説明

コンテナ荷役車両

【課題】荷役アームが、横断面矩形状のアウタアームと、そのアウタアーム内にスライド手段を介して摺動可能に嵌合される先部アームとを有して伸縮可能であるコンテナ荷役車両において、スライダの使用個数とクリアランス調整工数を低減して、製造コストの節減や組立作業性を向上させる。
【解決手段】横断面が概ね矩形状の先部アームM下端の左右隅部には、アウタアームO下端の左右隅部との間で横断面三角形状のクリアランスCsを形成する左右傾斜部Msが形成され、スライド手段は、傾斜部Msに摺動可能に接する傾斜スライド面fsと該傾斜部Msに対応するアウタアームO下端の隅部の水平面及び鉛直面にそれぞれ接する水平支持面fh及び鉛直支持面fvとを各々有する左右一対の下部スライダLf,Lrと、アウタアームOの上壁下面と先部アームMの上壁上面との間に介装されてその間の相対摺動を許容する上部スライダUf,Urとより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテナを係脱可能なフック部を前端に有して前後方向に延びる荷役アームの基部を、車体フレーム上に前後に起伏回動可能に軸支し、この荷役アームが、基部側のアウタアームと、そのアウタアーム内にスライド手段を介して摺動可能に嵌合される先部アームとを少なくとも有していてテレスコピック状に伸縮可能であり、その荷役アームの伸縮と起伏回動とによりコンテナを車体フレーム上と地上間で積み卸しできるようにしたコンテナ荷役車両が知られており、このものでは、アウタアーム及び先部アームが何れも横断面矩形状に形成されていた(下記の特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−178820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで上記特許文献1に開示される従来技術では、各々が横断面矩形状をなすアウタアーム内面と先部アーム外面との間に形成されるクリアランスの上下・左右にそれぞれスライダが介装され、その上・下スライダにより上下方向のクリアランス調整が、またその左・右スライダにより左右方向のクリアランス調整がそれぞれ個別に行われるようになっており、そのため、全体としてスライダの使用個数が多くなってコストが嵩む上、それらスライダによるクリアランス調整工数も多くなって組立作業性やメンテナンス作業性が悪い問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来構造の上記問題を簡単な構造で解決することができるコンテナ荷役車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、コンテナを係脱可能なフック部を前端に有して前後方向に延びる荷役アームの基部を、車体フレーム上に前後に起伏回動可能に軸支し、この荷役アームが、横断面矩形状に形成されたアウタアームと、そのアウタアーム内にスライド手段を介して摺動可能に嵌合される先部アームとを少なくとも有していてテレスコピック状に伸縮可能であり、その荷役アームの伸縮と起伏回動とによりコンテナを車体フレーム上と地上間で積み卸しできるようにしたコンテナ荷役車両において、前記先部アームの横断面形状は、前記アウタアームの横断面形状に対応した概ね矩形状に形成されると共に、その先部アーム下端の左右隅部には、該アウタアーム下端の左右隅部との間で横断面三角形状のクリアランスを形成する左右傾斜部がそれぞれ形成され、前記スライド手段は、前記傾斜部に摺動可能に接する傾斜スライド面と該傾斜部に対応する前記アウタアーム下端の隅部の水平面及び鉛直面にそれぞれ接する水平支持面及び鉛直支持面とを各々有して前記クリアランスに配設される左右一対の下部スライダと、前記アウタアームの上壁下面と前記先部アームの上壁上面との相互間に少なくともその一方の面に接するよう介装されてその相互間の相対摺動を許容する上部スライダとより構成され、前記アウタアームの上壁下面と前記先部アームの上壁上面との相互間には、その相互間の扁平なクリアランスに応じて前記上部スライダの取付位置を調節して該上部スライダを前記一方の面に適正に接触させる位置調節手段が設けられることを特徴とする。
【0006】
また請求項2の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、前記下部スライダは、前記アウタアームの先部と前記先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、後者の下部スライダは、前記先部アームの基部において前記傾斜部に前後に間隔をおいて突設した前後一対の支持片間に挟持されることを特徴とする。
【0007】
また請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の上記特徴に加えて、前記下部スライダは、前記アウタアームの先部と前記先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、前者の下部スライダは、前記アウタアームと前記先部アームとの間の前記横断面三角形状のクリアランスの前端開口より該クリアランス内に抜差可能に挿入されて、前記アウタアームの先部にその外側より締結操作可能な締結手段を以て着脱可能に固着されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンテナ荷役車両。
【0008】
また請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかの発明の上記特徴に加えて、前記上部スライダは、前記アウタアームの先部と前記先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、その後者の上部スライダは、前記位置調節手段を構成するクリアランス調整用シム板を該上部スライダの背面と前記先部アームの基部外面との間に挟むようにして、該先部アームの基部に着脱可能に装着されることを特徴とする。
【0009】
