説明

コネクタ

【課題】基板側ハウジングを大型化させることなく且つ製造コストを抑えつつ、基板に強固に固定できるコネクタを提供する。
【解決手段】基板側コネクタ1は、基板7上に取り付けられる基板側ハウジング10と、基板側ハウジング10に設けられて基板7上の信号端子8,9に表面実装される基板側コンタクト30とを備えて構成され、基板側ハウジング10は、嵌合されたケーブル側ハウジング50を受容するハウジング受容部12を備え、基板側コンタクト30は、ハウジング受容部12内に位置して、ハウジング受容部12内にケーブル側ハウジング50が受容されたときにケーブル側コンタクト70と接触して電気接続される前側基部31と、前側基部31に繋がって下方に突出し、基板7の信号端子8,9に表面実装される前側接合部33、後側接合部38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に表面実装されて基板と他の機器等とを電気接続するためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなコネクタとして、一般的にワイヤー・トゥ・ボード・コネクタ(Wire to Board Connector)と称されるケーブルと基板とを電気接続するためのコネクタがある。このコネクタには、基板側コンタクトを有した基板側ハウジングを基板に表面実装しておき、この基板側ハウジングに対して、ケーブル側コンタクトを有したケーブル側ハウジングを着脱可能に嵌合させて、ケーブルと基板とを電気接続するタイプのものが存在する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されたコネクタにおいては、基板上の信号端子と基板側コンタクトとが表面実装されて接合され、この接合により基板側ハウジングが基板に固定される。特に嵌合されたケーブル側ハウジングが基板側ハウジングから抜去される際、基板側ハウジングには基板から引き離される方向に比較的大きな外力が作用する場合がある。そこで特許文献1においては、このような場合であっても、基板から基板側ハウジング基板が外れないように補強用としての固定金具が、基板側コンタクトとは別に用いられている。この固定金具を基板上に形成された固定用端子に表面実装することで、基板側コンタクトと信号端子との接合力に固定金具と固定用端子との接合力が加わり、基板側ハウジングが一層強固に基板に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4328709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように基板側コンタクトとは別に固定金具を用いた構成においては、固定金具を製造するための製造設備および基板側ハウジングに固定金具を取り付ける組立工程が追加的に必要となり、その分だけ製造コストが増大するという課題があった。また、特許文献1の構成では、基板側ハウジングに固定金具を取り付ける部分を確保する必要があるため、固定金具の分だけ基板側ハウジングが大型化するという課題もあった。さらには、特許文献1の構成では、基板側コンタクトと固定金具とが別部品のため、これらを基板側ハウジングに取り付ける際に、基板側ハウジングからの突出量を揃えるように取り付けること(位置合わせ)が難しいという課題もあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基板側ハウジングを大型化させることなく且つ製造コストを抑えつつ、基板に強固に固定できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るコネクタ(例えば、実施形態における基板側コネクタ1)は、基板上に取り付けられるハウジング(例えば、実施形態における基板側ハウジング10)と、前記ハウジングに設けられて前記基板上の信号端子(例えば、実施形態における後側信号端子8、前側信号端子9)に表面実装されるコンタクト(例えば、実施形態における基板側コンタクト30)とを備えて構成され、相手側コンタクト(例えば、実施形態におけるケーブル側コンタクト70)を備える相手側ハウジング(例えば、実施形態におけるケーブル側ハウジング50)が前記ハウジングに嵌合されることで前記コンタクトと前記相手側コンタクトとが接触して電気接続されるコネクタであって、前記ハウジングは、嵌合された前記相手側ハウジングを受容するハウジング受容部を備え、前記コンタクトは、前記ハウジング受容部内に位置して、前記ハウジング受容部内に前記相手側ハウジングが受容されたときに前記相手側コンタクトと接触して電気接続される接続部(例えば、実施形態における前側基部31)と、前記接続部に繋がって前記ハウジングにおける前記基板に取り付けられる側に突出し、前記基板の信号端子に表面実装される複数の接合部(例えば、実施形態における前側接合部33、後側接合部38)とを備えたことを特徴とする。
