説明

コンクリート擁壁

【課題】垂直壁と直角+15度程度に傾けた底板により構成されるコンクリート擁壁において、滑動に対する最良の垂直壁と底板の寸法比率を定め、滑動しないコンクリート擁壁を構築する。
【解決手段】垂直壁と、直角+15度程度に傾けた底板により構成されるコンクリート擁壁ブロックにおいて、垂直壁と底板の寸法比率を、垂直壁高さ/底板長さ=1.5±0.1に設定し、かつ、垂直壁に作用する滑動に係る土圧の外力と、傾けた底板に作用する土の重量による外力の分力とを相殺挿せる事を特徴とし、この垂直壁と底板を直角より大きい非直角三角状の支持板で連結し、底板は、形状を逆扇形に構成して複数のグラウト穴を設け、垂直壁の両端面に、相互に結合する嵌合凹部と嵌合凸部を設ける。これにより、全体寸法を減少して軽量化する事により、施工性、経済性が向上すると共に、滑動しないコンクリート擁壁を構築する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直壁と底板と支持板で構成されるコンクリート擁壁ブロックにより構築するコンクリート擁壁に関する。
[背景技術]
【0002】
従来、コンクリートブロックにより構築するコンクリート擁壁としては、垂直壁と底板が直角状のL型コンクリート擁壁ブロックが使用されている(図2)。このコンクリート擁壁には、設計基準に基づいて、▲1▼転倒、▲2▼滑動、▲3▼支持力、▲4▼本体構造、の計算を行い、形状とと配筋、並びに現地基礎の設計を行ってきたが、本体の重量が重く、基礎工事量も多く、据付けに手間がかかった。特に施工後、滑動によって連結部にずれが生じる事が多かった。前面の曲線施工においては、曲率半径の比較的小さい曲線状の施工が不可能であった。また、安全性を保持する為に、根入れが大きくなり、有効高よりも高さの高い大きい擁壁ブロックを使用する必要があった。
[発明の開示]
[発明が解決しようとする課題]
【0003】
本発明は、従来型の直角状L型コンクリート擁壁ブロックの垂直壁と底板の連結角度を改良し、直角+15度程度に構成して滑動しないコンクリート擁壁とするもので、垂直壁の高さと底板の突出長さの比率を設定して滑動しない擁壁とする。また、前面の曲線施工を可能にする為、底板の形状を逆扇形状に構成し、コンクリート擁壁ブロックの側面の連結部に嵌合凹凸を設ける事により、安定性と強度を確保し、軽量化と施工性、経済性に優れたコンクリート擁壁を提供する事を目的とする。
[課題を解決するための手段]
【0004】
本発明の上記課題を解決する為の主な手段は、底板を垂直壁に対して直角+15度程度に傾けた事と、この垂直壁と底板の連結角度を条件として、垂直壁の高さ対底板の突出長さの比率を設定した事を特徴としている。また、底板形状を逆扇形として曲線半径の比較的小さい前面の曲線施工を可能とし、垂直壁の両側面に、連結部のずれを防止する為に相互に嵌り込む嵌合凹凸を設け、この嵌合凹凸を結合させる事により強固な連結を施工する事ができる。また、底板にグラウト穴を設ける事により、底板の下面と基礎面の空間に、砂質土とモルタルミルクを補充して据付けを強固にする事を容易にし、バットレス構造として強度計算を行い、擁壁ブロックの軽量化と基礎工事量の低減を図る。
「発明の効果]
【0005】
コンクリート擁壁の安定性は、転倒、滑動、支持、構造によって評価されるが、それぞれ設計基準に基ずいて設計される。本発明に係る滑らないコンクリート擁壁は、従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックよりも滑動に対する安定力が抜群であり、軽量であるので施工性、経済性に優れており、比較的地盤の悪い地点を含めて広く実用化できる。即ち、底板の連結角度を直角+15度程度に設定し、垂直壁高さと底板長さの比率を1.5±0.1とし、かつ、垂直壁に作用する滑同に係る外力と、底板に作用する土の重量による外力とを相殺させる事により、底板の面積を縮小する事ができて根入れが小さくて済み、掘削工事も少なくなる為施工が容易となる。更に、垂直壁と底板を直角よりも大きい非三角状の支持板で連結支持するバットレス構造とした事により、従来の直角L型擁壁ブロックと比較すると、同高の擁壁で重量を約40%減少する事ができる。
【0006】
