説明

コンデンサの製造方法

【課題】半導体層を一方の電極とするコンデンサで、出現容量分布が狭いコンデンサを多数同時に得る手段を提供する。
【解決手段】表面に誘電体層を形成した導電体を一方の電極とし、他方の電極を通電手法により半導体層を形成して作成するコンデンサの製造方法において、複数個の電流吐き出し型の定電流源を有し、かつ、その各出力に電気的に直列に接続されている前記導電体用の接続端子を有する冶具を用い、前記接続端子に前記導電体を接続し、半導体層形成溶液中で前記定電流源より前記導電体に通電することにより、複数個の前記導電体に同時に半導体層の形成をすることを特徴とするコンデンサの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した容量出現率が達成されるコンデンサの製造方法、そのコンデンサ製造用の冶具、及び前記製造方法または冶具を用いて製造されるコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン等に使用されるCPU(中央演算処理装置)周りのコンデンサは、電圧変動を抑え、高リップル(ripple)通過時の発熱を低くするために、高容量かつ低ESR(等価直列抵抗)であることが求められている。
【0003】
一般には、アルミニウム固体電解コンデンサや、タンタル固体電解コンデンサが複数個使用されている。
このような固体電解コンデンサは、表面層に微細な細孔を有するアルミニウム箔や、内部に微小な細孔を有するタンタル粉の焼結体を一方の電極(導電体)とし、該電極の表層に形成した誘電体層と該誘電体層上に設けられた他方の電極(通常は、半導体層)とから構成されている。
【0004】
半導体層を他方の電極とするコンデンサの該半導体層の形成方法としては、例えば、特許第1868722号公報(特許文献1)、特許第1985056号公報(特許文献2)や特許第2054506号公報(特許文献3)に記載された通電手法により形成する方法がある。各々、表面に誘電体層を設けた導電体を半導体層形成溶液に漬け、導電体側を陽極にして半導体層形成溶液中に用意した外部電極(陰極)との間に電圧を印加する(電流を流す)ことにより半導体層を形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第1868722号公報
【特許文献2】特許第1985056号公報
【特許文献3】特許第2054506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した誘電体層を形成した誘電体に、通電手法によって半導体層を形成する場合、1個の導電体に半導体層を形成する時には問題はなかったが、複数個では、各導電体が必ずしも均質ではなく、また半導体の形成速度も導電体により異なることがあるため、特に、多数個の導電体に同時に半導体層を形成する時には、各導電体に流れる電流値が一定せず、作製したコンデンサの半導体層の形成具合が不揃いで安定した容量のコンデンサを作製することが困難な場合があった。
例えば、極端な場合、1つの導電体が不良(ほとんどショート)となり、この導電体に電流が集中し、他の導電体にはほとんど電流が流れなくなることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、定電流を導電体に供給して半導体層を形成することにより、容量分布の狭いコンデンサ群が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のコンデンサ製造用冶具、コンデンサの製造方法及びコンデンサを提供するものである。
1.表面に誘電体層を形成した複数個の導電体に通電手法により半導体層を形成するための冶具であって、複数個の電流吐き出し型の定電流源を有し、その各出力に前記導電体用の接続端子が電気的に直列に接続されていることを特徴とするコンデンサ製造用冶具。
2.複数個の導電体に通電方法により誘電体層及び半導体層を形成するための冶具であって、各導電体の接続端子それぞれにカソードが接続されたダイオードを有し、それらダイオードの各アノードが電気的に接続され、かつ複数個の電流吐き出し型の定電流源を有し、その各出力に前記導電体用の接続端子が電気的に接続されていることを特徴とするコンデンサ製造用冶具。
3.複数個の電流吐き出し型の定電流源が、各アノードが電気的に接続された複数の定電流ダイオードで構成され、その各カソードを出力とするものである前記1または2に記載のコンデンサ製造用冶具。
4.導電体用の接続端子と電流吐き出し型の定電流源の出力とがケーブルを介して電気的に接続されている前記1または2に記載のコンデンサ製造用冶具。
5.定電流ダイオードの各アノードが電気的に接続されている端子を有する前記2または3に記載のコンデンサ製造用冶具。
6.さらに各導電体の接続端子それぞれにカソードが接続されたダイオードを有し、それらダイオードの各アノードが電気的に接続された端子を有する前記1乃至5のいずれかに記載のコンデンサ製造用冶具。
7.導電体用の接続端子が、ソケット構造を有する前記1乃至6のいずれかに記載のコンデンサ製造用冶具。
8.導電体用の接続端子が、金属板である前記1乃至7のいずれかに記載のコンデンサ製造用冶具。
9.導電体用の接続端子が、印刷手法によって形成される箔状金属材料である前記1乃至8のいずれかに記載のコンデンサ製造用冶具。
10.導電体用の接続端子が、櫛状である前記8または9に記載のコンデンサ製造用冶具。
11.前記1乃至10のいずれかに記載のコンデンサ製造用冶具を用いることを特徴とするコンデンサの製造方法。
12.表面に誘電体層を形成した導電体を一方の電極とし、他方の電極を通電手法により半導体層を形成して作成するコンデンサの製造方法において、定電流源により通電することを特徴とするコンデンサの製造方法。
13.定電流源が、定電流ダイオードにより構成される前記12に記載のコンデンサの製造方法。
14.コンデンサ製造用冶具の各導電体用の接続端子に接続された誘電体層を有する導電体を、半導体層形成溶液中で、導電体側を陽極に、半導体層形成溶液中に設けた電極を陰極にして通電手法により半導体層を形成することを特徴とする前記11に記載のコンデンサの製造方法。
15.導電体の表面への誘電体層と半導体層の形成とを同一のコンデンサ製造用冶具で行なう前記11に記載のコンデンサの製造方法。
