説明

コントラスト向上シート及びそれに用いる粘着剤組成物

【課題】オートクレーブ処理無でもコントラスト向上シートの表面凹部に追随密着可能な粘着層を有するコントラスト向上シートを提供すること。
【解決手段】断面形状が台形のレンズ部121が所定の間隔で配列されるとともに、隣り合う前記レンズ部間の楔形部122は、レンズ部121と同一又は異なる材料が充填され、楔形部122は映像源側もしくは観察者側に先端を有し、楔形部に光吸収効果があるレンズシートの観察者側の表面において、楔形部の先端面である下底面122aは、レンズ部の先端平面に対して深さdの凹部をなしている。このレンズシートと、その観察者側の表面に粘着層を介して観察者側ベースシートが積層されているコントラスト向上シートであって、粘着層の20℃と50℃における貯蔵弾性率E’の比である、E’(20℃)/E’(50℃)が、1.7以上2.5以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの前面に設置し、ディスプレイの性能、特に、ディスプレイに外光が当たった時のコントラスト低下等による性能の低下を防止する機能や、ディスプレイの有効光を好適に拡散させて視野角を広くする機能等を有するコントラスト向上シート及びそれに用いる粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等では、通常、観察者がどのような位置から見ても良好な画像が得られるように、視野角が広いことが好まれる。このような要求に対して、特許文献1に示すようなコントラスト向上シートが知られている。
【0003】
図1はその使用方法の一例を示す断面模式図である。このコントラスト向上シートS1は、観察者側から映像源方向に順に、観察者側ベースシート11、レンズシート12、映像源側ベースシート13が粘着層10、20を介して貼り合わされて形成されている積層体である。図1においては、図面右側に映像光源が配置されて拡散光が出射され、図面左側に観察者が位置している。映像源側ベースシート13の映像源側には連続プリズム形状のプリズムレンズ131が設けられている。レンズシート12のレンズ部121は屈折率がN1の物質で形成されている。さらに、図では上下に隣接する2つのレンズ部121の斜辺に挟まれた部分の断面形状は楔形部122をなし、レンズ部121と同一又は異なる材料物質が充填され、屈折率N2を有する物質で埋められている。楔形部122の断面形状は、映像源からの拡散光を効率良く全反射するために、略三角形又は略台形をなすものであり、楔形部は映像源側もしくは観察者側に先端を有するものである。図1においては、楔形部122は略台形をなし、観察者側に幅広の下底面122a、映像源側に先端となる幅の狭い上底面122bを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−85050号公報
【特許文献2】特開2007−96111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、楔形部122は、将来楔形部を構成する溝部(凹凸部)をレンズ部121の観察者側表面にあらかじめ形成した後、例えばUV硬化型インキ等を、スクリーン印刷法によって前記溝部に充填して形成される。図2は図1におけるレンズシート12のみの拡大断面図である。この充填の際、スクリーン印刷法においては、図2に示すように楔形部122の下底面122aは完全に平滑にならずに、深さdが1μm以上5μm以下程度の凹部を形成する。そして、この凹部への粘着層10の追従が不充分であると、間に空気が介在してコントラスト向上シートS1の光学特性が低下する。このため、十分に粘着層10を凹部に追従させるために、従来は粘着後にオートクレーブなどの熱処理を後処理として行なっており、これが生産性の向上を妨げる要因となっていた。
【0006】
一方、プラズマディスプレイ(PDP)においては、電磁波シールドを目的として金属メッシュが基材フィルム上に形成された電磁波遮蔽フィルタが使用されており、この電磁波遮蔽フィルタは粘着剤層を介して他の光学部材と積層される。このとき金属メッシュ凹凸上に粘着剤層が積層されるため、上記と同様に粘着剤層の追従の問題が起こることが知られている。この問題を解決するため、例えば上記の特許文献2には、粘着剤層の貯蔵弾性率E’を所定の値以下として柔軟性を持たせることが開示されている。
【0007】
