説明

コロイドナノ結晶の合成後修正

予め合成されたナノ結晶の正確かつ予測的な修正法。該方法は、結晶材料の溶解性挙動を拠り所にしてナノ結晶成長プロセスの制御された逆転(すなわち溶解)を提供している。コロイドナノ結晶の合成後修正法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有する第一のナノ結晶を用意し、(2)ナノ結晶と、ナノ結晶の少なくとも一つのコンポーネントに結合できる少なくとも一つのリガンドと、少なくとも一つの溶媒と、不活性ガス雰囲気とを含む反応混合物を形成し、そして(3)第二のサイズ及び/又は第二の形状を有する少なくとも第二のナノ結晶が製造されるように、反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を、しばらくの間、約100℃〜約240℃の範囲の温度で修正することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2009年1月20日出願の米国仮特許出願第61/145,925号「溶液中でのコロイドナノ結晶の合成後形状修正のための方法(METHOD FOR THE POST-SYNTHESIS SHAPE MODIFICATION OF COLLOIDAL NANOCRYSTALS IN SOLUTION)」(Bartlら)に基づく優先権を主張し、前記出願の全内容を引用によって本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本発明は、ナノ結晶及びそれらを製作するための方法に関する。特に、本発明は、コロイドナノ結晶の合成後形状及び/又はサイズ修正のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ナノ結晶は、様々な形状(ドット、ロッド、ファイバー、テトラポッド及びその他の幾何学的形状)及び1〜100nmの範囲のサイズを有する半導体又は金属の小結晶子である。例えば、いわゆる量子ドットは、その励起子が全三つの空間次元に閉じ込められている半導体である。半導体及び金属ナノ結晶の最も目を引く特徴は、バルク材料とは対照的に、それらの電子的及び光学的性質が粒子のサイズ及び形状に依存するがゆえに、それらの性質を広範囲にわたって連続的に制御できることである。こうした独自の特徴は、ナノ結晶を、ナノエレクトロニクス、ナノフォトニクス(nano-photonics)、ソリッドステートライトニング(solid-state lightning)、エネルギー変換と貯蔵、及び健康科学といった多様な分野における先進的応用のための有力な候補にしている。例えば、ナノ結晶は、次世代の単一光子発生及び検出、暗号化、マイクロレージング(micro-lasing)及び太陽エネルギー変換のための重要なコンポーネントと見なされている。さらに、ナノ結晶は、生体標識及びイメージングや標的薬物送達においても集中的に研究されている。例えば、ナノ結晶は、従来の分子色素と比較した場合、ナノ結晶色素は明るく、一般的に光退色を受けないため、生体標識及びイメージングにおける色素として使用するのに優れていると考えられている。
【0004】
[0004]この広範囲の用途の可能性は、調整可能なサイズ及び形状を有するナノ結晶を製作するための頑強かつ普遍的 (ロバストかつユニバーサル) な合成ルートの開発に向けた研究に火を付けた。こうした努力の中で卓越していたのは、1993年のMurray、Norris及びBawendiの独創的業績で、彼らは、ほぼ単分散の半導体カルコゲン化カドミウム(すなわち、CdS、CdSe及びCdTe)半導体ナノ結晶量子ドットを製造するための比較的単純で頑強(ロバスト)な溶液ベースの合成ルートを報告した。彼らの技術は、長アルキル鎖界面活性剤/溶媒系の存在下、約200℃〜約350℃の範囲の温度で、コロイド結晶−核形成及び成長化学を使用している。溶媒の例は、長鎖アルキルホスフィン、長鎖アルキルホスフィン酸化物、及び長鎖アルケンなどである。しかしながら、高温合成法で使用される溶媒/界面活性剤系は一般的に極めて高価であり、また該溶媒/界面活性剤系は一般的に反応から反応へと再利用できない。
【0005】
[0005]Bawendiグループの発見を受けて、広範な研究が様々なタイプのナノ結晶材料の合成に捧げられてきた。有機金属前駆体種及び反応と結晶化の条件(反応成分の濃度、溶媒、成長時間など)に関して元のBawendi法を少し修正することにより、異なる組成、サイズ及び形状を有する豊富なナノ結晶の開発がもたらされたが、興味深いことに、典型的な合成条件はいずれも元の高温(例えばカルコゲン化カドミウムナノ結晶の場合200〜350℃)の結晶子核形成及び成長ルートに基づいていることに注意する。
【0006】
[0006]Bawendiなどの研究に続いて、広範な研究は、異なる形状を有するナノ結晶の合成法の開発にも捧げられてきた。現在、ロッド、ファイバー、テトラポッド及びその他の幾何学的形状などの近球形(near-spherical)以外の形状を有するナノ結晶は、高品質ナノ結晶の典型的なコロイド有機金属化学ベースの合成中又は合成されたナノ結晶のエッチング法のいずれかによって形成されている。第一の方法では、ナノ結晶の成長が一つ又は複数の次元に有利になるように反応条件を調整する。この方法は非球形の形状をもたらすが、一つ又は複数の方向に伸びた形状は量子閉じ込めの部分的喪失を招くので、励起子はもはや三次元的に閉じ込められていない。第二の方法は、合成された近球形ナノ結晶の形状を修正するために酸又は塩基エッチングを使用する。この技術では三次元の量子閉じ込めは維持されるが、この方法は一般に水性の酸及び/又は塩基環境を必要とするので、ナノ結晶の品質を保持するためにいくつかの合成及び合成後ステップを必要とする。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本開示は、予め合成されたコロイドナノ結晶の形状及び/又はサイズを修正できる方法を記載する。該方法は、競合する熱力学及び動力学的プロセスを通じたナノ結晶成長プロセスの制御された逆転に依拠したもので、ナノ結晶の形状及びサイズ修正の程度を予測的に制御することを可能にする。該方法は、量子閉じ込めレジームにあるサイズ及び形状を有する形状修正ナノ結晶の製作を可能にするので、生成した励起子のナノ結晶内での三次元閉じ込めがもたらされる。従って、該ナノ結晶は、サイズ及び形状依存性の電子的及び光学的性質を保有するため、エレクトロニクス及びフォトニクス、ソリッドステートライトニング、エネルギー、及び健康科学といった多様な分野における用途のための興味深い候補となっている。さらに、本明細書中に開示された方法は穏やかな温度での単純なワンステッププロセスを含むため、ハイスループットな製作及び従来の商業的製作施設への統合が容易に可能となるはずである。
【0008】