16.前記11乃至15のいずれか1項に記載の方法を使用して作製されたコンデンサ群。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、定電流ダイオードを介して通電することにより半導体層を形成するコンデンサの製造用冶具及びコンデンサの製造方法を提供したものであり、本発明によれば、出現容量分布が狭いコンデンサ群を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコンデンサの製造方法及びコンデンサ製造用冶具について詳しく説明する。
本発明に使用される導電体の例として、金属、無機半導体、有機半導体、カーボン、これらの少なくとも1種の混合物、それらの表層に導電体を積層した積層体が挙げられる。
【0011】
無機半導体の例として、二酸化鉛、二酸化モリブデン、二酸化タングステン、一酸化ニオブ、二酸化スズ、一酸化ジルコニウム等の金属酸化物が挙げられ、有機半導体として、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン及びこれら高分子骨格を有する置換体、共重合体等の導電性高分子、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)とテトラチオテトラセンとの錯体,TCNQ塩等の低分子錯体が挙げられる。また、表層に導電体を積層した積層体の例としては、紙、絶縁性高分子、ガラス等に前記導電体を積層した積層体が挙げられる。
【0012】
導電体として金属を使用する場合、金属の一部を、炭化、燐化、ホウ素化、窒化、硫化から選ばれる少なくとも1種の処理を行ってから使用してもよい。
【0013】
導電体の形状は特に限定されず、箔状、板状、棒状、導電体自身を粉状にして成形または成形後焼結した形状等として用いてもよい。導電体表面をエッチング等で処理して、微細な細孔を有するようにしてもよい。導電体を粉状にして成形体形状または成形後焼結した形状とする場合には、成形時の圧力を適当に選択することにより、成形または焼結後の内部に微小な細孔を設けることができる。また、導電体を粉状にして成形体形状または成形後焼結した形状とする場合は、成形時に別途用意した引き出しリード線の一部を導電体と共に成形し、引き出しリード線の成形外部の箇所を、コンデンサの一方の電極の引き出しリードとすることもできる。勿論、導電体に引き出しリードを直接接続することも可能である。
【0014】
本発明の導電体表面に形成される誘電体層としては、Ta25、Al23、Zr23、Nb25等の金属酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体層、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサの分野で従来公知の誘電体層が挙げられる。前者の金属酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体層の場合、金属酸化物の金属元素を有する前記導電体を化成することによって誘電体層を形成して得られるコンデンサは、極性を持つ電解コンデンサとなる。セラミックコンデンサやフィルムコンデンサで従来公知の誘電体層の例としては、本出願人による特開昭63―29919号公報、特開昭63−34917号公報に記載した誘電体層を挙げることができる。また、金属酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体層やセラミックコンデンサやフィルムコンデンサで従来公知の誘電体層を複数積層して使用してもよい。また、金属酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体やセラミックコンデンサやフィルムコンデンサで従来公知の誘電体を混合した誘電体層でもよい。
【0015】
一方、本発明のコンデンサの他方の電極としては、有機半導体及び無機半導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられるが、ここで前記の化合物を後述する通電手法により形成することが肝要である。
【0016】
有機半導体の具体例としては、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体、下記一般式(1)または(2)で示される繰り返し単位を含む高分子にドーパントをドープした導電性高分子を主成分とした有機半導体が挙げられる。
【0017】
【化1】

式(1)および(2)において、R1〜R4は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表わし、これらは互いに同一であっても相違してもよく、Xは酸素、イオウまたは窒素原子を表わし、R5はXが窒素原子の時のみ存在して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わし、R1とR2及びR3とR4は、互いに結合して環状になっていてもよい。
【0018】
さらに、本発明においては、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む導電性高分子として、好ましくは下記一般式(3)で示される構造単位を繰り返し単位として含む導電性高分子が挙げられる。
【0019】
【化2】

式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、またはそのアルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素原子を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものも含まれる。
【0020】
このような化学構造を含む導電性高分子は、荷電されており、ドーパントがドープされる。ドーパントは特に限定されず公知のドーパントが使用できる。
式(1)乃至(3)で示される繰り返し単位を含む高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリオキシフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリメチルピロール、及びこれらの置換誘導体や共重合体などが挙げられる。中でも、ポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの置換誘導体(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等)が好ましい。
