説明

コネクタ

【課題】部品点数を少なくし、組み立てやすい電力供給用のコネクタを提供する。
【解決手段】本発明のコネクタは、ハウジング300の内部に偶数個のコンタクト200と1個以上の弾性体400が配置され、2つのピンコンタクト910、920を接続する。コンタクト200は、導電性の板で形成されており、当該板の外周部分に、弾性体固定部230、第1接触部210、第2接触部220、抜け防止部240を有する。ハウジング300は、1つ以上のコンタクト収納部310、1つ以上のコンタクト挿入口320、第1ピンコンタクト挿入口330、第2ピンコンタクト挿入口340、係止部370を有する。コンタクト収納部310は、2つのコンタクト200ごとに、抜け防止部240同士、第1接触部210同士、第2接触部220同士を対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給用のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ピンコンタクト同士を接続するコネクタとしては、特許文献1の技術が従来技術として知られている。図1に特許文献1のコネクタの構成を示す。また、特許文献1の要約には、「第一平形挟持板2を形成する細長導電セグメント1群の一端側に同セグメント1個々の上下変位量を設定する第一上下変位制限軸9を遊貫挿すると共に、同他端側に同セグメント1個々の上下変位量を設定する第二上下変位制限軸10を遊貫挿し、同様に上記第二平形挟持板3を形成する細長導電セグメント1群の一端側に同セグメント1個々の上下変位量を設定する第三上下変位制限軸11を遊貫挿すると共に、同他端側に同セグメント1個々の上下変位量を設定する第四上下変位制限軸12を遊貫挿した電力供給用平形コネクタ。」と示されている。なお、図中の符号は「1…細長導電セグメント、2…第一平形挟持板、3…第二平形挟持板、4…第一平形プラグ挿入口、5…第二平形プラグ挿入口、6…第一平形プラグ、7…第二平形プラグ、9…第一上下変位制限軸、10…第二上下変位制限軸、11…第三上下変位制限軸、12…第四上下変位制限軸、13…大径孔、14…接触用突起」のように説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−218063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、複数組の平形挟持板の変位を、平形挟持板を貫通する4本の上下変位制限軸で制限しているので、部品点数が多くなる。また、複数組の平形挟持板を一度に組み立てていかなければならないので、組み立てにくい。本願発明は、部品点数を少なくし、組み立てやすい電力供給用のコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコネクタは、ハウジングの内部に偶数個のコンタクトと1個以上の弾性体が配置され、2つのピンコンタクトを接続するコネクタである。コンタクトは、導電性の板で形成されており、当該板の外周部分(板の広い面側から見たときの2次元形状の外周部分、あるいはその厚みに相当する部分)に、弾性体固定部、抜け防止部、第1接触部、第2接触部を有する。ハウジングは、1つ以上のコンタクト収納部、1つ以上のコンタクト挿入口、第1ピンコンタクト挿入口、第2ピンコンタクト挿入口を有する。
【0006】
弾性体固定部は、弾性体の一端を固定する。抜け防止部は、突起状である。第1接触部は、弾性体固定部からみて抜け防止部と同じ方向の抜け防止部より離れた位置に配置されている。第2接触部は、弾性体固定部からみて抜け防止部と反対の方向に配置されている。
【0007】
コンタクト収納部は2つの前記コンタクトを収納する。コンタクト挿入口は、弾性体を固定した2つのコンタクトを、第2接触部側からコンタクト収納部に挿入できる穴である。第1ピンコンタクト挿入口は、コンタクト挿入口側にある一方のピンコンタクト用の穴である。そして、一方のピンコンタクトをコンタクトの第1接触部同士の間に挿入した状態で、コンタクトと一方のピンコンタクトとを、コンタクト挿入口と第1ピンコンタクト挿入口からコンタクト収納部に収納できる。第2ピンコンタクト挿入口は、第1ピンコンタクト挿入口と反対側であって、他方のピンコンタクトが、コンタクト収納部に収納されたコンタクトの第2接触部同士の間に挿入される位置に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコネクタによれば、コンタクトと弾性体以外の部品としては、ハウジングのみでよい。また、2つのコンタクトと弾性体とを1組として、1組ずつ一方のピンコンタクトに取り付け、すべての組を取り付けた上でハウジングに収納すればよいので、同時に複数組のコンタクトと弾性体とを扱う必要がない。したがって、コネクタを組み立てやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のコネクタの構造を示す図。