また請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明の上記特徴に加えて、前記上部スライダは、前記アウタアームの先部と前記先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、その前者の上部スライダは、前記アウタアームと前記先部アームとの間の前記扁平なクリアランスの前端開口より該クリアランス内に抜差可能に挿入されて前記アウタアームの先部に着脱可能に締結されるホルダ板に嵌合、保持されることを特徴とする。
【0010】
また請求項6の発明は、請求項5の発明の特徴に加えて、前記ホルダ板の前記締結は、アウタアームの先部を貫通して該先部に頭部が係合するボルトのねじ軸部を該ホルダ板に螺挿することでなされることを特徴とする。
【0011】
また請求項7の発明は、請求項6の発明の特徴に加えて、前記ホルダ板とアウタアームの先部内面との間に、前記位置調整手段を構成するクリアランス調整用シム板が介挿され、そのシム板を前記ボルトが貫通していることを特徴とする。
【0012】
また請求項8の発明は、請求項1〜7の何れかの発明の上記特徴に加えて、アウタアームの左右両側面には、荷役アームを強制的に起伏回動させる左右一対の起伏用シリンダの端部を枢支連結させる取付ブラケットが固着され、荷役アームが伏倒位置にあるときにアウタアームの下面が車体フレーム上に当接、支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、横断面が概ね矩形状に形成される先部アーム下端の左右隅部には、アウタアーム下端の左右隅部との間で横断面三角形状のクリアランスを形成する左右傾斜部がそれぞれ形成され、両アーム間のスライド手段が、前記傾斜部に摺動可能に接する傾斜スライド面と該傾斜部に対応するアウタアーム下端の隅部の水平面及び鉛直面にそれぞれ接する水平支持面及び鉛直支持面とを各々有する左右一対の下部スライダと、アウタアームの上壁下面と先部アームの上壁上面との相互間に少なくともその一方の面に接するよう介装されてその相互間の相対摺動を許容する上部スライダとより構成され、アウタアームの上壁下面と先部アームの上壁上面との相互間には、その相互間の扁平なクリアランスに応じて上部スライダの取付位置を調節して該上部スライダを前記一方の面に適正に接触させる位置調節手段が設けられるので、傾斜スライド面を各々有する左右一対の下部スライダが先部アームに対し左右方向の自動調心作用を及ぼすことで、両アーム間の左右方向のクリアランス調整が自動的になされ、従って、その両アーム間のクリアランス調整は、上部スライダ及び位置調節手段を用いて上下方向にのみ行えばよく、全体としてスライダの使用個数の低減と、クリアランス調整工数の低減とが達成され、製造コストの節減や組立作業性、メンテナンス作業性の向上に寄与することができる。
【0014】
また特に請求項2の発明によれば、下部スライダは、アウタアームの先部と先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、後者の下部スライダは、先部アームの基部において前記傾斜部に前後に間隔をおいて突設した前後一対の支持片間に挟持されるので、その前後一対の支持片間に下部スライダを挟み込んだ状態で先部アームの基部をアウタアーム内に単に差込むだけで、下部スライダをアウタアーム等に特別に固着しなくても定位置に的確に保持することができ、その保持構造の簡素化が図られる。
【0015】
また特に請求項3の発明によれば、下部スライダは、アウタアームの先部と先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、前者の下部スライダは、アウタアームと先部アームとの間の前記横断面三角形状のクリアランスの前端開口より該クリアランス内に抜差可能に挿入されて、アウタアームの基部にその外側より締結操作可能な締結手段を以て着脱可能に固着されるので、アウタアーム内に先部アームを差し込んだままの状態でも下部スライダの脱着を簡単に行うことができて、組立作業性、メンテナンス作業性の向上に寄与することができる。
【0016】
また特に請求項4の発明によれば、上部スライダは、アウタアームの先部と先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、その後者の上部スライダは、クリアランス調整用のシム板と共に先部アームの基部に着脱可能に締結されるので、先部アームの単体状態で(即ちアウタアーム内への差込み前に)上部スライダ及びシム板の脱着作業を容易に行うことができる。
【0017】
また特に請求項5の発明によれば、上部スライダは、アウタアームの先部と先部アームの基部とに左右一対ずつ配置され、その前者の上部スライダは、アウタアームと先部アームとの間の前記扁平なクリアランスの前端開口より該クリアランス内に抜差可能に挿入されてアウタアームの先部に着脱可能に締結されるホルダ板に嵌合、保持されるので、アウタアーム内に先部アームを差し込んだままの状態でも上部スライダをホルダ板と共に簡単に脱着することができて、組立作業性、メンテナンス作業性の向上に寄与することができる。
【0018】
また特に請求項6の発明によれば、ホルダ板の前記締結は、アウタアームの先部を貫通して該先部に頭部が係合するボルトのねじ軸部を該ホルダ板に螺挿することでなされるので、そのボルトのねじ孔は、ホルダ板にだけ刻設すればよく、アウタアーム本体には刻設する必要がないことから、ねじ孔の錆付きや損傷に対しては、小物部品であるホルダ板の交換だけで済み、大物部品であるアウタアーム自体は引き続き使用できるから、コスト節減が図られる。また比較的柔らかい上部スライダにボルトを直接ねじ込む必要もないから、スライダ強度も十分に確保可能となる。
【0019】
また特に請求項7の発明によれば、前記ホルダ板及び上部スライダの背面側とアウタアームの先部内面との間に、クリアランス調整用シム板が介挿され、そのシム板を前記ボルトが貫通しているので、そのシム板の脱着をホルダ板(従って上部スライダ)の脱着と同時に簡単に行うことができ、クリアランス調整の作業性が良好である。
