説明

コンバインの刈取装置

【課題】回転輪の接近位置での位置保持およびその解除を容易に行えて、合流部での刈取穀稈の詰まり解除を作業性良く楽に行うことができる詰まり解除装置を提供する。
【解決手段】複数条の穀稈を分草、引き起こし後に刈り取って、下部搬送機構、上部搬送機構を介して脱穀部4へ搬送するコンバイン100の刈取装置8において、下部搬送装置30・31の合流部Xに、該合流部Xの外側に回動軸107を有して左下部搬送装置31の搬送チェンを巻回する可動ローラ104を備えるテンションアーム102と、該テンションアーム102の反合流部側に当接するローラ112を備える解除レバー103とを配置し、該左下部搬送装置31の搬送チェンを駆動する左駆動スプロケット44Lと該左駆動スプロケット44Lを駆動する左下部搬送駆動軸38Lとの間に、ワンウェイクラッチ208を介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の穀稈を刈取装置で刈り取り、刈取穀稈を脱穀部に搬送して脱穀するコンバインの刈取装置の技術に関し、具体的には、下部搬送機構(稈元搬送機構)の詰まりを容易に解除できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取装置は、機台前部に上下回動自在に取り付けられた刈取フレームに、刈取条数に応じた分草引起装置や掻込装置、刈刃装置、搬送機構等が取り付けられており、圃場の未刈穀稈を分草後に引き起こしながら掻込み、その掻込時に未刈穀稈の稈元を刈刃で切断し、圃場の未刈穀稈を刈り取る構成となっている。そして、刈り取られた穀稈は、穂先側を上部搬送装置や穂先搬送タインによって挟持されながら、稈元を下部搬送装置やガイド体等によって挟持されて、刈取装置後部の縦搬送装置へと送られる構成となっている。具体的には、刈取穀稈の稈元を突起付ベルトおよび左右下部搬送装置によって後方へ搬送し、左右一方の下部搬送装置の後方かつ他方の下部搬送装置後部の直前において、左右の条の刈取穀稈の稈元を合流させてから、縦搬送装置へと受継ぐように構成されている。
【0003】
そして、従来の刈取装置における合流部の刈取穀稈の詰まりを解除する方法には、次のようなものがある。例えば、左右一方の搬送チェンの後端部を巻回支持する回転輪を、左右他方の搬送チェンに対して接近位置に保持する位置保持機構を設けるとともに、遠近方向に位置変更可能に設ける方法(特許文献1参照)や、左右一方の下部搬送装置の搬送チェンを案内する回転輪を解除レバーにて回動させる方法等である。
これらの方法により、合流部にて刈取穀稈の詰まりが発生した場合、回転輪の接近位置での位置保持を解除して離隔位置に後退させて、もしくは、回転輪を解除レバーにて回動させて、合流部における左右の下部搬送装置の間隔を拡大し、合流部から刈取穀稈を引き抜いて刈取穀稈の詰まりを解除することができる。
【特許文献1】特開2001−275459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、回転輪の接近位置での位置保持を解除するために、操作バー付きのカムを回転操作して、合流部における刈取穀稈の詰まり反力に抗して、回転輪を一旦接近位置からさらに前進させる必要がある。このため、カムを回転させるためには、大きな操作荷重が必要であり、カムを手で回転させることは非常に困難であるため、実際にはハンマー等で操作バーを叩きカムを回転させることにより、回転輪の接近位置での位置保持を解除することとなっている。また、左右一方の下部搬送装置の搬送チェンを案内する回転輪を解除レバーにより回動させる方法でも、搬送チェンが固定されていては回動操作にも無理がかかるため、大きな操作荷重が必要である。このように、合流部での刈取穀稈の詰まり解除には大変な労力を必要としている。
また、これらの方法により、合流部の空き空間を確保してもスペースに限界があるため、詰まった穀稈を容易に除去できるものではない。
【0005】
本発明は以上の状況に鑑み、回転輪の接近位置での位置保持およびその解除を容易に行えて、合流部での刈取穀稈の詰まり解除を作業性良く楽に行うことができる詰まり解除装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、請求項1においては、