[0008]第一の態様において、ナノ結晶の修正法を開示する。該方法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有する第一のナノ結晶を用意し、(2)ナノ結晶と、ナノ結晶の少なくとも一つのコンポーネントに結合できる少なくとも一つのリガンドと、少なくとも一つの溶媒と、不活性ガス雰囲気とを含む反応混合物を形成し、そして(3)第二のサイズ及び/又は第二の形状を有する少なくとも第二のナノ結晶が製造されるように、反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を少なくとも約1分間の間、約室温(すなわち約15〜20℃)〜約240℃の範囲の温度で修正するステップを含みうる。
【0009】
[0009]第二の態様において、コロイドナノ結晶のサイズ及び/又は形状修正のための別の方法を開示する。該方法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有するコロイドナノ結晶を用意し、(2)不活性ガス雰囲気下、約室温〜約240℃の範囲の温度で反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を修正し、ここで前記反応混合物は、ナノ結晶と、少なくとも一つの溶媒と、ナノ結晶の少なくとも一つのコンポーネントに結合できる少なくとも一つのリガンドとを含み、(3)UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法の少なくとも一つを用いて反応混合物中のナノ結晶の修正をモニターし、そして(4)ナノ結晶が選択された第二のサイズ及び/又は第二の形状を達成したら、反応を停止し、ナノ結晶を反応混合物から精製することを含むステップを含みうる。
【0010】
[0010]第三の態様において、コロイドナノ結晶の合成後修正のためのさらに別の方法を開示する。該方法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有する複数のナノ結晶を用意し、(2)複数のナノ結晶と、少なくとも一つの不活性溶媒と、ナノ結晶の少なくとも一つのコンポーネントに結合できる少なくとも一つのリガンドとを含む反応混合物を形成し、ここで前記ナノ結晶とリガンドは約1:1〜約1:1・1010の範囲のモル比で添加され、(3)反応混合物を、第一に真空下周囲温度で撹拌し、第二に真空下約50℃〜約100℃の範囲の温度で撹拌することによってコンディショニングし、(4)不活性ガスを反応混合物に加え、反応混合物を約100℃〜約300℃の範囲の温度に加熱し、(5)第二のサイズ及び形状を持つようにナノ結晶を選択的に溶解することによってナノ結晶のサイズ及び/又は形状を修正し、ここで前記選択的溶解は反応混合物の温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を少なくとも約1分間の間維持することを含む、ことを含むステップを含む。
【0011】
[0011]本質的にあらゆる方法で製造された本質的にあらゆるタイプ及び組成のナノ結晶が本明細書中に記載の方法を用いて修正できる。本明細書中に記載の方法に従って修正できる適切なナノ結晶の例は、セレン化カドミウム、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、カルコゲン化水銀、又は金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅などの酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物などであるが、これらに限定されない。
【0012】
[0012]本発明のこれら及びその他の目的及び特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からさらに十分に明らかになるであろう。あるいは、以下に示す本発明の実施によって分かるであろう。
【0013】
[0013]本発明の上記及びその他の利点及び特徴をさらに明確にするために、本発明のさらに詳細な説明を、添付の図面に例示されたその特定の態様に言及することによって提供する。当然のことながら、これらの図面は本発明の例示的態様のみを描いているのであり、その範囲の制限と見なされるべきものではない。本発明を、添付の図面を使用することによってさらに具体的かつ詳細に記載し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[0014]図1は、本発明の一態様によるナノ結晶の選択的形状修正法の概略図を示す。
【図2A】[0015]図2Aは、形状修正前のCdSeナノ結晶を示す透過型電子顕微鏡像を示す。
【図2B】[0016]図2Bは、形状修正後のCdSeナノ結晶を示す透過型電子顕微鏡像を示す。
【図3】[0017]図3は、本発明の一態様による増大する形状及び/又はサイズ修正程度を有するCdSeナノ結晶のUV可視吸収及びフォトルミネセンススペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.序説
[0018]本開示は、予め合成されたコロイドナノ結晶の形状及び/又はサイズを修正できる方法を記載する。本明細書中に記載の方法は、第一のサイズ及び形状を有する予め合成されたコロイドナノ結晶の形状を選択的に修正して、第二のサイズ及び/又は第二の形状を有するナノ結晶を製造することができる単純なワンステップ手順を含む(例えば図1参照)。該方法は、競合する熱力学及び動力学的プロセスを通じたナノ結晶成長プロセスの制御された逆転に依拠したもので、ナノ結晶の形状及びサイズ修正の程度を予測的に制御することを可能にする。該方法は、量子閉じ込めレジームにあるサイズ及び形状を有する形状修正ナノ結晶の製作を可能にするので、生成した励起子のナノ結晶内での三次元閉じ込めがもたらされる。従って、該ナノ結晶は、サイズ及び形状依存性の電子的及び光学的性質を保有するため、エレクトロニクス及びフォトニクス、ソリッドステートライトニング、エネルギー、及び健康科学といった多様な分野における用途のための興味深い候補となっている。さらに、本明細書中に開示された方法は穏やかな(modest)温度及び中程度の(moderate)反応条件下で実施できる単純なワンステッププロセスを含むため、ハイスループットな製作及び従来の商業的製作施設への統合が容易に達成できる。
【0016】
[0019]次に図1を参照すると、本発明の一態様によるナノ結晶の選択的形状修正のためのプロセス100の概略図が描かれている。本明細書中に記載の方法では、所望の形状修正程度を達成するために、反応パラメーター(例えば、温度、ナノ結晶の濃度、リガンドの濃度及びタイプ、及び/又はそれらの混合、及び反応時間)が調整される。図1に、形状修正前の結晶102、形状修正後の結晶106、及び修正反応中に結晶から除去された多数のイオン108を示す。結晶102及び106及びイオン108は、結晶102及び106の表面及びイオン108に結合できるリガンド104及び110を含む。本開示によれば、リガンド104と110は、反応パラメーターに応じて同じことも異なることもある。
