説明

コネクタ及びこのコネクタの組み立て方法

【課題】組み立ての容易性とコストダウンを目的としたコネクタ及びこのコネクタの組み立て方法を提供すること。
【解決手段】一端部に形成した接続片と、他端部に形成した接触片の相互の間に、一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を介在して連結されているコネクタが用いられる。このコネクタをプリント基板に組み立てるには、コネクタにおけるコンタクトの接続片をプリント基板に接続する第1の工程と、第1の工程により接続したコネクタに本体側ハウジングを嵌合する第2の工程と、第2の工程で嵌合した本体側ハウジングを、前記コンタクトと接続片を連結している一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を変形して位置決めする第3の工程と、第3の工程で位置決めした本体側ハウジングをプリント基板に固着する工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用電話機、携帯用音楽再生機、デジタルカメラなどの電子機器において、組み立ての容易性とコストダウンを目的としたコネクタ及びこのコネクタの組み立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、この種の電子機器のバッテリには、コネクタを介在して電力が供給される。このコネクタは,複数個の電極を有し、電子機器本体側のそれぞれに対応する複数個のコンタクトを持っている。
このようなバッテリ用コネクタの複数個のコンタクトは、予め1個のハウジングに組み立てられて1個のコネクタとして構成されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
前記特許文献1及び特許文献2に示されたコネクタ12を図5及び図6に基づき説明する。
これらの6において、コネクタ12は、複数個の、具体的には3個のコンタクト13がその保持部20を、コネクタ用ハウジング23のそれぞれのコンタクト保持溝19に圧入して組み立てられている。これらのコンタクト13の接続部22は、プリント基板10のそれぞれのプリント配線部14に半田15で固着される。このコネクタ12が固着されたら、プリント基板10の上に本体側ハウジング11を固着する。すると、コンタクト13の接触部18が本体側ハウジング11のバッテリ収納部17に向けて突出しているので、このバッテリ収納部17にバッテリ16を収納すると、バッテリ16の電極が各コンタクト13の接触部18に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−129374号公報
【特許文献2】特開2008−218035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に示されたコネクタ12では、複数個のコンタクト13がコネクタ専用のハウジング23を構成するモールドに一体に組み込まれている。そのため、このコネクタ専用のハウジング23に取り付けられた位置決め突片21をプリント基板10の位置決め孔に挿入すると、全てのコンタクト13が比較的正確にプリント配線部14の位置に取り付けできる。
しかし、コンタクト13をコネクタ専用のハウジング23に組み込んであるので、コネクタ専用のハウジング23を構成するモールドが必須であり、このコネクタ専用のハウジング23を製造するための時間とコストがかかるばかりか、コネクタ専用のハウジング23にコンタクト13を組み立てる工程と、各コンタクト13の接続部22を、半田15を用いてプリント配線部14に手作業で半田付けする工程が必要になり、コストダウンに限界があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、組み立ての容易性とコストダウンを目的としたコネクタ及びこのコネクタの組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコネクタは、コンタクトの一端部にプリント基板に接続する接続片を有し、前記コンタクトの他端部に電子機器に接触する接触片を有するコネクタにおいて、前記コンタクトと接続片は、相互の間に一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を介在して連結されている。しかし、コネクタ専用のハウジングを有しないことを特徴とする。
前記コンタクトの後部垂直面に、外側を切り溝とし、内側を空隙とした細幅で長円形のずれ吸収用屈曲片を形成する。
また、前記コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して接続片を形成し、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して自立片を形成し、これらの接続片と自立片で自立可能とする。
【0008】
本発明によるコネクタの組み立て方法は、
コネクタにおけるコンタクトの一端部に形成した接続片をプリント基板に接続する第1の工程と、
第1の工程により接続したコネクタに本体側ハウジングを嵌合する第2の工程と、
