説明

コネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置及び挿入状態検知方法

【課題】端子挿入孔に挿入された電線端子の係止力を精度良く確認できるとともに、多様なコネクタハウジングに対応できる汎用性を有し、小型で、作業効率に優れたコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置を提供する。
【解決手段】水平部と垂直部を有する側面視L字状に形成された渡り部材8と、前記渡り部材8の水平部に載置された、コネクタハウジングを保持するコネクタセット治具1と、前記渡り部材8の垂直部表面に、前記コネクタセット治具1に対向して設けられた歪測定器2とを備えている。制御部4は歪測定器2で検出された渡り部材8の垂直部における変形量を検知して、電線端子の挿入状態を良否判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線端子をコネクタハウジングの端子挿入孔に挿入する際に、電線端子が完全に端子挿入孔に係止されていることを確認する装置及び電線端子が完全に端子挿入孔に係止されていることを検知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスの製造工程において、電線端子をコネクタハウジングの端子挿入孔に挿入した後に、コネクタ接続時の電気接続の不良を回避するために、その取り付け具合を確認する作業が行われる。この作業は、具体的には、端子挿入後、作業者が所定の力にて端子を引っ張って、電線端子が端子挿入孔から抜けるか否かにより電線端子の取り付け具合を判断していた。
【0003】
また、上記作業者の手作業による引っ張り作業のほかに、バネを用いたコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置がある。この従来例は、コネクタハウジングが着脱自在に装着されるコネクタ受け台と、電線端子の引き抜き方向に往復動可能となるよう前記コネクタ受け台に取り付けられた支持台と、このコネクタ受け台と支持台の間に設けられた、コネクタ受け台を端子の挿入方向へ付勢するバネとからなり、電線を引っ張った結果、コネクタ受け台がバネに抗して移動したか否かにより、電線端子がコネクタハウジング内に適切に挿入されたか否かを判断するものである(特許文献1)。
【0004】
その他の従来例として、検知センサを用いたコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置がある。この従来例は、AE検知センサと、このAE検知センサとAEを伝播可能に接続されたコネクタ固定装置とからなり、端子がコネクタ内に所定の深さまで挿入されたときに発生するAEを検出することにより、コネクタ内における端子挿入の深さを確認するものである(特許文献2)。
【0005】
しかし、手作業による電線端子の取り付け具合の確認は、作業者の作業経験や勘に判断を依存することとなり、品質精度が高まると対応できないことがある。また、電線端子の引っ張り力には個人差があることから、電線端子の取り付け具合の確認にばらつきが生じ、さらに、引っ張り力が十分でないと電線端子の挿入不良を見過ごしてしまうこともある。
【0006】
また、前記従来例である、バネを用いたコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置では、コネクタハウジングの端子挿入孔に電線端子を完全に挿入した際の係止力が、コネクタハウジングごとに相違するので、挿入状態を確認するコネクタハウジングごとに適当な付勢力を有するバネを選択し、交換しなければならない。また、コネクタハウジングはコネクタ受け台の上面に設けられた装着部に嵌合されるので、コネクタハウジングの形状ごとにコネクタ受け台を用意しなければならない。このように、態様の異なるコネクタハウジングごとに、異なるバネとコネクタ受け台を準備しなければならないので、バネを用いた従来例の装置では、装置の部品点数が増大して検査コストがかかり、また、作業効率に劣るという問題がある。さらに、このコネクタ受け台は、支持台の空洞部に上下に移動自在に収容されているので、装置が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
また、検知センサを用いたコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置では、レーザ発振装置、反射板、ベース板、吸振材、AE検知センサ及びコネクタ固定装置など、多くの装置・部材が必要であるため、装置が複雑かつ大掛かりとなり、高い検査コストを要するという問題がある。