【0017】
[0020]本明細書中に記載の方法では、所望の形状修正程度を達成するために、反応パラメーター(例えば、温度、ナノ結晶の濃度、リガンドの濃度、リガンドのタイプ、反応時間、及び/又はそれらの混合)が調整される。反応パラメーターは、所望の形状修正程度を達成するために、一時に一つ又は任意の組合せで変更することができる。
【0018】
[0021]例えば、修正中の温度は、ナノ結晶の形状修正の条件を決定する一つの重要な因子である。反応温度は、溶媒が結晶材料の結合エネルギーに打ち勝てるほど且つ原子の再配列(rearrangement)及びアニールを可能にするほどの高さでありながら、ある程度の動力学及び熱力学的選択性も可能にするほど低くなければならない(例えば、溶解は急速に進行しすぎず合理的速度で進行するのが望ましい)。さらに、異なる結晶面は異なる表面エネルギーを有し、従ってこれらの異なる面を占拠している原子の結合強度及び反応性も異なるので、温度は、選択された結晶面からのイオンの除去に対する制御を実行するのに使用できるパラメーターである。
【0019】
[0022]一側面において、修正反応の温度は、約室温(すなわち約15〜20℃)〜約240℃の範囲でありうる。当然のことながら、ナノ結晶の修正プロセスは、15℃もの低さの温度では極めてゆっくり進行しそうであることは理解されるであろう。それでも、修正反応は、低温では検出可能なナノ結晶の修正が起こるのに数日間を要するかもしれないが、低温でも進行可能である。好ましくは、反応温度範囲の下限は、感知できる速度でサイズ及び/又は形状修正反応を進行させるために、少なくとも約35℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約60℃、少なくとも約70℃、少なくとも約80℃、少なくとも約90℃、又は少なくとも約100℃であるべきである。
【0020】
[0023]ナノ結晶修正における別の重要な因子は、一つ又は複数の結晶コンポーネントと相互作用できるリガンド104及び110の濃度に対するナノ結晶102及び106の反応混合物中の濃度比である。リガンド104及び110は、ナノ結晶修正プロセスに二つの可能な役割を演じている。一つの役割では、リガンド104は、ナノ結晶102及び106の表面に結合できるので、ナノ結晶102及び106の結晶状態を安定化し、結晶102及び106の有効表面積を削減することによってそれらの溶解速度に影響を及ぼす。さらに、ナノ結晶102及び106の異なる面は異なる表面エネルギーを有し、従ってリガンド104に対する結合エネルギーも異なるので、リガンド濃度を利用して、ある種のナノ結晶の形状(例えばスフェロイド対ロッド対テトラポッド)に有利に働くようにすることができる。例えば、リガンドの結合エネルギー及び濃度を、結晶の等価面の組はリガンドで飽和されているが他の面はオープンであるようにすれば、オープン面からの溶解が選好され、その結果ロッドの形成がもたらされる。別のおそらくは同時発生的な役割では、リガンド110は、ナノ結晶102及び106から落下すると溶液中のイオン108と結合できるので、イオン108の溶液状態を安定化し、溶解反応の平衡に影響を及ぼす。
【0021】
[0024]イオン性結晶コンポーネントの濃度は、制御された溶解プロセスにおける別の重要な因子でありうる。例えば、結晶が溶解するにつれてイオン(例えばCd又はSeイオン)の濃度は時間経過とともに増大する。溶液中のイオンの濃度は、溶解プロセスの平衡又は終点に影響を及ぼしうる。なぜならば、反応は、一つ又は複数のイオンの濃度が飽和点に達すると平衡に到達するからである。一側面において、平衡点は溶解混合物に一つ又は複数の前駆体材料(例えば酢酸カドミウム)を“スパイキング (添加、spiking)”することによってシフトさせられることが分かった。発明者らは、この“スパイキング”を利用すれば、一つの結晶前駆体(例えばCd前駆体又はSe前駆体)だけを反応混合物に添加した場合、修正反応の平衡をうまくシフトできることを見出した。これに対し、発明者らは、反応混合物に両方の結晶前駆体を同時にスパイキングする(例えばCd及びSe前駆体の両方を添加する)ことは、古い結晶子の単なる修正の代わりに新しい結晶子の成長を主に誘導することを見出した。これは、おそらく、溶液中のナノ結晶と新鮮注入された前駆体の化学ポテンシャルが著しく異なるためであろう。
【0022】
[0025]修正時間も修正反応における別の重要な因子でありうる。一側面において、反応は、平衡に達するのに十分な時間行わせることも、又は平衡の前に停止させることもできる。反応の速度及び平衡に到達するのに必要な時間は、温度及び反応物の濃度によって影響されうる。従って、修正反応の下限時間は少なくとも一部は温度及びその他の反応パラメーターに依存する。そこで、修正反応は、少なくとも約1分間、5分間、10分間、20分間、30分間、60分間の間、又はそれらの間のいずれかの時間間隔で進行させるべきである。同様に、修正反応の上限時間も少なくとも一部は温度及びその他の反応パラメーターに依存する。反応は、平衡まで進行させても、又は選択された反応時間(例えば3時間)に基づいて平衡に到達する前に停止させても、又は修正ナノ結晶が例えば分光技術又はTEMによる測定で所望の性質を達成したら停止させてもよい。
【0023】
[0026]本明細書中に記載のプロセスにおいて、ナノ結晶は表面安定化リガンドの存在下で溶媒(例えば不活性の有機溶媒)中に浸漬され、約100℃〜約240℃の温度に加熱される(一定の撹拌及び不活性ガス雰囲気下で)。加熱温度は所定温度に数分〜数時間維持される(所望の形状修正程度に応じて)。
【0024】
[0027]形状修正は、いくつかの分光技術及び顕微鏡技術を用いてモニターできる。例えば、透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いれば形状修正の程度及びタイプを視覚的に評価できる。図2A及び2Bは、本発明の態様による形状修正前及び後のナノ結晶を示す。図2Aに示されているように、合成されたままのCdSeナノ結晶はTEM像で明確な均一結晶面を有する均一形状を示している(ウルツ鉱型CdSeナノ結晶で予想されるとおり)。しかしながら、図2Bに示されているように、ナノ結晶は、本明細書中に記載の形状修正プロセスに付された後は劇的に変化した形状を示すことができる。これは、選択された結晶面からのイオンの不均一溶解の直接的な結果である。これは、選択された結晶面からのイオンの不均一除去の直接的な結果であり、図2Bに示されている結晶格子の特徴のようなステップをもたらす。
【0025】