【図2】本発明のコネクタの外観図を示す図。
【図3】本発明のコネクタを第2ピンコンタクト挿入口側から見た正面図。
【図4】本発明のコネクタを第1ピンコンタクト挿入口側から見た斜視図であって、第1のピンコンタクトを挿入する前の様子を示す図(ただし、コンタクトは図示せず)。
【図5】第1のピンコンタクトを係止する方法を示す図。
【図6】図3のA−A線での断面図を示す図。
【図7】第2のピンコンタクトが挿入されたときの様子を示す図。
【図8】第2のピンコンタクトが挿入されたときの別の角度から見た様子を示す図。
【図9】本発明のコネクタが使われるときの様子を示す斜視図。
【図10】本発明のコネクタを第1のピンコンタクトに取り付けた状態に組み立てる手順であって、第1のピンコンタクトにコンタクトを取り付ける手順を示す図。
【図11】本発明のコネクタを第1のピンコンタクトに取り付けた状態に組み立てる手順であって、コンタクトが取り付けられた第1のピンコンタクトをハウジングに挿入する様子を示す図。
【図12】本発明のコンタクトの抜け防止部を湾曲させた変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0011】
図2に本発明のコネクタの外観図を示す。図2(A)は第2ピンコンタクト挿入口側から見た斜視図、図2(B)は第1ピンコンタクト挿入口側から見た斜視図であって、第1のピンコンタクトが挿入された様子を示す図である。図3は、本発明のコネクタを第2ピンコンタクト挿入口側から見た正面図である。図4は、第1ピンコンタクト挿入口側から見た斜視図であって、第1のピンコンタクトを挿入する前の様子を示す図である。ただし、図4ではコンタクトは図示していない。図5に、第1のピンコンタクトを係止する方法を示す。図5(A)は図3のB−B線での断面図、図5(B)は図5(A)のCの部分の拡大図である。図6に図3のA−A線での断面図を示す。図7に第2のピンコンタクトが挿入されたときの様子を示す。図7(A)は、図3のA−A線での断面図であって、第1のピンコンタクトと第2のピンコンタクトの上下方向の位置が一致している場合の様子を示す図である。図7(B)は、図3のA−A線での断面図であって、第1のピンコンタクトと第2のピンコンタクトの上下方向の位置がずれている場合の様子を示す図である。図8に第2のピンコンタクトが挿入されたときの別の角度から見た様子を示す。図8(A)は、図7(A)のD−D線での断面図であって、第1のピンコンタクトと第2のピンコンタクトの左右方向の位置が一致している場合の様子を示す図である。図8(B)は、図7(A)のD−D線での断面図であって、第1のピンコンタクトと第2のピンコンタクトの左右方向の位置がずれている場合の様子を示す図である。図9は、本発明のコネクタが使われるときの様子を示す斜視図である。
【0012】
[本発明の構成の説明]
コネクタ100は、ハウジング300の内部に偶数個のコンタクト200と1個以上の弾性体400が配置され、2つのピンコンタクト910、920を接続するコネクタである。例えば、ピンコンタクト910は固定用穴911を有しており(図2参照)、装置935側のバスバー930にネジ931などで固定される(図9参照)。また、ピンコンタクト920は固定用穴921を有しており(図2参照)、電力源側のバスバー940にネジ941などで固定される(図9参照)。
【0013】
コンタクト200は、導電性の板で形成されている。例えば、銅合金の板などで形成すればよい。コンタクト200は、当該板の外周部分(板の広い面側から見たときの2次元形状の外周部分、あるいはその厚みに相当する部分)に、少なくとも弾性体固定部230、抜け防止部240、第1接触部210、第2接触部220、ガイド部250、を有する(図6参照)。ハウジング300は、1つ以上のコンタクト収納部310、1つ以上のコンタクト挿入口320、第1ピンコンタクト挿入口330、第2ピンコンタクト挿入口340、係止部370を有す(図2〜6参照)。弾性体400は、例えばコイルバネを用いればよいが、これに限定する必要は無い。2つのコンタクト200−1、2に、互いに引付けあうような力を生じさせることができれば、他の弾性体でもかまわない。
【0014】
