説明

コバルト、ニッケル、珪素を含む銅合金

【課題】高強度、高導電率、曲げ特性の優れた銅合金の提供。
【解決手段】重量で、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト0.5〜2.0%、珪素:0.5%〜1.5%、マグネシウム:最大0.15%、および、残部としての銅および不可避の不純物から成る鍛錬銅合金。ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、ニッケル対コバルトの重量%比が1.01:1〜2.6:1であり、比(Ni+Co)/Siが3.5:1〜6:1であり、40%IACSを超える導電性を有し、降伏強度が655MPaを超え、ストリップ厚の関数としての最小曲げ半径が、良方向曲げおよび悪方向曲げの両者について、最高4tであり、温度950℃での溶体化処理後の平均粒径が20ミクロン以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金およびそのような合金の製造方法に関するものである。特に、第1の形態では、本発明は、制御量のコバルト、ニッケル、珪素を添加した銅合金に係わり、第2の形態では、本発明は、制御量のコバルト、ニッケル、珪素、銀を添加した銅合金に関するものである。本発明合金は、特に、電気コネクタ、リードフレームおよびその他の電流搬送部材に好適に成形される。
【0002】
本発明の第3の形態は、本発明合金およびニッケルと珪素を含むその他の銅合金の両者の製造方法に関するものである。具体的には、この方法は、Cu−NI−Si合金の熱間加工、その後の多段の焼鈍工程を含む。
【背景技術】
【0003】
市場では、(1)良好な加工性、(2)高強度、(3)適度な高導電性、および(4)良好な応力弛緩特性の組合せを有する金属合金に対する需要がある。この特性の組合せは、特に、フード下の自動車コネクタ、マルチメディア(例えば、コンピュータおよび家庭用電化製品)用電気コネクタ、端子関連品、箔、線および粉末、およびその他の製品に使用される各種電気配線に成形される部品にとって重要である。多くの商用銅合金がこれらの用途で用いられているが、必要な特性の組合せを欠いている。
【0004】
第一に挙げられる特性である加工性は、通常、曲げ試験によって評価される。特定のゲージ厚と調質状態での銅合金ストリップが、既知半径のマンドレルの周囲に90度曲げられ、次いで、ストリップ厚(t)の関数としての最小曲げ半径(mbr)がmbr/tとして報告される。最小曲げ半径は、倍率15倍で見えるクラックなしにストリップを曲げることができる、最小マンドレル半径である。一般に、mbr/tは、曲げ軸線が圧延方向に対して直角であると定義される良方向曲げ、および、曲げ軸線が圧延方向に対して平行であると定義される悪方向曲げの両者について報告される。良方向曲げおよび悪方向曲げの両者について、mbt/tが最高4tまでであれば、成形性が良好であるとみなされる。より好ましくは、最高2のmbt/tである。
【0005】
第二に挙げられる特性である適度の導電性は、通常、40%IACSを超えると考えられる。より好ましい導電性は超50%IACSである。IACSは、「純粋な」銅を20℃で導電性100%IACSとする、国際焼鈍銅標準(International Annealed Copper Standard)を意味する。この特許出願全体を通して、全ての電気的および機械的試験は、別に明記しない限り、室温(公称、20℃)で行われる。修飾的表現である「約」は、厳密さが要求されないことを示し、提示された値の±10%であると解釈すべきである。
【0006】
第三に挙げられる特性である高強度は、95ksi(655.1MPa)を超える(好ましくは、110ksi(758.5MPa)を超える)降伏強度であると考えられる。構成部品に成形された銅のゲージ厚が減少するにつれて、およびこれらの構成部品の小型化が続くにつれて、所定の調質に対する強度と導電性の組合せは、強度または導電性のいずれかが単独で考慮されるよりも重要である。
【0007】
第四に挙げられる特性である良好な耐応力弛緩性は、試験試料が150℃の温度に3000時間暴露された後に残存する、付加応力の少なくとも70%および試験試料が105℃の温度に1000時間暴露された後に残存する、付加応力の少なくとも90%として考えられる。
【0008】
応力弛緩は、ASTM(米国材料試験協会)標準E328−86に記載のようなリフト−オフ法により測定しうる。この試験は、固定ゆがみで3000時間までの時間、保持された銅合金試料における応力の減少を測定する。その手法は、片持ち梁の自由端を固定たわみまで押さえつけ、押さえつけた梁により与えられた負荷を温度での時間の関数として測定することより成る。これは、特別に設計された試験ラック中で片持ち梁試験試料を固定することにより達成される。標準的な試験条件は、片持ち梁を、室温0.2%オフセット降伏強度の80%に負荷をかけることである。算定されたたわみが約5.08mm(0.2インチ)を超えると、初期応力は、たわみが5.08mm(0.2インチ)より小さくなるまで、減少し、且つ負荷が再算定される。試験手順は、片持ち梁が算定された負荷値までロードされ、試験ラック中のねじ山付きねじを調節してたわみを保持し、およびねじ山付きねじをその場所でナットで固定することである。ねじ山付きねじから片持ち梁を持ち上げるのに必要な負荷が、初期負荷である。試験ラックは、所望の試験温度に設定された炉中に置かれる。試験ラックは、周期的に取り出されて、室温まで冷却され、および片持ち梁をねじ山付きねじから持ち上げるのに要する負荷が測定される。選択された対数時間に残存しているパーセント応力が算定され、且つ残存応力を縦軸(垂直)におよび対数時間を横軸(水平)にして、データを片対数グラフ紙上にプロットする。線形回帰法を用いて直線をデータにフィットさせる。内挿および外挿を用いて、1、1000、3000、および100000時間での応力残余値を生み出す。
【0009】
耐応力弛緩性は配向感受性であり、0°試験はストリップの圧延方向に試験試料の長い寸法で行われ、および試験試料のたわみはストリップの圧延方向に対して平行である、長さ(L)方向で報告されうる。耐応力弛緩性は、90°試験がストリップの圧延方向に直角な長寸法の試験試料で行われ、および試験試料のたわみはストリップの圧延方向に対して直角である、横(T)方向として報告される。
【0010】
一般に電気コネクタに使用される市販の銅合金の一つの群は、Cu−Ni−Si合金である。この合金は析出硬化可能であり、第2相としての珪化ニッケルの存在により高強度が達成される銅合金C7025と表される、一種のCu−Ni−Si合金は、Ni:2.2%〜4.2%、Si:0.25%〜1.2%、Mg:0.05%〜0.30%および残部としてのCuの組成を有する。合金の表示は、銅開発協会 (CDA)(ニューヨーク)による。銅合金C7025は、米国特許第4594221号および第4728372号明細書に、より詳細に開示されている。
【0011】
米国特許第6506269号明細書には、ニッケル、コバルト、珪素、およびマグネシウムまたは燐のいずれかを制御して添加した銅合金が開示されている。この特許は、高温法または低温法のいずれかにより銅合金を処理することを開示している。高温法は、上記の強度と導電性の目的の組合せが不足した特性を与える。高温法で処理した場合、例示の合金1は、51.9%IACSの導電性と709MPa(102.9ksi)の引張り強度を有することが報告されている。低温法で処理した場合には、例示の合金1は、51.5%IACSの導電性と905MPa(131.3ksi)の引張り強度を有することが報告されている。しかしながら、低温法は、劣った加工性と劣る耐応力弛緩性をもたらすと予期される、過剰な冷間加工を行って銅合金とする銅合金C7025は、Fe:0.28%〜1.0%、Ni:1.0%〜3.0%、Sn:0.10%〜1.0%、珪素0.20%〜1.0%および残部としてのCuの組成を有する銅合金C7025は、米国特許第6251199号明細書に、より詳細に開示されている。
【0012】
特開平11−222641号公報(1999年)には、ニッケル、珪素、マグネシウムおよび錫を制御して添加した銅合金が開示されている。任意の添加物として、コバルトと銀が挙げられる。
【0013】
析出硬化可能な銅合金の電気的および機械的特性は、銅合金の製造方法により大きく影響される。Cu−Ni−Si−In−Sn合金のための方法が、米国特許第5124124号明細書に開示されており、連続的な鋳造、溶体化、焼入れ、冷間圧延、析出焼鈍の処理シークエンスを含んでいる。
【0014】
最大0.5%までのNiとSiの組合せを任意に含んでいてもよいCu−Co−P合金の異なる製造方法が、米国特許第5147469号明細書に開示されている。この方法は、鋳造、熱間圧延、焼入れ、冷間圧延、溶体化、焼入れ、析出焼鈍、焼入れ、冷間圧延、焼鈍、および焼入れのプロセス工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4594221号明細書
【特許文献2】米国特許第4728372号明細書
【特許文献3】米国特許第6506269号明細書
【特許文献4】米国特許第6251199号明細書
【特許文献5】特開平11−222641号公報
【特許文献6】米国特許第5124124号明細書
【特許文献7】米国特許第5147469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
自動車およびマルチメディア産業、ならびに小型化がより厳しい強度および導電性要件を招いているその他の分野でのニーズに合致した特性の組合せを有する銅合金およびそれらの銅合金の製造方法に対するニードが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の観点での本発明は、実質的に、重量で、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト0.5〜2.0%、珪素:0.5%〜1.5%、および、残部としての銅および不可避の不純物から成り、ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1である鍛錬銅合金に関するものである。この鍛錬銅合金は、40%IACSを超える導電性を有する。