複数条の穀稈を分草、引き起こし後に刈り取って、下部搬送機構、上部搬送機構を介して脱穀部へ搬送するコンバインの刈取装置において、
下部搬送装置の搬送チェンを駆動するスプロケットと該スプロケットを駆動する駆動軸との間に、ワンウェイクラッチを介装したものである。
【0008】
請求項2においては、
下部搬送装置の合流部における該下部搬送装置の間隔を拡大する詰まり解除手段を配置したものである。
【0009】
請求項3においては、
左下部搬送装置の合流部に詰まり解除手段を配置したものである。
【0010】
請求項4においては、
左下部搬送装置の搬送チェンを駆動するスプロケットと該スプロケットを駆動する駆動軸との間に、前記ワンウェイクラッチを介装したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、刈取部で穀稈が詰まった場合、ワンウェイクラッチにより搬送チェンを搬送方向に自由に動かすことができることにより、搬送チェンにかじりついた穀稈を後方(搬送方向)へ引き抜く時に搬送チェンを自由に回動させることができるため、穀稈の引き抜きに要する力が軽減されて、詰まった穀稈を容易に除去できる。
【0013】
請求項2においては、刈取部で穀稈が詰まった場合、詰まり解除手段により刈取部の合流部のスペースを確保するとともに、ワンウェイクラッチにより搬送チェンを搬送方向に自由に動かすことができることにより、搬送チェンにかじりついた穀稈を後方(搬送方向)へ引き抜く時に搬送チェンを自由に回動させることができるため、穀稈の引き抜きに要する力が軽減されて、詰まった穀稈を容易に除去できる。
また、ワンウェイクラッチにより搬送チェンを搬送方向に動かすことができることにより、詰まり解除手段による解除操作を行う際の操作荷重が軽減される。
【0014】
請求項3においては、刈取部で穀稈が詰まった場合、詰まり解除手段により刈取部の合流部のスペースを確保するとともに、ワンウェイクラッチにより搬送チェンを搬送方向に自由に動かすことができることにより、搬送チェンにかじりついた穀稈を後方(搬送方向)へ引き抜く時に搬送チェンを自由に回動させることができるため、穀稈の引き抜きに要する力が軽減されて、詰まった穀稈を容易に除去できる。
また、ワンウェイクラッチにより搬送チェンを搬送方向に動かすことができることにより、詰まり解除手段による解除操作を行う際の操作荷重が軽減される。
さらに、運転席がなくスペースに余裕のあるコンバインの左側から手を入れて詰まり解除装置を操作できるため作業が楽である。
【0015】
請求項4においては、刈取部で穀稈が詰まった場合、運転席がなくスペースに余裕のあるコンバインの左側から手を入れて詰まった穀稈を除去できるため作業が楽であるとともに、左下部搬送装置の搬送チェンが左側(外側)へ回動するため、作業者が詰まった穀稈をその場から後方へ引っ張れば楽に引き抜くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2はコンバインの正面図、図3は刈取装置の駆動力伝達を示すスケルトン図、図4は上部搬送機構と下部搬送機構を示す平面図、図5は左下部搬送装置の平面図、図6は解除レバーおよびテンションアームを回動させた状態を示す平面図である。
【0017】
まず、本発明に係るコンバイン100の全体構成について説明する。
図1および図2に示すように、1は左右走行クローラ2や駆動輪や転輪等を装設するトラックフレーム、3はトラックフレーム1上に架設する機台、4は扱胴6や図示しない処理胴等を備える脱穀部、5はフィードチェン、8は脱穀部4の前方に装備する四条用の刈取装置、9は図示しない排藁チェンの終端を臨ませる排藁処理部、11は脱穀後に選別した穀粒を揚穀筒20を介して搬入して貯留する穀粒タンク、13は穀粒タンク11内の穀粒を搬出する排出オーガ、14は運転席15や丸形の操向ハンドル17や図示しない主変速レバーや副変速レバーや脱穀クラッチレバーや刈取クラッチレバー等を配設する運転操作部、23は運転席15の下側に配設するエンジンである。
このように、コンバイン100は、前記刈取装置8で圃場の未刈穀稈を分草後に引き起しながら掻込み、後述する刈刃29によって前記穀稈の稈元を切断し、前記刈り取った穀稈を前記脱穀部4へ搬送して脱穀するように構成されている。