弾性体固定部230は、弾性体400の一端を固定する。抜け防止部240は、突起状である。第1接触部210は、弾性体固定部230からみて抜け防止部240と同じ方向であって、より離れた位置に配置されている。第2接触部220は、弾性体固定部230からみて抜け防止部と反対の方向に配置されている。より具体的には、抜け防止部240は、第1接触部210と第2接触部220とを結ぶ直線よりも飛び出ている。また、第1接触部210と第2接触部220は、対向する第1接触部210−1、2同士、第2接触部220−1、2同士が押し付ける力が加わった場合に、弾性体固定部230を中心として互いに反対向きのモーメントが発生する位置に配置されている。ガイド部250は、第2接触部220側から挿入されるピンコンタクト920を第2接触部220に導くようにテーパ状になっている。
【0015】
コンタクト収納部310は、2つのコンタクト200−1、2ごとに、抜け防止部240−1、2同士と第2接触部220−1、2同士を対向させ、コンタクト200−1、2同士に引き付けあう力が生じるように弾性体400を双方の弾性体固定部230−1、2に固定した状態で、2つのコンタクト200−1、2を収納する。より具体的には、弾性体400がある部分は、弾性体400の大きさに合わせた空間を確保し、その他の空間の幅がコンタクト200−1、2の板厚より少し広くなるように形成すればよい。コンタクト収納部310とコンタクト200−1、2との隙間が、コンタクト200−1、2が移動可能な範囲である。コンタクト200−1、2の形状やコンタクト収納部310の空間の形状としては様々な選択肢があるので、第1接触部210と第2接触部220の移動可能な範囲を高い自由度で設計できる。
【0016】
コンタクト挿入口320は、コンタクト収納部310ごとに形成されており、弾性体400を固定した2つのコンタクト200−1、2を、第2接触部220−1、2側からコンタクト収納部310に挿入するための細長い長方形の穴である。第1ピンコンタクト挿入口330は、コンタクト挿入口320側にあるピンコンタクト910用の穴である。そして、ピンコンタクト910をコンタクト200−1,2の第1接触部同士210−1、2の間に挿入した状態で、コンタクト200−1、2とピンコンタクト910とを、コンタクト挿入口320と第1ピンコンタクト挿入口330からコンタクト収納部310に収納できる。なお、コンタクト200が4個以上(2組以上)あり、コンタクト収納部310が2個以上ある場合には、第1ピンコンタクト挿入口330は、ピンコンタクト910を、全てのコンタクト200の組の第1接触部210−1、2同士で挟むことができる位置に設けられている。図2のコネクタの場合、コンタクト収納部310が3個あり、第1ピンコンタクト挿入口330は、ピンコンタクト910を、3組のコンタクト200の第1接触部210−1、2同士で挟むことができる位置に設けられている。
【0017】
第2ピンコンタクト挿入口340は、第1ピンコンタクト挿入口330と反対側であって、ピンコンタクト920が、コンタクト収納部310に収納されたコンタクト200−1、2の第2接触部220−1、2同士の間に挿入される位置に設けられている。なお、コンタクトが4個以上(2組以上)あり、コンタクト収納部310が2個以上ある場合には、第2ピンコンタクト挿入口340は、ピンコンタクト920が、全てのコンタクト200の組の第2接触部220−1、2同士の間に挿入される位置に設けられている。図2のコネクタの場合、コンタクト収納部310が3個あり、第2ピンコンタクト挿入口340は、3組のコンタクト200の第2接触部220−1、2同士の間に挿入される位置に設けられている。
【0018】
係止部370は、挿入されたピンコンタクト910を把持する。例えば、図4のように、ピンコンタクト910の先端部分が全体よりも幅広となるように、ピンコンタクト910に爪部912を形成しておく。そして、図5に示すように、ピンコンタクト910を挿入したときに引っかかる爪状の係止部370をハウジング300内に形成すればよい。
【0019】
さらに、ピンコンタクト910未挿入のときには、第1接触部210−1、2同士は、ピンコンタクト910の厚み以下の間隔を空けて離れる形状にする。つまり、第1接触部210−1、2同士でピンコンタクト910を挟むことができる形状にする。また、ピンコンタクト910を第1接触部210−1、2同士の間に挿入したとき(第1接触部210−1、2同士でピンコンタクト910を挟んだとき)には、第1接触部210−1、2同士の間隔が広がるので、抜け防止部240−1、2同士は離れる。このときの抜け防止部240−1、2同士の間隔が、ピンコンタクト910の厚み未満となるようにする。コンタクト200はこのような形状なので、ハウジング300とピンコンタクト910との位置関係が固定された状態では、コンタクト200がハウジング300から抜け出てしまうことがない。例えば、図9のようにコネクタ100にピンコンタクト910とピンコンタクト920とが接続された状態では、ハウジング300とピンコンタクト910との位置関係は固定される。このような状態のときに、抜け防止部240がピンコンタクト910により抑えられ、コンタクト200はハウジング300とピンコンタクト910に挟まれるため、コンタクト200がハウジング300から抜け出ない。