[0028]ナノ結晶における量子閉じ込め効果のために、形状及びサイズ修正の程度は、UV可視吸収及びフォトルミネセンス発光分光法によってモニターすることもできる。例が図3に示されている。図3は、本明細書中に記載の方法及び手順に従って様々な形状及び/又はサイズ修正程度を有するCdSeナノ結晶のUV可視吸収及びフォトルミネセンス発光スペクトル300を示している。
【0026】
[0029]縦の推移は、異なる体積の溶媒オクタデセン中で修正されたCdSeナノ結晶のUV可視吸収及びフォトルミネセンス発光特性(スペクトル304〜311)を、未修正のCdSeナノ結晶のUV可視吸収及びフォトルミネセンス発光特性(スペクトル302及び303)と比較して表したものである。スペクトル304と305、306と307、308と309、及び310と311は、それぞれ5ml、10ml、15ml、及び20mlのオクタデセン中で修正されたCdSeナノ結晶の特性を描いている。溶媒の体積を変えることは修正の程度に影響を及ぼす。その理由は、増大する溶媒体積が様々な反応物及び生成物の濃度を変え、それが反応の平衡をより大きな程度の形状及び/又はサイズ修正の方向にシフトさせるからである。
【0027】
[0030]修正の程度が増大するにつれて(スペクトル302と303からスペクトル310と311への縦の推移に示されている)、結晶の吸光度及び発光スペクトルに一定した青方偏移(blue shift)が見られる。吸光度及び発光スペクトルにおける青方偏移は、吸光度及び発光スペクトルのピークをそれぞれ横断しているライン312及び314における青方偏移に見ることができる。
【0028】
[0031]本明細書中に開示されたプロセスを用いて形状修正されたナノ結晶は、それらの優れたフォトルミネセンス発光特性を保持している。そして該プロセスは反応パラメーター(温度、反応成分濃度など)に応じて高度に調節可能である。発光特性の保持と調節性を兼備しているということは、本発明の合成後形状修正手順が、強く修正された電子的及び光学的性質を有する数多くの新規な結晶面選択的成形ナノ結晶の予測可能な及び制御された製作にとって大きな可能性があることを強調している。
【0029】
2.ナノ結晶の修正法
[0032]本明細書中に開示された方法は、予め合成されたコロイドナノ結晶の形状を正確に及び予測的に修正するのに使用できる溶液ベースのプロセスを記載する。該方法は、結晶材料の溶解性挙動を拠り所にしてナノ結晶成長プロセスの制御された逆転(すなわち溶解)を提供している。本明細書中に開示された方法は、ナノ結晶の溶解の程度を予測的に調節することを可能にする平衡制御プロセス(equilibrium-controlled process)である。さらに、ナノ結晶は明確な格子及び異なる表面エネルギーを有する表面結晶面を持っている、従ってこれらの異なる面を占拠しているイオンの結合強度及び反応性が異なるので、発明のプロセスを制御すればナノ結晶の異なる結晶面からのイオンの選択的除去が可能となる。この結晶面選択的溶解は、反応パラメーター(例えば、温度、ナノ結晶の濃度、リガンドの濃度及びタイプ、及び反応時間、及び/又はそれらの混合)を調整することによって誘導される。
【0030】
[0033]一態様において、コロイドナノ結晶の合成後修正法を開示する。該方法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有する第一のナノ結晶を用意し、(2)ナノ結晶と、ナノ結晶の少なくとも一つのコンポーネントに結合できる少なくとも一つのリガンドと、少なくとも一つの溶媒と、不活性ガス雰囲気とを含む反応混合物を形成し、そして(3)第二のサイズ及び/又は第二の形状を有する少なくとも第二のナノ結晶が製造されるように、反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を、約1分間〜約12時間の間、約100℃〜約240℃の範囲の温度で修正するステップを含みうる。
【0031】
[0034]上記方法を用いて修正できる適切なナノ結晶の例は、セレン化カドミウム、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、カルコゲン化水銀、又は金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物、及びこれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。カルコゲンは元素の周期表の16族元素(すなわち、O、S、Se、Te、及びPo)であるが、該用語は典型的には硫黄、セレン、及びテルルのためのものである。本明細書中で言及されているカルコゲン化物(すなわち、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、及びカルコゲン化水銀)は、硫化物、セレン化物、及びテルル化物のいずれか一つ又は混合物でありうる。
【0032】
[0035]一態様において、ナノ結晶の第一の形状は実質的にスフェロイドである。ロッド、ファイバー、及びテトラポッドなど他の出発形状を有するナノ結晶も本明細書中に開示された方法を用いて形状修正することができる。
【0033】
[0036]本明細書中に開示された形状修正法は、予め合成されたナノ結晶の形状及び/又はサイズを修正するのに使用することができる。従って、一態様において、第二のサイズは第一のサイズより小さい。別の態様において、第二の形状は第一の形状とは異なる。例えば、第二の形状は、スフェロイド、ロッド形、ファイバー形、又はテトラポッド形の少なくとも一つでありうる。
【0034】
[0037]一態様において、少なくとも一つの溶媒は不活性の有機溶媒を含みうる。適切な不活性有機溶媒の例は、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレンなどであるが、これらに限定されない。好ましくは、少なくとも一つの溶媒は約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有する。さらに好ましくは、不活性溶媒は約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する。又は最も好ましくは、不活性溶媒は約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する。
【0035】
[0038]結晶の一つ又は複数のコンポーネントと相互作用でき、反応混合物に含めることができる適切なリガンドの例は、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、又はアルキル硫化物、及びそれらの組合せなどである。好ましくは、該リガンドは、少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する。
【0036】
