説明

コネクタ装置、挿抜治具および電子装置

【課題】コネクタ接続する基板において、コネクタの挿抜角度を規定角度以内に制限させることにある。
【解決手段】第1のコネクタ(4)を備えた第1の基板(6)と、前記第1の基板に並行して配置され、前記第1のコネクタに接続する第2のコネクタ(8)を備えた第2の基板(10)と、挿抜治具(12)とを備える。挿抜治具は、前記第2の基板の設置位置に応じて立設され、着脱される前記第2の基板の一部に接触して前記第2のコネクタが前記第1のコネクタに対して規定角度を超えて嵌合されるのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板同士を接続するコネクタが規定角度を超えて挿抜されるのを規制する挿抜治具を備えたコネクタ装置や電子機器の挿抜構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、たとえば装置全体の小型化や多機能化を図るために、小型化された複数枚の基板が設置され、これらの基板同士を多ピンのコネクタ構造によって電気的に接続されるものが知られている。このような基板同士の接続には、たとえばコネクタが形成されたケーブルが用いられるほか、各基板に設置されたコネクタ同士を直接接続することが知られている。
【0003】
コネクタによる接続構造では、コネクタを構成するピンの損傷を防止するために、基板の設置操作や抜取り操作において、コネクタ間に一定以上の角度が生じないようにすることが知られている。
【0004】
このような基板のコネクタ接続構造に関し、一方の基板のコネクタが支持枠と押圧板で挟持して支持され、接続先の基板のコネクタの周囲に対し、支持枠に設置された六角ボルトによって固定されるものが知られている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−179853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板に構成されたコネクタ同士を嵌合させて接続するコネクタ構造では、ケーブルを利用した場合と異なり、基盤同士の角度がコネクタ同士の接続角度となる。そのため、このようなコネクタ構造では、たとえば電子装置の組立てや解体時に基板同士を大きく傾けた場合、コネクタ同士の接続角度も大きくなり、嵌合するコネクタに直接影響を及ぼす。
【0007】
図28および図29に示すコネクタ装置200には、多ピンで構成されたコネクタ202、204同士が嵌合状態となった基板206、208が示されている。このコネクタ装置200には、たとえば図28に示すコネクタの短手方向で挿抜する場合と、図29に示すコネクタの長手方向で挿抜する場合とで、それぞれコジリ角α、コジリ角βが設定されている。このコジリ角αおよびコジリ角βは、コネクタ202、204の接続制限角度として設定されており、この角度以上でコネクタ202、204同士が挿入または抜き取られると、内部に配置されたピンに折損が生じ、電気的な接続が行えなくなるおそれがある。コネクタ202、204のコジリ角αは、たとえば2〔°〕以下に設定され、コジリ角βは、たとえば7〔°〕以下に設定されている。
【0008】
電子装置の組立てや解体作業では、たとえば基板同士のコネクタ接続が作業者の手で行われる場合がある。このような作業では、コネクタの嵌合状態を目視により確認するために、作業者によりコネクタから離れた位置で基板が把持されて挿抜操作が行われるおそれがある。特に、コネクタ同士を直接嵌合させる基板では、たとえば嵌合状態の確認を容易化するためにコネクタが基板の淵縁側に形成されたものがある。そのため、コネクタから離れた位置を把持して挿抜作業が行われると、コネクタ間の角度は、容易にコジリ角を越えた状態となるという課題がある。
【0009】
さらに、多数のピンで構成されるコネクタは、嵌合力が強いために抜去作業には相当の力を要する。作業者が抜去時に力を加えすぎると、コネクタが外れたときにプリント基板に対しても過大な力が加えられ、プリント基板自体を損傷させるおそれもある。したがって、コネクタ接続の作業には、熟練した技術が必要であるという課題がある。
【0010】
そこで、本開示のコネクタ装置、挿抜治具および電子装置の目的は、上記課題に鑑み、コネクタ接続する基板において、コネクタの挿抜角度を規定角度以内に制限させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示の構成は、第1のコネクタを備えた第1の基板と、前記第1の基板に並行して配置され、前記第1のコネクタに接続する第2のコネクタを備えた第2の基板と、挿抜治具とを備える。挿抜治具は、前記第2の基板の設置位置に応じて立設され、着脱される前記第2の基板の一部に接触して前記第2のコネクタが前記第1のコネクタに対して規定角度を超えて嵌合されるのを阻止する。
【発明の効果】
【0012】
本開示のコネクタ装置、挿抜治具または電子装置によれば、次のような効果が得られる。
【0013】
(1) 一部分が持ち上げられた基板に対して挿抜治具が接触することで、基板同士が規定角度を超えるのを阻止でき、嵌合している多ピンコネクタの損傷を防止できる。
【0014】
(2) また、規定角度を超えて配置される基板に対し、挿抜治具の突出部を接触させて基板同士のコネクタ接続を阻止することで規定角度を超えて挿抜を阻止でき、コネクタおよびこのコネクタを備えた基板の破損を防止できる。
【0015】
(3) 簡易な構造の挿抜治具により、挿抜されるコネクタを嵌合位置にガイドでき、かつ基板の接触角度が規定角度以内に規制され、挿抜作業の適正化および容易化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る挿抜治具を備えたコネクタ装置の構成例を示す図である。
【図2】挿抜治具の外観構成例を示す斜視図である。
【図3】挿抜治具の高さ設定例を示す図である。
【図4】挿抜治具の構成例を示す図である。
【図5】コネクタの構成および嵌合状態の一例を示す図である。
【図6】基板の抜取りをコネクタの短手方向から示した図である。
【図7】基板の抜取りをコネクタの短手方向から示した図である。
【図8】基板の設置手順をコネクタの短手方向から示した図である。
【図9】基板の設置手順をコネクタの短手方向から示した図である。
【図10】規定角度以上で設置された基板と挿抜治具との状態例を示す図である。
【図11】規定角度以上で設置された基板と挿抜治具との状態例を示す図である。
【図12】コネクタ装置の構成例をコネクタの長手方向から示した図である。