また、垂直壁の両側面に相互に結合する嵌合凹凸を各々設けて、施工を容易にすると共に連結を強固にし、また、底板の形状を逆扇形に構成する事により曲率半径が最小6m程度までの曲線施工が可能となり、底板に複数のグラウト穴を設ける事により、底板と基礎コンクリートの間に充填材を補充して強固に固定する事ができるので、更なる実用化の拡大が可能になった。
[発明を実施するための最良の形態]
【0007】
コンクリート擁壁に対する滑動応力は、土圧の水平分力が滑動させようとする力(P)として作用する。これに対して、底板と基礎との摩擦による抵抗力(P)が作用する(図3、図4)。抵抗する力(F)/滑動させようとする力(P)=>1.5、。
[数1] F=Wtan2/3Φ、が設計条件である。
滑動しない擁壁は、底板を傾けて、底板に作用する土の重量による力の分力を滑動差せようとする土圧の分力と反対向きに作用させると、滑動させようとする力(P)は小さくなる。
【0008】
底板を傾斜する事の利点を図3に記述したが、更に、底板の傾斜角度の設定(図14)及び滑動に関与する外力を詳細に検討する(図15)。図において、H;垂直壁の高さ、L;底板の長さ、α;底板の傾斜角度、α;滑動し難い底板の傾斜角度、r;土の単位体積重量(1.8)、K;土圧係数1/3、Φ;土の内部摩擦角(30度)、θ;Φ/2=15度、Φ=2/3Φ=20度、q;載荷荷重(t/m)、h=q/r、
[数2]P=H/2(H+h)r・K、P=Pcosθ、P=Psinθ、
[数3]W=L(H+h)r+L/2tanα+自重、W;擁壁の自重分を省略。
滑動させる力は、
[数4]Pcosα−Wsinα=H/2(H+2h)r・Kcosθ・cosα−{L(H+h)r+Lr/2・tanα}sinα
[数5]Pcosα−Wsinα=0 となる。次に、αを求める。
[数6]H/2(H+2h)Kcos・cosα={L(H+h)+tanα}sinα
/2tanα+L(H+h)tanα−H/2(H+2h)Kcosθ=0
h=KH と仮定する。
[数7]tanα+2H/L(1+K)tanα−(H/L)(1+2K)K・cosθ=0
[数8]
tanα=−2H/L(1+K)±√{2H/L(1+K)}+4(H/L)K・cosθ

1+2K
=H/L(1+K){−1±√(1+K)・K・cpsθ}。 H/L〜K〜α
【0009】
底板の傾斜角度(α)と滑動させようとする力(P)の関係を検討した結果を図14及び図15に示す。擁壁の有効高(H)、底板長さ(L)。擁壁地面の載荷荷重により異なる事が認められた。擁壁の有効高(H)=(1〜2.5m)の範囲では底板の傾きが直角+15度付近で、滑動させようとする力と反対向きに作用させる力が相殺する事が判明した。以上の理由により、底板の傾きを「直角+15度」とする事にした。即ち、底板の傾斜角度が105度の擁壁ブロックは滑動に対して350>F>40の安全率である事が確認された。
[実施例]
【0010】
本発明の実施例について、添付の図表を参照にして詳細に説明する。図1及び図2は、コンクリート擁壁を構成するコンクリート擁壁ブロックの比較を示し、図1は、垂直壁1と底板2を支持板3により連結角度105度で連結した、本発明に係るコンクリート擁壁ブロックであり、図2は支持板3が無く90度で連結した従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックである。同高(H=2000mm)の擁壁を構築する場合、設計計算によれば、同様の安全性を保持し滑動しない為には、垂直壁1の高さは、図1の本発明に係る105度擁壁は(H=2000mm)でよいが、図2の従来のL型90度擁壁は(H+H=2500mm)が必要となり、その結果、重量は従来の90度擁壁では1402kg/mであるが、本発明に係る105度擁壁では重量780kg/mで安全性を満たす事ができる。即ち、2mの土留め擁壁を比較すると、ワンサイズ以上小さい資材で対応できる。従来型の90度擁壁は2.500mm必要であるが、本発明に係る105度擁壁は2.000mmで可能である。即ち、50mm小さい資材で対応できる。
【0011】