【0018】
本発明の第2の観点では、前記鍛錬銅合金が、最大1%までの銀、チタン、ジルコニウム、および、これらの組合せを更に含む。
【0019】
第三の観点での本発明は、高導電性、高強度および良好な加工性の組合せを有する銅基合金の製造方法に関するものである。この製造方法は、(a)重量で、ニッケル:0.5%〜5.0%、および珪素:0.1%〜1.5%を含む銅基合金を鋳造し、(b)鋳造された前記銅基合金を熱間加工して、第一の断面積減少を行い、(c)実質的に単一相合金を形成させるために有効な溶体化温度と第一の時間長で、鋳造銅基合金に溶体化処理(14)を施し、(d)溶体化処理後に、中間冷間加工を行なうことなく、第2相を析出させるために有効な第一の時効焼鈍温度と第二の時間長で、実質的に単一相である前記合金に第一の時効焼鈍を施して珪化物を有する多相合金を形成し、(e)多相合金に冷間加工を施して、第二の断面積減少を行い、(f)析出した粒子の容積分率を増大させるために有効な温度(ただし、第二時効焼鈍温度は第一の時効焼鈍温度よりも低い)および時間長で、多相合金に第二の時効焼鈍を施すという処理を順次実行する工程を包含する。
【0020】
さらに別の観点での本発明は、前記製造方法によって処理されるべき第二の銅合金に関するものである。この銅合金は、電気コネクタへの成形に適しており、実質的に、重量で、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト:0.5〜2.0%、銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せ:降伏強度と導電性の組合せを改善するために有効な量から最大1%まで、マグネシウム:最大0.15%、および、残部としての銅および不可避の不純物から成り、ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1であり、40%IACSを超える導電性を有する鍛錬銅合金である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ニッケル対コバルトの重量比の関数として、溶解曲線温度をグラフ的に示す。
【図2】本発明合金および他のCu−Ni−Si含有合金の第一の製造方法を表すフローチャートを示す。
【図3】本発明合金の別の製造方法を表すフローチャートを示す。
【図4】本発明の銅合金から製造された電気コネクタ組立品を表す断面図を示す。
【図5】最高の導電性が、(Ni+Co)/Siが3.5〜6.0であるときに達成されることを、グラフ的に示す。
【図6】第一の従来法に従って処理された本発明の銅合金の導電性と降伏強度の組合せに対する時効温度の影響を示す。
【図7】第二の従来法に従って処理された本発明の銅合金の導電性と降伏強度の組合せに対する時効温度の影響を示す。
【図8】第三の従来法に従って処理された本発明銅合金の導電性と降伏強度の組合せに対する時効温度の影響を示す。
【図9】本発明方法に従って処理された本発明銅合金の導電性と降伏強度の組合せに対する第二の時効温度の影響を示す。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1の実施形態による本発明銅合金は、制御された量のニッケル、コバルトおよび珪素を含み、かつ、制御されたニッケル対コバルト比を有する鍛錬合金である。さらに、特に亜鉛、クロム、マグネシウム、錫および燐から成る不純物の量が制御される。この銅合金は、40%IACSを超える導電性を有し、自動車およびマルチメディア等の用途で用いられる電気コネクタへの成形に適する。
【0023】
ニッケルとコバルト:
ニッケルとコバルトは珪素と組み合わされて、粒子成長を制限し且つ耐軟化性を向上させるために、時効硬化に有効な珪化物を形成する。ニッケルは、1%〜2.5%の量で存在する。ニッケル含有量が1%未満であると、合金強度は不十分である。ニッケル含有量が2.5%を超えると、導電性と熱間加工性が低下する。好的例において、ニッケル含有量は1.3%〜1.9%であり、最も好ましいニッケル含有量は1.3%〜1.5%である。
【0024】
コバルトは、0.5%〜2.5%の量で存在する。コバルト含有量が0.5%より少ないと、コバルト含有珪化物第2相の析出が不十分となる。さらに、0.5%の最小コバルト含有量と0.5%の最小珪素含有量とを組み合わせた場合、溶体化後の合金の粒径は20ミクロン以下に保たれる。コバルト含有量が2.5%を超える場合、過剰の第2相粒子が析出して、加工性の減少をもたらし、および銅合金には望ましくない強磁性特性が付与される。好ましくは、コバルト含有量は約0.5%〜約1.5%であり、最も好ましい形態において、コバルト含有量は約0.7%〜約1.2%である。
【0025】
析出時効処理の間、1.0%以上のコバルト含有量は、連続析出が優先して、セル状析出を抑制すると考えられる。セル状析出は、時効処理の間に移動性粒子境界の後方に生成する平行なCuに富むNi2Siラメラの不規則なアレイを形成する。珪化物ラメラは、通常、大きすぎて有効な時効硬化をもたらさず、且つ銅成分は再結晶化されるか軟化される。より好ましいものは、強力な時効硬化応答に貢献するサブミクロンのコヒーレント/セミコヒーレントな粒子をもたらす連続析出である。
【0026】
ニッケルとコバルトの組合せの合計は、1.7〜4.3重量%に維持される。好ましくは、この合計は、2〜4重量%であり、最も好ましくは、2.3〜2.7重量%である。これらの範囲外では、合金を処理して、所望の特性の組合せを達成することは困難である。
ニッケル対コバルトの重量比は、所望の特性の組合せを達成するために、(Ni:Co)=0.5:1〜5:1に維持される。好ましくは、ニッケルが少し過剰であることであり、ニッケル対コバルトの重量比は、1.01:1〜2.6:1であり、最も好ましくは、ニッケル対コバルトの重量比は、1.05:1〜1.5:1である。
珪素を含む銅合金中のニッケルとコバルトの相互作用は、図1に示されており、溶体化処理の間、Cu−Co−Si合金の溶解曲線温度は相対的に高く、コバルト+珪素が2.5%(基準点2)である場合1050℃より高いので、多量の珪化コバルトが銅に溶解することは困難である。同様に、Cu−Ni−Si合金の溶解曲線温度はまた、相対的に高く、ニッケル+珪素が4.0%(基準点4)である場合は850℃より高い。ニッケルとコバルトの混合物が存在する場合には、ニッケル対コバルト比は、溶解曲線温度に影響を与える。コバルト+ニッケル+珪素の量が3.0%である場合、ニッケル対コバルト重量比が1:1(基準点6)のとき、溶解曲線温度は約1000℃である。ニッケル対コバルト重量比が2:1(基準点7)のとき、溶解曲線温度は約915℃であり、ニッケル対コバルト重量比が4:1(基準点8)のとき、溶解曲線温度は約905℃である。溶解曲線温度がより低い組成では、コバルト、ニッケルおよび珪素の銅に対する固相溶解が促進される。
【0027】
合金が下記のように処理され、それによって第2相珪化物が析出した後、直径約20nm(200Å)の第2相粒子の電子顕微鏡分析は、バルク合金中のそれに近い比の第2相粒子中のニッケル対コバルト比で、ニッケルが直接コバルトと置き換わっていることを示す。
【0028】
珪素:
珪素は、ニッケルやコバルト等の珪化物形成剤が存在すると、第2相珪化物の形成により強度を増大させるのに有効である。珪素含有量が0.5%より少ない場合は、強度を増大させるには不十分な容積分率の析出物が生成し、且つ溶体化処理粒径のコントロールが困難である。珪素含有量が1.5%を超える場合は、過剰な数の粗大な粒子が生成する。好ましくは、珪素含有量は、0.5%〜0.8%であり、最も好ましくは0.55%〜0.65%である。
【0029】
本発明銅合金の導電性は、(Ni+Co)/Siの重量比が2:1〜7:1である場合に、最も高い。より好ましくは、(Ni+Co)/Siの重量比が3:1〜6:1であり、最も好ましくは、3.5:1〜6:1である。ニッケル、コバルトおよび珪素の合金元素が上記の比で定義された範囲外の量で銅合金中に存在する場合には、導電性は低下する。
【0030】
銀、チタンおよびジルコニウム:
銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの合金の組合せを少量、1%より少なく添加すると、降伏強度/導電性の組合せが改善される。銀の添加はまた、応力弛緩特性を改善する。
【0031】
本発明の第2の形態において、銅合金は、さらに、最大1%までの銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せを含む。好ましくは、これらの元素は0.2%〜0.7%である。好ましい形態において、銀0.2%〜0.7%、チタン0.15%〜0.3%、またはジルコニウム0.2%〜0.5%の一つを添加する。
【0032】
他の元素:
本発明銅合金は、基本的な物性を実質的に変化するのに有効ではなく且つ依然として添付の特許請求の範囲内である量で、他の、不特定の元素を含みうる。さらに、銅合金は、おそらく、ある種の不可避の不純物を含む。しかしながら、不純物の量と不特定の添加は、以下のように限られている。
【0033】
亜鉛:
亜鉛含有量は、最大0.5%、および好ましくは0.25%未満に保たれる。亜鉛含有量がこの最大量を超えたときは、導電性が減少する。最も好ましくは、最大亜鉛含有量は、0.1%未満である。
【0034】
クロム:
クロム含有量は、最大0.08%に保たれる。クロム含有量がこの最大量を超えたときは、粗大なクロム含有珪化物の生成の可能性が増大する。好ましくは、クロム含有量は、0.02%未満である。
【0035】
錫:
鈴含有量は、最大0.3%、および好ましくは0.04%未満に保たれる。錫含有量がこの最大量を超えたときは、導電性が減少する。最も好ましくは、錫含有量は、0.02%未満である。
【0036】
燐:
燐含有量は、好ましくは0.04%未満である。燐含有量がこの量を超えたときは、燐化コバルトおよび燐化ニッケルが析出し、珪化物の生成に用いうるコバルトとニッケルの量が減少する。好ましくは、燐含有量は、0.02%未満である。
【0037】
少量であるが有効量の、脱酸化、脱硫、および脱炭用の元素もまた、存在していても良い。典型的には、これらの元素は、0.15%未満の量で、好ましくは0.005%〜0.04%までの量で存在する。そのような元素として、マグネシウム、カルシウム、およびミッシュ・メタルが挙げられる。マグネシウムは、また、製造過程での時効焼鈍熱処理中の応力弛緩特性および耐軟化性を増大し、最も好ましい。