[0039]不活性ガス雰囲気(すなわち非反応性の無水雰囲気)を提供するのに使用できる適切な不活性ガスの例は、アルゴン、窒素、ヘリウムなどであるが、これらに限定されない。
【0037】
[0040]修正反応中のナノ結晶がその所望サイズに到達したら(反応時間又は一つもしくは複数のモニター技術による判定)、ナノ結晶の修正は、反応混合物を周囲温度に冷却することによって停止又は少なくとも著しく緩徐化させることができる。
【0038】
[0041]反応が停止又は緩徐化したら、ナノ結晶を反応混合物から精製することができる。例示的精製法は、(1)反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し、(2)抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し、(3)ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む。適切な新鮮溶媒は、ヘキサン、トルエン、及び/又はクロロホルムなどであるが、これらに限定されない。精製及び再懸濁されたナノ結晶は、特徴付け及び/又は各種の実験又は技術に使用することができる。
【0039】
[0042]別の態様において、コロイドナノ結晶のサイズ及び/又は形状修正法を開示する。該方法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有するナノ結晶を用意し、(2)不活性ガス雰囲気下、約100℃〜約240℃の範囲の温度で反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を修正し、ここで前記反応混合物は、ナノ結晶と、少なくとも一つの溶媒と、少なくとも一つのリガンドとを含み、(3)UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法の少なくとも一つを用いて反応混合物中のナノ結晶の修正をモニターし、そして(4)ナノ結晶が選択された第二のサイズ及び/又は第二の形状を達成したら、修正を停止し、ナノ結晶を反応混合物から精製することを含む。
【0040】
[0043]本質的にあらゆる方法で製造された本質的にあらゆるタイプ及び組成のナノ結晶が上記の方法を用いて修正できる。本明細書中に記載の方法に従って修正できる適切なナノ結晶の例は、セレン化カドミウム、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、カルコゲン化水銀、又は金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅などの酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物などであるが、これらに限定されない。
【0041】
[0044]本質的にあらゆる形状又はサイズのナノ結晶が本明細書中に記載の方法を用いて修正できる。一例において、ナノ結晶は、一つ又は複数の結晶次元に約100nm未満、又は一つ又は複数の結晶次元に約50nm未満、一つ又は複数の結晶次元に約30nm未満、又は一つ又は複数の結晶次元に約10nm未満の第一のサイズを有する。
【0042】
[0045]方法の一側面において、第一の形状は実質的にスフェロイドである。別の側面において、ナノ結晶は実質的に単分散の第一のサイズ及び形状を有する。物体の集合体は、それらが同じサイズ及び形状を有している場合、単分散であると言われる。一側面において、ナノ結晶は、形状修正の前後とも実質的に単分散である。
【0043】
[0046]方法の一側面において、ナノ結晶は修正後小さくなる(すなわち、第二のサイズは第一のサイズより小さい)。一例において、ナノ結晶は、一つ又は複数の結晶次元に約100nm未満、又は一つ又は複数の結晶次元に約50nm未満、一つ又は複数の結晶次元に約30nm未満、又は一つ又は複数の結晶次元に約10nm未満の第二のサイズを有する。一側面において、第二の形状は第一の形状とは異なる。
【0044】
[0047]さらに別の態様において、コロイドナノ結晶の合成後修正法は、(1)第一のサイズ及び第一の形状を有する複数のナノ結晶を用意し、(2)複数のナノ結晶と、少なくとも一つの不活性溶媒と、少なくとも一つのリガンドとを含む反応混合物を形成し、ここで前記ナノ結晶とリガンドは約1:1〜約1:1・1010の範囲のモル比で添加され、(3)反応混合物を、第一に真空下周囲温度で撹拌し、第二に真空下約50℃〜約100℃の範囲の温度で撹拌することによってコンディショニングし、(4)不活性ガス雰囲気を反応混合物に加え、反応混合物を約100℃〜約300℃の範囲の温度に加熱し、そして(5)ナノ結晶が第二のサイズ及び形状を持つように修正されるようにナノ結晶を選択的に溶解し、ここで前記選択的溶解は反応混合物の温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を約1分間〜約12時間の間維持することを含む、ことを含む。
【0045】
[0048]一態様において、ナノ結晶の選択的溶解は、ナノ結晶の溶解が結晶の一つ又は複数の面から好んで行われるように、反応における温度、ナノ結晶対リガンドのモル比、又はナノ結晶及び/又はリガンドの濃度の少なくとも一つを変更することを含む。
【0046】
[0049]従って、方法は、好ましくはナノ結晶とリガンド又はリガンド混合物を約1:2〜約1:1・10の範囲のモル比で添加することを含みうる。さらに好ましくは、方法は、好ましくはナノ結晶とリガンドを約1:5〜約1:1・10の範囲のモル比で添加することを含みうる。別の側面において、方法はさらに、ナノ結晶を、約125℃〜約275℃の範囲の温度、又は約150℃〜約240℃の範囲の温度で選択的に溶解することを含みうる。当然のことながら、ナノ結晶対リガンドのモル比及び温度は相互作用パラメーターであり、反応条件は、該パラメーターを一時に一つ又は組み合わせて変更することを含みうることは理解されるであろう。
【実施例】
【0047】
3.実施例
[0050]本明細書中に記載の方法は、不活性雰囲気下約100℃〜約240℃の温度での選択的溶解ルートによるコロイドナノ結晶の修正(すなわち形状及び又はサイズ修正)のために使用することができる。修正は、典型的には、予め合成されたナノ結晶を、ナノ結晶の一つ又は複数のコンポーネントと結合又は相互作用できるリガンドの存在下で溶媒中に浸漬することから出発する。例えば、リガンドは、結晶の一つ又は複数の面上の原子又は結晶から除去されたイオンと選択的に相互作用することができる。反応混合物は、ナノ結晶の所望の最終サイズ及び選択された反応温度に応じて所定温度で数秒間〜数日間撹拌される。
【0048】