【0021】
無機半導体の具体例としては、二酸化モリブデン、二酸化タングステン、二酸化鉛、二酸化マンガン等から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
上記有機半導体及び無機半導体として、電導度10-2〜103S/cmの範囲のものを使用すると、作製したコンデンサのESR値が小さくなり好ましい。
【0022】
前述した半導体層は、通電操作を行わない純粋な化学反応(溶液反応、気相反応、固液反応及びそれらの組み合わせ)によって形成したり、通電手法によって形成したり、あるいはこれらの方法を組み合わせて形成するが、本発明では、半導体層形成工程で少なくとも1回は通電手法を採用する。また、通電手法により半導体層を形成する場合に、少なくとも1回の通電を、通電時に定電流源により行うことにより本発明の目的が達成される。
【0023】
定電流源としては、前述した表面に誘電体層を有する導電体に定電流で通電できる定電流回路が構成できればよい。例えば、回路が単純で、部品点数を少なくできる定電流ダイオードで構成することが好ましい。定電流ダイオードは定電流ダイオードとして市販されているものだけでなく、電解効果トランジスタで構成してもよい。
以下、主に定電流源として定電流ダイオードを用いた例について説明するが、定電流源はこれに限定されるものではない。
【0024】
具体的には、前述した表面に誘電体層を有する導電体(一方の電極)に定電流ダイオードのカソードを電気的に直列に接続する。通電後に半導体となる原料や必要によっては、前記したドーパントが溶解している溶液(半導体層形成溶液)を用意し、導電体をこの半導体層形成溶液に漬け、この半導体層形成溶液中に配置された外部電極と前記定電流ダイオードのアノードとに所定電圧を印加すると、定電流ダイオードのランク(電流規格)に応じた一定の電流が流れる(特定の電流範囲となるように定電流ダイオードを選択してもよい)。この電流により導電体の誘電体層上に半導体層が形成される。例えば、導電体を表面にTa25の誘電体層が形成されていて、引き出しリード端子が接続されているタンタルの焼結体とし、その引き出しリード線と定電流ダイオードのカソードとを配線で直列に電気的に接続することにより、目的の通電回路が作製できる。この場合、定電流ダイオードのアノードを陽極、半導体層形成溶液中に配置された外部電極側を陰極にして電圧を印加する。定電流ダイオードは、順方向に規定範囲の電圧を印加すると所定の定電流が流れるが、電流値は定電流ダイオードのランクを選択するか、適当なランクの定電流ダイオードを複数個並列に接続することにより段階的に変更可能であるので、導電体の大きさや形成する半導体量の所望値に合わせて定電流ダイオードを選択して任意範囲の定電流を流すことができる。
【0025】
次に、表面に誘電体層を形成した複数個の各導電体に通電手法により半導体層を形成する本発明のコンデンサ製造用冶具について説明する。
本発明のコンデンサ製造用冶具は、電流吐き出し型の定電流源を有し、その各出力に前記導電体用の接続端子が電気的に直列に接続されたものである。定電流源を定電流ダイオードを用いて構成した場合、例えば、複数個の定電流ダイオードの各アノードが電気的に接続されていて、各定電流ダイオードのカソードに前記導電体用の接続端子が電気的に直列に接続された構成のものが挙げられる。図1に、板状のコンデンサ製造用冶具の1例の模式図を示す。絶縁性基板(2)に定電流ダイオード(1)が複数個(2)に並列に載置され互いに接続されている。各定電流ダイオード(1)のアノード(図中(1)の上端部)は、電気的に図中左の端子(3)(以下、「集電端子」と記すことがある。)に接続されている。カソード(1a)は、導電体用の接続端子(4)に接続され、各接続端子(4)の他端は電気的に開放されている。図1の構成の冶具は、各接続端子(4)に前述した表面に誘電体層を形成した導電体(図示していない。)が接続され実用に供される。
【0026】
表面に誘電体層を形成した複数個の各導電体に通電手法により半導体層を形成する本発明のもう1つのコンデンサ製造用冶具は、導電体用の接続端子と電流吐き出し型の定電流源の出力とがケーブルを介して電気的に接続されるコンデンサ製造用冶具である。例えば、前述した導電体用の接続端子とケーブル端子が電気的に直列に接続された電子部材が方向を揃えて複数個絶縁されて配置され、さらに各ケーブル端子に定電流ダイオードのカソードが配線接続され、その上さらに各定電流ダイオードのアノード同士が電気的に接続されて集電端子に接続されるコンデンサ製造用冶具である。
【0027】
図2に、板状のコンデンサ製造用冶具の一部と配線接続された定電流ダイオード群からなるコンデンサ製造用冶具の1例の模式図を示す。絶縁性基板(2)に、導電体用の接続端子(4)とケーブル端子(5)が直列に接続された電子部材(6)が方向を揃えて複数個載置されている。各ケーブル端子(5)には、定電流ダイオード(1)のカソード(1a)が配線接続され、定電流ダイオード群のアノードは端子(3)に回路接続されている。図2の構成の冶具では、各接続端子(4)に前述した表面に誘電体層を形成した導電体(図示していない)が寸法を合わせて接続され実用に供される。
【0028】
図1では、集電端子は定電流ダイオードと絶縁性基板の同一側(表面とする)に存在するが、例えば、絶縁性基板に設けた複数個の穴を通して回路を接続し、絶縁性基板の裏面に集電端子を配置するなどして、集電端子と定電流ダイオードとをそれぞれ絶縁性基板の反対側に置いてもよい。接続端子と定電流ダイオード間の配線は、例えば、絶縁性基板に穴を空けて裏面に配線することにより、接続端子と定電流ダイオードをそれぞれ絶縁性基板の反対側面に置くことも可能である。前記した絶縁性基板に空ける穴は、スルーホール構造にしておくとスルーホール内部に印刷配線が施されているために表裏の電気的な接続が容易にできるため好ましい。また、図1では、定電流ダイオードと接続端子は絶縁性基板の同一面に配置しているが、例えば接続端子を裏面に置き、スルーホールを通して表面の定電流ダイオードのカソード部と接続させてもよい。
【0029】
