説明

コンタクトレンズ

コンタクトレンズの製造方法は、顔料、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN−ビニルピロリジノンとのコポリマー及び架橋性モノマーを含む着色剤組成物をコンタクトレンズモールドの成形表面の一部の上に堆積させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先願に対する優先権主張
本願は2009年7月24日に出願された米国仮出願第61/228,220号の利益を有する。その仮出願を参照により本明細書の一部とする。
【0002】
分野
本発明は親水性コポリマー基材及びその基材の表面上の着色剤含有組成物を含むコンタクトレンズを提供する。着色剤含有組成物は顔料、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN−ビニルピロリジノンとのコポリマー及び架橋性モノマーを含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
代表的な架橋性モノマーはエチレングリコールジメタクリレート又は1,4−ブタンジオールジアクリレートである。代表的な顔料は黒色酸化鉄又は褐色酸化鉄である。
【0004】
着色剤含有組成物は他の成分を含んでよい。第一の例は2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの親水性コモノマーである。第二の例は2−ブトキシエチルアクリレートなどの疎水性コモノマーである。第三の例は乳酸エチルである。さらに、これらの組成物は、一般に、重合開始剤を含むであろう。
【0005】
コンタクトレンズ基材は任意の既知の親水性コポリマーからできていてよい。好ましいコポリマーはヒラフィルコンB(hilafilcon B)であり、それは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリジノン、エチレングリコールジメタクリレート及びアリルメタクリレートを含むモノマー混合物の重合生成物である。
【0006】
好ましくは、着色剤含有組成物は表面上で同心環の形状を有する。最も好ましくは、同心環は、コンタクトレンズを人間の目の上に配置したときに、その虹彩の位置に本質的に適合しており、また、外径は人間の虹彩よりも大きくてよい。
【発明の概要】
【0007】
発明の要旨
本発明は
顔料、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN−ビニルピロリジノンとのコポリマー及び架橋性モノマーを含む着色剤組成物をコンタクトレンズモールドの成形表面の一部の上に堆積させ、そして、その着色剤組成物を熱又は光エネルギーに暴露することにより少なくとも部分的に硬化させること、及び、
レンズ形成性モノマー混合物をモールドに堆積させ、そしてそのレンズ形成性モノマー混合物を硬化させること、
を含み、着色剤組成物は硬化したコンタクトレンズの表面上にある、コンタクトレンズの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましくは、コンタクトレンズモールドはポリオレフィンからできており、最も好ましくはポリプロピレンからできている。着色剤組成物は、コンタクトレンズモールド、好ましくは前部コンタクトレンズモールドの成形表面の一部の上に堆積される。着色剤組成物はパッドにより塗布されてよい。たとえば、着色剤組成物を、最初に、所望の着色剤パターンを有するクリシェからパッドに塗布し、その後、その着色剤組成物をパッドからコンタクトレンズ成形表面に転写する。
【0009】
上述したとおり、着色剤組成物は、コンタクトレンズを人間の目の上に配置したときに、その虹彩の位置に本質的に適合する同心環形状を形成するように塗布される。
【0010】
着色剤組成物は、レンズ形成性モノマー混合物をモールドに堆積する前に、少なくとも部分的に硬化される。硬化の好ましい方法は着色剤組成物を光エネルギーに暴露することによるものであり、最も好ましくはUV光に暴露することによるものである。
【0011】
レンズ形成性モノマー混合物を硬化した後に、コンタクトレンズをモールドから解放し、好ましくは乾燥解放法により解放する。
【0012】
着色剤組成物は、その種々の物理的特性が親水性コンタクトレンズ基材コポリマーのものに近いことが重要である。それらの特性としては、膨張係数及び含水率が挙げられる。さもなければ、硬化した着色剤組成物はコンタクトレンズ基材に十分に結合しないことがある。このことは、コンタクトレンズがモールドから乾燥解放される方法にとって、着色剤組成物及びコンタクトレンズ基材コポリマーの両方がモールド材料に対して有意に異なる付着性を有することがないようにするのに特に重要である。
【0013】
しかしながら、着色剤組成物が成形表面上にプリント可能であることも重要である。ポリプロピレンは比較的に疎水性であり、親水性着色剤組成物を使用する場合に、組成物はビーズ状になる傾向がある。この問題に対する以前のアプローチはコンタクトレンズ成形表面をコロナ放電などの高エネルギー源に付すことを含んだ。しかしながら、このような処理を制御することは困難であり、そしてこのような処理では製造時間が長くなり、そして製造コストが高くなることが要求される。本発明では、コンタクトレンズモールドを、いかなるこのような高エネルギー処理にも付さないことが好ましい。むしろ、着色剤組成物は水混和性溶剤を用いることができ、それにより、着色剤組成物の表面張力はモールド材料の表面張力によりよく適合する。また、十分に高い粘度(少なくとも2000cp)を有する着色剤組成物を用いることで、組成物のより高い表面張力を相殺することができ、それにより、モールド表面上でビーズ状になることを防止する。
【実施例】
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
下記の実施例は本発明の種々の実施形態を例示する。
例1−ポリ(HEMA−コ−NVP)の合成
メカニカルスターリング、凝縮器及び窒素インレットを装備した2L3つ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(344.4g、2.65モル)、N−ビニルピロリドン(NVP)(165g、1.48モル)、2−メルカプトエタノール(4.68g、0.06モル)及びシクロペンタノン(684g、720ml)を添加した。15分間Nをバブリングすることで上記の混合物をパージし、その後、Vazo64開始剤を添加した。反応物を38℃に48時間加熱し、その後、70℃に一晩加熱した。この溶液を1200mlのイソプロパノール(IPA)で希釈した。得られた溶液を、メカニカルスターラによる激しい攪拌下に6Lのジエチルエーテルに添加漏斗から滴下してゆっくりと添加した。ろ過しそして真空下(30mmHg)に70℃の炉で一晩乾燥した後に、500gの白色粉末を回収した。
【0015】
反応を下記に示す。
【化1】