【0020】
また特に請求項8の発明によれば、アウタアームの左右両側面には、荷役アームを強制的に起伏回動させる左右一対の起伏用シリンダの端部を枢支連結させる取付ブラケットが固着され、荷役アームが伏倒位置にあるときにアウタアームの下面が車体フレーム上に当接、支持されるが、アウタアームを横断面矩形状としたことで、そのアーム左右外側面を上記取付ブラケットの広い取付支持面として有効に利用でき、またそのアーム下面を車体フレーム上に極力広いスパンで、無理なく安定よく当接、支持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0022】
図1〜図15は、本発明の一実施例を示すものであって、図1は、コンテナ荷役車両のコンテナ積込み完了時(走行時)及びダンプ時の状態を示す側面図、図2は、コンテナの積込み途中の状態を示すコンテナ荷役車両の側面図、図3は、コンテナ荷役車両の要部(荷役アーム及びその周辺部)を示す縦断面図、図4は、最伸長状態の荷役アーム及びその周辺部の拡大平面図(図3の4矢視図)、図5は、図3の5矢視部の拡大図、図6は、図3の6矢視部の拡大図、図7は、図5の7−7線拡大断面図、図8は、図5の8矢視より見た分解斜視図、図9は、図5の9−9線断面図、図10は、図9の10−10線断面図、図11は、図6の11−11線断面図、図12は、図6の12矢視より見た分解斜視図、図13は、図6の13−13線拡大断面図、図14は、図13の14−14線断面図、図15は、図13の15−15線断面図である。
【0023】
先ず、図1〜図4において、コンテナ荷役車両Vの車体フレームF上には運転室の後方にサブフレームSFが一体に搭載されている。このサブフレームSFは、前後に長い方形枠状に形成されており、そのサブフレームSFの後端左右には、左右案内ローラ1が回転自在に軸架されており、これらの案内ローラ1は、サブフレームSF上に脱着可能に搭載される後述のコンテナCtを誘導案内する。
【0024】
サブフレームSFの後部には、ダンプアームDの後端が後方にダンプ可能に、即ち前記左右案内ローラ1と同じ軸線まわりに起伏回動できるように軸支されている。そのダンプアームDの前端寄りの中間部には、荷役アームAの後端が前後に起伏回動可能に軸支2され、この荷役アームAは、サブフレームSFの左右中間部を前後方向に延びており、その後部はダンプアームDと前後方向に重なり合っているが、その大部分はダンプアームDよりも前方に延長されている。
【0025】
またその荷役アームAの前端には、該荷役アームAとL字状をなすよう上方に起立するフック部Afが一体的に連設されており、そのフック部Afの上端部には、コンテナCtの前端部に設けた被係止部3を係脱可能な係止爪片Afaが一体的に設けられる。尚、コンテナCtの底部には、該コンテナCtを地上Eでスムーズに移動させるための車輪11が設けられる。
【0026】
荷役アームAは、基部側のアウタアームOと、そのアウタアームO内に摺動可能に嵌合される先部アームとしてのミドルアームMと、そのミドルアームM内に第1スライダ手段SFを介して相対摺動可能に嵌合されるインナアームIとを有していてテレスコピック状に伸縮可能であり、何れのアームO,M,Iも角筒状(即ち横断面が概ね矩形状)に形成される。またインナアームIの内端部には、荷役アームAを伸縮作動させる油圧式の伸縮用シリンダCaの一端が連結され、その他端は、アウタアームOの基部に連結される。
【0027】
またアウタアームOの基部寄り中間部の左右両側面には取付ブラケットBRが一体的に接合されており、この取付ブラケットBRと、サブフレームSFとの間には、互いに同調作動して荷役アームAを強制的に前後に起伏回動させる左右一対の油圧式の起伏用シリンダCkが左右対称的に介装、連結される。この起伏用シリンダCkは、荷役アームAが図1,2に実線で示す伏倒位置にあるときに荷役アームAの左右両側面にそれぞれ概ね沿うように配置されている。また、荷役アームAが伏倒位置にあるときにアウタアームOの下面は、サブフレームSF上(図示例ではサブフレームSFのクロスメンバSFc上)に当接、支持されて、その伏倒位置に静止する。
【0028】
荷役アームAとダンプアームD間には、その間を一体的に固縛し或いはその固縛を随時に解除し得る固縛機構LOが設けられており、その固縛機構LOの構造は従来周知であるので、具体的な構造作用の説明を省略する。而して、その固縛機構LOの固縛状態では、図1の実線及び鎖線に示すように、起伏用シリンダCkの伸縮作動により荷役アームAとダンプアームDとが一体的に傾動してコンテナCtをダンプさせることができる。
【0029】
またその固縛機構LOを固縛解除すると共に荷役アームAを収縮させた状態では、起伏用シリンダCkの伸縮作動により荷役アームAをダンプアームDに対し起伏回動させることができ、その起伏回動と、荷役アームA自体の伸縮作動とにより、後述するようにコンテナCtをサブフレームSFと地上E間で積み卸しできるようになっている。
【0030】
車体フレームFの後部にはアウトリガー10が設けられ、このアウトリガー10は、コンテナCtを積み降ろし或いはダンプさせるとき、作動状態となってコンテナ荷役車両Vを安定させることができる。
【0031】
ところで荷役アームAの伸縮に際しては、インナ・ミドル・アウタアームI,M,Oを所定の伸縮順序で伸縮させる必要があり、そのために、荷役アームAには、これの全収縮状態から第1所定量伸長させるまではインナアームIとミドルアームMとをアウタアームOに対し一体に前進させるべくインナアームIとミドルアームM間を固縛し、その固縛を該荷役アームAの第1所定量伸長後は解除する第1ロック機構と、荷役アームAを最伸長状態から第2所定量収縮させるまではインナアームIをミドルアームM及びアウタアームOに対し単独で後退させるべくミドルアームMとアウタアームO間を固縛し、その固縛を該荷役アームAの第2所定量収縮後は解除する第2ロック機構とが装備されているが、それらロック機構は、従来公知であり、また本発明の要旨ではないため、図示及び説明を省略する。
【0032】