【0038】
いずれか一種の元素が0.1%未満で、合計が0.5%未満の量で存在しうる、他の元素として、鉄、マンガン、アルミニウム、鉛、ビスマス、イオウ、テルル、セレン、ベリリウム、砒素、アンチモン、およびホウ素が挙げられる。
【0039】
この開示は、特に、銅合金ストリップの製造方法に関係するが、本発明合金および本発明方法は、同じく、他の合金製品、例えば、ホイル、ワイヤ、バーおよびチューブの製造に適用しうる。さらに、従来の鋳造法以外の方法、例えば、ストリップ鋳造、粉末冶金、およびスプレー鋳造も、本発明の範囲である。
【0040】
図2を見ると、本発明の第3の形態によれば、銅合金はストリップまたは他の有用な形状に成形される。適切な比率の合金成分の混合物を溶融銅に添加する。溶融金属を、直接冷却(DC)鋳造に好適な鋳型に注ぎ、且つ鋳造物10をインゴットに成形する。他の方法、例えばスプレー鋳造、薄ストリップ鋳造および連続または半連続鋳造は、熱間圧延12または冷間圧延に好適な形状で合金が存在するように使用される。
【0041】
合金は、温度750℃〜1050℃で熱間加工12される。好ましい熱間加工温度は、850℃〜1000℃である。ストリップについては、熱間加工、特に熱間圧延が、またロッドやワイヤについては、押出し加工を用い得る。熱間加工の後、合金は典型的には、溶体化処理に好都合なゲージ厚まで冷間加工13される。ストリップ形状では、溶体化処理用の厚さの例は、約0.05mm(0.002インチ)〜2.54mm(0.10インチ)である。表面は、例えば、フライス研削またはブラッシングにより調整されて、所望の表面特性を得る。
【0042】
次いで、銅合金は、第一の温度で第一の時間、溶体化焼鈍14され、その温度と時間の組合せは単一相合金を実質的に形成するのに有効なものである。中性または還元雰囲気で、好適な溶体化処理温度は、約750℃〜約1050℃であり、好適な時間は、約10秒〜約1時間である。一般に、より多くのニッケルが存在すると、粗大な粒子の生成を減少させるために、より低い溶体化処理温度である(図1の指示線4を参照)。より多くのコバルトが存在すると、固相溶解を促進するために、より高い溶体化処理温度である(図1の指示線2を参照)。図2を見ると、ストリップのためには、好ましい溶体化焼鈍14は、温度約800℃〜約1000℃で、時間約10秒〜約5分である。最も好ましい溶体化処理温度は、900℃〜975℃である。
【0043】
溶体化焼鈍14には、周囲温度(周囲は公称、20℃である)への焼入れまたは急冷16が引き続く。好ましくは、冷却速度は、100℃/分を超える。焼入れまたは急冷の後、銅合金は、約25%IACS(14.5MS/m)未満の導電性および好ましくは約5〜20μmである等軸晶粒径を有する。
【0044】
溶体化焼鈍とそれに続く焼入れのシーケンスは多数回繰り返され、典型的には、任意的な冷間圧延工程がそのような焼鈍の間に挿入される。多数回のシーケンスは、より均一な粒子分布と質感に導く。一般に、最後のものを除いて、各々の溶体化焼鈍の温度は、上記の広く定義された範囲内のどれであっても良い。最後の溶体化焼鈍温度は、粒径をコントロールするので、好ましい粒径を達成しおよび/または好ましい径を有する第2相粒子の制御された容積分率を達成するように、より精密に選択される。
【0045】
焼入れ16の後、銅合金は、珪化物を有する多相合金を形成するのに有効な量の第2相を析出させるために有効な温度と時間で、第一の焼鈍18に付される。ストリップについて、第一の焼鈍の例は、中性または還元雰囲気で、温度約350℃〜約600℃で、時間約30分〜約30時間である。より好ましくは、第一の焼鈍18は、温度約475℃〜約550℃で、時間約30分〜約24時間である。第一の焼鈍の最も好ましい温度範囲は、490℃〜530℃である。電気特性、機械特性、加工性、および耐応力弛緩性の最適な組合せは、第一の焼鈍18の後、中間冷間加工なしに、直ちに溶体化処理→焼入れのシーケンスが行われる場合に、最終製品中で達成される。
【0046】
本発明の別の方法は、第二時効焼鈍温度が第一の時効焼鈍温度よりも低いという注意点を前提として、焼入れと第一の時効焼鈍の間に冷間圧延工程を含む。
【0047】
本明細書中で開示された焼鈍のいずれもが、段階的焼鈍プロセスでありうる。典型的には、段階的焼鈍において、第一工程は、第二工程よりも高い温度である。段階的焼鈍は、一定温度での焼鈍に比べて、強度と導電性のより良好な組合せをもたらしうる。その後、合金は冷間加工20され、厚さが5%〜50%減少し、および、導電性を増大させるのに有効な温度と時間で第二焼鈍22に付される。好ましくは、第二焼鈍22温度は、第一の焼鈍18温度よりも低い。ストリップについて、第二焼鈍温度の例は、中性または還元雰囲気で、約350℃〜約600℃で、時間約10秒〜約30時間である。より好ましくは、第二の焼鈍26は、温度約350℃〜約500℃で、時間約1時間〜約24時間である。冷間加工20とそれに続く第二の焼鈍22のシーケンスは、所望のゲージ厚と特性が達成されるまで、多数回繰り返される。
【0048】
前記製造方法は本発明銅合金に特に好適であるが、この製造方法はまた、他の析出硬化銅合金に適用可能である。特に、Mが珪化物生成体、好ましくはニッケル、コバルトまたはそれらの混合物であるCu−M−Si合金、例えば、M:0.5%〜5%およびSi:0.2%〜1.5%を含むものは、この方法で恩恵を受ける。
【0049】
同様に本発明方法で恩恵を受けると思われる他の銅基合金は、Xがチタン酸塩形成剤であるCu−X−Ti合金である。好ましい組成は、Ti:0.35%〜5%およびX:0.001%〜5%(ここで、Xは、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、Co、および、これらの組み合わせから選択される)および残部としてのCuと不可避の不純物を含む。好ましい形態において、この合金は、2002年9月13日に出願された係属中の米国仮特許出願第60/410592号明細書に開示されているように、Ni:0.5%〜5%およびTi:0.35%〜2.5%を含む。
【0050】
図3に示されたような、別の製造方法によれば、銅合金は、製造工程中の溶体化熱処理を用いないで、仕上げゲージ厚へ処理することができる。鋳造10、熱間圧延12および第一の冷間加工13の工程は、上記と同様である。第一の冷間加工13の後、合金は、中性または還元雰囲気中、温度約350℃〜約600℃、時間約30分〜約30時間で、第一の時効焼鈍18に付される。より好ましくは、第一の焼鈍18は、温度約450℃〜約575℃で、時間約30分〜約24時間である。前記方法と同様に、時効焼鈍は、段階的な方法でありうる。
【0051】
第一の時効焼鈍18には、銅合金の厚さを好ましくは約10%〜約50%、より好ましくは約15%〜30%減少させる第二冷間加工20が引き続く。第二冷間加工工程の後には、第一の時効焼鈍よりも低い温度である第二の時効焼鈍が続き、例えば、中性または還元雰囲気中、約350℃〜約500℃で、時間約10秒〜約30時間である。より好ましくは、第二の時効焼鈍22は、温度約375℃〜約475℃で、時間約1時間〜約24時間である。第二の時効焼鈍の最も好ましい温度範囲は、400℃〜450℃である。
【0052】
冷間加工20とそれに続く第二の時効焼鈍22の工程は、銅合金ストリップが最終ゲージ厚となるまで、多数回繰り返される。この別の製造方法は、特に、より高い導電性の製品を作製するのに好適である。
【0053】
本発明合金および本発明の製造方法に従って作製されるCu−Ni(および/またはCo)−Si合金は、特に、図4に示されるタイプの電気または電子コネクタ組立品の製造に好適である。このコネクタ組立品40は、本発明銅合金および本発明方法に従って処理された他の銅合金を利用する。コネクタ組立品40は、ソケット42とプラグまたはジャック44を含む。ソケット42は、銅合金のストリップから形成され、且つ典型的にはプラグ44に接触するための平坦部46と共に、所望の形に曲げられる。プラグ44の挿入により引き起こされた平坦部46の変位によって合金ストリップ中に発生した応力によって、プラグ44との一貫した接触が保持される。コネクタ組立品40がより高い温度に曝されると、特に温度が100℃を超えると、この内部応力が徐々に分散し(応力弛緩)、且つ平坦部46とプラグ44との間の接触が低下する。本発明合金と本発明に従って処理された他の銅合金は、高い温度での応力弛緩により良好に抵抗し、且つ改善された電気コネクタをもたらす。
【0054】
本発明を、以下の実施例により、さらに詳細に説明する。
【実施例2】
【0055】
重量%で、表1に列挙された組成を有する銅合金は、直接冷却(DC)鋳造による0.15mx0.76mmx7.6m(6インチx30インチx25フィート)バーへのバー(接頭語「RN」で識別)の製造または4.54Kg(10ポンド)の実験室的インゴット(接頭語「J」で識別)として鋳造のいずれかで調製した。実施例中で別に明記しない限り、製造バーは、約900℃でソーキングすることによりミルプレートに加工し、および15.2mm(0.6インチ)へ熱間圧延した。熱間圧延コイルは約600℃で約5〜15時間ソーキングし、次いで、フライス研削して熱間圧延の間に生じた表面酸化物を除去した。
【0056】
実施例中で別に明記しない限り、実験室的インゴットはシリカ坩堝中で溶融することによりミルプレートに加工し、且つ溶融金属をスチール金型中で鋳造した。開門後、インゴットは、10.2cmx10.2cmx4.45cm(4インチx4インチx1.75インチ)であった。インゴットを約900℃で約3時間ソーキングし、且つ2.79cm(1.1インチ)に熱間圧延した。熱間圧延プレートを約900℃に再加熱し、さらに約1.27cm(0.5インチ)に熱間圧延した。1.27cm(0.5インチ)のプレートを約900℃に再加熱し、5分間その温度に保ち、次いで、水焼入れをした。その後、焼入れプレートを約600℃で約5〜15時間ソーキングし、トリミングおよびフライス研削して、熱間圧延の間に生じた表面酸化物を除去した。
【0057】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】