【0016】
例2−ポリ(HEMA−コ−NVP)コポリマーを含むインク
a.黒色酸化鉄含有ペーストの形成
210gの酸化ジルコニウムセラミック媒体、210gの黒色酸化鉄及び210gの乳酸エチルを500mlセラミックジャー中に添加し、そしてペイントシェーカーによって200分間完全に混合した。ペーストは粒子サイズが5μmであった。セラミック媒体を含むこのペーストをジャーの内部に設置されたシーブに添加し、その後、ジャーをそのキャップ及び別のカウンタージャーによりシールした。その組み立て品を遠心分離し、そしてすべてのペーストはシーブをとおしてジャーの底部に堆積され、そしてすべてのセラミックビーズはシーブに残った。黒色酸化鉄の粒子サイズは5μmであった。
【0017】
b.バインダー溶液の形成
53.27gのポリ(HEMA−コ−NVP)(W=20,810)及び35.51gの(−)乳酸エチルを500mlプラスチックカップに添加し、10分間完全に混合し、そして混合後に一晩放置した。60%コポリマーを含むバインダー溶液88.97gが製造された。
【0018】
c.活性化溶液の形成
14.00gのHEMAを、マグネティックバーを含む30ml褐色ガラスバイアルに添加し、その後、3gのEGDMA及び3gのLucirinTPO開始剤を順次に添加した。混合物を固形分開始剤が溶解するまで(約10分間)攪拌した。20gの活性化溶液を得た。
【0019】
d.インク組成物の形成
88.79gの黒色酸化鉄含有ペースト、88.79gのバインダー溶液及び19.73gの活性化溶液を500mlプラスチックカップに順次に添加し、10分間混合し、197.30gの、下記の成分を含むインク組成物を得た。
【0020】
【表1】

【0021】
インク組成物は、ブルックフィールドデジタル粘度計、モデルDV−II+、スピンドル:SPE−51;温度:25.4℃で測定して、下記の粘度プロファイルを有した。
【0022】
【表2】