【0020】
また、コンタクト収納部310とコンタクト200−1、2との隙間が、コンタクト200−1、2が移動可能な範囲である。つまり、第2接触部220は、コンタクト200の第2接触部220側の形状とコンタクト収納部310の空間の形状との隙間によって移動できる範囲が決まる。そこで、第2接触部220の移動範囲を制限しやすくするために、コンタクト200が変位制限部261を有し、ハウジング300が変位制限爪350を有してもよい(図6参照)。変位制限部261は、第2接触部220側であって、第2接触部220から所定の位置に配置されている。「所定の位置」とは、変位制限爪350との関係から第2接触部220が移動できる範囲を制限するようにあらかじめ定めた位置である。変位制限爪350は、コンタクト収納部310の第2ピンコンタクト挿入口340付近に配置される。そして、例えば、変位制限爪350とハウジング300の外壁の一部である変位制限壁380によって、変位制限部261の移動範囲を限定する(図6,図7参照)。変位制限部261と変位制限壁380は、第2接触部220が変位制限壁380方向に移動できる範囲を決める役目を果たし、変位制限部261と変位制限爪350は、第2接触部220が変位制限爪350方向に移動できる範囲を決める役目を果たす。つまり、第2接触部220は、変位制限爪350と変位制限壁380との間隔から変位制限部261の厚さを引いた長さだけ移動できる。
【0021】
また、ハウジング300の外壁部分には、ハウジングを把持するための把持部390を備えてもよい。
【0022】
[本発明の構成の異なる表現での説明]
本発明のコネクタの構成、特にコンタクトの部分の構成を異なる表現を用いて説明すると以下のようになる。なお、この説明は最初の説明の内容を限定するものではなく、最初の説明では理解しにくい部分を補充するための説明である。
【0023】
コネクタ100では、導電性の板で形成された2つのコンタクト200−1、2を、板の厚み部分に相当する外周部分同士が対向するように、板の広い面同士を同一の平面上に配置し、弾性体400を、2つのコンタクト200−1、2が引き付けあうように2つのコンタクト200−1、2に取り付ける(図6参照)。なお、「同一平面」とは、厳密な意味での同一平面ではなく、ピンコンタクト910、920がないときに、外周部分同士が接触する程度に同一であればよい。2つのコンタクト200−1、2と1つの弾性体400を1組として、1組以上をハウジング300の内部に配置する。そして、2つのコンタクト200−1、2の間にピンコンタクト910、920を挟むことによって2つのピンコンタクト910、920を電気的に接続する。
【0024】
2つのコンタクトのそれぞれは、第1接触部210−1、2、第2接触部220−1、2、弾性体固定部230−1、2、抜け防止部240−1、2、ガイド部250−1、2を有する。2つのコンタクト200−1、2は、抜け防止部同士が対向し、第1接触部同士が対向し、第2接触部同士が対向するように配置される。抜け防止部240−1、2は、他方のコンタクト200−2、1と対向する側の外周部分に形成された突起である。第1接触部210−1、2と第2接触部220−1、2は、抜け防止部240−1、2を挟んだ両側に形成された凸状である。弾性体固定部230−1、2は、他方のコンタクト200−2、1と対向する側の抜け防止部240−1、2と第2接触部220−1、2の間に形成されている。ガイド部250−1、2は、第2接触部220−1、2側であって、ピンコンタクト920を第2接触部に導く。
【0025】