次に図5,図7〜図10を併せて参照して、先部アームとしてのミドルアームMと、アウタアームOとの間を相対摺動可能に摺動案内するスライド手段としての第1スライド手段SLの構造について説明する。
【0033】
即ち、ミドルアームMの横断面形状は、アウタアームOの横断面形状に対応した概ね矩形状に形成されると共に、そのミドルアームM下端の左右隅部には、該アウタアームO下端の左右隅部との間で横断面三角形状のクリアランスCsを形成する左右傾斜部Msがそれぞれ形成される。アウタアームOの先部外周面には、これをその全周に亘り囲繞して補強するリング板状の補強板4が溶接等の固着により一体的に接合、固定される。
【0034】
前記第1スライド手段SLは、ミドルアームMの前記傾斜部Msに摺動可能に接する傾斜スライド面fsと、該傾斜部Msに対応するアウタアームO下端の隅部の水平面・鉛直面にそれぞれ接する水平支持面fh・鉛直支持面fvとを各々有して前記三角形状のクリアランスCsに配設される左右一対の下部スライダLf,Lrと、アウタアームOの上壁下面とミドルアームMの上壁上面との相互間にその一方の面に摺動可能に接するよう介装されてその相互間の相対摺動を許容する上部スライダUf,Urとより構成される。そして、アウタアームOの上壁下面とミドルアームMの上壁上面との相互間には、その相互間の扁平なクリアランスCuの大小に応じて上部スライダUf,Urの取付位置を調節して該上部スライダUf,Urを前記一方の面に適正に(即ちガタ無く)接触させる位置調節手段としてのシム板Sf,Srが設けられる。
【0035】
前記下部スライダLf,Lrは、アウタアームOの先部とミドルアームMの基部とに左右一対ずつ配置される。その後者の下部スライダ、即ち左右一対の後側下部スライダLrは、ミドルアームMの基部において左右の傾斜部Ms外面に前後に間隔をおいて一体的に突設した前後一対の支持片Msa,Msb間に挟持され、アウタアームO内にミドルアームMが嵌合した状態では両支持片Msa,Msb間から後側下部スライダLrが離脱する虞れはない。
【0036】
そして、各々の後側下部スライダLrは、前記傾斜スライド面fsを一面に有して前記クリアランスCsの横断面形状に対応した横断面三角形状に形成されるホルダブロック5rと、それホルダブロック5rの、アウタアームO下端の隅部の水平面・鉛直面にそれぞれ対向する水平な底面の凹部と鉛直な外側面の凹部とにそれぞれ嵌合され且つボルトBlrで固定される底部パッドPrt及び側部パッドPrsとを備える。その底部パッドPrtのホルダブロック5r底面からの下方張出部分の外面は、アウタアームO下端の隅部の水平面に摺動可能に当接する前記水平支持面fhを構成しており、また側部パッドPrsのホルダブロック5r外側面からの側方張出部分の外面は、アウタアームO下端の隅部の鉛直面に摺動可能に当接する前記鉛直支持面fvを構成している。
【0037】
一方、前者の下部スライダ、即ち左右一対の前側下部スライダLfは、アウタアームOとミドルアームMとの間の横断面三角形状のクリアランスCsの前端開口より該クリアランスCs内に抜差可能に挿入されて、アウタアームOの先部(図示例では前記補強板4)にその外面より締結操作可能な締結手段としてのボルトBlfを以て着脱可能に締結される。
【0038】
そして、各々の前側下部スライダLfは、前記水平支持面fh及び前記鉛直支持面fvを一体に有して前記クリアランスCsの横断面形状に対応した横断面三角形状に形成されるホルダブロック5fと、そのホルダブロック5fの、ミドルアームM下端の隅部の前記傾斜部Ms外面に対向する傾斜面の凹部に嵌合、固定される傾斜パッドPfとを備える。その傾斜パッドPfのホルダブロック5f傾斜面からの張出部分の外面は、前記傾斜部Msに摺動可能に当接する前記傾斜スライド面fsを構成している。そしてホルダブロック5fの前記水平支持面fh及び前記鉛直支持面fvは、前記ボルトBlfによりアウタアームO下端の隅部の水平面及び鉛直面にアーム外側からそれぞれ締結される。
【0039】
また前記上部スライダUf,Urは、アウタアームOの先部とミドルアームMの基部とに左右一対ずつ配置される。その後者の上部スライダ、即ち左右一対の後側上部スライダUrは、前記扁平なクリアランスCuに介装される扁平なパッド材より構成されており、それの背面とミドルアームMの基部外面との間には、前記位置調節手段を構成するクリアランス調整用の後側シム板Srが挟持される。そして、その後側シム板Sr及び後側上部スライダUrは、ミドルアームMの基部に締結手段としてのボルトBurと、これに螺合するナットとを以て着脱可能に締結される。
【0040】
一方、その前者の上部スライダ、即ち左右一対の前側上部スライダUfも扁平なパッド材より構成されるものであって、それは、アウタアームOとミドルアームMとの間の前記扁平なクリアランスCuの前端開口より該クリアランスCu内に抜差可能に挿入されるホルダ板Hに保持される。そのホルダ板Hは、アウタアームOの先部(図示例では前記補強板4)にその外側より締結操作可能な締結手段を以て着脱可能に締結されており、またそのホルダ板Hの左右前端部には、アウタアームOの先端に係合して該ホルダ板Hの挿入限界を規定するストッパHaが一体に突設される。
【0041】
そして、そのホルダ板Hの左右両側部には、左右外側が各々開放されて左右一対の前側上部スライダUfをそれぞれ嵌合させた左右一対の切欠部6が形成され、その各切欠部6内の前側上部スライダUfは、これの外側端とアウタアームO内側面との係合により該切欠部6からの離脱(延いては前記前端開口からの抜け出し)が規制されるよう嵌合、保持される。尚、上記のような切欠部6に代えて、ホルダ板Hに形成した貫通孔部(図示せず)、或いはホルダ板Hの下面に形成した嵌合凹部(図示せず)に前側上部スライダUfを嵌合、保持するようにしてもよい。
【0042】
ホルダ板Hの前記締結は、図示例ではアウタアームOの先部(図示例では前記補強板4)を貫通して該先部に頭部が係合するボルトBufのねじ軸部を該ホルダ板Hに螺挿することでなされる。しかもそのホルダ板H及び前側上部スライダUfの各背面と、アウタアームOの先部内面との間には、前記位置調整手段を構成するクリアランス調整用の前側シム板Sfが介装され、その前側シム板Sfは、これを貫通する前記ボルトBufにより、ホルダ板Hと共にアウタアームOの先部に締結される。
