説明

コンバインの補助ステップ

【課題】コンバインの脱穀部の保守管理作業を容易に行えるようにするために、機体フレームの脱穀部側の外側に平行リンクを介して収納自在に設ける補助ステップの固定構造を改良する。
【解決手段】機体フレーム12の脱穀部13側の外側に平行リンクLを介して補助ステップ21を枢設し、該補助ステップ21を脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aと、脱穀部13の外側から突出するステップ姿勢Bとに切り換え可能になし、且つ前記平行リンクLを構成する前後一対のリンク節22f,22rのうち、一方のリンク節22fの基端部後側Rに当接して収納姿勢Aにおける補助ステップ21のステップ姿勢B側への回動を規制すると共に、当該リンク節22fの基端部前側Fに当接してステップ姿勢Bにおける補助ステップ21の収納姿勢A側への回動を規制する姿勢維持手段25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームの脱穀部側の外側に収納自在に設けるコンバインの補助ステップ構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの機体フレームに搭載した脱穀部の上蓋を開放して、刈取作業中における穀稈詰り等の内部点検や掃除を行う場合、作業者が安全且つ安定した姿勢で当該作業が行えるように、機体フレームの脱穀部側の外側に平行リンクを介して補助ステップを枢設し、該補助ステップを脱穀部の外側に沿う収納姿勢と、脱穀部の外側から突出するステップ姿勢とに切り換え可能に構成すると共に、前記ステップ姿勢における補助ステップの後端部をコンバインの後端部と略一致させることによって、当該補助ステップの後端部に作業者が足を掛けて搭乗した状態で、後処理部における穀稈詰り等の内部点検や掃除を安全に行えるようにした構成のものを本出願人自ら出願している(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特願2005−114058号(図3−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、上述した従来のものでは、補助ステップを脱穀部の外側に沿う収納姿勢と、脱穀部の外側から突出するステップ姿勢とに切り換えて固定するために、機体フレーム側に係止バーを突設すると共に、この係止バーに嵌装する断面が略Ω形状のバネ材からなる係止部材を平行リンクを構成する後側のリンク節に設け、平行リンクを介して補助ステップを所望の方向に揺動させながら前記係止バーに係止部材を嵌装することによって、当該補助ステップを収納姿勢またはステップ姿勢で固定できるように構成している。
【0004】
ところが、補助ステップを収納姿勢からステップ姿勢に切り換え固定した状態では、係止バーと係止部材の嵌装ガタが大きく、このステップ姿勢状態にある補助ステップに作業者が足を掛けて搭乗しようとすると不安定で搭乗し難いといった不具合を有していた。また、前記係止バーと係止部材の嵌装ガタが起こらないように両者の嵌め合い寸法を管理した場合は、当該補助ステップの姿勢切り換え時の操作荷重が増加するといった問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、機体フレームの前方に穀稈を刈取る前処理部を備え、該前処理部で刈取った穀稈を脱穀して穀粒を選別する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した後の排稈を機外に排出処理する後処理部とを、機体フレームの左側に前後に連続して配置する一方、機体フレームの右側に運転席と各種操作具を備える操縦部と、該操縦部の後方に脱穀部で選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンクを備えたコンバインにおいて、前記機体フレームの脱穀部側の外側に平行リンクを介して補助ステップを枢設し、該補助ステップを脱穀部の外側に沿う収納姿勢と、脱穀部の外側から突出するステップ姿勢とに切り換え可能になし、且つ前記平行リンクを構成する前後一対のリンク節のうち、一方のリンク節の基端部後側に当接して収納姿勢における補助ステップのステップ姿勢側への回動を規制すると共に、当該リンク節の基端部前側に当接してステップ姿勢における補助ステップの収納姿勢側への回動を規制する姿勢維持手段を設けたことを第1の特徴としている。
【0006】