【特許文献1】特開平9−180851号公報
【特許文献2】特開2007−26955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、端子挿入孔に挿入された電線端子に対するコネクタハウジングの係止力を精度良く確認できるとともに、多様なコネクタハウジングに対応できる汎用性を有し、小型で、作業効率に優れたコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、水平部と垂直部を有する側面視L字状に形成された渡り部材と、前記渡り部材の水平部に載置された、コネクタハウジングを保持するコネクタセット治具と、前記渡り部材の垂直部表面に、前記コネクタセット治具に対向して設けられた歪測定器とを備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置である。つまり、コネクタハウジングと歪測定器とは、渡り部材を介してつながることとなる。コネクタハウジングをコネクタセット治具に保持させて、電線端子をこのコネクタハウジングの端子挿入孔に挿入させた後、この電線端子をその挿入方向と反対方向に引っ張ると、電線端子の挿入が完全であれば、渡り部材の垂直部がコネクタセット治具方向に所定量変形し、この変形量が歪測定器に検出される。一方、電線端子の挿入が不完全であれば、渡り部材の垂直部の変形量が所定量に達する前に電線端子が端子挿入孔から抜けてしまう。これにより、電線端子の挿入状態を確認できる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記歪測定器が検出した変形量を検知、評価する制御部をさらに備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置である。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記コネクタセット治具が、コネクタハウジングが収容されるコネクタセット部と、該コネクタハウジングを該コネクタセット部に固定させるコネクタ固定部材とを備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置である。このコネクタ固定部材は、電線端子が引っ張られる際に、コネクタハウジングがコネクタセット部から抜けてしまうのを防止するものである。
【0012】
本発明の第4の態様は、水平部と垂直部を有する側面視L字状である渡り部材の水平部に載置されたコネクタセット治具に、コネクタハウジングを保持させる工程と、前記コネクタハウジングに設けられた端子挿入孔に、電線に取り付けられた端子を挿入する工程と、前記挿入の方向とは反対方向に前記電線を引っ張って、前記渡り部材の垂直部を変形させる工程と、前記変形を、前記渡り部材の垂直部表面に、前記コネクタセット治具に対向して設けられた歪測定器により検出させる工程とを備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態検知方法である。
【0013】
本発明の第5の態様は、前記歪測定器が検出した変形量を、制御部に検知、評価させる工程をさらに備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態検知方法である。
【0014】
本発明の第6の態様は、水平部と垂直部を有する側面視L字状である渡り部材の水平部に載置されたコネクタセット治具に、コネクタハウジングを保持させる工程と、前記コネクタハウジングに設けられた端子挿入孔に、電線に取り付けられた端子を挿入する工程と、前記挿入の方向とは反対方向に前記電線を引っ張って、前記渡り部材の垂直部を変形させる工程と、前記変形を、前記渡り部材の垂直部表面に、前記コネクタセット治具に対向して設けられた歪測定器により検出させる工程と、前記コネクタセット治具から、前記端子が挿入されたコネクタハウジングを取り出す工程とを備えたことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法である。
【0015】