【図13】基板の抜去状態例をコネクタの長手方向から示した図である。
【図14】基板の抜去状態例をコネクタの長手方向から示した図である。
【図15】基板の設置手順の一例を示す図である。
【図16】第2の実施の形態に係る電子装置の一例を示す分解図である。
【図17】電子装置に基板が設置された状態例を示す図である。
【図18】コネクタの短手方向に第2の基板を傾斜させた状態を示す図である。
【図19】コネクタの長手方向に第2の基板を傾斜させた状態を示す図である。
【図20】第3の実施の形態に係る電子装置の構成例を示す図である。
【図21】第4の実施の形態に係る電子装置の構成例を示す図である。
【図22】第5の実施の形態に係る挿抜治具の構成例を示す図である。
【図23】挿抜治具の他の構成例を示す図である。
【図24】挿抜治具の他の構成例を示す図である。
【図25】挿抜治具を備えたコネクタ装置の構成例を示す図である。
【図26】挿抜治具の他の構成例を示す図である。
【図27】挿抜治具の他の構成例を示す図である。
【図28】コネクタ装置の従来例を示す図である。
【図29】コネクタ装置の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
【0018】
図1は、第1の実施の形態に係るコネクタ装置の構成例を示している。図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本開示のコネクタ装置、挿抜治具および電子装置が限定されるものではない。
【0019】
図1に示すコネクタ装置2は、コネクタ接続によって機能部品同士が接続される装置であって、第1のコネクタ4が設置された第1の基板6と、第2のコネクタ8が設置された第2の基板10、および挿抜治具12を備えている。このコネクタ装置2は、たとえば複数枚のプリント基板が設置されたPC(Personal Computer)や通信機器、放送用機器などの電子機器の一例である。
【0020】
第1の基板6は、被挿抜部材であり、コネクタ接続される他の基板に対する制御機能や連動して機能する機能部品の一例である。この第1の基板6は、コネクタ装置2の筐体18などに固定され、たとえば淵縁側において上方に向けて第1のコネクタ4が設置されている。
【0021】
また、第1の基板6の上面側には、筐体18と第1の基板6とを固定するとともにコネクタ接続された第2の基板10の載置手段としてスペーサ14が設置されている。このスペーサ14は、第2の基板10の配置位置に応じて1または複数個設置されている。第2の基板10は、スペーサ14に載置されることで第1の基板6に対して一定の配置高さが保持されている。スペーサ14には、たとえば図示しない貫通孔が形成されており、第2の基板10を貫通した締結部品16が挿入されることで、第2の基板10を固定している。この締結部品16は、たとえば螺子部材やラッチ部材で形成されている。スペーサ14の貫通孔には、締結部品16に応じてたとえば螺子溝などが形成されている。
【0022】
第2の基板10は、第1の基板6に対する挿抜部材であり、コネクタ装置2の特定の機能が搭載された機能部品の一例である。この第2の基板10は、たとえば接続される第1の基板6に対して同等または小幅な大きさで形成され、淵縁部側の一部に第2のコネクタ8が設置されている。コネクタ接続された第2の基板10は、既述のスペーサ14に載置されることで、第1の基板6の上面側に、第1の基板6と並行に配置される。また、第1の基板6に対する第2の基板10の配置位置は、第1のコネクタ4の設置位置によって決定される。
【0023】
挿抜治具12は、第2の基板10の着脱を規制する手段の一例である。この挿抜治具12は、第2の基板10の設置位置に応じて立設され、着脱される第2の基板10の一部に接触する。挿抜治具12は、たとえば第2の基板10の配置位置の周辺部であって、第2のコネクタ8の設置位置に対して一定の距離だけ離間した位置に設置されている。この挿抜治具12の設置位置は、第2のコネクタ8を回転中心に第2の基板10が挿抜されるのを阻止するように設定される。より具体的には、挿抜治具12は、たとえば第2の基板10に対し、第2のコネクタ8が設置された位置から短手方向に対向した端部側に設置されている。
【0024】
挿抜治具12は、たとえば第1の基板6とコネクタ接続された第2の基板10の側面部に接触させ、または近接させて、コネクタ同士の接続位置に第2の基板10を配置するようにガイドしている。また、この挿抜治具12は、たとえば第1の基板6とスペーサ14との間に挟持されて固定される。
【0025】
なお、挿抜治具12は、第1の基板6に固定される場合に限られず、たとえばコネクタ装置2の筐体18に固定されてもよい。また、第1のコネクタ4または第2のコネクタ8は、第1の基板6または第2の基板10の淵縁側に形成される場合に限られない。これらのコネクタ4、8は、基板の中央側の一部に形成されてもよい。
【0026】
図2ないし図4は、挿抜治具12の外観構成例を示している。図2ないし図4に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0027】
図2に示す挿抜治具12は、たとえば挿抜部材である第2の基板10の側面側に近接して配置される胴体部20と、胴体部20の上部側に連設され、第2の基板10の一部を覆うように突出する突出部22とが形成されている。また、この挿抜治具12には、胴体部20の下部側に脚部30が形成されている。挿抜治具12は、たとえば金属材料が用いられており、胴体部20、突出部22および脚部30が一体に成形されている。
【0028】
胴体部20は、挿抜部材である第2の基板10を所定の配置位置に位置決めさせるガイド手段である。この胴体部20は、たとえば第1の基板6に対して配置される第2の基板10の側面部が当接されて、第2の基板10の移動を阻止する。
【0029】
突出部22は、第2の基板10が第1の基板6に対して規定のコジリ角を超えて着脱されるのを阻止する手段である。この突出部22は、たとえば胴体部20の上方側の一部が前方側に折り返され、逆「J」の字形に形成されている。この突出部22には、たとえば下方側に向けて形成された阻止底部24、前面に形成された阻止辺部26と、載置部28とが形成されている。
【0030】
阻止底部24は、たとえば図3に示すように挿抜治具12が配置された側の一部分のみが持上げられた第2の基板10の上面に接触させて、第2の基板10の取り外しを阻止する。この阻止底部24は、持ち上げられた第2の基板10と第1の基板6との間の角度αがたとえばコジリ角以内になる高さに形成されている。これにより挿抜治具12は、第2のコネクタ8が第1のコネクタ4に対して規定角度を超えて嵌合状態となるのを阻止することができる。
