説明

コンテナクレーンの巻き上げ装置

【課題】二つのコンテナの同期作業と単一吊り作業とを実現するものでありながら、一つの遊星輪系減速機と一つの差動軸ブレーキとを採用することにより、従来よりも構造がシンプルで、かつ、コスト低減を図る。
【解決手段】陸地側と海側にそれぞれスプレッダ巻き上げ装置5a,5bを配し、この二つのスプレッダ巻き上げ装置5a,5bの間に一つの遊星減速機10と、該遊星減速機10の内歯車を制動するブレーキ装置30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つのコンテナの同期吊り作業と単一吊り作業とを実現できるコンテナクレーンの巻き上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7のように、減速器(遊星差動減速器)20’の中間部に差動軸ブレーキ50’を設け、更に、減速器20’の陸地側にダブルロープリール31’と32’とを備えると共に、減速器20’の海側にダブルロープリール33’と34’とを備えたダブル40フィート岸辺コンテナクレーンの四リール差動式リフトアップ機構が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、この文献は、遊星差動減速器20’の内部を示す図がないために、遊星差動減速器20’の内部構造が詳細に分からないが、特許文献1の段落〔0017〕第8〜12行に「陸地側吊り装置と海側吊り装置を制御するために、差動軸ブレーキ50’は、第一差動軸ブレーキ51’と第二差動軸ブレーキ52’を具備し、しかも、両差動軸ブレーキ51’と52’とは、それぞれ、遊星差動減速器20’の二つの遊星輪系の差動出力軸に接続され、両差動軸ブレーキ51’と52’とで遊星差動減速器20’の二つの遊星輪系の差動出力軸の回転を制御する」と記載されているように、従来の遊星差動減速器20’は、二つの遊星輪系を具備しているので、かなり複雑な構造になっていると推察される。
【0004】
しかも、差動軸ブレーキ50’は、第一差動軸ブレーキ51’と第二差動軸ブレーキ52’の二つの差動軸ブレーキを具備しているために、コスト的にも高価なものになっていると推察される。
【特許文献1】特開2006−290625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、二つのコンテナの同期作業と単一吊り作業とを実現するものでありながら、一つの遊星輪系減速機と一つの差動軸ブレーキとを採用することにより、従来よりも構造がシンプルで、かつ、コスト低減が図れるコンテナクレーンの巻き上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、陸地側と海側にそれぞれスプレッダ巻き上げ装置を配し、この二つのスプレッダ巻き上げ装置の間に一つの遊星減速機と、該遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、陸地側のスプレッダ巻き上げ装置を、主減速機と、その両サイドに設けたタンデム形ロープリールと、該ロープリールよりも海側に設けた少なくとも一つの駆動モータと、主減速機から海側に向けて突き出させた差動軸により形成し、海側のコンテナ吊り具巻き上げ装置を、主減速機と、その両サイドに設けたタンデム形ロープリールと、該ロープリールよりも陸地側に設けた少なくとも一つの駆動モータと、主減速機から陸地側に向けて突き出させた差動軸により形成し、かつ、陸地側と海側の二つのスプレッダ巻き上げ装置に設けられている差動軸間に一つの遊星減速機と、該遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、遊星減速機を、ハウジングと、該ハウジング内に回転自在に設けた太陽歯車と、その周りに配した複数の遊星歯車と、これらの遊星歯車と噛合すると共に太陽歯車と同心状になるように設けた内歯車と、前記太陽歯車と軸芯を同じくすると共に前記遊星歯車により回転駆動される第1平歯車と、該第1平歯車と中間歯車を介して噛合する第2平歯車と、該第2歯車に設けた第2入力軸と、太陽歯車に設けた第1入力軸により形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、陸地側と海側にそれぞれスプレッダ巻き上げ装置を配し、この二つのスプレッダ巻き上げ装置の間に一つの遊星減速機と、該遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置を設けたので、二つのコンテナの同期作業と単一吊り作業とを実現するものでありながら、遊星減速機の遊星輪系が一つで足りることから、従来の遊星減速機よりも構造がシンプルとなり、コスト低減を