュベートした。該懸濁液を、1、2、3および4mlの3M培地を添加して段階希釈した。該懸濁液を、20℃で10分間55g(加速3;減速3;Multifuge 3 S-R, Kendro)で遠心分離した。該ペレットを、再生培地(3ml)中に再懸濁した。選択方法は、Strepp et al.(1998)に記載のとおりに行った。
【0046】
ELISA
一過的に形質転換したコケプロトプラストによって発現した組換えVEGF121を、ELISA(R&D Systems, Wiesbaden, Germany)によって定量化した。ELISAを、製造者の指示書に従って実施した。サンプルを定量化のために希釈した。
【0047】
細菌株およびクローニングベクター
全てのクローニグおよび増殖実験のために、Escherichia coli 株 Top10 (Invitrogen, Karlsruhe, Germany)を用いた。DNAフラグメントのクローニングのために、pCR2.1-TOPO (Invitrogen, Karlsruhe, Germany)、pCR4-TOPO (Invitrogen, Karlsruhe, Germany), pZErO-2 (Invitrogen, Karlsruhe, Germany)またはpRT101 (Toepfet et al. (1987), NAR, 15, p5890)を、ベクターとして使用した。
【0048】
ゲノムDNA:調製、消化、ライゲーション
Physcomitrella patens ゲノムDNAを、CTABプロトコール(Schlink and Reski, 2002)に従って13日目の原子体から単離した。
【0049】
ゲノムDNA(3-5 micrograms)を、消化あたり1つのエンドヌクレアーゼを用いて、全量30microliters中30ユニットの様々な制限エンドヌクレアーゼ(例えば、BamHI、EcoRI、HindIII、KpnI、NcoI、NdeI、PaeI、PagI、XbaI;全てのMBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)を用いて、2時間37℃で消化した。消化したDNAを、製造者マニュアルに従ってPCR精製カラム(Qiagen, Hilden, Germany)を用いて精製した[消化物(30 microliters)+緩衝液PB(200 microliters)]。溶出を、溶出緩衝液(EB; Qiagen, Hilden, Germany)(50 microliters)中で行った。次処理の前に、溶出液(10microliters)をアガロースゲル(0.5%)上で分析した。
【0050】
残っているDNAを、5ユニットのT4リガーゼ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)を用いて、全量300 microliters中、室温で2時間、さらに4℃で2日間再結合させた。酵素添加前に、ライゲーション混合物を、頑強な末端の塩基対形成を溶解するために50℃で5分間、次いで氷上に置いた。0.3M 酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いるエタノール沈殿および70%のエタノールで2回洗浄の後、再結合したDNAを、EB(200microliters)中に再懸濁した。この再結合したゲノムDNAの1/3を、I−PCRに使用した。
【0051】
RNA調製
Physcomitrella patensの全RNAを、液体窒素下で組織を磨りつぶし、E.Z.N.A. Plant RNA Kit(PeqLab)またはRNeasy Plant Mini Kit (Qiagen, Hilden, Germany) の取扱方法を製造者マニュアルに従って調製した。全RNAをゲル分析し、定量し(OD260)、各々−20℃または−80℃で貯蔵した。
【0052】
DNase処置および第一鎖cDNA合成
全RNA(1microgram)を、製造者マニュアルに従って全量でDNase(GIBCO BRL) (11 microliters)消化した。このDNase(4.5 microliters)処理全RNA(〜400ng)を、製造者マニュアルに従って、Oligo dT(12-18)プライマーおよびSUPERSCRIPT II RNase H 逆転写酵素(GIBCO BRL)を用いて、第一鎖cDNAを調製した。得られたcDNAを、滅菌ddHOで10倍希釈し、−20℃で貯蔵した。
【0053】
一般的なPCR
特に指示がなければ、PCRは、cDNAポリメラーゼ混合物(BD Biosciences Clontech, Heidelberg, Germany)を用いて行われる。他の全PCR法について、次のDNAポリメラーゼ:Taq リコンビナント・ポリメラーゼ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)、Pfu ネイティブ・ポリメラーゼ (MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)、プラチナ Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Karlsruhe, Germany)またはTripleMaster PCR System (EppendORF, Hamburg, Germany)を使用した。認可されたサーモサイクラーは Mastercycler gradient であった(EppendORF, Hamburg, Germany)。全てのプライマーを、MWG Biotech AG, Ebersberg, Germanyによって合成した。PCR産物について、精製またはゲル溶出 GFX PCR DNAおよびGel Band 精製キット(Amersham Bioscience, Freiburg, Germany)を、製造者マニュアルに従って使用した。
【0054】
組換えプラスミドの構築およびクローニング
従来の分子生物学的プロトコールは、基本的にはSambrook et al.(1989), Molecular クローニング: A Laboratory Manual, 2nd edn. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Pressによって説明されている。
【0055】
インバースPCR(I−PCR)&ネスティッドPCR
I−PCRを、Advantage cDNAポリメラーゼ混合物(0.25 microliters)および緩衝液[(3.5mM Mg(OAc)を含む、両方BD Biosciences Clontech, Heidelberg, Germany)]、0.2mM各プライマー、0.2mM dNTPおよびゲノム再結合物(1〜3 microliters)(上記参照)を、全量25microliters中で行った。サイクル条件:96℃で2分の開始ステップ、次いで96℃で20秒、最初に−67℃で10秒(タッチダウン:-0.15℃/サイクル)および第二ステップとして68℃で10分、35〜40回反復して、続く68℃で20分の停止ステップ、そしてプログラム終了時4℃での冷却。PCR産物を、アガロースゲルから溶出した。溶出を30microliters中で行った。溶出したPCR産物を、TOPO TA ベクター(pCR4-TOPO, Invitrogen, Karlsruhe, Germany)において直接クローニングするか、ネスティッドPCRで再確認のためのテンプレートとして使用する。後者の場合、ゲル溶出したネスティッドPCR産物をTOPO TA ベクター(pCR4-TOPO, Invitrogen, Karlsruhe, Germany)においてクローニングした。ネスティッドPCRのためのサイクル条件:1分96℃の開始ステップ、次いで94℃20秒、56℃10秒および68℃4分を第二ステップとして、25反復し、続いて68℃で10分の停止ステップ。
【0056】
増幅したプロモーターフラグメントのクローニング用pRT101newの生成
pRT101p21(Gorr 1999)を、プライマー320および321(これと全ての連続プライマーについては、表1を参照されたい)を用いて、Pfuネイティブ・ポリメラーゼ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)を用いて再増幅した。プライマー320(フォワード)は、VEGFシグナルペプチドの第二コドン(5'-(atg)aac...)で開始する。プライマー321(リバース)は、35Sプロモーター(5'-gac...)の前のマルチ・クローイング・サイト内のHincII部位中央で開始する。さらにXhoI部位を、プライマー321を用いて導入した。PCR産物の再結合により、35Sプロモーターの欠失およびHincII部位の再構築をもたらした。VEGF遺伝子の配列を、配列決定によって確認した。この新規ベクターを、pRT101newと呼び、レポーター遺伝子の前方部分で、各々XhoIまたはHincII部位を介して発現促進領域のクローニングのために使用した。
【0057】
配列決定
全ての配列決定反応をSEQLAB Sequence Laboratories, Goettingen, Germanyによって行った。
【0058】
ソフトウェア
Sci Ed Central, Clone Manager Suiteを、プラマー設計、ペアワイズおよびマルチプル配列アラインメントに使用した。Lasergene,DNASTAR (Version 5) Megalign and SeqManを、配列データの分析に用いた。ホモロジー検索を、BLAST2(Altschul et al., 1997)で実施した。
【0059】
実施例
本発明は、コケ発現促進領域について4つの例によって説明される:第一の例に、Physcomitrella patensのチューブリン発現促進領域のファミリーの様々なメンバーに関する単離および分析。第二の例に、様々な異なるコケ由来のアクチン遺伝子ファミリーについて発現促進領域を提供する。第三および第四の例は、ユビキチン発現促進領域およびRBCS発現促進領域に関する。
