説明

コネクタ

【課題】アクチュエータが閉位置に位置しかつ接続対象物が未挿入のときにコネクタを低背にでき、しかも接触対象物が挿入・未挿入のいずれの状態にあるときも閉位置にあるアクチュエータの開位置への回転操作性に優れるコネクタを提供する。
【解決手段】インシュレータ20と、接続対象物60と接触可能なコンタクト30と、開位置と閉位置との間を回転可能なアクチュエータ50と、接続対象物がインシュレータから脱出したときの閉位置を、接続対象物が挿入されたときの閉位置よりも開位置と反対側に位置させるようにアクチュエータを支持する回転支持部27、57、59と、アクチュエータの遊端部に形成した、アクチュエータが閉位置に位置するときに挿脱方向に対して接続対象物から離れる方向に傾斜状態となる操作部56と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPCやFFC等の薄板状の接続対象物を接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
薄板状の接続対象物(FPCやFFC等)を接続可能なコネクタは、接続対象物を挿脱可能なインシュレータと、インシュレータに挿入した接続対象物と接触可能で、回路基板に接続(半田付け)するコンタクトと、接続対象物の挿脱方向と略平行となってインシュレータに挿入した接続対象物をコンタクト側に押圧する閉位置と、該挿脱方向に対して略直交して接続対象物に対する押圧力を消失させる開位置との間をインシュレータに対して回転可能なアクチュエータと、を具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−65935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にこの種のコネクタを電子機器の回路基板に実装(コンタクトの回路基板への半田付け)しかつ接続対象物を当該コネクタに接続するには、まずアクチュエータを閉位置に位置させた状態でコネクタを回路基板に実装し、アクチュエータを開位置まで回転させてインシュレータに接続対象物を挿入し、その後にアクチュエータを閉位置に回転復帰させる。また電子機器の製造工程で行う電子機器の導通・動作確認検査は、アクチュエータを閉位置から開位置まで回転させてインシュレータから接続対象物を引き抜き、その後に検査用FPCをインシュレータに挿入してアクチュエータを閉位置に戻した状態で行われる。
このように接続対象物がコネクタに対して挿入状態と未挿入状態のいずれにあるときも、閉位置に位置しているアクチュエータを開位置まで回転させることがあるので、閉位置に位置するアクチュエータ(の遊端部)と回路基板との間の隙間を出来るだけ大きくして、作業者が手(指)を閉位置に位置するアクチュエータ(の遊端部)に掛け易くするのが好ましい。
そのためにはコネクタ全体を大型化(高背化)させてアクチュエータ(の遊端部)と回路基板との間の隙間を大きくすればよい。
【0005】
その一方で、コネクタを回路基板へ実装した後でかつコネクタへ接続対象物を接続する前に、回路基板に対してコネクタとは別の電子部品(例えばコンデンサや異方性導電膜(ACF/Anisotropic Conductive Film)等)を実装することがある。そのため、アクチュエータが閉位置に位置しかつ接続対象物が未挿入のときにコネクタが低背になるようにすれば、回路基板へ移送中の当該電子部品やコテ等の実装工具がコネクタに接触し難くなるので当該電子部品の回路基板への実装作業を行い易くなる。
【0006】
しかし、アクチュエータを閉位置から開位置へ回転操作し易くするためのコネクタの高背構造と(コネクタとは別の)電子部品を回路基板へ実装し易くするためのコネクタの低背構造を実現することは二律背反の関係にあるため、従来はアクチュエータが閉位置に位置しかつ接続対象物が未挿入のときにコネクタを低背にでき、かつ、閉位置にあるアクチュエータの開位置への回転操作性に優れるコネクタが存在しなかった。
【0007】
