説明

コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからのコハク酸の精製

本発明は、コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからのコハク酸の精製法に関する。本発明に記載のコハク酸の精製法は、発酵ブロス中のコハク酸アンモニウムを分解するためのイオン交換樹脂の使用を含む。カチオン性イオン交換樹脂に発酵ブロスを通過させる間、コハク酸アンモニウムがアンモニウムカチオンおよびコハク酸アニオンに分解する。樹脂表面上のプロトンはアンモニウムイオンと交換され、コハク酸アニオンは、イオン交換樹脂から遊離されたプロトンでコハク酸に還元される。結合したアンモニウムは、強酸、例えば、硫酸の添加によって樹脂から遊離され、それにより、イオン交換樹脂は次の使用のために再生される。該方法の再生工程から生じる硫酸アンモニウム副産物は、肥料の供給源として使用することができる。コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を分離する該方法は、また、アニオン性イオン交換樹脂を用いて実施することもでき、ここで、コハク酸塩アニオは、イオン交換樹脂の表面に保持され、次いで、再生工程の間にイオン交換樹脂から遊離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第61/335,189(2009年12月31日出願)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発酵プロセス技術の改善を伴う微生物生物化学的経路における遺伝学的操作を行う能力の進歩は、農業および林業の再生可能原料を用いて、商業的に有意な量のコハク酸を生産することを可能にした。コハク酸を生産するように操作された微生物の全ては、狭いpH範囲内で最大の生産性を達成する。そのため、コハク酸の発酵生産の間の発酵培地のpHは、培地のpH低下をある種の中和性塩基化合物の添加によって埋め合わせる手段によって、ほぼ中性pHに維持される。このことは、コハク酸の塩基性塩の形態において、発酵培地中におけるコハク酸の蓄積をもたらす。かくして、使用される中和性塩基の性質に依存して、コハク酸は、コハク酸ナトリウムまたはカリウムまたはカルシウムまたはアンモニウムとして発酵培地中に蓄積する。したがって、発酵ブロスのさらに下流の処理では、コハク酸の塩基性塩を含有する発酵ブロスから純粋なコハク酸を抽出することが必要となる。中和剤の遊離と共に発酵ブロスからコハク酸を回収する下流処理方法は、商業的に成功した方法におけるコハク酸製造において望ましい。
【0003】
沈澱、蒸気蒸留、液−液抽出、向流抽出、エステル化、ならびに電気透析および抽出の組み合わせを包含する発酵ブロスから有機酸を精製するためのいくつかの異なるアプローチが追求された。一般に、発酵ブロスは、コハク酸を回収するためのいずれかの特定のプロセスに付す前に、マイクロろ過および限外ろ過に付して細胞残屑を除去する。
【0004】
コハク酸の塩基性塩を含有する発酵ブロスからのコハク酸の回収のための多くの方法が報告された。発酵ブロスからのコハク酸の回収のためのこれらの既知のプロセスは全て、商業規模において発酵ブロスからコハク酸を生産するには、冗長で費用がかかることが分かっている。
【0005】
Michigan Biotechnology Instituteに譲渡された米国特許第5,034,105号は、コハク酸ナトリウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を調製するプロセスを提供する。該プロセスは、該ブロスを通常の電気透析に付して、水性であるが不飽和のコハク酸塩溶液を調製し、該不飽和コハク酸塩溶液を水分解電気透析に付して過飽和コハク酸溶液を生産し、次いで、該過飽和溶液からコハク酸を結晶化する工程を含む。該プロセスのこの20年間の存在における商業的活用の欠如によって証明されるように、該プロセスは、大規模な発酵ブロスからのコハク酸の精製に適さない。
【0006】
Applied CarboChemicalsに譲渡された米国特許第5,958,744号よび第6,265,190号は、コハク酸カルシウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収するための方法を提供する。該方法によれば、発酵ブロスを硫酸の添加によって酸性化する。該酸性化プロセスの結果として、コハク酸アニオンがコハク酸カルシウムから遊離し、プロトン付加し、得られたコハク酸が発酵ブロスから沈澱する。得られた沈殿物をろ過し、アルコールで洗浄してコハク酸を得る。かくして生産されたコハク酸が必要な純度を満足するかどうかは分かっていない。さらに、硫酸カルシウム(石膏)の処分には、環境上の問題がある。
【0007】
Roquette Freresに譲渡された近年公開された米国特許出願公開第2010/0297715号は、コハク酸マグネシウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を分離および精製するプロセスを記載する。該公開特許出願に記載される分離プロセスは、煩雑で費用がかかる。該分離プロセスは、再利用目的で試薬を回収するために、双極性電気透析、蒸発結晶化、および高温処理を含む。発酵ブロスからのコハク酸の回収に含まれるこれらのプロセス工程の結果として、商業規模での該プロセスを用いるコハク酸の生産コストは、非常に効果になる。
【0008】
BASFに譲渡された近年の米国特許出願公開第2009/0137825号は、発酵ブロスからコハク酸をエステル化するための反応性蒸留プロセスを開示している。しかしながら、該特許出願公報は、発酵ブロスからコハク酸を回収するための、実行に移された実際的な方法を提供しない。
【0009】
また、イオン交換樹脂を含むプロセスを用いて発酵ブロスからカルボン酸を回収するために、多くの努力がなされた。イオン交換樹脂は、カルボン酸塩を含む発酵ブロスからのカルボン酸の分離において、2つの異なる方法で使用される。1つの方法によると、イオン交換樹脂は、イオン排除モードで使用される。また別の方法において、イオン交換樹脂は、発酵ブロス中のカルボン酸の塩と化学的に相互作用して、該カルボン酸塩からの該カルボン酸の分離を達成する。1つ目の方法は、イオン排除クロマトグラフィーと称され、2つ目の方法は、イオン交換クロマトグラフィーとして知られている。
【0010】
米国特許第5,132,456号は、水性原料からカルボン酸を回収するための方法を提供し、ここに、該カルボン酸はまず、塩基性固形吸着剤または中程度に塩基性のイオン交換樹脂上に吸着され、次いで、それを、アルキルアンモニウムまたはカルボン酸アンモニウム(それは、所望のカルボン酸およびアルキルアミン又はアンモニアに分解される)の形成を導く水性アルキルアミンまたはアンモニアで処理することによって、該吸着剤から遊離される。
【0011】
米国特許第5,143,834号は、脱塩性電気分解および水分解性電気分解を用いて発酵ブロスからコハク酸を回収し、次いで、いずれかのナトリウムまたは他のカチオンを除去するための強酸性イオン交換体およびいずれかの硫酸イオンまたは硫酸を除去するための遊離塩基形態の弱塩基性イオン交換体を用いて、高度精製コハク酸生成物を得るための方法を提供する。
【0012】
米国特許第5,168,055号は、コハク酸カルシウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収するための方法を提供する。第1段階において、発酵ブロスを酸性化して、コハク酸カルシウムからコハク酸を遊離する。かくして遊離されたコハク酸を強酸性イオン交換樹脂および弱塩基性イオン交換体に通して、高度精製コハク酸生成物を得る。カチオン交換体を通過中に、カルシウムおよび他のカチオンが除去される。続くアニオン交換樹脂を含有する第2のカラムの通過中、アニオン性不純物、例えば、硫酸塩および他の窒素含有不純物が除去される。
【0013】
米国特許第5,641,406号は、強酸性カチオン交換樹脂上のイオン交換クロマトグラフィーによって、乳酸塩を含有する発酵液から純粋な乳酸を抽出するための方法を提供する。該方法の第1段階において、H形態における弱酸性カチオン交換体を含有する1以上の「予備的カラム」における真のイオン交換の手段によって、乳酸塩を遊離酸に変換する。該方法の第2段階において、1以上の「分離カラム」における強酸性イオン交換樹脂を用いることによって、発酵溶液中に存在する炭水化物および他の不純物から該遊離乳酸を分離する。該プロセスは、50℃より高温、好ましくは70℃〜80℃で実施する。
【0014】
米国特許第5,068,418号および第5,068,419号は、第3級アミンまたはピリジン官能基を有する水不溶性マクロ網状またはゲル型の弱塩基性アニオン交換樹脂あるいは第4級アミン官能基を有する強塩基性アニオン交換樹脂を含む吸着剤を用いる、発酵ブロスからの有機酸の分離方法を提供する。有機酸は、水または硫酸のような希釈無機酸を用いて、イオン交換樹脂から脱着される。
【0015】
米国特許第5,786,185号は、乳酸を生産するための改善された発酵プロセスを提供する。該プロセスによると、遊離乳酸を含む発酵ブロスを、有効量のピリジン基を含有する固相ポリマーと接触させて、該乳酸を蓄積させながら吸着させ、処理した液体発酵ブロスを発酵容器に戻す。
【0016】
米国特許第6,160,173号は、乳酸および乳酸塩混合物を含むフィード溶液から乳酸を回収するための、水と非混和性のアニオン交換体の使用を記載する。第1工程において、フィード溶液をアニオン交換体と接触させ、アニオン交換体−乳酸付加物を形成させる。該アニオン交換体−乳酸付加物から、縮合反応により、乳酸エステルまたはアミンを生産する。
【0017】
Roquette Freresに譲渡された米国特許第6,280,985号は、カチオン交換樹脂を用いるイオン排除クロマトグラフィーを用いて、発酵ブロスから乳酸を分離および精製する方法を開示する。該方法は、カチオン交換樹脂によるクロマトグラフィー分離のほかに、いくつかの単位操作を含む。かくして、元々の発酵ブロスを第1段階で濃縮し、次いで、濃縮酸で酸性化して、85/15の遊離乳酸/乳酸アンモニウム比に達する。該酸性化ブロスを、少なくとも4%のジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸型のカチオン交換樹脂に通して、最大25%の乳酸塩を有するフラクションを得る。発酵ブロス中の消費されない糖類およびタンパク質などの不純物ならびにいずれかの解離された乳酸塩に対応する多価イオンカルシウム、マグネシウムおよびいずれかの塩基を有する型の無機酸塩は、水での溶出によって最初のフラクションにおいて除去される。次のフラクションは、遊離形態の乳酸および元々の発酵ブロス中に存在する多くとも25%(乾重量)の乳酸塩を含有する。該フラクションをさらに双極性分留電気透析に付して、精製された濃乳酸を得る。
【0018】
米国特許第6,284,904号は、アニオン交換クロマトグラフィーを用いる有機酸の精製法を開示し、ここに、コハク酸などの有機酸がアニオン樹脂に結合され、次いで、該有機酸を強塩基性アニオン溶液または該アニオン樹脂に結合した有機酸よりも低いpKaを有する酸で置換する。
【0019】
米国特許第6,319,382号は、乳酸アンモニウムを含有する発酵ブロスから乳酸を回収する方法を教示し、ここに、該方法は、ナノろ過、主としてカルシウムおよびマグネシウムなどの二価のカチオンを除去するキレート樹脂を用いるイオン交換、および最終的な2段階電気透析手法の工程を含む。
【0020】
米国特許第7,238,837号は、カチオン交換樹脂を用いる方法による乳酸ナトリウムの乳酸への変換効率56%で、乳酸塩を含有する水性溶液から乳酸を回収する方法を提供する。
【0021】
米国特許第7,439,392号は、水不溶性のマクロ網状またはゲル状の、第4級または第3級アミン官能基を有する強または弱塩基性アニオン交換体樹脂、架橋アクリルまたはスチレン樹脂マトリックスを有するアニオン交換樹脂、および水または希硫酸を含む脱着物質を用いることによって、発酵ブロスからクエン酸を分離する方法を提供する。フィード(feed)のpHは、クエン酸の最初のイオン化定数(pKa1)よりも低く維持されて、選択性を維持する。
【0022】