しかしながら、PDP用の金属メッシュとコントラスト向上シートとでは、前者が金属の凸部への粘着剤層への追従となる一方、後者はUV硬化型インキからなる凹部への粘着剤層の追従であり、追従対象の構成が全く異なることから、特許文献2の粘着剤をそのまま用いることはできず、更なる検討が必要であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、オートクレーブ等の熱処理なしでも、コントラスト向上シートの表面凹部に追従密着可能な粘着層を有するコントラスト向上シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、粘着層の貯蔵弾性率E’を調整して、低温では軟らかいが高温では硬い粘着層とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1) 断面形状が台形のレンズ部が所定の間隔で配列されるとともに、隣り合う前記レンズ部間の楔形部は、前記レンズ部と、同一又は異なる材料が充填され、前記楔形部は映像源側もしくは観察者側に先端を有し、前記楔形部に光吸収効果があるレンズシートの観察者側の表面において、前記楔形部の先端面は、前記レンズ部の先端平面に対して凹部をなしているレンズシートと、
前記レンズシートの観察者側の表面に、粘着層を介して観察者側ベースシートが積層されている積層体を含むコントラスト向上シートであって、
前記粘着層の20℃と50℃における貯蔵弾性率E’の比である、E’(20℃)/E’(50℃)が、1.7以上2.5以下であるコントラスト向上シート。
【0011】
(2) 前記粘着層の20℃における貯蔵弾性率E’が2.4×10以上2.5×10以下である(1)記載のコントラスト向上シート。
【0012】
(3) 前記粘着層は、アクリル系粘着剤と、硬化剤とを含む粘着剤組成物からなる(1)又は(2)記載のコントラスト向上シート。
【0013】
(4) 前記楔形部は、楔形部を構成する溝部を前記レンズ部表面に形成した後、UV硬化型インキをスクリーン印刷法によって前記溝部に充填してなり、前記凹部の深さは1μm以上5μm以下である(1)から(3)いずれか記載のコントラスト向上シート。
【0014】
(5) (1)から(5)記載のコントラスト向上シートの粘着層を形成するための粘着剤組成物であって、
20℃と50℃における貯蔵弾性率E’の比である、E’(20℃)/E’(50℃)が、1.7以上2.5以下であるコントラスト向上シート用粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコントラスト向上シート及びそれに用いる粘着剤組成物によれば、オートクレーブのような熱処理なしでもコントラスト向上シートの表面凹部に追随密着可能な粘着層を有するコントラスト向上シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のコントラスト向上シートの一例を示す断面模式図である。
【図2】図1におけるレンズシートの部分拡大断面模式図である。
【図3】実施例における貯蔵弾性比率E’と温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<粘着剤組成物>
本発明に用いられる粘着剤組成物は、後述する貯蔵弾性率E’を備えていればよく特に限定されないが、好ましくは主剤としてのアクリル系粘着剤と、硬化剤とを含有する。以下、これらの必須成分について説明する。
【0019】
[主剤]
好ましい主剤であるアクリル系粘着剤は、耐熱性、耐湿熱性、耐久性、透明性、塗工適性等に優れ、また、低コストである点において好ましい。好ましいアクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記アクリル酸エステルの中でも、アクリル酸−n−ブチル及びアクリル酸−2−エチルヘキシルが、耐熱性、耐湿熱性、耐久性、透明性に優れる点において好ましい。他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチル、メタクリル酸−n−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、上記他の単量体の中でも、メタクリル酸−n−エチルヘキシルが好ましい。
【0020】
アクリル系粘着剤として用いられるアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、上記アクリル系粘着剤が所望の粘着力を発揮するものであれば、特に限定されないが、300,000〜1,000,000の範囲内であることが好ましく、300,000〜800,000の範囲内であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の値である。
【0021】
なお、上記アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、SKダイン2094(綜研化学株式会社製)、SKダイン1811L(綜研化学株式会社製)等を好適に用いることができる。ここで、SKダイン2094は単量体アクリル酸―2−エチルヘキシル、アクリル酸―n―ブチルを主とするアクリル系粘着剤であり、SKダイン1811Lは単量体アクリル酸―n―ブチルを主とするアクリル系粘着剤である。
【0022】
[硬化剤]