そして、前側リンク節と、補助ステップに設けたナローガイド用案内レールの支持部材とを当接させて、収納姿勢における補助ステップの収納方向側への回動を規制するように構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、機体フレームの脱穀部側の外側に平行リンクを介して補助ステップを枢設し、該補助ステップを脱穀部の外側に沿う収納姿勢と、脱穀部の外側から突出するステップ姿勢とに切り換え可能になし、且つ前記平行リンクを構成する前後一対のリンク節のうち、一方のリンク節の基端部後側に当接して収納姿勢における補助ステップのステップ姿勢側への回動を規制すると共に、当該リンク節の基端部前側に当接してステップ姿勢における補助ステップの収納姿勢側への回動を規制する姿勢維持手段を設けたことによって、前記補助ステップを所望の収納姿勢またはステップ姿勢に切り換えた状態を確実且つ安定して維持することができ、それによりステップ姿勢状態にある補助ステップに作業者が足を掛けての搭乗が安全に行えるようになる。また、補助ステップを収納姿勢とステップ姿勢とに切り換える際の操作荷重が軽減されて、当該補助ステップのスムーズな姿勢切り換え作業が行えるようになる。
【0008】
そして、請求項2の発明によれば、前側リンク節と、補助ステップに設けたナローガイド用案内レールの支持部材とを当接させて、収納姿勢における補助ステップの収納方向側への回動を規制するように構成したことによって、当該補助ステップの収納姿勢を確実且つ安定して維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン11の平面図、図2は、収納姿勢にある補助ステップ21の平面図、図3は、ステップ姿勢にある補助ステップ21の平面図であって、コンバイン11は、図示しない左右一対のクローラ走行装置に機体フレーム12を支持すると共に、機体フレーム12の前方には穀稈を刈取りながら脱穀部13まで搬送する前処理部14を備えている。
【0010】
脱穀部13は機体フレーム12上の左側前部に設けてあり、この脱穀部13において前処理部14で刈取った穀稈を脱穀して穀粒を選別すると共に、脱穀部13で脱穀した後の 排稈を機外に排出処理する後処理部15とを、前後に連続して機体フレーム12上に配置している。
【0011】
そして、機体フレーム12の右側前部には、オペレータが着座する運転席16と各種操作具を備える操縦部17を配置すると共に、その後方且つ脱穀部13の右側方には、該脱穀部13で選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク18を設けてあり、この穀粒タンク18に貯留した穀粒を穀粒排出オーガ19を介して機外に排出することができるようになっている。
【0012】
また、機体フレーム12の脱穀部13側の外側12aには、平行リンクLを介して補助ステップ21を枢設すると共に、この補助ステップ21を、脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aと、脱穀部13の外側から突出するステップ姿勢Bとに切り換え可能に構成している。
【0013】
そして、平行リンクLを構成する前後一対のリンク節22f,22rの基端部を機体フレーム12の脱穀部13側の外側12aに枢設すると共に、両リンク節22f,22rの先端に作業者が足を掛けて搭乗可能な足載せ部材23を連結することによって、機体の前後方向に揺動可能に補助ステップ21を枢設している。
【0014】
更に詳しくは、前後一対のリンク節22f,22rのうち前側のリンク節22fの基端部を枢設する支持部材24を機体フレーム12に固設してあって、この支持部材24の先端部に、補助ステップ21を脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aと、脱穀部13の外側から突出するステップ姿勢Bとに切り換えて、両姿勢A,B状態を確実且つ安定して維持することができる詳細は後述する姿勢維持手段25を設けている。
【0015】
尚、上述した補助ステップ21の前側には、前処理部14の未刈り地側の未刈り茎稈の機体側への倒れ込み規制するナローガイド20が連結してあり、補助ステップ21を脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aから、脱穀部13の外側に突出するステップ姿勢Bに切り換えることによって、当該補助ステップ21は、ナローガイド20に連係して、脱穀部13における未刈り地側の未刈り茎稈の機体側への倒れ込み規制する後側のナローガイドとして作用するようになっている。