【0018】
次に、刈取装置8の構成について説明する。
刈取装置8は、複数条を刈り取る構成としており、本実施例では四条用の刈取装置8について説明する。
刈取装置8は、機台3前部に刈取フレーム43の後部を上下回動可能に支持し、前記刈取フレーム43の前端に五つの分草板24・24・24・24・24を突出し、前記刈取フレーム43の前部に、四条分の未刈穀稈を引起こすための四つの引起ケース25a・25b・25c・25dが後傾姿勢で左右方向に並べて立設されている。そして、各引起ケース25a・25b・25c・25dに、それぞれ引起タイン40を上方に回動するように設けて、穀稈の引起しを行うようにしている。
【0019】
引起ケース25aの下部後方には、スターホイル27aおよび掻込み用の突起付ベルト28aを配設し、前記スターホイル27aおよび左突起付ベルト28aによって、引起こされた左側一条分の未刈穀稈の稈元を右斜め後方に掻込んでいる。また、右引起ケース25dの下部後方に、右スターホイル27dおよび右掻込み用の右突起付ベルト28dを配設し、前記右スターホイル27dおよび右突起付ベルト28dによって、引起こされた右側一条分の未刈穀稈の稈元を左斜め後方に掻込む。また、引起ケース25bの下部後方にスターホイル27bおよび掻込み用の突起付ベルト28bを配設し、前記スターホイル27bおよび突起付ベルト28bによって、引起こされた中央右一条分の未刈穀稈の稈元を右斜め後方に掻込む。また、引起ケース25cの下部後方にスターホイル27cおよび掻込み用の突起付ベルト28cを配設し、前記スターホイル27cおよび突起付ベルト28cによって、引起こされた中央左一条分の未刈穀稈の稈元を左斜め後方に掻込む。
こうして掻込装置を構成し、この掻込装置によって、未刈穀稈を掻き込んでその下方の稈元を刈刃29で切断する。
【0020】
そして、右側二条分の刈取穀稈の稈元を右前方から左後方に搬送する右下部搬送装置30と、左側二条分の刈稈の稈元を右斜め後方に搬送して前記右下部搬送装置30の送り終端部近傍において右側二条分と合流させる左下部搬送装置31とが、後述する刈取フレーム43に支持されている。つまり、右下部搬送装置30後部の直前、かつ左下部搬送装置31の後方において(以下、合流部Xとする。)、右側二条分の刈取穀稈と左側二条分の刈取穀稈が合流している。
また、左側二条分の刈取穀稈の穂先側を右斜め後方へ搬送する左上部搬送装置32と、右下部搬送装置30の送り終端部近傍にて合流した四条分の刈稈の稈元および穂先側を脱穀部4のフィードチェン5の送り始端に受継ぎ搬送させる縦搬送装置34と、右上部搬送装置35とが、図示しない縦搬送駆動ケースに支持されている。
【0021】
そして、図1に示すように、脱穀部4の前方からは、前方斜め下方に向って、刈取主フレームである縦伝動ケース37を突出させており、前記縦伝動ケース37の上端部にベベルギヤケースを設けている。
【0022】
前記縦伝動ケース37の下端には、刈取装置8の底部で機体左右方向に水平に横架させる図示せぬ横伝動ケースの中間部が一体連結されている。前記横伝動ケースと平行にその前部に支持体45が横設される。
前記横伝動ケースと支持体45から前方に五本の刈取フレーム43・43・43・43・43が平行に機体前方に向けて一体的に延出している。それぞれの刈取フレーム43の前端に前記分草板24が取り付けられている。
【0023】
そして、前記横伝動ケースからベベルギヤを介して引起ケース25a・25b・25c・25dに動力を伝達して、前記引起タイン40を駆動する構成としている。
また、前記縦伝動ケース37の略中央部と機台3前部との間には、図示しない刈取昇降シリンダを介装している。このように構成することによって、刈取昇降シリンダを伸縮させることにより刈取装置8全体を昇降可能に構成している。そして、縦搬送装置34を上下に揺動させることにより、扱深調節を可能としている。
【0024】
次に、刈取穀稈の稈元側を搬送する下部搬送機構について説明する。
図4に示すように、下部搬送機構はスターホイル27a・27b・27c・27dや、左右下部搬送装置30・31等によって構成され、前方から前記突起付ベルト28a・28b・28c・28dによって送られてくる刈取穀稈の稈元を後方へ搬送し、後述するテンションアーム102等によって案内しながら縦搬送装置34によってフィードチェン5へ送られる。