実施例1:
本実施例は、本発明合金がなぜ0.5重量%を超える珪素およびコバルト含有量の両者を有するかを例証する。
【0058】
表2に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、温度800℃〜1,000℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れ18を行った。粒径は、光学顕微鏡で測定し、表2に記載した。合金J724については、溶体化処理温度900℃〜950℃で、粒径を測定したというよりはむしろ推定した。
【0059】
【表2−1】


【表2−2】


表2のデータは、合金が0.5%より多いコバルトと珪素の両者を有する場合に、直径が約20μmより小さい、制御された、細かい粒径が、最高950℃までの溶体化処理温度で達成されることを示している。この粒径制御は、コバルトまたは珪素のいずれかが0.5%よりも少ない場合には達成されない。
【0060】
実施例2:
本実施例は、高降伏強度および高導電性の組合せのために、0.5重量%を超える珪素含有量および1.7%〜4.3%のニッケルとコバルトの合計量を維持する効果を例証する。
【0061】
フライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、950℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。これらの合金は、525℃で3時間第一の時効処理を施し、冷間圧延して25%の厚さ減少してゲージ厚0.30mm(0.0120インチ)とし、および425℃で6時間、第二の時効処理を施した。達成された降伏強度と導電性の組合せを、90°良方向および悪方向の曲げ加工性として、表3に列挙する。
【0062】
【表3】