ハウジング300は、1つ以上のコンタクト収納部310、コンタクト収納部310と同じ数のコンタクト挿入口320、第1ピンコンタクト挿入口330、第2ピンコンタクト挿入口340、係止部370を備える。コンタクト収納部310は、2つのコンタクト200−1、2と1つの弾性体400の組を、2つのコンタクト200−1、2同士が外周部分を対向させた状態を維持するように収納する。コンタクト挿入口320は、第1接触部同士210−1、2でピンコンタクト910を挟んだ状態で、弾性体400を固定した2つのコンタクト200−1、2を、第2接触部220−1、2側からコンタクト収納部310に挿入するための穴である。また、第1ピンコンタクト挿入口330は、コンタクト挿入口320側に形成された穴である。第1ピンコンタクト挿入口330は、ピンコンタクト910を、第1接触部同士210−1、2で挟んだ状態で、ハウジングに挿入するための穴である。第2ピンコンタクト挿入口340は、第1ピンコンタクト挿入口330と反対側であって、ピンコンタクト920が、コンタクト収納部310に収納されたコンタクト200−1、2の第2接触部220−1、2同士の間に挿入される位置に設けられている。係止部370は、挿入されたピンコンタクト910を把持する。
【0026】
さらに、ピンコンタクト910未挿入のときには、第1接触部210−1、2同士は、ピンコンタクト910の厚み以下の間隔を空けて離れる形状にする。また、ピンコンタクト910を第1接触部210−1、2同士の間に挿入したとき(第1接触部210−1、2同士でピンコンタクト910を挟んだとき)には、第1接触部210−1、2同士の間隔が広がるので、抜け防止部240−1、2同士は離れる。このときの抜け防止部240−1、2同士の間隔が、ピンコンタクト910の厚み未満となるようにする。
【0027】
[ピンコンタクト同士のずれへの対応]
ピンコンタクト910とピンコンタクト920とは、必ずしも正確に位置合わせされているわけではない。そこで、次にピンコンタクト910とピンコンタクト920との位置がずれた場合のコネクタ100の状態について、図7と図8を用いて説明する。なお、以下の説明での上下方向、左右方向とは、図面上の方向である。実際にはコネクタが取り付けられる向きによって、上下左右の方向は変わることに注意されたい。
【0028】
ピンコンタクト910とピンコンタクト920の上下方向の位置が一致している場合は、図7(A)のようになる。このとき、コンタクト200−1、2は単純に上下に離れ、弾性体400の力でピンコンタクト910、920を挟みつける。ピンコンタクト910とピンコンタクト920の上下方向の位置がずれている場合、図7(B)のようにコンタクト200−1、2は傾きながら離れ、弾性体400の力でピンコンタクト910、920を挟みつける。このときにコンタクト200−1、2がどの程度傾くことを許容するのかは、コンタクト200−1、2の移動可能範囲を設計するときに決めればよい。なお、移動可能範囲は、上述のように、変位制限部261、変位制限爪350、変位制限壁380を用いて決めればよい。
【0029】
図8(A)は、ピンコンタクト910とピンコンタクト920の左右方向の位置が一致している場合の様子を示す図であり、図8(B)は、ピンコンタクト910とピンコンタクト920の左右方向の位置がずれている場合の様子を示す図である。左右方向のずれに対しては、第2ピンコンタクト挿入口340の幅を広げることと、コンタクト収納部310の位置の設計で対応できる。
【0030】
また、ピンコンタクト910とピンコンタクト920とがねじれている場合は、上下方向の位置のずれが、コンタクト収納部310ごとに異なることになる。コネクタ100の場合であれば、コンタクト収納部310ごとに、コンタクトと弾性体の組は独立に移動可能なので、図7を用いて説明したように対応できる。
【0031】
[組み立て方法]
図10と図11に本発明のコネクタにピンコンタクト910を取り付けた状態まで組み立てるための手順を示す。図10はピンコンタクト910にコンタクト200−1、2を取り付ける手順を示し、図11はコンタクトが取り付けられたピンコンタクト910をハウジング300に挿入する様子を示す。図10(A)は1つ目のコンタクト200−1にコイルバネ400の一端を取り付ける工程、図10(B)は2つ目のコンタクト200−2にコイルバネ400の他端を取り付ける工程、図10(C)はピンコンタクト910をコンタクト200−1、2で挟む工程、図10(D)はピンコンタクト910を3組のコンタクト200−1、2で挟んだ状態を示す図である。図11(A)は、3組のコンタクト200−1、2がピンコンタクト910を挟んだ状態で、コンタクト200−1、2とピンコンタクト910とをハウジング300に挿入する工程を示す図であり、図11(B)は完成図を示す図である。
【0032】
図10(A)と図10(B)に示すように、弾性体400を、2つのコンタクト200−1、2が引き付けあうように2つの弾性体固定部230−1、2に取り付ける。なお、弾性体400には、例えば、両端に鍵爪401、402を有するコイルバネを用いればよい。そして、2つのコンタクト200−1、2を、板の厚み部分に相当する外周部分同士が対向するように、板の広い面同士を同一の平面上に配置する。