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、陸地側のスプレッダ巻き上げ装置を、主減速機と、その両サイドに設けたタンデム形ロープリールと、該ロープリールよりも海側に設けた少なくとも一つの駆動モータと、主減速機から海側に向けて突き出させた差動軸により形成し、海側のコンテナ吊り具巻き上げ装置を、主減速機と、その両サイドに設けたタンデム形ロープリールと、該ロープリールよりも陸地側に設けた少なくとも一つの駆動モータと、主減速機から陸地側に向けて突き出させた差動軸により形成し、かつ、陸地側と海側の二つのスプレッダ巻き上げ装置に設けられている差動軸間に一つの遊星減速機と、該遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置を設けたので、二つのコンテナの同期作業と単一吊り作業とを実現するものでありながら、遊星減速機の遊星輪系が一つで足り、しかも、遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置も一つで足りることから、従来の遊星減速機よりも構造がシンプルとなり、コスト低減が図れるようになった。
【0011】
更に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、遊星減速機を、ハウジングと、該ハウジング内に回転自在に設けた太陽歯車と、その周りに配した複数の遊星歯車と、これらの遊星歯車と噛合すると共に太陽歯車と同心状になるように設けた内歯車と、前記太陽歯車と軸芯を同じくすると共に前記遊星歯車により回転駆動される第1平歯車と、該第1平歯車と中間歯車を介して噛合する第2平歯車と、該第2歯車に設けた第2入力軸と、太陽歯車に設けた第1入力軸により形成したので、従来の遊星減速機よりも構造がシンプルになり、コスト低減が図れるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0013】
図1に示すように、コンテナクレーン1は、前後左右の四ヶ所に移動用の車輪2を備えたクレーン本体3と、クレーン本体3の上部に設けたガーダ4と、ガーダ4の陸地側に設置した巻き上げ装置5と、ガーダ4の陸地側と海側の間を往復する横行トロリ6と、横行トロリ6から吊り下げられた二つのコンテナ吊り具(以下、スプレッダという。)7,8により構成されている。
【0014】
そして、巻き上げ装置5を操作することにより、陸地側のスプレッダ7と海側のスプレッダ8の同期吊り作業と単一吊り作業とを実現できるようになっている。また、このコンテナクレーン1は、岸壁Gに敷設された図示しないレールに沿って前後方向、つまり、紙面を貫通する方向に移動できるようになっている。
【0015】
巻き上げ装置5は、図2に示すように、陸地側のスプレッダ巻き上げ装置5aと海側のスプレッダ巻き上げ装置5bを具備し、その間に遊星減速機10およびブレーキ装置30を設けている。
【0016】
遊星減速機10は、図3及び図4に示すように、ハウジング11と、ハウジング11内に回転自在に設けた太陽歯車12と、その周りに配した複数の遊星歯車13と、これらの遊星歯車13と噛合すると共に太陽歯車12と同心状になるように設けた内歯車14と、太陽歯車12と軸芯を同じくすると共に遊星歯車13により回転駆動される第1平歯車15と、第1平歯車15に中間歯車16を介して噛合する第2平歯車17と、第2平歯車17を具備する第2入力軸18と、太陽歯車12を具備する第1入力軸19により構成されている。ここで、遊星歯車13は、第1平歯車15に装着した鉤の手型の軸20の一端に回転自在に設けられている。
【0017】
遊星減速機10は、図3に示すように、太陽歯車12を具備する第1入力軸19側にブレーキ装置30を設けている。このブレーキ装置30としては、ブレーキデスク31にブレーキライニング板32押しつけて制動するデスクブレーキが好ましく使用される。そして、ブレーキデスク31は、第1入力軸側19と同心状になるように、筒体33を介して内歯車14の背面に固定されている。
【0018】
図2に示すように、陸地側のスプレッダ巻き上げ装置5aは、主減速機51aの両サイドにそれぞれ入力軸52aと出力軸53aとを具備すると共に、その海側に差動軸54aを具備している。この場合、出力軸53aは、入力軸52aよりも陸地側に位置している。
【0019】
そして、入力軸52aにそれぞれ電動モータ55aの回転軸56aを接続し、左サイドの出力軸53aにタンデム形のロープリール61a,62aを設け、右側サイドの出力軸53aにタンデム形のロープリール63a,64aを設ける。更に、差動軸54aに遊星減速機10の第1入力軸19を接続させる。この際、入力軸52aには、ブレーキ57aが設けられ、ロープリール61a,62aやロープリール63a,64aの軸にはリールブレーキ58aが設けられている。