【0031】
阻止辺部26は、第1の基板6に対して規定のコジリ角を超えて傾斜された第2の基板10がコネクタ接続されるのを阻止する手段である。この阻止辺部26は、胴体部20よりも第1のコネクタ4側に向けて突出されている。そしてコジリ角を超えて傾斜した第2の基板10は、その側面の一部が阻止辺部26に接触する。これにより第2の基板10は、第1のコネクタ4と第2のコネクタ8とが嵌合するように設定された位置からずれて配置される。したがって、挿抜治具12は、第2のコネクタ8が第1のコネクタ4に対して嵌合させるのを阻止することができる。
【0032】
載置部28は、突出部22の天井側に形成され、一定の角度以上で傾斜して配置された第2の基板10の一部を載置させる手段である。阻止辺部26に接触するよりも大きく傾斜してコネクタ装置2に配置された第2の基板10は、たとえば傾斜した一端が載置部28に載置される。このとき、第1のコネクタ4と第2のコネクタ8は、嵌合不能な角度で接触している。そして、この挿抜治具12は、載置された第2の基板10の一端側が第1の基板6側に押し下げられるのを阻止する。これにより、大きく傾斜して配置された第2のコネクタ8は、第1のコネクタ4に対して嵌合するのを阻止される。
【0033】
脚部30は、たとえば胴体部20の下部側に一体に形成され、第1の基板6またはコネクタ装置2の筐体18に固定される。脚部30の下側の先端部分には、たとえば挿抜治具12の載置面に対して平行になるように形成された固定面32が形成されている。この固定面32には、たとえば貫通孔34が形成されている。
【0034】
図3または図4に示すコネクタ装置2では、挿抜治具12が第1の基板6の表面側に載置され、固定面32上にスペーサ14が配置されている。このとき、挿抜治具12は、たとえばスペーサ14に形成された図示しない固定軸が貫通孔34に貫通されている。スペーサ14の固定軸には、たとえば一部または全部に螺子などが形成されており、挿抜治具12および第1の基板6を介して筐体18に締結されている。
【0035】
脚部30は、たとえばコネクタ接続された第2の基板10の側面部に対して、胴体部20が接触可能な位置に配置されるように長さが設定されている。すなわち脚部30の長さは、たとえばスペーサ14および第1のコネクタ4と第2のコネクタ8とが嵌合したときの高さに応じて設定されている。
【0036】
図4に示す挿抜治具12の突出部22の突出量aは、第1のコネクタ4から挿抜治具12までの距離をLとし、コジリ角をαとすると、たとえば以下の式で算出される。
【0037】
a≧L×(1−cosα) ・・・(1)

この突出量aは、コジリ角αで持上げられた第2の基板10に対して、阻止底部24が確実に接触可能な位置になるように設定される。
【0038】
また配置された第2の基板10から突出部22までの高さbは、たとえば以下の式で算出される。
【0039】
b≦=L×sinα ・・・(2)

高さbは、たとえば第2のコネクタ8を中心に第2の基板10を取りはずし方向に回動させたときの円弧距離に近似される。したがって突出部22の阻止底部24は、第1のコネクタ4と第2のコネクタ8との間に規定したコジリ角αに基づいて高さが設定される。
【0040】
なお、図3および図4に示す挿抜治具12の各部の長さおよび高さなどの算出原理は、たとえば挿抜治具12が第2のコネクタ8を短手方向からみて平行に配置された場合に限られない。たとえば挿抜治具12が第2のコネクタ8の長手方向からみて平行に配置された場合も同様の算出原理を利用すればよい。
【0041】
また、挿抜治具12の突出部22の高さの算出について、図3および図4では、第2のコネクタ8の短手方向に対するコジリ角αを利用して算出したが、たとえば長手方向に対して設定されるコジリ角βを利用して算出してもよい。この場合、挿抜治具12の寸法設定の算出には、たとえばコネクタの長手方向または短手方向に設定されたコジリ角αまたはコジリ角βについて、小さい値が設定された方向の角度を利用すればよい。
【0042】
図5は、コネクタの構成例を示している。
【0043】
図5に示す第1のコネクタ4および第2のコネクタ8には、たとえばBGA(Ball Grid Array)技術により、内部に多数のピンが整列して設置されている。これらのコネクタ4、8の内部には、たとえばピン同士を固定し、所定の間隔で配列させるピンガイド40、44が多数配置されている。ピンガイド40、44は、たとえば樹脂材料などで形成され、ピンと導通しない構造となっている。各コネクタ4、8には、周囲に樹脂製のケース部42、46が備えられている。
【0044】
第1のコネクタ4のケース部42には、たとえば短手側の一辺または両辺に第2のコネクタ8のケース部46の一部が挿入される係止凹部48が形成されている。また、第2のコネクタ8のケース部46には、短手側の一辺または両辺に、ケース部42の係止凹部48内に挿入させる係止凸部50が形成されている。そして、この係止凸部50と係止凹部48は、コネクタ4、8同士が所定の角度以上に傾斜された場合、たとえばケース部42、46同士が接触することで係止できない構造となっている。この所定の角度は、既述のコジリ角よりも大きく、たとえばケース部42、46の内部のピン同士が接触できない状態に傾斜した角度である。
【0045】
なお、係止凹部48および係止凸部50は、図5に示す構成に限られない。たとえば第1のコネクタ4側に係止凸部が形成され、第2のコネクタに係止凹部が形成されてもよい。
【0046】
図6は、コネクタ装置2から基板が抜き取られる状態例を示している。このコネクタ装置2の挿抜治具12は、第1のコネクタ4の長手方向に対して平行に設置されている。
【0047】
図6に示すコネクタ装置2は、たとえば第2の基板10の淵縁部に第2のコネクタ8が設置されている。挿抜治具12は、たとえば第2の基板10に対し、第2のコネクタ8が設置された端部に対して他端側に近接し、または接触して立設されている。
【0048】
<コネクタの短手方向に対する抜去状態>
【0049】
図6に示すコネクタ装置2では、たとえば第2のコネクタ8の周辺部分、または第2のコネクタ8に近接した基板部分が把持され、X1方向に向けて持ち上げられることで抜去作業が行われている。第2の基板10は、たとえば挿抜治具12の胴体部20または第2の基板10が載置された挿抜治具12周辺のスペーサ14が回転軸となり、コネクタ8側が持ち上げられる。このとき第2のコネクタ8には、第2の基板10の近接位置からX1方向に向けて力が加えられ、第1のコネクタ4との嵌合が解除される。