米国特許出願公開第2006/0276674号は、発酵ブロスからコハク酸を精製する方法を記載する。該方法によれば、ある特定量のH型強酸性カチオン交換樹脂を用いるイオン交換と、高収率で高純度のコハク酸を生産するための結晶化工程を組み合わせることによって、コハク酸含有液中の不純物を効率良く除去することができた。
【0023】
特許協力条約のもとに公開された国際出願第WO 2007/040458号は、乳酸を含有する発酵ブロスから乳酸を回収するプロセスにおいて、イオン交換樹脂を用いてカチオン性およびアニオン性不純物を除去する方法を提供する。アンモニウムイオンは、強カチオン交換樹脂を用いて除去され、アニオン交換樹脂は硫酸塩不純物を除去するために使用された。
【0024】
特許協力条約のもとに公開され、Amylum Belgiumに譲渡された国際特許出願第W0 98/30712号は、カチオン交換樹脂を用いてアスパラギン酸アンモニウムから結晶性アスパラギン酸を回収する方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
今までに試験された発酵ブロスから有機酸を回収するための種々の方法には制限があり、かくして、改良の機会を提供する。したがって、本発明の目的は、コハク酸アンモニウムを含む発酵ブロスからコハク酸を回収するための、商業上実行可能な方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コハク酸下流回収プロセスのためのブロックフロー図。発酵ブロスをマイクロろ過および限外ろ過に付した後、連続イオン交換(CIX)プロセスに付す。連続イオン交換プロセス由来のコハク酸フラクション(SAC)は、限外ろ過/洗練(polishing)工程に付した後、蒸発および続く結晶化工程に付して、結晶形態のコハク酸を回収する。連続イオン交換プロセス由来の硫酸アンモニウム(AMS)フラクションは、蒸発プロセスに付して、硫酸アンモニウム結晶を回収する。
【0027】
【図2】カチオンイオン交換樹脂の表面上でのカチオン交換およびコハク酸アンモニウムからコハク酸への変換を表す概略図。カチオン交換樹脂の表面で、コハク酸アンモニウムはコハク酸アニオンおよびアンモニウムカチオンに分解される。カチオン交換樹脂からプロトンが遊離すると共に、アンモニウムカチオンがカチオン交換樹脂の表面のプロトンと交換される。かくして遊離されたプロトンは、コハク酸アニオンと結合し、コハク酸の形成をもたらす。
【0028】
【図3】硫酸アンモニウムを生産するためのHSOを用いるカチオン交換樹脂の再生を表す概略図。コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収するためのプロセスの第1工程において、該発酵ブロスをカチオン交換樹脂と接触させる。コハク酸アンモニウムがカチオン交換樹脂上で分解され、得られたアンモニウムカチオンがカチオン交換樹脂の表面上のプロトンと交換される。硫酸などの強酸を用いる第2の再生工程において、カチオン交換樹脂表面に結合したアンモニウムが遊離される。該硫酸処理により、該樹脂の表面におけるアンモニウムイオンがプロトンと交換される。かくして樹脂表面から遊離されたアンモニウムイオンは、硫酸の解離から生じる硫酸イオンと結合し、硫酸アンモニウムの形成を導く。
【0029】
【図4】コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスの清浄化のためのスキーム。使用される略語:P=フィード圧、PIN=インレット膜圧、POUT=アウトレット膜圧(Pに近い)、PPERM=通過圧(バルブ開口によって調節される)、DP=PIN−POUT:圧力低下(約1.5バール)、TMP=(PIN+POUT)/2−PPERM:膜通過圧
【0030】
【図5】Dowex G−26 H樹脂を含有するクロマトグラフィーカラム上のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスのクロマトグラフィープロフィール。カチオン性イオン交換樹脂の再生は、5%(w/w)HSOを用いて行った。フィード流の導入の時点、ならびに低速リンス、高速リンス、逆洗および硫酸添加の時点は、時間(分)を示すX軸上の下向きの矢印によって示される。Y軸上には、クロマトグラフィーカラムから出てくる試料の屈折率の値を示す。該実験において得られた溶出プロフィールにおいて、2つの明確なピークが見られる。第1のピークにおいて、2つの異なるサブピークを容易に認めることができた。平らな第1のサブピークは、コハク酸の溶出に対応する。第1のサブピークよりも高い第2のサブピークは、該カラムから出てくる解離していないコハク酸アンモニウムフラクションに対応する。該図において部分的にのみ現れた第2のピークは、硫酸アンモニウムフラクションに対応する。
【0031】
【図6】Dowex G−26 H樹脂を含有するクロマトグラフィーカラム上のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスのクロマトグラフィープロフィール。カチオン性イオン交換樹脂の再生は、10%(w/w)HSOを用いて行った。フィード流の導入の時点、ならびに低速リンス、高速リンス、逆洗および硫酸添加の時点は、時間(分)を示すX軸上の下向きの矢印によって示される。Y軸上には、クロマトグラフィーカラムから出てくる試料の屈折率の値を示す。平らな第1のサブピークは、コハク酸の溶出に対応する。第1のサブピークよりも高い第2のサブピークは、該カラムから出てくる解離していないコハク酸アンモニウムフラクションに対応する。該図において完全にのみ現れた第2のピークは、硫酸アンモニウムフラクションに対応する。
【0032】
【図7】Dowex G−26 H樹脂を含有するクロマトグラフィーカラム上のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスのクロマトグラフィープロフィール。カチオン性イオン交換樹脂の再生は、10%(w/w)HSOを用いて行った。図には、次の分析のために収集された5つの異なるクロマトグラフィーフラクションに対応するクロマトグラムの部分が示される。
【0033】
【図8】Lanxess S100 Hカチオン樹脂を含有するクロマトグラフィーカラム上のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスの複数のクロマトグラフィープロフィール。カチオン性イオン交換樹脂の再生は、10%(w/w)HSOを用いて行った。表5に示される異なるフィード容量を用いる実験1、2、3、4、5および6から、6つの異なるクロマトグラフィープロフィールが得られた。低速リンスおよび高速リンスは、1カラム容量の脱イオン水で行った。2カラム容量の10%(w/w)硫酸を用いて樹脂を再生し、次いで、3カラム容量の脱イオン水を低速リンスモードで添加し、6カラム容量の脱イオン水を高速リンスモードで添加した。
【0034】
【図9】Lanxess S100 Hカチオン樹脂を含有するクロマトグラフィーカラム上のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスの複数のクロマトグラフィープロフィール。カチオン性イオン交換樹脂の再生は、10%(w/w)HSOを用いて行った。1.5カラム容量のフィードをカラム上に負荷した。低速リンスおよび高速リンスを1カラム容量の脱イオン水で行った。2カラム容量の10%(w/w)硫酸を用いて樹脂を再生し、次いで、3カラム容量の流体を低速リンスモードで添加し、6カラム容量の脱イオン水を高速リンスモードで添加した。
【0035】
【図10】コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからのコハク酸の分離のためのアニオン性イオン交換樹脂を用いる連続イオン交換クロマトグラフィーのためのモジュール。連続イオン交換シークエンスは、アニオン性樹脂(各0.4L)を満たした10個のカラム上で行う。パイロットを4つの領域に分け、各々、1〜3個のカラムから構成される。図に示されるように、各シークエンスを2工程に分ける。コハク酸塩はアニオン性樹脂上に捕捉され、酸再生の間に遊離される。再生は、並流モードで行われた。硫酸アンモニウムは、ラフィネート中に回収され、コハク酸は抽出物中に回収される。連続イオン交換プロセスは、イオン交換カラム中にコハク酸が結晶化するのを回避するために、試験の間、50℃で行われる。
【0036】
【図11】コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスから回収されたコハク酸を用いるナノろ過プロセスのための通過流速。X軸に容量濃度因子(volumetric concentration factor)を示し、Y軸に流速(L/m/時間)および温度を示す。
【0037】
【図12】コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスから得られたコハク酸の結晶化のための冷却プロフィール。コハク酸を85℃で420g/Lまで濃縮した。結晶化は、純粋なコハク酸種結晶(80μm)を用いて開始された。85℃から20℃への温度遷移は20時間で達成された。
【0038】
【図13】アニオン性イオン交換樹脂を用いる連続イオン交換クロマトグラフィー装置から得られたコハク酸結晶の走査電子顕微鏡写真。ナノろ過を含む洗練工程を用いることなく得られた結晶の走査電子顕微鏡写真を左に示す。ナノろ過を含む洗練工程後に得られた結晶の走査電子顕微鏡写真を右図に示す。
【0039】
【図14】コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスを含むイオン交換クロマトグラフィープロセスから回収された硫酸アンモニウム結晶の走査電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の概要
本発明の目的は、コハク酸の中性塩の形態で2〜10%のコハク酸を含有する発酵ブロスから少なくとも90%(w/w)のコハク酸を回収することにある。かくして回収されたコハク酸は、白色結晶の外観を有し、99.5%(w/w)以上の純度を有する。コハク酸フラクション中の好ましい硫酸塩濃度は、100ppmより低い。本発明の方法によって得られたコハク酸フラクション中の最も好ましい硫酸塩濃度は、30ppmより低い。本発明は、発酵ブロス中に存在するコハク酸のアンモニウム塩からコハク酸を調製する方法を提供する。本発明の方法は、商業上有意な量の純粋な形態のコハク酸の回収において、イオン交換樹脂の使用を含む。本発明は、コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収する方法を詳細に記載するが、生物学的原料から有機酸を生産する分野における当業者は、本発明のクロマトグラフィープロセスを、コハク酸アンモニウム以外の塩形態のコハク酸を含有する発酵ブロスからのコハク酸の回収に、ならびに、発酵ブロスからいずれか他の有機酸塩の商業上有意な量で、費用効率の高い方法での回収において応用することができる。
【0041】
本発明において、イオン交換樹脂は、発酵ブロス中に存在するコハク酸アンモニウムからコハク酸を遊離する目的で、塩分解反応を仲介するために使用される。本発明による塩分解反応は、アニオン性またはカチオン性イオン交換樹脂のいずれかを用いて達成することができる。
【0042】
本発明の一の態様において、コハク酸アンモニウムを含有する溶液からコハク酸を精製するためのイオン交換プロセスは、カチオン性イオン交換樹脂を使用する。コハク酸アンモニウムを含有する水性溶液からカチオン性イオン交換樹脂を用いてコハク酸を精製するためのプロセスは、(a)コハク酸のアンモニウム塩を含む水性溶液を提供し、(b)カチオン性イオン交換樹脂をコハク酸のアンモニウム塩を含む水性溶液と接触させ、(c)水性溶液中、コハク酸のアンモニウム塩をコハク酸およびアンモニウムカチオンに変換し、(d)該水性溶液から該アンモニウムカチオンを分離し、それにより、水性溶液中にコハク酸を残存させ、(e)水性溶液中のコハク酸を回収することを含む。カチオン性イオン交換樹脂との接触において、コハク酸アンモニウムは、アンモニウムイオンおよびコハク酸イオンに分解される。かくして塩分解反応から生じたアンモニウムイオンは、カチオン性樹脂の表面に結合し、それにより、カチオン性イオン交換樹脂はアンモニウム塩形態に変換される。次いで、塩酸または硫酸などの強酸で洗浄することによって、アンモニウム塩形態におけるカチオン性イオン交換樹脂は、その元の形態に再生される。カチオン性イオン交換樹脂の再生工程から得られるアンモニウム塩は、商業的な使用に置くことができ、または発酵プロセスに再利用することができる。コハク酸アンモニウムを含有する水性溶液からのコハク酸の分離に関する最大効率を達成するために、カチオン性イオン交換樹脂を用いる従来のカラムクロマトグラフィーを含むバッチプロセスよりも、カチオン性イオン交換樹脂を用いる連続的プロセスが好ましい。
