説明

コンクリートブロックの組積構造

【課題】、目地モルタルの掻き落し作業を実質的に不要とし、施工が容易で、施工期間も大幅に短縮する。
【解決手段】コンクリートブロック1に上面上段部3と上面下段部4とその間の段差面5とを形成し、その下面には下面上段部6と下面下段部7と段差面8とを形成するとともに、コンクリートブロックを上下に積んだときに、上部コンクリートブロック1bの下面下段部7と下部コンクリートブロック1aの上面下段部4との間および上部コンクリートブロック1bの段差面5と下部コンクリートブロックの段差面8との間に隙間14、15を形成し、これらの隙間の間に上下部コンクリートブロック1a、1b間に施された目地モルタル13を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の上下、左右方向に噛み合わせて組積みするコンクリートブロックの組積構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のコンクリートブロックは、他のコンクリートブロックの上下、左右に組積みされるものであるが、単に積み上げるのではなく、下部のコンクリートブロックの上面に目地モルタルを置き、その上に上部のコンクリートブロックを積むことにより、両コンクリートブロックが一体に結合し、さらにコンクリートブロック間に縦横に縦筋と横筋とが配され、横からの圧力にも簡単には崩れないようになっている。
【0003】
コンクリートブロックを上下に積む場合、具体的には、図6(a)に示されるように、まず下部のコンクリートブロック20aの上面に目地モルタル21を置く。その際、目地モルタル21はやや山盛りになるように置く。次に、同図(b)のように、その上に上段のコンクリートブロック20bを置く。上段のコンクリートブロック20bの荷重により上下のコンクリートブロック20a、20b間の目地モルタル21の一部22は潰されて外にはみ出す。そこで、同図(c)のように、はみ出した余分な目地モルタル22は目地コテを使って掻き落とし、目地の表面を平滑にならすのである。
【0004】
このように、目地コテによる余分な目地モルタルは掻き落とされている。
【特許文献1】米国特許第2、558、630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、目地均し作業は手間がかかって面倒であり、特に、コンクリートブロックがシンプルな直方体状ではなく、その側面に一定の間隔で縦溝が形成されているような、いわゆるリブロックの場合、つまり側面に縦方向の凹凸が連続して形成されているので、リブとリブの間の縦の溝からはみ出した目地モルタルを掻き落として均す作業は難しく、熟練者でないとうまく目地を切れないほか、非常に時間がかかり煩わしいものであった。このため、施工に手間や時間がかかりコストアップの要因になっていた。しかも、掻き落とされたモルタルは地面に落ち、現場が汚れるから、目地均しの後、別途清掃作業をしなければならなかった。
【0006】
本発明は上記問題点を解消し、目地モルタルを掻き落とす作業を実質的に不要とし、施工が容易で、施工期間も大幅に短縮することができるコンクリートブロック組積構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、複数のコンクリートブロックを上下、左右方向に組み合わせて組積みするコンクリートブロック構造で、上記コンクリートブロックの上面中央には長手方向にV字溝を形成し、該V字溝の両側を2段に形成し、上面上段部と上面下段部との間の段差面を傾斜させるとともに、上記コンクリートブロックの下面を上記上面上段部と上面下段部とに対応して2段に形成し、それぞれに対応する下面上段部と下面下段部との間の段差面を傾斜させるとともに、上記コンクリートブロックを上下に積んだときに、上部コンクリートブロックの下面下段部と下部コンクリートブロックの上面下段部との間および上部コンクリートブロックの段差面と下部コンクリートブロックの段差面との間に隙間を形成し、これらの隙間の間に上下部コンクリートブロック間に施された目地モルタルを充填することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記コンクリートブロックの両端面には凹溝が開口形成されているとともに、この凹溝の外側の端面には互いに嵌合可能な突条と縦溝が形成され、縦溝の深さは突条の高さよりも大きく形成し、同じ構成の他のコンクリートブロックと突合せたときに、上記縦溝と突条との間には、上記凹溝から突合せ面に沿って移動したモルタルのはみ出し部の収容空間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、上部コンクリートブロックの下面下段部と下部コンクリートブロックの上面下段部との間および上部コンクリートブロックの段差面と下部コンクリートブロックの段差面との間に隙間を形成し、これらの隙間の間に上下部コンクリートブロック間に施された目地モルタルを充填するので、積み重ねた状態で目地モルタルがコンクリートブロックの側面からはみ出すことはない。したがって、目地均し作業もその後の清掃作業も不要となるので、施工期間を大幅に短縮することができ、また熟練工でなくても施工できるから、費用も大幅に削減することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、縦溝の深さは突条の高さよりも大きく形成され、2つのコンクリートブロックを左右に突合せたときに、端面の中央部の凹溝が相対して独立した縦穴が形成されるとともに、上記縦溝と突条との間にはモルタルのはみ出し部の収容空間が形成されるので、上記縦穴にモルタルを充填したとき、モルタルの一部は左右両コンクリートブロックの突合せ面に沿って外に移動していく。しかし、このはみ出し部分は上記収容空間に収容されるので、それ以上は外に移動しない。したがって、左右に突合せられた2つのコンクリートブロックの間からもモルタルが染み出すことがない。したがって、縦目地を掻く作業も不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および図2において符号1は本発明に係るコンクリートブロックを示す。このコンクリートブロック1は、略直方体状に形成されている。そして、コンクリートブロック1の上面中央には、その長手方向にV字溝2が形成されている。また、該V字溝2の両側は上面上段部3と上面下段部4の2段に形成され、上面上段部3と上面下段部4との間の段差面5は内側に向って低く傾斜している。
【0012】
なお、上記上面上段部3と上面下段部4の幅は略等しい。
