説明

コンクリート配合表示システム

【課題】所望の配合割合のコンクリートを確実に打設することができるコンクリート配合表示システムを提供する。
【解決手段】施工現場で打設されるコンクリートを運搬する運搬車に搭載され、配合割合の異なる複数種類のコンクリートのそれぞれに対応した信号を発する複数の発信装置15と、発信装置からの信号を受信する受信装置16と、信号に対応してコンクリートの配合割合に関する情報を表示する表示装置17と、を備えたコンクリート配合表示システム10であって、受信装置は、複数の発信装置の内、運搬車で運搬されるコンクリートの配合割合に対応して選択された発信装置の信号のみを受信可能に構成され、表示装置は、受信装置で受信した信号に対応した表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート配合表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、施工現場で打設されるコンクリートは、構造体の要求品質や環境条件などにより配合割合(水、セメント、骨材、砕石などの割合)が設定される。この配合割合を適切に設定することにより、構造体は所望の品質および強度を確保することができる。施工現場では、コンクリートの配合割合が決定すると、ミキサー車(コンクリートの運搬車)やダンプに所定の配合割合で調合されたコンクリートを充填し、そのミキサー車やダンプを所定の位置(打設箇所近傍)まで移動して、コンクリートの打設作業を行っている。
【0003】
ここで、特許文献1では、施工現場においていつ、どの場所に、どのようなコンクリートが打設されたかを容易に把握することができるコンクリートの品質管理方法が提案されている。
【0004】
具体的には、コンクリート打設時におけるコンクリートの性状に関するデータを計測し、このデータを記録媒体に記録し、この記録媒体をコンクリートに混入し、打設する。そして、硬化したコンクリート中の記録媒体のデータを読み取って、将来にわたって、施工現場において、どの場所にどのようなコンクリートが打設されたかを把握するものである。
【0005】
また、特許文献2にも、セメント構築物に使用されたモルタルおよびコンクリートの情報を直接ICタグに記入して埋設するとともに、コンピュータに入力し、構造体の品質を管理する品質管理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−145385号公報
【特許文献2】特開2006−183257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、大型現場などでは、バッチャープラントでのコンクリートの練混ぜ作業と、打設現場へのコンクリートの運搬は同時進行で行われている。また、大型現場では、複数箇所で同時にコンクリートの打設作業が行われたりすることがある。このような場合であって、打設箇所によりコンクリートの配合割合が異なる場合には、ミキサー車を適切に誘導しないと、間違って異なる配合割合のコンクリートが打設されてしまう虞がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の品質管理方法では、コンクリートに該コンクリートの情報を記憶させた記録媒体(ICタグ)を埋設しているため、将来的にコンクリートの品質管理を行うことは可能であるが、配合割合の異なるコンクリートが間違って打設されるのを防止することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、所望の配合割合のコンクリートを確実に打設することができるコンクリート配合表示システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のコンクリート配合表示システムは、施工現場で打設されるコンクリートを運搬する運搬車に搭載され、配合割合の異なる複数種類の前記コンクリートのそれぞれに対応した信号を発する複数の発信装置と、該発信装置からの信号を受信する受信装置と、前記信号に対応して前記コンクリートの配合割合に関する情報を表示する表示装置と、を備えたコンクリート配合表示システムであって、前記受信装置は、前記複数の発信装置の内、前記運搬車で運搬される前記コンクリートの配合割合に対応して選択された発信装置の信号のみを受信可能に構成され、前記表示装置は、前記受信装置で受信した信号に対応した表示を行うことを特徴としている。
【0011】
このように構成することで、運搬車に搭載された発信装置からコンクリートの配合割合に対応した信号が発信され、その信号のみを受信装置で受信するとともに、表示装置に表示することができるため、表示装置を確認することにより運搬車を所定の打設箇所へ確実に導くことができる。したがって、施工現場において、所望の配合割合のコンクリートを所望の箇所へ確実に打設することができる。
【0012】
また、本発明のコンクリート配合表示システムは、前記複数の発信装置の内、前記選択された発信装置以外の発信装置は、該発信装置から発せられる電波が遮蔽される箇所に配されることを特徴としている。
【0013】