【0060】
実施例1: Physcomitrella patens β-チューブリン遺伝子およびそれらの発現促進領域のクローニングおよび分析
概略
第一ステップにおいてPhyscomitrella patens (Pp)由来のβ-チューブリン(tub)調節/プロモーター配列を得るために、β-チューブリン相同物のコード配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離した。そのために、Arabidopsis thaliana (Attub 1-9)由来の全て9つの公開されたβ-チューブリンゲノム配列のアラインメントを使用して、高度に保存されたコード領域(8F、9Fおよび10R;これと全ての二次プライマーは表1を参照されたい)内にプライマーを設計した。さらに、Physcomitrella patens由来の公開ESTデータの配列情報を使用したが、3つのみがβ−チューブリンとのホモロジーを示しただけであった。そのうちの1つは、予測されたたコード領域の遺伝子特異的プライマー(F7)上流を設計するために使用した。上記したプライマーによって生じた全てのクローン化PCR産物とESTデータの配列比較により、限定しないが、主にイントロン内の相違による群間での相違だけで、同一のDNAを有する3群のクローンを導いた。このβ-チューブリンオルトログを、各々Pptub1、Pptub2およびPptub3と呼ぶ。
【0061】
さらに、プロジェクトが進行中で、さらなるESTデータが利用できる(2002の開始と共にNCBI/dbESTにおいて50000以上が新規に登録された)ので、β-チューブリンに対して高い類似性を有する全121のPhyscomitrella patens ESTの詳細な分析により、群内では同一であるがその他の群またはPptub1-3のいずれに対しても同一でないESTの3つの別の新規の上流および3つの下流群を導いた。新しい各群由来の予測された非コード化上流および下流領域(下記を参照されたい)から誘導されたプライマー、および並べかえた全てのプライマーの組合せを用いるPCRは、特定の座、各々Pptub4、Pptub5およびPptub6に対して、対応する上流および下流群との相関を算定するのに役立った。3つ全ての新規の座のゲノムおよびcDNA増幅物の両方をクローニングし、配列決定をし、Physcomitrella patensにおけるβ-チューブリンオルトグの数を6に増やした。
【0062】
Pptub1〜4(Pptub5および6と対比し)は、ESTデータベースにおいては非常に頻繁に提示される。対応するcDNAライブラリィーを、主に原糸体および初生茎葉体(gametophore)由来のRNAを用いて産生した。そのため、フランキングゲノム領域中で移動するため、得られた配列データを基にしてこの4つの遺伝子についてのみ、インバースPCR法(I−PCR)を実施した。
【0063】
Pptub1
第一ステップで既に記載したように、プライマー8Fおよび10Rを用いて Physcomitrella patens ゲノムDNAを基にした2つの独立したPCR由来のTaq(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)PCRフラグメントを、クローニングした。各PCRからの1つのクローン(2-1)および2つのクローン(8-1、8-2)各々を、部分的に配列決定し、同一であることを明らかにした。対応する座をPptub1と呼ぶ。再結合されたEcoRIおよびHind IIIゲノム消化物(プライマー35、36)に対してI−PCR法を用いて、Pptub1のフランキング領域内でのゲノムウォークを行うために、この予備的な配列情報を用いてプライマーを設計した。産物の再確認を、ネスティッドPCR(プライマー40、38)によって行った。ネスティッドPCR産物(E#1およびH1.7)によって生じた2つのクローンを完全に配列決定した。
【0064】
Hind IIIクローンH 1.7は、おそらく酵素のスター活性またはランダムds遮断物のライゲーションのため、内部のHind III部位を持たなかった。しかし、第一EcoRI部位の配列上流を、ゲノムDNA(プライマー113、67および113、90)に対して2つの独立したPCRによって確認した。さらに、別のcDNA(89、91;Pfuネイティブ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany))PCR産物をクローニングした。
【0065】
全ての記載したクローンは、配列データの生成および再確認に役立てた。全体で、スタートコドンの〜1500bp上流およびストップコドンの〜1500bp下流を得た。
【0066】
Pptub2
すでに記載したとおりに、Physcomitrella patens由来の公開されたESTの配列情報を使用して、予言されたコード領域について遺伝子-特異的プライマー(F7)上流を設計した。Physcomitrella patensゲノムDNA(プライマーF7、10R)に対するPCR、続くPCR産物のクローニングと配列決定により、公開されたPptub EST(Pptub EST1-3)に関して3つ全てと一緒に、それが、Pptub2と呼ばれる1つの座に属することが証明された。イントロンの位置は、ESTをゲノム配列と比較することによって確認できる。
【0067】
この予備的配列情報を用いて、Pptub2の隣接したゲノム領域中でゲノムウォークを行うために、再結合PagI、BamH IおよびNdeIゲノム消化物に対するI−PCR法を用いて、イントロン(プライマー95および71)内に遺伝子-特異的プライマーを設計する。PCR産物を、ネスティッドPCR(プライマー38、35)によって再確認した。ネスティッドPCR産物(C#2PagおよびD#2Nde)によって生成した2つのクローンを、完全に配列決定した。NdeIクローンD#2は、おそらくは酵素のスター活性またはランダム ds 破損箇所のライゲーションにより、内部NdeI部位を担持しなかった。しかしながら、配列データを、C#2Pagおよび第3のI−PCRクローン(95#8BamHI;プライマー149および71)によって確認した。さらに、ゲノムDNA(プライマー205、149;Taq(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany) およびプライマー205、206)に対して2つの独立したPCRにより産物の長さを確認した。205-206PCR産物および追加のゲノムの下流PCR産物(プライマー71、206;Pfuネイティブ (MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany))をクローニングし、配列データの確認に役立てた。
【0068】
全ての記載したクローンを、配列データを生成するため、および再確認するために役立てた。合計で、スタートコドンの〜1400bp上流およびストップコドンの〜1400bp下流を得た。
【0069】
Pptub3
最初のステップですでに記載したとおりに、プライマー9Fおよび10Rを用いる、Physcomitrella patensゲノムおよびcDNAに対する2つの独立したPCRから、Taq(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)PCRフラグメントをクローニングした。各PCR(#3−3ゲノム、#4-3cDNA)からのクローンを、部分的に配列決定して、同一であることが判った。対応する座をPptub3と呼ぶ。
【0070】
この予備的配列情報を使用して、Pptub3の隣接領域中にゲノムウォークを行うために、再結合したPagIおよびNcoIゲノム消化物に対するI−PCR法を用いて、イントロン(プライマー69、70)内で遺伝子-特異的プライマーを設計した。PCR産物の再確認を、ネスティッドPCR(プライマー38、35)にて行った。2つのクローン(A#1Ncoおよび#4-1Pag)を完全に配列決定した。A#1Ncoは、#4-1PagIは元来のI−PCR産物(69、70)によって生成されたにもかかわらず、ネスティッドPCR産物(38、35)によって生成したクローン遺伝子である。さらに、ゲノムPCR産物(プライマー203、204)をクローニングし、配列データを評価するのに役立てた。
【0071】
全て記載したクローンは、配列データを生成し、再確認するために役立てた。合計して、スタートコドンの〜1900bp 上流およびストップコドンの〜1100bp下流を得た。
【0072】
Pptub4
すでに記載したとおりに、Pptub4の場合、ESTデータを用いて、ゲノムおよびcDNAクローンを生成するために、遺伝子-特異的下流および上流プライマー(297、299)を設計した。ネイティブPfuポリメラーゼ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)を用いる別のゲノムクローンを、配列データを評価するのに役立てた。
【0073】
プライマー297および299を逆転させ(337、383)、再結合したNdeIおよびNcoIゲノム消化物に対してI−PCR法を用いて、Pptub4の隣接ゲノム領域へのウォーキングを行うために使用した。2つのクローン(48#2NcoおよびA02#3Nde)および追加のゲノムクローン(プライマー547および374;Advantage cDNAポリメラーゼ混合物(BD Biosciences Clontech, Heidelberg, Germany)およびTriple Master (EppendORF, Hamburg, Germany))を生成した。
【0074】
全て記載したクローンは、配列データを作成および再確認するために役立てた。合計で、スタートコドンの〜2300bp上流およびストップコドンの〜1100bp下流を得た。
【0075】
Pptub5および6