【0043】
本発明のまた別の具体例において、アニオン性イオン交換樹脂の使用に基づくイオン交換プロセスを用いて、コハク酸アンモニウムを含有する水性溶液からコハク酸を回収する。カチオン性イオン交換樹脂を含むイオン交換クロマトグラフィーの場合と同様に、アニオン性イオン交換樹脂を用いるコハク酸アンモニウムを含有する水性溶液からのコハク酸の精製は、塩分解反応を含む。コハク酸アンモニウムは、アニオン性イオン交換樹脂の表面で、アンモニウムカチオンおよびコハク酸アニオンに分解され、かくして生産されたコハク酸アニオンは、該樹脂の表面のアニオン種と交換される。かくして、コハク酸アニオンは、樹脂の表面に捕捉され、一方、アニオン性イオン交換樹脂から遊離したアニオンは、アンモニウムカチオンと結合して、水性溶液中の元のコハク酸アンモニウムの代わりに新規なアンモニウム塩を生成する。新たに形成されたアンモニウム塩は、ラフィネートフラクションにおいて、イオン交換カラムから溶出される。アニオン性イオン交換樹脂に結合したコハク酸イオンは、次いで、強無機酸の添加により、イオン交換樹脂から遊離される。強無機酸を含む該洗浄工程は、イオン交換樹脂からコハク酸を遊離するほか、アニオン性イオン交換樹脂をその元の形態に再生し、その結果、コハク酸アンモニウムを含有する新規な水性溶液の添加によって、塩分解反応をもう一度仲介することができる。
【0044】
コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収するためのイオン交換プロセスは、バッチモードまたは連続モードのいずれかで操作される。連続モードにおける該イオン交換プロセスの操作は、バッチモードより好ましい。
【0045】
コハク酸の回収を改善するために、イオン交換樹脂を含む該連続またはバッチプロセスにおいて使用される発酵ブロスを、いずれかの方法におけるイオン交換プロセスにおいて使用する前に処理してもよい。本発明の一の態様において、発酵ブロスを、有機溶媒を含む脱水プロセスに付す。本発明の別の態様において、酸形態のコハク酸の回収を改善するという目的で発酵ブロス中の粒子状物質を除去するために、コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスをマイクロろ過および限外ろ過に付す。
【0046】
イオン交換プロセスから得られたコハク酸は、結晶形態のコハク酸を得るための結晶化プロセスに付す。イオン交換プロセスにおいて副産物として回収された硫酸アンモニウムもまた、結晶化または濃縮プロセスに付す。
【0047】
本発明の別の具体例において、イオン交換プロセスから回収されたコハク酸を洗練(polishing)プロセスに付して、発酵ブロスから回収されたコハク酸の質を改善する。本発明の一の態様において、イオン交換プロセスから回収されたコハク酸をナノろ過に付し、その結果、ナノろ過プロセス後に得られたコハク酸結晶は、所望の色および最小限の混入物質を有する。
【0048】
発明の詳細な記載
図1は、本発明において記載されるコハク酸アンモニウムを含む発酵ブロスからのコハク酸の回収のためのブロックフロー図を提供する。多くの微生物は、生物学的原料における発酵性増殖の間に有意な量のコハク酸を生産することが報告されている。これらの微生物のいくつかは、商業的に有意な量でのコハク酸生産を達成するように遺伝子修飾されている。例えば、特許協力条約のもとに公開された国際特許出願公開第WO 2008/115958号および第WO 2010/115067号において記載されるエシェリキア・コリ(Escherichia coli)のKJ122株は、その発酵性増殖の間に商業的に有意な量のコハク酸を生産することが報告される。KJ122株は、多くの合理的に設計された遺伝子操作およびJantamaら(2008a, 2008b)によって記載されるような数個の異なる段階における代謝的展開(evolution)のプロセスによって、イー・コリ(E. coli)C株(ATCC 8739)から得られた。
【0049】
イー・コリのKJ122株は、発酵経路によるコハク酸の生産にとって理想的である。KJ122は、発酵容器中、1リットル当たり70〜90グラムのコハク酸生産能を有することが報告される。KJ122のほか、米国特許第5,770,435号、第6,159,738号、第6,455,284号および第7,223,567号ならびに米国特許第出願公開第2007/011294号に記載されるようなコハク酸を生産するように遺伝子修飾された他のイー・コリ株もまた、商業的に有意な量でコハク酸を生産するために有用である。コハク酸の中性塩の形態でコハク酸を含有するこれらのあらゆるイー・コリ株から由来する発酵ブロスは、本発明における使用に適当である。
【0050】
これらの遺伝子修飾されたイー・コリ株のほか、多くの天然のコハク酸産生微生物が同定され、商業的に有意な量でのコハク酸の発酵生産のために開発されている。例えば、特許協力条約のもとに公開された国際特許出願公開第WO 2009/065778号および第WO 2009/065780号は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)およびサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のコハク酸産生株を記載する。コハク酸を有意な量で生産することが報告された他の微生物のリストは、アクチノバチルス・スクシノゲン(Actinobacillus succinogens)、マンヘイミア・スクシニプロジュセン(Mannheimia succiniproducens)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)およびアネロビオスピリラム・スクシニプロジュセン(Anaerobiospirilum succiniproducens)を包含する。発酵増殖の間にこれらの微生物のいずれかによって生産されたコハク酸は、本発明に記載される1以上のプロセスを用いて高純度で回収することができる。
【0051】
コハク酸の酸性性質のために、微生物増殖培地中におけるコハク酸の連続蓄積は、培養培地のpHを低下させ、最終的に、該生物の増殖速度の減少およびコハク酸収率の減少をもたらすと予想される。該制限は、必要に応じてある種のpH中和塩基を微生物増殖培地に添加する手段によって克服される。微生物増殖培地への中和塩基の添加は、中性塩の形態のコハク酸の蓄積をもたらす。かくして、コハク酸産生に起因するpH低下を中和するための塩基として水酸化アンモニウムを用いる場合、コハク酸アンモニウムが発酵容器中に蓄積する。
【0052】
発酵の最後に、ブロスは、コハク酸の塩、重金属、着色物質、代謝性副産物、微生物の細胞および細胞フラグメントならびに無機塩を含有する。したがって、発酵ブロスの直接的使用は可能ではなく、発酵ブロスから純粋なコハク酸を抽出するために、さらなる処理工程が必要とされる。
【0053】
発酵ブロスから純粋なコハク酸を回収するためのプロセスの第1工程において、水を抽出することによって該ブロスを濃縮することが望ましい。該濃縮工程は、処理されるべき液体の容量を減少させ、最終的に、純粋なコハク酸を回収するために必要とされる次の各単位操作に対するコストを減少させる一助となる。コハク酸の塩を含有する発酵ブロスは、低分子量第2級および第3級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N−ジエチルアミンおよびその混合物を用いて、有意な量の水を除去する手段によって濃縮することができる。30℃〜50℃の温度範囲にて、これらの有機アミンは、コハク酸の塩を含有する発酵ブロスのような希釈水性溶液から大量の水を抽出することができる。該低温範囲にて、有機アミン相は、20〜35%の水および非常に少量の発酵塩を含有する。温度を上昇させることによって、水はアミンから分相され、それにより、さらなる水を抽出するためにアミンの再利用および再使用が可能となる。該アプローチを用いる手段によって、通常の多段向流抽出手段を用いて、3%のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスから82.5%の水を抽出し、その結果、15%のコハク酸アンモニウムを含有する5倍濃縮発酵ブロスの生産を導くことができる。
【0054】
本発明の実施において、コハク酸の塩を含む発酵ブロスを清浄化して、発酵ブロス中に存在する粒子状物質を除去する。発酵ブロス中の細胞性およびタンパク質成分は、80℃〜90℃の高温によって除去することができる。該高温処理は、微生物を死滅させ、タンパク質を凝固させるためのアルカリ処理を伴うことができる。これらの高温およびアルカリ処理から生じる不溶性物質は、ろ過または遠心分離によって除去することができる。
【0055】
高温およびアルカリ処理から生じる発酵ブロスは、マイクロろ過および/または限外ろ過装置を用いて、さらに清浄化することができる。微生物発酵ブロスのマイクロろ過および限外ろ過技術は、工業的微生物学の分野においてよく知られている。微生物発酵ブロスのマイクロろ過および限外ろ過に適当な膜は、多くの供給元から市販されている。遠心分離工程は、マイクロろ過工程に置き換えることができた。遠心分離工程由来の上清を限外ろ過に付すことができる。これらのろ過プロセス由来の保持物(retentate)は、廃棄または再利用され、コハク酸塩を豊富に含む通過物(permeate)は、次工程において、イオン交換樹脂を用いるコハク酸の精製のための供給物として使用される。マイクロろ過および/または限外ろ過プロセス工程由来の通過物は、所望により、イオン交換樹脂で処理する前に、米国特許第6,319,382号に記載されるような主として二価のイオン、例えばカルシウムおよびマグネシウムを結合するキレート樹脂に通過させることができる。
【0056】
本発明による発酵ブロスからコハク酸を回収する方法を明確に説明する方法として、始めに、本発明を記載するのに使用される種々の用語の下記の定義を提供する。
【0057】
「クロマトグラフィー」は、混合物の成分中の固相に対する選択的親和力に依存する、混合物および成分の化学的分離に使用されるいずれかの分析技術をいう。例えば、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびイオン排除クロマトグラフィーが包含される。本発明は、イオン交換クロマトグラフィーの使用に注目し、イオン排除クロマトグラフィーを含まない。イオン排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーの間の違いとして、下記の定義を提供する。
【0058】
イオン排除は、イオン交換樹脂を中性のイオン種の分画に使用するメカニズムを記述するために使用される用語である。分画されるべき試料中のイオン性化合物は、該樹脂に受け付けられず、カラムの空隙容量において溶出される。非イオン性または弱イオン物質は、充填物の小孔中に入り込み、それにより、樹脂粒子の内と外の液体に分割されるので、分離が達成される。イオン排除クロマトグラフィーは、イオン排除分割クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー−排除モード、およびDonnan排除クロマトグラフィーを包含するいくつかの他の名称で呼ばれることもある。
【0059】
本発明で使用されるイオン交換またはイオン交換クロマトグラフィーなる語は、イオン交換樹脂との相互作用において中性化学分子がその荷電成分に分解されるメカニズムを記述するために使用される。中性分子から荷電種を生じる該現象は、塩−分解(salt-splitting)と定義される。使用している樹脂の性質に基づいて、塩−分解反応から生じるイオン性成分の1つが樹脂に結合し、他の分子が樹脂粒子から離れて流れる。カチオン交換樹脂を用いる場合、塩−分解反応から生じる陽性に荷電したイオンがイオン交換樹脂に結合し、陰性に荷電した種が樹脂から離れて流れる。一方、アニオン交換樹脂を用いる場合、塩−分解反応から生じる陰性に荷電したイオンがアニオン交換樹脂に結合し、陽性に荷電したイオン種が樹脂から離れて流れる。本発明の該イオン交換プロセスは、コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収するプロセスと共に下記に説明される。