本発明の第7の態様は、前記変形を前記歪測定器により検出する工程の後に、前記歪測定器が検出した変形量を、制御部に検知、評価させる工程をさらに備えたことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、渡り部材の垂直部におけるコネクタセット治具方向への変形量を測定することで、コネクタハウジングへの電線端子の挿入状態が確認できるので、係止力の相違するコネクタハウジングであってもそのまま対応できる。また、コネクタハウジングの係止力に応じて部品を交換しないでもよいので、作業効率が高く、準備しておく部品点数を減らすこともできる。このように本発明に係る装置は、汎用性に優れている。また、側面視L字状の渡り部材に部品が設置され、この渡り部材の垂直部を変形させて電線端子の挿入状態を確認するので、装置が小型化できて嵩張ることはなく、また複雑な機構を設ける必要もなく、簡易、迅速に挿入状態を確認できる。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、歪測定器が検出した渡り部材の垂直部における変形量を制御部が検知、評価することから、制御部において、所定の変形量以上が検知された場合には電線端子はコネクタハウジングに適切に係止されていると、所定の変形量未満しか検知されないうちに電線端子が抜けてしまった場合には電線端子はコネクタハウジングに適切に係止されていないと評価されることで、作業者は電線端子の挿入状態を精度よく確認できる。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、コネクタ固定部材によりコネクタハウジングがコネクタセット部に固定されるので、コネクタハウジングの寸法がコネクタセット部の寸法よりも小さく形状が一致していなくてもコネクタハウジングをコネクタセット治具に固定することができることから、コネクタハウジングの態様ごとにコネクタセット治具を交換しなくてもよく、準備しておく部品点数を減らすことができる。また、コネクタセット治具の交換作業を省けるので、作業効率に優れている。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、渡り部材の垂直部におけるコネクタセット治具方向への変形量を測定することで、コネクタハウジングへの電線端子の挿入状態を確認できるので、コネクタハウジングの態様の相違によりその係止力が相違した場合でもそのまま検知作業を続けることができ、作業効率に優れている。また、渡り部材の垂直部を変形させて挿入状態を検知するので、複雑な機構を設ける必要はなく、簡易、迅速に検知できる。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、歪測定器が検出した渡り部材の垂直部における変形量を制御部にて検知、評価できるので、作業者は電線端子の挿入状態を迅速に精度よく確認できる。
【0021】
本発明の第6の態様によれば、ワイヤーハーネス等を製造する際に、コネクタハウジングへの電線端子の挿入工程において、挿入不良を簡易、的確に発見できるので、不良品の発生を抑えることができる。また、電線端子の挿入工程と挿入状態検知工程を一連に行うことができるので、ワイヤーハーネス等の生産効率が向上する。
【0022】
本発明の第7の態様によれば、歪測定器が検出した渡り部材の垂直部における変形量を制御部にて検知、評価できるので、作業者はワイヤーハーネス等の製造工程において電線端子の挿入状態を迅速に精度よく確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施形態例に係るコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置を、図面を用いながら説明する。図1は、本発明の実施形態例に係るコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置の概略図である。
【0024】
本発明の実施形態例に係るコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置は、図1に示すように、コネクタセット治具1と、歪測定器2と、水平部と垂直部を有する渡り部材8と、制御部4とから構成されており、後述するように、渡り部材8の水平部上側表面の先端部にコネクタセット治具1が、渡り部材8の垂直部表面に歪測定器2が配設されており、この歪測定器2には制御部4が電気的に接続されている。
【0025】
図1に示すように、前記コネクタセット治具1は、略直方体であり、コネクタハウジングを収容するための貫通孔であるコネクタセット部6が、渡り部材8の水平部と平行に、横方向に穿設されている。また、前記コネクタセット部6の外側開口部の下側縁端部には、コネクタハウジングをコネクタセット部6に固定するための固定部材7が設けられている。コネクタセット部6は、コネクタハウジングの形状と嵌合する形状となっている。このため、コネクタセット部6に収容されたコネクタハウジングが、電線端子の挿入方向と反対の方向である引っ張り方向5に引っ張られても、コネクタハウジングがコネクタセット部6から脱落するのが防止される。
【0026】