すでに記載したように、Pptub5および6の場合、各遺伝子のゲノムおよびcDNAクローンを生成するために、ESTデータを用いて遺伝子-特異的下流および上流プライマー(Pptub5:298、300およびPptub6:296、336)を設計した。ネイティブPfuポリメラーゼ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)を用いて、Pptub5、追加のゲノムクローンを、配列データを評価するために役立てた。
【0076】
全て記載したクローンは、配列データを生成し、再確認するために役立てた。合計では、Pptub5については2031bpゲノム配列およびPptub6については3161bpゲノム配列を得た。
【0077】
クローニングストラテジー
予備的Pptub1(2−1、8−1、8−1;全てのゲノム)およびPptub3(3−3ゲノム、4−3cDNA)クローンを、Taqリコンビナントポリメラーゼを用いて生成した。PCR産物を、TOPO TA ベクター(pCR4-TOPO, Invitrogen, Karlsruhe, Germany)中に結合させた。PCR条件:全量25microlitersにおいて、2.5ユニット Taqリコンビナントポリメラーゼ、酵素緩衝液、3.3mM MgCl(全て、MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)、0.4mM各プライマー、テンプレートとして100 nanogramsのcDNAまたはゲノムDNA。サイクル条件:95℃5分の初期ステップ、次いで95℃45秒、60℃10秒(プライマー8F)または65℃(プライマー9F)および72℃1分間を第二ステップとして、30〜35回反復し、次いで72℃5分の停止ステップ、プログラムの終了時4℃に冷却する。
【0078】
その他全てのゲノムおよびcDNAクローンは下記のとおりであった:
Pptub 1: 113-67113-9089-90、89-91cDNA
Pptub 2: F7/R10205-206、71-206
Pptub 3: 203-204
Pptub 4: 547-374(+Tripple Master)、297-299cDNAゲノム(+Pfu)
Pptub 5: 298-300 cDNAゲノム(+Pfu)
Pptub 6: 296-336 cDNAゲノム
【0079】
上記の下線を引いたクローンを、20microliterのPCRあたり、酵素混合物(0.25 microliters)、緩衝液(3.5 mM Mg(OAc)を包含し、両方、BD Biosciences Clontech, Heidelberg, Germany)、0.25mM 各々プライマー、0.25mM dNTPおよびテンプレート(10-20nanograms)を用いて、Advantage cDNAポリメラーゼ混合物によって生成した。サイクル条件:96℃2分での開始ステップ、次いで96℃20秒、60℃10秒および68℃2分/kbを第二ステップとして、35〜40反復し、次いで68℃15分の停止ステップ、プログラムの終了時4℃に冷却する。適切な長さのPCR産物を、アガロースゲルから溶出した。溶出を、増幅した量によって、30-50microlitersで行った。溶出されたPCR産物を、TOPO TAベクター(pCR4-TOPO,Invitrogen, Karlsruhe, Germany)においてクローニングした。
【0080】
他の全てのクローンを、2つの別のゲノムクローン297-299および298-300であった場合、Pfuネイティブ・ポリメラーゼと共に、20 microliters PCRあたり、ポリメラーゼ(=0.75ユニット)(0.3 microliters)、緩衝液、2-4mM MgSO(全て、MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)、0.25mM 各々プライマー、0.2 mM dNTPおよびテンプレート(10-20nanograms)を用いて生成した。サイクル条件:96℃2分の開始ステップ、次いで96℃20秒、60℃10秒および72℃で2分/kbを第二ステップとして、35〜40反復し、次いで72℃10分の停止ステップおよびプログラム終了時に4℃に冷却する。適切な長さのPCR産物を、アガロースゲルから溶出した。溶出を、増幅した量によって、30-50microlitersで行った。溶出されたPCR産物を、EcoRVを用いて直線化したpZErO−2(Invitrogen, Karlsruhe, Germany)においてクローニングした。
【0081】
547-374の別のクローンを、20microliterのPCRあたり、ポリメラーゼ混合物(=1.25ユニット)(0.25 microliters)、チューニング緩衝液(2.5mM Mg2+を包含する、両方EppendORF, Hamburg, Germany)、0.2 mM 各プライマー、0.2 mM dNTPsおよびテンプレート(10-20nanograms)を用いて、TripleMaster PCR Systemにより生成させた。サイクル条件:2分96℃開始ステップ、次いで20秒96℃、20秒60℃および3分72℃を第二ステップとして、40反復で、次いで10分72℃の停止ステップおよびプログラムの終了時に4℃まで冷却する。適切な長さのPCR産物を、アガロースゲルから溶出した。溶出を、増幅物の量によって、30-50microlitersで行った。溶出したPCR産物を、TOPO TA ベクター(pCR4-TOPO, Invitrogen, Karlsruhe, Germany)においてクローニングした。
【0082】
要約すると、Physcomitrella patensのゲノムDNAに対するPCRおよびPCR産物のクローニングから、6つの転写されたPhyscomitrella patens β-チューブリン遺伝子の配列情報を導いた。さらに、ESTおよびcDNAデータを使用して、ゲノム配列データおよびイントロン/エキソン境界を確認した。Pptub 1〜4の場合では、インバースPCRから、非転写フランキング5’および3’ゲノム配列を導いた。全ての6つのゲノム領域の全概要を図1に示した。
【0083】
遺伝子構造&保存
すでに強調したように、Pptub1〜4は、ESTデータベースにおいて最も多く示される。さらに、それらの対応する大多数のESTを、完全長cDNAライブラリィーから生じた。この2つの事実は、インシリコ(in silico)でPptub1〜4の転写開始部位(TSS)を決定するために役立てた。対応する上流ゲノム領域に対して5'ESTの複数アラインメントは、Pptub1〜3が正確な転写開始を有することを示した:Pptub1については5'ESTの27のうち20が、Pptub2については5'ESTの20のうち16およびPptub3については5'ESTの14のうち9は、+1(図3-6)でマークした最も上流の位置で、同時に開始する。さらに、全ての3つのTSSは、コンセンサス配列によって囲まれる(下記を参照)。Pptub4の場合では、23の5'ESTは、100bp内で複数のTSSを示した。最も上流の5'ESTの開始部位を、+1として定義した。
【0084】
対応する下流ゲノム領域に対する3'ESTの相同な複数アラインメントから、植物遺伝子がほとんど2以上のポリ(A)部位を有し、コンセンサス配列が哺乳類遺伝子よりも明確には定義されない、例えばこの配列AAUAAAがほとんど偏在している(Rothnie et al., 1996を参照されたい)ことを確認した。
【0085】
Physcomitrella patensの6つのクローニングした座は、いかなる非センスストップコドンも示さず、既知のβチューブリンと高い類似性を有する適当なタンパク質が予測された。コード領域以外では、一般的に、類似性は直ちにかつ有意に低下する。5'推定調節要素に関して、4つの全ての上流領域の詳細な比較から、遺伝子ファミリー内または他の既知植物のβ-チューブリン遺伝子の5'領域に全体的に保存されていないことが明らかになった。しかし、遺伝子ファミリー内の保存についていくつかの興味ある一致が検出できた:
a)3つ全ての場合において、Pptub 1〜3の決定されたTSSは、コンセンサス配列T/C CA(+1) G/C T G T G C 内で生じ、C/T−リッチに富む領域(171 非関連TATA植物プロモーターのコンセンサスを比較する:http://mendel.cs.rhul.ac.uk/mendel.php?topic=plantpromでのplantProm データベースにおいてT/C C A(+1) N M N)に挿入される。
b)TSSの22-24bp上流−植物TATAプロモーター(plantProm DBを参照されたい)に対して典型的な距離内である−20-25bpの保存された範囲に挿入されていた弱い8bpのTATAボックスはPptub 1〜3で見出され得る。171非関連植物プロモーター由来のTATAボックスのコンセンサスは次のとおりである:T96959610062/T389761/A3873(plantProm DBを参照されたい)およびPptub 1-3については次のとおりである:T t T A T c T c/t/A、大文字はコンセンサスとの相関関係示す。
c)全ての4つの遺伝子は、それらの5'UTRにおいて非常に低い程度のアデノシン(9-16%)を有する。
d)Pptub 4の5'UTRは、全体的なC/T含量の74%であり、さらに、C/T範囲(〜50bp)を、最も短く、最も下流の5'ESTの開始部分の直後に担持する。
e)Pptub2は、TSS(−450−489まで)の約450bpの上流付近に、40bpポリA範囲を担持する。
f)Pptub 1および4上流において、約−420位置の長く非常にA/T−に富む領域(Pptub1は約900bpに対してA/Tが80%を超え、Pptub4は、1750bpに対してA/Tが75%である)がはじまり、位置スキャッホルド/マトリックス結合領域[S/MARs;(Liebich et al., 2002)、この遺伝子の上流]についての可能性をひらくものである。
【0086】