【0023】
比較例3−ポリ(HEMA)インク組成物
インク組成物を下記の成分から調製した。
【0024】
【表3】

【0025】
a.バインダー溶液の形成
41.40gのポリ−HEMA(W=20,000)及び27.60gのシクロペンタノンを500mlプラスチックカップに添加し、10分間完全に混合し、そして混合後に一晩放置した。60%ポリ−HEMAのバインダー溶液67.57gを得た。
【0026】
b.活性化溶液
13.500gのHEMAを、マグネティックバーを含む30ml褐色ガラスバイアルに添加し、0.73gのEGDMA及び0.73gのLucirinTPO開始剤を順次に添加した。混合物を固形分開始剤が溶解するまで(約10分間)攪拌した。15.00gの活性化溶液を得た。
【0027】
c.インク組成物
64.63gの、例2aからの黒色酸化鉄含有ペースト、67.57gのポリ−HEMAバインダー溶液及び14.69gの活性化溶液を500mlプラスチックカップに順次に添加し、そして10分間混合した。インク組成物は、ブルックフィールドデジタル粘度計、モデルDV−II+、スピンドル:SPE−51;温度:25.4℃で測定して、下記の粘度プロファイルを有した。
【0028】
【表4】

【0029】
例4−ポリ(HEMA−コ−NVP)コポリマーを含むインク
【表5】

【0030】
a.例2aの一般手順に従ったが、褐色酸化鉄顔料に置き換えて、顔料ペーストを得る。
【0031】
b.例2bの一般手順に従い、ポリ(HEMA−コ−NVP)及び乳酸エチルを合わせてバインダー組成物を形成する。500mlプラスチックカップに添加し、10分間完全に混合し、そして混合後に一晩放置した。60%コポリマーを含むバインダー溶液88.97gが製造された。
【0032】
c.例2cの一般手順に従い、2−ブトキシエチルアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート及びLucirinTPO開始剤を合わせて活性化溶液を得る。
【0033】
d.例2dの一般手順に従い、褐色酸化鉄含有顔料、バインダー溶液及び活性化溶液を合わせてインク組成物を形成する。
【0034】
実施例及び例示された実施形態は本発明の幾つかの持続解放(sustained release)実施形態を示している。しかしながら、これらの実施例は例示の目的のみであり、条件及び範囲として完全に限定することを意図していないことが理解されるべきである。本発明は種々の好ましい実施形態に関連付けて記載されてきたが、本発明の精神及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの変更が本記載を与えられた当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性コポリマー基材及び該基材の表面上の着色剤含有組成物を含むコンタクトレンズであって、該着色剤含有組成物は顔料、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN−ビニルピロリジノンとのコポリマー及び架橋性モノマーを含む、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記着色剤含有組成物は前記表面上に同心環の形状を有する、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記同心環は前記コンタクトレンズを人間の目の上に配置したときに、その虹彩の位置に本質的に適合している、請求項2記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記同心環は外径が人間の虹彩よりも大きい、請求項3記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記親水性コポリマー基材は2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリジノン及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物の重合生成物であるコポリマーからできている、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
顔料、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとN−ビニルピロリジノンとのコポリマー及び架橋性モノマーを含む着色剤組成物をコンタクトレンズモールドの成形表面の一部の上に堆積させること、
前記着色剤組成物を少なくとも部分的に硬化させること、
レンズ形成性モノマー混合物を前記モールドに堆積させ、そして該レンズ形成性モノマー混合物を硬化させること、
を含み、前記着色剤組成物は硬化したコンタクトレンズの表面上にある、コンタクトレンズの製造方法。
【請求項7】
前記コンタクトレンズモールドはポリプロピレンからできている、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記着色剤組成物は前部コンタクトレンズモールドの成形表面の一部の上に堆積される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記レンズ形成性モノマー混合物はヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリジノン及び架橋性モノマーを含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記着色剤組成物は同心環の形状を形成するように堆積される、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記同心環は前記コンタクトレンズを人間の目の上に配置したときに、その虹彩の位置に本質的に適合している、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記同心環は外径が人間の虹彩よりも大きい、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記レンズ形成性モノマー混合物を硬化させた後に、前記コンタクトレンズを前記モールドから乾燥解放させることをさらに含む、請求項6記載の方法。

【公表番号】特表2013−500499(P2013−500499A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521712(P2012−521712)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/042499
【国際公開番号】WO2011/011344
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】