説明

コルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体及びベルトクランプ取付方法

【課題】本発明は、取付作業の効率化、コストの低減、製品の品質や見栄えの向上を図り、製品の交差のバラツキを抑えることができるコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体及びベルトクランプ取付方法を提供する。
【解決手段】
本構造体に用いられるコルゲートチューブ1には、割れ部1cを挟んで長手方向に延びた第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bが形成されている。ベルトクランプ60のバンド部60aは、第1のスリット部1aに挿入され、コルゲートチューブ1内のワイヤハーネスWを保持し、第2のスリット1bから出て、バンドロック部60bの挿通孔60d内に挿入され固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体及びベルトクランプ取付方法に関し、特に、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスの外周に装着されるコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体及びベルトクランプ取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスには、他の部材との接触による損傷のおそれがある箇所にコルゲートチューブが装着されている。また、ワイヤハーネスを車体パネル等の所望の位置に固定する手段として、ベルトクランプが用いられている。
【0003】
図5(A)は従来のコルゲートチューブを示す平面図、(B)は通常のベルトクランプを示す平面図である。
【0004】
従来のコルゲートチューブ50は、図5(A)に示すように、円環状の凹部50a、凸部50bを長手方向に連続して形成された蛇腹形状をしており、長手方向に沿って割れ部50cが形成され、その割れ部50cを押し広げてワイヤハーネスWの所要位置の外周に嵌めて装着される。
【0005】
通常のベルトクランプ60は、図5(B)に示すように、帯状に延びて形成されたバンド部60aと、バンド部60aの基端に設けられ、バンド部60aの先端を挿入して固定する挿通孔60dが形成されたバンドロック部60bと、バンドロック部60bに突出して設けられ、自動車の車体パネル等の係止孔(図示せず)の周縁に係止される係止部60cとを有し、合成樹脂等により一体に形成されている。
【0006】
図6は、従来のコルゲートチューブ50へのベルトクランプ取付方法を説明するための説明図であり、(A)及び(D)は正面断面図、(B)及び(C)は側面図である。
【0007】
まず、コルゲートチューブ50の割れ部50cを開いて、コルゲートチューブ50をワイヤハーネスWに装着する(図6(A)参照)。
【0008】
次いで、ベルトクランプ60の取付位置の周辺領域にビニールテープ61を巻き付ける(図6(B)参照)。これは、コルゲートチューブ50の割れ部50cが開いたり、端部同士が重なるのを防止したり、ベルトクランプ60のバンド部60aを締め付けた際に、ベルトクランプ60がコルゲートチューブ50の凸部50bから凹部50aに滑り落ちて、横ズレするのを防止するためである。
【0009】
次いで、ベルトクランプ60のバンド部60aをコルゲートチューブ50のビニールテープ61上に巻き付ける(図6(C)参照)。
【0010】
次いで、バンド部60aの先端をバンドロック部60bの挿通孔60dに挿入して固定することにより、コルゲートチューブ50の外周を締め付ける(図6(D)参照)。
【0011】
その後、必要に応じて、余分なバンド部60aの部分を切断する(以下、この技術を従来例1という)。
【0012】
また、特許文献1には、ワイヤハーネスに外装する半割りコルゲートチューブの所定位置にクランプ取出穴を設けておき、ワイヤハーネスに予め取り付けた車体係止用のクランプの車体係止部を上記クランプ取出穴より突出させて該車体係止部で半割りコルゲートチューブを保持して、該半割りコルゲートチューブをワイヤハーネスに取り付けているワイヤハーネスへのコルゲートチューブ取付構造が提案されている。この構造によれば、半割りコルゲートチューブを捩れることなくワイヤハーネスに取り付けることができる、としている(以下、この技術を従来例2という)。
【0013】
また、特許文献2には、ワイヤハーネスに外装されるコルゲートチューブの外周に巻き付けるバンド部と、バンド部の後端に設けられ、コルゲートチューブに巻き付けたバンド先端を挿入して固定するバンドロック部と、バンドロック部より突出して、自動車の車体パネル等に係止するクリップとを備え、バンド部に長手方向に延在するスリットを設け、スリットの両側に一対の嵌挿部を形成し、スリットにコルゲートチューブの環状凸部を挿入して突出させると共に、嵌挿部をコルゲートチューブの環状凹部に嵌め込んで、バンド部がコルゲートチューブに位置決め保持されるコルゲートチューブ用バンドクリップが提案されている。このコルゲートチューブ用バンドクリップによれば、コルゲートチューブの外周にバンド部を巻き付けて位置決めした状態で、巻付位置が横ズレすることを確実に防止することができる、としている(以下、この技術を従来例3という)。
