説明

コンバインの引起し装置

【課題】着脱が容易にできて、使用変更にも対応できる引起しギヤケースを有するコンバインの引起し装置を提供する。
【解決手段】走行機体1前部に設けた刈取装置3の前部に引起し装置13を備え、引き起こすためのタイン21a・21bを駆動するための引起しギヤケース71a・71bを引起しケース22a・22b上部後面に配置するコンバインの引起し装置において、該引起しギヤケース71a・71bを前後二つ割のケース71a(b)F・71a(b)Bに構成し、この前ケース71aF・72bFにタイン駆動軸46a・46bを支持し、後ケースに刈取入力軸41から伝動される動力を伝える伝動軸44a・44bを支持し、該タイン駆動軸46a・46bと伝動軸44a・44bにそれぞれベベルギヤを固定して噛合させ、動力伝達可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの引起し装置の技術、より詳しくはタイン駆動軸及び伝達軸を支持するための引起しギヤケースを分割して容易に着脱できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの走行機体には、その前部に設けられた刈取前処理装置に、走行機体の進行方向と交差する幅方向(横幅方向)に沿って並列配置された複数個の横回し型穀稈引起しケースを有する穀稈引起し装置が備えられている。そして、各穀稈引起しケースには、その作用部の下部から横一側上部にかけての外周側部を外向きの突出姿勢で回行する引起しタインが備えられている。また、前記穀稈引起し装置は、前記走行機体の進行方向と交差する幅方向に沿って適宜間隔で配置された複数の穀稈引起しケースと、前記穀稈引起しケースに駆動力を伝える引起し駆動パイプと、前記穀稈引起しケースと前記引起し駆動パイプとを連結するための引起しギヤケースとを有していた。
【特許文献1】特開2003−079220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、図8に示すように、前記引起しギヤケース171は、前記穀稈引起しケース122のタイン駆動軸146と、前記引起し駆動パイプ139の引起し伝動軸144を前記タイン駆動軸146に連結される一対のベベルギヤ183・182とを内設し、前記タイン駆動軸146及びベベルギヤ82・83等を前記引起しギヤケース171を仕組んだ状態で、当該引起しギヤケース171を前記引起し駆動パイプ139に組み付けた後、引起しケース172に固定した軸受ボス173に前記引起しギヤケース171を組みつけていたので、前記ベベルギヤ182・183のメンテナンスや交換等の作業を行うには、引起しギヤケース171と引起し駆動パイプ139を取り外す必要があり、面倒な作業が必要であった。
また、前記引起しギヤケース171は、軸受ボス173に対してインロー嵌合としていたために、わずかな誤差で組み付けに支障をきたし組み難かった。さらに雨天作業時などでは嵌合の隙間から水分がギヤケース内に侵入してくる恐れがあった。また、引起しギヤケース171は側面視「く」字状に構成され、その角度変更はできないため、使用変更が難しく、ベベルギヤも変更することができなかった。
そこで本発明は斯かる課題に鑑み、着脱が容易にできて、使用変更にも対応できる引起しギヤケースを有するコンバインの引起し装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、走行機体前部に設けた刈取装置の前部に引起し装置を備え、引き起こすためのタインを駆動するための引起しギヤケースを引起しケース上部後面に配置するコンバインの引起し装置において、該引起しギヤケースを前後二つ割のケースに構成し、この前ケースにタイン駆動軸を支持し、後ケースに刈取入力軸から伝動される動力を伝える伝動軸を支持し、該タイン駆動軸と伝動軸にそれぞれベベルギヤを固定して噛合させ、動力伝達可能に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記引起しギヤケースの割面はタイン駆動軸に対して直角とし、前記タイン駆動軸に固設したベベルギヤと伝動軸に固設したべベルギヤの噛合位置に配置したものである。
【0007】