次に、前述したコンデンサ製造用冶具を使って通電手法により半導体層を形成する方法について説明する。
コンデンサ製造用冶具の導電体用の接続端子に、表面に誘電体層を有する導電体を各1個、寸法を合わせて接続し、各導電体のみを半導体層形成溶液に漬け、定電流ダイオード側を陽極とし、半導体層形成溶液中に設けた外部電極を陰極として通電手法により半導体層を形成することができる。
【0030】
通電により半導体となる原料や、場合によっては前述したドーパント(例えば、アリールスルホン酸または塩、アルキルスルホン酸または塩、各種高分子スルホン酸または塩等の公知のドーパント)が溶解している半導体層形成溶液に通電することにより誘電体層上に半導体層が形成される。通電時間、半導体層形成溶液の濃度、pH、温度、通電電流値、通電電圧値は、使用する導電体の種類、大きさ、質量、所望する半導体層の形成厚み等によって変わるため、予備実験によって予め条件を決定しておく。通電条件を変えて複数回通電を行うことも可能である。また、導電体の表面に形成されている誘電体層の欠陥を修復するために、途中の任意の時(1回でも複数回でも可)、及び/または最後に、従来公知の再化成操作を行ってもよい。
【0031】
半導体層形成溶液中に設ける外部電極は、通電時の対極として使用されるものであり、導電性物質、特に金属の箔や板が用いられる。少なくとも1箇所の給電部に電気的に接続している複数枚の外部電極を使用して、半導体層形成溶液に漬けられた多数個の導電体すべてに均一に配電できるように配置することが好ましい。
また、実施例で示したように、導電体層の表面に形成された誘電体層に電気的な微小欠陥部を作製した後に本発明の方法によって半導体層を形成してもよい。
【0032】
1例として、図1及び図2に示した絶縁性樹脂板(2)の裏面に、図3に示すように表面の接続端子(4)とのみ電気的に接続した電気回路を形成しておき、各電気回路末端を表面から見て右側に設けられた端子(7)(以下、「給電端子」と記すことがある。)にダイオード(8)(整流用ダイオードが好ましい。化成用給電端子(7)側がアノード。なお、本願において単に「ダイオード」という場合は、定電流ダイオードを含まない。)を介して接続しておくと、各接続端子(4)に接続された導電体表面への誘電体層の形成と、半導体層の形成を同一の冶具で行うことができるため好都合である。すなわち、導電体の表面に形成する誘電体層を化成によって設ける場合は、絶縁性基板(2)の裏面の化成用給電端子(7)から通電を行い、その後、誘電体層上に半導体層を形成する場合は、絶縁性基板(2)の給電端子(7)または定電流ダイオード群の集電端子(3)から通電を行うことにより、化成の電流値と半導体層形成のための通電値が異なる時の操作を同一の冶具で達成することができる。
【0033】
集電端子、定電流ダイオード、ダイオード、給電端子の絶縁性基板上での配置に特に制限はないが、回路を形成しやすい配置が好ましい。例えば、それらすべてを絶縁性基板の片面に設けても良く、両面に分けて配置してもよい。具体的には、絶縁性基板の片面に図1の半導体層形成用回路を設けその反対の面に図3の化成用回路を設けたもの、あるいは、片面に図4の回路(半導体層形成用回路と化成用回路の主要部)を設けその反対の面に図5の回路(化成用回路のアノード側共通配線)を設けたものなどが挙げられる。なお、図4、5では接続端子(4)の大きさを誇張して示したが、接続端子(4)の下面と絶縁性基板(2)の下面を同一面になるように寸法を合わせておいてもよい。
【0034】
以下にこのようなコンデンサ製造用冶具を使用して、導電体表面に誘電体層及びその誘電体層上に半導体層を形成する方法を説明する。
コンデンサ製造用冶具の接続端子に、導電体を各1個ずつ位置を合わせて接続した後、各導電体を化成溶液に漬け、例えば、化成用給電端子を陽極に、化成溶液中に設けた外部電極を陰極にして誘電体層を形成することができる。化成溶液には、有機酸または塩(例えば、アジピン酸、酢酸、アジピン酸アンモニウム、安息香酸)、無機酸または塩(例えば、燐酸、珪酸、燐酸アンモニウム、珪酸アンモニウム、硫酸、硫酸アンモニウム)等の従来公知の電解質が溶解またはけん濁している。化成温度、時間、電流値、電圧等の条件は、使用する導電体の種類、大きさ、質量、目的とするコンデンサの規格を考慮して予備実験によって決定される。導電体層表面に誘電体層を形成した後、化成用給電端子からの給電を止め、洗浄、乾燥後、前述した半導体層形成方法と同様にして、絶縁性基板表面の端子または定電流ダイオード群の端子から通電することにより前記誘電体層を形成した導電体の誘電体層上に半導体層を形成することができる。
【0035】
本発明の接続端子の例としては、ソケット構造の接続端子、金属板、印刷技術によって描かれた箔状金属材料等からなる接続端子が挙げられる。
ソケット構造の接続端子とは、導電体が棒状の場合または導電体にリード線が接続された構造の導電体の場合に棒状の導電体またはリード線をソケット部に差し込むことによって導電体との接続を図るものであり、ソケット部が金属材料で構成されていて導電体と電気的な接続が可能である。ソケット部を構成する金属材料としては、例えば銅、鉄、銀、アルミニウムから選ばれた金属の少なくとも1種を主成分とする金属または合金であり、表面に錫メッキ、半田メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、銀メッキ、銅メッキ等の従来公知のメッキを少なくとも1種施しておいてもよい。
【0036】
金属性のソケット部とこのソケット部を覆う絶縁性樹脂部からなる接続端子が複数個並列に並んだ接続端子群を本発明の接続端子として応用すると、多数個の導電体を並列に等間隔に配置できるために好ましい。例えば、プリント基板上に半導体部品を載置するためのコネクター類には、ソケット部とそれに電気的に接続された線状のリード部が設けられたものが存在するので、該リード部を絶縁性基板上の後述する電流吐き出し型の定電流源の出力と電気的・機械的に接続する。このコネクターを介して、導電体と電流吐き出し型の定電流源とを電気的に接続することができる。
【0037】
また別の例として、コネクターがリードを有するものではなくソケット部と電気的に接続された基板はめ込み型の受け部を有する構造のものでもよい。この場合、電流吐き出し型の定電流源が配置された絶縁性基板の出力配線部分にコネクターの前記受け部をはめ込むことによりコネクターを経由して定電流源と導電体の接続ができる。