【0020】
他方、海側のスプレッダ巻き上げ装置5bは、主減速機51bの両サイドにそれぞれ入力軸52bと出力軸53bとを具備すると共に、その陸地側に差動軸54bを具備している。この場合、出力軸53bは、入力軸52bよりも海側に位置している。
【0021】
そして、入力軸52bにそれぞれ電動モータ5bの回転軸56bを接続し、左サイドの出力軸53bにタンデム形のロープリール61b,62bを設け、右側サイドの出力軸53bにタンデム形のロープリール63b,64bを設ける。更に、差動軸54bに遊星減速機10の第2入力軸18を接続させる。この際、入力軸52bには、ブレーキ57bが設けられ、ロープリール61b,62bやロープリール63b,64bの軸にはリールブレーキ58bが設けられている。
【0022】
しかして、図5に示すように、ブレーキ装置30を「ON」にして、内歯車14を固定すると、図示しない電動モータによって太陽歯車12に連結されている第1入力軸19が回転し、同時に、遊星歯車13に連結されている第1平歯車15を介して第2入力軸18が第1入力軸19と同じ回転数で回転し、二つのスプレッダ巻き上げ装置5a,5bが一緒に駆動される。
【0023】
他方、図6に示すように、ブレーキ装置30を「OFF」にすると、ブレーキデスク31と一体になっている内歯車14がフリーになる。すると、太陽歯車12に連結されている第1入力軸19を介して第2入力軸18がフリーになる一方、太陽歯車付きの第1入力軸19も内歯車14に拘束されないので、フリーとなる。その結果、二つのスプレッダ巻き上げ装置5a,5bは、それぞれ、単独で駆動可能になる。
【0024】
以上の説明では、電動モータ5a及び5bを、それぞれ、二台使用しているが、電動モータ5a及び5bの個数は、それぞれ、一台の場合もあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る巻き上げ装置を備えたコンテナクレーンの正面図である。
【図2】本発明に係る巻き上げ装置の平面図である。
【図3】遊星減速機の概略構成図である。
【図4】図3のX−X断面図である。
【図5】ブレーキ装置30を「ON」にした場合の作用説明図である。
【図6】ブレーキ装置30を「OFF」にした場合の作用説明図である。
【図7】従来の巻き上げ装置の平面図である。
【符号の説明】
【0026】
5a,5b スプレッダ巻き上げ装置
10 遊星減速機
14 遊星減速機の内歯車
30 ブレーキ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸地側と海側にそれぞれスプレッダ巻き上げ装置を配し、この二つのスプレッダ巻き上げ装置の間に一つの遊星減速機と、該遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置を設けたことを特徴とすることをコンテナクレーンの巻き上げ装置。
【請求項2】
陸地側のスプレッダ巻き上げ装置を、主減速機と、その両サイドに設けたタンデム形ロープリールと、該ロープリールよりも海側に設けた少なくとも一つの駆動モータと、主減速機から海側に向けて突き出させた差動軸により形成し、海側のコンテナ吊り具巻き上げ装置を、主減速機と、その両サイドに設けたタンデム形ロープリールと、該ロープリールよりも陸地側に設けた少なくとも一つの駆動モータと、主減速機から陸地側に向けて突き出させた差動軸により形成し、かつ、陸地側と海側の二つのスプレッダ巻き上げ装置に設けられている差動軸間に一つの遊星減速機と、該遊星減速機の内歯車を制動するブレーキ装置を設けたことを特徴とするコンテナクレーンの巻き上げ装置。
【請求項3】
遊星減速機を、ハウジングと、該ハウジング内に回転自在に設けた太陽歯車と、その周りに配した複数の遊星歯車と、これらの遊星歯車と噛合すると共に太陽歯車と同心状になるように設けた内歯車と、前記太陽歯車と軸芯を同じくすると共に前記遊星歯車により回転駆動される第1平歯車と、該第1平歯車と中間歯車を介して噛合する第2平歯車と、該第2歯車に設けた第2入力軸と、太陽歯車に設けた第1入力軸により形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンテナクレーンの巻き上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−242099(P2009−242099A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94304(P2008−94304)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)