β-チューブリンプロモーターの機能分析&定量化
最高のプロモーター活性を示す最小プロモーター−フラグメントの定義を、発現系として非再生化Physcomitrella patensプロトプラストを使用して、一過的な発現系においてPptub 1〜4の推定5'調節配列の機能的定量化によって行った。各プロモーターに対して、上流領域および5'UTRを包含する様々な長さのいくつかの構築体は、レポーター遺伝子のスタートコドンの前に正確にもたらされる。レポーター遺伝子として、ヒトタンパク質(組換えヒト血管内皮増殖因子121:rhVEGF 121;Gorr 1999)を、それ自身のシグナルペプチドを介した培地中に分泌した。コケ培養の上清中のrhVEGF 121の量は、ELISAによって定量化され、該系においてプロモーターまたはプロモーターフラグメントの強度を表した。この値を、35Sプロモーターによって得た値と関連した。各構築体を、最小6回の2〜3つの異なる形質転換実験において形質転換した。サンプルを、24時間と48時間後に各々採取し、48時間のサンプルを、ELISAで適当な釈希釈で2回測定した。該結果の概略を図2に示した。
【0087】
Pptub1〜4の発現促進領域を、配列番号1〜8として開示した。
【0088】
pRT101newへのPptub 1および4の増幅したプロモーターフラグメントのクローニング
【表1】

【0089】
上記プロモーターフラグメントを、Pfuネイティブポリメラーゼ(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)と共に、ATGスタートコドン(cat...)の逆相補配列および部分的な、XhoI部位を含有するフォワードプライマーと共に開始する逆プライマーを用いて、ゲノムDNAで増幅させた。PCR産物を、各々、XhoIで切除し、XhoI/HincIIで結合するか、または全く切除せずに、開環したpRT101newのHincIIに結合させる。生じたクローンを、配列決定によって確認した。クローン1-2(XhoI/EcoRI)、2-1(BglII)、2−2(SalI)、2−3(EcoRI/SalI)、2-4(EcoRI/SalI)、3−2(SalI)、3−3(Eco147I/HincII)、3−4(XhoI/SalI)を、より長いクローンの内部削除によって生じさせる。残存するベクターを、ゲル溶出し、再結合させた。1本鎖オーバーハングが一致しなかった場合には、製造者マニュアルに従って、クレノーフラグメント(MBI Fermentas, St. Leon-Rot, Germany)を用いて中断した3'-末端を埋めた後にライゲーションを行った。
【0090】
Pptub 1
6つの異なるプロモーター長を、レポーター遺伝子の前に、形質転換ベクターpRT101p21中でクローニングした。全ての構築体のデータを、図3(+226まで5'UTR=+1(TSS、+227=ATG)に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
プロモーターフラグメント1-2を、高発現割合を与える最も短いプロモーターフラグメントとして定義し得る。該割合は、100%として設定した35Sプロモーターを用いて生じた値と比べると、約150%である。最小プロモーターフラグメント1−2の長さの上流、非常にA/Tリッチな領域が開始することに注目されたい(ほぼ900bpに対して80%A/Tを超える)。
【0093】
Pptub 2
5つの異なるプロモーター長を、形質転換ベクターpRT101p21中、このレポーター遺伝子の前でクローニングした。全ての構築体のデータを、図4(+122まで5'UTR=+1(TSS)、+123=ATG)に示した。
【0094】
【表3】

【0095】
プロモーターフラグメント2−2を、高発現割合を与える最短プロモーターフラグメントとして定義し得る。該割合は、35Sプロモーターを用いて生成した値に匹敵する(100%)。
【0096】
Pptub 3
異なるプロモーター長を、形質転換ベクターpRT101p21中、このレポーター遺伝子の前にクローニングした。4つの構築体のデータを図5(+112まで5'UTR=+1(TSS)、+113=ATG)に示した。
【0097】
【表4】

【0098】
プロモーターフラグメント3−2を、高発現割合を与える最短プロモーターフラグメントとして定義し得る。該割合は、100%として設定した35Sプロモーターを用いて生じた値と比べて約300%である。
【0099】
Pptub 4
2つの異なるプロモーター長を、形質転換ベクターpRT101p21中、このレポーター遺伝子の前にクローニングした。該データを図6に示した。(5'UTR=TSS(+1から+103まで)+205まで、+206=ATG)
【0100】
【表5】

【0101】
プロモーターフラグメント4−1は、100%として設定した35Sプロモーターを用いて生じた値と比べて約250%である発現速度を示した。この最小プロモーターフラグメント(4−0)の上流で、長く、非常にA/Tに富んだ領域が始まる(1750 bpに対して75%A/T)ことに注目されたい。
【0102】
要約すると、Pptub 1〜4ゲノム上流領域の一過的プロモーター活性を特徴分析した。最高のプロモーター活性を与える最小プロモーターフラグメントが定義され、3倍までの35Sプロモーター活性を与える。
【0103】
Pptub-構築体の一覧(配列表も参照されたい)
【表6】

【0104】
【表7】

【0105】
【表8】

【0106】
【表9】

【0107】
【表10】

【0108】
【表11】

【0109】
【表12】

【0110】
【表13】

【0111】
実施例2: 様々な種およびそれらの発現促進領域由来のアクチン遺伝子のクローニングおよび分析
2.1. Physcomitrella patens アクチン遺伝子のゲノム構造
発現ベクターを構築するために、4つのアクチン遺伝子およびコケ植物 Physcomitrella patensのプロモーター領域およびFunaria hygrometricaおよび苔網類 Marchantia polymorphaから3つ、コケにおいてそれらを使用するために単離した。
【0112】
公開されたデータベースに存在する Physcomitrella EST配列から設計した特異的オリゴを用いて、4つのアクチン遺伝子(Ppact1、Ppact3、Ppact5およびPpact7)を、ゲノムDNAから数回のI−PCRにおいて単離し、配列決定した。
【0113】
Physcomitrellaにおいて、単離された遺伝子の構造は、ある1つのケース(Ppact1)では高等植物のアクチン遺伝子の保存された構造的組織体に類似する。非翻訳リーダーは、14nt上流のイニシエーターATGに位置する相対的に長い(955bp)イントロンによって分断されている。コード領域は、他の植物種のアクチン遺伝子のイントロンと同じ場所に位置する3つの小さなイントロンを示す。一番目のものは、コドン20(lys)および21(ala)の間に位置し、二番目のものはコドン152(gly)の間で、三番目はコドン356(gln)と357(met)の間である。この遺伝子的構造は、単離した(Ppact3、Ppact5およびPpact7)3つの他のPhyscomitrellaアクチン遺伝子とは異なっていることが判る。それらの場合において、5'UTRイントロン(434bp、1006bpおよび1055bp各々)もまた、ATGの前の14ntに位置するが、該コード領域は、コドン21(lys)および22(ala)(図7)の間に位置する1つのイントロンによって分断される。
【0114】
2.2.アクチン遺伝子の発現促進領域の活性試験
様々なPhyscomitrellaアクチン発現促進領域(配列番号5〜8)の活性に加えて、様々な遺伝子の5'UTRの効果を試験するために、様々なベクターを試験中5'領域の制御の下で、hVEGFタンパク質の発現のために構築した。
【0115】
転写開始部位の上流約2kbゲノム領域が、ゲノムDNAからのiPCRによって単離し、配列決定し、プロモーターによって駆動されるヒトVEGFのcDNAを含有し、5'イントロンを包含する正確なリーダー配列を含有するベクターを、コケプロトプラストの一過的なトランスフェクションのために構築した。完全な5'促進発現領域を、Ppact1についてはプライマー395および332、Ppact3については408および333、Ppact5については511および334およびPpact7については413および335を用いる、プルーフリーディングPCRによって増幅させた。
【0116】
プロトプラストの形質転換を、試験すべき各構築体、および平行して、CaMV35Sプロモーターの制御下でhVEGFcDNAを担持する構築体と同じ数の分子を用いて実施した。hVEGFタンパク質は、培地に組換えタンパク質を分泌させる26aaシグナルペプチドをN末端部分で含有する。形質転換体の分析を、このプロトプラストを形質転換48時間後にインキュベートした培地の種々の希釈物を用いてELISAによって実施した。
【0117】
様々な Physcomitrella 5'アクチン領域の発現を駆動するための能力を、構成的35Sプロモーターの活性と比較した。
【0118】
分析した全ての場合で、アクチン遺伝子の5'領域は、35Sプロモーターよりも高い活性に達した。しかし、発現レベルは、様々なアクチン調節配列に対して変化した。すなわち、Ppact3の5'配列は、35Sプロモーターよりも2倍近くもVEGFの高い発現を促進した。Ppact1およびPpact7の5'領域を含有するベクターを形質転換に使用した場合、VEGFのさらに高いレベルを測定した。それら場合において、4〜8倍の35S値を得た。5'Ppact5遺伝子の場合、最も劇的な相違が観察され、35Sと比べて11倍までの高い発現値が、いくつかの場合で得られた(図8)。
【0119】
Physcomitrella アクチン遺伝子の5'UTR領域の高活性の役割について、さらに試験するために、5'UTRイントロンの欠失、組合せおよび置換を含有するベクターを作製し、コケプロトプラストでの一過的アッセイに使用した。