【0008】
上述のコネクタにおいて、前記相手側ハウジングは、ケーブルの信号線と電気接続される前記相手側コンタクトを備えて構成され、前記ケーブルは、前記相手側ハウジングが前記ハウジング受容部に受容されたときに、前記基板の表面に沿う方向に延びて前記相手側ハウジングに取り付けられ、前記コンタクトは、前記ケーブルが延びる方向の両端部近傍に前記接合部を備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコネクタにおいては、ハウジングに設けられたコンタクトが基板上の信号端子に表面実装される複数の接合部を備えて構成される。そのため、例えば1ヶ所のみの接合部が形成されたコンタクトをハウジングに備えた構成のコネクタと比較して、複数の接合部のそれぞれが基板に接合されるので、固定金具を用いることなくコンタクトと基板との接合によりハウジングを基板に十分強固に固定可能になる。よって、固定金具が不要となることに伴ってハウジングを大型化させることなく且つ製造コストを抑えながらも、ハウジングを基板に強固に固定できる。また、各コンタクトに複数の接合部が形成されているので、例えば基板側コンタクトと固定金具とが別部品の構成と比較して、基板側ハウジングに対する接合部同士の突出量を揃える調整が容易となる。
【0010】
上述のコネクタにおいて、コンタクトはケーブルの延びる方向の両端部近傍に接合部を備えたことが好ましい。このように、ケーブルが接続された相手側ハウジングが抜去される場合、ハウジングにおいては特にケーブルの延びる方向の端部に外力が作用しやすい。そこで、コンタクトにおけるケーブルが延びる方向の両端部近傍に接合部を設けることで、この外力に効果的に抗することが可能になり、相手側ハウジングが抜去されときにおいても、基板からハウジングが外れないように保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)および(b)は、本発明を適用した基板側コネクタに、ケーブル側コネクタが嵌合された状態を示す斜視図である。
【図2】基板側コネクタにケーブル側コネクタが嵌合される前の状態を示す斜視図である。
【図3】基板側コネクタにケーブル側コネクタが嵌合される前の状態を示す斜視図である。
【図4】基板側ハウジングを示す図であって、(a)は平面図を、(b)は正面図を、(c)は底面図をそれぞれ示す。
【図5】(a)は図4中のV(a)−V(a)部分の断面図を、(b)は図4中のV(b)−V(b)部分の断面図を、(c)は図4中のV(c)−V(c)部分の断面図をそれぞれ示す。
【図6】基板側コンタクトを示す図であって、(a)は側面図を、(b)は正面図をそれぞれ示す。
【図7】ケーブル側ハウジングを示す図であって、(a)は平面図を、(b)は底面図を、(c)は背面図を、(d)は正面図をそれぞれ示す。
【図8】図7中のVIII−VIII部分の断面図を示す。
【図9】ケーブル側コンタクトを示す図であって、(a)は平面図を、(b)は側面図を、(c)は正面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照ながら、本発明の実施形態について説明する。説明の便宜上、各図面に示す矢印方向を前後、左右および上下と定義して説明を行う。本実施形態においては、ワイヤー・トゥ・ボード・コネクタを構成する一対の基板側コネクタ1およびケーブル側コネクタ2のうち、基板7に表面実装される基板側コネクタ1に本発明を適用した例について説明する。まず、基板側コネクタ1およびケーブル側コネクタ2の構成について説明する。
【0013】
基板側コネクタ1は、図1〜3に示すように、基板側ハウジング10と、基板側コンタクト30とから構成される。
【0014】
基板側ハウジング10は、絶縁性樹脂材料を用いて形成されており、図2および図4に示すように、略矩形平板状に形成された底部11Bと、底部11Bの前端部から上方に向けて立設された前壁部11Fと、底部11Bの左端部から上方に向けて立設された左壁部11Lと、底部11Bの右端部から上方に向けて立設された右壁部11Rとから構成される。基板側ハウジング10の内部には、これら底部11B、前壁部11F、左壁部11Lおよび右壁部11Rによって囲まれて上方および後方に向けて開口されたハウジング受容部12が形成される。このハウジング受容部12は、後述するケーブル側ハウジング50を上方から受容可能に構成されている。
【0015】
