説明

コンバインの脱穀装置における穀稈搬送挾持供給装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はコンバインの脱穀装置に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来公知の実開平1−167839号公報に記載のように、コンバインの脱穀装置に設ける穀稈挾持搬送供給装置を、その後側を支点として横外側方へ回動自在に構成し、脱穀装置横側部に位置する穀稈挾持搬送供給装置を、横外側方へ回動させることにより、脱穀装置の横側部を開放し、内部のメンテナンスを容易にしようとするものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来の従来装置にあつては、脱穀装置に設けられている穀稈挾持搬送供給装置を、その後側部を支点として横外側方へ回動する構成であるため、脱穀装置の前側部分は大きく開くが、後側は殆ど開かない状態である。従って、これによって生まれるメンテナンス空間も後方ほど小さくなってしまい、脱穀装置内部に設ける選別棚後部のメンテナンスが困難なものとなっていた。
【0004】そこで、この発明は、脱穀装置における穀稈挾持搬送供給装置の前側部を支点として横外側方に回動する構成として、脱穀装置の後部側方を広く開放して選別棚の後部のメンテナンスを容易化すると共に、この穀稈挾持搬送供給装置の脱穀装置への着脱を容易化しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、前述の課題を解決するために、次の様な技術的手段を講ずる。すなわち、扱胴9及び選別棚12を具備する脱穀装置3の側部に、穀稈を供給搬送する穀稈挾持搬送供給装置14を設け、この穀稈挾持搬送供給装置14は縦ピン22回りに回動して脱穀装置3に対して横外側方へ回動可能に構成したコンバインの脱穀装置において、脱穀装置3側に設けられている支持フレーム23側と穀稈挾持搬送供給装置14を取り付けている取付フレーム21との間には、少なくとも縦ピン22と該縦ピン22に嵌合する嵌合手段からなる回動支持部を構成し、該回動支持部において、前記縦ピン22を前記嵌合手段に対して着脱することにより前記取付フレーム21を着脱可能に構成し、さらに、縦ピン22を嵌合手段に対して回動することにより取付フレーム21を横外側方に回動可能に構成し、前記脱穀装置3側に設けられている支持フレーム23には取付フレーム21を下方から支持する案内ガイド26設けたことをことを特徴とするコンバインの脱穀装置における穀稈搬送挾持供給装置とする。
【0006】
【発明の作用】脱穀装置3側に設けられている支持フレーム23側には、縦ピン22に嵌合する嵌合手段からなる回動支持部が構成されている。この回動支持部において穀稈挾持搬送供給装置14の取り付けられている取付フレーム21には前記縦ピン22が設けられている。即ち、縦ピン22が嵌合手段に対して回動すると、取付フレーム21とともに穀稈挾持搬送供給装置14が横外側方に回動する。一方、縦ピン22を嵌合手段から離脱させると、取付フレーム21とともに穀稈挾持搬送供給装置14は外れる。このように、脱穀装置3の保守管理を実行するときには、取付フレーム21を横外側方に回動させたり外したりする。
【0007】取付フレーム21を横外側方に回動させると、脱穀装置3の横側方が開放される。さらに、前記回動支点において取付フレーム21を外すと、脱穀装置3の横側方の全面が開放される。取付フレーム21を横外側方に回動させる時においては、該取付フレーム21は下方から案内ガイド26で支持されているので、この案内ガイド26にて案内されていく。また、取付フレーム21を脱穀装置3側に回動させる時においても、取付フレーム21は下方から案内ガイド26で支持され、案内ガイド26にて所定の取付位置へと案内されていく。
【0008】
【実施例】図面に示すこの発明の一実施例について、具体的に説明する。無限軌道帯式の左右の走行装置1の上方に機台2を設け、この機台2の上部には、脱穀装置3及び穀粒貯留装置4を並列載置し、更に、操縦部5,原動機6等を設けて構成する。脱穀装置3の前方には、刈取装置7を昇降自在に設けている。
【0009】脱穀装置3には、その前側上部に脱穀室8を構成し、脱穀室8内には扱胴9を設け、扱胴9の下部外周に沿って扱網10を設け、脱穀室8の前側には、穀稈供給口11を構成している。そして、脱穀室8の下方には、揺動式の選別棚12,唐箕(図示省略),一番ラセン(図示省略),二番ラセン(図示省略)を設けている。
【0010】しかして、脱穀室8の進行方向に沿った横側部には、穀稈供給搬送通路13を形成し、この穀稈供給搬送通路13に沿って、脱穀室8に穀稈を供給する穀稈挾持搬送供給装置14を設けている。この穀稈挾持搬送供給装置14は、穀稈を挾持する挟持杆15及び供給搬送チェン16により構成されていて、脱穀室8にはその上方を覆う上部カバー17が上下回動自在に取り付けられていて、この挟持杆15は上部カバー17の端部に取り付けられていて、上部カバー17を上方に動させると、挟持杆15が一体的に上方に動する構成である。供給搬送チェン16は内方の搬送チェン案内レール18に沿って設けられていて、この搬送チェン案内レール18の前端部及び後端部には、前側ローラ19,後側スプロケット20を取り付け、この前側ローラ19及び後側スプロケット20の間に、前記供給搬送チェン16を巻き掻ける構成である。