請求項3においては、前記前ケースと後ケースの周囲に複数の孔を設け、締結具により後方より締結する構成としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記前ケースに、ベベルギヤを固定したタイン駆動軸を軸受を介して回転自在に支持して引起し側ユニットとし、該引起し側ユニットを引起しケースに着脱可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、引起しの角度が異なる刈取装置に対して後ケースを交換するだけで対応でき、汎用性を拡大できる。また、前ケースと後ケースにそれぞれ支持する軸を簡単に組み立てることができる。
【0011】
請求項2においては、前ケースと後ケースを組み立てる時に多少の誤差はベベルギヤの噛合部で吸収することができ、吸収するための長孔等を設ける必要がない。また、両ベベルギヤの交換やメンテナンス等が容易にできる。
【0012】
請求項3においては、前ケースを引起しケースに固定した後に後ケースを後側から容易に取り付けることができる。引起しギヤケースを一体に形成した場合に比して、組み立てが容易となる。
【0013】
請求項4においては、ユニット化することにより製造段階でユニットごとに製造したあとで、ユニットを組み合わせることが可能となるため、作業の効率化が図れる。また、ユニット化により不安定だった軸の傾き等が、ケース内に一体で納まるため組み立て時に安定する。さらに、ユニット脱着が、従来のインロー嵌合に比べ容易になり、水などの液体の浸入を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した平面図、図2はコンバインの側面図、図3は左穀稈引起しケースの背面図である。図4は左穀稈引起しケースの斜視図、図5は左引起しギヤケースの断面側面図、図6は左引起しギヤケースの側面図、図7は左引起しギヤケースの背面図、図8は従来の引起しギヤケースの断面側面図である。
【0015】
まず、図1及び図2を用いて本発明にかかるコンバインの全体的な構成について説明する。
本実施形態における二条刈り用のコンバインは、左右一対の走行クローラ2、2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置3が昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯溜する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。穀粒タンク7は、走行機体1の後部に設けられた縦軸(実施形態では排出オーガ8の縦オーガ筒9、図1及び図2参照)回りに水平回動可能に構成されている。刈取装置3と穀粒タンク7との間には、操向レバーや運転座席等を有する運転部10が設けられている。運転部10の下方には、動力源としてのエンジン11が配置されている。刈取装置3にて刈り取られた刈取穀稈はフィードチェーン6に受け継ぎ搬送され、脱穀装置5にて脱穀処理される。
【0016】
脱穀装置5における扱室には扱胴17を収納し、その下方にはチャフシーブ等による揺動選別を行うための揺動選別機構(図示せず)と、唐箕ファンによる風選別を行うための風選別機構(図示せず)が配置されている。これら両選別機構にて選別されて一番受け樋(図示せず)に集められた穀粒は、一番コンベヤ及び揚穀コンベヤ(図示せず)を介して穀粒タンク7に集積される。穀粒タンク7の一番物は排出オーガを介して機外に搬出される。
【0017】
なお、フィードチェーン6の後端から排稈チェーン18(図1参照)に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は排稈カッタ(図示せず)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0018】
刈取装置3は、脱穀装置5の前方に位置する刈取架台(図示せず)に対して上下回動可能に構成されている。
前記刈取装置3の前部には二条分の穀稈引起し装置13が傾斜して立設配置されている。前記穀稈引起し装置13の下部には機体前方に向けて刈取フレーム38が延設され、該刈取フレーム38の先端には分草体15が設けられている。
【0019】
更に刈取フレーム38の下面には刈刃12が配設されていて、分草体15で分草された穀稈を穀稈引起し装置13で引き起こした後、刈刃12により穀稈の株元が切断される。刈り取られた穀稈は、刈取フレームに配置された図示せぬスターホイル及び下部搬送チェーンを経てフィードチェーン6に引き継がれ、脱穀装置5に供給され該脱穀部にて脱穀選別される。