【0025】
図1から図4に示すように、刈取フレーム43上部には、上方へ向かってスプロケット軸22a・22b・22c・22dが枢支されている。
該スプロケット軸22a上には、前記左スターホイル27aと、その上部に左下部搬送装置31の前部を巻回する左従動スプロケット26Lと、左突起付ベルト28aを巻回するプーリとが固設されている。
【0026】
また、スプロケット軸22d上にも同様に、前記右スターホイル27dと、その上部に右下部搬送装置30の前部を巻回する右従動スプロケット26Rと、右突起付きベルト28dを巻回するプーリとが固設されている。
ここで、前記スターホイル27a・27bは、前記スプロケット軸22a・22bを介して略同じ高さに枢支されて、共に噛み合うように構成されている。また、前記スターホイル27c・27dは、前記スプロケット軸22c・22dを介して略同じ高さに枢支されて、共に噛み合うように構成されて回動駆動するようにしている。
【0027】
右下部搬送駆動軸38Rは、駆動ケースから下方へ突出し、前記右下部搬送駆動軸38Rの下端には右駆動スプロケット44Rが固設されている。そして、前記右駆動スプロケット44Rには、右下部搬送装置30が巻回されている。
また、左下部搬送駆動軸38Lは、駆動ケースから下方へ突出し、前記左下部搬送駆動軸38Lの下端には左駆動スプロケット44Lがワンウェイクラッチ208を介して設けられている。そして、前記左駆動スプロケット44Lには、左下部搬送装置31後部が巻回されている。
【0028】
次に、刈取装置8の動力伝達機構について説明する。
図4に示すように、エンジンからの動力がベルト伝達機構やクラッチ等を介して入力プーリ70に伝達され、該入力プーリ70から刈取入力軸55上に設けたベベルギヤを介して第一軸81に動力が伝達され、前記第一軸81からベベルギヤを介して第二軸82に動力が伝達される。そして、前記第二軸82より引起軸83a・83b・83c・83dを介して引起ケース25a・25b・25c・25dのチェンを駆動し、前記引起タイン40を駆動する。
【0029】
前記刈取入力軸55からチェンケース39内のスプロケット、チェンを介して横伝動軸78に動力を伝達する。横伝動軸78からベベルギヤを介して縦搬送入力軸85に動力を伝達し、前記縦搬送入力軸85の上部より右上部搬送装置35を駆動し、縦搬送入力軸85の下部に固設されている駆動スプロケット51によって縦搬送装置34を駆動する。
【0030】
また、引起軸83aの中途部よりギア等を介して、動力を上部へ取り出す左上部搬送駆動軸88を設け、左上部搬送駆動軸88の上部に設ける駆動スプロケット89を介して左上部搬送装置32を回転駆動させるとともに、左上部搬送駆動軸88の上端からベベルギヤを介しさらに上向きに動力を取り出して図示せぬ左穂先搬送タインを駆動スプロケット72を介して回転駆動させる左穂先搬送駆動軸73を設けている。
【0031】
そして、前記引起軸83a・83dは、中途部よりギヤ等を介して左右の下部搬送装置30・31を駆動する。
つまり、前述したように、前記左引起軸83aの駆動力はチェン等を介して、左下部搬送駆動軸38Lへと伝達され、前記左下部搬送駆動軸38L下端に設けられている左駆動スプロケット44Lによって左下部搬送装置31が駆動される。
同様に、前記右引起軸83dの駆動力はチェン等を介して、右下部搬送駆動軸38Rへと伝達され、前記右下部搬送駆動軸38R下端に固設された右駆動スプロケット44Rによって右下部搬送装置30が駆動される。
【0032】
前記左下部搬送装置31が駆動すると、左下部搬送装置31の前部が巻回されている従動スプロケット26Lが駆動され、前記従動スプロケット26Lの同軸上に固設されている左ベルト駆動プーリ46aが左突起付ベルト28aを駆動する。前記左ベルト駆動プーリ46aの下方には、同軸上に左スターホイル27aが固設されており、左突起付ベルト28aが駆動されると同時に前記左スターホイル27aが平面視時計方向に駆動されて、稈元を後方へ搬送する役割を担っている。
前記中央突起付ベルト28bの中央ベルト駆動プーリ46bの下方には、同軸上に中央スターホイル27bが固設されており、前記中央スターホイル27bは前記右スターホイル27aと噛み合っている。
