説明

コンバイン

【課題】ストローラックが複数のスポット溶接部でラック母材に溶接される構造であって、ストローラックの剛性を高めながら、ストローラックを安定的にラック母材に固着させることができるコンバインを提供する。
【解決手段】揺動選別盤52の左右の選別側板52a間にラック母材80を介して配置されるストローラック74を備え、ラック母材80に溶接されるストローラック74の基板部78のうち、隣接するスポット溶接部81の間の基板部78に、ラック母材80から離れる方向に窪んだ凹部82aが設けられ、凹部82aによって、隣接するスポット溶接部81の間に電気絶縁空間が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の未刈り穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置によって脱穀し、脱穀装置から落下した脱粒物を揺動選別盤によって選別するコンバインに係り、より詳しくは、揺動選別盤の後端側にストローラックを配置した構成のコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行部としての走行クローラ等と、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈取る刈取装置と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀装置とを備え、圃場の未刈り穀稈を連続的に刈取って脱穀し、穀粒を収集するように構成している。
【0003】
このようなコンバインでは、脱穀装置の扱室から落下した脱粒物を、揺動選別盤で揺動選別し、一番選別物は一番コンベヤと楊穀コンベヤとを介してグレンタンクに収集される。また、二番選別物は二番コンベヤと二番還元コンベヤとを介して、揺動選別盤に戻される。揺動選別盤の後端側には、ストローラックが配置されていて、揺動選別盤の前端側から後端側へ移送されてきた排藁等をストローラックで受け止めて、機体の外方に排出するようにしている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
特許文献1では、2枚のストローラック片を1組として、平面視U字状のストローラック体が構成されており、2枚のストローラック片の前端側を繋ぐ部分が、揺動選別盤の支持プレートに締付ナットで固定されている。そして、ストローラック体の取付強度を高めるために、締付ナットと支持プレートとの間に他のプレートを介在させるように構成している。一方、ストローラック体を支持プレートにスポット溶接によって固定する形態も知られている。
【特許文献1】特許第2813707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支持プレート(ラック母材)に固定されるストローラック体の部分が平坦面であると、締付ナットで取り付ける場合でも、スポット溶接で取り付ける場合でも、安定して取り付けることができる。しかしながら、支持プレート(ラック母材)に固定されるストローラック体の部分が平板状に形成されていると、その板厚による強度のみでストローラック体が保持されるので、剛性が低くなるという問題がある。
【0006】
また、スポット溶接の場合には、溶接箇所を複数設けると、支持プレート(ラック母材)とストローラック体との取り付け強度を高めることができるものの、2番目のスポット溶接部を溶接するときに、先に溶接した1番目のスポット溶接部に電流の一部が流れる分流作用が発生する。そのため、2番目以降のスポット溶接部では溶接条件が変化するため、安定して溶接し難いという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、ストローラックが複数のスポット溶接部でラック母材に溶接される構造であって、ストローラックの剛性を高めながら、ストローラックを安定的にラック母材に固着させることができるコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、穀稈を刈り取る刈取装置と、刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置と、前記脱穀装置からの脱粒物を選別する揺動選別盤と、前記揺動選別盤の左右の選別側板間にラック母材を介して配置されるストローラックとを備え、前記ストローラックが複数のスポット溶接部で前記ラック母材に溶接されているコンバインにおいて、前記ラック母材に溶接される前記ストローラックの基板部のうち、隣接する前記スポット溶接部の間の基板部に、前記ラック母材から離れる方向に窪んだ凹部が設けられ、前記凹部によって、前記隣接するスポット溶接部の間に電気絶縁空間が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記ストローラックの前記基板部を、前記ラック母材から離れる方向に突出させて補強用リブが形成され、この補強用リブによって前記凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記ストローラックは、前後方向の延びる複数のストローラック片を備え、前記基板部は2枚の前記ストローラック片の送り始端側を繋ぐように設けられ、各基板部に形成された前記凹部内には、非導電性の錘が配置され、前記錘の質量を異ならせることによって、前記揺動選別盤の揺動に伴って前記ストローラックに左右方向の揺動を生じさせるように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記凹部によって前記基板部の溶接面は上下に二分割され、上側の溶接面と下側の溶接面とにスポット溶接部が1箇所ずつ設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ラック母材に溶接されるストローラックの基板部のうち、隣接するスポット溶接部の間の基板部に、ラック母材から離れる方向に窪んだ凹部が設けられ、凹部によって、隣接するスポット溶接部の間に電気絶縁空間が形成されているから、2番目以降のスポット溶接部を溶接するときに生じる分流作用を低減させることができる。