【0038】
さらに別の例として、コネクターをソケット部と電気的に接続された印刷回路接点部を有する表面実装型の構造を有するものでもよい。この場合、印刷回路接点部に例えばクリーム半田を付着させ、電流吐き出し型の定電流源が配置された絶縁性基板の所定配線部分にリフローソルダリングすることにより、コネクターと定電流源の接続が可能となる。
【0039】
接続部が金属板になった接続端子とは、導電体が接続できる大きさの金属板を端子として利用するものである。また、導電体との接続を容易にするために、金属板表面に錫メッキ、半田メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、銀メッキ等のメッキを少なくとも1種を施しておくのが好ましい。
【0040】
金属板の形状は、導電体が接続可能な大きさであればよい。また、金属板の配置は、導電体の配置間隔を保てる間隔(導電体の配置間隔とほぼ同一)に配置されていればよい。
【0041】
特に導電体の配置間隔に余裕がある場合には、各金属板の形状を複数の歯部を持つ櫛状にしておくと、最初に金属板を使用する時には各導電体を各金属板の櫛状部の1つの歯部に接続して半導体層を形成する一連の操作をし、導電体を金属板から取り外し、次にその金属板を使用して導電体に半導体層を形成する時には各導電体を各金属板の櫛状部の未使用の歯部に接続するということを、歯部の数だけ繰り返すことができる。コンデンサ製造用冶具の接続端子部から導電体のリード線残や接続時の溶接残等の接続残を除く操作を毎回のコンデンサ製造毎に行う必要がなく、金属板櫛状部の歯部の数だけコンデンサ製造を行った後に同時に接続残除去を行うことができるために効率的である。
【0042】
後述する電流吐き出し型の定電流源が配置された絶縁性基板の接続端子として金属板を使用する場合には、金属板を基板の表裏に渡るように基板底辺(使用時に下端となる辺)に、例えば差し込み加工で基板に貼り付け接続しておくと、導電体を金属板に接続する時に基板の上方に電極を有して下方に受け電極を有する一般的な抵抗溶接機による接続が可能になるので好ましい。
【0043】
印刷手法によって形成された箔状金属材料からなる接続端子とは、接続端子そのものを印刷手法によって回路印刷するものであり、例えば、銅を主成分とする材料や金属粉と樹脂を主成分とする導電ペースト等を用いる方法が挙げられる。
【0044】
接続端子部には、導電体との接続を良好にするために錫メッキ、ニッケルメッキ、半田メッキ、金メッキ、銀メッキ等から選ばれる少なくとも1種のメッキを施しておくことが好ましい。
【0045】
前述した金属板を接続端子とした場合と同様に、多数個の導電体を接続するコンデンサ製造用冶具に印刷手法によって形成された箔状金属材料からなる接続端子を複数個設ける場合、各1個の接続端子の形状は導電体が接続でき、その配置は、導電体の配置間隔を保てる間隔(導電体の配置間隔とほぼ同一)に配置されていればよい。特に導電体の配置間隔に余裕がある場合には、金属板を接続端子とした場合と同様に、各接続端子の形状を櫛状にしておくことができる。
【0046】
また、接続端子部が基板の表裏に渡るように形成しそれらを電気的に接続しておくとよい。例えば基板の底部両面に印刷した後に基板の底部の厚さ部分の箇所を導電ペースト等で電気的に接続をとって表裏の接続端子部を導通させておくこと、または、基板の底部両面に印刷した前後に印刷箇所または印刷箇所近傍にスルーホールを設けスルーホール内部にも印刷配線を行うことによって表裏の接続端子部を導通させておくことも可能である。
【0047】
印刷技術によって描かれた箔状金属材料からなる接続端子と電流吐き出し型の定電流源との接続は、絶縁性基板に描かれた電子回路の所定箇所に定電流源を配置することによって接続する方法が簡易で望ましい。
【0048】
本発明の接続端子としてソケット構造と金属板を共に使用した構造の接続端子も本発明の範囲内である。例えば、接続端子を基板はめ込み型の受け部と該受け部に電気的に接続された金属板を有する構造としたものや、線状のリード部と該リード部に電気的に接続された金属板を有する構造としたものを挙げることができる。例えば、前者の場合、電流吐き出し型の定電流源が配置された絶縁性基板のその出力配線部分に前記受け部をはめ込み、さらに金属板に導電体を接続することにより接続端子としての機能を発揮する。後者の場合、線状のリード部を電流吐き出し型の定電流源が配置された絶縁性基板に作製したスルーホール部に差し込み、さらに金属板に導電体を接続することにより接続端子の機能が発現する。
【0049】
本発明のコンデンサ製造用冶具は、例えば、電気回路が形成された絶縁性基板に定電流ダイオードやダイオード、場合によってはソケット構造の接続端子や金属板の接続端子を半田付け、挿入取り付け後半田付け等で接続して使用することにより作製できる。絶縁性基板の材質としては、ガラスエポキシ樹脂、イミド樹脂、セラミックス等が挙げられる。好ましくは1〜10mm、より好ましくは1.5〜4.0mm、さらに好ましくは1.2〜4.0mmの厚さの絶縁性基板を使用すると、寸法制度が良好で多数回の利用後も変形が少なく、取り扱いもしやすいため好ましい。
【0050】
本発明のコンデンサでは、前述した方法等で形成された半導体層の上にコンデンサの外部引き出しリード(例えば、リードフレーム)との電気的接触をよくするために、電極層を設けてもよい。
【0051】
電極層は、例えば導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フィルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミニウムペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましい。これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、混合してもよく、または別々の層として重ねてもよい。導電ペーストを適用した後、空気中に放置するか、または加熱して固化せしめる。
導電ペーストは、樹脂と金属等の導電粉を主成分とし、場合によっては樹脂を溶解するための溶媒や樹脂の硬化剤等を含有してもよい。溶媒はペースト固化時に飛散する。
【0052】