表3のデータは、Ni/Coおよび(Ni+Co)/Si比がそれぞれ≒0.5および3.8〜4.6に固定された場合に、0.4%〜1.13%の珪素量および1.7%〜4.3%の(Ni+Co)量が達成されることを表している。データは、Si:約0.5より多い合金が、758MPa(110ksi)および50%IACSの組合せに到達しうることを示している。これらのデータはまた、上記の範囲内で珪素および(Ni+Co)量の両者を増大させると、導電性を有意に変化させることなく、降伏強度が上がることを表している。
【0063】
実施例3:
本実施例は、仕上げゲージ厚において2より大きいNi/Co比が最大降伏強度を与え、一方1より小さいNi/Co比がより良い導電性を与えることを例証する。表4に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、温度900℃〜1,000℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。これらの合金は、525℃で3時間、第一の時効焼鈍し、冷間圧延して25%厚さ減少してゲージ厚0.30mm(0.0120インチ)とし、その後、425℃で6時間、第二の時効焼鈍した。
【0064】
仕上げゲージ厚での合金の機械的および電気的特性を、表4に記載する。データは、Ni/Co比が減少すると導電性が増大し且つ降伏強度が低下することを示す。降伏強度および導電性の両者のNi/Co比への依存性は、予期されないことである。
【0065】
【表4】


実施例4:
本実施例は、(Ni+Co)/Si比が3.5〜6.0であるときに、降伏強度と導電性の最高の組合せが得られることを例証する。表5に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、950℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。次いで、合金を、525℃で3時間、第一の時効処理を施し、冷間圧延して25%厚さ減少してゲージ厚0.30mm(0.0120インチ)とし、およびその後、425℃で6時間、第二の時効処理を施した。表5および図5に示されるように、(Ni+Co)/Si比が3.5(図5の指示線50)〜6.0(図5の指示線52)である場合に、758MPa(110ksi)を超える降伏強度および40%IACSを超える導電性の組合せが達成される。
【0066】
【表5】


実施例5:
本実施例は、銀、チタンおよびジルコニウムを少量添加すると、降伏強度と導電性の組合せが増大することを例証する。表6に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、900°〜975℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。次いで、これらの合金を、525℃で3時間、第一の時効処理を施し、冷間圧延24して25%厚さ減少してゲージ厚0.30mm(0.0120インチ)とし、およびその後、425℃で6時間、第二の時効処理を施した。仕上げゲージ厚での降伏強度および導電性は表6に記載され、および銀、チタンおよびジルコニウムを合金に希薄に添加すると、合金の降伏強度/導電性の組合せが改善されることを示す。
【0067】
【表6】


表7に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、975℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。これらの合金を、525℃で3時間、第一の時効処理を施し、冷間圧延24して25%厚さ減少してゲージ厚0.30mm(0.0120インチ)とし、およびその後、400℃で16時間、第二の時効処理を施した。仕上げゲージ厚での降伏強度および導電性は表7に記載され、および銀を合金に希薄に添加すると、表6の合金に比べて、処理を少し変えた場合でさえも、合金の降伏強度/導電性の組合せが改善されることが確認される。
【0068】
【表7】


実施例6:
本実施例は、マグネシウムおよび/または銀を制御して添加すると、本発明合金の耐応力弛緩性がどのように改善されるかを例証する。実施例はさらに、より低いNi:Co重量比(よりCoに富む)を有する合金が、より高いNi:Co重量比(よりNiに富む)を有する合金よりも、より良好な耐応力弛緩性を有することを例証する。この効果は、合金がさらに銀を含むか否かにかかわらず認められる。
【0069】
表8に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延した。その後、合金J824、J834、J835およびJ836を975℃で60秒間溶体化処理し、525℃で3時間、第一の時効処理を施し、冷間圧延して25%減少し、およびその後、400℃で16時間、第二の時効処理を施した。
【0070】
表8に列挙された合金のフライス研削されたプレートを925℃で60秒間溶体化処理し、500℃で8時間、第一の時効処理を施し、冷間圧延して25%減少し、且つ400℃で16時間、第二の時効焼鈍を施した。
【0071】
【表8】


合金J824(Mg:0.12%)とJ834(Ag:0.20%)について残存している応力とJ835(MgまたはAgなし)について残存している応力との比較は、MgまたはAgのいずれかを制御して添加すると、耐応力弛緩性が改善されることを示している。J836は、MgとAgの組合せが同様に、耐応力弛緩性を向上することを示している。
【0072】
合金J956(Ag:0.19%)と合金J954およびJ955との比較は、Ag:約0.2%が耐応力弛緩性を有意に改善するための最小量であることを示している。さらに、合金J981〜合金J954または合金J982〜合金J955は、Mgを本発明の銀含有合金に添加すると、耐応力弛緩性がさらに向上することを示している。
【0073】
合金J835(Ni:Co=0.40)と合金J969(Ni:Co=1.32)との比較および合金J834(Ni:Co=0.43)と合金J956(Ni:Co=1.04)との比較は、銀の存在下および銀の不存在下の両者において、コバルトに富む組成物がニッケルに富む組成物よりも、より良好な耐応力弛緩性を有することを示している。
【0074】
実施例7:
本実施例は、どのようにして本発明の製造方法が、従来のプロセス経路により処理された類似の合金に比べてより高い導電性を有するCu−Ni−Si合金をもたらすかを示している。合金がさらにコバルトを含むときには、この導電性の増大は、降伏強度の増大を伴っている。
【0075】
表9に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)または0.31mm(0.0123インチ)に冷間圧延し、800℃〜950℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。溶体化処理後、従来法での処理に従って、焼入れ合金を、厚さで25%、0.91mm(0.016インチ)〜0.30mm(0.0120インチ)にあるいは厚さで35%、0.31mm(0.0123インチ)〜0.20mm(0.008インチ)に冷間圧延し、および25%冷間圧延減少に対しては450℃で2時間、あるいは35%冷間圧延に対しては435℃で3時間、時効処理した。仕上げゲージ厚での機械的特性を表9に列挙する。
【0076】
【表9】


同じ合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、850℃〜975℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。本発明方法に従って、中間冷間加工なしに、合金を、525℃で3時間、第一の時効処理を施し、冷間圧延して25%厚さ減少してゲージ厚0.30mm(0.0120インチ)とし、および400℃で3時間、第二の時効処理を施した。仕上げゲージ厚での機械的特性を表10に列挙する。
【0077】
【表10】


