説明

コンバイン

【課題】オペレータが手首または前腕部を載せた状態で走行操作具を揺動操作することができるアームレストを設けたコンバインにおいて、前記アームレストに当接する手首または前腕部に、当該アームレストとの摩擦作用によって痛みを感じたり、疲労感を覚えることがないように、当該アームレストに対する手首または前腕部の載置フィーリングを改善して、走行操作具の快適な繰返し揺動操作を可能にする。
【解決手段】アームレスト22の上面に設けるパッド部材25を、形態回復性を有する弾性体で形成した表皮部25aと、この表皮部25aの中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体25bとで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの操向操作具に併設するアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒の収穫作業を行なうコンバインの操縦部には、操向操作具と前処理部の昇降操作具とを兼ねるマルチステアリングレバーを備えており、このマルチステアリングレバーの手前側にオペレータが手首または前腕部を載せた状態で、当該レバーを操作することができるアームレスト(手置台)を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−97056号公報(第4−5頁、図2−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1のアームレストは、略門型状に形成されたステーの上部に樹脂体からなる基部を設けると共に、この基部の上面に弾性体からなるパッドを嵌着しただけのものであり、該パッドに手首または前腕部を載せた状態でマルチステアリングレバーの左右及び前後方向の揺動操作を長時間繰り返すと、パッドに当接する手首または前腕部が当該パッドとの摩擦作用によって痛みを感じたり、疲労感を覚えることがあり、アームレストに対する手首または前腕部の載置フィーリングを改善する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、操向操作具の手前側にアームレストを設け、該アームレストにオペレータが手首または前腕部を載せた状態で操向操作具を揺動操作するコンバインにおいて、前記アームレストの上面に設けるパッド部材を、形態回復性を有する弾性体で形成した表皮部と、この表皮部の中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体とで構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、オペレータが操向操作具の手前側に設けたアームレストに手首または前腕部を載せた状態で操向操作具を揺動操作するにあたり、前記アームレストの上面に設けるパッド部材を、形態回復性を有する弾性体で形成した表皮部と、この表皮部の中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体とで構成したことによって、前記パッド部材は、形態回復性を有する表皮部と、該表皮部の中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体の特性により手首または前腕部をしなやかに包み込むように変形して、この手首または前腕部の重みをパッド部材全体に広く分散させると共に、パッド部材は、手首または前腕部の微妙な動きを妨げることなくあらゆる方向に緩やかに追随して変形するので、操向操作具の揺動操作を長時間繰り返す場合であっても、パッド部材に当接する手首または前腕部に当該パッド部材との摩擦によって痛みを感じたり、疲労感を覚えることがなく、それによりアームレストに対する手首または前腕部の載置フィーリングが改善されて、前記操向操作具の快適な繰返し揺動操作が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の右側面図であって、コンバイン1は、収穫材料である稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部2と、この前処理部2から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する図示しない脱穀部と、該脱穀部で脱穀された穀粒を選別処理する選別部(揺動選別装置)と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク3と、該穀粒タンク3内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ4と、脱穀部で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する図示しない排藁搬送装置と、機体後部において排稈を所定の長さに切断して機外に排出するカッタを備えた後処理部5と、オペレータが着座する座席6や操向操作具であるマルチステアリングレバー7、及び主変速レバー8等の各種操作具を配設した操縦部9を備えている。
【0007】
そして、コンバイン1は、クローラ11を掛け回した左右一対のクローラ走行装置12に機体フレーム13を支持すると共に、この機体フレーム13の前部に前処理部2を昇降自在に連結している。尚、機体フレーム13上の左側前部に脱穀部を配設する一方、機体フレーム13上の右側前部に操縦部9を配設し、更にその後方に穀粒タンク3と排藁搬送装置を設けている。