【0050】
この第1のコネクタ4および第2のコネクタ8は、たとえば第2のコネクタ8の周辺部において抜去方向への力が加えられた場合、持上げられる第2の基板10が規定されたコジリ角を超える前に嵌合状態が解除される。そして、第2のコネクタ8の周辺部が持ち上げられたことにより、コネクタ4、8同士の接触が解除されるので、ピンの折損が回避される。たとえば第1のコネクタ4に形成された係止凹部48および第2のコネクタ8に形成された係止凸部50は、規定のコジリ角に応じて挿入される長さが設定されている。
【0051】
また、抜去作業において、第2の基板10は、第2のコネクタ8が設置された端部に対して他端側に立設された挿抜治具12に側面部が当接される。これにより、第2の基板10は、X1方向に加えられた力によって、たとえば水平方向に移動するのを阻止され、所定の配置位置に保持される。
【0052】
これにより、第1のコネクタ4および第2のコネクタ8には、たとえばコネクタ接続が解除される前に水平方向に対して無理な力がかかるのを阻止し、またはコジリ角を超える前に接続が解除されるので、コネクタや基板への損傷を防止できる。
【0053】
図7は、第2の基板10において、第2のコネクタ8の対向側が持ち上げられた状態例を示している。
【0054】
図7に示すコネクタ装置2では、第2のコネクタ8から離間した、たとえば第2のコネクタ8に対向する位置で第2の基板10が把持され、X2方向に向けて持ち上げられている。第2の基板10は、たとえば第1のコネクタ4を軸として回動方向に力を受けている。このとき第2のコネクタ8は、たとえば嵌合している第1のコネクタ4に対して所謂、梃子の作用点となっている。これにより、第2のコネクタ8は、第2の基板10に加えられたX2方向の力により第1のコネクタ4に対して一部側が持ち上げられ、他部側が第1のコネクタ4側に押し付けられている。
【0055】
このコネクタ装置2では、第2のコネクタ8から離間した位置で第2の基板10の平面部の一部に挿抜治具12を接触させ、第2の基板10が規定角度以上に持上げられるのを阻止している。挿抜治具12の突出部22(図4)は、既述のように、一部が持ち上げられた第2の基板10の傾斜角度が規定されたコジリ角α以内で接触する高さに設定されている。これにより第1のコネクタ4および第2のコネクタ8は、第2の基板10が傾斜して持上げられた場合でも内蔵されたピンが折損されるのを回避できる。
【0056】
持上げられた第2の基板10が挿抜治具12に接触したとき、第2のコネクタ8は、第1のコネクタ4との嵌合状態を解除させない構成である。これにより、第2の基板10の抜去には、必ず基板のコネクタ側を持上げさせることになり、第2のコネクタ8が第1のコネクタ4に対して傾斜状態となるのを防止している。
【0057】
<コネクタの短手方向に対する挿入状態>
【0058】
図8および図9は、基板の設置手順の一例を示している。
【0059】
図8に示すコネクタ装置2では、第1の基板6に対して配置された第2の基板10について、たとえば第2のコネクタ8が設置された端部に対して他端側が、第2のコネクタ8側と略平行または低く傾斜させて配置作業が行われている。
【0060】
この設置処理では、たとえば第2の基板10のコネクタ8から離間した端部側を挿抜治具12の胴体部20に当接するように、突出部22の下側に挿通させる。この設置操作により第2のコネクタ8は、たとえば第1のコネクタ4側に向けてX3方向に移動する。挿抜治具12は、既述のように第2の基板10がコネクタ接続されたときに配置される位置に応じて立設されている。そのため、挿抜治具12に第2の基板10が当接されたとき第2のコネクタ8は、たとえば第1のコネクタ4の直上付近に配置される。
【0061】
次に、図9に示すように、挿抜治具12に当接させた第2の基板10の一端側は、第1の基板6側に向けて下ろされ、スペーサ14に載置される。また、第2の基板10のコネクタ8側は、さらにX4方向に向けて押し下げられる。これにより第2のコネクタ8は、第1のコネクタ4に嵌合され、第2の基板10の設置処理が完了する。
【0062】
この設置処理において、第2の基板10のコネクタ8がX4方向に押し下げられたことにより、たとえばスペーサ14に載置された他端が持ち上がった場合、挿抜治具12は、たとえば図7に示すように、持ち上がった第2の基板10の他端側に接触する。これにより、挿抜治具12は、たとえば第2のコネクタ8側の端部に対して大きな力が加えられることにより、他端側が跳ね上げられた場合でも、第2の基板10がコジリ角以上に傾斜するのを阻止する。
【0063】
図10は、規定角度以上で傾斜した基板が設置された状態例を示している。
【0064】
図10に示す基板10は、たとえばコネクタ8が設置された端部に対して他端側がコネクタ8よりも持上げられた状態でコネクタ装置2に配置されている。そして、基板10は、コネクタ8との対向側の端部を挿抜治具12の突出部22の下側に挿通させずにコネクタ8をコネクタ4側に配置させている。
【0065】
第1の基板6と第2の基板10との間の傾斜角度α2は、規定のコジリ角αを超えた角度であって、たとえば過大に押圧することによって第1のコネクタ4と第2のコネクタ8とのピンが接触され得る範囲の角度である。このとき、コネクタ4、8では、たとえば係止凹部48と係止凸部50とが係止状態となるが、内部のピンやピンガイド40、44に対して過大な曲げ応力が掛かり、折損する状態となっている。
【0066】
そこで、図10に示すコネクタ装置2では、角度α2の範囲に傾斜した基板10の端部に対して、挿抜治具12の阻止辺部26を接触させている。この阻止辺部26の長さcは、角度α2の範囲にある基板10が接触可能な長さに設定されている。
【0067】
このコネクタ装置2では、ピン同士が接触して折損するおそれがある角度α2に傾斜した第2の基板10に対して、第2のコネクタ8と第1のコネクタ4とが嵌合できない位置に配置させている。即ち、挿抜治具12の阻止辺部26に接触した基板10は、突出部22の突出量aの分だけ配置位置がずれることになる。そのため基板10は、コネクタ8の挿抜中心O2がコネクタ4の挿抜中心O1に対してたとえば突出量a分だけずれて配置される。これにより挿抜治具12は、角度α2で傾斜した基板10のコネクタ8がコネクタ4に対して無理に嵌合されるのを阻止している。
【0068】
図11は、規定角度以上で傾斜した基板が設置された状態例を示している。
【0069】