【0011】しかして、取付フレーム21を、横方向の取付横フレーム部21a及び縦方向の取付縦フレーム21bで逆L字形状に構成し、前記搬送チェン案内レール18の前側には、取付フレーム21における横方向の取付横フレーム部21aを固定している。この取付縦フレーム21bの上部及び下部には、それぞれ縦ピン22を固定する。前記機台2には、支持フレーム23の縦支持フレーム部23aの下部を固定し、この縦支持フレーム部23aに設けた縦筒24に前記取付フレーム21の縦ピン22を上方から着脱自在に嵌合支持し、取付フレーム21を回転のみ自在に嵌合し、前記搬送チェン案内レール18の取り付けられている取付フレーム21を、支持フレーム23に回動自在に取り付ける。そして、この縦支持フレーム部23aの縦筒24を取付フレーム21の縦ピン22に回動自在に支持した状態で、取付フレーム21を内側に回動し支持フレーム23の端部に設けられていて、且つ、横外側方向に開口している上下方向抜止ガイド25に嵌合して、この上下方向抜止ガイド25に取付フレーム21が嵌合した状態では、図3に示すように、上下方向のゆとりがH1と短くなつていて、また、取付フレーム21側の縦筒24の支持フレーム23側の縦ピン22に嵌合している長さがH2と長く、機体が振動しても支持フレーム23に対する取付フレーム21の支持が外れない構成とし、また、取付フレーム21を横外側方に回動して、上下方向抜止ガイド25から取外し、取付フレーム21をH2以上持ち上げることにより、取付フレーム21の取外しができ、着脱の容易化を図っている。
【0012】なお、前記搬送チェン案内レール18の取付フレーム21と機体側の支持フレーム23との支持関係は、搬送チェン案内レール18側の取付縦フレーム21bが支持フレーム23の縦筒24を中心にして回動自在で、且つ、支持フレーム23の縦筒24に対して取付縦フレーム21bの縦ピン22を長手方向に沿って移動させることとにより、着脱できる構成であればよく、その取付構造は任意である。
【0013】また、上下方向抜止ガイド25の下端部には、案内ガイド26が設けられていて、取付フレーム21の上下方向抜止ガイド25への嵌合を容易化するものである。なお、この案内ガイド26を図4に示すように、調節ボルト27及びボルト28で上下調節できる構成としておくと、部品のバラツキにも対応できて、取付フレーム21の上下方向抜止ガイド25への嵌合が容易となる。
【0014】前記支持フレーム23の縦支持フレーム部23aの上部は、後側に屈曲させて前記搬送チェン案内レール18の上側部分8と略平行に位置する横支持フレーム部23bに形成し、この横支持フレーム部23bの後端は、前記脱穀室8の前側部材に固定する。前記横支持フレーム部23bの中間部には、前後斜方向の補給フレーム29の前端を固定し、補給フレーム29の後端は前記脱穀室8の前側部分に固定する。前記補給フレーム29は平面視で、後側に至るに従い脱穀装置3の左右中央に至るように傾斜して設ける。前記供給搬送チェン16の前端部上方には案内杆30が設けられており、前記穀稈供給口11の前側には、穀稈供給口11に穀稈を案内する案内板31が設けられている。前記搬送チェン案内レール18にはテンションスプロケット32が設けられていて、供給搬送チェン16を緊張している。
【0015】しかして、前記搬送チェン案内レール18には、脱穀室8の扱網10の側部から、脱穀室8の排塵部32,後方の風選室33及びこれらより低位置の前記選別棚12の側部までを閉塞する側壁34と、前記供給搬送チェン16及び伝動機構を被覆する側部カバー35を着脱自在に取り付けている。これにより、搬送チェン案内レール18を外側方へ回動させて、側壁34及び側部カバー35を回動させると、脱穀室8の扱網10の横側部から、脱穀室8の排塵部32,後方の風選室33及びこれらより低位置の前記選別棚12の横側部までを開放できて、メンテナンスが容易となる。
【0016】また、脱穀装置3側の固定部の適宜位置に、係合部36をを設け、前記搬送チェン案内レール18側には係合部36に係合する案内溝のある係合体37を設けている。搬送チェン案内レール18の後端部側には、ロック装置38を設けている。また、図5に示すように、前記係合体37には、ステー40をボルトにより固定し、このステー40に後側スプロケット20の取付軸42を軸装している。そして、脱穀装置3の後部上方位置には、伝動ケース43を取り付ける。この伝動ケース43は、後部外側に設ける入力プーリ44から駆動力を入力し、前部外側に設ける出力軸(図示省略)により出力ギヤ45を駆動するものである。そして、前記搬送チェン案内レール18を脱穀装置3にロック装置38によって固定する際に、出力ギヤ45の外周部に、搬送チェン案内レール18の後端に設ける後側スプロケット20の内周部が嵌合する。これによって、供給搬送チェン16が駆動される構成である。
【0017】次に、作用について説明する。刈取装置7によって刈り取られた穀稈は、穀稈挾持搬送供給装置14により穀稈供給口11より脱穀室8に供給され、回転している扱胴9により脱穀され、脱穀物は扱網10より下方へ漏下して、選別棚12及び選別風により選別され、一番穀物は一番ラセンによって穀粒貯留装置4に投入される。また、穀稈挾持搬送供給装置14により搬送されて脱穀室8から出た穀稈は、排藁搬送装置46に引き継がれ、後方の排藁処理部に至り処理される。