【0060】
コハク酸アンモニウム分子がカチオン性イオン交換樹脂と接触している場合、該コハク酸アンモニウム分子は、陽性に荷電したアンモニウムカチオンおよび陰性に荷電したコハク酸アニオンに分解される。アンモニウムカチオンは樹脂に結合して、樹脂表面の水素イオンを置換する。かくしてカチオンイオン交換樹脂の表面から遊離された水素イオンは、コハク酸アニオンと結合して、コハク酸分子を生成する。樹脂表面に結合したアンモニウムイオンは、次いで、強酸によって樹脂表面から遊離され、それはまた、イオン交換樹脂をその元々の形態に再生する。
【0061】
コハク酸アンモニウム分子がアニオン性イオン交換樹脂に接触している場合、該コハク酸アンモニウム分子は、陽性に荷電したアンモニウムカチオンおよび陰性に荷電したコハク酸アニオンに分解される。陰性に荷電したコハク酸アニオンは樹脂表面に結合し、それにより、樹脂表面の硫酸塩などの陰性に荷電したアニオンを置換する。樹脂表面から遊離した陰性に荷電した硫酸アニオンは、アンモニウムカチオンと反応して、硫酸アンモニウムを生成し、それは、ラフィネートフラクション中に出現する。樹脂表面に結合したコハク酸イオンは、強酸処理によって樹脂表面から遊離され、該処理は、樹脂表面からコハク酸イオンをコハク酸として遊離するほか、該樹脂をその元々の形態に再生する。硫酸および塩酸が該目的に適当である。
【0062】
「吸着剤」は、一般的に、移動相成分が選択的アフィニティーを示すクロマトグラフィーにおいて使用される固相を示すために本明細書中で使用される。かかるアフィニティーは、サイズ排除を包含する吸着以外の種々の形態を取ることができるので、該用語は、混合物の成分を吸着する固相、および移動相由来の成分を技術的に吸着しないが、クロマトグラフィー系において、1の成分の他の成分に相対的な移動速度を遅くすることによって吸着剤のように振る舞う固相を示す。本発明において使用されるイオン交換樹脂は、吸着剤の一例である。本発明のイオン交換吸着剤の特別な能力は、その表面に吸着された中性分子をそのイオン性成分に化学的に分解し、電荷に基づいて該イオン性成分の一つを化学的に結合することができることである。
【0063】
「精製」なる語は、その相対濃度(混合物中の全ての成分またはフラクションの重量で割り算された成分またはフラクションの重量)が少なくとも20%増加したときの成分またはフラクションをいう。また、精製される成分の相対濃度(混合物中の全ての成分またはフラクションの重量で割り算された、精製される成分またはフラクションの重量)が少なくとも20%減少したとき、成分またはフラクションが精製されたと言うこともできる。
【0064】
「フィード混合物」は、クロマトグラフィープロセスによって分離されるべき1以上の抽出成分および1以上のラフィネート成分を含有する混合物である。「フィード流」なる語は、該プロセスにおいて使用される吸着剤に対して通過するフィード混合物の流れを示す。
【0065】
「抽出成分」は、吸着剤によってより選択的に吸着される成分または型であり、一方、「ラフィネート成分」は、あまり選択的に吸着されない化合物または化合物の型である。
【0066】
「脱着物質」なる語は、一般に、抽出成分を脱着することができる物質を意味する。言い換えれば、イオン交換樹脂に結合した荷電物質は、脱着物質によって該イオン交換樹脂の表面から遊離される。「脱着剤流」または「脱着剤インプット流」なる語は、脱着物質が吸着剤に対して通過する流れを示す。
【0067】
「ラフィネート流」または「ラフィネートアウトプット流」なる語は、ラフィネート成分が吸着剤から除去される流れを意味する。ラフィネート流の組成は、本質的に100%脱着剤から本質的に100%ラフィネート成分に変化することができる。
【0068】
「抽出物流」または「抽出物アウトプット流」なる語は、脱着物質によって脱着された抽出物質が吸着剤から除去される流れを意味する。抽出物流の組成は、本質的に100%脱着物質から本質的に100%抽出成分に変化することができる。
【0069】
クロマトグラフィーカラムから出てくる抽出物流および好ましくはラフィネート流の少なくとも一部分は、脱着物質の少なくとも一部が分離されるフラクションコレクターなどの分離装置を通過して、抽出生成物およびラフィネート生成物を生じる。「抽出生成物」および「ラフィネート生成物」なる語は、各々、抽出成分およびラフィネート成分を抽出物流およびラフィネート流で見られるよりも高濃度で含有する、該プロセスによって生じた生成物を意味する。
【0070】
吸着剤のある種の特徴が、いずれかのクロマトグラフィープロセスの成功した操作に必須であることが認められた。吸着剤の所望の特徴は、(1)吸着剤の吸着能、(2)吸着剤の選択性、および(3)吸着および脱着の率である。
【0071】
吸着剤の、特定の容量の抽出成分を吸着する能力は、重要な特徴である。抽出成分に対する吸着剤の能力が高ければ高い程、良好な吸着剤である。吸着剤の吸着能が増加すれば、特定のフィード混合物中に含有される既知の濃度の抽出成分を分離するのに必要な吸着剤の量を減少させることができる。
【0072】
第2の必要な吸着剤の特徴は、吸着剤のフィードの成分分離能である。吸着剤が1の成分を他の成分から分離する該能力は、吸着選択性と称される。相対的選択性は、他の成分と比較した1のフィード成分について表現されるだけでなく、いずれかのフィード混合物成分と脱着物質との間についても表現することができる。本明細書中で使用される場合、吸着剤選択性は、平衡条件下で非吸着相における2つの成分の比率を超えた、吸着相上の同じ2つの成分の比率として定義付けられる。2つの成分の選択性が1.0に近付く場合、他と比べて吸着剤による1の成分の優先的吸着は存在せず、それらはどちらも、互いにほぼ同じ程度に吸着される(または吸着されない)。選択性が1.0より小さく、または大きくなるにつれて、他と比べて1の成分の優先的吸着が存在する。ラフィネート成分と比べて抽出成分に対する吸着剤の選択性が1より大きい場合、抽出成分のラフィネート成分からの分離が理論的に可能であるが、選択性は2に近い方が好ましい。
【0073】
吸着剤の第3の所望の特徴は、吸着剤による抽出成分の交換速度に関係する。理想的な吸着剤は、速い速度で抽出成分を吸着するだけではなく、同時に、結合した抽出成分を適当な脱着剤の存在下において容易に脱着する能力も有するべきである。より速い交換速度は、抽出成分を除去するのに必要な脱着物質の量を減少させ、それゆえ、該プロセスの操作コストの減少を可能にする。より高速の交換を用いれば、より少ない量の脱着物質を該プロセス全体を通じて供給し、該プロセスにおいて再使用するために抽出物流から分離すればよい。
【0074】
特定の分離プロトコールに適当な吸着剤を選択するために、吸着剤のセットを動的試験装置を用いるパルス試験に付すことができる。パルス試験を実施することによって、選択された吸着剤の特徴をその吸着能、選択性および交換速度についで決定することができる。
【0075】
パルス試験を実施するための装置は、単純な配置を有することができる。該装置は、試験吸着剤を満たした吸着剤チャンバーからなる。吸着剤チャンバーは、直線カラムまたはらせん状カラムであってもよい。吸着剤チャンバーは、周囲温度で操作してもよく、または温度制御環境内で維持されてもよい。最適条件下でクロマトグラフィー分離を行う必要がある。吸着剤チャンバーの最適温度は、樹脂の分離能の増加を提供するであろう。また、最適温度は、吸着剤の有用な能力を改善するであろう。温度環境のほか、吸着剤カラムを圧力制御装置に連結して、一定の所定の圧力下で吸着剤チャンバーを操作することができる。屈折計、旋光計、およびUV/可視分光光度計などの定量および定性分析装置を吸着剤チャンバーのアウトレットラインに取り付けることができ、吸着剤チャンバーを通過する流出流中の1以上の成分を定量的に検出することができる。
【0076】
吸着剤チャンバー中の吸着剤は、脱着物質に吸着剤チャンバーを通過させることによって、特定の脱着物質と平衡になるまで満たされる。都合の良いときに、数分間、既知濃度のトレーサーを含有するフィードおよび特定の抽出成分またはラフィネート成分またはその両方(いずれも脱着剤中で希釈される)のパルスを注入する。トレーサーは、吸着剤との規定の相互作用を有することが知られる成分である。脱着剤フローが再開され、トレーサーおよび抽出成分またはラフィネート成分(またはその両方)が溶出する。流出物を操作中に分析することができ、あるいは流出試料を定期的に収集し、後で分析することができる。
【0077】
パルス試験の結果から、吸着剤の吸着能、特定の抽出成分に対する吸着剤の選択性、および吸着剤表面における特定の抽出成分の交換速度を決定することができる。フィード混合物およびラフィネート流中の抽出成分の量を決定し、吸着剤チャンバー中の吸着剤の量を計算することによって、特定の抽出成分に関して特定の吸着剤の吸着能を決定することができる。
【0078】
ラフィネート成分を基準にして特定の抽出成分に対する吸着剤の選択性は、抽出成分ピーク範囲(envelope)の中心とトレーサーピーク範囲(または他の参照点)との間の距離の、ラフィネート成分ピーク範囲の中心とトレーサーピーク範囲との間の対応する距離に対する比率から決定されうる。
【0079】
抽出成分の脱着剤との交換速度は、一般に、半分の強度でのピーク範囲の幅によって特徴付けることができる。ピークの幅が狭ければ狭い程、脱着速度が速くなる。脱着速度は、また、トレーサーピーク範囲の中心と脱着されたばかりの抽出成分の消失との間の距離によって特徴付けることもできる。該距離は、さらに、該時間間隔において供給される脱着剤の容量である。
【0080】
コハク酸アンモニウムを含む発酵ブロスからのコハク酸のクロマトグラフィー分離のために選択された吸着剤は、高密度圧縮床を用いる通常のカラムクロマトグラフィーにおいて使用されうる。該高密度固定床クロマトグラフィーにおいて、静止相流体−固体接触において用いられる通常の装置のいずれかを使用してもよい。該高密度床クロマトグラフィーにおいて、吸着剤は、別法では、フィード混合物および脱着物質と接触される。本発明の一の具体例において、吸着剤は、単一静止床の形態で使用され、該プロセスは、ラフィネート流および脱着剤流と交互に間隔をおいてフィードを吸着剤に適用するという意味で、単に、半連続的である。
【0081】
高密度圧縮固定床クロマトグラフィーの別の具体例において、フィード混合物を1以上の吸着床に通過させる一方で、脱着物質は、該床セットにおいて1以上の他の床を通過することができるように、2以上の静止床のセットを、適当なバルブと接触している固定床において使用してもよい。フィード混合物および脱着物質のフロー(flow)は、脱着剤を通じて上方または下方であってもよい。
【0082】
単一カラム溶出クロマトグラフィーに関連する問題の一つは、分離ゾーン(成分が分離されるカラムのセクション)においてカラム物質が効率良く利用されないことである。分離ゾーンは、実際に、成分が流れるとき萎縮する。該制限を克服する1つの方法は、複数の試料をカラムの頂上に連続的に加えることである。しかしながら、かかる連続添加は、先の試料との重複を回避するために負荷(loading)間の注意深い時間遅滞を必要とし、カラムの有効な分離ゾーンにおいて僅かな増加しか提供しない。固相は、十分に利用されないままであり、該プロセスは、また、過剰量の溶媒を必要とする。単一カラム溶出クロマトグラフィーに関連するこれらの制限は、連続イオン交換クロマトグラフィーを使用することによって克服することができる。
【0083】
連続イオン交換クロマトグラフィーは、固定吸着床系よりも効率が良く、本発明の実施において好ましい具体例である。連続イオン交換クロマトグラフィーにおいて、吸着および脱着操作は連続的に起こり、その結果、連続的な抽出物生産を伴うフィードの連続的使用が存在する。
【0084】