導電ペースト中の樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミドアミド樹脂、アミド樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の各種樹脂が使用される。導電粉としては、銀、アルミニウム、金、カーボン、ニッケル及びこれら金属を主成分とする合金の粉、これら金属が表層にあるコート粉やこれらの混合物粉の少なくとも1種が使用される。
【0053】
導電粉は、通常、40〜97質量%含まれている。40質量%未満であると作成した導電ペーストの導電性が小さく、また、97質量%を超えると導電ペーストの接着性が不良になるために好ましくない。導電ペーストに前述した半導体層を形成する導電性高分子や金属酸化物の粉を混合して使用してもよい。
【0054】
メッキとしては、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、アルミニウムメッキ等が挙げられる。また蒸着金属としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等が挙げられる。
具体的には、例えば他方の電極上にカーボンペースト、銀ペーストを順次積層しエポキシ樹脂のような材料で封止してコンデンサが構成される。このコンデンサは、導電体に前もって接続された、または後で接続された金属線からなるリードを有していてもよい。
【0055】
以上のような構成の本発明のコンデンサは、例えば、樹脂モールド、樹脂ケース、金属性の外装ケース、樹脂のディッピング、ラミネートフィルムによる外装などの外装により各種用途のコンデンサ製品とすることができる。
これらの中でも、とりわけ樹脂モールド外装を行ったチップ状コンデンサが、小型化と低コスト化が行えるので好ましい。
【0056】
樹脂モールド外装の場合について具体的に説明すると、本発明のコンデンサは、前記コンデンサ素子の導電体層の一部を、別途用意した一対の対向して配置された先端部を有するリードフレームの一方の先端部に載置し、さらに陽極リードの一部(寸法を合わせるために陽極リードの先端を切断して使用してもよい)を前記リードフレームの他方の先端部に載置し、例えば前者は、導電ペーストの固化で、後者は、溶接で各々電気的・機械的に接合した後、前記リードフレームの先端部の一部を残して樹脂封口し、樹脂封口外の所定部でリードフレームを切断折り曲げ加工(リードフレームが樹脂封口の下面にあってリードの下面または下面と側面のみを残して封口されている場合は、切断加工のみでもよい)して作製される。
【0057】
前記リードフレームは、前述したように切断加工されて最終的にはコンデンサの外部端子となるが、形状は、箔または平板状であり、材質は鉄、銅、アルミニウムまたはこれら金属を主成分とする合金が使用される。該リードフレームの一部または全部に半田、錫、チタン、ニッケル等のメッキを施していてもよい。また、リードフレームとメッキとの間に、ニッケルまたは銅等の下地メッキがあってもよい。
【0058】
前記切断折り曲げ加工後または加工前にリードフレームにこれらの各種メッキを行うこともできる。また、コンデンサ素子を載置接続する前にメッキを行っておいてからさらに封口後の任意の時に再メッキを行うことも可能である。
【0059】
該リードフレームには、一対の対向して配置された先端部が存在し、先端部間に隙間があることで、各コンデンサ素子の陽極部と陰極部とが絶縁される。
【0060】
樹脂モールド外装に使用される樹脂の種類として、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等固体電解コンデンサの封止に使用される公知の樹脂が採用できるが、各樹脂とも好ましくは低応力樹脂を使用すると、封止時におきるコンデンサ素子への封止応力の発生を緩和することができるために好ましい。また、樹脂封口するための製造機としては、好ましくはトランスファーマシンが使用される。
【0061】
このように作製されたコンデンサは、電極層形成時や外装時の熱的及び/または物理的な誘電体層の劣化を修復するために、エージング処理を行ってもよい。
【0062】
エージング方法は、コンデンサに所定の電圧(通常、定格電圧の2倍以内)を印加することによって行われる。エージング時間や温度は、コンデンサの種類、容量、定格電圧によって最適値が異なるので予め実験によって決定されるが、通常、時間は、数分から数日、温度は電圧印加治具の熱劣化を考慮して300℃以下で行われる。エージングの雰囲気は、減圧、常庄、加圧下のいずれの条件で行ってもよい。さらに、エージングの雰囲気は、空気中、Ar、N2、He等のガス中でもよいが、好ましくは水蒸気中である。エージングは、水蒸気を含む雰囲気中で行い、次に空気中、Ar、N2、He等のガス中で行うと誘電体層の安定化が進む場合がある。水蒸気中でエージングした後に150〜250℃の空気中に1分〜10時間放置して余分な水分を除去しエージングを行うことも可能である。水蒸気の供給方法の1例として、エージングの炉中に置いた水溜めから熱により水蒸気を供給する方法が挙げられる。
【0063】
電圧印加方法として、直流、任意の波形を有する直流に重畳した交流やパルス電流等の任意の電流を流すように設計することができる。エージングの途中に一旦電圧印加を止め、再度電圧印加を行うことも可能である。
【0064】
本発明によって製造されるコンデンサは、半導体層形成を安定した同一条件で行えるため容量が安定している。このためコンデンサ群(同時に作製される多数個のコンデンサ)の容量分布(ばらつき)は、従来品に比較して狭いものとなる。そのため、特定の容量範囲のコンデンサを取得しようとする場合の歩留まりが向上する。
また本発明で製造されたコンデンサ群は、パソコン、サーバー、カメラ、ゲーム機、DVD、AV機器、携帯電話等のデジタル機器や各種電源等の電子機器に利用可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の具体例についてさらに詳細に説明するが、以下の例により本発明は限定されるものではない。
【0066】
実施例1:
1.コンデンサ製造用冶具の作製