つまり、隣接するスポット溶接部の間に、凹部によってラック母材と基板部とを離隔させる空間が形成されるので、隣接するスポット溶接部間の実質的な距離が拡大される。従って、複数のスポット溶接部を介してストローラックをラック母材に溶接する場合であっても、基板部に凹部を設けるという極めて簡単な仕様変更によって、安定した条件で溶接することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、基板部には、補強用リブが設けられているから、基板部の断面係数を高めることができ、ラック母材に溶接される基板部の強度を高めることができる。また、この補強用リブを利用して、請求項1に記載した凹部を形成しているから、部品点数を増加したり、ストローラックの構造を大幅に変更したりすることなく、ストローラックの強度を高め、確実な溶接を実現することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、各基板部の凹部内には、非導電性の錘が配置され、錘の質量を異ならせているから、ラック母材におけるストローラックの支持荷重を部分的に相違させることができる。従って、揺動選別盤の揺動に伴ってストローラックが左右方向に揺動するときに、支持荷重に応じて部分的に揺動の大きさが相違するから、ストローラック全体の揺振作用が高められ選別性能を向上させることができる。その結果、処理物が多いときもストローラックで速やかに選別処理ができ、また籾を後方に移送するというロスも少なくなる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、基板部の溶接面は凹部によって上下に二分割され、スポット溶接部は、上下に分けられたそれぞれの溶接面に1箇所ずつ設けられるから、溶接面の面積が小さくても、溶接時の電極の打点を絞り込み易く、安定して溶接することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2を参照しながら、コンバイン100の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0017】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のコンバイン100は、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取る2条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置され、グレンタンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている。
【0018】
グレンタンク7の後方から上方にかけてグレンタンク7内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ8が配設されている。排出オーガ8の縦オーガ8aを中心として、排出オーガ8の前部を機体側方へ回動できるように構成されている。
【0019】
グレンタンク7の前方で走行機体1の右側前部には、運転部10が設けられている。運転部10には、オペレータが搭乗するステップ10a、運転座席10b、操向ハンドル10cや各種の操作レバー、スイッチなどを備えた操作装置を配置している。運転座席10bの下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0020】
走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持することになる。
【0021】
刈取装置3には、圃場の未刈り穀稈を引起す2条分の穀稈引起装置31と、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置32と、刈刃装置32によって刈取られた穀稈を穀稈引起装置31からフィードチェン6の前端部(送り始端側)へ搬送する穀稈搬送装置33とが備えられている。
【0022】
脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴51と、扱胴51の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤52と、揺動選別盤52に選別風を供給する唐箕ファン53と、扱胴51の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴54と、揺動選別盤52の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン61(図3参照)とを備えている。
【0023】
フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン62が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン62に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ63にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0024】
図3に示すように、扱胴51の下方には受網51aが張設され、受網51aから漏下した脱粒物を、揺動選別盤52で揺動選別(比重選別)するように構成している。揺動選抜盤52の下方側には、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ55、二番コンベヤ56の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0025】