【0013】
また、上記コンクリートブロック1の下面も、上記上面上段部3と上面下段部4とに対応して下面上段部6と下面下段部7との2段に形成されている。下面上段部6と下面下段部7との間の段差面8も、内側に向って低くなるように傾斜している。
【0014】
さらに、上記コンクリートブロック11の中央には3個の縦穴9が形成され、中央の縦穴9aは貫通している。また両端面の中央部には凹溝10が開口形成されている。そして、この凹溝10の外側の端面には互いに嵌合可能な突条11と縦溝12が形成されている。縦溝12の深さは突条11の高さよりも大きく形成されている。
【0015】
次に、上記構成の複数のコンクリートブロックは上下、左右方向に組み合わせられて組積みされる。すなわち、上記構成のコンクリートブロックを組積みする場合、まず、上下に積むにあたっては、図3に示されるように、下部コンクリートブロック1aの上面下段部4上に目地モルタル13を置いておき、その上に図4のように上部コンクリートブロック1bを積み重ねる。このとき、上部コンクリートブロック1bの下面下段部7と下部コンクリートブロック1aの上面下段部4との間に隙間14が形成されるので、目地モルタル13のほとんどは上記隙間14に充填されて収まる。さらに、上記隙間14に入りきらなかった部分があれば、それは、上部コンクリートブロック1bの段差面5と下部コンクリートブロック1aの段差面8との間の隙間15に収まる。
【0016】
上記段差面間の隙間14は外に向って高く形成されているので、目地モルタル13が下方に流れて外に流れ出すことはない。
【0017】
ところで、下部コンクリートブロック1aの上に上部コンクリートブロック1bを積み重ねる際、それぞれの段差面5、8は傾斜面であるから、上部コンクリートブロック1bは多少位置がずれても上記傾斜面に沿って案内されてスライドするので、積み作業が容易であるほか、傾斜面同士のスライドであるから位置決めしやすい。
【0018】
また、なお、上記上面上段部3と上面下段部4の幅は略等しいから、上面上段部3は十分な厚さが確保され、十分な強度が得られる。したがって、上部のコンクリートブロック1aが下部コンクリートブロック1aに多少強く当っても、一部が欠けたり砕けたりすることがない。
【0019】
以上のように、上記目地モルタル13は上下のコンクリートブロック1a、1b間の外にはみ出すことはない。したがって、目地均し作業もその後の清掃作業も不要となるので、施工期間を大幅に短縮することができ、熟練工でなくても施工できるから、費用も大幅に削減することができる。特に、リブブロックのように、側面に凹凸形状があるようなコンクリートブロック1の組積みには非常に有効である。
【0020】
次に、上記構成のコンクリートブロック1aを左右に突合せる場合について説明すると、図5に示されるように、コンクリートブロック1cの両端面の中央部には凹溝10が開口形成されているので、2つのコンクリートブロック1a、1cを左右に突合せたときに、一方の縦溝12と他方の突条11とを嵌合させる。これにより、両コンクリートブロック1は横方向に正しく位置決めされる。そして、このとき、端面の中央部の凹溝10が相対して独立した縦穴16が形成される。また、上記縦溝12と突条11との間にはモルタルの染み出し部分の収容空間17が形成される。そこで、上記縦穴16にはモルタル18を充填する。このとき、モルタル18の一部は、ごくわずかであるが左右両コンクリートブロック1a、1cの突合せ面に沿って外に移動する。しかし、この染み出し部分は上記収容空間17に収容されるので、それ以上は外に移動しない。したがって、左右に突合せられた2つのコンクリートブロック1a、1cの間からもモルタルが染み出すことがない。したがって、縦目地を掻く作業も不要となる。
【0021】
なお、説明を省略したが、組積みしたブロック間には横筋と縦筋を通すことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るコンクリートブロックの斜視図である。
【図2】上記コンクリートブロックの平面図である。
【図3】上記コンクリートブロック上に目地コンクリートを置いた状態の側面図である。
【図4】上記コンクリートブロックを上下に積んだ状態の縦断面図である。
【図5】上記コンクリートブロックを左右に並べた状態の平面図である。
【図6】(a)(b)(c)は従来のコンクリートブロックを上下に積んだ状態の側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 コンクリートブロック
3 上面上段部
4 上面下段部
5、8 段差面
6 下面上段部
7 下面下段部
13 目地モルタル
14、15 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンクリートブロックを上下、左右方向に組み合わせて組積みするコンクリートブロック構造で、上記コンクリートブロックの上面中央には長手方向にV字溝を形成し、該V字溝の両側を2段に形成し、上面上段部と上面下段部との間の段差を傾斜させるとともに、上記コンクリートブロックの下面を上記上面上段部と上面下段部とに対応して2段に形成し、それぞれに対応する下面上段部と下面下段部との間の段差面を傾斜させるとともに、上記コンクリートブロックを上下に積んだときに、上部コンクリートブロックの下面下段部と下部コンクリートブロックの上面下段部との間および上部コンクリートブロックの段差面と下部コンクリートブロックの段差面との間に隙間を形成し、これらの隙間の間に上下部コンクリートブロック間に施された目地モルタルを充填することを特徴とするコンクリートブロックの組積構造。
【請求項2】
上記コンクリートブロックの両端面には凹溝が開口形成されているとともに、この凹溝の外側の端面には互いに嵌合可能な突条と縦溝が形成され、縦溝の深さは突条の高さよりも大きく形成し、同じ構成の他のコンクリートブロックと突合せたときに、上記縦溝と突条との間には、上記凹溝から突合せ面に沿って移動したモルタルのはみ出し部の収容空間を形成したことを特徴とする、請求項1記載のコンクリートブロックの組積構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−291622(P2007−291622A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117555(P2006−117555)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(594033260)エスビック株式会社 (9)