つまり、右突起付ベルト28aが駆動されると同時に、右スターホイル27aが平面視時計方向に駆動され、中央スターホイル27bが平面視反時計方向に駆動されて、結果中央突起付ベルト28bが駆動される。
同様に、前記右下部搬送装置30が駆動すると、右下部搬送装置30の前部が巻回されている従動スプロケット26Rが駆動され、前記従動スプロケット26Rの同軸上に固設されている右ベルト駆動プーリ46dが右突起付ベルト28dを駆動する。
【0033】
前記右ベルト駆動プーリ46dの下方には、同軸上に右スターホイル27dが固設されており、右突起付ベルト28dが駆動されると同時に前記スターホイル27dが平面視反時計方向に駆動されて、稈元を後方へ搬送する役割を担っている。
前記中央突起付ベルト28cの中央ベルト駆動プーリ46cの下方には、同軸上に中央スターホイル27cが固設されており、前記中央スターホイル27cは前記右スターホイル27dと噛み合っている。
つまり、右突起付ベルト28dが駆動されると同時に、右スターホイル27dが平面視反時計方向に駆動され、中央スターホイル27cが平面視時計方向に駆動されて、結果中央突起付ベルト28cが駆動される。
【0034】
このようにして、下部搬送機構では、左側二条分の刈取穀稈が左スターホイル27aとスターホイル27bおよび左下部搬送装置31によって後方の稈元の合流部Xへ搬送され、右および中央の二条分の刈取穀稈がスターホイル27cと右スターホイル27dおよび右下部搬送装置30の間を通って後方の合流部Xへ搬送される。合流部X手前で合流した四条分の刈取穀稈は合流部Xを通過して、下部搬送装置30・31の後方の縦搬送装置34へと搬送される。
【0035】
次に、詰まり解除装置について説明する。
図5に示すように、合流部Xにおいて、穀稈の詰まりを解除するための手段となるテンション機構101が、左右一側の下部搬送装置に設けられており、本実施例においては、テンション機構101は、左下部搬送装置31に設けられている。テンション機構101は、テンションアーム102、解除レバー103等から構成されている。
【0036】
テンションアーム102は、可動ローラ104、固定ローラ105、ガイドレール108を備えている。テンションアーム102は、合流部X近傍の巻きつき防止板を兼ねるように後方に突出して設けられており、突出部分は略船底形に構成されている。
可動ローラ104は、テンションアーム102一側の合流部Xに近い左下部搬送装置31との接触部分に配置されており、テンションアーム102に固定されている枢支軸106に軸支されている。
固定ローラ105は、テンションアーム102の合流部Xから機体側方(機体進行方向左側)の離れた位置に左下部搬送装置31の搬送チェン内側に接触するように配置されている。具体的には、搬送フレーム114の後部には、支持プレート115が固定されており、固定ローラ105は、支持プレート115に固定されている回転軸107に軸支されている。搬送フレーム114は、左下部搬送装置31の構成部材を取り付けるためのものであって、刈取装置8の刈取フレーム43に固設されている。また、ガイドプレート116が、左下部搬送装置31の搬送チェンの搬送面側に配設されている。
ガイドレール108は、左下部搬送装置31の搬送チェンの後部内側をガイドするためのものであって、テンションアーム102の左右略中央にボルト等によって固定されている。
【0037】
このような構成により、図6に示すように、テンションアーム102は、回転軸107を中心として合流部Xから遠ざかる方向(平面視反時計回り)に回動し、テンションアーム102の回動に付随して、左下部搬送装置31が合流部Xから遠ざかる方向に移動する。
そして、このテンションアーム102の回動は、解除レバー103の回動操作により行われるように構成されている。
【0038】
解除レバー103は、パイプ部材をく字状に折り曲げて形成されたものであって、屈曲部より一側を操作部となる把手103aとしている。そして、解除レバー103の他側端部が、解除レバー取付部202に軸支されている支点軸113に固定されている。解除レバー取付部202は、取付プレート201の内面(図5において左側)に固定されている。そして、支点軸113にはアーム部203の一端が固定されており、このアーム部203の他端には、ローラ112が回転可能に支持されている。