図11に示す基板10は、たとえばコネクタ8が設置された端部に対して他端側が、傾斜角度α3でコネクタ8側の端部よりも持ち上げられた状態でコネクタ装置2に配置されている。この傾斜角度α3は、既述の傾斜角度α2よりも大きな値であって、たとえばコネクタ4、8の係止凸部50が係止凹部48に挿入できない角度が設定されている。この傾斜角度α3で接近させたコネクタ4、8では、たとえばケース部42、46の一部が接触してピン同士が接触しない状態となる。
【0070】
このコネクタ装置2では、角度α3に傾斜させた基板10を、挿抜治具12の載置部28に載置させる。そして挿抜治具12は、過大に傾斜して配置された第2の基板10の一端側が第1の基板6側に向けて押し下げられるのを阻止している。このとき、第2のコネクタ8側の端部は、第1の基板4側に押し下げられ、第2のコネクタ8は第1のコネクタ4の一部に接触している。これにより、コネクタ装置2では、たとえば挿抜治具12により第2の基板10の押し下げが阻止されるので、接触したコネクタ4、8を回動軸O3として、ピン同士が回動方向に強引に押込まれるのを防止することができる。
【0071】
次に、図12は、コネクタ装置を図1のA矢視方向から視た、コネクタの長手方向側を示している。図12に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0072】
図12に示すコネクタ装置2では、第2の基板10において、たとえば長手方向から示す第2のコネクタ8が設置された端部に対して他端側から第2のコネクタ8側に向けて挿抜治具12が設置されている。この挿抜治具12は、たとえばコネクタ4、8の長手方向へのコジリ角を超えて第2の基板8が挿抜されるのを規制する手段である。
【0073】
<コネクタの長手方向に対する抜去状態>
【0074】
図13および図14は、基板の抜去状態を示している。
【0075】
挿抜治具12の突出部22は、たとえば長手方向に一定の長さEで形成されている。このコネクタ装置2の長手方向におけるコネクタのコジリ角の規制では、突出部22の長さEを利用している。
【0076】
図13に示す基板10は、たとえばコネクタ8の長手方向に対向する端部側が把持され、上方のX5−1方向に持上げられている。このとき、基板10は、コネクタ4、8またはコネクタ4、8に近接したスペーサ14の載置面を中心にして回動方向に力が加えられる。そして、コネクタ8は、基板10の傾斜に応じて一部がコネクタ4との嵌合が解除された状態となり、他の部分が接続状態を維持している。長手方向に傾斜したコネクタ8の傾斜高さは、回動軸に近い部分と遠い部分とで大きく異なる。
【0077】
一端側が持上げられた基板10は、たとえば基板10の一部P1において挿抜治具12の突出部22に接触して、X5−1方向への移動が阻止される。このとき突出部22の設置高さは、たとえばスペーサ14に載置された状態の基板10と、持上げられた基板10との角度が規定のコジリ角以内になる高さに設定されている。
【0078】
また、図14に示す基板10は、たとえばコネクタ8の近接側が把持され、上方のX5−2方向に持上げられている。このとき、基板10は、コネクタ8の長手方向に対向する端部側に設置されたスペーサ14の載置面を中心に回動方向に力が加えられる。
【0079】
このとき基板10は、その一部分P2において挿抜治具12の突出部22に接触して、X5−2方向への移動が阻止される。
【0080】
この挿抜治具12の突出部22は、コネクタ8の長手方向に平行して所定の長さEで形成されている。このコネクタ装置2では、挿抜治具12に設定された長さEを利用して、コネクタ4、8の長手方向に規定されたコジリ角の規制を行っている。
【0081】
図13および図14に示すように、突出部22は、左右の両端部分で基板10と接触している。そして、挿抜治具12の左右端部に対して傾斜した基板10が接触する位置P1、P2は、突出部22の長さEにより決まる。
【0082】
基板10の傾斜角度は、突出部22との接触位置により変化する。たとえば適正に突出部22の左右両端の位置が設定されていない場合、一端側が持上げられた基板10は、突出部22の左右いずれかの端部に接触するが、そのときの傾斜角度はコジリ角よりも大きくなる場合がある。そこで、突出部22の左右両端部の位置は、基板10の傾斜角度が、たとえば回動中心となったコネクタ4、8またはスペーサ14などに対して、規定のコジリ角以内になるように設定する。そして、突出部22の長さEは、この左右両端の基板10との接触位置P1、P2により設定される。
【0083】
これにより、挿抜治具12は、基板10がコネクタ8の長手方向に対して傾斜した場合に、長手方向について規定されたコジリ角を超えるのを規制することができる。
【0084】
<コネクタの長手方向に対する挿入状態>
【0085】
図15は、基板の設置手順の一例を示している。
【0086】
図15に示すコネクタ装置2では、たとえば基板10が挿抜治具12の突出部22の下方側に挿通させるように配置される。このとき、基板10の側面の一部を挿抜治具12の胴体部20に当接させる。また、基板10の上面側は、たとえば突出部22の阻止底部24に接触させてもよい。これによりコネクタ8は、コネクタ4に対して長手方向に対して平行に配置される。
【0087】
そして、この基板10は、基板6に対してX6方向に押し下げられる。このとき、たとえば基板10の左右の一端側のみが押し下げられた場合、挿抜治具12の阻止底部24に基板6の一部が接触していることから、基板10は、図13または図14に示す状態となる。したがって、コネクタ装置2では、基板10が挿抜治具12に接触することで、コネクタ4とコネクタ8とがコジリ角以内で嵌合される。
【0088】
挿抜治具12の突出部22は、コネクタ8をコネクタ4に対してコジリ角を超えて傾斜するのを阻止するように設定されている。したがって突出部22の下方に挿通された基板10が傾斜して基板6側に押し下げられた場合でも、コネクタ4、8がコジリ角以上に傾斜するのを防止できる。さらに、この挿抜治具12は、規定のコジリ角を超えて傾斜した基板10が突出部22の下方に挿通できない構造とすることで、コネクタ4、8がコジリ角を超えて接触するのを阻止することができる。
【0089】
斯かる構成によれば、一部分が傾斜した基板に対して挿抜治具が接触することで、基板同士が規定角度以上になるのを阻止でき、嵌合している多ピンコネクタの損傷を防止することができる。また、規定角度以上で配置される基板に対し、挿抜治具の突出部を接触させて基板同士のコネクタ接続を阻止することで、規定角度を超えて挿抜されるのを阻止でき、コネクタおよびこれらのコネクタを備えた基板の破損を防止できる。さらに、簡易な挿抜治具の構成により、配置される基板がコネクタ同士の嵌合位置にガイドされ、かつ基板の角度が規定角度以内に規制され、挿抜作業の適正化および容易化が図れる。
