説明

コンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置

【課題】コンテナを車体上に積込む際において固縛フックが固縛位置に配置されていたとしても、コンテナの積込み動作に伴って固縛フックを固縛ピンに円滑に固縛させることができるコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置を提供する。
【解決手段】コンテナCを車体A上から地上に降ろす際の荷役アーム1の初期動作により固縛フック61に連結された作動ロッド62を通じて固縛フック61を固縛ピン41から離脱させて荷役アーム1を後方に回動させることでコンテナCを車体A上から地上に降ろし、逆の動作によってコンテナCを車体A上に積込むコンテナ荷役車輌において、固縛フック61と作動ロッド62との連結部が、長孔63aとピン61dとによって固縛フック61が固縛ピン41から離脱する方向への回動を許容するように連結され、さらに固縛フック61もしくは固縛ピン41には、固縛フック61を固縛ピン41へ案内する案内手段61cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナを車体上と地上との間で積卸すコンテナ荷役車輌に関し、特に荷役アームとダンプフレームとを固縛するための荷役アーム固縛装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、荷役アームの先端に設けたフックをコンテナの係合ピンに係合させ、荷役アームを前後方向に回動させることによりコンテナを車体上と地上との間で積降ろすようにしたコンテナ荷役装置を備えた車輌が提供されている。
【0003】
具体的には、荷役アームは、車体の後端部に回動自在に支持されたダンプフレームに水平部の後端部が連結されるとともに、この水平部の先端にコンテナと係脱自在な荷役フックを有する垂直部が上記水平部の前端から立設されて全体として略L字状に形成されている。また、上記垂直部は水平部の先端に前後に回動自在に設けられている。
【0004】
そして、コンテナを車体上から地上に降ろす時には、垂直部を後方に回動させて傾斜状態とした後に荷役アーム全体を後方に回動させて行い、逆にコンテナを地上から車体上に積込む時には上述と逆の動作によって行っている。
【0005】
また、コンテナに収容した積荷を排出する際には、荷役アーム固縛装置により荷役アームとダンプフレームとを一体的に固縛し、荷役アームをダンプフレームとともに後方に回動させてコンテナを上方に傾動させることによって行っている。
【0006】
ところで、上記荷役アーム固縛装置の具体的な構成としては、荷役アームの水平部にダンプフレームに設けられた固縛ピンに係止して荷役アームとダンプフレームとを一体的に固縛する固縛フックが設けられるとともに、該固縛フックと回動する垂直部とに作動ロッドが連結されており、垂直部の後方への回動動作に伴って作動ロッドを通じて固縛フックを固縛ピンから離脱させることで荷役アームとダンプフレームとの固縛を解除するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−62516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の荷役アーム固縛装置では、地上のコンテナを車体上に積込む際において、状況によっては垂直部を元の位置まで回動させながら当該垂直部の荷役フックをコンテナの係合ピンに係合させる動作を行うことがある。このように垂直部を元の位置まで回動させると固縛フックが固縛位置に戻ってしまうことになり、この状態で荷役アームを前方に回動させてコンテナを車体上に積込むと固縛フックが固縛ピンに干渉して破損する不具合が生じる。
【0008】
このため、従来ではコンテナを車体上に積込む際には荷役アームが所定位置まで達すると検出器を用いて垂直部の状態を検出し、垂直部が傾斜状態でない場合には当該垂直部を一旦傾斜状態にさせて固縛フックを解除位置に配置し、この後にコンテナを最終的に積込むようにしていた。
【0009】