連続交換クロマトグラフィーは、いくつかの異なる方法で実施することができる。本発明に適当な連続イオン交換クロマトグラフィーは、2つの異なるモード、すなわち、(1)移動ポート系および(2)移動カラム系で操作することができる。移動ポート系は、多くの連結されたコンパートメントに細分化された垂直カラムからなり、各コンパートメントの流体入口および出口は、特別に設計された回転マスターバルブによって制御される。移動カラム系は、回転カルーセル(carousal)上に据え付けられた複数のクロマトグラフィーカラムを含む。
【0085】
本発明の方法において使用されるべき吸着剤は、強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂、強酸性カチオン交換樹脂、および弱酸性カチオン交換樹脂を含むであろう。
【0086】
本発明の実施に適当なアニオン交換樹脂は、第4級アンモニウム、第3級アミン、または架橋ポリマーマトリックス、例えば、ジビニルベンゼン架橋アクリルまたはスチレン樹脂におけるピリジン官能基を有する。それらは、特に、ビーズ形態で生産される場合に適当であり、高度な均一ポリマー間隙率を有し、化学的および物理的安定性を示す。該樹脂は、ゲル状(または「ゲル型」)または「マクロ網状」であることができる。本発明における使用に適当なアニオン交換樹脂のリストは、Amberlite IRA 400および900シリーズ吸着剤、XE 275(IRA−35)、およびIRA−68吸着剤(Rohm and Haas Company製)、AG1、AG2、AGMP−1、AG3−X4AおよびAG4−X4樹脂(BioRad製)、およびDow Chemical Companyによって販売される匹敵する樹脂、例えば、Dowex 1、2、11、MSA−1およびMSA−2を包含する。
【0087】
本発明の強カチオン交換クロマトグラフィー材料は、好ましくは、1以上のクロマトグラフィー支持体材料(即ち、静止相)を含む。適当なクロマトグラフィー支持体材料は、限定するものではないが、アルミナ、ケイ酸マグネシウム、ケイ素、ガラス、調節された孔ガラス、炭素、多孔性黒鉛炭素、リン酸ジルコニウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびポリマーまたは樹脂を包含する。適当なポリマーまたは樹脂は、限定するものではないが、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミン、ポリアクリレート、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン(styrene-divinylbenzine)コポリマー、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、およびポリ(ビニルピリジン)を包含する。好ましくは、ポリマーまたは樹脂である。より好ましくは、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーである。
【0088】
本発明の強カチオン交換クロマトグラフィー材料は、さらに、強イオン交換に適当な1以上の官能基から選択される複数のリガンドを含む。これらの官能基は、限定するものではないが、スルホン酸、アルキルスルホン酸、フェニルスルホン酸、アルキルフェニルスルホン酸、およびその塩を包含する。好ましくは、スルホン酸官能基およびその塩である。
【0089】
使用されうる酸性カチオン交換ポリマーまたは樹脂の特定の例は、AMBERLITE 200、AMBERLITE IR−118H、AMBERLITE IR−120PLUS、AMBERLITE IR−122、AMBERLITE IR−130C、AMBERLITE I6641、AMBERLITE IRP−69、DOWEX 50X1−100、DOWEX 50X2−100、DOWEX 50X2−200、DOWEX 50X2−400、DOWEX 50X4−100、DOWEX 50X4−200、DOWEX 50X4−200R、DOWEX 50X4−400、DOWEX 18880、DOWEX 50X8−100、DOWEX 50X8−200、DOWEX 50X8−400、DIAION 1−3561、DIAION 1−3565、DIAION 1−3570、DIAION 1−3573、DIAION 1−3577、DIAION 1−3581、DUOLITE D 5427、およびDUOLITE D 5552(Sigma−Aldrich, St. Louis Missouri, U.S.A.から入手可能);DIAION HPK25、DIAION PK208、DIAION PK228、DIAION SK1B、DIAION SK1BS、DIAION SK104、DIAION SK112、DIAION SK116、DOWEX HCR−S、DOWEX HCR−W2、DOWEX MSC−1、DOWEX 650C、DOWEX G−26 H、DOWEX 88、DOWEX MONOSPHERE 88、DOWEX MONOSPHERE 99K/320、DOWEX MONOSPHERE 99K/350、DOWEX MONOSPHERE 99Ca/320、DOWEX MONOSPHERE 99Ca/350、DOWEX Marathon C、DOWEX −032、DOWEX −406、DOWEX −437、DUOLITE C−280、およびDUOLITE C−291(Supelco, Inc., Bellefonte, Pennsylvania, U.S.A.から入手可能);AMBERLITE IR−120、AMBERLITE IR−120B、AMBERLITE IR−200C、AMBERLITE CG 6000、DIAION SK−1B、DOWEX XUS 40406.00、DOWEX XUS 43518、およびDOWEX C500ESを包含する。好ましくは、AMBERLITE IR−120、AMBERLITE IR−120B、AMBERLITE IR−200C、DOWEX C500ES、DOWEX XUS 43518、およびDOWEX XUS 40406.00である。最も好ましくは、DOWEX XUS 40406.00、LEWATITTM(登録商標) S100、S109、SP112、SP120(Bayer製)等である。特に、工業的クロマトグラフィーの場合、狭い粒子サイズ分布を有する強酸性カチオン交換樹脂、例えば、UBK−530、UBK−550(Mitsubishi Chemical Cooperation製)が好ましい。
【0090】
本発明によると、クロマトグラフィーカラム中の吸着剤は、イオン交換モードで機能する。クロマトグラフィーカラム中の吸着剤がイオン交換樹脂として機能する場合、コハク酸アンモニウムまたはコハク酸のいずれか他の塩を含む発酵ブロスは、いずれの化学的処理を施すことなく直接使用できる。コハク酸塩は、吸着剤の表面で「塩分解」反応に付され、該プロセスにおいて遊離されたコハク酸は、使用された樹脂の化学的性質に依存して、ラフィネート流または抽出物流のいずれかにおいて回収される。かくして、本発明によると、コハク酸塩を含有する発酵ブロスは、イオン交換樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムに直接負荷される。このことは、イオン排除クロマトグラフィーにおける要件と対照的である。コハク酸の分離のためのイオン排除クロマトグラフィーの場合、コハク酸の塩を含有する発酵ブロスを最初に酸性化してコハク酸を沈澱させ、得られたコハク酸を、吸着剤による電荷斥力の度合いに基づいて、酸性化された発酵ブロス中の残りの成分から分離する。
【0091】
図2および図3は、カチオン性イオン交換樹脂の表面での塩分解反応を説明する。コハク酸アンモニウムは、水相発酵によって生産され、分離および精製工程後にコハク酸分子を生産することを目的とする。本発明の方法において、フィード流中に存在するコハク酸アンモニウムを水素形態におけるカチオン交換樹脂のカラムに通す。フィード流はカラム中を流れるので、カチオン交換が起こり、ここで、該樹脂は、コハク酸アンモニウム塩を「分解(split)」し、遊離したアンモニウムカチオン(NH4)が樹脂に結合し、一方、最初に樹脂上にあった水素イオン(H)は、溶液中に遊離される。該イオン交換反応のスキームを図2に示す。
【0092】
カチオン性イオン交換樹脂からの遊離において、水素イオンがコハク酸アニオンに結合し、コハク酸を形成する。かくして生産されたコハク酸は、一連の水でのリンスによってカラムからクロマトグラフィーピークフラクション中に流れ出る。
【0093】
「塩分解」イオン交換クロマトグラフィーの第2工程において、希釈硫酸溶液の通過によって、結合したアンモニウムカチオンが樹脂から遊離する。該プロセスは、次の使用のために、該カチオン性イオン交換樹脂を再生する。該再生工程の間に、第1のイオン交換工程の逆が起こり、完全にイオン化した硫酸溶液由来の水素イオンが樹脂に結合し、同時に、以前に結合していたアンモニウムカチオンが遊離する。次いで、遊離されたアンモニウムカチオンは、イオン化した硫酸の硫酸アニオンと結合し、その結果、溶液中に硫酸アンモニウムが生じる。次いで、一連の純水での洗浄によって、硫酸アンモニウムは、カラムから、それ自体のクロマトグラフィーピークフラクション中に洗い出される。硫酸アンモニウムの生産を伴うカチオン交換樹脂の再生のためのスキームを図3に示す。
【0094】
吸着剤の、発酵ブロス中に存在するコハク酸アンモニウム分子上で「塩分解」反応を行う能力は、吸着剤およびコハク酸アンモニウム分子についての酸解離定数によって決定される。酸解離定数は、また、「pKa」とも称され、水性溶液中の酸のその構成カチオンおよびアニオンへの解離に関する平衡定数に関連する。本発明の一の具体例において、コハク酸アンモニウムを含む水性溶液は、コハク酸アンモニウムの酸解離定数よりも少なくとも0.5小さいpKa値を有する酸性イオン交換樹脂と接触させる。「塩分解」反応の結果として遊離したアンモニウムカチオンは、該イオン交換樹脂に結合する。該イオン交換樹脂に結合したアンモニウムイオンは、塩形態における該イオン交換樹脂についてのpKa値よりも少なくとも0.5小さいpKa値を有する酸を含む洗浄工程によって遊離することができる。
【0095】
本発明の別の具体例において、アニオン性イオン交換樹脂が吸着剤として使用される。該反応の第1段階において、コハク酸アンモニウム由来のコハク酸アニオンが、コハク酸分子と樹脂上のイオン交換部位との間のイオン結合の形成によって、強アニオン交換樹脂に吸着する。該段階で、中性またはカチオン性物質あるいは巨大分子または細胞残屑のほとんどが該樹脂を通過する。次の段階において、樹脂を水で洗浄して、該イオン交換樹脂に捕捉された非結合性混入物質を除去する。該洗浄工程後、吸着されたコハク酸イオンをより強力な無機イオンと交換することによって、コハク酸アニオンを該樹脂からはずす。該カラムからのコハク酸の除去後、該樹脂上のアニオン交換部位を再生することによって、該アニオン交換樹脂をさらなるコハク酸吸着サイクルのために調製する。このことは、強酸、例えば、硫酸または塩酸で樹脂を処理することによって成し遂げられ、それにより、無機アニオンをコハク酸アニオンと交換させる。コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスと共にアニオン交換樹脂を用いる最終的な結果は、精製コハク酸の分離である。
【0096】
かくしてクロマトグラフィー手法によって発酵ブロスから回収されたコハク酸は、さらに、ナノろ過によって精製することができる。
【実施例】
【0097】
実施例1
発酵ブロスの清浄化
孔サイズ0.1μMを有するマイクロろ過(MF)に適当な膜およびカットオフ値150kDaを有する限外ろ過(UF)に適当な別の膜を、コハク酸アンモニウムを含む発酵ブロスの清浄化におけるその効率について試験した。これら2つの異なる膜の特徴は、下記の表1に示す。
【0098】
これら2つの膜を用いた清浄化パイロットスキームを図4に提供する。通過流速(permeate flow rate)は、各膜の膜通過圧(TMP)の関数として測定された。該工程の場合、フィードブロスが膜を通して流れ、TMPは、通過サーキット(permeate circuit)を開くことによって変化した。保持物および通過物の両方が常に再循環して、容量濃度因子(VCF)を1に維持する。両方の膜で得られた通過物は透明であったが、流速は、最大幅の膜(カットオフ:0.1μM)で速かった。孔直径0.1μMの膜は、TMP=0.8バールで流速250l/h/mを示した。150kDaカットオフを有する限外ろ過のための他の膜は、TMP=1.6バールで流速300l/h/mを示した。