長さ320mm、幅30mm、厚さ2mmのポリイミド板(2)に印刷配線により一方の面(以下、これを表面とする。)に図1のような導電体用の接続端子(4)(導電体のリード接続位置を示す印が打たれている。)と定電流ダイオード(1)の各アノードを接続して板左側(本実施例では上下左右は図1に従う。)の端子(3)に至る回路、及び他方の面(以下、これを裏面とする。)に図3に示した表面の導電体用の接続端子とのみ電気的に接続した回路(表面から見て整流ダイオード(8)(10D−1、日本インター(株)製)を介して右側の化成用の給電端子(7)に至る。)を形成した。導電体用の接続端子(4)は、60個等間隔で設置されている。定電流ダイオードとして石塚電子製のE―101Lから40μA以下のものを選別し、板上(2)の定位置(導電体用の接続端子(4)の板中央側と左側端子(3)に至る回路のアノード側)に半田で接続した。
【0067】
2.コンデンサの作製
CV8万μF・V/gのタンタル焼結体(大きさ4×3×1mm、質量72mg、引き出しリード線0.29mmφが7mm表面に出ている)を導電体として使用した。リード線に後工程の半導体層形成時の溶液はねあがり防止のためテトラフルオロエチレン製ワッシャーを装着させた。このようにした導電体を前述したコンデンサ製造用冶具の接続端子に方向、高さを揃えて溶接で接続した。コンデンサ製造用冶具を計10枚用意し(導電体が、計600個接続されている)、7mm間隔で冶具を並列できるフレーム(コンデンサ製造用治具の左右両端を保持し、電気的に左右の保持部分間が絶縁されていて、左側は冶具表面の半導体形成用の端子に電気的に接続され、右側は冶具裏面の化成用の給電端子に電気的に接続される金属製フレーム)に設置した。
【0068】
このフレームを最初に0.1%燐酸水溶液が入っている化成槽に導電体部分とリード線の一部が漬かるように設置し、コンデンサ製造用冶具の裏面の化成用給電端子を陽極に、化成槽に設けられた外部電極(タンタル板)を陰極として80℃、10時間、導電体への印加電圧10Vで化成することにより導電体と引き出しリードの一部にTa25からなる誘電体層を形成した。フレームを化成槽から引き上げ水洗した後100℃で乾燥した。
次いでフレームを20%モリブデン酸ナトリウム水溶液が入った槽と10%水素化ホウ素ナトリウム水溶液が入った槽とに交互に導電体部分が漬かるように設置することを複数回繰り返すことにより、誘電体層に電気的な微小欠陥部分を作製した。
【0069】
引き続きフレームを半導体層形成溶液(アントラキノンスルホン酸ナトリウム0.2Mとエチレンジオキシチオフェンが不溶な部分も存在するほど充分投入されている20%エチレングリコールと水の混合溶液)が入った槽(槽自身にタンタル箔が貼られていて外部電極になる)に導電体部分が漬かるように設置し、定電流ダイオード側の端子(3)を陽極に、外部電極を陰極にしてこの端子(3)に8Vで1時間通電し半導体層を形成した。フレームを引き上げ洗浄した後100℃で乾燥した。さらに先程の化成槽にフレームを導電体部分が漬かるように設置し、化成用の給電端子を使用して80℃、導電体への印加電圧7Vで1時間再化成を行った。フレームを引き上げ洗浄した後100℃で乾燥した。このような半導体層形成と再化成の工程を10回行った後に、フレームをカーボンペースト槽及び銀ペースト槽と順に導電体部分が漬かるように設置、及び乾燥を行うことにより、半導体層上に電極層を積層した。
【0070】
電極層を形成した個々の導電体をコンデンサ製造用冶具から取り外し、別途用意した表面に錫メッキしたリードフレームの両凸部の陽極側に導電体のリード線を載置し、陰極側に導電体の銀ペースト側を載置し、前者はスポット溶接で、後者は銀ペーストで接続した。その後、エポキシ樹脂でリードフレームの一部を除いて封口し(リードフレームは、封口した樹脂外の所定場所で切断された後折り曲げ加工されている)、大きさ7.3×4.3×1.8mmのチップ状コンデンサを作製した。得られたコンデンサは、定格2.5V容量480μFであり、470〜490μFの個数469個、490〜510μFの個数85個、510〜530μFの個数4個、450〜470μFの個数39個、430〜450μFの個数3個の容量分布を持っていた。
【0071】
比較例1:
上記実施例1において、本発明のコンデンサ製造用冶具を介さずに、導電体に直接8V、1時間通電して半導体層を形成して比較用コンデンサを作製した。比較用コンデンサの場合、470〜490μFの個数285個、490〜510μFの個数54個、510〜530μFの個数16個、530〜550μFの個数3個、450〜470μFの個数144個、430〜450μFの個数71個、380〜430μFの個数27個の容量分布を持っていた。
実施例1及び比較例1から、実施例1で得られたコンデンサ群は、明らかに比較例1で得られたコンデンサ群よりも容量分布が狭くなっていることがわかる。
【0072】
実施例2:
1.コンデンサ製造用冶具の作製
長さ320mm、幅30mm、厚さ1.2mmのガラスエポキシ板(2)に印刷配線により一方の面(表面とする。)に図4の回路、他方の面(裏面とする)に図5の回路を形成した。すなわち、導電体用のソケット構造の接続端子(4)と定電流ダイオード(1)の各アノードを接続して板左側の集電端子(3)に至る回路、及び板表面の接続端子(4)と接続して定電流ダイオードと交互に並列した整流ダイオード(8)を介してスルーホール(9)から板裏面の化成用給電端子(7)に至る回路を形成した。導電体用の接続端子は、(株)常盤商行のPCDレセプタクル399シリーズ2.54mmピッチ64ピンの丸ピンDIPソケット構造の接続端子を使用し、ガラスエポキシ板に同ソケットに対応する64個のスルーホールを設け、これにソケットピンを差し込み半田で接続した。定電流ダイオードとして石塚電子製のE−101Lから40〜70μAのものを選別し、また整流ダイオードは、日本インター(株)製EP05DA40を使用し、それぞれ半田で接続した。
【0073】
2.コンデンサの作製
CV7万μF・V/gのタンタル焼結体(大きさ4.1×3×1.5mm、質量115mg、引き出しリード線0.52mmφが内部に4mm、表面に10mm出ている)を導電体として使用した。リード線に後工程の半導体層形成時の溶液はねあがり防止のためテトラフルオロエチレン製ワッシャーを装着させた。このように構成した導電体を前述したコンデンサ製造用冶具の接続端子に方向を揃えて差し込んだ。
【0074】