揺動選別盤52から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン53からの選別風によって除去され、一番コンベヤ55に落下することになる。一番コンベヤ55のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒57が連通接続されている(図1参照)。一番コンベヤ55から取出された穀粒は、一番揚穀筒57に内設された一番揚穀コンベヤ(図示せず)によってグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7に収集されることになる。
【0026】
揺動選別盤52は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベヤ56に落下させるように構成されている。二番コンベヤ56によって取出された二番選別物は、二番還元筒58及び二番処理部59を介して揺動選別盤52の上面側に戻されて再選別されることになる。また、扱胴51からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン53からの選別風によって、走行機体1の後部から圃場に向けて排出されることになる。
【0027】
次に揺動選別機構について、図3を用いて詳細に説明する。揺動選別盤52は、左右両側に配置された選別側板52a、52aと前側に配置された選別前板52bとを備えている。揺動選別盤52には、前側から順にフィードパン71とチャフシーブ72とが並んで配置され、チャフシーブ72の下方にグレンシーブ73が配置されている。これらはいずれもその左右の端部が、左右の選別側板52a、52aにそれぞれ取り付けられている。また、チャフシーブ72の送り下流側(後端側)には、ストローラック74が取り付けられている。このストローラック74の取り付けについては後に詳述する。
【0028】
揺動選別盤52の選別前板52bは上端側が前方に傾いた斜め下向きの傾斜姿勢に設けられている。揺動選抜盤52の前方には、揺動機構として、エンジン20からの動力によって駆動される揺動駆動軸75とクランクロッド76とが備えられ、クランクロッド76の後端側に取り付けられている支持板76aが揺動選別盤52の選別前板52bの前側に固定されている。揺動駆動軸75の回転することによって、クランクロッド76及び支持板76aを介して、揺動選別盤52が、前方斜め下方から後方斜め上方に往復移動するように構成されている。揺動選別盤52の左右の選別側板52aの後端寄りの部分には、揺動選別盤52の往復移動を案内するガイド体(図示せず)が設けられている。
【0029】
唐箕ファン53からの選別風は、グレンシーブ73の前方の下方から、グレンシーブ73の後方の上方に向けて移動するように形成されている。また、この選別風が、一番コンベヤ55及び一番樋55aの上方で前方から後方に向けて移動するように形成されている。即ち、グレンシーブ73から一番コンベヤ55及び一番樋55aに落下する穀粒及び塵が、唐箕ファン53からの選別風によって風選される。その結果、塵が除去された後の穀粒だけが、前述したように一番コンベヤ55及び一番樋55aに落下して、一番コンベヤ55によってグレンタンク7に取出されるように構成している。
【0030】
揺動選別盤52は、揺動選別(比重選別)によって、チャフシーブ72又はストローラック74から枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)が二番コンベヤ56及び二番樋56aに落下するように構成している。二番コンベヤ56によって取出された二番選別物は、二番還元筒58を介してフィードパン71の上面側に戻されて再選別されることになる。
【0031】
また、チャフシーブ72の比重選別作用と、唐箕ファン28からの選別風の風選とによって、脱粒物の上層側の穀粒(重量物)が下層側に移動して、チャフシーブ72から早期に漏下することになる。チャフシーブ72の比重選別作用が、唐箕ファン28からの選別風によって助長されて、その選別処理能力(選別精度)が向上するように構成している。
【0032】
チャフシーブ72及びストローラック74の上面側の比較的軽い藁屑は、排塵ファン61の前側の吸引口61aに吸込まれて、排塵ファン61の後側の排塵口61bから機外に排出されることになる。また、チャフシーブ72の送り下流側(後方側)からストローラック74の上面側に移動した比較的重い藁屑は、揺動選別盤52の後端側の三番口60から機外に排出されることになる。図3に示すように、排塵ファン61の下部からストローラック74の上方に向かって垂下するように、シート材64が取り付けられており、吸引口61aへの比較的軽い藁屑の吸い込み性能を向上させている。
【0033】
なお、唐箕ファン53からの選別風は、排塵ファン61の排塵吸引口61aに吸い込まれて排塵口61bから排出されたり、三番口60から走行機体1の後方に移動したりするから、扱胴51からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等が、走行機体1の後部から圃場に向けて排出されることになる。
【0034】
次に、ストローラック74の取り付けについて、図4〜図7を用いて説明する。揺動選別盤52のチャフシーブ72の後端部には、ストローラック74を取り付けるためのラック母材80が設けられている。ラック母材80は左右に長い板状で、ラック母材80の左右の端部が折り曲げられて、揺動選別盤52の左右の選別側板52a、52aに、ボルト80a及びナット80bを用いて各々取り付けられている。
【0035】
ストローラック74には、前後方向に長く且つ上端側が側面視略波形に形成されているストローラック片77aが、左右方向に複数配列されている。詳細には、2枚のストローラック片77aの前端側が基板部78で連結されて、平面視U字状のストローラック体77が構成されている。ストローラック体77は、1枚の鋼板を平面視U字状となるように折り曲げ形成することで、2枚のストローラック片77aを平行状に形成し、各ストローラック片77aの前端側を繋ぐ部分が基板部78になっている。また、基板部78の上端側は、後方(ラック母材80から離れる方向)に向かって舌片状に折り曲げられて、補強片83が形成されている。