固定部材7は、その一部がコネクタセット部6の下側壁面の上方に突出するように配設されている。コネクタハウジングが電線端子の挿入方向と反対の方向である引っ張り方向5に引っ張られるとき、固定部材7の突出部により、コネクタセット部6からコネクタハウジングが脱落するのを防止する。このため、コネクタセット部6の形状がコネクタハウジングの形状と一致しない場合であっても、それに対応したコネクタセット部6の形状を有するコネクタセット治具1に交換しなくてもよい。この固定部材7には、例えば、上方向に付勢されたバネに板材を着設させたものを挙げることができる。一部がコネクタセット部6の下側壁面から上方に突出した板材を、バネを縮めてコネクタセット部6の下側壁面の下方まで完全に下げることで、コネクタハウジングをコネクタセット部6に収容させる。収容後にバネを解放すると、バネの上方向への付勢力により板材が元の位置に戻る。
【0027】
コネクタセット治具1の材質は、樹脂や金属など、特に限定されるものではないが、重量やコネクタセット部6の加工性の点で樹脂が好ましい。
【0028】
図1に示すように、渡り部材8は、水平部と垂直部とからなり側面視L字状となっている。この実施形態例では、プレート状である水平部の幅方向の側壁部に、プレート状の垂直部が接合されて側面視L字状の渡り部材8が形成されている。前記コネクタセット治具1は渡り部材8の水平部先端に載置されており、後述するように、歪測定器2は垂直部表面の略中央部に配設されている。
【0029】
渡り部材8の垂直部は、固定板3に固定されている。この実施形態例では、垂直部はその全面が固定板3と当接しているのではなく、上側部分だけが固定板と当接しており、下側部分は固定板から突出した態様となっている。渡り部材8は、垂直部の上側部分の2箇所でネジ止めされている。また、渡り部材8が固定板3に固定される際、渡り部材8の水平部の下面は、地面等に接していない状態となっている。このように、接合部は固定板3に固定されておらず、渡り部材8の水平部は地面等に接していないため、コネクタセット部6に収容されたコネクタハウジングが、作業者により引っ張り方向5に引っ張られると、その引っ張り力が水平部と垂直部の接合部に伝わり、接合部はコネクタセット治具1の方向に動き、これにより垂直部は引っ張り力に応じて所定量変形することとなる。
【0030】
なお、コネクタハウジングの係止力が小さい場合には、板厚の薄い渡り部材8を用いることで、引っ張り力に対する渡り部材8の変形量を大きくして装置の検知感度を上げることもできる。
【0031】
渡り部材8の材質は、コネクタハウジングが引っ張り方向5に引っ張られると垂直部が変形するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば樹脂や金属を挙げることができる。
【0032】
図1に示すように、この実施形態例では、歪測定器2は渡り部材8の垂直部であって固定板3に当接していない側の表面に設けられている。この歪測定器2は、引っ張り方向5の歪みを検出できるように設定されている。この歪測定器2により、引っ張り力に応じて生じた渡り部材8の垂直部の変形量が測定される。歪測定器2には、例えば、歪みゲージ、ピエゾセンサ、ロードセルなど荷重や歪みの変化を電気信号に変換するセンサなどを用いることができる。
【0033】
歪測定器2の垂直部における位置は、垂直部の変形量を測定できる箇所であれば特に限定されないが、この実施形態例では、垂直部の横方向の略中央に配設されている。コネクタハウジングと歪測定器2を結んだ線が垂直部から伸びる法線となるようにこの歪測定器2を配置すると、コネクタハウジングと歪測定器2が相対するので、正確に垂直部の変形量を測定できる。ここでは、電線端子が挿入されたコネクタハウジングが、渡り部材8の水平部の幅方向略中央部に配置されているので、上記の通り、歪測定器2は垂直部の横方向略中央に配置されている。なお、ここでは、歪測定器2は、1箇所のみに設けられているが、垂直部の変形量をより正確に測定したい場合には、2箇所以上に設けてもよい。
【0034】
図1に示すように、制御部4は歪測定器2と電気的に接続されており、ブリッジ回路や信号増幅器を備えている。制御部4は、歪測定器2で検出された渡り部材8の垂直部における変形量を検知して、電線端子の挿入状態を良否判定する。このとき、電線端子が端子挿入孔に適切に挿入された状態で引っ張り方向5に引っ張った場合の、垂直部の変形量をあらかじめ測定して、制御部4に入力しておく。制御部4は、変形量が設定値に達して電線端子が完全に挿入されていると判定した場合には、例えば、ブザー音を発したり、青信号を点灯させたりすることで、引っ張り作業を行っている作業者に知らせる。電線端子の挿入が不適切な場合には、作業者が電線を引っ張り方向5に引っ張っても、垂直部の変形量が設定値に達する前にコネクタハウジングから電線端子が抜けてしまうので、制御部4は、ブザー音を発したり、青信号を点灯させたりすることはない。
