説明

コンバイン

【課題】排気管の近くに設置される脱穀装置や穀粒回収部等のコンバインの構成部材を、排気ガスの熱から保護すること。
【解決手段】機体の前部に刈取部と運転部とエンジン18とを備え、機体の後部に左右方向に並べて配置される脱穀装置4と穀粒回収部5とを備え、エンジン18から延設されて、脱穀装置4と穀粒回収部5との間に配管される排気管32を備え、脱穀装置4と穀粒回収部5との間の空間Sを機体の前部から後部へ抜ける風を発生させる送風装置25を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通型及び自脱型のコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインには、エンジンから排出される排気ガスを、脱穀装置とグレンタンク等の穀粒回収部との間に配管される排気管を介して機体の後部に導いて排出するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−247472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイやインド等のアジアの熱帯地域で使用されるコンバインの排気管からは、非常に高温の排気ガスが排出されることがある。これは、このような熱帯地域は気温が高い上に、一般的に作物の背丈が高く、倒伏した作物の刈取作業を実施するとエンジンに大きな負荷が掛かるためである。
その結果、排気管より発生する排気ガス由来の高温の輻射熱が、排気管の近くに設置されるコンバインの脱穀装置や穀粒回収部等に伝わることにより、これらを熱変形させる等の悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
従って本発明の目的は、排気管の近くに設置される脱穀装置や穀粒回収部等のコンバインの構成部材を、排気管の熱から保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
本発明に係る第1特徴構成は、
機体の前部に刈取部と運転部とエンジンとを備え、
機体の後部に左右方向に並べて配置される脱穀装置と穀粒回収部とを備え、
前記エンジンから延設されて、前記脱穀装置と前記穀粒回収部との間に配管される排気管を備え、
前記脱穀装置と前記穀粒回収部との間の空間を機体の前部から後部へ抜ける風を発生させる送風装置を備える点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、送風装置から送られる風によって、排気管の熱が機体の後方に排出されるため、排気管の近くに設置される脱穀装置及び穀粒回収部等の構成部材が高温になり難い。また、たとえ上記構成部材が排気管の熱を受けて高温になったとしても、送風装置から送られる風によって冷却されるため、熱変形等が防止される。
【0008】
〔構成〕
本発明に係る第2特徴構成は、
前記送風装置で発生した風を、前記脱穀装置と前記穀粒回収部との間の空間に案内する案内板を備える点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、送風装置で発生した風を案内板によって確実に脱穀装置と穀粒回収部との間の空間に送ることができるので、排気管の熱を機体の後方に排出する効果が高まると共に、脱穀装置及び穀粒回収部等の構成部材を冷却する効果も高くなる。
【0010】
〔構成〕
本発明に係る第3特徴構成は、
前記穀粒回収部が、前記送風装置で発生した風を受ける放熱板を備える点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、放熱板を備えることにより、穀粒回収部を冷却する効果がより一層向上する。
【0012】
〔構成〕
本発明に係る第4特徴構成は、
前記送風装置が、前記エンジンのラジエータファンである点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、送風装置として既存のラジエータファンを使用するため、新たに別途送風装置を設ける場合と比べて構造が複雑化することもなく、製造コストも抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る普通型コンバインの全体左側面図である。
【図2】実施形態に係る普通型コンバインの全体平面図である。
【図3】エンジンルーム部分と排気管部分とを示す側面図である。
【図4】機体フレーム上の配置関係を示す平面図である。
【図5】ラジエータファンによって取り込まれた外気の流れを示す平面図である。
【図6】脱穀装置とグレンタンクとの間の空間を示す縦断面図である。
【図7】別実施形態に係る脱穀装置とグレンタンクとの間の空間を示す縦断面図であ る。
【図8】別実施形態に係る脱穀装置とグレンタンクとの間の空間を示す縦断面図であ る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