本発明の目的は、アクチュエータが閉位置に位置しかつ接続対象物が未挿入のときにコネクタを低背にでき、しかも接触対象物が挿入・未挿入のいずれの状態にあるときも閉位置にあるアクチュエータの開位置への回転操作性に優れるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコネクタは、薄板状の接続対象物を挿脱可能なインシュレータと、該インシュレータに挿入した上記接続対象物と接触可能なコンタクトと、上記接続対象物の挿脱方向と略直交する開位置と、該開位置から接続対象物の脱出方向側に倒れて上記回路基板と略平行となり上記接続対象物を上記コンタクト側に押圧する閉位置と、の間を上記インシュレータに対して回転可能なアクチュエータと、上記接続対象物がインシュレータから脱出したときの上記閉位置を、上記接続対象物が挿入されたときの上記閉位置よりも上記開位置と反対側に位置させるように上記アクチュエータを支持する回転支持部と、上記アクチュエータの遊端部に形成した、上記アクチュエータが上記閉位置に位置するときに上記挿脱方向に対して上記接続対象物から離れる方向に傾斜状態となる操作部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記回転支持部が、上記インシュレータに形成した回転規制部と、上記接続対象物がインシュレータから脱出した状態でアクチュエータが上記閉位置まで回転したときに上記回転規制部に当接する、上記アクチュエータに形成した被支持部と、を備えてもよい。
このように構成すれば、接続対象物がインシュレータから脱出状態にあるときにアクチュエータを確実に所定の閉位置で止めることできるので、アクチュエータが必要以上に閉方向側への倒れこむのを防止でき、さらにアクチュエータを操作するための空間を確保できる。
【0010】
上記回転支持部が、上記接続対象物がインシュレータに挿入した状態でアクチュエータが上記閉位置まで回転したときに該接続対象物と当接し、上記被支持部を上記回転規制面から離間させる当接部を備えてもよい。
このように構成すれば、アクチュエータが閉位置に位置するときに当接部が接触対象物に接触することにより、被支持部と回転規制部とが当接することによって接続対象物とコンタクトの接触状態に悪影響が及ぶおそれを排除できるので、安定した接触状態を維持できる。
【0011】
上記当接部が、上記接続対象物がインシュレータから脱出した状態で上記アクチュエータが上記閉位置に位置したときに、該接続対象物の一方の面に面接触する扁平面であり、上記被支持部が上記当接部に対して傾斜する扁平面であってもよい。
このように構成すれば、接続対象物をインシュレータに挿入したときにアクチュエータを接続対象物に対して正対させることができるため、接続対象物とコンタクトの接触信頼性を維持できる。また接続対象物をインシュレータから脱出させたときはアクチュエータが接続対象物に対して傾くので、コネクタの低背化とアクチュエータの良好な操作性の両立が可能となる。
【0012】
上記接続対象物がインシュレータから脱出した状態で上記アクチュエータが上記閉位置に位置したときに、上記アクチュエータ全体が、上記インシュレータの厚み方向の両端面の間の位置していてもよい。
このように構成すれば、接続対象物がインシュレータから脱出した状態でアクチュエータが閉位置に位置するときに、アクチュエータがインシュレータに対してインシュレータの厚み方向に突出することがなくコネクタがより低背化するため、他部品の実装性がより向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、閉位置に位置するときに接触対象物から離れる方向に傾斜する操作部をアクチュエータに形成したことにより、接続対象物が挿入されているか否かに拘わらず、アクチュエータが閉位置に位置するとき、操作部と回路基板若しくは操作部と接触対象物との間には大きな隙間が形成される。そのため作業者は閉位置に位置するアクチュエータの操作部に手(指)を掛け易く、閉位置に位置するアクチュエータを開位置まで常に簡単に回転操作できる。
また、回転支持部の働きによって、接続対象物がインシュレータから脱出したときのアクチュエータの閉位置を、接続対象物が挿入されているときの閉位置よりも開位置と反対側に位置するようにしている。そのため接続対象物がインシュレータから脱出しかつアクチュエータが閉位置に位置するとき、アクチュエータに操作部を形成したにも拘わらずコネクタは低背になる。さらにコネクタ周辺の他部品の実装や組立工程を容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタを前斜め上方から見た分解斜視図である。
【図2】コネクタの後斜め下方から見た分解斜視図である。
【図3】アクチュエータが開位置に位置するときのコネクタとFPCの前斜め上方から見た斜視図である。
【図4】アクチュエータが開位置に位置するときにFPCをコネクタに挿入したときの前斜め上方から見た斜視図である。
【図5】図4と同じ状態にあるときの正面図である。