【0043】
次に図6,図11〜図15を併せて参照して、先部アームとしてのミドルアームMと、インナアームIとの間を相対摺動可能に摺動案内するスライド手段としての第2スライド手段SL′の構造について説明する。
【0044】
即ち、インナアームMの横断面形状は、ミドルアームMの横断面形状に対応した概ね矩形状に形成されると共に、そのインナアームI下端の左右隅部には、該ミドルアームM下端の左右傾斜部Msとの間で傾斜した扁平なクリアランスCs′を形成する左右傾斜部Isがそれぞれ形成される。ミドルアームMの先部外周面には、これをその全周に亘り囲繞するリング板状の補強板4′が溶接等の固着により一体的に接合、固定されている。
【0045】
前記第2スライド手段SL′は、インナアームI及びミドルアームMの相対向する前記傾斜部Is,Ms間に形成される傾斜した扁平なクリアランスに介装される帯板状パッド材よりなる左右の下部スライダLf′,Lr′と、ミドルアームMの上壁下面とインナアームIの上壁上面との相互間にその一方の面に摺動可能に接するよう介装されてその相互間の相対摺動を許容する上部スライダUf′,Ur′とより構成される。そして、ミドルアームMの上壁下面とインナアームIの上壁上面との相互間には、その相互間の扁平なクリアランスCu′の大小に応じて上部スライダUf′,Ur′の取付位置を調節して該上部スライダUf′,Ur′を前記一方の面に適正に(即ちガタ無く)接触させる位置調節手段としてのシム板Sf′,Sr′が設けられる。
【0046】
前記下部スライダLf′,Lr′は、ミドルアームMの先部とインナアームIの基部とに左右一対ずつ配置される。その後者の下部スライダ、即ち左右一対の後側下部スライダLr′は、インナアームIの基部において左右の傾斜部Is外面に前後に間隔をおいて一体的に突設した前後一対の支持片Isa,Isb間に挟持されると共に、該後側下部スライダLr′を貫通、係合して左右の傾斜部Isに螺挿されるボルトBlr′を以て該傾斜部Isに着脱可能に締結される。そして、各々の後側下部スライダLr′の外面が、ミドルアームMの傾斜部Ms内面に摺動可能に接する傾斜スライド面fs′となる。
【0047】
一方、前者の下部スライダ、即ち左右一対の前側下部スライダLf′は、ミドルアームMとインナアームIとの間の前記扁平なクリアランスCs′の前端開口より該クリアランスCs′内に抜差可能に挿入されると共に、ミドルアームMの先端面に形成した切欠状係合凹部9に抜差可能に係合される。そして、そのクリアランスCs′からの前側下部スライダLf′の抜け出しが、ミドルアームMの先部(図示例では前記補強板4′)にボルトBlf′を以て着脱可能に固定される止め金8により阻止される。
【0048】
また前記上部スライダUf′,Ur′は、ミドルアームMの先部とインナアームIの基部とに左右一対ずつ配置される。その後者の上部スライダ、即ち左右一対の後側上部スライダUr′は、前記扁平なクリアランスCu′に介装される扁平なパッド材より構成されており、それの背面とミドルアームMの基部外面との間には、前記位置調節手段を構成するクリアランス調整用の後側シム板Sr′が挟持される。そして、その後側シム板Sr′及び後側上部スライダUr′は、ミドルアームMの基部に締結手段としてのボルトBur′と、これに螺合するナットとを以て着脱可能に締結される。
【0049】
一方、その前者の上部スライダ、即ち左右一方の前側上部スライダUf′も扁平なパッド材より構成されるものであって、それは、インナアームIとミドルアームMとの間の前記扁平なクリアランスCu′の前端開口より該クリアランスCu′内に抜差可能に挿入されるホルダ板H′に保持される。そのホルダ板H′は、ミドルアームMの先部(図示例では前記補強板4′)にその外側より締結操作可能な締結手段を以て着脱可能に締結されており、またそのホルダ板H′の左右前端部には、ミドルアームMの先端に係合して該ホルダ板H′の挿入限界を規定するストッパHa′が一体に突設される。
【0050】
そして、そのホルダ板H′の左右両側部には、左右外側が各々開放されて左右一対の前側上部スライダUf′をそれぞれ嵌合させる左右一対の切欠部6′が形成され、その各切欠部6′内の前側上部スライダUf′は、これの外側端とミドルアームM内面との係合により該切欠部6′からの離脱(延いては前記前端開口からの抜け出し)が規制されるよう嵌合、保持される。尚、このような切欠部6′に代えて、ホルダ板H′に形成した貫通孔部(図示せず)、或いはホルダ板H′の下面に形成した嵌合凹部(図示せず)に前側上部スライダUf′を嵌合、保持するようにしてもよい。
【0051】
ホルダ板H′の前記締結は、ミドルアームMの先部(図示例では前記補強板4′)を貫通して該先部に頭部が係合するボルトBuf′のねじ軸部を該ホルダ板H′に螺挿することでなされる。しかもそのホルダ板H′及び前側上部スライダUf′の各背面と、ミドルアームMの先部内面との間には、前記位置調整手段を構成するクリアランス調整用の前側シム板Sf′が介装され、その前側シム板Sf′は、これを貫通する前記ボルトBuf′により、ホルダ板H′と共にミドルアームMの先部に締結される。
【0052】
次に前記実施例の作用について説明する。
【0053】
図1に示すようにコンテナ荷役車両Vの車体フレームF上(サブフレームSF上)にコンテナCtが積込まれている状態から、図2に示すようにリフトシリンダAを最収縮させてコンテナCtを左右案内ローラ1上で後方に所定量だけ後退移動させ、次いで固縛機構LOを固縛解除し、起伏用シリンダCkを伸長作動させると、リフトシリンダAが後方に起立回動し、これにより、コンテナCtは左右案内レール2,2の回転中心を支点として後方に傾動しつつ後退して、その後部下縁が地上Eに着地する。起伏用シリンダCkを更に伸長させることで荷役アームAが後方回動位置に至れば、フック部Afが下向きとなって、コンテナCtは地上Eに完全に降ろされる。ここでフック部Af先端の係止爪片AfaをコンテナCtの係止部3より外せば、コンテナCtはコンテナ荷役車両Vから分離される。