【特許文献1】特開平11−168815号公報
【特許文献2】特開平08−308070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来例1では、コルゲートチューブ50の割れ部50cの開き・端部同士の重なりやベルトクランプ60の横ズレを防止するために、ビニールテープ61を使用しているので、取付作業の工数が増え、作業時間がかかるとともに、部品点数が増えるので、コストの増加に繋がるという課題があった。
【0015】
また、コルゲートチューブ50の表面部分をベルトクランプ60のバンド部60aによって締め付けているので、コルゲートチューブ50が変形したり、潰れてしまう。その結果、製品の品質や見栄えを損ない、製品の公差にバラツキが生じるという課題があった。
【0016】
さらに、コルゲートチューブ50をワイヤハーネスWに固定するためには、ワイヤハーネスWの外径に対応したサイズの内径を備えたコルゲートチューブ50を用いる必要があり、種々のサイズの汎用品で柔軟に対応することは困難であるという課題があった。
【0017】
従来例2では、テープによりクランプをワイヤハーネスに固定しており、取付作業の工数が増え、作業時間がかかるとともに、部品点数が増えるので、コストの増加に繋がるという課題があった。
【0018】
従来例3では、コルゲートチューブの表面部分をベルトクランプのバンド部によって締め付けているので、コルゲートチューブが変形したり、潰れてしまう。その結果、製品の品質や見栄えを損ない、製品の公差にバラツキが生じるという課題があった。
【0019】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、取付作業の効率化、コストの低減、製品の品質や見栄えの向上を図り、製品の交差のバラツキを抑えることができるコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体及びベルトクランプ取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体は、ワイヤハーネスの外周に装着され、長手方向に割れ部が形成されたコルゲートチューブと、帯状に延びて形成されたバンド部と、当該バンド部の基端に設けられたバンドロック部と、当該バンドロック部に突出して設けられ、他の部材の係止孔に係止される係止部とを有するベルトクランプとを有し、前記コルゲートチューブには、前記割れ部を挟んで長手方向に延びた一対の第1のスリット部及び第2のスリット部が形成され、前記ベルトクランプのバンド部は、前記第1のスリット部に挿入され、前記コルゲートチューブ内のワイヤハーネスを保持し、前記第2のスリット部から出て、前記バンドロック部の挿通孔内に挿入され固定されていることを特徴とするものである。
【0021】
前記第1のスリット部及び第2のスリット部の長手方向の長さは、前記ベルトクランプのバンド部の幅方向の長さと略同一であってもよい。
【0022】
前記第1のスリット部及び第2のスリット部は、前記割れ部近傍に形成されていてもよい。
【0023】
本発明のコルゲートチューブへのベルトクランプ取付方法は、
前記コルゲートチューブの割れ部を挟んで長手方向に延びて形成された一対の第1のスリット部及び第2のスリット部に、前記ベルトクランプのバンド部を順次挿通するステップと、
前記ワイヤハーネスを、前記コルゲートチューブの割れ部を介して前記ベルトクランプのバンド部を押し込むようにして前記コルゲートチューブ内に挿入するステップと、
前記ベルトクランプのバンド部の前記第2のスリット部から出た先端部を前記バンドロック部の挿通孔内に挿入して固定することにより、前記ベルトクランプのバンド部で、前記コルゲートチューブ内のワイヤハーネスを保持するステップと、
を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、ベルトクランプのバンド部をコルゲートチューブの第1のスリット部及び第2のスリット部に通して、コルゲートチューブの内部のワイヤハーネスを締め付けているので、コルゲートチューブの割れ部の開き・端部同士の重なりやベルトクランプの横ズレが生じることがない。その結果、コルゲートチューブにテープを巻き付ける必要がなくなり、従来よりも部品点数が減少し、コストを抑えることができるとともに、製品の品質や見栄えの向上を図ることができる。
【0025】
また、ベルトクランプのバンド部により、コルゲートチューブの内部のワイヤハーネスの部分を締め付けており、コルゲートチューブを締め付けていないので、コルゲートチューブの変形や潰れが起こらない。その結果、製品の品質や見栄えを向上させ、製品の交差のバラツキを抑えることができる。
【0026】