【0090】
〔第2の実施の形態〕
【0091】
図16および図17は、第2の実施の形態に係る電子装置の構成例を示している。図16に示す構成は一例であり、斯かる構成に本開示の構成が限定されるものではない。図16および図17において図1と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
図16に示す電子装置60は、複数の基板6、10同士がコネクタ4、8によって電気的に接続されたコネクタ装置2が形成される。この電子装置60には、コネクタ4が設置された基板6、コネクタ8が設置された基板10が備えられ、かつ基板8の着脱のガイド手段として挿抜治具12が設置されている。この基板6は、たとえば電子装置60の筐体62に固定されている。
【0093】
図17に示す基板10は、たとえば基板6の一部に対してコネクタ4、8を嵌合させて基板6の上面側を覆う位置に配置される。この基板6には、たとえば貫通孔70が複数箇所に形成され、その貫通孔70にスペーサ64が挿入される。コネクタ接続された基板10は、スペーサ64上に載置されている。基板10には、スペーサ64との接触位置に貫通孔が形成されている。そして、この基板10には、貫通孔内に締結部品66としてたとえば螺子部品が挿入され、この締結部品66とスペーサ64とが締結されて基板10と基板6とが固着される。
【0094】
また、電子装置60の筐体62には、固定孔68がスペーサ64の配置位置に応じて形成されており、貫通孔70を貫通したスペーサ64によって基板6が筐体62に固着される。
【0095】
また電子装置60には、挿抜される基板10の一部が規定のコジリ角を超えて傾斜されるのを阻止する挿抜治具12を備えている。この挿抜治具12は、基板10の設置位置に応じて立設され、着脱される基板10の一部に接触してコネクタ8がコネクタ4に対して規定角度を超えて嵌合されるのを阻止している。
【0096】
その他、筐体62には、たとえば電子装置60の側面または前面筐体となる立壁部80が形成されている。この立壁部80の先端側には、たとえば筐体62の上面側を覆う図示しない筐体カバーに接触させて係止する係止片82が形成されている。また、この立壁部80には、たとえば電子装置60の操作手段や表示手段、または光学式媒体を利用するためのODD(Optical Disc Drive)などを配置させて保持する窓部84、86、88が形成されている。
【0097】
なお、図17に示す電子装置60では、基板6、10が平面方向に設置される場合を示したが、これに限られない。この電子装置60では、たとえば基板6、10を鉛直方向に立設するように配置する場合も含まれる。
【0098】
この電子装置60には、たとえば基板10の一端の淵縁部にコネクタ8が設置されている。そして、挿抜治具12は、この基板10に対し、コネクタ8の短手方向および長手方向に対向する一端側、すなわち対角方向に配置されている。
【0099】
図18および図19は、基板の一端を傾斜させた状態例を示している。
【0100】
図18に示す基板10は、コネクタ8が設置された端部に対し、たとえばコネクタ8が短手方向に傾斜するように他端側が持上げられた状態となっている。そして他端側が持上げられた基板10は、その一部が挿抜治具12の阻止底部24に接触される。このときコネクタ4、8との間には、たとえばコジリ角によって嵌合状態が解除されたことを示す離間部90が形成される。また、持上げられた基板10の一端側には、たとえば基板10とスペーサ64との間に傾斜による隙間92、94、96が形成される。
【0101】
図19に示す基板10は、コネクタ8が設置された端部に対し、たとえばコネクタ8が長手方向に傾斜するように他端側が持上げられた状態となっている。そして基板10の一端が持上げられると、基板10の一部が挿抜治具12の突出部22の一部に接触する。このときコネクタ4、8の一部には、コネクタの長手方向に、コジリ角によって形成された離間部100が形成される。また、持上げられた基板10の一端側には、基板10とスペーサ64との間に隙間102、104が形成される。
【0102】
このような構成において、基板6と基板10は、たとえば既述の図6ないし図15に示す状態で挿抜が行われる。
【0103】
斯かる構成によれば、立設された挿抜治具が挿抜される基板に接触し、基板が規定のコジリ角を超えて傾斜するのを阻止することで、嵌合するコネクタの損傷が防止され、電子装置6の正常動作が維持される。また簡易な構造の挿抜治具により、コネクタを所定の嵌合位置にガイドでき、かつ基板の接触角度が規定角度以内に規制され、挿抜作業の適正化および容易化が図れる。
【0104】
〔第3の実施の形態〕
【0105】
図20は、第3の実施の形態に係る電子装置の構成例を示している。図20において、図16ないし図19に示す構成と同一部材については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0106】
第1の実施の形態のコネクタ装置2および第2の実施の形態の電子装置60では、挿抜治具12の胴体部20がコネクタ4、8の長手方向に平行となるように設置されている。これに対し、第3の実施の形態では、挿抜治具12は、その胴体部20がコネクタ8の短手方向に対して平行になるように設置されている。
【0107】
この挿抜治具12は、基板10の挿抜処理において、たとえばコネクタ8の短手方向について左右に傾斜した場合には、コネクタ8の短手方向の設定されたコジリ角に基づいて突出部22の長さE(図13、図14)が設定される。そして、この挿抜治具12は、たとえば突出部22の左右端が傾斜した基板10に接触することで、コジリ角を超えて基板10およびコネクタ8が傾斜して挿抜されるのを阻止する。
【0108】
また、コネクタ8の長手方向について左右に傾斜した場合、この挿抜治具12は、たとえばコネクタ8側の回動中心から挿抜治具12までの長さから、突出部22の配置高さが算出される。そして、この突出部22が基板10の一部に接触して、基板10やコネクタ8が規定のコジリ角を超えて傾斜するのを阻止する。
【0109】
〔第4の実施の形態〕
【0110】