【0018】しかして、扱胴9の上方を覆う上部カバー17を上方に回動させると、挟持杆15が上方に回動し、この状態で搬送チェン案内レール18のロック装置38を操作し係合を離脱させると、前記搬送チェン案内レール18を縦ピン22を中心にして横外側方へ回動させることができる。前記搬送チェン案内レール18には、側壁34と供給搬送チェン16の側部カバー35とを取り付けているので、搬送チェン案内レール18を横外側方へ回動させることにより、側部カバー35及び側壁34を横外側へ回動させ、脱穀室8の扱網10側部から、脱穀室8の排塵部32,後方の風選室33及びこれらより低位置の前記選別棚12の横側部までを開放し、シ−ブの角度調節のメンテナンスまでをも容易に行うことができる。
【0019】
【発明の効果】取付フレーム21を横外側方に回動し、取付フレーム21に取り付けられている穀稈挾持搬送供給装置14を横外側方に移動させると、脱穀装置3の横側方が開放されて、脱穀装置3の内部の点検やメンテナンスが容易に実行できる。また、取付フレーム21を外すと、脱穀装置3の側方が完全に開放され、脱穀装置3の内部の点検やメンテナンスがより容易に実行できる。また、取付フレーム21を横外側方に回動させる際には、取付フレーム21は下方から案内ガイド26にて支持されているので、スムーズに案内されていく。さらに、取付フレーム21を脱穀装置3に装着する際には、取付フレーム21は下方から案内ガイド26によって支持されているので、所定の取付位置へと案内されてき、脱穀装置3に対する取付フレーム21の取付が容易に実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例における要部の斜視図である。
【図2】この発明の実施例における要部の平面図である。
【図3】この発明の実施例における要部の拡大斜視図である。
【図4】この発明の実施例における要部の斜視図である。
【図5】この発明の実施例における要部の切断平面図である。
【図6】この発明の実施例における一部の側面図である。
【図7】この発明の実施例における一部の側面図である。
【図8】この発明の実施例におけるコンバインの全体平面図である。
【図9】この発明の実施例におけるコンバインの全体側面図である。
【符号の説明】
1 走行装置
2 機台
3 脱穀装置
4 穀粒貯留装置
5 操縦部
6 原動機
7 刈取装置
8 脱穀室
9 扱胴
10 扱網
11 穀稈供給口
12 選別棚
13 穀稈供給搬送通路
14 穀稈挾持搬送供給装置
15 挟持杆
16 供給搬送チェン
17 上部カバー
18 搬送チェン案内レール
19 前側ローラ
20 後側スプロケット
21 取付フレーム
21a 取付横フレーム部
21b 取付縦フレーム部
22 縦ピン
23 支持クレーム
23a 縦支持フレーム部
23b 横支持フレーム部
24 縦筒
25 上下方向抜止ガイド
26 案内ガイド
27 調節ボルト
28 ボルト
29 補強フレーム
30 案内杆
31 案内板
32 排塵部
33 風選室
34 側壁
35 側部カバー
36 係合部
37 係合体
38 ロック装置
40 ステー
42 取付軸
43 伝動ケース
44 入力プーリ
45 出力ギヤ
46 排藁搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 扱胴9及び選別棚12を具備する脱穀装置3の側部に、穀稈を供給搬送する穀稈挾持搬送供給装置14を設け、この穀稈挾持搬送供給装置14は縦ピン22回りに回動して脱穀装置3に対して横外側方へ回動可能に構成したコンバインの脱穀装置において、脱穀装置3側に設けられている支持フレーム23側と穀稈挾持搬送供給装置14を取り付けている取付フレーム21との間には、少なくとも縦ピン22と該縦ピン22に嵌合する嵌合手段からなる回動支持部を構成し、該回動支持部において、前記縦ピン22を前記嵌合手段に対して着脱することにより前記取付フレーム21を着脱可能に構成し、さらに、縦ピン22を嵌合手段に対して回動することにより取付フレーム21を横外側方に回動可能に構成し、前記脱穀装置3側に設けられている支持フレーム23には取付フレーム21を下方から支持する案内ガイド26を設けたことをことを特徴とするコンバインの脱穀装置における穀稈搬送挾持供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【特許番号】特許第3491290号(P3491290)
【登録日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【発行日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−13912
【出願日】平成5年1月29日(1993.1.29)
【公開番号】特開平6−217630
【公開日】平成6年8月9日(1994.8.9)
【審査請求日】平成12年1月31日(2000.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【参考文献】
【文献】実開 平1−167839(JP,U)