図3及び図4は、滑動に対する説明図を示し、図3は本発明に係る垂直壁1と底板2との連結角度が105度のコンクリート擁壁ブロックを示し、図4は従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックを示す。Hは垂直壁の高さ、Lは底板の長さ、αは底板の直角を超す為の角度で、ここでは15度である。Pは垂直壁に作用する滑動に係る土圧の外力(滑動させようとする力)、Pは擁壁ブロックの重量による力、PはPとPのベクトルの合成力、Wは底板に作用する土の重量による外力で、W105は垂直壁1と底板2の連結角度が105度の場合、W90は連結角度が90度の場合を示す。図3及び図4において、
[数9] P;滑動させようとする力 P=P
[数10]P′;滑動させようとする力 P′=Pcosα−w105sinα[数11]P;Pに対して抵抗する力 P=w90tan2/3Φ=F
[数12]P′;Pに対して抵抗する力
[数13]P′=(Psinα+W105cosα)tan2/3Φ=F
Φ;土の内部摩擦角、α;底板の傾斜角度(90度+α)、P>P′、P<P′、
/P;安全率;F、設計条件 F>1.5、
[数14]F′/F′=F′、F′>F>1.5、である。
【0012】
図5乃至図8は本発明に係る滑動しない効果のあるコンクリート擁壁ブロックの実施例の形状を示し、図5は平面図。図6は右側面図、図7は正面図、図8は背面図である。
【0013】
コンクリート擁壁ブロックの垂直壁1の両側面に、図5及び図6に示す通り、相互に嵌合する嵌合凹部4と嵌合凸部5を交互に設け、据え付けの際にこの嵌合凹部4と嵌合凸部5を結合させて設置し、滑動に対して更に安全性を高めると共に、施工時における据え付けを容易にした。
【0014】
図9及び図10は、コンクリート擁壁ブロックを使用した構築するコンクリート擁壁の据え付け状態を示す平面図を示し、図9は従来の直角L型コンクリート擁壁プロックを使用した場合、図10は本発明に係る底板を傾斜状に連結したコンクリート擁壁ブロックを使用した場合である。この場合、図10に示す通り、本発明に係るコンクリート擁壁ブロックは底板2の形状が逆扇形であるので、隣接の擁壁ブロックと間隔があるので、根巻きコンクリート10を施工して、基礎コンクリート7への固定を確実にし、かつ、両側面の嵌合凹部4と嵌合凸部5の結合の他に、底板2における隣接のコンクリート擁壁ブロックとの連結及び基礎部分との固定を強固にする事ができる。
【0015】
また、擁壁ブロックの底板2の形状を図5及び図10に示す通り逆扇形とする事により、図9に例示する従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックでは不可能であった、垂直壁1の前面を曲率半径の比較的小さい曲線に構成して、図11に例示するような曲線施工の擁壁構築を可能にした。
【0016】
また、図12及び図13に拡大図示する通り、突出する底板2にはグラウト穴6を設け、垂直壁1の下端部は、基礎栗石8の上の基礎コンクリート7上に設置し、施工時の据え付け後に、このグラウト穴6から底板2の下部の空間に砂質土とモルタルミルク9を補充すると共に、根巻きコンクリート10を充填してコンクリート擁壁ブロックを一体にし、安定化を図る。
[表1]は、垂直壁高さHと底板長さLの比率別に、本発明による底板の傾斜角度及び安定率を記載した表である。
[表2]は垂直壁高さHと底板長さLの比率と、本発明による底板の傾斜角度の関係を示したグラフである。
[表3]は、底板の傾きが垂直壁に対して105度の擁壁ブロックの、垂直壁の高さに応じた転倒、滑動、地盤反力に対する数値を示した安定計算表である。
[表4]は、本発明による底板の傾斜角度105度のコンクリート擁壁ブロックの、安定計算と規格寸法、重量に示した表である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るコンクリート擁壁ブロックの実施例の側面図である。
【図2】従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックの側面図である。
【図3】本発明によるコンクリート擁壁ブロックの滑動に対する説明図である。
【図4】従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックの滑動に対する説明図である。
【図5】本発明に係るコンクリート擁壁ブロックの実施例の平面図である。
【図6】図5に示す実施例の右側面図である。