図21は、第4の実施の形態に係る電子装置の構成例を示している。図21に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。また、図21において、図16ないし図19に示す構成と同一部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0111】
図21に示す電子装置60には、たとえば横幅を狭小に形成した挿抜治具110が複数設置されている。この挿抜治具110は、たとえば既述のように、基板10を当接させて配置位置にガイドする胴体部20(図2)や傾斜した基板10の一部に接触させてコネクタ4、8挿抜を阻止する突出部22が形成されている。
【0112】
この挿抜治具110の突出部22(図2)の高さは、たとえば既述のように、コネクタ4、8の短手方向または長手方向に設定されたコジリ角や、挿抜治具110の設置位置とコネクタ4、8までの距離L(図3)に基づいて算出すればよい。
【0113】
また、電子装置60には、たとえばコネクタ4、8の長手方向に対する傾斜に対して、少なくとも2個以上の挿抜治具110が設置されている。この長手方向に対するコネクタ4、8に対する傾斜の規制では、既述のように、左右方向に傾斜した基板10に対してコネクタ4、8のコジリ角を満たす左右の位置に、挿抜治具110を配置すればよい。
【0114】
斯かる構成によっても、基板が規定されたコジリ角を超えて傾斜されるのを阻止でき、嵌合しまたは接触するコネクタ4、8の損傷を防止できる。また、挿抜作業の適正化および容易化を図ることができる。
【0115】
〔第5の実施の形態〕
【0116】
図22ないし図24は、第5の実施の形態に係る挿抜治具の構成例を示している。図22ないし図24に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0117】
図22に示す挿抜治具120Aは、傾斜した基板10に対して接触する突出部126の配置高さを設定可能にする設定機構を備えている。この挿抜治具120Aは、たとえばコネクタ装置2(図1)や電子装置60(図17)の筐体62または被挿抜部材である第1の基板6に対して固定され、立設する脚部122を備えている。また、この脚部122には、たとえば中央部側に図示しない胴体部が形成されている。また、脚部122または胴体部の背面側には、突出部126が形成された本体部124が設置されている。この本体部124には、たとえば両端側に長円穴のガイド溝128が1または複数箇所に形成されている。このガイド溝128には、たとえば脚部122または胴体部を貫通させて固定する締結部品130が設置されている。この締結部品130は、たとえば表面部分に螺子構造が形成され、脚部122と本体部124を締結する。
【0118】
これにより、挿抜治具120Aは、たとえば締結部品130による固定を解除することで、脚部122に対して本体部124を上下方向に移動可能としている。そして、挿抜治具120Aでは、たとえば挿抜されるコネクタ4、8に規定されたコジリ角に応じて、本体部124をガイド溝128に対して上下させ、締結部品130により締結する。
【0119】
また図23に示す挿抜治具120Bには、既述のように脚部122や本体部124が設置されている。この本体部124には、たとえば高さ設定機構としてガイド溝140が形成されている。このガイド溝140には、たとえば「E」の字状に形成され、横方向に向けて本体部124の配置高さを段階的に設定可能にする係止溝142が形成されている。
【0120】
このように係止溝142が形成されることで、たとえば挿抜治具120Bの左右の高さを容易に一致させることができる。また、たとえば規定のコジリ角以上に傾斜した基板が突出部126の阻止底部や阻止辺部、載置部に接触した場合でも、過大な負荷によって本体部124が下方や上方に移動するのを防止できる。すなわち、ガイド溝140を「E」字状に形成することで、係止溝142の辺によって負荷を支えることが可能となる。
【0121】
なお、係止溝142の数は、図示したように「E」の字状の3つに限られず、少なくとも2以上であればよく、その数を増減させてもよい。
【0122】
さらに図24に示す挿抜治具120Cには、高さ設定機構として本体部124に例えば左右方向に段差状態となるガイド溝150が形成されている。このガイド溝150は、たとえばクランク状に形成されており、本体部124の高さを段階的に上下させるほか、本体部124を左右方向にも変移可能としている。
【0123】
ガイド溝150を備えた挿抜治具120Cは、たとえば既述のようにコネクタの長手方向に対するコジリ角制御において、位置決めされた脚部122から独立して、傾斜した基板との接触位置を調整することが可能となる。
【0124】
また、上記のように挿抜治具120A、120B、120Cは、図25に示すように、脚部122の設置位置が決められた場合、そのときの基板10に対するコジリ角に応じて本体部124の高さを設定することができる。これにより、コネクタ装置2内において挿抜治具120A、120B、120Cの設置位置が限られる場合でも、基板10およびコネクタ4、8に対するコジリ角を規定値内に規制でき、利便性が高められる。
【0125】
〔第6の実施の形態〕
【0126】
図26は、第6の実施の形態に係る挿抜治具の構成例を示している。
【0127】
この挿抜治具160は、たとえば突出部168の高さ方向への設定機構とともに、突出部168の突出量の設定機構を備えている。この挿抜治具160には、たとえば図示しない胴体部の背面側に本体部162が鉛直方向に設置されている。この本体部162は、既述のようにガイド溝128が形成され、脚部122に向けて締結部品130を貫通させて固定されている。この本体部162の天井側の先端部は、たとえば挿抜治具160の後方に向けて折り返された載置片164が形成されている。
【0128】
この載置片164の上面側には、突出部168を形成する「L」字型の突出部材166が載置されている。この突出部材166には、載置辺164との接触面側にガイド溝174が形成されている。また、載置片164には、たとえば図示しない貫通孔が形成されている。ガイド溝174には、たとえば載置片164の貫通孔側に向けて軸部材176が貫通している。この軸部材176は、たとえば突出部材166をガイド溝174内で前後方向(Z方向)に変移可能にするとともに、載置片164と突出部材166とを締結する。
【0129】
斯かる構成によれば、突出部168の突出量a(図4)の設定も可能になる。そして、この挿抜治具160は、たとえば電子装置60内における配置状態や、挿抜される基板10の形状などに応じて突出量を調整でき、基板がコジリ角を超えて傾斜するのを阻止することができるので、利便性が高められる。また、締結部品130や軸部材176を抜き取ることにより挿抜治具160を複数の部品に分解可能となっている。