【0020】
次に、図3乃至図7を参照しながら、穀稈引起し装置13を構成する穀稈引起しケース22群の配置等の概略について説明する。
【0021】
本実施形態における二条分の穀稈引起しケース22は、刈取装置3の前部に対して走行機体1の横幅方向に沿って適宜間隔で、且つそれぞれが後方斜め上向きの傾斜状に配置されている。各穀稈引起しケース22には、その作用側の下部から横一側上部にかけての外周側部を外向きの突出姿勢で回行して未刈穀稈を起立させる引起しタイン21が備えられている。すなわち、本実施形態の各穀稈引起しケース22はいわゆる横回し型のものである。なお、説明の便宜上、図3乃至図7において各穀稈引起しケース22には、走行機体1の進行方向右側のものから順に符号a、bを添えている。
【0022】
前記右穀稈引起しケース22aと左穀稈引起しケース22bとは、それぞれの引起しタイン21a、21bが突出する作用側の横一側部同士を相対向させている。
換言すると、右穀稈引起しケース22aと左穀稈引起しケース22bとの配置関係は、引起しタイン21a、21bの突出する向きが左右対称上となるように設定されている。
【0023】
ここで、各穀稈引起しケース22の作用側とは、該穀稈引起しケース22の外周側部のうち引起しタイン21が外向きの突出状態で回行する領域のことをいう。右穀稈引起しケース22aの作用側は、その下部寄りの右側端部から下底部を経て左側上部までの領域である。左穀稈引起しケース22bの作用側は、その下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域である。
【0024】
右穀稈引起しケース22aと左穀稈引起しケース22bとは、走行機体1の横幅方向に沿って並列上に並べて配置されている。正面視において右穀稈引起しケース22aと左穀稈引起しケース22bとの間は、互いの引起しタイン21a、21bが干渉しない程度の間隔が空いている。この間隔は圃場における未刈穀稈の条間隔に対応して、穀稈引き起こしの際に右及び左穀稈引起しケース22a、22bとが一対で機能しやすい(二条分の未刈穀稈を引き起こしやすい)幅寸法となっている。
【0025】
次に、図3、図4を参照しながら、各穀稈引起しケースの構成について説明する。各穀稈引起しケース22は右穀稈引起しケース22aと左穀稈引起しケース22bとは左右対称状であるものの、基本的に同じ構成である。そこで、左穀稈引起しケース22bを例として、その詳細構造を以下に説明する。
【0026】
左穀稈引起しケース22bは、周囲に囲い壁62を一体形成してなる合成樹脂板製の前蓋61と、該前蓋61の裏面側に装着された金属板製の裏板63とにより、両者を前後合わせて薄箱状に上下に長く形成されている。前蓋61の囲い壁62のうち下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域には、引起しタイン21bを外向きに突出させるためのタイン溝穴64が開口している(図4に一部のみ示す)。この囲い壁62におけるタイン溝穴64の箇所が左穀稈引起しケース22bの作用側を構成することになる。
【0027】
左穀稈引起しケース22bの内部のうち上部側に設けられた引起しスプロケット47及びテンションスプロケット65と、下部側に設けられた従動スプロケット66とには、無端チェーン67が巻き掛けられている。無端チェーン67には、複数個の引起しタイン21bが適宜間隔で起伏揺動可能に取り付けられている。右及び左の引起し駆動パイプ39a、39b内の右及び左の引起し伝動軸44a、44bから右及び左のタイン駆動軸46a、46bに伝達された動力にて回転する引起しスプロケット47により、無端チェーン67に取り付けられた複数個の引起しタイン21bは、正面視で時計回りに回行するように構成されている。
【0028】