【0016】
次に、姿勢維持手段25の構成について説明する。上述の如く機体フレーム12に固設した支持部材24は、図4に示すように、側面視で機体前方側に開口するコの字状の断面形状を有し、且つ前側のリンク節22fの基端部を枢設するために上下のピン孔24a,24aを備えている。
【0017】
更に、支持部材24の先端側開口端C,Cを面取加工すると共に、この支持部材24先端側の上側開口端Cの近傍にボス26を固設している。そして、ボス26の内径26dと略同径且つ同軸の図示しない孔を支持部材24先端側の上側開口端Cの近傍に設けると共に、これらボス26の内径26dと支持部材24先端側の上側開口端Cの近傍に設けた孔に挿通可能な段付きピン27と、この段付きピン27を常時下降方向に付勢する圧縮スプリング28を介して保持するL字状の支持プレート29と、支持部材24の先端側開口端C,Cに臨ませてボス26に固設したボルト26aと、このボルト26aに支持プレート29を螺設するワッシャ31、スプリングワッシャ32、及び袋ナット33と、段付きピン27の頭部に設けたピン孔27aに嵌装する二重リング34によって姿勢維持手段25を構成している。
【0018】
また、前側のリンク節22fは、図5〜図8に示すように、コの字状の断面形状を有する支持部材24に嵌装可能な角パイプからなり、その基端部をクレビスピン35を介して支持部材24に枢設することにより、当該リンク節22fを前後揺動自在に支持している。
【0019】
そして、補助ステップ21が脱穀部13の外側から突出するステップ姿勢Bにおいては、前側のリンク節22fを、図5に実線で示す如く後方に向けて揺動させた状態で、その基端部前側Fを、図7に示すように、姿勢維持手段25に備える段付きピン27の先端に当接させて、ステップ姿勢Bにおける補助ステップ21の収納姿勢A側への回動を規制すると共に、前側のリンク節22fの該基端部後側Rを、支持部材24の後部内側に取り付けた緩衝ゴム36に当接させてロック状態とし、それによって補助ステップ21のステップ姿勢Bを確実且つ安定して維持できるように構成している。
【0020】
一方、補助ステップが脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aにおいては、前側のリンク節22fを、図5に二点鎖線で示す如く前方に向けて揺動させた状態で、その基端部後側Rを、姿勢維持手段25に備える段付きピン27の先端に当接させて、収納姿勢Aにおける補助ステップ21のステップ姿勢B側への回動を規制すると共に、図6に示すように、補助ステップ21の前側に設けたナローガイド用案内レール37を支持する支持部材38と、前側リンク節22fの先端部の後側とを当接させて、収納姿勢Aにおける補助ステップ21の収納方向側への回動を規制することによって、当該補助ステップ21の収納姿勢Aを確実且つ安定して維持することができるようにしている。
【0021】
上述した支持部材38は、補助ステップ21に固設したL字形状のプレート41と、このプレート41に固着したPナット41aを用いてナローガイド用案内レール37の一端を固定するワッシャ42、及びボルト43からなり、本実施例では、前側リンク節22fと支持部材38を構成するボルト43の頭部との当接部に緩衝ゴム45を介装することによって、当該補助ステップ21のステップ姿勢における揺動ガタを軽減させている。
【0022】
ところで、補助ステップ21を脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aと、脱穀部13の外側から突出するステップ姿勢Bとに切り換える際は、図8に示すように、姿勢維持手段25に備える段付きピン27の頭部に嵌装した二重リング34を上方に引っ張り、当該段付きピン27と前側のリンク節22fの当接状態、即ち両者27,22fのロック状態を解除することによって、前後一対のリンク節22f,22r(平行リンクL)を介しての補助ステップ21の前後揺動操作が容易に行えるようになっている。
【0023】