つまり、解除レバー103とアーム部203とは、支点軸113を介して連結されており、把手103aを操作部として解除レバー103を支点軸113を中心に回動させると、アーム部203は解除レバー103と同じ方向に回動されるように構成されている。
一方、テンションアーム102には、プレートが平面視L字状となるように形成された接触部102aが垂設されている。接触部102aは、側面にローラ112が当接するように垂設されている。
【0039】
このような構成により、通常の刈取作業時においては、図5に示すように、解除レバー103の把手103aが搬送フレーム114の上側に位置し、接触部102aの長辺の端部にローラ112が接触し、ローラ112の中心と支点軸113の中心を結ぶ直線と、接触部102aの長辺とが略垂直な状態にある。
一方、合流部Xに穀稈が詰まった場合、図6に示すように、解除レバー103の把手103aを握り、解除レバー103を支点軸113を中心として平面視反時計回りに回動させることにより、解除レバー103の回動に連動して、支点軸113に固定されているアーム部203およびアーム部203に設けられているローラ112が回動される。解除レバー103は、ローラ112がテンションアーム102の接触部102aを転動して、接触部102aの屈曲部に位置するまで回動される。そして、解除レバー103の回動に連動して、前述のようにテンションアーム102は、回転軸107を中心として合流部Xから遠ざかる方向(平面視反時計回り)に回動し、テンションアーム102の回動に付随して、左下部搬送装置31が合流部Xから遠ざかる方向に移動する。
以上の操作を経て、詰まっていた穀稈を除去した後、解除レバー103を元の位置に戻すことにより、テンションアーム102も元の位置に戻る。ローラ112が接触部102aを転動することにより、解除レバー103およびテンションアーム102の回動の際、摩擦抵抗が小さく、かじり等が発生せず、容易に元の位置に復帰できる。
なお、詳細については後述するが、解除レバー103の把手103aが搬送フレーム114の上側に位置した状態においては、解除レバー103は、搬送フレーム114に係止されており、この係止を解除することにより、解除レバー103を回動できるように構成されている。
【0040】
これにより、詰まりが生じた場合に、解除レバー103を回動させることにより可動ローラ104がテンションアーム102より離れ、テンションアーム102が回動されて合流部Xの空間を広げることができて、容易に詰まりを除去することができるようになる。
また、刈取部で穀稈が詰まった場合、運転席15がなくスペースに余裕のあるコンバイン100の左側から手を入れて詰まり解除装置を操作できるため作業が楽である。
【0041】
また、前述のように左駆動スプロケット44Lと左下部搬送駆動軸38Lとの間には、ワンウェイクラッチ208が介装されている。
つまり、左下部搬送駆動軸38Lが駆動されると、左駆動スプロケット44Lが図5において平面視時計回りに回動され、左駆動スプロケット44Lに巻回されている左下部搬送装置31の駆動チェンが駆動されて、刈取穀稈が後方へ搬送される。一方、左駆動スプロケット44Lを操作して平面視時計回りに回動させる場合は、ワンウェイクラッチ208により、左駆動スプロケット44Lと左下部搬送駆動軸38Lとは係合しない。このため、左下部搬送装置31の搬送チェンを後方(搬送方向)に自由に引き出すことができる。
このような構成により、合流部Xに穀稈が詰まった場合、前述のようにして解除レバー103を回動させて、合流部Xの空間を拡大させるとともに、左下部搬送装置31の搬送チェンを後方(搬送方向)に自由に引き出すことができる。
【0042】
これにより、刈取部で穀稈が詰まった場合、解除レバー103により左下部搬送装置31の搬送チェンを案内する可動ローラ104を回動させることにより刈取部の合流部Xのスペースを確保するとともに、ワンウェイクラッチ208により搬送チェンを搬送方向に自由に動かすことができることにより、搬送チェンにかじりついた穀稈を後方(搬送方向)へ引き抜く時に搬送チェンを自由に回動させることができるため、穀稈の引き抜きに要する力が軽減されて、詰まった穀稈を容易に除去できる。