表9でのデータと表10でのそれとの比較は、中間冷間加工を行なうことなく、溶体化処理後の第一の時効焼鈍を含む2回の時効焼鈍を適用する、本発明方法は、導電性を有意に増大させる。コバルトを含む合金については、この導電性の増大は、強度の増大と組み合わされる。
【0078】
実施例8:
本実施例は、同様に、より高い強度とより高い導電性のコバルト含有合金が本発明方法を用いて得られることを例証する。表11に列挙された合金のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、850℃または950℃のいずれかで60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。これらの合金を、525℃で3時間、第一の時効処理を施し、およびその後、冷間圧延して15%または25%のいずれかに厚さ減少してゲージ厚0.35mm(0.0136インチ)または0.30mm(0.0120インチ)とした。冷間圧延の後、合金を400℃で3時間または450℃で3時間のいずれかで、第二の時効処理を施した。仕上げゲージ厚での機械的特性は表10に記載され、且つ溶体化処理され第一の時効処理(525℃/3時間)が施されたストリップを25%冷間圧延し、その後400〜450℃で3〜6時間第二の時効処理を施すと、合金の降伏強度は約138〜207MPa(20〜30ksi)増大することを示している。コバルトを添加した合金は、コバルトを有しない合金、J395よりも有意に高い降伏強度、予期されない知見を示す。
【0079】
【表11−1】


【表11−2】


実施例9:
本実施例は、多くの従来技術の方法と比較して、本発明の製造方法が、降伏強度と導電性のより優れた組合せを有する銅合金をもたらすことを例証する。本実施例はさらに、第二の時効焼鈍の温度が第一の時効焼鈍の温度より低い場合に、物性の最高の組合せを達成する。
【0080】
合金RN503014のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、950℃で60秒間溶体化処理し、その後、水焼入れを行った。この溶体化処理されたストリップを、次いで、表12に示すプロセス手順に従って処理した。プロセス4が本発明方法である。プロセス1について、降伏強度および導電性に対する時効温度の影響を図6に示す。プロセス2について、降伏強度および導電性に対する時効温度の影響を図7に示す。プロセス3について、降伏強度および導電性に対する時効温度の影響を図8に示す。プロセス4での第一の時効温度は、525℃、3時間であった。プロセス1での、降伏強度および導電性に対する第二の時効温度の影響を図9に示す。
【0081】
【表12】


表13は、四つプロセスの各々により処理された合金に対する最高の降伏強度における導電性および最高の導電性における降伏強度を報告している。プロセス4のみが、高降伏強度と導電性の最高の組合せを達成する。
【0082】
【表13】


図9は、さらに、約525℃の第一の時効温度での本発明方法の下で、第二の時効温度がより低い温度である、好ましくは第二の時効温度が400℃〜450℃の範囲である場合に、降伏強度と導電性の最適の組合せが達成される。
【0083】
実施例10:
本実施例は、米国特許第6506269号明細書に開示された高温法または低温法のいずれかと比較して、本発明方法を用いて、改善された特性の組合せが得られることを例証する。合金J910のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、且つ925℃で60秒間溶体化処理した。合金を、500℃で8時間、第一の時効焼鈍を施し、25%冷間圧延して0.30mm(0.0120インチ)とし、且つ400℃で16時間、第二の時効焼鈍を施した。
【0084】
合金J989のフライス研削されたプレートを半分に分割した(合金J989−Aおよび合金989−B)。合金J989−Aを、米国特許第6506269号明細書の高温法に従って処理し、0.76mm(0.030インチ)に冷間圧延し、925℃で60秒間溶体化処理し、60%冷間圧延して0.30mm(0.012インチ)とし、かつ525℃で6時間、時効焼鈍した。
【0085】
合金J989−Bを、米国特許第6506269号明細書の低温法に従って処理し、3.0mm(0.12インチ)に冷間圧延し、400℃で6時間、第一の時効焼鈍を施し、60%冷間圧延して1.2mm(0.048インチ)とし、400℃で6時間、第二の時効焼鈍を施し、75%冷間圧延して0.30mm(0.012インチ)とし、且つ430℃で6時間、第三の時効焼鈍を施した。
表14は、合金の測定された特性を示す。
【0086】
【表14】


J910の曲げ特性は測定されなかったが、本発明に従って処理された類似の合金からのデータに基づけば、良方向でのMBR/tは2.2であることが予期され、悪方向でのMBR/tは2.5であることが予期された。このことは、本発明方法が、米国特許第6506269号明細書の方法と比較して、降伏強度と導電性の類似の組合せにおいて改善された曲げを有する銅合金をもたらすことを示している。
【0087】
実施例11:
本実施例は、仕上げゲージ厚での導電性応答が第一および第二の時効処理の両者に依存することならびに第一の時効焼鈍が525℃である場合に、導電性が第二の時効焼鈍後に大きな増加且つより高い値を示すことを例証する。
【0088】
合金J648のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、950℃で60秒間溶体化熱処理し、その後、水焼入れを行った。合金を、次いで、475℃で3時間または525℃で3時間のいずれかで、第一の時効処理を施した。フライス研削されたプレートは、その後、冷間圧延して25%の厚さ減少して0.30mm(0.0120インチ)とし、且つ温度400℃〜450℃で3時間または6時間のいずれかで、第二の時効処理を施した。
【0089】
表15に示されているように、仕上げゲージ厚での導電性応答は第一および第二の時効処理の両者に依存する。これらのデータはまた、第一の時効焼鈍が525℃である場合に、導電性が第二の時効焼鈍後に大きな増加且つより高い値を示すことを表している。この予期しない時効応答は、合金が高強度と高導電性の所望の組合せにアプローチすることを可能とする。
【0090】
【表15】


実施例12:
本実施例は、銅合金C7025の導電性が本発明による処理により増大することを例証する。
【0091】
合金J724とJ731のフライス研削されたプレートを0.41mm(0.016インチ)に冷間圧延し、780℃〜840℃の温度で溶体化熱処理し、その後、水焼入れを行って、再結晶されたストリップを得た。次いで、中間冷間加工せずに、合金を、525℃で3時間、時効焼鈍し、仕上げゲージ厚0.030mm(0.0120インチ)に冷間圧延し、且つ400℃で3時間または425℃で6時間のいずれかで、時効処理した。
【0092】
仕上げゲージ厚での機械的特性を表16に示す。強度および曲げ特性の組合せは、類似の調質において655〜690MPa(95〜100ksi)の降伏強度および40%〜45%IACSの導電性を有する従来のように処理された銅合金C7025に匹敵する。本発明方法は、降伏強度の損失なしに、従来のように処理されたC7025のそれを超える導電性を達成した。
【0093】
【表16】