以上説明したように、機体フレーム12の脱穀部13側の外側に平行リンクLを介して補助ステップ21を枢設し、該補助ステップ21を脱穀部13の外側に沿う収納姿勢Aと、脱穀部13の外側から突出するステップ姿勢Bとに切り換え可能になし、且つ前記平行リンクLを構成する前後一対のリンク節22f,22rのうち、一方のリンク節22fの基端部後側Rに当接して収納姿勢Aにおける補助ステップ21のステップ姿勢B側への回動を規制すると共に、当該リンク節22fの基端部前側Fに当接してステップ姿勢Bにおける補助ステップ21の収納姿勢A側への回動を規制する姿勢維持手段25を設けたことによって、前記補助ステップ21を所望の収納姿勢Aまたはステップ姿勢Bに切り換えた状態を確実且つ安定して維持することができ、それによりステップ姿勢状態Bにある補助ステップ21に作業者が足を掛けての搭乗が安全に行えるようになる。また、補助ステップ21を収納姿勢Aとステップ姿勢Bとに切り換える際の操作荷重が軽減されて、当該補助ステップ21のスムーズな姿勢切り換え作業が行えるようになる。
【0024】
そして、前側リンク節22fと、補助ステップ21に設けたナローガイド用案内レール37の支持部材38とを当接させて、収納姿勢Aにおける補助ステップ21の収納方向側への回動を規制するように構成したことによって、当該補助ステップ21の収納姿勢Aを確実且つ安定して維持することができる。
【0025】
尚、本実施例では、補助ステップ21を枢設する平行リンクLを構成する前側のリンク節22fと足載せ部材23の連結部eよりも前方に、当該足載せ部材23を延設することによって、手扱ぎ作業における作業性の向上を図っている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの平面図。
【図2】収納姿勢にある補助ステップの平面図。
【図3】ステップ姿勢にある補助ステップの平面図。
【図4】姿勢維持手段の構成を示す斜視図。
【図5】姿勢維持手段の作用形態を示す平面図。
【図6】ナローガイド用案内レールの支持部材の構成及び作用状態を示す平面図。
【図7】図5のおけるD矢視図。
【図8】段付きピンと前側のリンク節の当接を解除する方法を示す側面図。
【符号の説明】
【0027】
11 コンバイン
12 機体フレーム
13 脱穀部
14 前処理部
15 後処理部
16 運転席
17 操縦部
18 穀粒タンク
21 補助ステップ
22f リンク節(前側)
22r リンク節(後側)
25 姿勢維持手段
37 ナローガイド用案内レール
38 支持部材
A 収納姿勢
B ステップ姿勢
L 平行リンク
F 前側のリンク節の基端部前側
R 前側のリンク節の基端部後側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(12)の前方に穀稈を刈取る前処理部(14)を備え、該前処理部(14)で刈取った穀稈を脱穀して穀粒を選別する脱穀部(13)と、該脱穀部(13)で脱穀した後の排稈を機外に排出処理する後処理部(15)とを、機体フレーム(12)の左側に前後に連続して配置する一方、機体フレーム(12)の右側に運転席(16)と各種操作具を備える操縦部(17)と、該操縦部(17)の後方に脱穀部(13)で選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク(18)を備えたコンバイン(11)において、前記機体フレーム(12)の脱穀部(13)側の外側に平行リンク(L)を介して補助ステップ(21)を枢設し、該補助ステップ(21)を脱穀部(13)の外側に沿う収納姿勢(A)と、脱穀部(13)の外側から突出するステップ姿勢(B)とに切り換え可能になし、且つ前記平行リンク(L)を構成する前後一対のリンク節(22f,22r)のうち、一方のリンク節(22f)の基端部後側(R)に当接して収納姿勢(A)における補助ステップ(21)のステップ姿勢(B)側への回動を規制すると共に、当該リンク節(22f)の基端部前側(F)に当接してステップ姿勢(B)における補助ステップ(21)の収納姿勢(A)側への回動を規制する姿勢維持手段(25)を設けたことを特徴とするコンバインの補助ステップ。
【請求項2】
前側リンク節(22f)と、補助ステップ(21)に設けたナローガイド用案内レール(37)の支持部材(38)とを当接させて、収納姿勢(A)における補助ステップ(21)の収納方向側への回動を規制するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの補助ステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−43934(P2007−43934A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230502(P2005−230502)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】