左壁部11Lおよび右壁部11Rの左右内面の前側部分には、左右内側に向けて突出して左右に弾性変形可能な左右一対の前側ロック部13が形成され、左壁部11Lおよび右壁部11Rの左右内面の後側部分には、左右内側に向けて突出して左右に弾性変形可能な左右一対の後側ロック部14が形成されている。前壁部11Fの後面における左壁部11L側にずれた位置に、前方に向けて凹んで上下に延びた誤挿入防止凹部15が形成されている。なお、左右一対の前側ロック部13間の左右間隔Aと、左右一対の後側ロック部14間の左右間隔Aとは略同一に構成されている(図5(a)および(b)参照)。
【0016】
基板側コンタクト30は、導電性を有した金属薄板を打ち抜き加工等することで製造され、図6(a)に示すように、前側に位置して略矩形平板状に形成された前側基部31と、この前側基部31の後側下部が後方に延びて形成された後側基部35とを主体に構成される。前側基部31の後側上部には、断面視略台形の導入部32が形成されている(図6(b)参照)。前側基部31の前端下部には、下方に突出した前側接合部33が形成されている。前側基部31の中央下部には、上方に向けて凹んだ前側インサート用凹部34が形成されている。後側基部35の前側上部には、下方に向けて凹んだ中央インサート用凹部36が形成されている。後側基部35の後側下部には、上方に向けて凹んだ後側インサート用凹部37が形成されている。後側基部35の後端下部には、下方に突出した後側接合部38が形成されている。
【0017】
ケーブル側コネクタ2は、図1〜3に示すように、ケーブル側ハウジング50と、ケーブル側コンタクト70とから構成される。
【0018】
ケーブル側ハウジング50は、絶縁性樹脂材料を用いて略直方体に形成されており、図2および図7に示すように、略矩形平板状に形成された底部51Bと、底部51Bの前端部から上方に向けて立設された前壁部51Fと、底部51Bの左端部から上方に向けて立設された左壁部51Lと、底部51Bの右端部から上方に向けて立設された右壁部51Rと、略矩形平板状に形成されて前壁部51F、左壁部51Lおよび右壁部51Rの上端部を繋ぐ上壁部51Tとから構成される。
【0019】
左壁部51Lおよび右壁部51Rの左右外面の前側部分には、左右外側に向けて突出した左右一対の前側ロック部53が形成され、左壁部51Lおよび右壁部51Rの左右外面の後側部分には、左右外側に向けて突出した左右一対の後側ロック部54が形成されている。前壁部51Fの前面における左壁部51L側にずれた位置に、前方に向けて突出した誤挿入防止突起55が形成されている。ここで、左右一対の前側ロック部53間の左右幅Bよりも、左右一対の後側ロック部54間の左右幅Cの方が僅かに大きくなるように構成されている(図7(b)参照)。
【0020】
このケーブル側ハウジング50の内部には、ケーブル90の本数に対応させて前後に貫通したコンタクト挿入部52が形成されている。上壁部51Tの前後方向における略中央部分には、各コンタクト挿入部52に連通する係止孔52aが開口形成され(図2および図8参照)、底部51Bにおける前端部分には各コンタクト挿入部52に連通するコンタクト受容部56が開口形成されている。また、図7(a)および図8に示すように、上壁部51Tにおけるコンタクト挿入部52に対応する部分には、略台形に形成されて上下に弾性変形可能な揺動片52bが設けられている。
【0021】
ケーブル側コンタクト70は、導電性を有した金属薄板を打ち抜きおよび曲げ加工等することで製造され、図9に示すように、前後に延びる略平板状に形成された基部71と、基部71の後側左右端部が斜め上方に折曲された被覆保持部72と、基部71の中央左右端部が斜め上方に折曲された信号線保持部73と、基部71の前側左右端部が基部71に対してほぼ直角に折曲されたコンタクト挟持部74と、コンタクト挟持部74の左右内側に突出して形成された接続部74aとを有して構成される。また、基部71には、下方に突出した係止部71aが形成されている。なお、このケーブル側コンタクト70と電気接続されるケーブル90は、信号伝達用の信号線(図示せず)の周囲が絶縁被覆(図示せず)で囲まれて形成される。
【0022】
次に、基板側コネクタ1の組立構成について説明する。
【0023】
絶縁性樹脂材料を用いて射出成形手段により基板側ハウジング10を成形する際に、基板側コンタクト30が一体的にインサート成形されて基板側コネクタ1が構成される。こうして基板側コネクタ1が構成されることで、基板側コンタクト30の前側接合部33および後側接合部38が基部11の下方に突出されるとともに、前側基部31(導入部32)がハウジング受容部12内に位置した状態で、基板側コンタクト30が基板側ハウジング10に固定される。
【0024】