(コンバインの全体構成)
図1〜図4に基づいて、本発明を適用した普通型コンバインの全体構成について説明する。図1は普通型コンバインの全体左側面図であり、図2は普通型コンバインの全体平面図であり、図3はエンジンルーム部分と排気管部分とを示す側面図であり、図4は機体フレーム上の配置関係を示す平面図である。
【0016】
図1に示すように、この普通型コンバインには、角パイプ材などによって枠状に形成した機体フレーム1を備え、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を装備している。
【0017】
機体フレーム1の前方には、刈取部3が設けられ、機体フレーム1の左後部に普通型(全稈投入型)の脱穀装置4を搭載し、機体フレーム1の右後部に、脱穀装置4から供給される穀粒を貯留するグレンタンク5(穀粒回収部)を搭載している。
【0018】
グレンタンク5の後部には、このグレンタンク5から機外に穀粒を排出する穀粒排出装置としてのアンローダ6が装備されている。
【0019】
アンローダ6は、グレンタンク5の底に配設された底スクリュー5cの後端に連通接続されスクリュー式の縦搬送機構6aと、この縦搬送機構6aの上端に連通接続されて昇降自在なスクリュー式の横搬送機構6bとから構成されている。このアンローダ6が全体的に、旋回モータ(図示せず)の作動によって縦搬送機構6aのスクリュー軸心である縦軸心Pを中心にして旋回可能となっており、縦搬送機構6aに対して横搬送機構6bが昇降可能に構成されている。
【0020】
図2に示すように、不使用時におけるアンローダ6は、グレンタンク5の後部(機体フレーム1の後部右側部)から機体フレーム1の前部左側部に向かって、平面視で対角状に配設されるように受け台7に固定されている。
【0021】
脱穀装置4の前部には、刈取り穀稈搬送用のフィーダ8が連結されており、このフィーダ8の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部3が連結されている。
【0022】
刈取部3は、フィーダ8を介して機体フレーム1の前部に支持される。刈取部3は、右及び左のデバイダ9a,9bと、作物を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16と、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13と、を備えて構成されている。刈取装置12によってその株元が切断されて刈り取られた作物は、オーガ13により横送りされてフィーダ8の入口に送り込まれてフィーダ8により脱穀装置4に搬送される。
【0023】
図1に示すように、フィーダ8には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、オーガ13から供給された作物をフィーダ8の底面に沿って搬送して、脱穀装置4に供給できるように構成されている。
【0024】
脱穀装置4は、図3に示すように、フィーダ8の終端に連通された扱室4aの前後側壁に亘って機体前後方向水平に扱胴4bが軸支され、扱室4aの下方に揺動選別及び風選別を行う選別部4cが配備され、扱室4aから、選別部4cに処理物を漏下供給する受網(コンケーブ)4dが扱胴4bの下側に沿って配設された構造となっている。選別部4cには、揺動選別ケース4e、唐箕4f、1番物回収用の横送りスクリューコンベア4g、等が設けられている。
【0025】
刈取部3で刈り取られた穀稈は、フィーダ8により脱穀装置4に搬送されて扱室4aで脱穀される。脱穀された穀粒は、選別部4cで選別されて、横送りスクリューコンベア4g及び揚穀筒4h内の縦送りスクリューコンベア(図示せず)を介してグレンタンク5に揚送されるとともに、選別不十分な2番物が横送りスクリューコンベア(図示せず)及び縦送りスクリューコンベア(図示せず)を介して揺動選別ケース4eの前部に還元供給されて再び選別処理を受けるようになっている。
【0026】
一方、脱穀された穀稈(排藁)は、脱穀装置4の排藁処理部4I(図1及び図2参照)へと搬送されて、切断される等して圃場に放出される。
【0027】
図1に示すように、グレンタンク5の中に貯留された穀粒は、底スクリュー5c(図5及び図6参照)によって縦搬送機構6aに搬出され、続いて縦搬送機構6aから横搬送機構6bに揚送された後、横搬送機構6bによって横搬送されて吐出口6cから排出される。
【0028】
図4に示すように、機体フレーム1は、前後方向に長い角パイプ状の左右一対のメインフレーム1a,1aと、そのメインフレーム1a,1aに対して左右方向に横切る方向で交差する状態で搭載設置された多数の横向きフレーム1bと、横向きフレーム1bの機体外側端側に搭載設置される前後向きの側部フレーム1cとを備えて格子枠状に形成されている。
【0029】