【0033】
図10(C)に示すように、1組のコンタクト200−1、2ごとに、ピンコンタクト910に取り付ける(コンタクト200−1、2でピンコンタクト910を挟む)。そして、図10(D)に示すように、複数組のコンタクト200−1、2をピンコンタクト910に取り付ければよい。なお、隣り合うコンタクト200−1、2の組同士の間隔は、治具(図示していない)などを用いてコンタクト挿入口320の間隔と同じに調整すればよい。例えば、コンタクト挿入口320の間隔と同じ間隔の溝に、コンタクト200−1、2をはめながらピンコンタクト910を挟むようにすればよい。
【0034】
図10(D)の状態になれば、図11(A)に示すようにコンタクト挿入口320と第1ピンコンタクト挿入口330から、コンタクト200−1、2とピンコンタクト910を一緒にハウジング300に挿入できる。したがって、容易に組み立てることができる。
【0035】
本発明のコネクタによれば、コンタクトと弾性体以外の部品としては、ハウジングのみでよい。また、2つのコンタクトと弾性体とを1組として、1組ずつ一方のピンコンタクトに取り付け、一度にハウジングに挿入すればよいので、同時に複数組のコンタクトと弾性体とを扱う必要がない。したがって、コネクタを組み立てやすい。さらに、特許文献1の技術が、1つの平形挟持板の移動範囲を大径孔と変位制限軸との隙間のみで調整しているのに対し、本願発明はコンタクトの移動範囲をハウジングとの隙間や、変位制限部と変位制限爪で調整しているので、移動範囲の設計自由度を確保しやすい。
【0036】
[変形例]
図12に本発明のコンタクトの抜け防止部を湾曲させた変形例を示す。図12(A)は、2つのコンタクト200’−1、2でピンコンタクト910’を挟んだ様子を示す斜視図である。また、図12(B)は、抜け防止部240’−1、2とピンコンタクト910’との関係を示すための、異なる角度からの斜視図である。なお、実際に2つのコンタクト200’−1、2でピンコンタクト910’を挟むためには弾性体400が必要であるが、図面上は弾性体400を省略している。
【0037】
コンタクト200’は、抜け防止部240’が実施例1(コンタクト200)と異なる。抜け防止部240’は、抜け防止部240’の先端の外周部分(厚みの部分)が、第1接触部210と第2接触部220とを結ぶ線上からずれるように湾曲している。そして、同じ形の2つのコンタクト200’を用いて、2つのコンタクト200’−1、2としているので、抜け防止部240’−1、2の先端同士は逆方向に湾曲した状態となり、抜け防止部240’−1、2の先端同士は接触しない構造となっている。したがって、図12(B)に示すように、2つのコンタクト200’−1、2でピンコンタクト910’を挟んだときでも、ピンコンタクト910’からみて抜け防止部240’−1と抜け防止部240’−2とが重なった状態を維持できる。つまり、ピンコンタクト910’が薄い場合でも、抜け防止部240’−1、2の間に生じる隙間に、ピンコンタクト910’が入らないようにできる。その他の構成はすべて実施例1と同じである。したがって、上記の効果の他、実施例1と同様の効果も得られる。
【符号の説明】
【0038】
100 コネクタ 200 コンタクト
210 第1接触部 220 第2接触部
230 弾性体固定部 240 抜け防止部
250 ガイド部 261 変位制限部
300 ハウジング 310 コンタクト収納部
320 コンタクト挿入口 330 第1ピンコンタクト挿入口
340 第2ピンコンタクト挿入口 350 変位制限爪
370 係止部 380 変位制限壁
390 把持部 400 弾性体(コイルバネ)
401、402 鍵爪 910、920 ピンコンタクト
930、940 バスバー 911、921 固定用穴
912 爪部 931、941 ネジ
935 装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に偶数個のコンタクトと1個以上の弾性体が配置され、2つのピンコンタクトを接続するコネクタであって、
前記コンタクトは、導電性の板で形成されており、当該板の外周部分に、
前記弾性体の一端を固定するための弾性体固定部と、
突起状の抜け防止部と、
前記弾性体固定部からみて前記抜け防止部と同じ方向の前記抜け防止部より離れた位置に配置されている第1接触部と、
前記弾性体固定部からみて前記抜け防止部と反対の方向に配置されている第2接触部と、
を有し、