【図6】図5のVI−VI矢線に沿う断面図である。
【図7】図5のVII−VII矢線に沿う断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII矢線に沿う断面図である。
【図9】FPCをコネクタに挿入した状態でアクチュエータを閉位置まで回転させたときの図6と同様の断面図である。
【図10】図9と同じ状態にあるときの図7と同様の断面図である。
【図11】FPCをコネクタに挿入していない状態でアクチュエータを閉位置まで回転させたときの図6と同様の断面図である。
【図12】図11と同じ状態にあるときの図7と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。
本実施形態のコネクタ10は、大きな構成要素としてインシュレータ20、シグナルコンタクト30、固定金具40、及び、アクチュエータ50を具備している。
インシュレータ20は絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂材料を射出成形したものである。インシュレータ20の上面の前部にはFPC60(接触対象物)とほぼ同幅で前端近傍に左右一対の係止爪用凹部21aを備えるFPC挿入溝21が凹設してある。FPC挿入溝21の前面及び前部の上面は開放しており、FPC挿入溝21の後部はインシュレータ20の内部にまで及んでいる(図6、図9等を参照)。インシュレータ20の前部の左右両側部には一対の側壁22が形成してあり、左右の側壁22の内側面には閉位置保持凹部23が形成してある。さらに左右の側壁22の内側には左右一対の側方凹部24が形成してある。左右の側方凹部24の上面(底面)には、前端がインシュレータ20の前端面において開口しかつ下面の一部が開放した金具固定溝25が凹設してあり、金具固定溝25はインシュレータ20の後端面にまで及んでいる(図2、図8参照)。インシュレータ20の前端部には左右一対の前壁26が突設してあり、左右の前壁26の上面は水平な扁平面からなる回転規制部27(回転支持部)となっている。またインシュレータ20の下面の左右両端部には、金具固定溝25の下端開口と連通する底部溝28が凹設してある。インシュレータ20には前後方向に延びる計15本のコンタクト挿入溝29が形成してある。各コンタクト挿入溝29の後部はインシュレータ20の後部を前後方向に貫通しており、各コンタクト挿入溝29の前部はFPC挿入溝21の底面に凹設してある。
【0016】
計15本のシグナルコンタクト30は、ばね弾性を備えた銅合金(例えばリン青銅、ベリリウム銅、チタン銅)やコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図示形状に成形加工したものであり、表面にニッケルメッキで下地を形成した後に、金メッキを施している。図1、図2、図6等に示すようにシグナルコンタクト30は側面視略コ字形であり、先端に接触突部32を有する接触アーム31と、接触アーム31の直上に位置し下面の先端近傍に支持凹部34を有する押えアーム33と、後端に突設したテール片35と、を備えている。
各シグナルコンタクト30は、インシュレータ20の各コンタクト挿入溝29に対して後方から圧入してある。図6等に示すように各シグナルコンタクト30をコンタクト挿入溝29に圧入すると、接触アーム31及び押えアーム33がFPC挿入溝21内に位置し、押えアーム33の上面に突設した抜止突起36が対応するコンタクト挿入溝29の上面に食い込むことにより、シグナルコンタクト30がコンタクト挿入溝29に対して固定状態となる。テール片35はインシュレータ20の後方に突出し、その下面はインシュレータ20の下面より下方に位置する。
【0017】
左右一対の固定金具40は金属板のプレス成形品であり、側方に向かって延びるテール片41と、後方に向かって延び上面に抜止突部43を有する圧入部42と、上面に突設した支持突部44と、を備えており、支持突部44の上端面は扁平な水平面からなる支持面45となっている。
固定金具40は、圧入部42を左右の金具固定溝25に対して前方から圧入することによりインシュレータ20に固定してある。圧入部42を金具固定溝25に圧入すると、圧入部42の上面に突設した抜止突部43が金具固定溝25の後端部の上面に食い込むので、固定金具40がインシュレータ20に対して固定される。またテール片41は底部溝28内に位置し、テール片41の下面はテール片35の下面と同じ高さに位置する。さらに支持突部44が金具固定溝25を通り抜けて側方凹部24内に突出する(側方凹部24の底面より上方に位置する。図3、図8参照)。