図2に示すように、機体フレーム1の右前部、即ちグレンタンク5の前方には、各種操作レバー類等が配設される運転操作部15bや運転席15a等を備える運転部15が構成されている。
【0030】
図3に示すように、運転部15の下方には、エンジン18を収容するエンジンルームRが構成され、エンジンルームRを形成するエンジンボンネット19上に運転席15aが取り付けられ支持される。
【0031】
図4に示すように、エンジンルームRの前方側に延設される機体フレーム1上に電源供給装置としてのバッテリ20が搭載される。
機体フレーム1のうちのメインフレーム1a,1aの間には、左右のクローラ式走行装置2に対して駆動力を伝達するための図示しない駆動車軸を備えたミッションケース21を装備してある。さらに、ミッションケース21よりも機体左側方寄りの機体フレーム1上に、各種油圧装置に対する作動油を供給するための作動油タンク22を搭載してある。また、機体フレーム1の左後端部には、燃料タンク24が配設されている。
【0032】
(エンジンルームの構成)
図4及び図5に基づいて、エンジンルームR内の構成について説明する。図5はラジエータファン25によって取り込まれた外気の流れを示す平面図である(図5中の矢印は外気の流れを示す)。
エンジンルームRにおけるエンジン18の右側には、ラジエータファン25及びラジエータ26が配設されている。ラジエータファン25は、エンジン18に取り付けられて駆動され、このラジエータファン25の正面となる外側(右側)にラジエータ26が設けられる。ラジエータ26は、図示しない配水管を介してエンジン18と接続され、ラジエータファン25によって取り込まれる外気を受けることにより、図示しない配水管を介してエンジン18から導出されるエンジン冷却水を冷却する。
【0033】
エンジン冷却水は、図示せぬポンプ等によってエンジン18とラジエータ26間を循環される。エンジンボンネット19の右側壁及び前側壁は、導風ダクト27により形成される。導風ダクト27は、中空状に構成され、その外側面(右側面)及び前側面には、除塵網28aが張設される外気導入口28が形成される。かかる構成により、ラジエータファン25の吸引作用によって導風ダクト27を介して取り入れられた外気が、エンジンルームR内のラジエータ26に冷却風として供給される。
【0034】
(排気管の構成)
図3〜図6に基づいて、排気管32の構成について説明する。図6は脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間Sを示す縦断面図である。
図4及び図5に示すように、エンジン18において、シリンダブロック等に取り付けられる排気マニホールド29は、エンジン18の前側を排出側とし、この排気マニホールド29の排出側に、エンジンマフラー30の一端が連通接続される。
図3に示すように、エンジンマフラー30の後端には、排気吐出管31が下方に向けて延設される。
排気管32は、排気吐出管31に対する接続部を上端部として略L字状となるように機体後方に延設され、機体フレーム1の横向きフレーム1bに対して、排気管32と横向きフレーム1bのそれぞれに設けたブラケット33同士を図示しないボルトで締結することによって支持固定される。
【0035】
図4〜図6に示すように、排気管32は、平面視で脱穀装置4とグレンタンク5との間に配管される。尚、図6に示すようにグレンタンク5の底部における左傾斜面5aと右傾斜面5bは、左右均等な大きさを有するものでなく、左傾斜面5aが右傾斜面5bよりも大きく設定されており、底スクリュー5cはグレンタンク5の左右方向中央よりも右側に寄せた位置に設けられる。
【0036】
(ラジエータファンによって取り込まれる外気の流れとその作用)
図5に示すように、エンジンボンネット19の後側壁におけるエンジン18の後方が開口しており、その開口部19a周縁の左側と右側のそれぞれに、第1案内板34a及び第2案内板34bが設けられている。第1案内板34aは、機体の前後方向に延びており脱穀装置4と排気管32との間に設けられている。また第2案内板34bは、開口部19aの内側に傾斜する傾斜案内面34b´と、その傾斜案内面34b´から機体の前後方向に延びるように連設される前後向き案内面34b´´とを備える。
【0037】
ラジエータファン25によってエンジンルームR内に取り込まれた外気は、冷却風としてラジエータ26に供給された後、エンジンボンネット19の開口部19aを出て第1案内板34aと第2案内板34bによって脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間Sに導かれて、機体の前部から後部へ抜けるように構成されている。
即ち、ラジエータファン25は、ラジエータ26に冷却風を供給するだけでなく、脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間Sを機体の前部から後部へ抜ける風を発生させる送風装置としても機能する。
【0038】