第2の工程で嵌合した本体側ハウジングを、前記コンタクトと接続片を連結している一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を変形して位置決めする第3の工程と、
第3の工程で位置決めした本体側ハウジングをプリント基板に固着する工程と
からなることを特徴とする。
【0009】
第1の工程において、コンタクトと一体の吸着平面部を吸着してプリント基板の所定位置に移動し、コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して形成した接続片と、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して形成した自立片とをもってコネクタを自立させて接続片をプリント基板に接続するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、コンタクトの一端部にプリント基板に接続する接続片を有し、前記コンタクトの他端部に電子機器に接触する接触片を有するコネクタにおいて、
前記コンタクトと接続片は、相互の間に一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を介在して連結されているので、接続片を予めプリント基板に接続した後でもコネクタのコンタクト側を位置調整して正しい位置に取り付けできる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、コンタクトの後部垂直面に、外側を切り溝とし、内側を空隙とした細幅で長円形のずれ吸収用屈曲片を形成したので、打ち抜きや曲げ加工などの簡単なプレス加工で製造できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して接続片を形成し、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して自立片を形成し、これらの接続片と自立片で自立可能としたので、プレス基板などへの組み立て接続が容易になる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、
コネクタにおけるコンタクトの一端部に形成した接続片をプリント基板に接続する第1の工程と、
第1の工程により接続したコネクタに本体側ハウジングを嵌合する第2の工程と、
第2の工程で嵌合した本体側ハウジングを、前記コンタクトと接続片を連結している一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を変形して位置決めする第3の工程と、
第3の工程で位置決めした本体側ハウジングをプリント基板に固着する工程と
からなるので、コネクタ専用のハウジングを組み立てる工程がなくなり、自動組み立て機による組み立て工程が簡単に、かつ、正確にでき、コストダウンを図ることができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、第1の工程において、コンタクトと一体の吸着平面部を吸着してプリント基板の所定位置に移動し、コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して形成した接続片と、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して形成した自立片とをもってコネクタを自立させて接続片をプリント基板に接続するようにしたので、コネクタの組み立てが正確で確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるコネクタ24の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタ24と嵌合する本体側ハウジング25の底面からみた斜視図である。
【図3】図2における本体側ハウジング25の底面からみた拡大斜視図である。
【図4】本発明によるコネクタ24に本体側ハウジング25を嵌合した断面図である。
【図5】従来のコネクタ12の断面図である。
【図6】従来のコネクタ及びこのコネクタの組み立て方法の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、コンタクトの一端部にプリント基板に接続する接続片を有し、前記コンタクトの他端部に電子機器に接触する接触片を有するコネクタにおいて、
前記コンタクトと接続片は、相互の間に一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を介在して連結されている。
このコネクタは、コンタクトの後部垂直面に、外側を切り溝とし、内側を空隙とした細幅で長円形のずれ吸収用屈曲片を形成する。また、コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して接続片を形成し、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して自立片を形成し、これらの接続片と自立片で自立可能とする。
【0017】
本発明によるコネクタを用いてプリント基板に接続するには、