以上、本発明の具体例について説明したが、本明細書に開示した発明の概念から逸脱することなく、多くの変形、修正、および改変を行い得ることが明らかである。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神および広い範囲の内のものである全てのそのような変形、修正、および改変を包含するものである。
【0094】
本発明の特徴は以下に示すとおりである。
[1] 実質的に、重量で、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト0.5〜2.0%、珪素:0.5%〜1.5%、および、残部としての銅および不可避の不純物から成る鍛錬銅合金において、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%であり、
比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1であり、
40%IACSを超える導電性を有する鍛錬銅合金。
[2] ニッケル含有量が1.3%〜1.9%、コバルト含有量が0.5%〜1.5%、珪素含有量が0.5%〜0.8%であることを特徴とする[1]に記載された鍛錬銅合金。
[3] ニッケル対コバルトの重量%比が1.01:1〜2.6:1であることを特徴とする[2]に記載された鍛錬銅合金。
[4] 690MPa(100ksi)以上の降伏強度を有することを特徴とする[3]に記載された鍛錬銅合金。
[5] 溶体化処理後の鍛錬銅合金の平均粒径が20ミクロン以下であることを特徴とする[1]に記載された鍛錬銅合金。
[6] ニッケル含有量が1.3%〜1.9%、コバルト含有量が0.5%〜1.5%、珪素含有量が0.5%〜0.8%であることを特徴とする[1]に記載された鍛錬銅合金。
[7] ニッケル対コバルトの重量%比が1.01:1〜2.6:1であることを特徴とする[6]に記載された鍛錬銅合金。
[8] 亜鉛の最大含有量が0.25%、クロムの最大含有量が0.08%であることを特徴とする[1]、[5]または[7]に記載された鍛錬銅合金。
[9] ニッケル含有量が1.3%〜1.9%、コバルト含有量が0.5%〜1.5%、および珪素含有量が0.5%〜0.8%であることを特徴とする[8]に記載された鍛錬銅合金。
[10] 実質的に、重量で、ニッケル:1%〜2.5%、
コバルト:0.5〜2.0%、
銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せ:降伏強度と導電性の組合せを改善するために有効な量から最大1%まで、
マグネシウム:最大0.15%、および
残部としての銅および不可避の不純物から成る鍛錬銅合金において、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%であり、
比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1であり、
40%IACSを超える導電性を有する鍛錬銅合金。
[11] 銀含有量が0.2%〜0.7%であることを特徴とする[10]に記載された鍛錬銅合金。
[12] マグネシウム含有量が0.005%〜0.04%、亜鉛の最大含有量が0.25%、クロムの最大含有量が0.08%、錫と燐の各々の最大含有量が0.04%であることを特徴とする[11]に記載された鍛錬銅合金。
[13] ニッケル含有量が1.3%〜1.9%、コバルト含有量が0.5%〜1.5%、珪素含有量が0.5%〜0.8%であることを特徴とする[12]に記載された鍛錬銅合金。
[14] ニッケル対コバルトの重量%比が1.01:1〜2.6:1であることを特徴とする[13]に記載された鍛錬銅合金。
[15] 鍛錬銅合金が690MPa(100ksi)以上の降伏強度を有することを特徴とする[14]に記載された鍛錬銅合金。
[16] 溶体化処理後の鍛錬銅合金の平均粒径が20ミクロン以下であることを特徴とする[11]に記載された鍛錬銅合金。
[17] マグネシウム含有量が0.005%〜0.04%、亜鉛の最大含有量が0.25%、クロムの最大含有量が0.08%、錫と燐の各々の最大含有量が0.04%であることを特徴とする[16]に記載された鍛錬銅合金。
[18] ニッケル含有量が1.3%〜1.9%、コバルト含有量が0.5%〜1.5%、珪素含有量が0.5%〜0.8%であることを特徴とする[11]または[17]に記載された鍛錬銅合金。
[19] ニッケル対コバルトの重量%比が1.01:1〜2.6:1であることを特徴とする[18]に記載された鍛錬銅合金。
[20] マグネシウム含有量が0.005%〜0.04%、亜鉛の最大含有量が0.25%、クロムの最大含有量が0.08%、錫と燐の各々の最大含有量が0.04%であることを特徴とする[19]に記載された鍛錬銅合金。
[21] a)重量で、ニッケル:0.5%〜5.0%、および珪素:0.1%〜1.5%を含む銅基合金を鋳造(10)し、
b)鋳造された前記銅基合金を熱間加工(12)して、第一の断面積減少を行い、
c)実質的に単一相合金を形成させるために有効な溶体化温度と第一の時間で、鋳造銅基合金に溶体化処理(14)を施し、
d)溶体化処理後に、中間冷間加工を行なうことなく、第2相を析出させるために有効な第一の時効焼鈍温度と第二の時間長で、実質的に単一相である前記合金に第一の時効焼鈍(18)を施し、
e)多相合金に冷間加工(20)を施して、第二の断面積減少を行い、
f)追加量の第2相を析出させるために有効な第三の時間長および前記第一の時効焼鈍温度よりも低い第二の時効焼鈍温度で、前記多相合金に第二の時効焼鈍(23)を施す処理を順次実行することを特徴とする銅基合金の製造方法。
[22] 前記溶体化処理工程(14)後に、前記鍛錬銅合金の平均粒径が20ミクロン以下であることを特徴とする[21]に記載された銅基合金の製造方法。
[23] 前記熱間加工工程(b)(12)と前記溶体化処理工程(c)(14)との間に、前記鍛錬銅合金を冷間加工(13)する工程を含む[21]に記載された銅基合金の製造方法。
[24] 前記熱間加工工程(12)と前記冷間加工(13)工程の両者が圧延加工であって、前記鍛錬銅合金がストリップに成形されることを特徴とする[23]に記載された銅基合金の製造方法。
[25] a)重量で、ニッケル:0.5%〜5.0%、および、珪素:0.1%〜1.5%を含む銅基合金を鋳造(10)し、
b)鋳造された前記銅基合金に1回以上の熱間加工(12)を施して、熱間加工成形品になし、
c)前記熱間加工成形品に、800℃を超えて前記銅基合金の固相線温度までの温度で溶体化処理(14)を施し、
d)溶体化処理(14)後に、中間冷間加工を行なうことなく、温度350℃〜600℃、30分〜30時間の第一の時効焼鈍(18)を熱間加工成形品に施し;
e)前記熱間加工成形品に冷間加工(20)を施して、10%〜50%の断面積減少を行なった冷間加工成形品になし、
f)前記第一の析出焼鈍温度よりも低い温度で、前記冷間加工成形品に第二の時効焼鈍(22)を施す処理を順次実行することを特徴とする銅基合金の製造方法。
[26] 前記熱間加工(12)が温度850℃〜1000℃で行なわれ、前記溶体化処理が温度800℃〜1000℃の間で行なわれることを特徴とする[25]に記載された銅基合金の製造方法。
[27] 前記熱間加工工程(b)(12)の後に、前記銅基合金に焼入れ処理を施す工程を更に含む[26]に記載された銅基合金の製造方法。
[28] 前記第一の時効焼鈍(18)が温度475℃〜550℃で行なわれ、前記第二の時効焼鈍温度が350℃〜500℃であることを特徴とする[27]に記載された銅基合金の製造方法。
[29] 前記焼入れと、前記溶体化処理工程(c)(14)との間に、溶体化処理に有効なゲージ厚に前記銅合金を冷間加工(13)する工程を更に含む[28]に記載された銅基合金の製造方法。
[30] 前記熱間加工工程(12)と前記冷間加工工程(13)の両者が圧延加工であり、それによって、前記銅合金がストリップに成形されることを特徴とする[29]に記載された銅基合金の製造方法。
[31] 前記銅合金が、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト:0.5〜2.0%、珪素:0.5%〜1.5%、および、残部としての銅および不可避不純物から成り、ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1である組成を有するものとして選択されることを特徴とする[29]に記載された銅基合金の製造方法。
[32] 前記銅基合金が、
ニッケル:1%〜2.5%、
コバルト:0.5〜2.0%、
珪素:0.5%〜1.5%、
銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せ:降伏強度と導電性の組合せを改善するために有効な量から最大1%まで、
マグネシウム:最大0.15%、および、
残部としての銅および不可避不純物から成り、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1である組成を有するものとして選択されることを特徴とする[29]に記載された銅基合金の製造方法。
[33] 前記銅合金が、ニッケル:2.2%〜4.2%、珪素:0.25%〜1.2%、マグネシウム0.05%〜0.30%、および、残部としての銅から成る組成を有するものとして選択されることを特徴とする[29]に記載された銅基合金の製造方法。