このように、インサート成形により基板側コネクタ1が構成されるため、例えば基板側ハウジング10に基板側コンタクト30を圧入して基板側コネクタ1を構成する場合と比較して、基板側ハウジング10と基板側コンタクト30との間に隙間が形成されず、且つ基部11を構成する前壁部に前後に貫通する孔も形成されない。そのため、基板側コネクタ1を基板7に表面実装した後、基板側コネクタ1の周囲に封止剤を塗布するような使用形態においても、基板側ハウジング10の内側(ハウジング受容部12)に封止剤が侵入することがない。また、基板側ハウジング10と基板側コンタクト30との間に隙間がないので、基板側コネクタ1を基板7に表面実装する際にフラックスが前側基部31に到達することが防止され、フラックスの付着による接触不良等の発生を低減できる。
【0025】
さらに、図5(c)に示すように、インサート成形により基板側コンタクト30の前側インサート用凹部34、中央インサート用凹部36および後側インサート用凹部37に樹脂が入り込んで、基板側コンタクト30が基板側ハウジング10に固定される。そのため、基板側ハウジング10に基板側コンタクト30を圧入する場合と比較して、基板側コンタクト30が基部11に強固に固定される。
【0026】
上述のようにして構成された基板側コネクタ1は、図2に示すように基板7に表面実装される。このとき、基板7上には、前側接合部33に対応させた前側信号端子9と、後側接合部38に対応させた後側信号端子8とが露出して形成されており、前側接合部33が前側信号端子9に接合されるとともに後側接合部38が後側信号端子8に接合される。このように、各基板側コンタクト30において前側接合部33および後側接合部38の2箇所が基板7に接合されるので、例えば固定金具を用いることなく基板7に対する基板側コネクタ1の取付強度を確保できる。
【0027】
次に、ケーブル側コネクタ2の組立構成について説明する。
【0028】
まず、ケーブル90の端部の被覆が除去されて信号線が露出され、この部分にケーブル側コンタクト70が取り付けられる。具体的には、ケーブル側コンタクト70の基部71上にケーブル90の端部が載置され、その状態で被覆保持部72が左右内側に折曲されることで被覆保持部72によりケーブル90の被覆が保持され、且つ信号線保持部73が左右内側に折曲されることで信号線保持部73によりケーブル90の信号線が保持される。このようにして、ケーブル側コンタクト70がケーブル90に取り付けられて電気接続される。
【0029】
続いて、端部にケーブル側コンタクト70が取り付けられたケーブル90を、ケーブル側ハウジング50に取り付ける。このとき、係止部71aが上側に位置する向きで、ケーブル側コンタクト70をケーブル側ハウジング50のコンタクト挿入部52に後方から挿入する。そうすることで、係止部71aにより揺動片52bが弾性的に上方に押し上げられた状態で、ケーブル側コンタクト70がコンタクト挿入部52内に挿入される。係止部71aが係止孔52aの位置に到達すると、揺動片52bが下方に弾性変形して元の状態に戻り(図8参照)、係止部71aが係止孔52a内に入り込んで前後方向に係止される。このようにして、ケーブル側コンタクト70のコンタクト挟持部74および接続部74aが、コンタクト受容部56を介して下方に露出された状態となる。
【0030】
次に、基板7に表面実装された基板側コネクタ1にケーブル側コネクタ2を嵌合させるときの作用について説明する。
【0031】
図2および図3に示すように、ケーブル側コネクタ2を基板側コネクタ1の上方から嵌合させて、ケーブル側ハウジング50を基板側ハウジング10のハウジング受容部12内に受容させる。このとき、ケーブル側ハウジング50の前側ロック部53により基板側ハウジング10の前側ロック部13が左右外側に押圧されて弾性変形することで、前側ロック部53が前側ロック部13を乗り越えて前側ロック部53の下側に達し、前側ロック部13に前側ロック部53が係合される。同様に、ケーブル側ハウジング50の後側ロック部54により基板側ハウジング10の後側ロック部14が左右外側に押圧されて弾性変形することで、後側ロック部54が後側ロック部14を乗り越えて後側ロック部54の下側に達し、後側ロック部14に後側ロック部54が係合される。このようにして、基板側コネクタ1に対してケーブル側ハウジング50が上方に抜けないように保持される。
【0032】
また、ケーブル側ハウジング50が、図2および図3に示す向きにおいては、基板側コネクタ1にケーブル側コネクタ2を嵌合させる際に、誤挿入防止突起55が前壁部11Fに干渉することなくそのまま誤挿入防止凹部15に受容される。一方、図2および図3に示す向きに対して上下が逆となるように反転された向きでは、誤挿入防止突起55が前壁部11Fに干渉するので、このような誤った向きでの嵌合を確実に防止できる。