【0054】
また地上EのコンテナCtをコンテナ荷役車両Vに積み込むときは、上記と逆の手順で行われる。この場合、荷役アームAの前方回動により地上のコンテナCtをサブフレームSF上に積み込んだ後において、サブフレームSFに沿う伏倒位置にある荷役アームAを伸長させて、コンテナCtを正規の搭載位置までサブフレームSF上で前進移動させるが、その伸長量(即ちコンテナ前進量)は、積み込まれたコンテナCtの長さに応じて適宜調整され、これにより、長さの異なるコンテナCtを積み込んでも車両重心位置の変動を極力抑えることができる。尚、上記伸長量の決定は、車体フレームF上に設けた公知のコンテナ長検出手段(図示せず)の検出信号に基づいて行われるか、或いは作業員の目視判断に基づいて行われる。
【0055】
また、サブフレームSF上にコンテナCtが搭載され固縛機構LOが固縛状態にあるときに(図1の状態)、起伏用シリンダCkを伸長すれば、図1鎖線に示すように、荷役アームA及びダンプアームDは一体となって後方に傾動しコンテナCtをダンプ上げさせることができて、コンテナCt内の収容物を外部に排出することができる。また起伏用シリンダCkを収縮作動させれば、コンテナCtをダンプ下げしてサブフレームSF上に降ろすことができる。以上のコンテナCtの積み降ろし作業およびダンプ作業は、従来の荷役車両と同じである。
【0056】
ところで全収縮状態の荷役アームAが伸長する際には、先ず、インナ・ミドルアームI,Mが一緒に伸長し、その伸長限界に達する(即ちミドルアームMがアウタアームOに対する前進限に達する)と、停止したミドルアームMに対してインナアームIがその前進限(この前進限は、前述のようにコンテナCtの長さに応じて位置調整される)まで伸長して、荷役アームAが最伸長状態となる。一方、最伸長状態の荷役アームAを収縮させる場合には、上記とは逆に、先ず、インナアームIだけが収縮し、その収縮限界に達する(即ちインナアームIがミドルアームMに対する後退限に達する)と、そのインナアームIと一緒にミドルアームMがアウタアームOに対して収縮して、荷役アームAが全収縮状態となる。このような荷役アームAの伸縮動作は、前記した従来公知の第1及び第2ロック機構(図示せず)のロック作用に基づいて達成される。
【0057】
また荷役アームAの組立に際しては、ミドルアームMの基部側に後側上部スライダUr及び後側下部スライダLrを組み込んだ状態で該ミドルアームMを、それの基部側からアウタアームO内にそれの先部側より差し込むようにし、その差し込み状態でアウタアームOの先部に前側上部スライダUf及び前側下部スライダLfを組み付けるようにする。同様に、インナアームIの基部側に後側上部スライダUr及び後側下部スライダLrを組み込んだ状態で該インナアームIを、それの基部側からミドルアームM内にそれの先部側より差し込むようにし、その差し込み状態でミドルアームMの先部に前側上部スライダUf及び前側下部スライダLfを組み付けるようにする。
【0058】
そして、その荷役アームAの組立完成状態において、アウタアームO内では、傾斜スライド面fsを各々有する左右一対の下部スライダLf,LrがミドルアームMに対し左右方向の自動調心作用(即ち傾斜スライド面fsによりミドルアームMをアウタアームOの左右中心側に誘導する作用)を及ぼすため、両アームO,M間の左右方向のクリアランス調整が自動的になされる。このため、その両アームO,M間のクリアランス調整は、上部スライダUf,Ur及びシム板Sf,Srの協働により上下方向にのみ行えばよく、全体としてスライダの使用個数の低減と、クリアランス調整工数の低減とが達成される。一方、ミドルアームM内では、傾斜スライド面fs′を各々有する左右一対の下部スライダLf′,Lr′がインナアームIに対し左右方向の自動調心作用(即ち傾斜スライド面fs′によりインナアームIをミドルアームMの左右中心側に誘導する作用)を及ぼすため、両アームI,M間の左右方向のクリアランス調整が自動的になされる。このため、その両アームI,M間のクリアランス調整は、上部スライダUf′,Ur′及びシム板Sf′,Sr′の協働により上下方向にのみ行えばよく、全体としてスライダの使用個数の低減と、クリアランス調整工数の低減とが達成される。
【0059】
また特に後側下部スライダLr,Lr′は、先部側アーム(ミドルアームM,インナアームI)の基部においてその下端の左右隅部の傾斜部Ms,Is外面に前後に間隔をおいて突設した前後一対の支持片Msa,Msb,Isa,Isb間に挟持されるので、その前後一対の支持片間に後側下部スライダLr,Lr′を挟み込んだ状態で先部側アーム(ミドルアームM,インナアームI)の基部を基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)内に単に差込むだけで、後側下部スライダLr,Lr′を基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)等に特別に固着しなくても定位置に的確に保持可能である。
【0060】
また特に前側下部スライダLf,Lf′は、先部側アーム(ミドルアームM,インナアームI)と基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)との間の前記横断面三角形状のクリアランスCs,Cs′の前端開口より該クリアランスCs,Cs′内に抜差可能に挿入されて、基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)にその外側より着脱可能に固着されている。そのため、基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)内に先部側アーム(ミドルアームM,インナアームI)を差し込んだままの状態であっても前側下部スライダLf,Lf′の脱着を簡単に行えるから、組立作業性、メンテナンス作業性の向上が図られる。これに対し、従来では、パッド材よりなる前側下部スライダが、基部側アームの先部内面に凹設した嵌合凹部内に嵌合保持されていたので、その基部側アームから先部側アームを引き抜かなければ前側下部スライダの保守、点検、交換等のメンテナンス作業を行うことができず、作業性が悪かった。尚、このような前側下部スライダLf,Lf′の取付構造は、図示例のような断面構造の荷役アームAにおいて有効であることは勿論のこと、上,下部スライダを挟んで相互に相対摺動可能に嵌合する複数の角筒状アームよりなる一般の種々の伸縮式作業アームや、上,下部スライダを挟んで相互に相対摺動可能に嵌合する複数の角筒状ブームよりなるクレーンブームに実施しても有効である。