【0120】
Ppact1 5'イントロンの欠失は、Ppact1のインタクトな5'領域を使用した場合に得られたものと比べて、一過的な発現レベルを劇的に低下させた。この場合に、プロトプラスト培地中で検出され得る分泌VEGFタンパク質の量は、CaMV35Sプロモーターによって得られたものと非常に類似していた。これは、Ppact1の5'イントロンが、Ppact1プロモーター由来の有効な遺伝子発現に重要であることを示すものである。このリーダーイントロンを包含する5'UTRが、下流の35Sプロモーターと融合された場合に、同じ結果を得た。この構築体は、インタクトな35Sプロモーターと同量の分泌タンパク質を産生し、5'UTR領域がPpact1プロモーター以外のプロモーターの活性に対してそのような劇的な影響も示さないことを示している。重要なことは、5'UTR Ppact1領域を担持する構築体が、35Sプロモーター単独よりも30%低い量でタンパク質産生のみを促進し得ることである。このことから、遺伝子のこの領域でプロモーター活性が低いか、ベクターのバックボーン配列に存在するプロモーター活性が休止していると考えられ得る(図9)。
【0121】
同じ方法を用いて、Ppact5およびPpact7遺伝子中に含有された5'UTRイントロンのプロモーター活性に対する影響を調べた。欠失された5'イントロンの構築体を分析し、Ppact1の場合と同様の結果を得た、即ち、達成されたタンパク質量は、Ppact5の場合の35Sプロモーターの場合とほぼ同じで、Ppact7の場合ではわずかに低く、5'UTR中のイントロンの存在が、プロモーターの有効な活性に重要であることを示す。また、形質転換がATGまでの5'転写領域のみを含有する構築体によって実施された場合に、いくつか残っている促進活性を観察した。さらに、これらの2つの遺伝子の場合では、5’UTR下流35Sプロモーターの融合により、35Sプロモーター単独(図10、11)と比較した場合、VEGFタンパク質の発現が高効率(2〜7倍)となった。同様の結果がPpact3の場合に観察され、5'UTR単独または融合された下流CaMV35Sは、35Sと比較して(図12) 各々約2および3倍産生した。これらの指標により、それらが様々なプロモーター下に位置づけられる場合であっても、これら3つの遺伝子についての5'転写領域において増強された活性の存在を示唆した。
【0122】
Ppact1、Ppact5およびPpact7遺伝子に存在する5'イントロンの役割をさらに調べるために、Ppact5およびPpact7の5'イントロンによるPpact1遺伝子のリーダーイントロンの置換を、一過的な形質転換のためにベクター中で設計した。平行して、遺伝子のコード領域に存在するPpact1イントロンによるPpact1の5'イントロンの置換を行った。
【0123】
Ppact1 5'イントロンの、コード領域イントロン1および3のPpact1の置換より、発現レベルが約25%低下した。検出したタンパク質の量は、CaMV35Sプロモーターにより得られたものよりも約2〜3倍高かった。5'イントロンのコード領域のイントロン2による置換から、プロモーター活性がなくなるという驚くべき結果を得た(図13)。しかし、構築体を調べると、該配列はイントロンに対するスプライシング部位が正しくなかったことを示した。正しいスプライシング配列を担持する新しい構築体を作製し、コケ植物の形質転換の後に得られた結果は、イントロン2の効果が他の置換と同じであることを示した。
【0124】
該置換をPpact5およびPpact7遺伝子に対応する5'イントロンを用いて行った場合、タンパク質発現の低下も観察されたが、この場合では、該低下は若干少なかった。
【0125】
2.3.アクチン遺伝子の発現促進領域の欠失構築体
様々なアクチン遺伝子プロモーターのさらなる特性分析を、5'非転写領域の欠失構築体を作製すること、そしてコケプロトプラストの一過的な形質転換を介して分析することによって行った。
【0126】
すなわち、Ppact1について、転写(+1)開始の上流の様々なゲノム領域長(−1823bp、−992bp、-790bp、−569bp、−383bp、−237bpおよび−82bp)を担持する構築体を作製した。基本的には、−82bpを除く全ての構築体は、完全なプロモーター活性を持ち得た。しかし、−383bpの構築体は、活性の低下を示し、−82bp構築体(図14)と同様のレベルに達する。
【0127】
Ppact3のプロモーター領域の欠失構築体の分析から、いくつかの興味深い特徴を明らかになった。記載したとおりに、このプロモーターは、他のアクチン遺伝子プロモーターと比べて低い活性を示し、CaMV 35Sと関連するが、それはわずかに活性が高かった。この場合に、次の5'非転写領域について試験した:−2210bp、−995bp、−821bp、−523bp、−323bp、−182bpおよび−81bp。驚くべきことに、プロモーターの活性は、プロモーター領域の−821bpまでを含有する構築体についてはCaMV 35Sとほぼ同じであった。しかし、bp−523および転写開始に対してより短い領域を含有する構築体は、組換えタンパク質の2倍以上の量を産生した。これは、一過的形質転換アッセイ(図15)中にこの遺伝子の転写を下方調節する−523bp領域上流に位置づけられるcis-アクチン領域を示しているのであろう。
【0128】
Ppact5の場合に、遺伝子転写開始上流−1872bp、−758bp、−544bp、−355bpおよび−121bpフラグメントを含有する構築体を生成した。一過的アッセイから得た結果は、プロモーターの完全な活性が、転写開始(+1)(図16)から−758から−121の間の領域に存する。
【0129】
Ppact7の5'非転写領域について次の欠失構築体を分析した:−1790bp、−1070bp、−854bp、−659bp、−484bp、−299bpおよび−66bp。得られた結果は、−484bpおよび−299bpの間に含まれる領域が、一過的な実験アッセイ中にプロモーターの完全な活性に重要である(図17)ことを示した。
【0130】
Physcomitrella アクチン遺伝子の一組の異種プロモーターを得るために、他の2種、コケ植物 Funaria hygrometrica および 苔網類 Marchantia polymorpha を使用して、アクチン遺伝子を含有するゲノムDNAフラグメントを単離した。このために、様々な程度の縮重を有するオリゴ(oligos)を設計し、2つの種から単離したゲノムDNAをテンプレートとして用い、PCR反応を行った。
【0131】
2.4.様々なコケ種Physcomitrella patens、Funaria hygrometrica および Marchantia polymorphaからの様々なアクチン遺伝子の比較
Physcomitrella patens
Physcomitrella patens から単離した4つの異なるゲノムアクチン配列は、5'プロモーター配列5'UTR+5'イントロン、ORF+内部イントロンおよび3'UTRおよび別の3'下流配列を包含する遺伝子の全機能的配列を示すようである。全体では、ゲノム配列のPpact1 5809 bp、Ppact3 5633 bp、Ppact5 8653 bpおよびPpact7 6351 bpを単離した(図18A)。単離した Physcomitrella アクチンcDNAのコード領域は、1134 bpのORFを持つPpact1を除いて、ほとんど1137 bp 長さであった。対応するタンパク質は、377アミノ酸を持つPpact1を除いて、378アミノ酸長である。ヌクレオチドレベルに対しては、コード配列は、86.6〜98.9%のホモロジーを共有する。該タンパク質配列は、97.1〜99.7%の同一性を有する(DNA STAR,MegAlign Program, Clustal V (weighted) sequence alignment)。
【0132】
4つのPhyscomitrella アクチン遺伝子全てに対して、伸張したATGスタートコドンのゲノムDNA配列の5'を、I−PCRによって単離し、配列決定した:Ppact1については2973 nt、Ppact3については3091nt、Ppact5については3095 ntおよびPpact7については3069nt。Ppact1、Ppact5およびPpact7について、完全長cDNAのみ増幅できる5'レース(race)をthe Gene Racer Kit (Invitrogen)を用いて行い、遺伝子の5'UTRを決定した。Ppact3について、5'UTRを、データベースから様々なESTの長さによって決定した。ゲノムI−PCRフラグメントとcDNAの比較によって、大きな5'イントロンの存在が示され得る。−14からATGスタートコドンに全て位置する5'イントロンの長さは、Ppact1、Ppact3、Ppact5およびPpact7各々に対して、955 bp、434 bp、1006 bpおよび1055 bpであった(図18A)。ORF内部イントロンの位置を、ゲノム配列、cDNA配列に対して得られたタンパク質配列およびArabidopsis thaliana由来のアクチン遺伝子のタンパク質配列を比較することによって決定した。利用可能なPhyscomitrella アクチン遺伝子に対する5'プロモーター配列は、Ppact1については1824 nt、Ppact3については2270 nt、Ppact5については1909 bp およびPpact7については1805 bp(図18A)である。
【0133】
全体として、Funaria hygrometrica(発現促進領域:配列番号9〜12)由来の4つの異なるアクチン遺伝子および Marchantia polymorpha(発現促進領域:配列番号13〜15)由来の3つの異なる遺伝子を、ゲノムDNAに対して縮重PCRによって同定し得る。この目的は、様々なコケ種由来の推定される異なるアクチン遺伝子ホモログの5'プロモーター領域を単離することを優先したので、配列大部分は現在まで3'末端では不完全である(図18B/C)。
