説明

コンバイン

【課題】穀稈案内体を穀稈未刈地側のクローラの後方に臨ませ、機体後進時にクローラの後方に傾倒している穀稈を未刈地側に押しやるように案内することにより、クローラによる傾倒穀稈の踏みつけを防止した後進走行をスムーズに行うコンバインを提供する。
【解決手段】刈取部3と脱穀部5をクローラー式の走行装置1aを有する走行機台1bに前後方向に配置したコンバイン1において、前記コンバイン1の穀稈未刈地側の機体後部側に、走行装置1aの未刈地側クローラ30の後方に臨んで、機体後進時にクローラ30の後方に傾倒している穀稈を穀稈未刈地側に案内する穀稈案内体2を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機体の後部に穀稈案内体を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは刈取部の穀稈未刈地側の分草体の後部に未刈地側に向けて張り出して使用するナローガイドを設置しており、刈取作業において前進走行に伴い分草体で分草した未刈地側の穀稈をナローガイドによって起立案内しながら仕分けるように構成されている(特許文献1。)。
【特許文献1】特開平10−117558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のコンバインによる刈取作業において、分草体とナローガイドによって分草起立された未刈地側の植立穀稈は、機体の前進に伴いナローガイドから脱穀部の側方に張り出したガイド部材(後部分草杆)に引き継ぎ案内され、こののちガイド部材の後端から外れ起立支持が解除されることになる。この構成により既刈地側に向けて大きく倒伏する植立穀稈(傾倒穀稈)を刈取る際には、上記起立支持が解除されると、支持を失った穀稈はクローラの走行跡(轍跡)内に穂先側が傾倒し接地した状態になる。
このようなコンバインの刈取作業中に、例えば圃場のコーナ部に植立する穀稈の刈取り(コーナ刈り)を行う場合等に、機体を一時的に後進させて向きを変え再び前進させて刈取作業を続行する際に、機体を後進させると穀稈未刈地側のクローラが走行跡内の傾倒穀稈を踏みつけてしまい、踏まれた穀稈は次位の刈取作業において分草体によって掬い上げられないで、倒伏したまま刈り残されるものである。
従って、刈り残された穀稈は刈取作業終了後に、圃場に残置されると収穫量を低減させる問題や、また手作業によって後刈りをする場合には、土が穂先に付着したままの倒伏穀稈を鎌で刈取ると共に、手扱作業の量が多くなる等の煩雑な後作業を要する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明のコンバインは、第1に、刈取部3と脱穀部5をクローラー式の走行装置1aを有する走行機台1bに前後方向に配置したコンバイン1において、前記コンバイン1の穀稈未刈地側の機体後部側に、走行装置1aの未刈地側クローラ30の後方に臨んで、機体後進時にクローラ30の後方に傾倒している穀稈を穀稈未刈地側に案内する穀稈案内体2を設けたことを特徴としている。
【0005】
第2に、穀稈案内体2に、前方に至るほど上方で、且つ未刈地側になるような傾斜案内部43を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明によるコンバインは、穀稈未刈地側の機体後部側に、走行装置の未刈地側クローラの後方に臨んで、機体後進時にクローラの後方に傾倒している穀稈を穀稈未刈地側に案内する穀稈案内体を設けたことにより、機体後進時にクローラの後方に傾倒している傾倒穀稈を穀稈未刈地側に押しやるように案内させるので、クローラによる傾倒穀稈の踏みつけを防止した刈取作業中の後進走行をスムーズに行うことができると共に、手刈り等の後作業を低減することができる。
【0007】
穀稈案内体に、前方に至るほど上方で、且つ未刈地側になるような傾斜案内部を設けたことにより、機体後進時に倒れ込んでいる傾倒穀稈を穀稈案内体の傾斜案内部で前方に滑
らかに起立させながら穀稈未刈地側に押しやるので、傾倒穀稈を傷めることなくクローラによる踏みつけを防止した後進走行を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において符号1は、本発明に係わる穀稈案内体2を備えたコンバインであり、クローラー式の左右の走行装置1aを備えた走行機台1bに、刈取部3と脱穀部5等の作業部を従来のものと同様に前後方向に配置し、刈取部3の後方で脱穀部5の右側に操縦部6とグレンタンク7を配置し、脱穀部5の後方に排藁カッター装置9を備えた構成となっている。
【0009】
この構成によりコンバイン1は、刈取部3によって刈り取った植立穀稈を脱穀部5に搬送供給して脱穀を行い、脱穀済の排稈は排藁カッター装置9を経て、切断状態又は非切断の長藁状態のまま機外に排出される。また脱穀部5によって脱穀選別された穀粒は、グレンタンク7に収容され一連のコンバイン作業を行うことができる。