【0018】
左右方向に延びる板状部材である回転式のアクチュエータ50は、耐熱性の合成樹脂材料を金属製の成形型を利用して射出成形したものである。左右両側部には側部アーム51がそれぞれ設けてあり、側部アーム51の側面には閉位置保持突起52が突設してある。閉位置保持突起52は略半球形状であり、その径(アクチュエータ50が後述する閉位置に位置したときの上下寸法)は閉位置保持凹部23の上下寸法より小さい。アクチュエータ50の下端部近傍には、アクチュエータ50を板厚方向に貫通する計15個のアーム挿通用貫通孔53が左右方向に並べて形成してあり、各アーム挿通用貫通孔53の直下には各アーム挿通用貫通孔53の下端を塞ぐ回転中心軸54が形成してある。また隣り合うアーム挿通用貫通孔53の間に位置する部分の下端部には計16個のカム部55が設けてある。さらにアクチュエータ50の遊端部(回転中心軸54と反対側の端部)の幅方向の中央部には、周辺部に対して傾斜(アクチュエータ50が後述する閉位置に位置するときは上方に傾斜し、後述する開位置に位置するときは後方に傾斜する)する操作部56が突設してある。またアクチュエータ50の正面の基端側部(回転中心軸54側の部分)には、左右の側部アーム51間において左右方向に延びる扁平面からなる当接部57(回転支持部)が形成してある。さらにアクチュエータ50の正面の遊端側には、当接部57に対して傾斜する扁平面からなり、左右の前壁26間寸法より僅かに短い傾斜面58が形成してある。さらに傾斜面58の両側には、傾斜面58より一段低い位置に形成した、当接部57に対して傾斜しかつ傾斜面58と平行をなす扁平面である被支持部59(回転支持部)が形成してある。
アクチュエータ50は、図1、図2に示すようにインシュレータ20に対して略直交させた状態でその基端部(回転中心軸54側の端部)を前方からFPC挿入溝21内に挿入し、各アーム挿通用貫通孔53に対応するシグナルコンタクト30の押えアーム33を挿入して回転中心軸54に支持凹部34を係合し(図6、図9、図11参照)、かつ左右の側部アーム51の基端部を左右の固定金具40の支持面45に載せる(図8参照)ことにより、インシュレータ20及び固定金具40に支持してある。このように支持面45によって側部アーム51の基端部を支持すると、各シグナルコンタクト30の支持凹部34と対応する回転中心軸54の係合関係が維持されるので、アクチュエータ50はインシュレータ20(FPC60の挿脱方向)に対して直交した位置よりやや後方に傾斜する開位置(アンロック位置。図3〜図8に示す位置)と、開位置から前方に倒れて略水平となる閉位置(ロック位置。図9〜図12に示す位置)との間を回転中心軸54回りに回転可能である。閉位置まで回転すると、左右の閉位置保持突起52が左右の閉位置保持凹部23と係合するので、意図的に開位置側に回転させない限りアクチュエータ50は閉位置に保持される。
【0019】
続いて以上構成のコネクタ10の回路基板CBへの実装要領、FPC60の接続要領、及び、導通検査要領について説明する。
最初にFPC60のインシュレータ20に対する挿脱方向(前後方向)と略平行な回路基板CB(図6〜図12の仮想線参照)の上面(回路形成面)にコネクタ10を実装する要領について説明する。
まずインシュレータ20にFPC60を挿入しない状態でコネクタ10のアクチュエータ50を閉位置に位置させておく。図11、図12に示すように、このときアクチュエータ50の被支持部59が水平状態となってインシュレータ20の左右の回転規制部27によって支持されるので、アクチュエータ50が自重や不用意な押圧作業によってこれよりも下方(図11、図12において反時計方向)に回転することはない。また、このとき左右の閉位置保持突起52は閉位置保持凹部23の下半部に係合している。さらに傾斜面58が水平状態となって左右の前壁26の間に位置する。このときのアクチュエータ50の閉位置を以下の説明では「未挿入時閉位置」と呼ぶ。アクチュエータ50が未挿入時閉位置に位置するとき、操作部56の先端を含めたアクチュエータ50全体がインシュレータ20の上面と下面の間に位置する(インシュレータ20の上方に突出しない)のでコネクタ10全体の低背化を維持できる。
この状態のコネクタ10のインシュレータ20の後部上面を、コネクタ10の上方に位置する吸引手段(図示略)によって吸着し、吸引手段を移動させることにより各シグナルコンタクト30のテール片35を回路基板CB上の回路パターン(図示略)に塗布した半田ペーストに載せ、左右の固定金具40のテール片35を回路基板CB上の接地パターン(図示略)に塗布した半田ペーストに載せる。