コネクタにおけるコンタクトの一端部に形成した接続片をプリント基板に接続する第1の工程と、
第1の工程により接続したコネクタに本体側ハウジングを嵌合する第2の工程と、
第2の工程で嵌合した本体側ハウジングを、前記コンタクトと接続片を連結している一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を変形して位置決めする第3の工程と、
第3の工程で位置決めした本体側ハウジングをプリント基板に固着する工程と
からなる。
【0018】
第1の工程において、コンタクトと一体の吸着平面部を吸着してプリント基板の所定位置に移動し、コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して形成した接続片と、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して形成した自立片とをもってコネクタを自立させて接続片をプリント基板に接続する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例1を図1ないし図4に基づき説明する。
図1は、本発明によるコネクタ24の斜視図であり、このコネクタ24のコンタクト26は、略垂直な後面からなる後部垂直面26aと、この後部垂直面26aの上端から略水平に前方へ伸びた吸着平面部27と、この吸着平面部27の前端部から下向きにU字形に伸びた湾曲弾性片28と、この湾曲弾性片28から前方へ横向きU字形に伸びた接触片29と、前記後部垂直面26aの下端から水平に後方に伸びた接続片30と、前記後部垂直面26aの下端から前方に略水平に伸びた左右の自立片31と、前記後部垂直面26aの両側部から前方へ伸びた左右の保持片32とからなる。
本発明によるコネクタ24は、専用のハウジングはなく、後述する本体側ハウジング25を共用している。
【0020】
前記コンタクト26の後部垂直面26aには、下向きのU字形に打ち抜かれたずれ吸収用屈曲片33が形成されている。このずれ吸収用屈曲片33は、外周がU字形の切り溝34に切り欠かれ、また、中央部が長円形に切り欠かれた細幅をなし、一端部が後部垂直面26aの下端部に連続し、他端部が前記接続片30に連続し、長円形のずれ吸収用として機能する。
前記接続片30は、中央に切り欠き部36を形成してコ字形とすることにより、プリント配線部14に半田15で固着するときにリフロー時の回転を防止している。
前記左右の自立片31は、コネクタ24をプリント基板10に自動半田付けする際に自立するように接続片30と同一平面に形成される。また、この自立片31は、後部垂直面26aの下端部で連続する部分に、位置ずれ調整時の接続片30の逃げのため逃げ隙間37を形成している。
前記吸着平面部27は、自動半田付けの際に、空気の吸引で吸着して所定の位置に移動させるために可能な限り平坦で広い面積となるように構成されている。
【0021】
図2は、前記コネクタ24をプリント基板10に半田付けした後に、上から嵌合して位置調整をしてプリント基板10に取り付けねじ47などで固定するための本体側ハウジング25であり、前記コネクタ24のハウジングと共用している。
この本体側ハウジング25は、例えば予めプリント基板10に半田付けされた3個の前記コネクタ24を並べて嵌合するように、側壁部40と後壁部41に囲まれ、底部と前部が開口した3個のコンタクト収容凹部39が形成され、これらコンタクト収容凹部39の側壁部40と後壁部41の連結部分にL字形の圧入溝部44が形成されている。
【0022】
これらコンタクト収容凹部39と圧入溝部44の開口端部には、図3の拡大図に示すように、コネクタ24に嵌合するときに少しの位置ずれがあってもスムーズに誘導するようにテーパー部48が形成されている。また、この圧入溝部44は、挿入側溝幅を広くしてコネクタ24が挿入し易くし、内部で狭くして挿入後に確実に固定する。
前記コンタクト収容凹部39の両端部には、プリント基板10に固着するためのねじ孔43の空いた固定部42が一体に形成されている。前記後壁部41の底部には、固定部42の底部との間に前記接続片30が伸びる接続片逃げ切り欠き45が形成され、また、前記側壁部40の底部には、固定部42の底部との間に前記逃げ隙間37が収まる程度の自立片逃げ切り欠き46が形成されている。
【0023】
以上のように構成されたコネクタ24と本体側ハウジング25をプリント基板10に組み立てる工程を説明する。
第1工程:コネクタ24は、予めプレス打ち抜き、折り曲げ加工などにより、図1に示すような形状に形成する。
第2工程:自動組み立て機によりコネクタ24の吸着平面部27部分を空気の吸引により吸着してプリント基板10の接続位置にセットする。このとき、コネクタ24は、後方に折れ曲がった接続片30がプリント配線部14の所定位置に載せられ、かつ、この接続片30と前方に折れ曲がった2個の自立片31が同一面に形成されているので、取り付け状態でプリント基板10の上に確実に起立する。
【0024】
第3工程:複数個のコネクタ24がプリント基板10の所定の位置にセットされた状態で接続片30部分を半田15でプリント配線部14に固着する。