【0010】
刈取部3は刈取部縦フレーム10の後端を、走行機台1bの前側に立設される支柱11に回動可能に支持し、且つ刈取部縦フレーム10の中途部を走行機台1b側に設けた油圧シリンダ12によって昇降自在に支持される。
また刈取部3は刈取部縦フレーム10の前端に設けた刈取部横フレーム13から前側に向けて延設した複数の分草フレーム15に、分草体16と穀稈引起体17を前後に取付支持し、分草体16によって仕分けた(分草した)植立穀稈を穀稈引起体17によって起立させ、後方に設置される刈刃19で刈り取ると共に、刈取穀稈を扱深搬送装置20によって脱穀部5に向けて搬送する。
【0011】
また刈取部3は穀稈未刈地側となる機体の左側に刈取部カバー21を着脱自在に設け、該刈取部カバー21の直下部の分草フレーム15に、従来のものと同様な支持構造によってナローガイド22を格納姿勢とガイド姿勢(作業姿勢)に切換可能に設置している。
即ち、図1で示すようにナローガイド22は、前端を最左側の分草フレーム15の中途部に突設した回動支持部(支持ピン)22aに枢支させ、且つ後端部を刈取部横フレーム13に設置される刈刃伝動ケース(取付部材)23に取付けた切換支持部25によって、姿勢変更自在に支持している。
【0012】
また図示例のナローガイド22は、後端部のジョイント部26を介し、走行機台1bに設けた支持部27に回動自在に支持される補助ナローガイド22bの前端部と融通自在に連結している。これにより回動支持部22aを中心にナローガイド22の後端部が側方に回動移動するとき、補助ナローガイド22bはナローガイド22の姿勢変更を妨げることなく後方の支持部27を支点に追動し、ナローガイド22で分草案内される穀稈を引き継いで、穀稈穂先側を機体から離間させるように誘導する。また補助ナローガイド22bは従来のものと同様に、走行機台1bに沿って側方に張り出して設置されるガイド部材29とラップしており、分草された穀稈を支持し機体走行に伴って後方に案内し後端において支持を解除する。
【0013】
上記構成においてコンバイン1は図1〜図3で示すように、機体左側(穀稈未刈地側)の走行装置1aの後部より前方上方位置に、クローラ(覆帯)30が地面に形成する走行跡(轍跡)内に臨む穀稈案内体2によって、機体後進時に走行跡内に倒れ込んでいる傾倒穀稈を穀稈未刈地側に押しやるように案内し、クローラ30による踏みつけを防止する穀稈案内体装置を設置している。
【0014】
この穀稈案内体装置は、穀稈案内体2を機体側に上下回動自在に取付支持させる取付部31に、該穀稈案内体2を案内姿勢に付勢するスプリング32と、該スプリング32の付
勢力に抗して穀稈案内体2の後端を地面から離間させた非案内姿勢に切り換える操作部材33を設けることが望ましい。
【0015】
図3で示すように取付部31は、脱穀部5の側壁板35に着脱自在に取付けられる板状の取付座36に、穀稈案内体2の基部側(前側)に形成される基部杆2aを回動自在に支持する支持軸37と、該支持軸37に軸支される基部杆2aの前端部を上方に向けて付勢支持するスプリング32と、該基部杆2aの前端部を下方に向けて引っ張り操作する操作部材33と、上記スプリング32による基部杆2aの回動下限位置を規制するストッパ39を設けたユニット構造としている。
【0016】
尚、図示例では操作部材33はワイヤが望ましく、操縦部6に設置される図示しない穀稈案内体操作レバーと接続している。これにより穀稈案内体操作レバーが操作部材33を引き操作する量によって、穀稈案内体2をスプリング32に抗して、後述する穀稈案内体2の案内先端部42の掬い上げ高さを調節設定することができると共に、図1の点線Xで示すように上方に回動退避させた非案内姿勢に切り換えることができる。
【0017】
そして、上記ユニット構造からなる取付部31は、脱穀部5の側壁板35を着脱自在に覆う脱穀部カバー40に穿設した開口部41から挿入し、取付座36を側壁板35に取付固定することにより、基部杆2a等を脱穀部カバー40から外部へ露出させることなく簡単に設置することができる。
【0018】
上記構成において杆状の穀稈案内体2は、図2で示すように左側のクローラ30から穀稈未刈地側に向けて傾倒穀稈を所定距離だけ離間させる張出距離Aを有する張出案内部41と、案内姿勢において穀稈案内体2の後端を橇状に湾曲させた案内先端部42をクローラ30の外側端から掬い上げ距離Bだけ内側に位置させるように、上記張出案内部41から内向きに屈曲させた傾斜案内部43を形成している。
【0019】
以上のように構成される穀稈案内体装置を備えたコンバイン1による刈取作業は、ナローガイド22を側方に張り出した作業姿勢で、穀稈案内体2を非案内姿勢に切り換え支持した状態で機体を前進走行させる。これにより植立穀稈は分草体16で分草され穀稈引起体17によって引き起された状態で刈刃19によって刈り取られ、刈取り穀稈を脱穀部5に搬送して一連のコンバイン作業が行われる。