左穀稈引起しケース22bの内部のうち従動スプロケットの上方箇所には、引起しタイン21bが左穀稈引起しケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達したとき(非作用側から作用側に移行するとき)に、該引起しタイン21bの回動其端部に当接する突出案内部材68が設けられている。左穀稈引起しケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達した引起しタイン21bの回動其端部が従動スプロケット66に形成された突出案内部材68に当接することにより枢支状態から基部が支えられた状態となり、該引起しタイン21bは囲い壁62に形成されたタイン溝穴64の始端箇所から外向きに突出する姿勢に切り替わるように構成されている。
【0029】
左穀稈引起しケース22bの内部のうち作用側寄りの箇所には、引起しタイン21bを外向きの突出状態に保持するためのタインガイド69が、無端チェーン67の長手方向に沿って延びるように設けられている。従って、左穀稈引起しケース22bにおける作用側の箇所(下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域)では、各引起しタイン21bがタイン溝穴64に沿って外向きの突出状態で回行するように構成されている。
【0030】
また、左穀稈引起しケース22bにおける非作用側の箇所(右側上部から上部を経て下部寄りの左側端部までの領域)では、引起しタイン21bの先端部を囲い壁62の内壁などに当接させる等して、該引起しタイン21bの先端部を左穀稈引起しケース22b内に倒れた姿勢(無端チェーン67に寄り添った姿勢)で収納するように構成されている。
【0031】
なお、テンションスプロケット65は、裏板63に対して、無端チェーン67が緊張・弛緩する方向に移動可能となるように設けられている。
【0032】
次に、図5乃至図7を参照して、本実施形態の穀稈引起し装置13の二条分の各引起しタイン21a、21bの駆動構造を説明する。
【0033】
図5に示すように、左引起しギヤケース71bは、左穀稈引起しケース22b側の前ケース71bFと左引起し駆動パイプ側の後ケース71bBとに分割して構成されている。該前ケース71bF及び後ケース71bBはその外周側にそれぞれフランジ部72bF、72bBを形成しており、合せ面同士が複数本のボルトによって着脱可能に締結されている。
【0034】
前記前ケース71bFには、左穀稈引起しケース22bのタイン駆動軸46bに被嵌させる従動ベベルギヤ83が内設されている。該従動ベベルギヤ83にはタイン駆動軸46bがキーなどにより相対回転不能に嵌設されている。また前記タイン駆動軸46bに軸受74が嵌設されており、該軸受74は前ケース71bFとタイン駆動軸46bの間に固定されているために、タイン駆動軸46bは前ケース71bF内で回動可能に軸支されている。以上のように前ケース71bF、従動ベベルギヤ83、タイン駆動軸46b、軸受74までがユニットとして一体に組まれている。
【0035】
前記タイン駆動軸46bは一端には前述した従動ベベルギヤ83が嵌設されており、他端は前記左穀稈引起しケース22b内に嵌入されており、該左穀稈引起しケース22b内で従動スプロケット66がキーなどにより相対回転不能に嵌設されている。
前記前ケース71bFの穀稈引起しケース22b側には前記タイン駆動軸46bに対して左右方向に直交方向に配置したボルト孔75がタイン駆動軸46bの上下両側の二箇所形成されている。一方、穀稈引起しケース22bの後面にはブラケット90が固設され、該ブラケット90は平面視「コ」の字状に形成されて、前記穀稈引起しケース22bに固設する面となる底部91と該底部に対して垂直後方に突出した側部92・92から構成されている。該側部92は前記前ケース71bFを固定する位置に合わせて設けられている。図6に示すように、該側部92には前記前ケース71bFに設けられたボルト孔75に対応した孔93が上下二箇所に設けられており、前記前ケース71bFのボルト孔75及びブラケット90の孔93の位置を合わせて、ボルト等を貫通させて締結することにより、ブラケット90と前ケース71bFが結合される。該ブラケット90を前記前ケース71bFと結合させた状態で、穀稈引起しケース22bにボルトなどにより固設することにより、穀稈引起しケース22bと前ケース71bFが固定されることとなる。
【0036】