[0051]所望サイズのナノ結晶に到達したら(例えば、時間、分光学的性質、又は透過型電子顕微鏡で観察されたサイズなどによりモニター)、反応混合物を室温に冷却することによって反応を停止し、修正されたナノ結晶を修正混合物(溶媒、イオン、及びリガンド)から分離する。例示的精製法は、(1)反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し、(2)抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し、(3)ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む。適切な新鮮溶媒は、ヘキサン、トルエン、及び/又はクロロホルムなどであるが、これらに限定されない。精製及び再溶解されたナノ結晶は、構造的(透過型電子顕微鏡法)及び光学的(UV可視吸収及びフォトルミネセンス分光法)特性分析研究のために使用される。
【0049】
実施例1:セレン化カドミウムナノ結晶の修正
[0052]一つの実施例は、結晶面選択的成長逆転(溶解)手順によるコロイドセレン化カドミウムナノ結晶量子ドットの形状及び/又はサイズ修正を含む。形状修正プロセスの場合、丸底フラスコに0.5gのオクタデシルアミン、ヘキサン中に溶解された適量のCdSeナノ結晶量子ドット(ナノ結晶:オクタデシルアミンのモル比1:1〜5×10)及び5〜20mLのオクタデセンを入れ、密封する。この混合物を最初に真空下室温で30分間撹拌し、次いで100℃に加熱して溶媒及び溶存ガスの除去を確実にする。次いで、雰囲気を真空からアルゴンガスに切り替え、溶液を100〜240℃に数分間〜数時間の間(所望の形状修正程度に応じて)保持する。成長−逆転(溶解)の進行は、光学分光法測定及び透過型顕微鏡イメージングのために反応混合物から一定分量を所定の時間間隔で採取することによってモニターする。CdSeナノ結晶量子ドットの所望の形状修正に到達したら、反応混合物を室温に冷却することによってプロセスを停止する。
【0050】
[0053]アミンリガンドを使用した場合、精製手順は次の通りである。CdSeナノ結晶は、最初に10mLのヘキサンと20mLのメタノールを反応混合物に加えることによって反応混合物から分離される。この結果、二つの液層が形成され、ナノ結晶は上のヘキサン層に溶解しているので、これを抽出する。この後、抽出されたナノ結晶溶液に15mLのアセトンを加える。この条件下でナノ結晶は反応溶液から沈殿するので、遠心分離によってそれから分離できる。次に、分離及び精製されたナノ結晶を適切な量の溶媒(ヘキサン、トルエン、又はクロロホルムなど)に再溶解し、特徴付けする。
【0051】
[0054]カルボン酸リガンドを使用した場合、精製手順は次の通りである。サイズ修正されたCdSeナノ結晶は、最初に10mLのヘキサンを反応混合物に加え、次いで20mLのエタノールを加えることによって反応混合物から分離される。これらの条件下でナノ結晶は溶液から沈殿するので、遠心分離によって反応溶液から分離できる。次に、分離及び精製されたナノ結晶をアセトンで洗浄し、適切な量の溶媒(ヘキサン、トルエン、又はクロロホルムなど)に再溶解する。
【0052】
実施例2:セレン化鉛ナノ結晶の修正
[0055]クレームの別の実施例は、結晶面選択的成長逆転(溶解)手順によるコロイドセレン化鉛(PbSe)ナノ結晶量子ドットの形状の合成後修正である。形状修正プロセスの場合、丸底フラスコに0.3mLのオレイン酸、テトラクロロエチレン溶媒中に溶解された適量のPbSeナノ結晶量子ドット(ナノ結晶:オレイン酸のモル比1:1〜5×10)及びさらに5〜20mLのテトラクロロエチレンを入れ、密封する。この混合物を最初に真空下室温で2〜5分間撹拌する。次いで、雰囲気を真空からアルゴンガスに切り替え、溶液を50〜75℃に数分間〜数時間の間(所望の形状修正程度に応じて)保持する。成長−逆転(溶解)の進行は、光学分光法測定及び透過型顕微鏡イメージングのために反応混合物から一定分量を所定の時間間隔で採取することによってモニターする。PbSeナノ結晶量子ドットの所望の形状修正に到達したら、反応混合物を室温に冷却することによってプロセスを停止する。
【0053】
[0056]精製手順は次の通りである。サイズ修正されたPbSeナノ結晶は、最初に10mLのヘキサンを反応混合物に加え、次いで20mLのエタノールを加えることによって反応混合物から分離される。これらの条件下でナノ結晶は溶液から沈殿するので、遠心分離によって成長溶液から分離できる。次に、分離及び精製されたナノ結晶をアセトンで洗浄し、適切な量の溶媒(ヘキサン、トルエン、テトラクロロエチレン、又はクロロホルムなど)に再溶解する。
【0054】
実施例3:その他のナノ結晶タイプの形状修正
[0057]発明の合成後ナノ結晶形状修正プロセスは、セレン化カドミウム及びセレン化鉛以外のナノ結晶にも適用することができる。例えば、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、及びカルコゲン化水銀のナノ結晶;酸化物、リン化物、窒化物、及びヒ化物のような他のタイプのナノ結晶;金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、及び銅のような金属などであるが、これらに限定されない。
【0055】
[0058]他のタイプの表面安定化リガンドも発明の結晶面選択的成長逆転(溶解)プロセスに使用できる。例えば、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、及びアルキル硫化物などであるが、これらに限定されない。
【0056】
[0059]反応溶媒はオクタデセン又はテトラクロロエチレンに限定されず、他の溶媒も使用できる(選択された反応温度に応じて)。例えば、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、トルエン、スクアラン、並びにクロロ及びフルオロアルカンなどであるが、これらに限定されない。
【0057】
[0060]発明の成長逆転(溶解)プロセスは、選択された結晶面からのイオンの除去(形状修正)又は全ナノ結晶表面からのイオンの均一除去(サイズ修正)のいずれかのために調節することができる。
【0058】
[0061]本発明は、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の態様で具体化することもできる。記載された態様は、あらゆる点において、単に説明であって制限でないと見なされるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく添付のクレームによって示される。クレームと等価の意味及び範囲内に入るすべての変形は、それらの範囲内に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0059】
100 プロセス
102 形状修正前の結晶
104 リガンド
106 形状修正後の結晶
108 イオン