また、ワンウェイクラッチ208により搬送チェンを搬送方向にいくらか動かすことができることにより、解除レバー103より左下部搬送装置31の搬送チェンを案内する可動ローラ104を回動させることによる解除操作を行う際の操作荷重が軽減される。
さらに、刈取部で穀稈が詰まった場合、運転席15がなくスペースに余裕のあるコンバイン100の左側から手を入れて詰まった穀稈を除去できるため作業が楽であるとともに、左下部搬送装置31の搬送チェンが左側(外側)へ回動するため、作業者が詰まった穀稈をその場から後方へ引っ張れば楽に引き抜くことができる。
【0043】
次に、解除レバー103を搬送フレーム114に係止する機構について説明する。
解除レバー103には、解除レバー103を搬送フレーム114に係止するための係止具204が設けられている。係止具204は、解除レバー103の後端の側部(図5において左側)に設けられており、係止具204には、係止孔205が開口されている。
そして、搬送フレーム114には、解除レバー103が支点軸113を中心として回動させた場合に、解除レバー103の係止具204に開口されている係止孔205と一致する位置に、係止孔205に嵌合する突起部206が設けられている。突起部206は、搬送フレーム114に対して側方へ延設された取付具207の上面に、上方に突出するように設けられている。
【0044】
このような構成により、通常の刈取作業時においては、解除レバー103の係止具204に開口されている係止孔205が、搬送フレーム114の取付具207の上面に突設されている突起部206に係止されて、前述のように搬送フレーム114の上側に解除レバー103の把手103aが位置した状態となる。
そして、合流部Xに穀稈が詰まった場合、解除レバー103の把手103aを握り、解除レバー103を押し上げる等して、係止孔205と突起部206の係止状態を解除することにより、前述のように解除レバー103を平面視反時計回りに回動させる。解除レバー103の係止孔205を突起部206に係止させることにより、解除レバー103を搬送フレーム114に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】コンバインの正面図。
【図3】刈取装置の駆動力伝達を示すスケルトン図。
【図4】上部搬送機構と下部搬送機構を示す平面図。
【図5】左下部搬送装置の平面図。
【図6】解除レバーおよびテンションアームを回動させた状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0046】
4 脱穀部
8 刈取装置
30 右下部搬送装置
31 左下部搬送装置
38L 左下部搬送駆動軸
44L 左駆動スプロケット
100 コンバイン
102 テンションアーム
103 解除レバー
104 可動ローラ
107 回動軸
112 ローラ
208 ワンウェイクラッチ
X 合流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数条の穀稈を分草、引き起こし後に刈り取って、下部搬送機構、上部搬送機構を介して脱穀部へ搬送するコンバインの刈取装置において、
下部搬送装置の搬送チェンを駆動するスプロケットと該スプロケットを駆動する駆動軸との間に、ワンウェイクラッチを介装したことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
下部搬送装置の合流部における該下部搬送装置の間隔を拡大する詰まり解除手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
左下部搬送装置の合流部に詰まり解除手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン刈取装置。
【請求項4】
左下部搬送装置の搬送チェンを駆動するスプロケットと該スプロケットを駆動する駆動軸との間に、前記ワンウェイクラッチを介装したことを特徴とする請求項3記載のコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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