続いて別途吸引手段等を利用して回路基板CBの上面にコネクタ10とは別の電子部品(例えばコンデンサーなど)を載せ、当該電子部品の端子を回路基板CB上の回路パターンに塗布した半田ペーストに載せる。また、回路基板CBのコネクタ10近傍に異方性導電膜(ACF)を熱圧着する際などは、回路基板CB上の空間を移動させて所定の位置で降下させた圧着コテによりAFCを回路基板CBに圧着する。上記したようにアクチュエータ50が未挿入時閉位置に位置するコネクタ10は極めて低背になっているので、これらの電子部品や実装工具をコネクタ10に接触させることなく円滑に回路基板CBの上面に運ぶことが可能である。
そしてリフロー炉において各半田ペーストを加熱溶融し、各テール片41及び上記電子部品の端子を上記回路パターンに半田付けし、各テール片41を上記接地パターンに半田付けすれば、コネクタ10及び上記電子部品の回路基板CBへの実装が完了する。
【0020】
続いてコネクタ10に対するFPC60の接続要領を説明する。
接続対象物であるFPC(Flexible Printed Circuit)60は弾性変形可能な薄板状の長尺物であり、その厚みはアクチュエータ50が開位置に位置するとき(シグナルコンタクト30の接触アーム31及び押えアーム33が自由状態にあるとき)のカム部55と接触突部32の上下間隔より小さい。FPC60は複数の薄膜材を互いに接着して構成した積層構造であり、FPC60の下面にはFPC60の延長方向に沿って直線的に延びる計15本の回路パターン(図示略)が左右方向に並べて形成してあり、回路パターンの両端部を除く部分の下面を絶縁カバー層によって覆っている。さらに端部近傍には左右一対の係止爪61が突設してある。
FPC60を接続するには、まず作業者が操作部56の先端と回路基板CBの間の空隙に手(指)または治具を入れて、操作部56を把持または引っ掛けながら未挿入時閉位置に位置するアクチュエータ50を開位置まで回転させる。操作部56が未挿入時閉位置に位置するとき操作部56は水平線に対して回路基板CBから離間する方向に傾斜するため、操作部56と回路基板CBの間の隙間(高さ)H1(図11、図12参照)は比較的大きくなる。そのためコネクタ10全体が極めて低背状態にあるものの、作業者は比較的大きな隙間H1を利用することにより操作部56を手で容易に把持し、アクチュエータ50を開位置まで円滑に回転操作できる。
アクチュエータ50を開位置まで回転させた後にFPC挿入溝21に対してFPC60の端部を前方から挿入し、さらに左右の係止爪61を係止爪用凹部21a内に位置させる(図4参照)。この状態でアクチュエータ50を閉位置まで前方に回転させると、アクチュエータ50の各カム部55及び当接部57がFPC60の上面に面接触してFPC60を下方に押圧するので(図9参照)、FPC60の上記回路パターンが、各シグナルコンタクト30の接触アーム31を下方に弾性変形させながら接触突部32に対して確実に接触する(図9参照)。
このときアクチュエータ50の当接部57がFPC60の上面によって支持されるため、被支持部59は左右の回転規制部27から僅かに上方に離間し(図10参照)、さらに左右の閉位置保持突起52が閉位置保持凹部23の上半部に係合する。そのためアクチュエータ50の遊端部(操作部56)が未挿入時閉位置に位置するときよりも上方に位置する(図9、図10参照)。また被支持部59及び操作部56がFPC60に対してFPC60から離れる方向に傾斜するため、操作部56の先端はFPC60から大きく離間する。以下の説明ではこのときのアクチュエータ50の閉位置を「挿入時閉位置」と呼ぶ。
【0021】
続いてコネクタ10の導通検査要領について説明する。
導通検査を行う際は、まず挿入時閉位置に位置するアクチュエータ50を開位置まで回転させて、FPC60をコネクタ10(FPC挿入溝21)から引き抜く。アクチュエータ50が挿入時閉位置に位置するとき操作部56とFPC60の間の隙間(高さ)H2(図9、図10参照)は大きいため、作業者はこの隙間H2を利用することにより操作部56を手で容易に把持し、アクチュエータ50を円滑に回転させることが可能である。
次いで図示を省略した検査装置を回路基板CBに電気的に接続するとともに、該検査装置に接続する検査用FPC(構造はFPC60と同じ)の一端をインシュレータ20のFPC挿入溝21に挿入してアクチュエータ50を挿入時閉位置まで回転させれば、検査装置によってコネクタ10が正しく動作しているか否かをチェックできる。