第4工程:複数個のコネクタ24の上から本体側ハウジング25を嵌合する。この本体側ハウジング25を嵌合するとき、コンタクト収容凹部39と圧入溝部44の開口端部にテーパー部48が形成されているので、保持片32は圧入溝部44に、吸着平面部27と湾曲弾性片28部分は、コンタクト収容凹部39にスムーズに誘導される。複数個のコネクタ24の上から本体側ハウジング25を嵌合すると、接続片30は、接続片逃げ切り欠き45の下から外部に突出する。また、自立片逃げ切り欠き46の下に自立片31が位置する。
【0025】
第5工程:本体側ハウジング25は、ねじ孔43に取り付けねじ47を挿入してプリント基板10の所定位置に固着される。このとき、複数個のコネクタ24の予め固着された接続片30のプリント基板10への取り付け時に位置ずれを生じていたものとすると、本体側ハウジング25をそのまま固着したのでは、接触片29に位置ずれが生じ、バッテリ16の電極38に接触しないおそれがある。
そこで、本体側ハウジング25は、プリント基板10に取り付ける際に、複数個のコネクタ24を嵌合したまま捩じり、前後移動、左右移動などの位置調整をする。複数個のコネクタ24の接続片30がプリント基板10に固定的に取り付けられていても、ずれ吸収用屈曲片33が細幅の長円形をなしているので、捩じり、前後移動、左右移動、場合によっては、上下方向にも変形してコネクタ24の接続片30を除くコンタクト分が本体側ハウジング25の取り付け位置に追随して移動する。このコネクタ24のコンタクト26の下端部の逃げ隙間37は、コンタクト分の移動により、接続片30とコンタクト26の下端部とが接触するのを防止して調整幅を大きくしている。
このようにして接触片29に位置ずれのないように位置調整された本体側ハウジング25は、プリント基板10に固定的に取り付けられる。
【0026】
前記実施例では、バッテリ用のコネクタとしたが、これに限られるものではなく、コネクタをプリント基板10に直接接続して電子機器に接続するものに利用できる。
【符号の説明】
【0027】
10…プリント基板、11…本体側ハウジング、12…コネクタ、13…コンタクト、14…プリント配線部、15…半田、16…バッテリ、17…バッテリ収納部、18…接触部、19…コンタクト保持溝、20…保持部、21…位置決め突片、22…接続部、23…コネクタ用ハウジング、24…コネクタ、25…本体側ハウジング、26…コンタクト、26a…後部垂直面、27…吸着平面部、28…湾曲弾性片、29…接触片、30…接続片、31…自立片、32…保持片、33…ずれ吸収用屈曲片、34…切り溝、35…空隙、36…切り欠き部、37…逃げ隙間、38…電極、39…コンタクト収容凹部、40…側壁部、41…後壁部、42…固定部、43…ねじ孔、44…圧入溝部、45…接続片逃げ切り欠き、46…自立片逃げ切り欠き、47…取り付けねじ、48…テーパー部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトの一端部にプリント基板に接続する接続片を有し、前記コンタクトの他端部に電子機器に接触する接触片を有するコネクタにおいて、
前記コンタクトと接続片は、相互の間に一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を介在して連結されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
コンタクトの後部垂直面に、外側を切り溝とし、内側を空隙とした細幅で長円形のずれ吸収用屈曲片を形成したことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して接続片を形成し、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して自立片を形成し、これらの接続片と自立片で自立可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
コネクタにおけるコンタクトの一端部に形成した接続片をプリント基板に接続する第1の工程と、
第1の工程により接続したコネクタに本体側ハウジングを嵌合する第2の工程と、
第2の工程で嵌合した本体側ハウジングを、前記コンタクトと接続片を連結している一体に形成した細幅のずれ吸収用屈曲片を変形して位置決めする第3の工程と、
第3の工程で位置決めした本体側ハウジングをプリント基板に固着する工程と
からなることを特徴とするコネクタの組み立て方法。
【請求項5】
第1の工程において、コンタクトと一体の吸着平面部を吸着してプリント基板の所定位置に移動し、コンタクトの後部垂直面の下端部の後方に直角に折曲して形成した接続片と、コンタクトの後部垂直面の下端部の前方に直角に折曲して形成した自立片とをもってコネクタを自立させて接続片をプリント基板に接続するようにしたことを特徴とする請求項4記載のコネクタの組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25975(P2013−25975A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158676(P2011−158676)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】