本発明の粘着剤組成物において、硬化剤は、上記アクリル系粘着剤を架橋できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤等が挙げられる。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ系化合物が挙げられる。また、イソシアネート系硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の3量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4′−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、粘着剤の種類等に応じて、適宜選択するとよい。
【0023】
なお、上記エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、E−5XM(綜研化学株式会社製)を好適に用いることができる。また、上記イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、TD−75やL−45(共に綜研化学株式会社製)を好適に用いることができる。
【0024】
本発明の粘着剤組成物における上記硬化剤の含有量は、固形分比で、アクリル系粘着剤100質量部に対して0.01質量部以上2.0質量部以下である。この範囲であれば、適度な弾性を有する粘着層を形成することができ、凹部となる楔形部への追従が可能となる。
【0025】
[硬化剤]
上記の主剤及び硬化剤は、溶剤で溶解して従来公知の方法で粘着層として塗布形成される。溶剤は主剤及び硬化剤を溶解可能であれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン(MEK)とトルエンが1:1の溶剤などが好ましく使用できる。
【0026】
<粘着剤層>
本発明に用いられる粘着剤層は、上記の粘着剤組成物を、アプリケータなどの従来公知の方法にて基材上に塗布し、その後所定の温度と時間で乾燥、硬化することにより得られる。
【0027】
粘着剤層の厚みは、特に限定されず、用途に応じて、適宜選択することができる。通常、5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。上記範囲であれば、粘着物性が安定する。なお、厚みが5μm未満であると、被着体であるレンズシートの楔形部の凹部への粘着剤層の追従が不十分となってヘイズ値の上昇に繋がる。また、十分な接着強度が得られない場合がある。100μmを超えると、光線透過率等の光学特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0028】
粘着層の弾性については、20℃と50℃における貯蔵弾性率E’の比である、E’(20℃)/E’(50℃)が、1.7以上2.5以下であることが好ましく、1.8以上2.4以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明においては、被着体であるレンズシートには、上記のように楔形部の下底面122aに凹部が形成されている。この凹部への粘着剤層の追従は、上記従来技術の特許文献2のようなPDPにおける電磁波遮蔽フィルタとは異なる物性が要求される。電磁波遮蔽フィルタでは金属メッシュからなる凸部上に粘着剤層が積層される。この金属メッシュは細く脆いために、粘着剤層による金属メッシュの変形や切断を防ぐために、粘着剤層の弾性はより低いほうが好ましい。このため、上記の特許文献2では、粘着剤層の貯蔵弾性率E’を常温20℃における所定の値以下として規定して上限のみを規定している。更に言えば、金属メッシュの断面は角部を有する略矩形状である。このため、弾性率が低くないと充分に追従が行なわれない。
【0030】
本発明のコントラスト向上シートを構成するレンズシートの場合、その表面はレンズ部も凹部を有する楔形部も、UV硬化型樹脂等の硬い樹脂で形成されており、電磁波遮蔽フィルタのように変形や切断の恐れはない。むしろ、コントラスト向上シートにおいては、粘着剤層の弾性率が低すぎると、粘着剤層の光学的歪みが生じて光学物性が低下するリスクが増大する。このため、常温20℃における貯蔵弾性率は、電磁波遮蔽フィルタ用途に比べると高いほうが好ましい。
【0031】
一方、コントラスト向上シートの光学要求特性は非常に厳しいため、凹部の空隙に少しでも空気が溜まると光学特性が大幅に低下する。このため、ラミネート時の高温時においては、粘着剤の流動性が最優先されるために、貯蔵弾性率は低いほうが好ましい。なお、本発明においては、追従すべきレンズシート表面の凹部が角部を有さない曲面凹部である。この点からも、電磁波遮蔽フィルタに比べて凹部への粘着剤の充填性が良好となる。すなわち、粘着剤層の高温での柔軟性と、楔部の曲面凹部形状との組み合わせが、粘着剤層の凹部への追従を可能とする点に本発明の特徴がある。
【0032】