従って、このように検出器を用いて電気的に制御するものでは、コストの高騰を招くとともに、制御系等の構成が複雑になりこれが故障の要因になるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、検出器や電気的制御を用いることなく、固縛フックや固縛ピンの形状、作動ロッドと固縛フックとの連結構造などを工夫した簡単な構造によって、コンテナを車体上に積込む際において固縛フックが固縛位置に配置されていたとしても、荷役アームによるコンテナの積込み動作に伴って固縛フックを固縛ピンに円滑に固縛させることができるコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置は、後端部が車体の後端部にダンプフレームを介して前後方向に回動自在に支持された水平部と、この水平部の前端から立設されて先端にコンテナと係脱自在な荷役フックを有する垂直部とで全体として略L字状に形成された荷役アームを備えるとともに、この荷役アームの水平部には、上記ダンプフレームに設けられた固縛ピンに係止して荷役アームとダンプフレームとを一体的に固縛する固縛フックが設けられてなり、コンテナを車体上から地上に降ろす際の荷役アームの初期動作により固縛フックに連結された作動ロッドを通じて当該固縛フックを固縛ピンから離脱させて荷役アームを後方に回動させることでコンテナを車体上から地上に降ろし、また荷役アームの逆の動作によってコンテナを地上から車体上に積込むようになされたコンテナ荷役車輌において、前記固縛フックと作動ロッドとの連結部が、又は作動ロッドと荷役アームとが連結されている場合には当該作動ロッドと荷役アームとの連結部もしくは固縛フックと作動ロッドとの連結部のいずれか一方の連結部が、長孔とピンとによって固縛フックが固縛ピンから離脱する方向への回動を許容するように連結され、さらに、固縛フックもしくは固縛ピンには、固縛フックを固縛ピンへ案内する案内手段が設けられたものである。
【0012】
請求項2に係る発明のコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置は、前記案内手段が、固縛フックもしくは固縛ピンの少なくとも一方に形成され、固縛フックを固縛方向と逆方向に一旦導く傾斜部からなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機械的な簡単な構成によって、コンテナを地上から車体上に積込む場合に固縛フックが固縛位置に配置されていたとしても、固縛フックと固縛ピンとの干渉による両者の破損を防止しながら固縛フックを固縛ピンに円滑に固縛させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明のコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置を示している。
【0016】
図1において、1は荷役アームであって、この荷役アーム1はコンテナCが搭載された状態において水平に配置される水平部2と、同状態において水平部2の先端から垂直に立設された垂直部3とにより全体としてL字状に構成されている。
【0017】
水平部2は、その後端部がダンプフレーム4の途中部にピン4aによって回動自在に支持されている。ダンプフレーム4の後端部は車輌の車体Aの後端部に回動自在に支持されている。
【0018】
垂直部3は、基端部31に上記水平部2の延長上に配置される水平な部位31aを有しこの部位31aの先端が水平部2の先端にピン2aによって回動自在に支持されている。また、垂直部3の先端にはコンテナCに設けられた係合ピンC1と係脱自在な荷役フック32が設けられている。
【0019】
そして、この垂直部3は図示しない伸縮シリンダ等のアクチュエータによって図1に示す垂直位置と図2に示す後方に傾斜する傾斜位置とに配置されるように構成されている。なお、説明の便宜上、水平部2に対して垂直部3が上記垂直位置もしくは上記傾斜位置に配置された場合には荷役アーム1の回動位置にかかわらず垂直位置、傾斜位置という。
【0020】
また、上記荷役アーム1の水平部2と車体Aとの間には起伏シリンダ5(図3及び図4参照)が連結されている。具体的には、起伏シリンダ5の基端部51(図4参照)が車体A側に連結されるとともに、伸縮ロッド端52が水平部2の途中部に連結されている。
【0021】
さらに、上記荷役アーム1には、荷役アーム固縛装置6が設けられている。この荷役アーム固縛装置6は、荷役アーム1をダンプフレーム4とともに一体的に固縛するとともに、この固縛を解除するためのもので、以下のように構成されている。
【0022】
荷役アーム固縛装置6は、ダンプフレーム4の先端部に設けられた固縛ピン41に係止可能な固縛フック61と、固縛フック61に連結された作動ロッド62とを備えている。
【0023】