【0134】
Funaria hygrometrica
Funariaについて、同定したアクチン遺伝子を、Fhact1、Fhact4.4、Fhact5およびFhact5bと呼ぶ。ゲノム 配列のFhact1の3951 bp、Fhact4.4の2417 bp、Fhact5の4432 bpおよびFhact5bの722 bpを、様々なアクチン遺伝子についてI−PCRによって単離した。完全なコード化cDNA配列を、1134ヌクレオチドのコード配列を有するFhact1遺伝子について単離した。他の Funaria アクチン遺伝子について、3'末端を欠失しているが、部分配列は利用できる:Fhact4.4については906 bp、Fhact5については965bp およびFhact5bについては722 bp(図18B)。単離されたコード配列は、ヌクレオチドレベルで87.4〜99.2%の範囲のホモロジーを共有する。誘導されたタンパク質配列は、90.8〜99.2%同一である(DNA STAR,MegAlign Program, Clustal V (weighted) sequence alignment)。
【0135】
Fhact5b 以外について、ATGスタートコドンの5'配列上流を、I−PCRによって単離し、配列決定した。Fhact1 1824 bpの場合には、Fhact4.4 1333 bpおよびFhact5 3289 bp が利用できる。様々な5'UTRの長さを、Gene Racer Kit (Invitrogen)を用いる5'レースによって決定した。イントロン−エキソン構造を、cDNA配列とiPCRによって得られたゲノム配列との比較によって、そしてPhyscomitrella 遺伝子と比較することによって決定した。Physcomitrellaアクチン遺伝子の場合では、同定したFunariaアクチン遺伝子は、cDNAの位置−14に位置する大きな5'イントロン、Fhact1、Fhact4.4 および Fhact5各々に対して、928 bp、1015 bp および656 bpの長さを含有する。現在までにFhact1について 700 bp、Fhact4.4について145 bp および5'プロモーター配列のFhact5 2515 bpを単離し、配列決定した。Fhact1について、3'領域の419 bpを単離した。Funaria アクチン遺伝子の5'領域または3'領域を、Funaria hygrometrica 由来のゲノムDNAに対するPCRによって、Fhact1の5'領域についてはプライマー908および909を用いることによって、Fhact1の3'領域については983および984、Fhact4.4の5'領域については1000および1001および、Fhact5の5'領域については611および612を用いて、増幅した。
【0136】
Marchantia polymorpha
Marchantia について、同定されたアクチン遺伝子を、Mpact1、Mpact4およびMpact15と呼ぶ。3つの配列全てに対して、3'末端は欠失している。これまで、ゲノム配列のMpact1 については2229 bp、Mpact4については3987 bp および Mpact15については2174 bp に関しては、単離し、配列決定した。単離したコード化cDNA配列の長さは、Mpact1、Mpact4およびMpact15については各々997nt、962 ntおよび995 ntである(図18C)。Marchantia アクチン遺伝子内の配列のホモロジーは、ヌクレオチドレベルでは78.3〜85.5 %の範囲、アミノ酸レベルでは94.7〜96.1%の範囲において別の2つのコケ種と比べたものよりも非常に低い(DNA STAR, MegAlign Program, Clustal V (weighted) sequence alignment)。同定された3つの異なるMarchantiaアクチン遺伝子全てに対してATGの5'上流配列をiPCRにて単離し、配列決定した:Mpact1に対しては937bp、Mpact4に対しては3025 bp およびMpact15に対しては910 bp。Marchantia アクチン遺伝子相同な5'領域は、Marchantia polymorpha 由来のゲノムDNAを、5'Mpact1については950および951、Mpact4 については960および961およびMpact15については970および971のプライマーを用いて、PCRによって増幅した。ORFのイントロン−エキソン構造を、異なるコケ種からの様々なアクチン遺伝子配列を比較することによって得た。Mpact1の単離5'配列は、別のPhyscomitrellaおよびFunaria 遺伝子の場合と同様に、5'イントロンの存在を示す位置−14でイントロンスプライス部位(aggt)に対するコンセンサス配列を示す。Mpact4およびMpact15の5'上流配列内では、イントロンスプライス部位コンセンサス配列が全く存在しておらず、そのことから5'イントロンの欠失が考えられる(図18C)。
【0137】
P.patens、F.hygrometrica および M.polymorpha アクチン遺伝子の比較
上記の通りに、一般的に、ある種内で様々な単離アクチン遺伝子に対するヌクレオチドおよびタンパク質配列のホモロジーは、特にタンパク質レベルで非常高い。密接に関係するコケ種の Physcomitrella patens および Funaria hygrometrica 間のホモロジーは、非常に高いことがわかった。アクチン遺伝子は、ヌクレオチドレベルでは、86.9〜96.3 %同一性のホモロジーを示し、アミノ酸レベルでは、ホモロジーの範囲は95.5〜99.7%である。
【0138】
これに対して、他の両種に対してコケ類 Marchantia polymorpha のより遠い関係が、ヌクレオチドレベルに対する遺伝子の最も低いホモロジーをもたらす。Physcomitrella および Marchantia アクチン遺伝子間のホモロジーは、ただ75.2%〜78.8%の範囲であり、Funaria および Marchantia 間のホモロジーは、75.5%〜80.4%の範囲である。アミノ酸レベルでは、Marchantiaアクチン遺伝子のホモロジーは、Physcomitrellaに比較すると93.0%〜96.1%の間で変化し、Funariaと比較すると93.4%〜96.7%の間で変化する。
【0139】
イントロン−エキソン構造(図18A/B/C)
前記したとおり、一定の範囲に対して Physcomitrella アクチン遺伝子のイントロン−エキソン構造は、高等植物のものと類似しているが、明らかな相違も有している。全ての単離 Physcomitrella アクチン遺伝子は、5'非翻訳領域内で大きな5'イントロンを含有し、調査した大部分の高等植物アクチンがそうである。唯一Ppact1は、Arabidopsis thaliana由来の全ての単離アクチン遺伝子について実施態様に対する条件に影響を及ぼすORF内に3つの内部イントロンを含有する。また、Ppact1のORF内部イントロン位置は、高等植物アクチン遺伝子と比べて保存される。反対に、Ppact3、Ppact5およびPpact7は、ORF内の1つの内部イントロンのみ含有する。
【0140】
同じゲノム構造を、5'UTR内で1つの伸張した5'イントロンを有する単離したFunariaアクチン遺伝子において見出し得る。Fhact1は、Fhact4.4およびFhact5がORF配列内で1つの内部イントロンのみを含有するにもかかわらず、Ppact1と同じ保存されたイントロン−エキソン構造を持つ。Fhact5bの単離した配列は、イントロン−エキソン構造についていくらかはっきりと言うには、あまりに短いが、少なくともFhact1またはPpact1と比べて内部イントロン2を含有しない。
【0141】
Marchantiaにおいて、単離したアクチン遺伝子のゲノム構造は、さらに異なっていると考えられる。3つの異なるコケ種における異なるアクチン遺伝子の数が知られていないことを示すことは重要ではあるが、それは、Marchantia由来の3つの単離したアクチン遺伝子は、個々の機能的相同遺伝子を示さないであろう。Marchantiaに存在する3つ以上のアクチン遺伝子およびPhyscomitrellaおよびFunariaにおいて4つ以上のアクチン遺伝子が存在するようである。
【0142】
しかし、Mpact1のイントロン−エキソン構造は、5'UTR内に5'イントロンおよびORF内部イントロン1および2の保存位置を有するPpact1およびFhact1の場合と同じであると考えられる。Mpact15は、保存されたORF内部イントロン1およびイントロン2を含有するが、それは、5'UTR内の位置−14で、またはPhyscomitrella またはいくつかのArabidopsis各々のアクチン5'イントロンで見出されるように、位置−10で保存イントロンスプライス部位を持たず、そのことは5イントロンの欠失についても一致する。同じ状況が、おそらく5'イントロンを欠失するMpact4についても見出された。さらに、Mpact4は、ORF内でイントロン1またはイントロン2を持たず、全ての単離したコケアクチン遺伝子とは大きく異なる。
【0143】
推定の相同的コケアクチン遺伝子
Physcomitrella および Funaria 由来の種々な単離されたアクチン遺伝子のイントロン−エキソン構造から、2種間の相同な遺伝子についての結論を提案するが、ゲノム構造からこのことを結論づけることはできない。例えば、Ppact1およびFhact1は、同様の保存されたイントロン−エキソン構造を共有するが、同じゲノム構造を持つ両植物のゲノム中に存在するより多くの遺伝子があるかどうかは前に示したように明白ではない。相同な遺伝子について説明するためには、機能的ホモロジーを提案する発現データも必要であろう。また、タンパク質の配列ホモロジーまたはコード化cDNA配列から、それらが一般的にあまりに類似しているので、種間の対応する相同な遺伝子についてどのような仮定をたてることも不可能である。
【0144】