【0035】
この制御部4には、垂直部の変形量を表示画面にて表示する手段を設けてもよい。例えば、電線端子が完全に挿入されている場合の垂直部における変形量の最小値を下限値とし、さらに電線を引っ張っていったときにコネクタハウジングの端子挿入孔や電線端子に損傷を与える可能性のある変形量を上限値として、あらかじめ制御部4にこれらの値を入力しておく。制御部4は、作業者が電線を引っ張ることで生じた垂直部の変形量を縦軸、時間を横軸としたグラフ形式等にて表示画面で随時表示していき、変形量が下限値に達すると制御部4はOKの旨表示画面に表示し、上限値に達した時点で警告を表示画面に表示する。これにより、作業者は電線端子が完全に挿入されていることを的確に確認することができ、また、引っ張り過ぎによる端子挿入孔や電線端子の損傷を防ぐことができる。
【0036】
なお、上記したOKの旨や警告の表示は、表示画面を用いる代わりに、前記ブザー音や信号の点灯等の方式であってもよく、OKの場合と警告の場合とでブザー音や信号の色を変えてもよい。
【0037】
次に、本発明に係るコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置を用いた、電線端子の挿入状態検知方法及びワイヤーハーネスの製造方法について、図1に示す実施形態例を使用しながら説明する。まず、コネクタハウジングをコネクタセット治具1に収容させる。このとき、コネクタハウジングの形状がコネクタセット部6の形状と一致しない場合でも、コネクタ固定部材7を用いてコネクタハウジングをコネクタセット治具1に固定させることができるので、コネクタハウジングの形状に応じて、コネクタセット治具1を交換しなくてもよい。そして、電線に取り付けられた端子を、コネクタハウジングの端子挿入孔に挿入する。このとき、コネクタハウジングはコネクタセット治具1に固定されているので、端子の挿入操作をスムーズに行うことができる。
【0038】
次に、電線端子の挿入方向とは反対方向である引っ張り方向5に電線を引っ張る。そして、この引っ張り力が渡り部材8の接合部に伝わり、引っ張り方向5に引っ張られて渡り部材8の垂直部が変形していく。渡り部材8の垂直部に設けられた歪測定器2がこの変形量を検出し、電気信号として制御部4に変形量を伝送する。従って、垂直部の変形量は、随時、迅速に検知される。このとき、電線端子が完全に挿入されていない場合には、渡り部材8の垂直部における変形量が所定の設定値に達する前に、電線端子がコネクタハウジングから抜けてしまうので、不合格品を簡易に検知できる。
【0039】
電線を引っ張って垂直部をさらに変形させていき、歪測定器2が検出する変形量が所定の設定値に達すると、制御部4は電線端子が完全に挿入されていることを作業者に表示する。電線端子の挿入状態を確認後、電線端子挿入側の反対側からコネクタハウジングを押すことで、コネクタハウジングをコネクタセット部から取り出す。
【0040】
上記工程により、作業者は、的確かつ速やかに電線端子の挿入状態を確認することができる。また、電線端子の挿入工程と電線端子の挿入状態確認工程を一連の作業で行えるので、ワイヤーハーネス等の生産効率が向上する。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態例を説明する。前記実施形態例では、コネクタセット治具1のコネクタセット部6は横方向の貫通孔であったが、電線端子の挿入方向と反対方向に開口した凹部であってもよい。また、前記コネクタセット治具1は、略直方体に貫通孔が穿設されていたが、この代わりに、2つの挟持片を有する挟持バネでコネクタハウジングを上下または左右から挟持させる態様であってもよい。コネクタセット治具として挟持バネを用いても、コネクタハウジングの形状、寸法に対する汎用性に優れている。
【0042】
また、前記実施形態例では、固定部材7として板材を備えたバネを用いていたが、この代わりに、ネジにてコネクタセット治具1から板状の固定部材を着脱できるようにしてもよい。さらに、前記実施形態例では、コネクタセット部6は横方向の貫通孔であったが、この代わりに上下方向の貫通孔または上方向に開口した凹部として、作業者が電線を上方に引っ張る態様としてもよい。このとき、渡り部材8の水平部が変形するので、歪測定器2は、渡り部材8の垂直部ではなく、水平部であってコネクタセット部6の近傍に配設するのが好ましい。
【0043】