【0061】
また特に前側上部スライダUf,Uf′は、先部側アーム(ミドルアームM,インナアームI)と基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)との間の前記扁平なクリアランスCu,Cu′の前端開口より該クリアランスCu,Cu′内に抜差可能に挿入されて基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)の先部に着脱可能に締結されるホルダ板H,H′に嵌合、保持されている。このため、両アームの嵌合状態でも前側上部スライダUf,Uf′をホルダ板H,H′と共に簡単に脱着できるから、組立作業性、メンテナンス作業性の向上が図られる。これに対し、従来では、パッド材よりなる前側上部スライダが、基部側アームの先部内面に凹設した嵌合凹部内に嵌合保持されていたので、その基部側アームから先部側アームを引き抜かなければ前側上部スライダの保守、点検、交換等のメンテナンス作業を行うことができず、作業性が悪かった。尚、このような前側上部スライダUf,Uf′の取付構造は、図示例のような断面構造の荷役アームAにおいて有効であることは勿論のこと、上,下部スライダを挟んで相互に相対摺動可能に嵌合する複数の角筒状アームよりなる一般の種々の伸縮式作業アームや、上,下部スライダを挟んで相互に相対摺動可能に嵌合する複数の角筒状ブームよりなるクレーンブームに実施しても有効である。
【0062】
また図示例では、ホルダ板H,H′の前記締結は、基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)の先部を貫通して該先部に頭部が係合するボルトBuf,Buf′のねじ軸部を該ホルダ板H,H′に直接螺挿することでなされるので、そのボルトBuf,Buf′のねじ孔は、ホルダ板H,H′にだけ刻設すればよく、基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)には刻設する必要がないことから、ねじ孔の錆付きや損傷に対しては、小物部品であるホルダ板H,H′の交換だけで済んで低コストで対応可能となる。しかも比較的柔らかいパッド材よりなる前側上部スライダUf,Uf′にボルトBuf,Buf′を直接ねじ込む必要もないから、スライダ強度も十分に確保可能となる。その上、ホルダ板H,H′及び前側上部スライダUf,Uf′の背面側と基部側アーム(アウタアームO,ミドルアームM)の先部内面との間に、クリアランス調整用シム板Sf,Sf′が介装されると共に、そのシム板Sf,Sf′を前記ボルトBuf,Buf′が貫通しているので、そのシム板Sf,Sf′の脱着を上記ホルダ板H,H′(従って前側上部スライダ)の脱着と同時に簡単に行えて、クリアランス調整の作業性が良好である。
【0063】
また図示例では、アウタアームOの左右両側面に左右一対の起伏用シリンダCkの端部を枢支連結させる取付ブラケットBRが固着され、荷役アームAが伏倒位置にあるときにアウタアームOの下面が車体フレームF(即ちサブフレームSFのクロスメンバSFc)上に当接、支持されるが、アウタアームOを横断面矩形状とした(即ちミドルアームMのような傾斜部Msを持たない)ことで、そのアウタアームOの平坦な左右外側面を上記取付ブラケットBRの広い取付支持面として有効活用でき、またそのアウタアームOの平坦な下面を車体フレームF(即ちサブフレームSFのクロスメンバSFc)上に極力広いスパンで、無理なく安定よく当接、支持可能となる。
【0064】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0065】
たとえば、前記実施例では、荷役アームAを三段伸縮式としてそのアウタアームOと、先部アームとしてのミドルアームMとの嵌合部に本発明に係る摺動案内機構を実施したものを示したが、荷役アームAを二段伸縮式としてその基部側のアウタアームと、そのアウタアーム内に摺動可能に嵌合する先部側のインナアームとの嵌合部に本発明に係る摺動案内機構を実施するようにしてもよく、この場合は、インナアームが本発明の先部アームとなる。
【0066】
また前記実施例では、荷役アームAを車体フレームFにダンプアームDを介して起伏回動可能に軸支して必要に応じてコンテナCtを車体フレームF上でダンプさせられるようにしたものを示したが、コンテナをダンプさせる必要がない車両においては、ダンプアームを省略して荷役アームAを車体フレームF(サブフレームSF)に直接軸支するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施例に係るコンテナ荷役車両のコンテナ積込み完了時(走行時)及びダンプ時の状態を示す側面図
【図2】コンテナの積込み途中の状態を示すコンテナ荷役車両の側面図
【図3】コンテナ荷役車両の要部(荷役アーム及びその周辺部)を示す縦断面図
【図4】最伸長状態の荷役アーム及びその周辺部の拡大平面図(図3の4矢視図)
【図5】図3の5矢視部の拡大図
【図6】図3の6矢視部の拡大図
【図7】図5の7−7線拡大断面図
【図8】図5の8矢視より見た分解斜視図
【図9】図5の9−9線断面図
【図10】図9の10−10線断面図
【図11】図6の11−11線断面図
【図12】図6の12矢視より見た分解斜視図
【図13】図6の13−13線拡大断面図
【図14】図13の14−14線断面図
【図15】図13の15−15線断面図
【符号の説明】
【0068】
A・・・荷役アーム
Af・・フック部
Blf・・ボルト(締結手段)
Buf・・ボルト