PhyscomitrellaおよびFunariaの場合には、UTR配列、イントロン配列およびプロモーター配列に関して非コード配列内で非常に高い配列ホモロジーを見出されることは興味深い。そのため、高いホモロジーを、Ppact1とFhact1の間、Ppact3とFhact5の間で見出した。両ケースにおいて、該イントロン配列は、普通でない高い保存性を示した。Ppact1とFhact1の場合には、ホモロジーは次のとおりである:5イントロン:58%;イントロン1:64%、イントロン2:52%およびイントロン3:55%。Ppact3とFhact5の場合には、ホモロジーは、5'イントロンについて51%であり、イントロン1については48%の同一性を示す。
【0145】
両ケースに対して、単離した5'プロモーター配列は、高いホモロジーを示した。図19Aは、Ppact1およびFhact1の単離したプロモーター領域の概略図の比較を示す。転写開始は、位置1であるといわれ、5'プロモーター領域の最初のntは−1である。Fhact1の5'プロモーター領域の単離した267は、58%のPpact1 5'プロモーター領域の最初の267 bpに対する全てのホモロジーを示す。この配列内では、種々な観察し得る相同なブロックがある。−267と−129の間の配列が、51%のホモロジーを示す。次の29bpは、62% 同一性を示し、位置−100および−1内のホモロジーは、ほぼ70%であった。Ppact1からFhact1 イントロンおよびプロモーター配列間のこれらの高い配列同一性に関して、これらの2つのコケ植物における相同な遺伝子としてこれらの2つの遺伝子を推定することは妥当である。別の興味深い態様は、様々なPpact1:vegf欠失構築体間で観察された発現低下である(図15)。発現の劇的な低下は、−237〜−82欠失構築体に存在することが判った。これは、Ppact1のプロモーター領域の配列として、-129〜−1の間の5'プロモーター領域の重要な機能について論じるものであり、Fhact1は、説明したとおりに、高度に保存されており、−237欠失構築体であるが、−82欠失構築体は高度に保存された配列の全てを含有しない。
【0146】
Ppact3およびFhact5のプロモーター内で高度に保存された領域も見られ得る。この場合では、単離された両遺伝子についてプロモーター領域は、より長いものである。それ故に、さらに多くのホモロジーの領域が、2つの5'プロモーター領域(図19B)間で見出される。この場合において、−1〜−2270のPpact3および−64〜−2325のFhact5のプロモーター領域は、幾つかの興味深い相同的特徴を示す。TS位置における相違は、Fhact5の5'UTRが実験的に決定され、Ppact3の1つがデータベースからのESTを分析することによって決定されるという事実によるものであろう。
【0147】
−2270〜−1876の間のPpact3の配列は、−2325〜−1948の間に位置付けられたFhact5の同じ配列領域に対して、29%の低いホモロジーを示すのみでる。次いで、約1100 ntの伸張領域は、82%の非常に高いホモロジーを示す。次のPpact3の140 nt およびFhact5プロモーターの152 ntは、「ただ」53%のホモロジーを示す。−641〜−463に位置づけられるPpact3の配列は、Fhact5の−705および−528の間の領域に対して76%の再び高い保存性を示す。次の約180 ntは、53%の低いホモロジーを再び示す。次いで、Ppact3プロモーター配列の最終の288 bpは、またFhact5の次の280bpに対して73%と相同である。2つの相同な遺伝子間のホモロジーの様々な程度のこれらの領域は、5'プロモーター領域内の調節性活性要素の存在を示す。
【0148】
Ppact1およびFhact1の場合に関して、ここでも様々なPpact3:vegf欠失構築体の発現分析は、この関連から興味深い(図17)。ここで、−523欠失構築体と比べて−2210、−995、−821欠失構築体のvegf発現レベルが有意に増加することが、観察された。Ppact3およびFhact5で見出された−1876から−779の間の伸張したホモロジー領域の少なくとも一部分を含有するこの3つの欠失構築体は、35Sプロモーターまたは長い欠失構築体と比べて−523欠失構築体が発現の21/2倍の増加を示すにもかかわらず、ほぼ35Sプロモーターのレベルに達した。これは、Ppact3とFhact5とのホモロジーが82%であるこの領域内で負のレギュレーターの存在を示すものである。
【0149】
Marchantiaの場合において、PhyscomitrellaおよびFunaria由来の異なるアクチン遺伝子間で比較し得る配列ホモロジーは全く見出され得なかった。
【0150】
Fhact5遺伝子について、hVEGFcDNAと融合された5'非転写領域の1157bpを含有する構築体を構築され、Physcomitrella プロトプラストに対して一過的な形質転換実験に使用した。この場合では検出したタンパク質の量は、CaMV35Sプロモーターと比べてわずかに高い(2倍まで)が同じ範囲内であった。Fhact5遺伝子は、Ppact3遺伝子に対して最も高いホモロジーを示し、興味深いことには両プロモーターは、一過的なアッセイにおいてPhyscomitrella プロトプラストで同様の活性を示した。
【0151】
2.5.安定な形質導入系
VEGFcDNAの発現を駆動するPpact1、Ppact5およびPpact7の5'MEPRを含有するカセットを、Physcomitrella植物のゲノムに導入した。各MEPRについて、安定に形質転換された植物10のうち5つを取り出し、rhVEGFの発現を試験した。試験されたこれら3つのMEPRについて、発現および分泌されたコケ由来rhVEGFが、該植物の成長中の(標準的Knop 培地)培養物の上清中で検出された。このことは、MEPRが、それらがゲノムの他の部分で組込みされる場合、非誘導条件(標準的条件)下でタンパク質発現を促進するということを示す。それらの系において測定され得るタンパク質の量は、構築体および安定な系によって、7ngVEGF/mgコケ乾燥重量から53ngVEGF/mgコケ乾燥重量までの範囲である。
【0152】
Ppact5の制御下でVEGFcDNAを含有する1つの形質導入コケ株を使用して、バイオリアクターの培養を行った。ELISAで測定したバイオリアクターの培養物中でコケ誘導組換えVEGFの量は、40-50ngVEGF/mgコケ乾燥重量であった。
【0153】
実施例3: Physcomitrella patens およびFunaria hygrometrica ユビキチン遺伝子のクローニングおよび分析、およびそれらの発現促進領域
Physcomitrellaのポリユビキチン遺伝子、特異的なオリゴに対応するいくつかのEST配列の存在に関する利点を、データベースにおけるユビキチン遺伝子相同配列の最も豊富に存在するESTの対応するゲノム配列を単離するために設計し、Ppubq1と呼ぶ。Ppubq1の5'領域の2146bpはI−PCRによって同定され得る。129bpの転写された5'リーダーは、ORFの開始前に存在し、5'レースによって決定した。Ppubq1の5’領域は、プライマー777および602を用いて、Physcomitrella patens由来のゲノムDNAに対してPCRによって増幅した。
【0154】
プロモーターの様々な部分およびhVEGFcDNAの発現を誘導する5'UTR領域を担持するベクターを、Physcomitrella プロトプラストの一過的形質転換中、プロモーターの活性を分析するために構築した。
【0155】
この結果は、このプロモーターについて、Ppact5プロモーターと同様の活性(または、さらに高い)を示した。試験した構築体、1.6Kbおよび1.3Kbプロモーターフラグメントは、CaMV 35Sよりも4倍から7倍も高い発現レベルに達した。
【0156】
Funaria 由来のユビキチン遺伝子、Fhubq1を、Ppubq1コード配列から誘導されたプライマーを用いて、Funaria 全RNAに対して、5'レースPCRを行って同定した。単離した5'UTR配列および部分的コード配列を使用して、Funaria hygrometricaのゲノムライゲーションに対してI−PCRのためのプライマーを設計した。この方法で、5'UTRの配列の5'上流を同定した。5'領域を、プライマー943および944を用いてFunaria hygrometrica由来のゲノムDNAに対してPCRによって増幅した。
【0157】
実施例4:Physcomitrella patens RBCS発現促進領域のクローニングおよび分析
アクチン、チューブリンおよびユビキチン遺伝子に隣接する推定候補体として、リブロース-1,5-ビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ・スモール・サブユニット(rbcS)遺伝子を考察した。様々なrbcS遺伝子を、核ゲノム上でコードした。rbcS遺伝子は、遺伝子ファミリーのメンバーである。基本的には全ての植物の葉部分で発現したrbcS遺伝子は、COを固定できる。それ故にこの遺伝子ファミリーは、様々なコケの異なるrbc遺伝子の発現促進領域の5'および3'フランキングを得ることを目的とする。第一ステップとして、Physcomitrella ESTデータベースを分析した。Physcomitrella patens 由来のrbcS遺伝子が、12遺伝子を含む遺伝子ファミリーにおいて組織化されるということがわかった。PprbcS12と呼ばれる最も豊富に存在するrbcS遺伝子のESTを、その5'および3'発現促進配列を見出すための候補として考えた。EST配列データにより開始して、この遺伝子の5'および3'フランキング領域を、I−PCRによって同定し、このクローン5'および3’領域を配列決定した。5'領域を、プライマー839および858を用いて、Physcomitrella patens由来のゲノムDNAに対してPCRによって増幅した。3'領域を、プライマー904および901を用いて、PCRによって増幅した。