【0099】
コハク酸アンモニウムを含む発酵ブロスの続く清浄化は、良好な通過の質を保証し、付着リスクを制限するために、150kDaカットオフ膜を用いて35〜39℃にて、バッチモードで行われた。濃度因子VCF:10は、平均流速143l/h/mを用いてTMP>2バールにて、パイロットスケールで達成された。推定のコハク酸塩回収率は、VCF=10での清浄化後に87%であった。付加的なダイアフィルトレーション(diafiltration)は、コハク酸塩回収率を94%まで上昇させる助けとなった。工業的規模では、下記のパラメーター:自由カラム容量(FCV)=20およびダイアフィルトレーション比 水/保持物=4.5/1を用いて99%までのコハク酸塩回収を達成できる(表2)。
【0100】
実施例2
カチオン性イオン交換クロマトグラフィー
本発明の方法において、強酸性カチオン交換樹脂、例えば、Dowex G−26 HまたはLanxess Lewit MonoPlus S 100Hを含有する分取クロマトグラフィーカラム(1.6cm直径x100cm長さ)を用いて、コハク酸アンモニウム分子を分解し、各コハク酸塩分子について2つの水素イオン(H)を提供した。Lanxess樹脂108Hもまた、Lanxess樹脂S 100Hの代わりに使用できる。該プロセスは、溶液中にコハク酸を生じ、次いでそれを一連の「低速」および「高速」純水リンスによってカラムから洗い出す。
【0101】
コハク酸アンモニウム分子は強酸性カチオン交換樹脂によって分解するので、アンモニウムカチオン(NH)は、該カチオン交換樹脂に結合する。純水リンスを行ってコハク酸を洗い出した後、樹脂床を適当な濃度の硫酸で洗浄して、カチオン樹脂ビーズを再生する。該工程において、硫酸由来の水素イオン(H)が、以前に結合していたアンモニウムイオン(NH)と交換され、溶液中に硫酸アンモニウム(NHSOを生じる。次いで、該硫酸アンモニウムを一連の「低速」および「高速」純水リンスによってカラムから、それ自体のクロマトグラフィーピークフラクション中に洗い出す。
【0102】
該プロセスの操作サイクルは、下記の工程を含む:(1)適当な容量および適当な流速でのフィードの添加。フィードは、1.0カラム容量(CV)〜2.5CVの範囲の容量で負荷することができる。好ましい具体例において、フィードは1.2CV〜2.2CVの範囲で添加され、最も好ましい具体例において、フィードは1.5CV〜1.7CVの範囲で添加される。添加されるべきフィードの容量は、該フィード中のコハク酸アンモニウムの濃度および使用されているイオン交換樹脂の吸着能に大きく依存することに留意すべきである。発酵ブロス中に存在するコハク酸アンモニウムの濃度よび使用されているイオン交換樹脂の吸着能に基づいて、フィード中に存在するコハク酸アンモニウムの全量がイオン交換樹脂の表面で分解し、かつ、使用されているイオン交換樹脂の型に依存してアンモニウムまたはコハク酸塩での該イオン交換樹脂の飽和およびラフィネート流中のコハク酸アンモニウムのオーバーフローの問題がないように、添加されるべきフィードの適当な容量を計算することができる。同様に、フィード流速は、1時間当たり2〜4床容量(BVH)であることができる。好ましい具体例において、フィード流速は2.5〜3.5BVHであることができ、最も好ましい具体例において、フィード流速は2.9〜3.2BVHである。(2)クロマトグラフィーカラムが流速1〜4BVHで添加された1〜4CVの水で洗浄される低速リンス工程。(3)クロマトグラフィーカラムが流速5〜10BVHで1〜4CVの水で洗浄される高速リンス工程。好ましい具体例において、高速リンスは、7〜9BVHの流速で行われる。(4)カラムが流速1−4BVHにて適当な濃度の1〜4CVの強酸で洗浄される再生工程。本発明に適当な強有機酸は、塩酸、硝酸、硫酸およびリン酸からなる群から選択される。強酸の濃度は、イオン交換樹脂がクロマトグラフィープロフィールによって証明されるように短期間で完全に再生されるように選択される。(5)カラムが流速1−4BVHにて1−4CVの水で洗浄される低速リンス工程、および(6)カラムが流速5−10BVHにて6−10CVの水で洗浄される高速リンス工程。これらの操作条件は、単に例示として提供される。これらの操作条件は、非常に高純度のコハク酸の最大回収率を達成するように適宜修飾されうる。
【0103】
カチオン交換樹脂を含有するカラムから出てくる流体を屈折計(Shimadzu RID−10 with Control Unit CBM−28)に通して、クロマトグラフィーカラムから出てくる流体の屈折率を測定した(図5)。また、屈折計から出てくる流体をUVダイオードアレイ分光光度計に通して、210nmでの吸光度をモニターした。クロマトグラフィーカラムから出てくる流体におけるこれらの光学測定のほかにも、クロマトグラフィーカラムから収集されたフラクションにおいて、化学分析を行った。表3および図7に示されるように、305分の時間経過の間に、5つの異なるフラクションをクロマトグラフィーカラムから収集した。
【0104】
表3に記載の収集された5つの異なるフラクションをコハク酸、酢酸、SO2−およびNHについて分析した。発酵ブロス中に存在するコハク酸および他の有機酸不純物は、BioRad Aminex HPX−87Hカラムを有するAgilent 1200 HPLC装置で分析された。BioRad Microguard Cation Hは、ガードカラムとして使用された。HPLC分析の標準は、0.008N硫酸中で調製された。HPLCカラム温度は、50℃で維持された。0.008N濃度の硫酸を移動相として流速0.6ml/分で用いた。種々の成分の定量は、210nmでのそれらの吸収を測定することによって行った。
【0105】
アンモニウムイオン濃度は、mvで報告できるメーターを有するMettler ToledoコンビネーションNHイオン選択的電極(ISE)を用いて測定された。標準溶液(5000、500、50および5ppmアンモニウム)は、硫酸アンモニウムを水に溶解することによって調製された。試験試料は、既知の量のコハク酸結晶を純水に溶解することによって調製された。
【0106】
米国合衆国オハイオ州シンシナティのEnvironmental Monitoring Systems Laboratory, Office of Research and Development, U. S. Environmental Protection Agencyによって提供されるイオンクロマトグラフィーによる無機イオンの測定のためのMethod 300.0(Revision 2.1. August 1993)を用いて、硫酸塩分析を行った。
【0107】
Dowex G−26 H樹脂を用いて行った最初の開発試験は、水での高速リンス後にDowex G−26 H樹脂を再生するのに必要な硫酸の濃度を最適化することに焦点が置かれた。図5および6は、コハク酸アンモニウムを含む最初の塩分解反応後のカチオン交換樹脂の再生のための硫酸要件を最適化するための実験結果を示す。これら2つの図は、2つの異なる実験において、最初の160分の間に、クロマトグラフィーカラムから出てくる溶液の屈折率のプロフィールを示す。また、クロマトグラフィー操作の間の異なる時点で、コハク酸、酢酸、SO42−およびグリセロールの測定を実施した。
【0108】
開始コハク酸アンモニウム濃度65g/Lを有するイー・コリのKJ122株を用いて得られた発酵ブロスを、Dowex G−26 H樹脂を有するクロマトグラフィーカラム上に負荷した。2.36CVのフィードをクロマトグラフィーカラムに添加した。図5に記載の実験において、60分で溶出するフラクション中に、64.69g/Lのピークコハク酸濃度が観察された。同時点にて、カラム溶出フラクション中、グリセロール濃度は1.67g/Lであることが分かり、酢酸濃度は3.94g/Lであることが分かった。しかしながら、屈折値は80分まで上昇し続け、60分と80分との間に明確なピークが存在した。60分と80分の間の該第2のピークは、カチオン交換樹脂が最初の60分の間に塩分解反応から誘導されたアンモニウムカチオンで完全に飽和された後、コハク酸アンモニウムの溶出に起因するブレークスルーピークを表す。本発明において定義される場合、「ブレークスルーピーク」なる語は、イオン交換樹脂が硫酸イオンで飽和された後、カラムから溶出されるフラクションに対応する。言い換えれば、ブレークスルーピークは、本質的に、フィード溶液の元々の成分を含有する。64分でカラムから溶出するフラクション中、硫酸塩濃度は167.7ppmであることが分かり、77分で溶出するフラクション中、硫酸塩は検出されなかった。85分で溶出するフラクション中、コハク酸濃度は0.44g/Lであり、コハク酸濃度は0.11g/Lのレベルに減少した。該観察により、適当なフィード濃度を最適化することによって、フィード物質中の過剰量のコハク酸アンモニウムに起因する第2ピークを排除することができることが示された。
【0109】
発明者らは、図6に記載の実験において類似のクロマトグラフィープロフィールを観察した。2つの異なるピークが分離の最初の80分以内に検出できる。第1ピークは、より早い時点でフラクション中の高濃度のコハク酸の存在によって証明されるように、コハク酸の溶出に起因する。コハク酸濃度は、45分で溶出されたフラクション中、72.45g/Lであることが分かり、これは、55分で溶出されたフラクション中で66.12g/Lのレベルに、72分で0.55g/Lのレベルに減少した。92分で溶出するフラクション中、コハク酸濃度は0.07g/Lであることが分かった。45分で溶出するフラクション中、硫酸塩濃度は810ppmであることが分かり、これは、72分で溶出するフラクション中で18.2ppmのレベルに減少した。これらの観察はまとめて、図5および図6の両方で報告された実験において、第2ピークが、コハク酸アンモニウムの分解から誘導された硫酸イオンでのカチオン性イオン交換樹脂の飽和のためにカチオン性イオン交換樹脂の表面での塩分解反応に付されなかった硫酸アンモニウムの溶出に起因することを示唆する。
【0110】
図5に示される実験において、カチオン交換樹脂を再生する方法として、2CVの5%(w/w)硫酸を110分時点で加えて再生プロセスを開始した。該再生プロセスは、硫酸の添加の後にクロマトグラフィーカラムから出てくる流体の屈折率の増加によって証明されるように、硫酸アンモニウムを遊離することが予想される。160分での屈折率によって示されるように、5%硫酸での洗浄により、硫酸アンモニウムの遊離は、160分で完全ではなかった。150分で溶出するフラクション中、硫酸塩濃度は、9585ppmであることが分かった。しかしながら、図6に示されるように、硫酸濃度を10%に増加することによって、基底レベルに達する屈折率の値によって証明されるように、カチオン交換樹脂の完全な再生を成し遂げることができる。カチオン性イオン交換樹脂のために10%(w/w)硫酸を使用すると、92分で溶出するフラクション中の硫酸塩濃度は、20128ppmになることが分かった。139分で溶出するフラクション中の硫酸塩濃度は、2664ppmであることが分かり、221分では、硫酸塩濃度は36.6ppmのレベルに減少した。
【0111】
10%硫酸濃度がカチオン交換樹脂の完全な再生を達成するのに最適であることを決定した後、7つのさらなる実験(実験4〜10)をDowex G−26 H樹脂を用いて実施した。これらの7つの実験のうちの1つについて、屈折率のプロフィールを図7に示す。図7は、また、収集された様々なフラクションに対応する屈折率プロフィールの領域を示す。表4は、Dowex G−26H樹脂を用いて行われた実験4〜10のフラクションF2において、コハク酸の純度および回収パーセントを提供する。
【0112】
カチオン交換樹脂を再生するのに必要な硫酸濃度を最適化した後、別のカチオン交換樹脂Lanxess S100 Hを用いて実験を行って、ブレークスルーピークからのコハク酸ピークの分離を達成するためのフィード容量を最適化した。表5に示されるように、6つの異なる実験を、1.5〜2.16CV範囲の異なる容量のフィード材料を用いて行った。
【0113】