このように構成することで、常に信号を発信し続ける発信装置を用いても、選択された発信装置の信号のみを確実に受信装置で受信することができる。つまり、受信装置で間違った信号を受信して、誤った情報を表示装置に表示することを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコンクリート配合表示システムによれば、運搬車に搭載された発信装置からコンクリートの配合割合に対応した信号が発信され、その信号のみを受信装置で受信するとともに、表示装置に表示することができるため、表示装置を確認することにより運搬車を所定の打設箇所へ確実に導くことができる。したがって、施工現場において、所望の配合割合のコンクリートを所望の箇所へ確実に打設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における施工現場の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるコンクリート配合表示システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図1〜図2に基づいて説明する。なお、本実施形態では、バッチャープラントが設けられた大型施工現場(例えば、ダムなど)にコンクリート配合表示システムを採用した場合の説明をする。
【0017】
図1は施工現場の概略構成図である。図1に示すように、施工現場20の一画にコンクリートを製造するバッチャープラント11が設けられている。このバッチャープラント11では、配合割合の異なるコンクリートを製造することができるように構成されている。バッチャープラント11とコンクリートの打設現場12との間は、ミキサー車(運搬車)13が行き来できるように運搬路14が整備されている。また、施工現場20の所定の箇所に、ミキサー車13に搭載されたICタグ(発信装置)15からの信号を受信可能な受信装置16が設置されている。さらに、施工現場20の別の所定の箇所に、受信装置16で受信した信号に対応した表示を行うことができる表示装置17が設置されている。このICタグ15、受信装置16および表示装置17でコンクリート配合表示システム10を構成している。
【0018】
次に、コンクリート配合表示システム10の構成について説明する。なお、本実施形態では、4種類の配合割合の異なるコンクリート(配合割合A、配合割合B、配合割合C、配合割合Mの各コンクリート)を製造・打設する場合の説明をする。
【0019】
ミキサー車13には、4個のICタグ15(15A,15B,15C,15M)が搭載されている。システム未使用時には、ICタグ15はミキサー車13の運転席近傍に設置された金属製の筐体28内に収納されている。
【0020】
図2はコンクリート配合表示システム10の概略構成図である。受信装置16は、バッチャープラント11と打設現場12の途中で運搬路14の脇に設置されている。図2に示すように、受信装置16は、ICタグ15から発せられる信号を受信する受信機21と、受信機21に接続されたリレー接点22と、を備えている。受信機21には、ICタグ15からの信号を受信するアンテナ31と、4つのチャンネル32が設けられており、各チャンネル32には無電圧接点33が形成されている。つまり、受信機21は、ICタグ15からの信号をアンテナ31で受信すると、その信号に対応したチャンネル32の無電圧接点33が閉じられるように構成されている。また、リレー接点22は、各チャンネル32に対応して4個設けられており、チャンネル32の無電圧接点33が閉じると、それに対応したリレー接点22が駆動して、表示装置17へ電源を供給することができるように構成されている。
【0021】
表示装置17は、打設現場12の管理者が該打設現場12付近から確実に視認できる位置に設置されている。表示装置17は、配合割合が認識できる表示(A,B,C,M)25と、各表示25に対応した回転灯26と、を備えている。回転灯26は各リレー接点22に対応して4個設置されており、リレー接点22が閉じることにより回転灯26に電源が供給され、回転灯26を起動させることができるようになっている。
【0022】
次に、このように構成されたコンクリート配合表示システム10を用いてコンクリートを打設する方法について説明する。
【0023】
まず、バッチャープラント11にて打設現場12に打設するコンクリートを製造する。コンクリートは、構造体の要求品質や環境条件などに基づいて配合割合(水、セメント、骨材、砕石などの割合)を決定して製造する。
【0024】
続いて、製造されたコンクリートをミキサー車13へ充填する。このとき、バッチャープラント11の管理者が無線などによりミキサー車13の運転手へ充填されるコンクリートの配合割合を伝える。運転手は、コンクリートの配合割合に対応したICタグ15を金属製の筐体28から取り出し、例えばダッシュボード上に配置する。なお、このとき他のICタグ15は筐体28内に収納したままである。また、バッチャープラント11の管理者は、運転手に対して充填されるコンクリートの配合割合に対応した記号(例えば、A,B,C,M)を伝えてもよい。
【0025】
続いて、ミキサー車13にコンクリートが充填されたら、運転者はミキサー車13を運転して打設現場12へと向かう。このとき、ミキサー車13は、運搬路14上を走行する。
【0026】