BR・・取付ブラケット
Ck・・起伏用シリンダ
Ct・・コンテナ
Cs・・クリアランス
Cu・・クリアランス
E・・・地上
F・・・車体フレーム
fs・・傾斜スライド面
fh・・水平支持面
fv・・鉛直支持面
H・・・ホルダ板
Lf,Lr・・下部スライダ
M・・・ミドルアーム(先部アーム)
Ms・・傾斜部
Msa,Msb・・支持片
O・・・アウタアーム
Sf,Sr・・クリアランス調整用シム板(位置調節手段)
SF・・サブフレーム
Uf,Ur・・上部スライダ
V・・・コンテナ荷役車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ(Ct)を係脱可能なフック部(Af)を前端に有して前後方向に延びる荷役アーム(A)の基部を、車体フレーム(F)上に前後に起伏回動可能に軸支(2)し、この荷役アーム(A)が、横断面矩形状に形成されたアウタアーム(O)と、そのアウタアーム(O)内にスライド手段(SL)を介して摺動可能に嵌合される先部アーム(M)とを少なくとも有していてテレスコピック状に伸縮可能であり、その荷役アーム(A)の伸縮と起伏回動とによりコンテナ(Ct)を車体フレーム(F)上と地上(E)間で積み卸しできるようにしたコンテナ荷役車両において、
前記先部アーム(M)の横断面形状は、前記アウタアーム(O)の横断面形状に対応した概ね矩形状に形成されると共に、その先部アーム(M)下端の左右隅部には、該アウタアーム(O)下端の左右隅部との間で横断面三角形状のクリアランス(Cs)を形成する左右傾斜部(Ms)がそれぞれ形成され、
前記スライド手段(SL)は、前記傾斜部(Ms)に摺動可能に接する傾斜スライド面(fs)と該傾斜部(Ms)に対応する前記アウタアーム(O)下端の隅部の水平面及び鉛直面にそれぞれ接する水平支持面(fh)及び鉛直支持面(fv)とを各々有して前記クリアランス(Cs)に配設される左右一対の下部スライダ(Lf,Lr)と、
前記アウタアーム(O)の上壁下面と前記先部アーム(M)の上壁上面との相互間に少なくともその一方の面に接するよう介装されてその相互間の相対摺動を許容する上部スライダ(Uf,Ur)とより構成され、
前記アウタアーム(O)の上壁下面と前記先部アーム(M)の上壁上面との相互間には、その相互間の扁平なクリアランス(Cu)に応じて前記上部スライダ(Uf,Ur)の取付位置を調節して該上部スライダ(Uf,Ur)を前記一方の面に適正に接触させる位置調節手段(Sf,Sr)が設けられることを特徴とする、コンテナ荷役車両。
【請求項2】
前記下部スライダ(Lf,Lr)は、前記アウタアーム(O)の先部と前記先部アーム(M)の基部とに左右一対ずつ配置され、
後者の下部スライダ(Lr)は、前記先部アーム(M)の基部において前記傾斜部(Ms)外面に前後に間隔をおいて突設した前後一対の支持片(Msa,Msb)間に挟持されることを特徴とする、請求項1に記載のコンテナ荷役車両。
【請求項3】
前記下部スライダ(Lf,Lr)は、前記アウタアーム(O)の先部と前記先部アーム(M)の基部とに左右一対ずつ配置され、
前者の下部スライダ(Lf)は、前記アウタアーム(O)と前記先部アーム(M)との間の前記横断面三角形状のクリアランス(Cs)の前端開口より該クリアランス(Cs)内に抜差可能に挿入されて、前記アウタアーム(O)の先部にその外側より締結操作可能な締結手段(Blf)を以て着脱可能に固着されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンテナ荷役車両。
【請求項4】
前記上部スライダ(Uf,Ur)は、前記アウタアーム(O)の先部と前記先部アーム(M)の基部とに左右一対ずつ配置され、
その後者の上部スライダ(Ur)は、前記位置調節手段を構成するクリアランス調整用シム板(Sr)を該上部スライダ(Ur)の背面と前記先部アーム(M)の基部外面との間に挟むようにして、該先部アーム(M)の基部に着脱可能に装着されることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のコンテナ荷役車両。
【請求項5】
前記上部スライダ(Uf,Ur)は、前記アウタアーム(O)の先部と前記先部アーム(M)の基部とに左右一対ずつ配置され、
その前者の上部スライダ(Uf)は、前記アウタアーム(O)と前記先部アーム(M)との間の前記扁平なクリアランス(Cu)の前端開口より該クリアランス(Cu)内に抜差可能に挿入されて前記アウタアーム(O)の先部に着脱可能に締結されるホルダ板(H)に嵌合、保持されることを特徴とする、請求項1〜4 の何れかに記載のコンテナ荷役車両。
【請求項6】
前記ホルダ板(H)の前記締結は、アウタアーム(O)の先部を貫通して該先部に頭部が係合するボルト(Buf)のねじ軸部を該ホルダ板(H)に螺挿することでなされることを特徴とする、請求項5に記載のコンテナ荷役車両。
【請求項7】
前記ホルダ板(H)及び上部スライダ(Uf)の背面側とアウタアーム(O)の先部内面との間に、前記位置調整手段を構成するクリアランス調整用シム板(Sf)が介挿され、そのシム板(Sf)を前記ボルト(Buf)が貫通していることを特徴とする、請求項6に記載のコンテナ荷役車両。
【請求項8】
アウタアーム(O)の左右両側面には、荷役アーム(A)を強制的に起伏回動させる左右一対の起伏用シリンダ(Ck)の端部を枢支連結させる取付ブラケット(BR)が固着され、
荷役アーム(A)が伏倒位置にあるときにアウタアーム(O)の下面が車体フレーム(F)上に当接、支持されることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載のコンテナ荷役車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−118708(P2007−118708A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311872(P2005−311872)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)