これらの6つの異なる実験について屈折率プロフィールを図8に示す。図8に示されるように、フィード容量を1.5CVに低下させることによって、ブレークスルーピークを排除し、明確な単一ピークにおいてコハク酸回収を達成することができる。明確化のために、図9は、1.5CVのフィードを用いてLanxess S100 Hカチオン交換樹脂で行った試験5についてのみ、屈折率のプロフィールを示す。表6は、図8に示されるピーク1およびピーク2フラクション中のコハク酸、酢酸、SO2−およびNH含量の定量分析の結果を提供する。図8および表6に示される結果が示すように、ブレークスルーピークを排除し、単一ピークにおいてコハク酸回収を達成することができる。このことは、試験5において、1.5CVのフィード添加を用いて、単一ピークにおいてコハク酸を回収できたという事実によって証明される。該ピークは、NH4について最小値を示した。試験5のピーク1フラクション中のNH4の量は、より多くの容量のフィードを使用した他の試験由来のピーク1フラクション中のNH4含量よりも100倍低かった。さらに、全ての試験において、ピーク1フラクションについてSO42−値が低く、これにより、これらの実験において使用されたリンスプロトコールが、次のラウンドのフィード添加を用いてカラムを満たす前に、不純物を全て除去するのに最適であることが示唆された。
【0114】
実施例3
アニオン交換樹脂を用いるクロマトグラフィーのパルス試験結果
連続イオン交換クロマトグラフィーにおいて使用されるべきアニオン交換樹脂を選択するために、発酵ブロスおよび3つの異なるアニオン交換樹脂を用いてパルス試験を行った。発酵ブロスは、表7に示される組成を有した。
【0115】
本発明において試験された3つの異なるアニオン交換樹脂の化学的特徴を表8に提供する。これらの3つのアニオン交換樹脂の各々を用いる試料溶出逐次的プロフィールを表9に提供する。最初は硫酸塩形態下におけるカラムに、表9に提供される容量で未処理のブロスを過剰に負荷して、最大樹脂能力を推定する。カラムを水でリンスし、次いで、10%硫酸での洗浄および水でのリンスを含む再生工程を行う。本発明で試験された3つの樹脂の各々の性能の概略を表10に提供する。樹脂XA 3121は、コハク酸塩受容力に関して乏しい効率を示した。第1サイクルの間、樹脂XA 4122およびXA 3114は、総交換能力または必要とされたリンス容量のいずれかについて、非常に近接した結果を与えた。
【0116】
3つの異なるアニオン交換樹脂でのパルス試験の結果を検討した後、連続イオン交換試験のために、XA 3114が選択された。連続イオン交換操作のための該XA 3114樹脂の選択は、2つの理由に基づいた。すなわち、(1)工業的規模では、化学物質消費を最小限にするために、再生速度が制限される。コハク酸塩のラフィネート中への許容可能な漏出値より下にとどまるために、樹脂の作業能力を研究室規模で測定された最大能力と比べて低下させることができた。かくして、XA 4122よりも高い能力を有するXA 3114を用いてより大きなイオン交換能力を達成することができる。(2)XA 3114は、分離効率を増加させ、リンス水容量を最小限にすることを助けるモノスフェア(monosphere)型の樹脂である。
【0117】
実施例4
アニオン交換樹脂を用いる連続イオン交換クロマトグラフィー
バッチモードと比べて、連続イオン交換は、コハク酸フラクションの純度の増加、総化学物質消費の減少および水消費の減少を可能にする。連続イオン交換クロマトグラフィーは、アニオン樹脂(0.4L/カラム)で満たされた10個のカラムで行った。パイロットを4つの領域に分割し、各々、1〜3個のカラムで構成された。図10に示されるように、各シークエンスを2工程に分けた。コハク酸塩はアニオン樹脂上に捕捉され、酸再生の間に遊離された。再生は、並流モードで行われた。硫酸アンモニウムはラフィネート中に回収され、コハク酸は抽出物中に回収された。
【0118】
イオン交換カラム中へのコハク酸の結晶化を回避するために、連続イオン交換プロセスは、試験中、50℃で行われた。
【0119】
慣習にしたがい、樹脂の向流置換(counter-current displacement)を模倣するように、インレット(inlet)およびアウトレット(outlet)を1のカラムから次のカラムへ下流に向かって置換させた。例えば、図10において、工程の最後に、カラム番号1は、次のシークエンスのためにカラム番号4になる。
【0120】
6つの異なる設定に対応する6つの異なる試験を行って、回収率および純度の両方の目標を達成した。注入した生成物の体積ならびにフィードおよび再生剤の濃度は、各設定で異なった。表11は、アニオン樹脂を用いる連続イオン交換について逐次的記載を提供する。
【0121】
設定1〜3の場合、再生のアウトレットを2つの部分に分けた。第1部分を抽出生成物として収集し、一方、収集の最後を希釈再生剤(DRG)流に送った。設定4〜6の場合、全アウトレット再生を抽出生成物として収集した。
【0122】
抽出物フラクション中の高すぎるコハク酸濃度(カラム中に酸結晶化をもたらすことができる)を回避するために、再生剤濃度は80g/L HSOに固定された。さらに、カラムを50℃で一定に維持した。
【0123】
以前の設定の各々に対応する異なるフローの組成を表12に報告する。
【0124】
設定1〜5の場合、フィードコハク酸塩濃度は55〜60g/Lであった。設定6の場合、アニオン性樹脂上の硫酸塩との交換を改善し、ラフィネートへのコハク酸塩の損失を減少させるために、フィード生成物を50g/Lコハク酸塩に希釈した。該最後の設定は、ラフィネート中80g/Lの硫酸アンモニウムを生成し、2.8g/Lのコハク酸塩漏出を伴った。抽出物は41g/Lコハク酸濃度であり、少量の他のアニオン(1g/L未満の硫酸塩)が混入していた。
【0125】
希釈フィード濃度は、2g/Lコハク酸アンモニウムであったが、3g/Lの硫酸アニオンを含有した。これは、清浄化工程において、ダイフィルトレーション水として使用できる。
【0126】
希釈再生剤中、硫酸塩濃度は35g/Lに達した。それは、再生剤を再び調製するための溶媒として、直接使用することができる。それは、約2g/Lのコハク酸塩を含有したが、それは次いで、カラムに再利用され、失われない。マスバランスは、一般的に、平衡化され、該結果を確認した。マスバランスは、あまり濃縮されない酢酸塩について確立することがより困難であった。表13は、各設定について計算された性能を概説する。
【0127】
コハク酸負荷および回収率は、塩化物形態下での樹脂で作業し、HSOの代わりにHClで再生することによって、より高くなることに注目すべきである。実際に、どちらも二価であるコハク酸塩と硫酸塩との間の樹脂上の競合は高い。このことは、2つの種間での交換が生産モードでより困難であるため、ラフィネート中へのより高いコハク酸塩漏出をもたらす。一方、コハク酸塩と塩化物との間の競合は、樹脂が一価の種より二価の種に親和性を有するので、コハク酸塩の方に向く。結果的に、HClでの樹脂の再生は、ラフィネート中へのより低いコハク酸塩漏出および高い回収率をもたらす。さらに、HSOは不完全に解離される酸と考えられ、このことは、樹脂が、同じ再生効率を達成するために、完全に解離されるHClを用いる場合よりも高いHSO再生率を必要とすることを意味する。
【0128】
実施例5
洗練試験
洗練試験の目的は、優れたコハク酸結晶の質を保証するために必要な設計を決定することであった。該工程は、ナノろ過(NF)を含み、洗練手法の最終的な目標は、コハク酸の99.5%純度の白色結晶を得ることであった。イオン交換抽出物は、該生成物を結晶化工程に送る前に、NFによって処理して着色を除去された。NF通過物(脱色されたコハク酸)を結晶化工程に送った。ナノろ過に使用されたフィルターの特徴を表15に提供する。
【0129】
イオン交換抽出設定6由来のフィード生成物を洗練試験の間、原料として用いた。FCV=31に達成した場合、低い保持物レベルなので、実験を停止した。2つの最終ダイアフィルトレーション(各々、水/保持物比=1/1)を行って、コハク酸塩回収率を増加させた。図11に、通過フロー展開を報告する。図11に示されるように、洗練試験は、異常な動作を提供した。流速は、標準的な減少傾向を示す前に、増加を示した。このことは、同時に、比較的一定の保持物組成で起こった温度上昇の両方の影響によって説明できた。
【0130】
流出組成を表16に提供する。420nmにて光学密度によって測定した場合、フィードおよびナノろ過から得られる通過物との間に86%の光学密度の減少が存在した。
【0131】
予測通り、コハク酸のほとんどが通過物中に回収される。推定される保持率および通過物中に回収されるフィード内容物のフラクションを示す通過物フラクションは、表17に示される。
【0132】
ほとんど解離酸形態下にある弱有機酸(コハク酸塩および乳酸塩)は、pH2.5で存在する。結果的に、それらはほとんどイオン化されず、水溶媒和数(water salvation number)は低い。それらは、小さな分子なので、容易にNF膜を通過でき、通過物流に入ることができる。すなわち、それらの保持率は低い(または乳酸塩について、マイナスでさえある)。VCF=31での操作は、コハク酸の96%を回収することを可能にする。さらなるダイアフィルトレーションの助けにより、98%の回収率に達する。これは、さらに容易に改善することができる。
【0133】
塩(硫酸塩およびアンモニウム)は、イオン形態下で、より溶媒和され、次いで、大きな体積を占める(特に、二価の硫酸アニオン)。さらに、硫酸塩およびアンモニウムは、溶液の電気的中性を守るために結合されたままである。それらの保持率は、どちらも高い。
【0134】
実施例6
コハク酸の蒸発および結晶化
結晶化工程を開始するために十分なコハク酸濃度に達するように、連続イオン交換クロマトグラフィーから回収されたコハク酸を蒸発させる。コハク酸は、253℃の沸点を有するが、コハク酸調製物中における他の可能性のある有機酸混入物、例えば、酢酸および乳酸は、より低い沸点を有する。酢酸の沸点は118℃であり、乳酸の沸点は122℃である。かくして、蒸発工程を用いて、コハク酸を420g/Lまで濃縮し、さらに、酢酸および乳酸混入物のある程度を除去した。
【0135】
濃縮されたコハク酸は、容器を冷却することによって結晶化した。下記のプロトコールを結晶化に用いた。(1)コハク酸を85℃で420g/Lまで濃縮する。(2)直径80μmの純粋なコハク酸種結晶を用いて結晶化を開始する。(3)図12に示すプロトコールにしたがって、20時間かけて、85℃から20℃に生成物を冷却する。(4)最終的な結晶を、飽和された純粋なコハク酸溶液で洗浄する。
【0136】
結晶化手法は、下記の3つの異なるコハク酸調製物を用いて実施した。(1)連続イオン交換クロマトグラフィー由来の洗練していない抽出物。(2)連続イオン交換クロマトグラフィー由来のNF−洗練抽出物。(3)25g/Lの硫酸アニオンを含有する合成コハク酸調製物。表18は、これらの3つの異なるコハク酸調製物を用いて行った結晶化実験の結果を提供する。表20に示される結果が示すように、試験した3つの試料の各々について、99.85%以上の結晶純度が達成された。結晶化収率は、895〜93%の範囲であった。
【0137】
結晶性コハク酸の色は、最終生成物の100g/Lろ過溶液の光学密度を測定することによって決定された(表19)。イオン交換クロマトグラフィーの非洗練抽出物から得られるコハク酸結晶は、茶色であった。該結晶は、1−2mmの長さの針状であった。図13の走査電子顕微鏡写真に示されるように、NF洗練結晶は、白色であり、非洗練抽出物由来の結晶と比べて大きかった。
【0138】
実施例7
硫酸アンモニウム流出物の結晶化
設定2−4で生成されたラフィネート混合物を塩流出物結晶化試験の原料として用いた。ラフィネートを50xに濃縮した後、95℃にて一定の蒸発によって結晶化を開始した。ラフィネートの濃縮は、2工程で実施した。第1工程において、逆浸透を利用して、ラフィネートを80g/L硫酸アンモニウム濃度から160g/L硫酸アンモニウム濃度に濃縮した。第2工程において、蒸発手段によって、さらなる濃縮を達成した。
【0139】
表20は、連続イオン交換クロマトグラフィーの設定2−4で生成したラフィネートから得られた硫酸アンモニウム結晶の組成を概説する。該結晶中、有機塩は検出されなかった。該結晶は、茶色であり、図14における走査電子顕微鏡写真に示されるように、明確な形状を有していた。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
【表6】