また、前記実施形態例では、渡り部材8は2枚のプレートを接合させてL字状としていたが、L字状に成形した態様であってもよい。さらに、渡り部材8をL字状とする代わりに、V字状またはW字状としてもよい。このとき、例えば、水平面方向において2箇所または3箇所に分離された形態となる渡り部材の上側表面のうち、両外側にある上側表面のうちの一方を固定板に固定し、他方にコネクタセット治具を配置し、歪測定器をV字状またはW字状の傾斜面に設置する。作業者がコネクタセット治具に収容されたコネクタハウジングの電線を引っ張ると、V字状またはW字状の渡り部材は、その傾斜面の斜度を緩くさせながら伸びていく。そして、傾斜面に設置された歪測定器がこの斜度の変化量を検出し、制御部が検知、評価することで、電線端子の挿入状態の良否を判定できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
電線端子の挿入工程を行いつつ、その挿入状態を的確に検知できるので、自動車等の配線に用いるワイヤーハーネスの製造分野で利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態例に係るコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置の概略図である。
【符号の説明】
【0046】
1 コネクタセット治具
2 歪測定器
4 制御部
6 コネクタセット部
7 固定部材
8 渡り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平部と垂直部を有する側面視L字状に形成された渡り部材と、
前記渡り部材の水平部に載置された、コネクタハウジングを保持するコネクタセット治具と、
前記渡り部材の垂直部表面に、前記コネクタセット治具に対向して設けられた歪測定器とを備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置。
【請求項2】
前記歪測定器が検出した変形量を検知、評価する制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置。
【請求項3】
前記コネクタセット治具が、コネクタハウジングが収容されるコネクタセット部と、該コネクタハウジングを該コネクタセット部に固定させるコネクタ固定部材とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態確認装置。
【請求項4】
水平部と垂直部を有する側面視L字状である渡り部材の水平部に載置されたコネクタセット治具に、コネクタハウジングを保持させる工程と、
前記コネクタハウジングに設けられた端子挿入孔に、電線に取り付けられた端子を挿入する工程と、
前記挿入の方向とは反対方向に前記電線を引っ張って、前記渡り部材の垂直部を変形させる工程と、
前記変形を、前記渡り部材の垂直部表面に、前記コネクタセット治具に対向して設けられた歪測定器により検出させる工程とを備えたことを特徴とするコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態検知方法。
【請求項5】
前記歪測定器が検出した変形量を、制御部に検知、評価させる工程をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載のコネクタハウジングへの電線端子の挿入状態検知方法。
【請求項6】
水平部と垂直部を有する側面視L字状である渡り部材の水平部に載置されたコネクタセット治具に、コネクタハウジングを保持させる工程と、
前記コネクタハウジングに設けられた端子挿入孔に、電線に取り付けられた端子を挿入する工程と、
前記挿入の方向とは反対方向に前記電線を引っ張って、前記渡り部材の垂直部を変形させる工程と、
前記変形を、前記渡り部材の垂直部表面に、前記コネクタセット治具に対向して設けられた歪測定器により検出させる工程と、
前記コネクタセット治具から、前記端子が挿入されたコネクタハウジングを取り出す工程とを備えたことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項7】
前記変形を前記歪測定器により検出する工程の後に、前記歪測定器が検出した変形量を、制御部に検知、評価させる工程をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載のワイヤーハーネスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−238582(P2009−238582A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83173(P2008−83173)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】