このような観点から、本発明のコントラスト向上シート用途においては、低温では高い貯蔵弾性率、高温では低い貯蔵弾性率が好ましいという結論に到達し、上記の20℃(常温)と50℃(高温)における貯蔵弾性率E’の比を規定したものである。よって、この比が1.7未満であると、常温と高温の差が小さくなり、ラミネート時の追従性が不足するので好ましくない。一方、この比が2.5を超えると、常温と高温の差が大きくなり過ぎて、常温では硬さが増し過ぎ、高温では軟らかすぎるので好ましくない。
【0033】
粘着層の具体的な好ましい貯蔵弾性率E’の範囲としては、
10℃において4.0×10以上2.5×10以下であり、
20℃において2.4×10以上2.5×10以下であり、
30℃において2.0×10以上1.5×10以下であり、
40℃において1.7×10以上1.2×10以下であり、
50℃において1.7×10以上1.0×10以下である。
【0034】
なお、本発明における貯蔵弾性率E’とは、動的機械特性のひとつであり、試料に時間によって変化(振動)する歪み又は応力を与え、それによって発生する応力又は歪みを検出することにより、試料の力学的な性質を測定する方法で得られる値のうちの試料の内部に貯蔵された値であり、具体的には実施例の条件にて測定された値である。
【0035】
<コントラスト向上シート>
本発明のコントラスト向上シートは、既に説明したように、図1に示すような積層体であり、一例であるコントラスト向上シートS1は、観察者側から映像源方向に順に、観察者側ベースシート11、レンズシート12、映像源側ベースシート13が粘着層10、20を介して貼り合わされて形成されている積層体である。ここで、粘着層10として上記の粘着層が少なくとも使用される。
【0036】
レンズ部121は光透過性樹脂で構成され、電離放射線や熱エネルギーで硬化するアクリレート樹脂等を用いることができる。また、楔形部122を構成する樹脂としては、レンズ部と同種の樹脂や、シリコンやフッ素が導入された低屈折アクリレート系樹脂等を用いることができる。楔形部122は、カーボン等の顔料又は赤、青、黄、黒等の染料にて所定濃度に着色されている。また、観察者側ベースシート11、及び映像源側ベースシート13は、レンズシート12と略同一の屈折率を有する材料にて構成されている。観察者側ベースシート11の外側面には、観察者側にAR、AS、AGうち、少なくとも一の機能を備えている。ここに「AR」とはアンチリフレクションの略で、レンズ表面に入光する光の反射率を抑える機能をいう。また、「AS」とはアンチスタティックの略で、帯電防止の機能をいう。また「AG」とはアンチグレアの略で、レンズの防眩性機能をいう。
【0037】
映像源側ベースシート13の映像源側には連続プリズム形状の複数のプリズムレンズ131が設けられており、プリズムレンズ131は映像源からの拡散光を屈折させる。すなわち、プリズムレンズ131は垂直方向に光を制御する。プリズムレンズ131は、シート面を底面とする複数の三角柱プリズムが配列されている。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
トルエン:メチルエチルケトン=1:1の混合溶媒(商品名:KT−11:DICグラフィクス社製)の5質量部を用い、アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン1811L:綜研化学株式会社製)100質量部(固形分として23質量部含有)とイソシアネート系硬化剤(商品名:TD75:綜研化学社製)0.4質量部(固形分100質量部に対して1.3質量部含有)を溶解して粘着剤組成物を得た。
【0040】
<実施例2>
イソシアネート系硬化剤(商品名:TD75:綜研化学社製)0.5質量部(固形分100質量部に対して1.63質量部含有)とした以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0041】
<実施例3>
アクリル系粘着剤(商品名:SKダイン2094:綜研化学株式会社製)100質量部(固形分として25質量部含有)とエポキシ系硬化剤(商品名:E−5XM:綜研化学社製)0.27質量部(固形分100質量部に対して0.054質量部含有)とした以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0042】
<比較例1>
イソシアネート系硬化剤(商品名:TD75:綜研化学社製)0.2質量部(固形分100質量部に対して0.65質量部含有)とした以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0043】
<比較例2>
フタル酸エステル系可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)27.5質量部(固形分100%)を用い、メタクリル酸メチル重合体ブロック(M)とアクリル酸ブチル重合体ブロック(A)とからなる質量平均分子量10,000〜200,000のM−A−M型トリブロック共重合体を2種含むトリブロック共重合体混合物(商品名LA410L(クラレ株式会社製)の40質量部(固形分100%)と、商品名LA4285(クラレ株式会社製)の60質量部(固形分100%)との混合物)を溶解して粘着剤組成物を得た。