一方後ケース71bBの後下部には、左引起し駆動パイプ39の上端を嵌設しており、該左引起し駆動パイプ39には、刈取入力パイプ35(図1参照)に内設された刈取入力軸41(図1参照)より動力が伝達される左引起し伝動軸44bが内設されている。前記引起し伝動軸44bの先端に被嵌させた駆動ベベルギヤ82は前記後ケース71bBに内設されている。前記左引起し伝動軸44bには該軸受76が嵌設されており、該軸受76によって伝動軸44bは後ケース71bBに回転自在に支持されている。これにより、後ケース71bB、駆動ベベルギヤ82、軸受76がユニットとして一体に組まれている。
【0037】
このように構成することにより、前ケース71aF・71bFを穀稈引起しケース22a、22bに固定した後に後ケース71aB・71bBを後側から容易に取り付けることができる。また、引起しギヤケースを一体に形成した場合に比して、組み立てが容易となる。
【0038】
次に、右引起し駆動パイプ39aと右引起しギヤケース71aと、右穀稈引起しケース22aとの連結構造について説明する。
【0039】
左引起しギヤケース71bと略同様に、右引起しギヤケース71aは、右穀稈引起しケース22a側の前ケース71aFと右引起し駆動パイプ側の後ケース71aBとで構成されている。該前ケース71bF及び後ケース71bBはその一端側にそれぞれフランジ部72bF、72bBを形成しており、合せ面同士が複数本のボルトによって着脱可能に締結されている。
【0040】
前記前ケース71aFは左穀稈引起しケース22aの前方に配置した前ケース71aFと同じ構造となっている。すなわち、前ケース71aFには、右穀稈引起しケース22aのタイン駆動軸46aに被嵌させる駆動ベベルギヤ82が内設されている。該駆動ベベルギヤ82には引起し伝動軸44aがキーなどにより相対回転不能に嵌設されている。また前記引起し伝動軸44aに軸受74が嵌設されており、該軸受74によって引起し伝動軸44aは前ケース71aF内で軸支されている。以上のように前ケース71aF、駆動ベベルギヤ82、引起し伝動軸44a、軸受74までがユニットとして一体に組まれている。
【0041】
前記後ケースは右引起し駆動パイプ39aの突入する角度が左引起し駆動パイプ39bへ突入する角度と異なるためにその角度に合わせた傾斜をつけた構成となっている。すなわち、右引起し駆動パイプ39aの突入する角度に合わせた軸孔を設けており、後ケース72aBは右引起し駆動パイプ39aの角度と略平行に形成されている。一方、フランジ部72aF、72aBは、合せ面同士が複数本のボルトによって着脱可能になるように形成されている。
【0042】
前記穀稈引起しケース22と引起し駆動パイプ39を連結する際には、まずユニットとしてあらかじめ組み立てておいた前ケース71aF、71bFを前記穀稈引起しケース22に連結する。一方、引起し駆動パイプ39側にはあらかじめ後ケース71aB、71bBが連結されている。よって、前ケース71aF、71bF及び後ケース71aB、71bBのフランジ部72aF、72aB及び72bF、72bBの合せ面同士を合わせて複数本のボルトによって固設することにより、簡易に連結することが可能となるのである。
また、該引起しギヤケース71内の両ベベルギヤ82、83に不具合がおきた場合には、フランジ部72aF、72aB及び72bF、72bBのボルトを外し、それぞれのユニットに分解することにより簡単にメンテナンスをすることが可能となる。また、従来のインロー嵌合に比べ取り付けが容易となり、接合部からの水分の浸入も防ぐことができる。
【0043】
また、前記引起しギヤケース71のフランジ部72aF、72aB及び72bF、72bBの合せ面はタイン駆動軸46に対して直角として構成しており、前記タイン駆動軸46に固設した従動ベベルギヤ83と引起し伝動軸44に固設した駆動ベベルギヤ82の噛合位置に配置している。
【0044】
以上のように、走行機体1前部に設けた刈取装置3の前部に引起し装置13を備え、引き起こすためのタイン21a・21bを駆動するための引起しギヤケース71a・71bを引起しケース22a・22b上部後面に配置するコンバインの引起し装置において、該引起しギヤケース71a・71bを前後二つ割のケース71a(b)F・71a(b)Bに構成し、この前ケース71aF・72bFにタイン駆動軸46a・46bを支持し、後ケースに刈取入力軸41から伝動される動力を伝える伝動軸44a・44bを支持し、該タイン駆動軸46a・46bと伝動軸44a・44bにそれぞれベベルギヤを固定して噛合させ、動力伝達可能に構成した。