固縛フック61は、基端部(上端部)が水平部2の基端側にピン61aにより前後に回動自在に設けられており、途中部やや先端部(下端部)寄りに形成されたフック部61bが前記固縛ピン41に前方から係止するようになされている。
【0024】
作動ロッド62は、その後端63が上記固縛フック61の途中部に枢支されるとともに、前端64が前記垂直部3の水平な部位31aの先端にブラケッ31bを介して連結されている。
【0025】
この作動ロッド62は、垂直部3を傾斜位置に配置した際にこれに伴って固縛フック61を前方に回動させて固縛ピン41から離脱させるようにしている。
【0026】
なお、固縛フック61や固縛ピン41の形状、並びに作動ロッド62の両端の連結構造などについては後で説明する。
【0027】
そして、コンテナCを車体A上から地上に降ろす時には、まず図2に示すように垂直部3を後方に回動させて傾斜位置に配置する。これにより作動ロッド62を通じて固縛フック61が前方に回動することで当該固縛フック61が固縛ピン41から離脱して荷役アーム1とダンプフレーム4との固縛が解除される。また、垂直部3の回動によりコンテナCも車体A上で後方にやや移動する。
【0028】
この状態で図3に示すように荷役アーム1全体を後方に回動させることで、コンテナAを地上に降ろすことができる。なお、このようにコンテナCを降ろす際に垂直部3を傾斜位置に配置することによって荷役アーム1の回動軌跡を小さくできるという利点がある。
【0029】
また、これと逆の動作によって、コンテナCを地上から車体A上に積込むことができる。
【0030】
一方、垂直部3を傾斜位置に配置することなく垂直位置のままにして荷役アーム固縛装置6により荷役アーム1とダンプフレーム4とを一体的に固縛した状態で、図4に示すように荷役アーム1をダンプフレーム4とともに後方に回動させてコンテナを上方に傾動させることによって、コンテナに収容した積荷を当該コンテナの後部から排出することができる。
【0031】
ところで、上述したような荷役アーム1とダンプフレーム4との固縛及び固縛解除を行う荷役アーム固縛装置6において、固縛フック61の形状、並びに固縛フック61と作動ロッド62との連結構造が以下ようになされている。
【0032】
まず、固縛フック61は、図5に示すようにその下端部が傾斜した案内手段としての傾斜部61cに形成されており、この傾斜部61cがフック部61bに繋がっている。この固縛フック61はスプリング65によって固縛ピン41に係止する方向に付勢されている。
【0033】
固縛フック61に上記傾斜部61cを形成しているのは、コンテナCを地上から車体1上に積込む際において、後述するように固縛フック61が固縛位置に配置された状態で荷役アーム1が図1に示す元の走行状態に復帰した場合に、傾斜部61cが固縛ピン41に当接しながらこの固縛フック61をスプリング65の付勢力に抗して固縛方向と逆方向に一旦導くためであり、固縛ピン41との相対的な位置を考慮して傾斜部61cを形成している。
【0034】
そして、このような固縛フック61の動作を許容するために、固縛フック61と作動ロッド62とは長孔によるピン連結構造になされている。具体的には、作動ロッド62の後端63が長孔63a構造に形成されており、この長孔63aに固縛フック61に設けたピン61dが摺動自在に嵌挿されている。従って、上述したように固縛位置に配置された固縛フック61が固縛位置にある場合でも傾斜部61cが固縛ピン41に当接することによって、長孔63aの分だけ固縛方向と逆方向に回動することができる。
【0035】
ここで、コンテナCを地上から車体A上に積込む際において、コンテナCの係合ピンC1の高さ位置によっては、傾斜位置に配置した垂直部3を図3に二点鎖線で示すように垂直位置に戻しながら垂直部3の荷役フック31をコンテナCの係合ピンC1に係合させる操作を行う場合がある。
【0036】
この場合、垂直部3を垂直位置に配置した状態のままで荷役アーム1を元の走行状態まで回動させると、固縛フック61が固縛ピン41に当接することになるが、固縛フック61の傾斜部61cが図6(a)から(b)に示すように固縛ピン41に当接して長孔63aの作用で当該固縛フック61を一旦固縛方向とは逆方向に回動させながら固縛ピン41に固縛させることができる。これにより固縛フック61と固縛ピン41との干渉による両者の破損を防止しながら固縛フック61を固縛ピン41に円滑に固縛させることができる。
【0037】
つまり、従来では、固縛フック61と固縛ピン41との干渉を防止するために検出器などを用いて作動を規制する複雑な制御を行っていたが、本発明では機械的な簡単な構成によって、干渉による両者の破損を防止しながら固縛フック61を固縛ピン41に円滑に固縛させることができる。