【0158】
添付した配列表において、次の配列を示した(配列番号/配列の名前/ 相対的なタンパク質コード領域に対する5'または3’領域):

1 Pptub1 5'
2 Pptub1 3'
3 Pptub2 5'
4 Pptub2 3'
5 Pptub3 5'
6 Pptub3 3'
7 Pptub4 5'
8 Pptub4 3'
9 Ppact1 5’
10 Ppact1 3'
11 Ppact3 5'
12 Ppact3 3'
13 Ppact5 5'
14 Ppact5 3'
15 Ppact7 5'
16 Ppact7 3’
17 Fhact1 5'
18 Fhact1 3'
19 Fhact4.4 5’
20 Fhact5 5'
21 Mpact1 5'
22 Mpact4 5'
23 Mpact1 5 5'
24 Ppubq1 5'
25 Fhubq1 5'
26 PprbcS12 5'
27 PprbcS12 3'
【0159】
【表14】

【0160】
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【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、Physcomitrella patensにおけるβ-チューブリン遺伝子である。
【図2】図2は、Physcomitrella patensにおけるβ−チューブリンの発現促進領域の分析である。
【図3】図3は、rhVEGF構築体の一過的な形質転換によるPptub1の発現促進領域の分析である。
【図4】図4は、rhVEGF構築体の一過的な形質転換によるPptub2の発現促進領域の分析である。
【図5】図5は、rhVEGF構築体の一過的な形質転換によるPptub3の発現促進領域の分析である。
【図6】図6は、rhVEGF構築体の一過的な形質転換によるPptub4の発現促進領域の分析である。
【図7】図7は、Physcomitrella patensアクチン遺伝子のゲノム構造である。
【図8】図8は、様々な5'アクチン領域の発現活性の比較である。
【図9】図9は、Ppact1構築体である。
【図10】図10は、Ppact5 構築体である。
【図11】図11は、Ppact7構築体である。
【図12】図12は、Ppact3:vegf構築体である。
【図13】図13は、Ppact1 プロモーター:5'イントロン置換体である。
【図14】図14は、Ppact1 プロモーター:vegf欠失構築体である。
【図15】図15は、Ppact3プロモーター:vegf欠失構築体である。
【図16】図16は、Ppact5プロモーター:vegf欠失構築体である。
【図17】図17は、Ppact7プロモーター:vegf欠失構築体である。
【図18】図18は、様々なコケ種のアクチン遺伝子である。
【図19】図19は、Physcomitrella patens および Funaria hygrometrica由来の相同なアクチン遺伝子のプロモーター配列の比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型細胞核由来コケ発現促進領域(MEPR)をコードしている単離核酸分子。
【請求項2】
MEPRが、ツリガネゴケ属(Physcomitrella)、ヒョウタンゴケ科(Funaria)、ミズゴケ科(Sphagnum)、キンシゴケ科(Ceratodon)、ゼニゴケ科(Marchantia) および ダンゴコケ科(Sphaerocarpos)、好ましくは、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica) および ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)のMEPRから選択されることを特徴とする、請求項1の単離核酸分子。
【請求項3】
MEPRが、配列番号1〜27またはそれらの発現促進フラグメントから選択されることを特徴とする、請求項1または2の単離核酸分子。
【請求項4】
コケ・プロモーターおよび、好ましくは5'-UTR領域および/または5'-イントロンおよび/または3'-UTRを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項5】
MEPRが、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)35Sプロモーターの発現促進活性と少なくとも同等な発現促進活性を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項6】
MEPRが、カリフラワー・モザイク・ウイルス (CaMV) 35Sプロモーターの発現促進活性の少なくとも200%、好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも1000%である発現促進活性を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項7】
組換えポリペプチド産物のためのコード領域をさらに含み、該コード領域がMEPRの制御下にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項8】
選択マーカーをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項9】
形質転換されるべき種のゲノム配列に相同な配列をさらに含み、それによりこの種において標的組込みが可能となることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項10】
アンチセンスまたはリボザイム分子として提供されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の単離核酸分子。
【請求項11】
次のステップ:
−請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子と所望により該組換えポリペプチド産物についてのコード領域を含み、該コード配列が宿主中の該核酸分子のMEPRの制御下にある、組換えDNAクローニングビヒクルを提供すること、
-該コード配列を天然には担持していない上記真核生物宿主細胞を、該MEPRの制御下にあるように、該コード配列で形質転換すること、
−形質転換された真核生物宿主細胞を適当な培養培地中で培養すること、
−該組換えポリペプチドの発現を可能にすること、そして
−発現した組換えポリペプチドを単離すること、
を含む真核生物宿主細胞における組換えポリペプチド産物を発現するための方法。
【請求項12】
真核生物宿主細胞が、植物細胞、好ましくはコケ細胞、特にPhyscomitrella patens 細胞から選択されることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
宿主細胞が、原糸体コケ組織細胞であることを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
培養培地が、それらに追加の植物ホルモンを含まないことを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
細胞が、Physcomitrella、Funaria、Sphagnum、Ceratodon、Marchantia および Sphaerocarpos 群のコケ細胞群から選択されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
宿主細胞が、該組換えポリペプチド産物を一過的に発現することを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ポリペプチドを工業的に産生するため、特に該ポリペプチドを産生する組換え細胞を提供するための請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用。
【請求項18】
コケ・ポリペプチド発現のための、該MEPRによって天然には制御されていない該コケ・ポリペプチド発現のための、特に該ポリペプチドを発現する組換えコケ細胞を提供するための請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用。
【請求項19】
発現促進領域についてのコンセンサス配列をスクリーニングおよび明示するための請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用。
【請求項20】
翻訳後修飾タンパク質の組換え発現のための、特に翻訳後に修飾されたタンパク質の産生のための請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用。
【請求項21】
組換えタンパク質のイン・ビトロ発現のための請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用。
【請求項22】
代謝修飾タンパク質の組換え発現のための請求項1〜10のいずれかに記載のMEPRをコードしている単離核酸分子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−501619(P2007−501619A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522938(P2006−522938)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008580
【国際公開番号】WO2005/014807
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506047949)グリーンオヴェイション・バイオテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】GREENOVATION BIOTECH GMBH
【Fターム(参考)】