[34] a)重量で、ニッケル:0.5%〜5.0%、および、珪素:0.1%〜1.5%を含む銅基合金を鋳造(10)し、
b)鋳造された前記銅基合金に1回以上の熱間加工(12)を施して、熱間加工成形品になし、
c)温度350℃〜600℃、30分〜30時間の第一の時効焼鈍(18)を前記熱間加工成形品に施し、
d)前記熱間加工成形品に冷間加工(20)を施して、10%〜50%の断面積減少を行なった冷間加工成形品になし、
e)前記第一の析出焼鈍温度よりも低い温度で、前記冷間加工成形品に第二の時効焼鈍(22)を施す前記各処理を順次実行することを特徴とする銅基合金の製造方法。
[35] 前記熱間加工(12)が温度850℃〜1000℃で行なわれることを特徴とする[34]に記載された銅基合金の製造方法。
[36] 前記熱間加工工程(b)(12)の後に、前記銅基合金に焼入れ処理を施す工程を更に含む[35]に記載された銅基合金の製造方法。
[37] 前記第一の時効焼鈍(18)が温度475℃〜550℃で行なわれ、前記第二の時効焼鈍が温度350℃〜500℃で行なわれることを特徴とする[36]に記載された銅基合金の製造方法。
[38] 前記銅基合金が、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト:0.5〜2.0%、珪素:0.5%〜1.5%、および、残部としての銅および不可避不純物から成り、ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが3.5〜5.5である組成を有するものとして選択されることを特徴とする[37]に記載された銅基合金の製造方法。
[39] 前記銅基合金が、
ニッケル:1%〜2.5%、
コバルト:0.5〜2.0%、
珪素:0.5%〜1.5%、
銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せ:降伏強度と導電性の組合せを改善するために有効な量から最大1%まで、
マグネシウム:最大0.15%、および、
残部としての銅および不可避不純物から成り、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1である組成を有するものとして選択されることを特徴とする[37]に記載された銅基合金の製造方法。
[40] 熱間加工工程(b)(12)と第一時効焼鈍工程(c)(18)の間に冷間加工(13)の工程をさらに含む[34]に記載された銅基合金の製造方法。
[41] 熱間加工工程(b)(12)と第一時効焼鈍工程(c)(18)の間に中間冷間加工がない、[34]に記載された銅基合金の製造方法。
[42] a)重量で、ニッケル:0.5%〜5.0%、および珪素0.1%〜1.5%を含む銅基合金を鋳造(10)し、
b)鋳造された前記銅基合金に1回以上の熱間加工(12)を施して、熱間加工成形品になし、
c)前記熱間加工成形品に、800℃を超えて前記銅基合金の固相線温度までの温度で溶体化処理(14)を施し、
d)断面積減少のために前記銅基合金に冷間加工を施し、
e)温度350℃〜600℃、30分〜30時間の第一の時効焼鈍(18)を前記熱間加工によるプレートに施し、
f)前記熱間加工成形品に冷間加工(20)を施して、10%〜50%の断面積減少を行なった冷間加工成形品になし、
g)前記第一の析出焼鈍温度よりも低い温度で、前記冷間加工成形品に第二の時効焼鈍(22)を施す前記各処理を順次実行することを特徴とする銅基合金の製造方法。
[43] 前記熱間加工(12)が温度850℃〜1000℃で行なわれ、前記溶体化処理が温度800℃〜1000℃で行なわれることを特徴とする[42]に記載された銅基合金の製造方法。
[44] 前記熱間加工工程(b)(12)の後に、前記銅基合金に焼入れ処理を施す工程を更に含む[43]に記載された銅基合金の製造方法。
[45] 前記第一の時効焼鈍(18)が温度475℃〜550℃で行なわれ、前記第二の時効焼鈍が温度350℃〜500℃で行なわれることを特徴とする[44]に記載された銅基合金の製造方法。
[46] 前記焼入れ処理と前記溶体化処理工程(c)(14)との間に、溶体化処理に有効なゲージ厚に前記銅基合金を冷間加工(13)する工程を更に含む[45]に記載された銅基合金の製造方法。
[47] 前記熱間加工(12)工程と前記冷間加工工程の両者が圧延加工であり、それによって、前記銅基合金がストリップに成形されることを特徴とする[46]に記載された銅基合金の製造方法。
[48] 前記銅基合金が、
ニッケル:1%〜2.5%、
コバルト:0.5〜2.0%、
珪素:0.5%〜1.5%、
残部としての銅および不可避不純物から成り、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1である組成を有することを特徴とする[46]に記載された銅基合金の製造方法。
[49] 前記銅基合金が、
ニッケル:1%〜2.5%、
コバルト:0.5〜2.0%、
珪素:0.5%〜1.5%、
銀、チタン、ジルコニウムおよびこれらの組合せ:降伏強度と導電性の組合せを改善するために有効な量から最大1%まで、
マグネシウム:最大0.15%、および、
残部としての銅および不可避不純物から成り、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1〜7:1である組成を有するものとして選択されることを特徴とする[46]に記載された銅基合金の製造方法。
[50] 前記銅基合金が、ニッケル:2.2%〜4.2%、珪素:0.25%〜1.2%、マグネシウム:0.05%〜0.30%、および残部としての銅から成る組成を有するものとして選択されることを特徴とする請求項46に記載された銅基合金の製造方法。
[51] a)チタン:0.35%〜5%、および、X:0.001%〜5%(ここで、Xは、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、Co、および、これらの組合せから選択される)を含む銅基合金を鋳造(10)し;
b)鋳造された前記銅基合金に1回以上の熱間加工(12)を施して、熱間加工成形品になし、
c)前記熱間加工成形品に、800℃を超えて前記銅基合金の固相線温度までの温度で溶体化処理(14)を施し、
d)断面積減少のために前記銅基合金に冷間加工を施し、
e)温度350℃〜600℃、30分〜30時間の第一の時効焼鈍(18)を前記熱間加工によるプレートに施し、
f)前記熱間加工成形品に冷間加工(20)を施して、10%〜50%の断面積減少を行なった冷間加工成形品になし、
g)前記第一の析出焼鈍温度よりも低い温度で、前記冷間加工成形品に第二の時効焼鈍(22)を施す前記各処理を順次実行することを特徴とする銅基合金の製造方法。
[52] 前記熱間加工(12)が温度850℃〜1000℃で行なわれ、前記溶体化処理(14)が温度800℃〜1000℃で行なわれることを特徴とする[51]に記載された銅基合金の製造方法。
[53] 前記熱間加工工程(b)(12)の後に、前記銅基合金に焼入れ処理を施す工程を更に含む[52]に記載された銅基合金の製造方法。
[54] 前記第一の時効焼鈍(18)が温度475℃〜550℃で行なわれ、前記第二の時効焼鈍が温度350℃〜500℃で行なわれることを特徴とする[53]に記載された銅基合金の製造方法。
[55] 前記焼入れ処理と前記溶体化処理工程(c)(14)との間に、溶体化処理に有効なゲージ厚に前記銅基合金を冷間加工(13)する工程を更に含む[54]に記載された銅基合金の製造方法。
[56] 前記熱間加工工程(12)と前記冷間加工工程(13)の両者が圧延加工であり、それによって、前記銅基合金がストリップに成形されることを特徴とする[55]に記載された銅基合金の製造方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量で、ニッケル:1%〜2.5%、コバルト0.5〜2.0%、珪素:0.5%〜1.5%、マグネシウム:最大0.15%、および、残部としての銅および不可避の不純物から成る鍛錬銅合金において、
ニッケルとコバルトの合計含有量が1.7%〜4.3%、ニッケル対コバルトの重量%比が1.01:1〜2.6:1であり、
比(Ni+Co)/Siが3.5:1〜6:1であり、
40%IACSを超える導電性を有し、降伏強度が655MPaを超え、ストリップ厚(t)の関数としての最小曲げ半径が、良方向曲げおよび悪方向曲げの両者について、最高4tであり、温度950℃での溶体化処理後の平均粒径が20ミクロン以下である鍛錬銅合金。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−157630(P2011−157630A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106531(P2011−106531)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【分割の表示】特願2004−519717(P2004−519717)の分割
【原出願日】平成15年7月1日(2003.7.1)
【出願人】(506071210)オリン コーポレイション (12)
【出願人】(501357647)ヴィーラント − ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト (2)