【0130】
〔他の実施の形態〕
【0131】
(1) 上記実施の形態では、突出部22は、たとえば挿抜治具12の先端側を前方に折曲げ、逆「J」の字形に形成された場合を示したがこれに限られない。たとえば図27に示す挿抜治具12は、たとえば胴体部20の上側に幅広な部材で形成した突出部22を設置してもよい。斯かる構成によっても上記の挿抜治具12と同様の効果が得られる。
【0132】
(2) 上記実施の形態では、挿抜治具12、110、120A、120B、120C、160がスペーサ14、64を介して基板6に固定される場合を示したがこれに限られない。コネクタ装置2や電子装置60では、基板6に対してスペーサ14、64の設置位置から独立して挿抜治具12、120A、120B、120C、160を設置してもよい。
【0133】
(3) 上記実施の形態では、たとえば基板10においてコネクタ8が設置された端部の対角上に離間した他端側に挿抜治具12、110、120A、120B、120C、160を設置した場合を示したがこれに限られない。たとえば基板10に対して、コネクタ8の長手方向または短手方向に平行する他端に挿抜治具12、120A、120B、120C、160を設置してもよい。
【0134】
以上説明したように、本開示のコネクタ装置、挿抜治具および電子装置の好ましい実施の形態などについて説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0135】
2 コネクタ装置
4 第1のコネクタ
6 第1の基板
8 第2のコネクタ
10 第2の基板
12、110、120A、120B、120C、160 挿抜治具
14、64 スペーサ
16、66、130 締結部品
18、62 筐体
20 胴体部
22、126、168 突出部
24 阻止底部
26 阻止辺部
28 載置部
30、122 脚部
32 固定面
34、70 貫通孔
40、44 ピンガイド
42、46 ケース部
48 係止凹部
50 係止凸部
60 電子装置
68 固定孔
80 立壁部
82 係止片
90、100 離間部
92、94、96、102、104 隙間
124、162 本体部
128、140、150、174 ガイド溝
142 係止溝
164 載置片
166 突出部材
176 軸部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコネクタを備えた第1の基板と、
前記第1の基板に並行して配置され、前記第1のコネクタに接続する第2のコネクタを備えた第2の基板と、
前記第2の基板の設置位置に応じて立設され、着脱される前記第2の基板の一部に接触して前記第2のコネクタが前記第1のコネクタに対して規定角度を超えて嵌合されるのを阻止する挿抜治具と、
を備えるコネクタ装置。
【請求項2】
前記挿抜治具は、
前記第2の基板の側面側の一部に当接させ、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの嵌合位置に前記第2の基板をガイドする胴体部と、
前記第2の基板の上面側に突出され、前記第1のコネクタに対して前記規定角度を超えて前記第2の基板の一部が持上げられるのを阻止し、前記規定角度を超えて傾斜した前記第2のコネクタが前記第1のコネクタに接続されるのを阻止する突出部、
を備える、請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
さらに、筐体と、
前記第2の基板を載置させ、前記第1の基板に対する配置高さを保持する1または複数の載置手段を備え、
前記挿抜治具は、前記載置手段を介して前記筐体または前記第1の基板に固定される、
請求項1または請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記突出部は、コネクタ接続された前記第2の基板に対して、前記規定角度に基づいて設定された高さに形成される、請求項2または請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記挿抜治具は、前記第2の基板に対し、前記第2のコネクタの長手方向または短手方向のいずれか一方または両方に離間した位置に立設される、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記胴体部は、前記第1の基板に接続される前記第2の基板の一部が接触され、該接触部分を中心に前記第2のコネクタが前記第1のコネクタに対して回動される、請求項2ないし請求項5のいずれかに記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記挿抜治具は、前記突出部の配置高さを設定可能にする高さ設定機構を備える、
請求項1ないし請求項6に記載のコネクタ装置。
【請求項8】
挿抜部材の配置位置に応じて立設され、挿抜部材の側面側の一部に当接させてガイドする胴体部と、
前記挿抜部材の上面側に突出され、被挿抜部材に対して規定角度を超えて挿抜部材の一部が持上げられるのを阻止し、該規定角度を超えて傾斜した前記挿抜部材が前記被挿抜部材に接続されるのを阻止する突出部と、
を備える挿抜治具。
【請求項9】
前記突出部は、
被挿抜部材との対向面側に形成され、持上げられた挿抜部材の上面側の一部に接触して抜取りを阻止する抜取り阻止底部と、
前記挿抜部材の前記規定角度を超えて持ち上げられた端部側の一部に接触させ、前記挿抜部材と前記被挿抜部材との接続を阻止する阻止辺部と、
を備える請求項8に記載の挿抜治具。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体に設置され、第1のコネクタを備えた第1の基板と、
前記第1の基板に並行して配置され、前記第1のコネクタに接続する第2のコネクタを備えた第2の基板と、
前記第2の基板の配置位置に応じて立設され、着脱される前記第2の基板の一部と接触して前記第2のコネクタが前記第1のコネクタに対して規定角度を超えて嵌合されるのを阻止する挿抜治具
を備える電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−114776(P2013−114776A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257240(P2011−257240)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】