かかる構成によれば、ラジエータファン25から送られる風(冷却排風)によって、排気管32の熱が機体の後方に排出されるため、排気管32の上部の温度を下げることができ、排気管32の近くに設置される脱穀装置4及びグレンタンク5等の構成部材が高温になり難い。また、たとえ脱穀装置4及びグレンタンク5等の構成部材が排気管32の熱を受けて高温になったとしても、ラジエータファン25から送られる風(冷却排風)によって冷却されるため、熱変形等が防止される。さらに、脱穀装置4とグレンタンク5との間の機体フレーム1上に溜まった排藁屑などを機体の後方にとばすことができる。
【0039】
尚、第1案内板34aと第2案内板34bを設けずに、ラジエータファン25の配置を変更するなどして脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間に、機体の前部から後部へ抜けるように風を送る構成とすることも可能であるが、ラジエータファン25で発生した風を第1案内板34aと第2案内板34bによって確実に脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間Sに送ることができるので、排気管32の熱を機体の後方に排出する効果が高まると共に、脱穀装置4及びグレンタンク5等の構成部材を冷却する効果も高くなる。
【0040】
また、本実施形態においては、送風装置として既存のラジエータファン25を使用するため、新たに別途送風装置を設ける場合と比べて構造が複雑化することもなく、製造コストも抑えられる。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)図7に示すように、前述の実施形態において、脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間Sの前方に、エンジンルームR内のラジエータファン25とは異なる送風ファン35を送風装置として別に設けて構成しても良い。この場合、走行用の静油圧式無段変速装置(HST)(図示せず)の変速レバー(図示せず)を中立位置(N)又は前進位置(F)にすると送風ファン35が作動し、変速レバーを後進位置(R)にすると送風ファン35が自動停止するように構成しても良い。
(2)図8に示すように、前述の実施形態において、グレンタンク5が、その左傾斜面5aで水平方向に突出する複数の放熱板36を備える構成としても良い。かかる構成によれば、放熱板36を備えることにより、グレンタンク5を冷却する効果がより一層向上する。
(3)前述の実施形態において、排気管32を、機体フレーム1の上方であって、脱穀装置4とグレンタンク5との間の空間Sに設ける構成(例えば、脱穀装置4の右側面とグレンタンク5の左側面との間、あるいは、グレンタンク5の底部における左傾斜面5a付近等)に設ける構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は、普通型コンバインだけでなく自脱型コンバインにも適用可能であり、グレンタンクではなく袋詰め用の穀粒回収ホッパーを備えるコンバインにも適用可能であり、これらのコンバインにおいて、排気管の近くに設置される脱穀装置や穀粒回収部等の構成部材を、排気ガスの熱から保護する場合に適している。
【符号の説明】
【0043】
3 刈取部
4 脱穀装置
5 グレンタンク(脱穀回収部)
15 運転部
18 エンジン
25 ラジエータファン(送風装置)
32 排気管
34 案内板
36 放熱板
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に刈取部と運転部とエンジンとを備え、
機体の後部に左右方向に並べて配置される脱穀装置と穀粒回収部とを備え、
前記エンジンから延設されて、前記脱穀装置と前記穀粒回収部との間に配管される排気管を備え、
前記脱穀装置と前記穀粒回収部との間の空間を機体の前部から後部へ抜ける風を発生させる送風装置を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記送風装置で発生した風を、前記脱穀装置と前記穀粒回収部との間の空間に案内する案内板を備える請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穀粒回収部が、前記送風装置で発生した風を受ける放熱板を備える請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記送風装置が、前記エンジンのラジエータファンである請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−62121(P2011−62121A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214828(P2009−214828)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】