【0020】
上記刈取作業において、左最外側(穀稈未刈地側)の分草体16とナローガイド22によって分草起立された未刈地側の植立穀稈は、補助ナローガイド22b及びガイド部材29に引き継ぎ案内されて、ガイド部材29の後端で起立支持が解除される。
このとき既刈地側に向けて倒伏する植立穀稈(傾倒穀稈)は、上記起立支持が解除されると支持を失い、未刈地側クローラ30の後方の走行跡内に穂先側が倒れ込んだ状態になる。
【0021】
そして、刈取作業中に機体を一時的に後進させ再び前進刈取作業を行うコーナ刈りを行うときは、非案内姿勢にある穀稈案内体2を前記操作によって案内姿勢に切り換え、穀稈案内体2の案内先端部42を走行跡内の地面に接地又は近接させた状態で後進させる。
これにより穀稈案内体2はコンバイン1の後進走行に伴い、穀稈未刈地側クローラ30の後方に臨み掬い上げ距離Bを有する案内先端部42が、該クローラ30の後方に傾倒している傾倒穀稈の穂先側を掬い、次いで傾斜案内部43が稈身を案内し上方及び外側に起立させながら押しやり、張出距離Aを有する張出案内部41において稈身を略起立させた状態で機体から離間させる。
【0022】
また穀稈案内体2は、案内先端部42が地面の土塊や刈株に接当した場合に、スプリン
グ32の下方付勢力に抗して支持軸37を支点に上方に回動退避したのち復帰し、圃場面の凹凸に対応して倣い作動することができる。従って、穀稈案内体2の案内先端部42が地面に突入してめり込み穀稈案内体2を損傷させる等の憂いを防止し、また後進走行を妨げないで傾倒穀稈の起立案内をスムーズに行うことができる。
【0023】
また穀稈未刈地側のクローラ30の後方に傾倒する傾倒穀稈を穀稈未刈地側に押しやるように案内するので、後進時におけるクローラ30の穀稈踏みつけを簡単に防止することができる。従って、当該穀稈を次位の前進走行による刈取作業によって刈り残しなく刈取ることができるので、手刈りや手扱作業等の煩雑な後作業を低減することができる。
【0024】
尚、この実施形態では穀稈案内体2の案内姿勢と非案内姿勢との切換作動は穀稈案内体操作レバーを操作し操作部材33を介して行う構成としたが、機体の後進操作に連動させることもできる。この場合には機体が後進すると穀稈案内体操作レバーを操作することなく穀稈案内体2を下方作動し、且つ前進時には上方作動させることができる。
【0025】
また穀稈案内体2が機体後方に大きく突出するような場合には、スプリング32及び操作部材33等との連結を解除する等の手段によって、図1の点線Yで示すように機体上方に回動した格納姿勢にすることができる。
また図1の点線Zで示すように穀稈案内体2は、機体の後端より突出しないように短く形成すると、案内姿勢の穀稈案内体2を畔に接当させることなく、機体を畔際まで後進させて接近することができる。尚、穀稈案内体2はバネ材で構成すると、畔に接当した際に弾性力を有して変形し、且つ元の姿に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の穀稈案内体を備えたコンバインの全体側面図である。
【図2】図1のコンバインの背面図である。
【図3】図1の穀稈案内体の取付構造及び作用を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 コンバイン
1a 走行装置
1b 走行機台
2 穀稈案内体
3 刈取部
5 脱穀部
16 分草体
22 ナローガイド
30 クローラ
32 スプリング
37 支持軸
41 張出案内部
42 案内先端部
43 傾斜案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部(3)と脱穀部(5)をクローラー式の走行装置(1a)を有する走行機台(1b)に前後方向に配置したコンバイン(1)において、前記コンバイン(1)の穀稈未刈地側の機体後部側に、走行装置(1a)の未刈地側クローラ(30)の後方に臨んで、機体後進時にクローラ(30)の後方に傾倒している穀稈を穀稈未刈地側に案内する穀稈案内体(2)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
穀稈案内体(2)に、前方に至るほど上方で、且つ未刈地側になるような傾斜案内部(43)を設けた請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−312671(P2007−312671A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145410(P2006−145410)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】