【0008】
また、図2及び図3は、二点鎖線で示すオペレータ14が操縦部9に搭乗して座席6に着座すると共に、右手でマルチステアリングレバー7を、左手で主変速レバー8を把持した状態を示す要部側面図と要部平面図であって、操縦部9の床面を形成する搭乗ステップ16の前側に操縦塔17を立設し、この操縦塔17の上部を覆うメータパネルを兼ねた上面パネル18の右側からマルチステアリングレバー7を突出させている。一方、座席6左側のサイドパネル19には、主変速レバー8や副変速レバー21等のコンバイン1の操縦に必要な複数の操作レバーやスイッチ類を配置している。
【0009】
また、上述したマルチステアリングレバー7の手前側(座席6基準)には、オペレータが手首または前腕部を載せた状態で当該マルチステアリングレバー7を操作することができるアームレスト22を設けている。更に詳しく説明すると、アームレスト22は、図4に示す如く操縦塔17を形成するフレーム部材23の上部に上面パネル18と一体的に固設してあり、当該アームレスト22は、略門型状に形成した樹脂製の基部24と、この門型状の基部24を構成する上側の梁部分24aの上面に貼着したパッド部材25とを備えている。
【0010】
そして、上述のパッド部材25は、図5に示す断面図のように、形態回復性を有する弾性体(例えば、クロロプレンゴム、ウレタン合皮)で形成した表皮部25aと、この表皮部25aの中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体25bとで構成している。この粘弾性を有するジェル状の流動体25bは、遅延形状回復性とジェルの特性である流動性を併せ持つ超柔軟性の合成ゴムである。
【0011】
ところで、マルチステアリングレバー7は、従来公知のように、コンバイン1の操向操作具と前処理部2の昇降操作具とを兼ねており、図6に示す中立状態から図7または図8に示す如く回動支点P周りに左右一側に揺動(傾倒)操作することによって、その傾倒方向の図示しないサイドクラッチを切りながらの緩旋回と、更なるマルチステアリングレバー7の傾倒操作によって、その傾倒方向の図示しないサイドブレーキを作動させての急旋回を可能にすると共に、マルチステアリングレバー7を中立状態から前後方向に傾倒操作することによって、前処理部2を昇降作動させることができるようになっている。
【0012】
この時、コンバイン1のオペレータは、マルチステアリングレバー7の手前側に設けたアームレスト22に手首または前腕部を載せた状態で、当該マルチステアリングレバー7を中立状態から回動支点P周りに左右一側に揺動(傾倒)操作するにあたり、アームレスト22の上面に設けるパッド部材25を、形態回復性を有する弾性体で形成した表皮部25aと、この表皮部25aの中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体25bとで構成したことによって、前記パッド部材25は、形態回復性を有する表皮部25aと、該表皮部25aの中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体25bの特性により手首または前腕部をしなやかに包み込むように変形して、この手首または前腕部の重みをパッド部材全体25に広く分散させると共に、パッド部材25は、手首または前腕部の微妙な動きを妨げることなくあらゆる方向に緩やかに追随して変形するので、マルチステアリングレバー7の左右方向揺動操作を長時間繰り返す場合であっても、パッド部材25に当接する手首または前腕部に当該パッド部材25との摩擦によって痛みを感じたり、疲労感を覚えることがなく、それによりアームレスト22に対する手首または前腕部の載置フィーリングが改善されて、マルチステアリングレバー7の快適な繰返し揺動操作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】オペレータが操縦部に搭乗した状態を示す要部側面図。
【図3】オペレータが操縦部に搭乗した状態を示す要部平面図。
【図4】操縦部の斜視図。
【図5】パッド部材の断面図。
【図6】中立状態にあるマルチステアリングレバーの要部正面図。
【図7】左旋回操作時のマルチステアリングレバーの要部正面図。
【図8】右旋回操作時のマルチステアリングレバーの要部正面図。
【符号の説明】
【0014】
7 操向操作具
22 アームレスト
25 パッド部材
25a 表皮部
25b 流動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向操作具(7)の手前側にアームレスト(22)を設け、該アームレスト(22)にオペレータが手首または前腕部を載せた状態で操向操作具(7)を揺動操作するコンバインにおいて、前記アームレスト(22)の上面に設けるパッド部材(25)を、形態回復性を有する弾性体で形成した表皮部(25a)と、この表皮部(25a)の中に封入した粘弾性を有するジェル状の流動体(25b)とで構成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−29067(P2010−29067A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191909(P2008−191909)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】