運搬車13が、信号受信可能エリア27(図1参照)に進入すると、ICタグ15から発せされる信号を受信装置16の受信機21が受信する。すると、受信機21の4つのチャンネル32の内、1つのチャンネル32の無電圧接点33が閉じ、それに対応したリレー接点22が閉じて、表示装置17の1つの回転灯26に電源が供給される。そして、電源が供給された回転灯26が起動する。
【0027】
続いて、運転者は、ミキサー車13を打設現場12近傍まで走行させる。そして、打設現場12の管理者は、ミキサー車13が到着したときに起動している回転灯26の表示を確認した後、ミキサー車13を打設現場12の所望の位置へ誘導する。例えば、打設現場12の2,3箇所で同時にコンクリート打設作業を行っている場合であって、打設箇所によって打設するコンクリートの配合割合が異なる際には、打設現場12の管理者が、表示装置17の起動している回転灯26を視認することでミキサー車13に充填されているコンクリートの配合割合を把握し、ミキサー車13を所定の打設箇所に誘導する。このようにすることで、施工現場20において、所望の配合割合のコンクリートを所望の箇所へ確実に打設することができる。
【0028】
本実施形態によれば、ミキサー車13に搭載されたICタグ15からコンクリートの配合割合に対応した信号が発信され、その信号のみを受信装置16で受信するとともに、表示装置17に表示することができるため、表示装置17を確認することによりミキサー車13を所定の打設箇所へ確実に導くことができる。したがって、施工現場20において、所望の配合割合のコンクリートを所望の箇所へ確実に打設することができる。
【0029】
また、複数のICタグ15の内、選択されたICタグ15以外のICタグ15は、該ICタグ15から発せられる電波が遮蔽されるように金属製の筐体28に収納するように構成したため、常に信号を発信し続けるICタグを用いても、選択されたICタグ15の信号のみを確実に受信装置16で受信することができる。つまり、受信装置16で間違った信号を受信して、誤った情報を表示装置17に表示することを防止することができる。
【0030】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0031】
例えば、本実施形態では、発信装置としてICタグを用いた場合の説明をしたが、特定の信号を発信する機能を有するものであればICタグ以外のものを採用してもよい。
【0032】
また、本実施形態では、ミキサー車の運転手がバッチャープラントの管理者の指示により所定のICタグを選択するように構成した場合の説明をしたが、例えば、ミキサー車にコンクリートを充填する際に、自動的に所定のICタグを選択し、ミキサー車の所定の位置に取り付けるように構成してもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、表示装置にコンクリートの配合割合に対応した回転灯を起動して打設現場の管理者が認識できるように構成したが、その際に、ミキサー車の車両番号なども一緒に表示するように構成してもよい。
【0034】
そして、本実施形態では、バッチャープラントで製造されたコンクリートをミキサー車へ充填して運搬する場合の説明をしたが、例えば、バッチャープラントで練り混ぜを行ったコンクリートをダンプで運搬してもよい。また、施工現場では、コンクリートを充填したミキサー車やダンプを直接打設箇所直近まで移動させてコンクリートを放出するように構成してもよいし、所定の位置でミキサー車やダンプに充填されたコンクリートをコンクリートバケットに受け渡し、その後、コンクリートバケットをクレーンで打設箇所まで運搬し、コンクリートを放出するような構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…コンクリート配合表示システム 13…ミキサー車(運搬車) 15(15A,15B,15C,15M)…ICタグ(発信装置) 16…受信装置 17…表示装置 20…施工現場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場で打設されるコンクリートを運搬する運搬車に搭載され、配合割合の異なる複数種類の前記コンクリートのそれぞれに対応した信号を発する複数の発信装置と、
該発信装置からの信号を受信する受信装置と、
前記信号に対応して前記コンクリートの配合割合に関する情報を表示する表示装置と、を備えたコンクリート配合表示システムであって、
前記受信装置は、前記複数の発信装置の内、前記運搬車で運搬される前記コンクリートの配合割合に対応して選択された発信装置の信号のみを受信可能に構成され、
前記表示装置は、前記受信装置で受信した信号に対応した表示を行うことを特徴とするコンクリート配合表示システム。
【請求項2】
前記複数の発信装置の内、前記選択された発信装置以外の発信装置は、該発信装置から発せられる電波が遮蔽される箇所に配されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート配合表示システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241565(P2011−241565A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113267(P2010−113267)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)