【図7】図5に示す実施例の正面図である。
【図8】図5に示す実施例の背面図である。
【図9】従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックにより、前面を直線状に構築したコンクリート擁壁の平面図である。
【図10】本発明に係るコンクリート擁壁ブロックにより前面を直線状に構築したコンクリート擁壁の平面図である。
【図11】本発明に係るコンクリート擁壁ブロックにより前面を曲線状に構築した場合のコンクリート擁壁を説明する平面図である。
【図12】本発明に係る底板にグラウト穴を設けたコンクリート擁壁ブロックの、底板と施工時の基礎構造の縦断面である。
【図13】本発明に係るコンクリート擁壁ブロックを使用して施工し、底板相互の間隔に根巻きコンクリートを充填した、コンクリート擁壁コンクリート擁壁を説明する平面図である。
【図14】本発明に係るコンクリート擁壁の底板の傾斜角度を、力学的に検討した説明図である。
【図15】図14において、コンクリート擁壁に対して、滑動に関与する外力を検討した説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1. 垂直壁
2. 底板
3. 支持板
4. 嵌合凹部
5. 嵌合凸部
6. グラウト穴
7. 基礎コンクリート
8. 基礎栗石
9. 砂質土とモルタルミルク
10.根巻きコンクリート
H. 垂直壁の高さ
L. 底板の長さ
.垂直壁に作用する滑動に係る土圧の外力(滑動させようとする力)
W. 底板に作用する土の重量による外力
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直壁と底板と支持板で構成されるコンクリート擁壁ブロックにより構築するコンクリート擁壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートブロックにより構築するコンクリート擁壁としては、垂直壁と底板が直角のL型コンクリート擁壁ブロックが使用されている(図2)。このコンクリート擁壁は、設計基準に基づいて、▲1▼転倒、▲2▼滑動、▲3▼支持力、▲4▼本体構造、の計算を行い、形状と配筋、並びに現地基礎の設計を行ってきたが、本体の重量が重く、基礎工事量も多く、据付けに手間がかかった。特に施工後、滑動によって連結部にずれが生じる事が多かった。前面の曲線施工においては、曲率半径の比較的小さい曲線状の施工が不可能であった。また、安全性を保持する為に、根入れが大きくなり、有効高よりも高さの大きい擁壁ブロックを使用する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来型の直角状L型コンクリート擁壁ブロックの垂直壁と底板の連結角度を改良し、直角+15度程度に構成して滑動しないコンクリート擁壁とするもので、垂直壁の高さと底板の突出長さの比率を設定して滑動しない擁壁とする。また、前面の曲線施工を可能にする為、底板の形状を逆扇形状し、さらにコンクリート擁壁ブロックの側面の連結部に嵌合凹凸を設ける事により、安定性と強度を確保し、軽量化と施工性、経済性に優れたコンクリート擁壁を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記課題を解決する為の主な手段は、底板を垂直壁に対して直角+15度程度に傾けた事と、この垂直壁と底板の連結角度を条件として、垂直壁の高さ対底板の突出長さの比率を設定した事を特徴としている。また、底板形状を逆扇形として曲率半径の比較的小さい前面の曲線施工を可能とし、垂直壁の両側面に、連結部のずれを防止する為に相互に嵌り込む嵌合凹凸を設け、この嵌合凹凸を結合させる事により強固連結して施工する事ができる。また、底板にグラウト穴を設ける事により、底板の下面と基礎面との空間に、砂質土とモルタルミルクを補充して据付けを強固にする事を容易にし、バットレス構造として強度計算を行い、擁壁ブロックの軽量化と基礎工事量の低減を図る。
【発明の効果】
【0005】