前記ハウジングは、
2つの前記コンタクトを収納する1つ以上のコンタクト収納部と、
前記弾性体を固定した2つの前記コンタクトを、前記第1接触部同士で一方のピンコンタクトを挟んだ状態で、前記第2接触部側から前記コンタクト収納部に挿入するための1つ以上のコンタクト挿入口と、
前記コンタクト挿入口側に形成された穴であって、一方のピンコンタクトを、前記コンタクトの前記第1接触部同士で挟んだ状態で、前記ハウジングに挿入するための第1ピンコンタクト挿入口と、
前記第1ピンコンタクト挿入口と反対側であって、他方のピンコンタクトが、前記コンタクト収納部に収納された前記コンタクトの前記第2接触部同士の間に挿入される位置に設けられた第2ピンコンタクト挿入口と、
を有するコネクタ。
【請求項2】
導電性の板で形成された2つのコンタクトを、前記板の厚み部分に相当する外周部分同士が対向するように、前記板の広い面同士を同一の平面上に配置し、
弾性体を、前記の2つのコンタクトが引き付けあうように前記の2つのコンタクトに取り付け、
前記の2つのコンタクトと1つの弾性体を1組として、1組以上をハウジングの内部に配置し、
前記の2つのコンタクトの間にピンコンタクトを挟むことによって2つのピンコンタクトを電気的に接続するコネクタであって、
前記の2つのコンタクトのそれぞれは、
他方のコンタクトと対向する側の外周部分に形成された突起状の抜け防止部と、
前記抜け防止部を挟んだ両側に形成された凸状の第1接触部と第2接触部と、
他方のコンタクトと対向する側の前記抜け防止部と前記第2接触部の間に形成された弾性体固定部と、
を有し、
前記の2つのコンタクトは、前記抜け防止部同士が対向し、前記第1接触部同士が対向し、前記第2接触部同士が対向し、
前記ハウジングは、
前記の2つのコンタクトと1つの弾性体の組を収納する1つ以上のコンタクト収納部と、
前記弾性体を固定した2つの前記コンタクトを、前記第1接触部同士で一方のピンコンタクトを挟んだ状態で、前記第2接触部側から前記コンタクト収納部に挿入するための1つ以上のコンタクト挿入口と、
前記コンタクト挿入口側に形成された穴であって、一方のピンコンタクトを、前記コンタクトの前記第1接触部同士で挟んだ状態で、前記ハウジングに挿入するための第1ピンコンタクト挿入口と、
前記第1ピンコンタクト挿入口と反対側であって、他方のピンコンタクトが、前記コンタクト収納部に収納された前記コンタクトの前記第2接触部同士の間に挿入される位置に設けられた第2ピンコンタクト挿入口と、
を有するコネクタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のコネクタであって、
前記一方のピンコンタクト未挿入のときに、第1接触部同士は、前記一方のピンコンタクトの厚み以下の間隔を空けて離れており、
前記一方のピンコンタクトを第1接触部同士の間に挿入したときに、抜け防止部同士の間隔は、前記一方のピンコンタクトの厚み未満である
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項1または2記載のコネクタであって、
前記抜け防止部は、
先端の外周部分が、前記第1接触部と前記第2接触部とを結ぶ線上からずれるように湾曲している
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のコネクタであって、
前記コンタクトは、
前記第2接触部側であって、前記第2接触部から所定の位置に配置された変位制限部を有し、
前記ハウジングは、
前記コンタクト収納部の前記第2ピンコンタクト挿入口側に変位制限爪を有し、
前記変位制限部は、移動範囲が前記ハウジングと前記変位制限爪によって限定される
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のコネクタであって、
前記コンタクトは、
前記第2接触部側から挿入されるピンコンタクトを前記第2接触部に導くガイド部も有する
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、
挿入された前記一方のピンコンタクトを把持するための係止部を有する
ことを特徴とするコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−156089(P2012−156089A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16103(P2011−16103)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)