また、ベルトクランプのバンド部により、コルゲートチューブの内部のワイヤハーネスの部分を直接締め付けているので、必ずしもワイヤハーネスの外径に対応したサイズの内径を備えたコルゲートチューブを用いる必要はなく、種々のサイズの汎用品で柔軟に対応することができる。
【0027】
さらに、コルゲートチューブに形成された第1のスリット部及び第2のスリット部の位置で、ベルトクランプを横ズレさせることなく、正確かつ確実に位置決めすることができる。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、ベルトクランプの長手方向の横ずれを確実に防止できる。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、ワイヤハーネスを保持するバンド部の保持領域が増えるので、ワイヤハーネスを確実に締め付けることができるとともに、取付が容易になり、作業性が向上する。
【0030】
請求項4に係る発明によれば、コルゲートチューブの開きやベルトクランプの横ズレを防止するためにテープを巻き付ける作業が必要ないので、作業時間を短縮化でき、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、従来と同一に相当する部材や部分は同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
図1は本発明の実施形態例に係るコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体を示す斜視図、図2は図1のII-II線断面図、図3は本発明の実施形態例に用いられるコルゲートチューブを示す斜視図である。
【0033】
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態例に用いられるコルゲートチューブ1には、割れ部1cを挟んで長手方向に延びた第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bが形成されている。第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bは、予めコルゲートチューブ1に形成されていてもよく、既存のコルゲートチューブ1にカッタ等の治具を用いて形成してもよい。
【0034】
また、ベルトクランプ60のバンド部60aは、第1のスリット部1aに挿入され、コルゲートチューブ1内のワイヤハーネスWを保持し、第2のスリット1bから出て、バンドロック部60bの挿通孔60d内に挿入され固定される。
【0035】
第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bの長手方向の長さd1は、ベルトクランプ60のバンド部60aの幅方向の長さd2と略同一であるのが好ましい。これによって、ベルトクランプ60の長手方向の横ずれを確実に防止できる。
【0036】
また、第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bは、割れ部1c近傍に形成されているのが好ましい。これによって、ワイヤハーネスWを保持するバンド部60aの保持領域が増えるので、ワイヤハーネスWを確実に保持できるとともに、取付が容易になり、作業性が向上する。
【0037】
図4(A)〜(C)は、本発明の実施形態例に係るコルゲートチューブ1へのベルトクランプ取付方法を説明するための断面図である。
【0038】
まず、コルゲートチューブ1の第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bに、ベルトクランプ60のバンド部60aを通す(図4(A)参照)。
【0039】
次いで、ワイヤハーネスWを、コルゲートチューブ1の割れ部1cを介してベルトクランプ60のバンド部60aを押し込むようにして、コルゲートチューブ1内に挿入する(図4(B)参照)。
【0040】
次いで、ベルトクランプ60のバンド部60aの第2のスリット部1bから出た先端をバンドロック部60bの挿通孔60d内に挿入し、固定する(図4(C)参照)。これによって、ベルトクランプ60のバンド部60aで、コルゲートチューブ1内のワイヤハーネスWを保持する。
【0041】
その後、必要に応じて、余分なバンド部60aの部分を切断する(図2参照)。
【0042】
本発明の実施形態例に係るコルゲートチューブ1へのベルトクランプ取付構造体によれば、ベルトクランプ60のバンド部60aをコルゲートチューブ1の第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bに通して、コルゲートチューブ1の内部のワイヤハーネスWを締め付けているので、コルゲートチューブ1の割れ部1cの開き・端部同士の重なりやベルトクランプ60の横ズレが生じることがない。その結果、コルゲートチューブ1にテープを巻き付ける必要がなくなり、従来よりも部品点数が減少し、コストを抑えることができるとともに、製品の品質や見栄えの向上を図ることができる。