コンクリート擁壁の安定性は、▲1▼転倒、▲2▼滑動、▲3▼支持力、▲4▼本体構造によって評価されるが、それぞれ設計基準に基ずいて設計される。本発明に係る滑らないコンクリート擁壁は、従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックよりも滑動に対する安定性が抜群であり、軽量であるので施工性、経済性に優れており、比較的地盤の悪い地点を含めて広く実用化できる。即ち、底板の連結角度を直角+15度程度に設定し、垂直壁高さと底板長さの比率を1.5±0.1とし、かつ、垂直壁に作用する動に係る土圧の分力(Pcosθ・cosα)と、底板に作用する滑動に係る土の重量の(Wsinα)とを相殺させる事により、底板面積の縮小と擁壁の根入れ小さくできるので、掘削工事も少なくなる為施工が容易となる。更に、垂直壁と底板を直角よりも大きい非三角状の支持板で連結支持するバットレス構造とした事により、従来の直角L型擁壁ブロックと比較すると、同高の擁壁で重量を約40%減少する事ができる。
【0006】
垂直壁の両側面に相互に結合する嵌合凹凸を各々設けて、施工を容易にすると共に連結を強固にした。また、底板の形状を逆扇形に構成する事により曲率半径が最小6m程度までの曲線施工が可能となる。底板に複数のグラウト穴を設ける事により、底板と基礎コンクリートの間に充填材を補充して強固に固定する事ができるので、更なる実用化の拡大が可能にな
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
コンクリート擁壁に対する滑動に係る外力は、土圧の水平分力(P=Pcosθ)が滑動させようとする力(P▲1▼’)として作用する。これに対して、底板と基礎との摩擦による抵抗力(F’)が作用する(図4)。抵抗する力(F’)/滑動させようとする力(P▲1▼’の比F’/P▲1▼’>1.5が設計条件である。
[数1]F’=WtanΦ
滑動しないコンクリート擁壁は、底板を傾けて、底板に作用する土の重量による力の分力を滑動させようとする土圧の分力と反対向きに作用させると、滑動させようとする力(P▲1▼−P▲2▼)は小さくなる。(図3)
【0008】
底板を傾斜することの利点を図3に記述したが、さらに、底板の傾斜角度(α)の設定(図14)及び滑動に関与する外力を詳細に検討する(図15)。
図において、
H;垂直壁の高さ L;底板の長さ α;底板の傾斜角度
α;滑動しない底板の限界傾斜角度 r;土の単位体積重量(1.8)、
;土圧係数1/3 Φ;土の内部摩擦角30° θ;Φ/2=15°
Φ=2Φ/3=20° q;載荷荷重(t/m)、h=q/r、
[数2]P=H/2(H+2h)r・K、 P=Pcosθ、 P=Psinθ、
[数3]W=L(H+h)r+(L・r/2tanα+自重、
擁壁の自重分を省略。
[数4]滑動させようとする力
P▲1▼−P▲2▼=Pcosα−Wsinα
H/2(H+2h)r・Kcosθ・cosα
−{L(H+h)r+・r/2tanα}sinα
[数5]P▲1▼−P▲2▼ =0となる。α=αを求める。
【数6】

【数7】

【数8】

【0009】
底板の傾斜角度(α)と滑動させようとする力(P▲1▼−P▲2▼)の関係を検討した結果を[表1][表2]に示す。
擁壁の有効高(H)、底板の長さ(L)。載荷荷重(q;h=q/r、K=h/H)によって異なる事が認められた。擁壁の有効高(H=1.0〜2.5m)、載荷率(K=0.3〜0.5)の範囲では、底板の傾斜角度が直角+15.5〜16.5度付近で滑動させようとする力と、底板を傾斜させたために、これと反対向きに作用する力がほぼ相殺する事が判明した[表2]。以上の理由により底板の傾斜角度を「直角+15度」の105度とする事にした。
105度擁壁のH=1000、1200、1500、1800、2000、2500の6種類について安全計算と規格寸法を[表3][表4]に示す。滑動に対する安全率は設計条件F>1.5に対して40350であることが確認された。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例について、添付の図表を参照にして詳細に説明する。図1及び図2は、コンクリート擁壁を構成するコンクリート擁壁ブロックの比較を示し、図1は、垂直壁1と底板2を支持板3により連結角度105度で連結した、本発明に係るコンクリート擁壁ブロックであり、図2は支持板3が無く90度で連結した従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックである。同高(H=2000mm)の擁壁を構築する場合、設計計算によれば、同様の安全性を保持し滑動しない為には、垂直壁1の高さは、図1の本発明に係る105度擁壁は(H=2000mm)でよいが、図2の従来のL型90度擁壁は(H+H=2500mm)が必要となり、その結果、重量は従来の90度擁壁では1402kg/mであるが、本発明に係る105度擁壁では重量760kg/mで安全性を満たす事ができる。即ち、2mの土留め擁壁を比較すると、ワンサイズ以上小さい資材で対応できる。従来型の90度擁壁は2500mm必要であるが、本発明に係る105度擁壁は2000mmで可能である。即ち、50mm小さい資材で対応できる。
【0011】
図3及び図4は、滑動に対する説明図を示し、図3は本発明に係る垂直壁1と底板2との連結角度が105度のコンクリート擁壁ブロックを示し、図4は従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックを示す。Hは垂直壁の高さ、Lは底板の長さ、αは底板の直角分を超す角度で、ここでは15度である。P▲1▼は垂直壁に作用する滑動に係る土圧の力(滑動させようとする力)、Wは底板に作用するの重量による外力で、W105は垂直壁1と底板2の連結角度が105度の場合、W90は連結角度が90度の場合を示す。
図3及び図4において、
[数9]P▲1▼−P▲2▼;滑動させようとする力(図3)
P▲1▼−P▲2▼=Pcosα−W105sinα
Pcosθ・cosα−W105sinα
[数10]P▲1▼’;滑動させようとする力(図4)
P▲1▼’=P=Pcosθ
[数11]滑動させようとする力に対して抵抗する力F(図3)
F=(Pcosθsinα+W105cosα)tan(2Φ/
[数12]滑動させようとする力に対して抵抗する力F’(図4)
F’=W90tan(2Φ/3)
[数13]Φ;土の内部摩擦角(30°)
α;底板の傾斜角度(15°)
滑動に対する安全率 F=F/(P▲1▼−P▲2▼)>1.5(図4)
[数14]F=F′/P▲1▼′>1.5(図3)
【0012】
図5乃至図8は本発明に係る滑動しない効果のあるコンクリート擁壁ブロックの実施例の形状を示し、図5は平面図。図6は右側面図、図7は正面図、図8は背面図である。
【0013】
コンクリート擁壁ブロックの垂直壁1の両側面に、図5及び図6に示す通り、相互に嵌合する嵌合凹部4と嵌合凸部5を交互に設け、据え付けの際にこの嵌合凹部4と嵌合凸部5を結合させて設置し、滑動に対して更に安全性を高めると共に、施工時における据え付けを容易にした。
【0014】
図9及び図10は、コンクリート擁壁ブロックを使用した構築するコンクリート擁壁の据え付け状態を示す平面図を示し、図9は従来の直角L型コンクリート擁壁プロックを使用した場合、図10は本発明に係る底板を傾斜状に連結したコンクリート擁壁ブロックを使用した場合である。この場合、図10に示す通り、本発明に係るコンクリート擁壁ブロックは底板2の形状が逆扇形であり、隣接の擁壁ブロックと間隔があるので、根巻きコンクリート10を施工して、基礎コンクリート7への固定を確実にし、かつ、両側面の嵌合凹部4と嵌合凸部5の結合の他に、底板2における隣接のコンクリート擁壁ブロックとの連結及び基礎部分との固定を強固にする事ができる。
【0015】
また、擁壁ブロックの底板2の形状を図5及び図10に示す通り逆扇形とする事により、図9に例示する従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックでは不可能であった、垂直壁1の前面を曲率半径の比較的小さい曲線に構成して、図11に例示するような曲線施工の擁壁構築を可能にした。
【0016】
また、図12及び図13拡大図示す通り、突出する底板2にはグラウト穴6を設け、垂直壁1の下端部は、基礎栗石8の上の基礎コンクリート7上に設置し、施工時の据え付け後に、このグラウト穴6から底板2の下部の空間に砂質土とモルタルミルク9を補充すると共に、根巻きコンクリート10を充填してコンクリート擁壁ブロックを一体にし、安定化を図る。
[表1]は、垂直壁高さHと底板長さLの比率別に、本発明による底板の傾斜角度及び載荷率(K=h/H)を記載した表である。
[表2]は垂直壁高さHと底板長さLの比率と、本発明による底板の傾斜角度の関係を示したグラフである([表1]の値)。