このように構成することにより、引起しの角度が異なる刈取装置に対して後ケース72Bを交換するだけで対応でき、汎用性を拡大できる。また、前ケース71aF、71bFと後ケース71aB、71bBにそれぞれ支持する軸を簡単に組み立てることができる。
【0045】
また、前記引起しギヤケース71a・71bの割面はタイン駆動軸に対して直角とし、前記タイン駆動軸46a・46bに固設したベベルギヤ83と伝動軸44に固設したべベルギヤ82の噛合位置に配置した。
このように構成することにより、前ケース71aF・71bFと後ケース71aB・71bBを組み立てる時に多少の誤差は両ベベルギヤ82・83の噛合部で吸収することができ、吸収するための長孔等を設ける必要がない。また、両ベベルギヤ82・83の交換やメンテナンス等が容易にできる。
【0046】
また、前記前ケース71aF・71bFと後ケース71aB・71bBの周囲に複数の孔75・93を設け、締結具により後方より締結する構成とした。
このように構成することにより、前ケース71aF・71bFを穀稈引起しケース22a、22bに固定した後に後ケース71aB・71bBを後側から容易に取り付けることができる。また、引起しギヤケースを一体に形成した場合に比して、組み立てが容易となる。
【0047】
また、前記前ケース71aF・71bFに、ベベルギヤ83を固定したタイン駆動軸46a・46bを、軸受74を介して回転自在に支持して引起し側ユニットとし、該引起し側ユニットを引起しケース22a・22bに着脱可能に構成した。
このように構成することにより、ユニット化することにより製造段階でユニットごとに製造した後で、ユニットを組み合わせることが可能となるため、作業の効率化が図れる。また、ユニット化により不安定だった軸の傾きなどが、ケース内で一体に納まるため組み立て時に安定する。ユニット脱着が、従来のインロー嵌合に比べ容易になる。また、水などの液体の侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した平面図。
【図2】コンバインの側面図。
【図3】左穀稈引起しケースの背面図。
【図4】左穀稈引起しケースの斜視図。
【図5】左引起しギヤケースの断面側面図。
【図6】左引起しギヤケースの側面図。
【図7】左引起しギヤケースの背面図。
【図8】従来の引起しギヤケースの断面側面図。
【符号の説明】
【0049】
1 走行機体
3 刈取装置
21 引起しタイン
22 穀稈引起しケース
44a、44b 引起し伝動軸
46a、46b タイン駆動軸
71a、71b 引起しギヤケース
71aF、71bF 前ケース
71aB、71aB 後ケース
82 駆動ベベルギヤ
83 従動ベベルギヤ
90 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体前部に設けた刈取装置の前部に引起し装置を備え、引き起こすためのタインを駆動するための引起しギヤケースを引起しケース上部後面に配置するコンバインの引起し装置において、
該引起しギヤケースを前後二つ割のケースに構成し、この前ケースにタイン駆動軸を支持し、後ケースに刈取入力軸から伝動される動力を伝える伝動軸を支持し、該タイン駆動軸と伝動軸にそれぞれベベルギヤを固定して噛合させ、動力伝達可能に構成したことを特徴とするコンバインの引起し装置。
【請求項2】
前記引起しギヤケースの割面はタイン駆動軸に対して直角とし、前記タイン駆動軸に固設したベベルギヤと伝動軸に固設したべベルギヤの噛合位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの引起し装置。
【請求項3】
前記前ケースと後ケースの周囲に複数の孔を設け、締結具により後方より締結する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの引起し装置。
【請求項4】
前記前ケースに、ベベルギヤを固定したタイン駆動軸を軸受を介して回転自在に支持して引起し側ユニットとし、該引起し側ユニットを引起しケースに着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの引起し装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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