【0033】
上述のようにして、ケーブル側ハウジング50が基板側ハウジング10のハウジング受容部12内に受容されると、基板側コンタクト30の前側基部31がケーブル側コンタクト70のコンタクト挟持部74により左右から挟持されるとともに、前側基部31の左右側面に接続部74aが押し付けられる。このとき、前側基部31の後側上部に導入部32が形成されているので、接続部74aが前側基部31の上端部に引っ掛かることなくスムーズに挟持される。このようにして、前側基部31の左右側面に接続部74aが押し付けられることで、基板側コンタクト30およびケーブル側コンタクト70を介して、ケーブル90(ケーブル90の信号線)と基板7上の信号端子8,9とが電気接続される。
【0034】
次に、基板7に表面実装された基板側コネクタ1からケーブル側コネクタ2を抜去させるときに作用について説明する。
【0035】
例えば基板側コネクタ1およびケーブル側コネクタ2が、直接指で掴むことが困難な程度に小型に構成されている場合には、ケーブル90を掴んで上方に引き上げることで、基板側コネクタ1からケーブル側コネクタ2を抜去させる。そうすることで、後側ロック部54と後側ロック部14との係合が解除された後で、前側ロック部53と前側ロック部13との係合が解除されて、基板側コネクタ1からケーブル側コネクタ2が抜去される。このとき、上述したように、後側ロック部54間の左右幅Cよりも前側ロック部53間の左右幅Bの方が小さくなるように構成されているので、後側ロック部54と比較して前側ロック部53の方が簡単に解除できるようになっている。そのため、ケーブル側コネクタ2の後部(後側ロック部54近傍)がハウジング受容部12内から上方に抜け、一方で、ケーブル側コネクタ2の前部(前側ロック部53近傍)がハウジング受容部12内に位置した状態から、比較的簡単に前側ロック部53と前側ロック部13との係合を解除してケーブル側コネクタ2を抜去することができる。
【0036】
後側ロック部54と後側ロック部14との係合の解除については、前側ロック部53と前側ロック部13との係合の解除に要する力よりも大きな力が必要なので、例えば不意にケーブル90に外力が作用した場合であっても、基板側コネクタ1からケーブル側コネクタ2が簡単に抜去されることを防止できる。
【0037】
以上の説明から分かるように、基板側コネクタ1からケーブル側コネクタ2を抜去するとき、特に底部11Bの後側部分に基板7から基板側コネクタ1を引き離そうとする外力が作用しやすい。そこで、本発明を適用した基板側コネクタ1においては、基板側コンタクト30が前側接合部33に加えて後側接合部38においても(ケーブル90の延在方向両端部において)基板7と接合される構成となっている。そのため、固定金具を用いることなく基板7から基板側コネクタ1を引き離そうとする外力に抗して、基板側コネクタ1を基板7に保持することができる。
【0038】
このように、固定金具を用いることなく基板7から基板側コネクタ1が外れないように保持できるので、固定金具を用いる構成と比較して製造コストを低減できるとともに、固定金具をハウジングに取り付ける工程も不要となり、工数を減らすことで作業効率を向上させることも低減できる。また、固定金具を用いる場合と比較して、基板側ハウジング10に固定金具を取り付ける部分を設ける必要がなく、その分だけ基板側ハウジング10を小型化することが可能になる。また、従来の基板側コンタクトとは別に固定金具を用いる構成の場合、基板側ハウジングに対する接合部同士の突出量を揃えるためには、基板側ハウジングに対して基板側コンタクトの取付位置と固定金具の取付位置とを個別に調整しなければならず、この調整が難しかった。これに対し基板側コネクタ1においては、各基板側コンタクト30に複数の接合部33,38が形成されているので、基板側ハウジング10に対する基板側コンタクト30の取付位置を調整するだけで、基板側ハウジング10に対する接合部33,38の突出量を比較的容易に調整できる。
【0039】
上述したケーブル側ハウジング50の別形態として、例えば図7(a)および図7(d)に2点鎖線で示すように、左壁部51Lおよび右壁部51Rの左右外面に左右側方に突出する引っ掛け用突起59を設ける構成も可能である。こうすることで、ケーブル側コネクタ2を抜去する際にケーブル90を掴んで上方に引き上げる代わりに、基板側コネクタ1の左右に突出したこの引っ掛け用突起59に爪や指を引っ掛けてケーブル側コネクタ2を抜去することが可能になる。このため、ケーブル90とケーブル側コンタクト70との接続部分に作用する外力を抑えることが可能になり、ケーブル側コンタクト70とケーブル90との間での接続不良を低減できる。この引っ掛け用突起59を設ける構成は、基板側コネクタ1およびケーブル側ハウジング50自体が小さく構成されて、ケーブル90以外に掴む部分がないような場合に特に有効である。