【0036】
基板部78の前面は、ラック母材80にスポット溶接部81を介して溶接されるよう雪面79となっている。基板部78がラック母材80に溶接されることで、ストローラック体77の送り始端側がラック母材80に片持ち支持される。複数のストローラック体77が、左右方向に並んでラック母材80に溶接される。
【0037】
ストローラック体77の上下方向の略中央部には、基板部78及び両ストローラック片77a,77aに連続する補強用リブ82が形成されている。補強用リブ82は、外側が開口するように凹設されている。つまり、基板部78に設けた補強用リブ82は、ラック母材80側から離れる方向に突出形成され、両ストローラック片77a、77aに設けた補強用リブ82は、U字形状の内側に向かって突出形成されている。基板部78及び左右のストローラック片77a、77aは、補強用リブ82を凹設することによって断面係数が高くなり、強度が向上される。
【0038】
また、基板部78は補強用リブ82を設けることによって、基板部78の上下方向の略中央部に、ラック母材80に向かって開口する凹部82aが形成されている。従って、凹部82aによって、溶接面79が上下に二分割される。ストローラック体77は、ラック母材80に対して2箇所のスポット溶接部81を介して溶接される。スポット溶接部81は、凹部82aによって上下に分割された上側の溶接面79と、下側の溶接面79とにそれぞれ1箇所ずつ設けられる。つまり、上下に隣接するスポット溶接部81の間に、凹部82aによって、ストローラック体77をラック母材80から離隔させる電気絶縁空間が形成され、上下のスポット溶接部81の実質的な距離が拡大される。
【0039】
ストローラック体77をラック母材80に固着するときには、上下2箇所のスポット溶接部81が順次溶接される。凹部82aによって、1番目のスポット溶接部81と2番目にスポット溶接部81との実質的な距離が広げられているから、1番目のスポット溶接部81を溶接した後に、2番目にスポット溶接部81を溶接するときに生じる分流作用を低減させることができる。その結果、2番目のスポット溶接部81も電気的に安定した条件で確実に溶接することができる。
【0040】
また、凹部82a(補強用リブ82)によって二分割された溶接面79のそれぞれの領域に1箇所ずつスポット溶接部81を設けているから、溶接面79の面積が小さくても電極の打点位置を絞り込み易く、安定した位置にスポット溶接することができる。
【0041】
凹部82a内には、図8〜図10に示すように、非導電性の錘84が配置されている。錘84は、比重の大きな材料(金属等)で形成された芯材85を、非導電性の材料(ゴム、スポンジ等)で形成された被覆材86で覆って形成されている。この錘84は芯材85の質量を異ならせることで全体の質量を変えることができる。
【0042】
ストローラック体77は、揺動選別盤52の揺動に伴って、前方斜め下方から後方斜め上方に往復移動して前後方向及び上下方向に揺動運動するが、ストローラック体77は、ラック母材80に片持ち支持されているため、ストローラック片77aの送り終端側は左右方向へ揺動することが可能である。この実施形態では、錘84の質量を異ならせることで、ラック母材80におけるストローラック体77の支持荷重(質量)を異ならせるようにしている。これにより、ストローラック片77aが左右方向へ振動するときの周期が相違するから、ストローラック74による揺振作用が総合的に高められ、選別性能を向上させることができる。
【0043】
一方、図5に示すように、ラック母材80の上端部は後方に向かって曲げ形成されて、庇部87が設けられている。この庇部87によって、ストローラック体77の基板部78の上方が覆われるので、基端部78とラック母材80との間(溶接箇所の隙間)に、藁屑等が詰まったりする不都合を大幅に低減することができる。
【0044】
錘84は、図8〜図10に示した形態の他にも変形させることができる。図11は第2実施形態の錘84を示したものである。第2実施形態の錘84は、基板部76の補強用リブ82の内側(凹部82a)だけでなく、各ストローラック片77aに形成した補強用リブ82の内側にも連続して設けられている。つまり、第2実施形態の錘84は、平面視でコの字状に形成されているから、芯材85の質量を異ならせるだけでなく、錘84の長さを異ならせたり、錘84を平面視非対称形に形成したりすることによって、ストローラック片77aの左右方向への揺動を簡単に誘発することができ、ストローラック74での選別性能を向上させることができる。
【0045】
なお、錘84は省略してもよいが、凹部82aへ錘84を充填していると、凹部82aへの藁屑等の侵入を防止することができるという効果を奏する。また、錘84に芯材85を設けずに、非導電性材料だけで錘84を形成してもよいし、錘84の質量を全て同じにしてもよい。
【0046】
上述したように、本実施形態のコンバイン100は、穀稈を刈り取る刈取装置3と、刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置5と、脱穀装置5からの脱粒物を選別する揺動選別盤52と、揺動選別盤52の左右の選別側板52a間にラック母材80を介して配置されるストローラック74とを備え、ストローラック74は、複数のスポット溶接部81でラック母材80に溶接されている。そして、ラック母材80に溶接されるストローラック74の基板部78のうち、隣接するスポット溶接部81の間の基板部78に、ラック母材80から離れる方向に窪んだ凹部82aが設けられ、凹部82aによって、隣接するスポット溶接部81の間に、電気絶縁空間が形成されている。つまり、凹部82aによって電気絶縁空間が形成することで、隣接するスポット溶接部81間の実質的な距離が拡大される。これにより、複数のスポット溶接部81を順次溶接するときに、2番目以降のスポット溶接部81を溶接するときの分流作用を低減することができる。従って、ストローラック74の基板部78に凹部82aを設けるという極めて簡単な仕様変更によって、溶接する順番に拘わらず各スポット溶接部81で安定してラック母材80とストローラック74とを固着させることができる。