【0043】
また、ベルトクランプ60のバンド部60aにより、コルゲートチューブ1を締め付けていないので、コルゲートチューブ1の変形や潰れが起こらない。その結果、製品の品質や見栄えを向上させ、製品の交差のバラツキを抑制することができる。
【0044】
また、ベルトクランプ60のバンド部60aにより、コルゲートチューブ1の内部のワイヤハーネスWの部分を直接締め付けているので、必ずしもワイヤハーネスWの外径に対応したサイズの内径を備えたコルゲートチューブ1を用いる必要はなく、種々のサイズの汎用品で柔軟に対応することができる。
【0045】
さらに、コルゲートチューブ1に形成された第1のスリット部1a及び第2のスリット部1bの位置で、ベルトクランプ60を横ズレさせることなく、正確かつ確実に位置決めすることができる。
【0046】
本発明の実施形態例に係るコルゲートチューブ1へのベルトクランプ取付方法によれば、コルゲートチューブ1の開きやベルトクランプ60の横ズレを防止するためにテープを巻き付ける作業が必要ないので、作業時間を短縮化でき、作業効率を向上させることができる。
【0047】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスWの外周に装着されるコルゲートチューブ1にベルトクランプ60を取り付ける作業を行う際に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態例に係るコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体を示す斜視図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】本発明の実施形態例に用いられるコルゲートチューブを示す斜視図である。
【図4】(A)〜(C)は、本発明の実施形態例に係るコルゲートチューブへのベルトクランプ取付方法を説明するための断面図である。
【図5】(A)は従来のコルゲートチューブを示す平面図、(B)は通常のベルトクランプを示す平面図である。
【図6】従来のコルゲートチューブへのベルトクランプ取付方法を説明するための説明図であり、(A)及び(D)は正面断面図、(B)及び(C)は側面図である。
【符号の説明】
【0050】
1:コルゲートチューブ
1a:第1のスリット部
1b:第2のスリット部
1c:割れ部
60:ベルトクランプ
60a:バンド部
60b:バンドロック部
60c:係止部
60d:挿通孔
W:ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの外周に装着され、長手方向に割れ部が形成されたコルゲートチューブと、
帯状に延びて形成されたバンド部と、当該バンド部の基端に設けられたバンドロック部と、当該バンドロック部に突出して設けられ、他の部材の係止孔に係止される係止部とを有するベルトクランプと、
を有し、
前記コルゲートチューブには、前記割れ部を挟んで長手方向に延びた一対の第1のスリット部及び第2のスリット部が形成され、
前記ベルトクランプのバンド部は、前記第1のスリット部に挿入され、前記コルゲートチューブ内のワイヤハーネスを保持し、前記第2のスリット部から出て、前記バンドロック部の挿通孔内に挿入され固定されている、
ことを特徴とするコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体。
【請求項2】
前記第1のスリット部及び第2のスリット部の長手方向の長さは、前記ベルトクランプのバンド部の幅方向の長さと略同一であることを特徴とする請求項1に記載のコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体。
【請求項3】
前記第1のスリット部及び第2のスリット部は、前記割れ部近傍に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコルゲートチューブへのベルトクランプ取付構造体。
【請求項4】
コルゲートチューブにベルトクランプを取り付ける取付方法において、
前記コルゲートチューブの割れ部を挟んで長手方向に延びて形成された一対の第1のスリット部及び第2のスリット部に、前記ベルトクランプのバンド部を順次挿通するステップと、
前記ワイヤハーネスを、前記コルゲートチューブの割れ部を介して前記ベルトクランプのバンド部を押し込むようにして前記コルゲートチューブ内に挿入するステップと、
前記ベルトクランプのバンド部の前記第2のスリット部から出た先端部を前記バンドロック部の挿通孔内に挿入して固定することにより、前記ベルトクランプのバンド部で、前記コルゲートチューブ内のワイヤハーネスを保持するステップと、
を有することを特徴とするコルゲートチューブへのベルトクランプ取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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