【0146】
【表7】

【0147】
【表8】

【0148】
【表9】

【0149】
【表10】

【0150】
【表11】

【0151】
【表12】

【0152】
【表13】

【0153】
【表14】

【0154】
【表15】

【0155】
【表16】

【0156】
【表17】

【0157】
【表18】

【0158】
【表19】

【0159】
【表20】

【0160】
参考文献
本明細書中において、全ての参考文献は、読者の便宜のために挙げられる。各参考文献は、出典明示により、その全体において本明細書の一部とされる。
【0161】
米国特許第5,034,105号
米国特許第5,068,418号
米国特許第5,068,419号
米国特許第5,104,492号
米国特許第5,132,456号
米国特許第5,143,833号
米国特許第5,143,834号
米国特許第5,168,055号
米国特許第5,412,126号
米国特許第5,426,220号
米国特許第5,641,406号
米国特許第5,770,435号
米国特許第5,786,185号
米国特許第5,817,238号
米国特許第5,958,744号
米国特許第6,159,738号
米国特許第6,160,173号
米国特許第6,265,190号
米国特許第6,280,985号
米国特許第6,284,904号
米国特許第6,319,382号
米国特許第6,455,284号
米国特許第7,223,567号
米国特許第7,238,837号
米国特許第7,439,392号
米国特許第7,563,606号
米国特許第7,763,447号
米国特許第7,829,316号
米国特許第7,833,763号
【0162】
米国特許出願公開第2006/0276674号
米国特許出願公開第2007/011294号
米国特許出願公開第2009/0137825号
米国特許出願公開第2009/0137843号
米国特許出願公開第2010/0184171号
米国特許出願公開第2010/0297715号
【0163】
国際特許出願公開第WO 89/05861号
国際特許出願公開第WO 98/30712号
国際特許出願公開第WO 2007/040458号
国際特許出願公開第WO 2008/115958号
国際特許出願公開第WO 2009/08101号
国際特許出願公開第WO 2009/065778号
国際特許出願公開第WO 2009/065780号
国際特許出願公開第WO 2009/082050号
国際特許出願公開第WO 2010/115067号
【0164】
Bechthold, I., Bretz, K., Kabasci, S., Kopitzky, R., Springer, A. (2008) Succinic acid: a new platform chemical for bio−based polymers from renewable resources. Chem. Eng. Technol. 5: 647−654.
【0165】
Davison, B. H., Nghiem, N. P., Richardson, G. L. (2004) Succinic acid adsorption from fermentation broth and regeneration. App. Biochem. Biotechnol. 113−116: 653−669.
【0166】
Delhomme, C., Weuster−Botz, D., Kuhn, F. E. (2009) Succinic acid from renewable resources as a C4 building−block chemical - a review of the catalytic possibilities in aqueous media. Green Chem. 11:13−26.
【0167】
Hong, Y. K. Hong, W. H. (2000a) Reactive extraction of succinic acid with triprophyamine (TPA) in various diluents. Bioproc. Eng. 22:284−284.
【0168】
Hong, Y. K., Hong, W. H. (2000b) Equilibrium studies on reactive extraction of succinic acid from aqueous solutions with tertiary amines. Bioproc. Eng. 22: 477−481.
【0169】
Hong, Y. K., Hong, W.H. (2000c) Extraction of succinic acid with 1−octanol/n−heptane solutions of mixed tertiary amine. Biopro. Engineer. 23: 535−538.
【0170】
Hong, S. H., Lee, S. Y. (2001) Metabolic flux analysis for succinic acid production by recombinant Escherichia coli with amplified malic enzyme activity. Biotechnol. Bioeng. 74: 89−95.
【0171】
Hong, Y. K., Hong, W. H., Chang, H. N. (2010) Selective extraction of succinic acid from binary mixture of succinic acid and acetic acid. Biotechnol. Lett. 22: 871−874.
【0172】
Huh, Y.S., Jun, Y−S., Hong, Y. K., Song, H., Lee, S. Y., Hong, W. H. (2006) Effective purification of succinic acid from fermentation broth produced by Mannheimia succiniproducens. Process Biochem. 41: 1461−1465.
【0173】
Inci, I. (2007) Linear salvation energy relationship modeling and kinetic studies on reactive extraction of succinic acid by tridodecylamine dissolved in MIBK. Biotechnol Prog. 23: 1171−1179.
【0174】
Jantama, K., Haupt, M. J., Svoronos, S. A., Zhang, X., Moore, J. C., Shanmugam, K. T., Ingram, L. O. (2008a) Combining metabolic engineering and metabolic evolution to develop nonrecombinant strains of Escherichia coli C that produce succinate and malate. Biotechnol. Bioeng. 99: 1140−1153.
【0175】
Jantama, K., Zhang, X., Moore, J. C., Shanmugam, K.T., Svoronos, S. A., Ingram, L. O. (2008b) Eliminating side products and increasing succinate yields in engineered strains of Escherichia coli C. Biotechnol. Bioeng. 101: 881−893.
【0176】
Jun, Y−S., Huh, Y. S., Hong, W. H., Hong, Y. K. (2005) Kinetics of the extraction of succinic acid with tri−n−octylamine in 1−Octanol solution. Biotechnol. Prog. 21: 1673−1679.
【0177】
Kurzrock, T., Weuster−Botz, D. (2010) Recovery of succinic acid from fermentation broth. Biotechnol. Lett. 32: 331−339.
【0178】
Li, Q., Li, W−l., Wang, D., Liu, B−b., Tang, H., Yang, M−h., Liu, Q−f., Xing, J−m., Su, Z−g. (2010) pH Neutrallization while succinic acid adsorption onto anion exchange resins. Appl. Biochem. Biotechnol. 160:438−445.
【0179】
Luque, R., Lin, C. S., Du, C., Macquarrie, D. J., Koutinas, A., Wang, R., Webb, C., Clark, J. H. (2009) Chemical transformations of succinic acid recovered from fermentation broths by a novel direct vacuum distillation−crystallization method. Green Chem. 11: 193−200.
【0180】
Song, H., Huh, Y.S., Lee, S. Y., Hong, W. H., Hong, Y. K. (2007) Recovery of succinic acid produced by fermentation of a metabolically engineered Mannheimia succiniproducens strain. J. Biotechnol. 132: 445−452.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収する方法であって、
(a)コハク酸のアンモニウム塩を含む水性溶液を提供し、
(b)酸性イオン交換樹脂をコハク酸のアンモニウム塩を含む水性溶液と接触させ、
(c)コハク酸のアンモニウム塩を水性溶液中、コハク酸およびアンモニウムカチオンに変換し、
(d)プロトン交換により、該水性溶液から該アンモニウムカチオンをイオン交換樹脂の表面上に分離し、それにより、水性溶液中にコハク酸を残存させ、
(e)水性溶液中のコハク酸を回収することを含み、
ここに、該変換工程(c)および分離工程(d)は、コハク酸のアンモニウム塩を含む水性溶液を、コハク酸の酸解離定数(pKa)よりも少なくとも0.5小さい酸解離定数を有する酸性イオン交換樹脂と接触させて、コハク酸を含む水性溶液および非水性アンモニウムカチオン含有酸性イオン交換樹脂を形成することによって成し遂げられる、方法。
【請求項2】
(a)アンモニウムカチオン含有酸性イオン交換樹脂を、該イオン交換樹脂の酸解離定数(pKa)よりも少なくとも0.5小さい酸解離定数を有する酸で洗浄し、
(b)該アンモニウムカチオンおよび該洗浄酸の共役塩基を含むアンモニウム塩を回収する
ことをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アンモニウムカチオン含有酸性イオン交換樹脂の洗浄に使用される酸が、硫酸、リン酸、塩酸および硝酸からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収する方法であって、
(a)コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスおよびアニオン性イオン交換樹脂を提供し、
(b)該アニオン性イオン交換樹脂を、コハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスと接触させ、
(c)該発酵ブロス中のコハク酸アンモニウムをコハク酸アニオンおよびアンモニウムカチオンに変換し、
(d)該コハク酸アニオンを、該イオン交換樹脂上のアニオンと交換し、
(e)適当な条件下で該イオン交換樹脂を洗浄して、該イオン交換樹脂に結合したコハク酸アニオン以外の物質を除去し、
(f)コハク酸アニオンを置換するのに十分な量の、コハク酸アニオンよりも強いアニオンを含有する酸で該樹脂を洗浄することによって、コハク酸アニオンを該イオン交換樹脂からコハク酸としてはずし、
(g)コハク酸を含有するフラクションを収集すること
を含む方法。
【請求項5】
アンモニウムカチオン含有酸性イオン交換樹脂を洗浄するために使用される酸が、硫酸、リン酸、塩酸、および硝酸からなる群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
イオン交換樹脂と発酵ブロスとの間の接触がバッチモードにおいて達成される、請求項1または4記載のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収する方法。
【請求項7】
イオン交換樹脂と発酵ブロスとの間の接触が連続イオン交換モードにおいて達成される、請求項1または4記載のコハク酸アンモニウムを含有する発酵ブロスからコハク酸を回収する方法。
【請求項8】
遠心分離、高温処理、アルカリ処理、マイクロろ過、限外ろ過およびダイアフィルトレーションからなる群から選択される方法を用いて、コハク酸アンモニウムを含む水性溶液を清浄化する工程をさらに含む、請求項1または4記載の方法。
【請求項9】
回収されたコハク酸をナノ膜でろ過して脱色を達成する回収されたコハク酸を洗練する工程をさらに含む、請求項1または4記載の方法。
【請求項10】
回収されたコハク酸を蒸発させて1リットルあたり少なくとも100gのコハク酸濃度を達成する蒸発工程をさらに含む、請求項1または4記載の方法。
【請求項11】
水性形態の回収されたコハク酸を結晶形態に変換する結晶化工程をさらに含む、請求項1または4記載の方法。
【請求項12】
該方法から回収されたコハク酸が100ppm未満の硫酸塩濃度を有する、請求項1または4記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2013−516180(P2013−516180A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547320(P2012−547320)
【出願日】平成22年12月31日(2010.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/062635
【国際公開番号】WO2011/082378
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512129033)ミリアント・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】MYRIANT CORPORATION
【Fターム(参考)】