[表3]は、底板の傾きが垂直壁に対して105度の擁壁ブロックの、垂直壁の高さに応じた▲1▼転倒、▲2▼滑動、▲3▼地盤反力に対する数値を示した安定計算表である。
[表4]は、本発明による底板の傾斜角度105度のコンクリート擁壁ブロックの規格寸法、重量を示した表である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 本発明に係るコンクリート擁壁ブロックの実施例の側面図である。
【図2】 従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックの側面図である。
【図3】 本発明によるコンクリート擁壁ブロックの滑動に対する説明図である。
【図4】 従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックの滑動に対する説明図である。
【図5】 本発明に係るコンクリート擁壁ブロックの実施例の平面図である。
【図6】 図5に示す実施例の右側面図である。
【図7】 図5に示す実施例の正面図である。
【図8】 図5に示す実施例の背面図である。
【図9】 従来の直角L型コンクリート擁壁ブロックにより、前面を直線状に構築したコンクリート擁壁の平面図である。
【図10】 本発明に係るコンクリート擁壁ブロックにより前面を直線状に構築したコンクリート擁壁の平面図である。
【図11】 本発明に係るコンクリート擁壁ブロックにより前面を曲線状に構築した場合のコンクリート擁壁を説明する平面図である。
【図12】 本発明に係る底板にグラウト穴を設けたコンクリート擁壁ブロックの、底板と施工時の基礎構造の縦断面図である。
【図13】 本発明に係るコンクリート擁壁ブロックを使用して施工し、底板相互の間隔に根巻きコンクリートを充填したコンクリート擁壁を説明する平面図である。
【図14】 本発明に係るコンクリート擁壁の底板の傾斜角度を、力学的に検討した説明図である。
【図15】 図14において、コンクリート擁壁に対して、滑動に関与する外力を検討した説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1. 垂直壁
2. 底板
3. 支持板
4. 嵌合凹部
5. 嵌合凸部
6. グラウト穴
7. 基礎コンクリート
8. 基礎栗石
9. 砂質土とモルタルミルク
10.根巻きコンクリート
H. 垂直壁の高さ
L. 底板の長さ
.垂直壁に作用する滑動に係る土圧の水平分力(滑動させようとする力)
W. 底板に作用する土の重量による外力
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直壁と、垂直壁の下部から外方に延び直角+15度程度に傾けた底板を設けたコンクリート擁壁ブロックにより構築されるコンクリート擁壁において、垂直壁と底板の寸法比率を、垂直壁高さ(H)/底板長さ(L)=1.5±0.1に設定し、かつ、垂直壁に作用する滑動に係る土圧の外力(P)と、傾けた底板に作用する土の重量による外力(W)の分力とを相殺させる事を特徴とするコンクリート擁壁。
【請求項2】
傾けた底板の形状を、擁壁前面のを曲線施工を容易とする逆扇形に構成した事を特徴とする請求項1に記載のコンクリート擁壁。
【請求項3】
垂直壁と底板を非直角三角状の支持板で連結する事を特徴とする請求項1に記載のコンクリート擁壁。
【請求項4】
傾けた底板に、底板と基礎コンクリートとの空間を砂質土とモルタルミルクを補充するグラウト穴を設ける事を特徴とする請求項1に記載のコンクリート擁壁。
【請求項5】
垂直壁の両端面に、施工後の連結部のずれを防止する嵌合凹凸を設ける事を特徴とする請求項1に記載のコンクリート擁壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−299781(P2006−299781A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154562(P2005−154562)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(593005736)
【出願人】(595054741)
【Fターム(参考)】