【0040】
さらに、ケーブル側ハウジング50の別形態として、例えば図7(a)および図7(d)に2点鎖線で示すように、上壁部51Tの後端部から後方に突出する庇部58を設ける構成も可能である。こうすることで、ケーブル90を掴んで上方に引き上げてケーブル側コネクタ2を抜去する際に、ケーブル90とケーブル側コンタクト70との接続部分に作用する外力を低減でき、ケーブル側コンタクト70とケーブル90との間での接続不良を低減できる。なお、この庇部58の左右端部に、左右外側に突出させた引っ掛け用突起59を設ける構成も可能である。
【0041】
上述の実施形態において、4つのケーブル90を基板7に電気接続させる基板側コネクタ1を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して適用されるものではない。例えば1つのケーブル90を基板7に電気接続する基板側コネクタや、2つ以上のケーブル90を基板7に電気接続させる基板側コネクタにも本発明を適用可能である。
【0042】
上述の実施形態では、基板側コンタクト30の前後両端部近傍に接合部33,38を設けた構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して解釈されるものではない。例えば、接合部33,38の間に1つまたは複数の接合部を追加して設ける構成も可能である。このように接合部を追加して設けることで、基板側コネクタ1を基板7に一層強固に固定できる。また、基板側ハウジングの形状等に応じて、基板側コンタクト30における接合部を設ける位置は任意に変更可能である。例えば2つの接合部のうち一方を基板側コンタクト30の後端部近傍に設け、他方を前後方向における中央近傍に設ける構成も可能である。
【0043】
また、上述の実施形態において、ワイヤー・トゥ・ボード・コネクタを構成する一対のコネクタのうちの基板7に表面実装される基板側コネクタ1に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定して適用されるものではない。例えば、基板と基板とを電気接続するいわゆるボード・トゥ・ボード・コネクタを構成する一対のコネクタの一方または両方に、本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板側コネクタ(コネクタ)
7 基板
8 後側信号端子(信号端子)
9 前側信号端子(信号端子)
10 基板側ハウジング(ハウジング)
12 ハウジング受容部
30 基板側コンタクト(コンタクト)
31 前側基部(接続部)
33 前側接合部(接合部)
38 後側接合部(接合部)
50 ケーブル側ハウジング(相手側ハウジング)
70 ケーブル側コンタクト(相手側コンタクト)
90 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに設けられて前記基板上の信号端子に表面実装されるコンタクトとを備えて構成され、相手側コンタクトを備える相手側ハウジングが前記ハウジングに嵌合されることで前記コンタクトと前記相手側コンタクトとが接触して電気接続されるコネクタであって、
前記ハウジングは、嵌合された前記相手側ハウジングを受容するハウジング受容部を備え、
前記コンタクトは、
前記ハウジング受容部内に位置して、前記ハウジング受容部内に前記相手側ハウジングが受容されたときに前記相手側コンタクトと接触して電気接続される接続部と、
前記接続部に繋がって前記ハウジングにおける前記基板に取り付けられる側に突出し、前記基板の信号端子に表面実装される複数の接合部とを備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記相手側ハウジングは、ケーブルの信号線と電気接続される前記相手側コンタクトを備えて構成され、
前記ケーブルは、前記相手側ハウジングが前記ハウジング受容部に受容されたときに、前記基板の表面に沿う方向に延びて前記相手側ハウジングに取り付けられ、
前記コンタクトは、前記ケーブルが延びる方向の両端部近傍に前記接合部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51132(P2013−51132A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188594(P2011−188594)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000105338)ケル株式会社 (51)
【Fターム(参考)】