【0022】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、コネクタ10は、FPC挿入溝21が回路基板CBと直交する、所謂ライトアングルタイプでもよい。さらに閉位置保持凹部23をアクチュエータ50に形成し、閉位置保持突起52をインシュレータ20に形成してもよい。また閉位置保持凹部23と閉位置保持突起52を省略してもよい。さらに固定金具40に回転規制部27を形成して、この回転規制部27を利用してアクチュエータ50の支持を行ってもよい。
薄板状の接続対象物はFPC以外のケーブル、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 コネクタ
20 インシュレータ
21 FPC挿入溝
21a 係止爪用凹部
22 側壁
23 閉位置保持凹部
24 側方凹部
25 金具固定溝
26 前壁
27 回転規制部(回転支持部)
28 底部溝
29 コンタクト挿入溝
30 シグナルコンタクト
31 接触アーム
32 接触突部
33 押えアーム
34 支持凹部
35 テール片
36 抜止突起
40 固定金具
41 テール片
42 圧入部
43 抜止突部
44 支持突部
45 支持面
50 アクチュエータ
51 側部アーム
52 閉位置保持突起
53 アーム挿通用貫通孔
54 回転中心軸
55 カム部
56 操作部
57 当接部(回転支持部)
58 傾斜面
59 被支持部(回転支持部)
60 FPC(接続対象物)
61 係止爪
CB 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の接続対象物を挿脱可能なインシュレータと、
該インシュレータに挿入した上記接続対象物と接触可能なコンタクトと、
上記接続対象物の挿脱方向と略直交する開位置と、該開位置から接続対象物の脱出方向側に倒れて上記回路基板と略平行となり上記接続対象物を上記コンタクト側に押圧する閉位置と、の間を上記インシュレータに対して回転可能なアクチュエータと、
上記接続対象物がインシュレータから脱出したときの上記閉位置を、上記接続対象物が挿入されたときの上記閉位置よりも上記開位置と反対側に位置させるように上記アクチュエータを支持する回転支持部と、
上記アクチュエータの遊端部に形成した、上記アクチュエータが上記閉位置に位置するときに上記挿脱方向に対して上記接続対象物から離れる方向に傾斜状態となる操作部と、
を備えることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、
上記回転支持部が、
上記インシュレータに形成した回転規制部と、
上記接続対象物がインシュレータから脱出した状態でアクチュエータが上記閉位置まで回転したときに上記回転規制部に当接する、上記アクチュエータに形成した被支持部と、
を備えるコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタにおいて、
上記回転支持部が、
上記接続対象物がインシュレータに挿入した状態でアクチュエータが上記閉位置まで回転したときに該接続対象物と当接し、上記被支持部を上記回転規制面から離間させる当接部を備えるコネクタ。
【請求項4】
請求項3記載のコネクタにおいて、
上記当接部が、上記接続対象物がインシュレータから脱出した状態で上記アクチュエータが上記閉位置に位置したときに、該接続対象物の一方の面に面接触する上記アクチュエータに形成した扁平面であり、
上記被支持部が上記当接部に対して傾斜する上記アクチュエータに形成した扁平面であるコネクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のコネクタにおいて、
上記接続対象物がインシュレータから脱出した状態で上記アクチュエータが上記閉位置に位置したときに、上記アクチュエータ全体が、上記インシュレータの厚み方向の両端面の間の位置するコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−238434(P2012−238434A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105787(P2011−105787)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000128407)京セラコネクタプロダクツ株式会社 (77)
【Fターム(参考)】