【0044】
<粘着剤層及び積層体の製造>
基材(PETフィルム,商品名:コスモシャインA4100,膜厚:100μm,全光線透過率:92%,東洋紡社製)の易接着面側上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように、上記実施例及び比較例の粘着剤組成物をアプリケータにより全面塗工し、粘着剤層を形成した。その後、乾燥させ、図2に示すような構成のレンズシート(特許文献1の図1の構成)の観察者側面にハンドローラにて粘着剤層を介して圧着して実施例及び比較例の積層体を製造した(オートクレーブ未処理)。
【0045】
なお、上記の積層体について、70℃×0.7MPa×30分の条件でオートクレーブ処理(AC処理)してAC処理品を得た。
【0046】
<試験例1>
実施例及び比較例の粘着剤層について、貯蔵弾性率E’を測定した。その結果を図3に示す。貯蔵弾性率E’の測定はティー・エイ・インスツルメント社製の固体粘弾性アナライザーRSA−IIIを用い、JIS K7244−1に準拠した動的粘弾性測定法(アタッチメントモード:圧縮モード,周波数:1Hz,温度:−50〜150度、昇温速度:5度/分)にて行った。
【0047】
また、図3より、室温(20℃)と高温状態(50℃)のときの貯蔵弾性比率E’の比を算出し、以下の値を得た。
実施例1:1.84(20℃で5.18×10、50℃で2.81×10
実施例2:2.33(20℃で9.08×10、50℃で3.89×10
実施例3:2.07(20℃で4.10×10、50℃で1.98×10
比較例1:1.43(20℃で2.28×10、50℃で1.59×10
比較例2:1.69(20℃で2.05×10、50℃で1.21×10
【0048】
<試験例2>
実施例及び比較例の積層体(AC処理前/AC処理後)について、全光線透過率(JIS−K7361−1997)およびヘイズ値(JIS−K7105−1981)を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
図3及び表1より、貯蔵弾性率E’の比が本発明の範囲内である実施例1から3では、AC処理前後で全光線透過率及びヘイズの値が変化しておらず、AC処理なしでも凹部に粘着剤層が追従していることが解かる。一方、比較例1、2においては、AC処理前において特にヘイズが高く、AC処理後に低下していることから、AC処理なしでは凹部に空隙が存在して光学特性が低下していることが理解できる。
【符号の説明】
【0051】
S1 コントラスト向上シート
10 粘着層
11 観察者側ベースシート
12 レンズシート12
121 レンズ部
122 楔形部
122a 下底面(凹部)
13 映像源側ベースシート
131 プリズムレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が台形のレンズ部が所定の間隔で配列されるとともに、隣り合う前記レンズ部間の楔形部は、前記レンズ部と、同一又は異なる材料が充填され、前記楔形部は映像源側もしくは観察者側に先端を有し、前記楔形部に光吸収効果があるレンズシートの観察者側の表面において、前記楔形部の先端面は、前記レンズ部の先端平面に対して凹部をなしているレンズシートと、
前記レンズシートの観察者側の表面に、粘着層を介して観察者側ベースシートが積層されている積層体を含むコントラスト向上シートであって、
前記粘着層の20℃と50℃における貯蔵弾性率E’の比である、E’(20℃)/E’(50℃)が、1.7以上2.5以下であるコントラスト向上シート。
【請求項2】
前記粘着層の20℃における貯蔵弾性率E’が2.4×10以上2.5×10以下である請求項1記載のコントラスト向上シート。
【請求項3】
前記粘着層は、アクリル系粘着剤と、硬化剤とを含む粘着剤組成物からなる請求項1又は2記載のコントラスト向上シート。
【請求項4】
前記楔形部は、楔形部を構成する溝部を前記レンズ部表面に形成した後、UV硬化型インキをスクリーン印刷法によって前記溝部に充填してなり、前記凹部の深さは1μm以上5μm以下である請求項1から3いずれか記載のコントラスト向上シート。
【請求項5】
請求項1から5記載のコントラスト向上シートの粘着層を形成するための粘着剤組成物であって、
20℃と50℃における貯蔵弾性率E’の比である、E’(20℃)/E’(50℃)が、1.7以上2.5以下であるコントラスト向上シート用粘着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−68425(P2012−68425A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213075(P2010−213075)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】