【0047】
また、ストローラック74の基板部78を、ラック母材80から離れる方向に突出させて補強用リブ82が形成され、この補強用リブ82によって凹部82aが形成されている。このように基板部78に補強用リブ82を設けることにより、ラック母材80に溶接される基板部78の断面係数が高められ、その強度を向上させることができる。また、この補強用リブ82を利用して、凹部82aを形成しているから、部品点数を増加したり、ストローラック74の構造を大幅に変更したりすることなく、ストローラック74の強度を高め、各スポット溶接部81で確実な溶接を実現することができるのである。
【0048】
また、ストローラック74は、前後方向の延びる複数のストローラック片77aを備え、基板部78は2枚のストローラック片77aの送り始端側を繋ぐように設けられ、各基板部78の凹部82a内には、非導電性の錘84が配置されている。そして、錘84の質量を異ならせることによって、揺動選別盤52の揺動に伴ってストローラック74に左右方向の揺動を生じさせるように構成している。ストローラック74はその送り始端側がラック母材80に固定され、ラック母材80に片持ち支持されているが、錘84の質量を異ならせることで、ラック母材80におけるストローラック74の支持荷重を部分的に相違させている。揺動選別盤52の揺動に伴ってストローラック74が左右方向に揺動するときに、支持荷重に応じて部分的に揺動の大きさが相違するから、ストローラック74全体の揺振作用が高められ選別性能を向上させることができる。その結果、処理物が多いときもストローラック74で速やかに選別処理ができ、また籾を後方に移送するというロスも少なくなる。
【0049】
また、基板部78の溶接面79は凹部82aによって上下に二分割され、スポット溶接部81は、上下に分けられたそれぞれの溶接面79に1箇所ずつ設けられている。つまり、上側の溶接面79と下側の溶接面79とで、それぞれ1箇所ずつスポット溶接すればよいから、各溶接面79の面積が小さくても、溶接時の電極の打点を絞り込み易く、安定して溶接することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの揺動選別盤周辺の左側面図である。
【図4】コンバインの揺動選別盤の部分的な斜視図である。
【図5】ラック母材にストローラックを取り付けた状態の平面図である。
【図6】ストローラック体の斜視図である。
【図7】ストローラック体の左側面図である。
【図8】ラック母材とストローラックとの溶接した状態の部分的な左側面図である。
【図9】ラック母材に対するストローラックの取り付けを示す斜視断面図である。
【図10】錘が凹部に配置された状態を示す平面図である。
【図11】第2実施形態の錘が凹部に配置された状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 走行機体
5 脱穀装置
31 穀稈引起装置
32 刈刃装置
33 穀稈搬送装置
51 扱胴
52 揺動選別盤
53 唐箕ファン
55 一番コンベヤ
56 二番コンベヤ
60 三番口
61 排塵ファン
71 フィードパン
72 チャフシーブ
73 グレンシーブ
74 ストローラック
75 揺動駆動軸
77 ストローラック体
77a ストローラック片
78 基板部
79 溶接面
80 ラック母材
81 スポット溶接部
82 補強用リブ
82a 凹部
83 補強片
84 錘
85 芯材
86 被覆材
87 庇部
100 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る刈取装置と、刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置と、前記脱穀装置からの脱粒物を選別する揺動選別盤と、前記揺動選別盤の左右の選別側板間にラック母材を介して配置されるストローラックとを備え、前記ストローラックが複数のスポット溶接部で前記ラック母材に溶接されているコンバインにおいて、
前記ラック母材に溶接される前記ストローラックの基板部のうち、隣接する前記スポット溶接部の間の基板部に、前記ラック母材から離れる方向に窪んだ凹部が設けられ、
前記凹部によって、前記隣接するスポット溶接部の間に電気絶縁空間が形成されていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ストローラックの前記基板部を、前記ラック母材から離れる方向に突出させて補強用リブが形成され、この補強用リブによって前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ストローラックは、前後方向の延びる複数のストローラック片を備え、前記基板部は2枚の前記ストローラック片の送り始端側を繋ぐように設けられ、各基板部に形成された前記凹部内には、非導電性の錘が配置され、前記錘の質量を異ならせることによって、前記揺動選別盤の揺動に伴って前記ストローラックに左右方向の揺動を生じさせるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記凹部によって前記基板部の溶接面は上下に二分割され、上側の溶接面と下側の溶接面とにスポット溶接部が1箇所ずつ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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