110 リガンド
300 UV可視吸収及びフォトルミネセンス発光スペクトル
302 スペクトル
303 スペクトル
304 スペクトル
305 スペクトル
306 スペクトル
307 スペクトル
308 スペクトル
309 スペクトル
310 スペクトル
311 スペクトル
312 ライン
314 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶の修正法であって、
第一のサイズ及び第一の形状を有する第一のナノ結晶を用意し;
ナノ結晶と、ナノ結晶の少なくとも一つのコンポーネントに結合できる少なくとも一つのリガンドと、少なくとも一つの溶媒と、不活性ガス雰囲気とを含む反応混合物を形成し;そして
第二のサイズ及び/又は第二の形状を有する少なくとも第二のナノ結晶が製造されるように、反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を少なくとも約1分間の間、約室温〜約240℃の範囲の温度で修正することを含む方法。
【請求項2】
少なくとも一つのナノ結晶が、セレン化カドミウム、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、カルコゲン化水銀、又は金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物、及びこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の形状が実質的にスフェロイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二のサイズが第一のサイズより小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第二の形状が第一の形状とは異なる、請求項6に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つのリガンドがナノ結晶の少なくとも一つの結晶面に結合できる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つのリガンドが溶液中の少なくとも一つのイオンに結合でき、前記イオンは修正中に結晶から除去されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの溶媒が、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレンの少なくとも一つを含み、前記少なくとも一つの不活性溶媒は約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つの不活性溶媒が約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの不活性溶媒が約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
リガンドが、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、又はアルキル硫化物の少なくとも一つを含み、前記リガンドは少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
不活性ガスが、アルゴン、窒素、又はヘリウム、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
反応混合物を周囲温度に冷却することによってナノ結晶の修正を停止させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つのナノ結晶を反応混合物から精製することをさらに含み、前記精製は、
反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いて少なくとも一つのナノ結晶を反応混合物から抽出し;
抽出溶媒から少なくとも一つのナノ結晶を沈殿させ、沈殿した少なくとも一つのナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し;そして
少なくとも一つのナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コロイドナノ結晶のサイズ及び/又は形状修正法であって、
第一のサイズ及び第一の形状を有するナノ結晶を用意し;
不活性ガス雰囲気下、約室温〜約240℃の範囲の温度で反応混合物中のナノ結晶のサイズ及び/又は形状を修正し、ここで前記反応混合物は、ナノ結晶と、少なくとも一つの溶媒と、少なくとも一つのリガンドとを含み;
UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法の少なくとも一つを用いて反応混合物中のナノ結晶の修正をモニターし;そして
ナノ結晶が選択された第二のサイズ及び/又は第二の形状を達成したら、反応を停止し、ナノ結晶を反応混合物から精製することを含む方法。
【請求項16】
ナノ結晶が、セレン化カドミウム、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、カルコゲン化水銀、又は金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物、及びこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ナノ結晶が、一つ又は複数の結晶次元に約100nm未満の第一のサイズを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ナノ結晶が、一つ又は複数の結晶次元に約50nm未満の第一のサイズを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ナノ結晶が、一つ又は複数の結晶次元に約30nm未満の第一のサイズを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ナノ結晶が、一つ又は複数の結晶次元に約10nm未満の第一のサイズを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
第一の形状が実質的にスフェロイドである、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
第一のサイズ及び形状を有するナノ結晶が実質的に単分散である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
第二のサイズ及び/又は第二の形状を有するナノ結晶が実質的に単分散である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