【0038】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内において種々設計変更可能である。
【0039】
例えば、固縛フック61と作動ロッド62との長孔による連結構造としては、固縛フック61側に長孔を設けるとともに、作動ロッド62の後端にピンを設けることによって両者を連結する構造にしてもよい。また、作動ロッド62の前端と垂直部3のブラケット31bとの連結部分を長孔による連結構造にしてもよい。この場合も作動ロッド62の前端と垂直部3のブラケット31bのいずれか一方に長孔を形成するとともに、他方にピンを設けて両者を連結するようにすればよい。
【0040】
また、図7に示すように固縛ピン41側に傾斜部41aを設けることによって固縛フック61を案内するようにしてもよい。
【0041】
さらに、本実施の形態では荷役アーム1として垂直部3が水平部2に対して回動するタイプのものについて説明したが、コンテナCを車体A上から地上に降ろす際に水平部を縮退させてコンテナを後方にスライドさせるタイプの荷役アームにも本発明を適用することができる。この場合、水平部の縮退動作に伴って作動ロッドを通じて固縛フックを固縛ピンから離脱させるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置を示す側面図である。
【図2】荷役アームによるコンテナを積降ろす際の動作を説明するための側面図である。
【図3】荷役アームによるコンテナを積降ろす際の動作を説明するための側面図である。
【図4】荷役アームによるコンテナ内の積荷を排出する際の動作を説明するための側面図である。
【図5】固縛フック、並びに固縛フックと作動ロッドとの連結構造を示す拡大の側面図である。
【図6】固縛フックの傾斜部の作用による動作を示す側面図である
【図7】固縛ピン側に傾斜部を設けた例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 荷役フレーム
2 水平部
3 垂直部
4 ダンプフレーム
41 固縛ピン
6 荷役アーム固縛装置
61 固縛フック
61d ピン
61c 傾斜部(案内手段)
62 作動ロッド
63a 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部が車体の後端部にダンプフレームを介して前後方向に回動自在に支持された水平部と、この水平部の前端から立設されて先端にコンテナと係脱自在な荷役フックを有する垂直部とで全体として略L字状に形成された荷役アームを備えるとともに、この荷役アームの水平部には、上記ダンプフレームに設けられた固縛ピンに係止して荷役アームとダンプフレームとを一体的に固縛する固縛フックが設けられてなり、コンテナを車体上から地上に降ろす際の荷役アームの初期動作により固縛フックに連結された作動ロッドを通じて当該固縛フックを固縛ピンから離脱させて荷役アームを後方に回動させることでコンテナを車体上から地上に降ろし、また荷役アームの逆の動作によってコンテナを地上から車体上に積込むようになされたコンテナ荷役車輌において、
前記固縛フックと作動ロッドとの連結部が、又は作動ロッドと荷役アームとが連結されている場合には当該作動ロッドと荷役アームとの連結部もしくは固縛フックと作動ロッドとの連結部のいずれか一方の連結部が、長孔とピンとによって固縛フックが固縛ピンから離脱する方向への回動を許容するように連結され、
さらに、固縛フックもしくは固縛ピンには、固縛フックを固縛ピンへ案内する案内手段が設けられたことを特徴とするコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置。
【請求項2】
前記案内手段は、固縛フックもしくは固縛ピンの少なくとも一方に形成され、固縛フックを固縛方向と逆方向に一旦導く傾斜部からなることを特徴とする請求項1記載のコンテナ荷役車輌の荷役アーム固縛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−103496(P2006−103496A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292550(P2004−292550)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)