上記のコンデンサ製造用冶具を計10枚用意し(導電体が、計640個接続されている)、11mm間編で冶具を並列できる実施例1と同様なフレームに設置した。このフレームを最初に0.1%燐酸水溶液が入っている化成槽に導電体部分とリード線の一部が漬かるように設置し、コンデンサ製造用冶具の裏面の化成用給電端子を陽極に、化成槽に設けられた外部電極(タンタル板)を陰極として80℃、10時間、導電体への印加電圧9Vで化成することにより導電体と引き出しリードの一部にTa25からなる誘電体層を形成した。フレームを化成槽から引き上げ水洗した後100℃で乾燥した。次いでフレームを2%エチレンジオキシチオフェンアルコール溶液が入った槽に導電体部分が漬かるように設置し、引き上げ放置後、18%ナフタレンスルホン酸鉄アルコール溶液が入った槽に導電体部分が漬かるように設置し引き上げ、40℃で30分放置後、アルコールが入った槽に導電体部分が漬かるように設置して引き上げ、80℃で乾燥するという一連の操作を8回繰り返すことにより誘電体層上にエチレンジオキシポリマーを主成分とする微小欠陥部分を作製した。
【0075】
さらにフレームを0.1%酢酸水溶液が入っている化成槽に導電体部分が漬かるように設置し、コンデンサ製造用冶具の裏面の化成用給電端子を陽極に、化成槽に設けられた外部電極(タンタル板)を陰極として80℃、15分、導電体への印加電圧8Vで再化成した。引き続きフレームを半導体層形成溶液(エチレンジオキシチオフェンモノマーが飽和濃度以下となる水溶液とアントラキノンスルホン酸が溶解した20%エチレングリコールと水の混合溶液)が入った槽(槽自身にタンタル箔が貼られていて外部電極になる)に導電体部分が漬かるように設置し、定電流ダイオード側の集電端子(3)を陽極に、外部電極を陰極にしてこの集電端子(3)に11Vで30分通電し半導体層を形成した。フレームを引き上げ水洗後さらにアルコール洗浄した後80℃で乾燥した。さらに先程の化成槽にフレームを導電体部分が漬かるように設置し、化成用の給電端子を使用して80℃、導電体への印加電圧7Vで15分再化成を行った。フレームを引き上げ水洗、さらにアルコール洗浄後80℃で乾燥した。このような半導体層形成と再化成を10回行った後にフレームをカーボンペースト槽及び銀ペースト槽と順に導電体部分が漬かるように設置及び乾燥を行うことにより、半導体層上に電極槽を積層した。
【0076】
電極層を形成した個々の導電体をコンデンサ製造用冶具から取り外し、別途用意した表面に錫メッキしたリードフレームの両先端部の陽極側に導電体のリード線を一部切断除去して載置し、陰極側に導電体の銀ペースト側を載置し、前者はスポット溶接で、後者は銀ペーストで接続した。その後、エポキシ樹脂でリードフレームの一部を除いて封口し(リードフレームは、封口した樹脂外の所定場所で切断された後折り曲げ加工されている)、大きさ7.3×4.3×2.8mmのチップ状コンデンサを作製した。さらにコンデンサを60℃90%RHの恒湿槽に24時間放置した後185℃で10分乾燥し、次いで125℃、導電体への印加電圧3.5Vで5時間エージングした。得られたコンデンサは、定格2.5V容量680μFであり、720〜645μFの個数572個、720〜750μFの個数42個、750〜780μFの個数20個、645〜610μFの個数6個の容量分布を持っていた。
【0077】
比較例2:
上記実施例1において、本発明のコンデンサ製造用冶具を介さずに、導電体に直接11Vで30分間通電して半導体層を形成して比較用コンデンサを作製した。比較用コンデンサの場合、720〜645μFの個数351個、720〜750μFの個数25個、750〜780μFの個数2個、645〜610μFの個数157個、610〜575μFの個数88個、575〜540μFの個数13個、540〜510μFの個数4個の容量分布を持っていた。
【0078】
実施例2及び比較例2から、実施例2で得られたコンデンサ群は明らかに比較例2で得られたコンデンサ群よりも容量分布が狭くなっていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明のコンデンサ製造用冶具の1形態の構成を示す模式図。
【図2】本発明のコンデンサ製造用冶具の他の形態の構成を示す模式図。
【図3】本発明のコンデンサ製造用冶具の1形態の裏面の構成を示す模式図。
【図4】本発明のコンデンサ製造用冶具の他の形態の構成を示す模式図。
【図5】本発明のコンデンサ製造用冶具の1形態の裏面の構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0080】
1 定電流ダイオード
1a カソード
2 絶縁性基板
3 集電端子
4 導電体用の接続端子
5 ケーブル端子
6 電子部材
7 化成用給電端子
8 整流用ダイオード
9 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体層を形成した導電体を一方の電極とし、他方の電極を通電手法により半導体層を形成して作成するコンデンサの製造方法において、複数個の電流吐き出し型の定電流源を有し、かつ、その各出力に電気的に直列に接続されている前記導電体用の接続端子を有する冶具を用い、前記接続端子に前記導電体を接続し、半導体層形成溶液中で前記定電流源より前記導電体に通電することにより、複数個の前記導電体に同時に半導体層の形成をすることを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記治具の複数個の電流吐き出し型の定電流源が、各アノードが電気的に接続された複数の定電流ダイオードで構成され、その各カソードを出力とするものである請求項1に記載のコンデンサの製造方法
【請求項3】
前記治具が、定電流ダイオードの各アノードが電気的に接続されている端子を有し、該端子に通電ことにより前記半導体層の形成をする請求項2に記載のコンデンサの製造用方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245555(P2010−245555A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150888(P2010−150888)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2004−202561(P2004−202561)の分割
【原出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】