第二のサイズが第一のサイズより小さい、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
第二のサイズが、一つ又は複数の結晶次元に約100nm未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第二のサイズが、一つ又は複数の結晶次元に約50nm未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
第二のサイズが、一つ又は複数の結晶次元に約30nm未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
第二のサイズが、一つ又は複数の結晶次元に約10nm未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
第二の形状が第一の形状とは異なる、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも一つの不活性溶媒が、アルカン、アルケン、フェニルエーテル、クロロアルカン、フルオロアルカン、トルエン、又はスクアレンの少なくとも一つを含み、前記少なくとも一つの不活性溶媒は約80℃〜約350℃の範囲の沸点を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも一つの不活性溶媒が約100℃〜約300℃の範囲の沸点を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つの不活性溶媒が約110℃〜約280℃の範囲の沸点を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
リガンドが、アルキルカルボン酸、アルキルアミン、アルキルホスフィン、アルキルホスホン酸、又はアルキル硫化物の少なくとも一つを含み、前記リガンドは少なくとも4個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項34】
不活性ガスが、アルゴン、窒素、又はヘリウム、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
反応混合物を周囲温度に冷却することによってナノ結晶の修正を停止させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
ナノ結晶を反応混合物から精製することをさらに含み、前記精製は、
反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し;
抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し;そして
ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
コロイドナノ結晶の合成後修正法であって、
第一のサイズ及び第一の形状を有する複数のナノ結晶を用意し;
複数のナノ結晶と、少なくとも一つの不活性溶媒と、少なくとも一つのリガンドとを含む反応混合物を形成し、ここで前記ナノ結晶とリガンドは約1:1〜約1:1・1010の範囲のモル比で添加され;
反応混合物を、第一に真空下周囲温度で撹拌し、第二に真空下約50℃〜約100℃の範囲の温度で撹拌することによってコンディショニングし;
不活性ガスを反応混合物に加え、反応混合物を約100℃〜約300℃の範囲の温度に加熱し;そして
第二のサイズ及び形状を持つようにナノ結晶を選択的に溶解することによってナノ結晶のサイズ及び/又は形状を修正し、ここで前記選択的溶解は反応混合物の温度、撹拌、及び不活性ガス雰囲気を少なくとも約1分間の間維持することを含む方法。
【請求項38】
ナノ結晶が、セレン化カドミウム、カルコゲン化カドミウム、カルコゲン化鉛、カルコゲン化亜鉛、カルコゲン化水銀、又は金、銀、コバルト、白金、ニッケル、鉄、又は銅の酸化物、リン化物、窒化物、又はヒ化物、及びこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
選択的溶解が、ナノ結晶の溶解が結晶の一つ又は複数の面から好んで行われるように、温度、ナノ結晶対リガンドのモル比、又は反応混合物中のナノ結晶及び/又はリガンドの濃度の少なくとも一つを変更することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ナノ結晶とリガンドが、約1:2〜約1:1・10の範囲のモル比で添加される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
ナノ結晶とリガンドが、約1:5〜約1:1・10の範囲のモル比で添加される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
ナノ結晶を、約125℃〜約275℃の範囲の温度で選択的に溶解することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
ナノ結晶を、約150℃〜約240℃の範囲の温度で選択的に溶解することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
サンプルを反応混合物から定期的に抽出し;そして
溶解をモニターするために、UV可視吸収分光法、フォトルミネセンス発光分光法、及び/又は透過型電子顕微鏡法を用いて前記サンプルを分析することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
反応混合物を周囲温度に冷却することによってナノ結晶の修正を停止させることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
ナノ結晶を反応混合物から精製することをさらに含み、前記精製は、
反応混合物に非混和性の少なくとも一つの溶媒を用いてナノ結晶を反応混合物から抽出し;
抽出溶媒からナノ結晶を沈殿させ、沈殿したナノ結晶を遠心分離によって抽出溶媒から分離し;そして
ナノ結晶を新鮮溶媒中に懸濁させることを含む、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515707(P2012−515707A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548060(P2011−548060)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/021461
【国際公開番号】WO2010/085463
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(504260058)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデイション (19)