説明

コンバイン

【課題】回転支持体の穀稈への引っ掛かりを防止することができるとともに、掻き込みリールの構造の簡易化や部品点数の削減を図ること。
【解決手段】掻き込みリールは、リール支軸に取り付けた一対の回転支持体と、両回転支持体の周縁部間に横架した複数のタインバーと、各タインバーに垂下状に取り付けて穀稈に掻込作用する複数のタインとを具備している。回転支持体は、周縁部を多角形に形成した板状体となし、各角部にはタインバーの側端部を配置するためのタインバー配置用凹部を形成して、タインバー配置用凹部にタインバー枢支体を介してタインバーの側端部を取り付けている。タインバー枢支体は、タインバー配置用凹部に側方から連結した。このようにして、回転支持体の周端面から放射線方向に突起状部が形成されないようにした。そのため、回転支持体に穀稈が引っ掛って、刈取効率を低減させるという不具合が発生するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タインを多数設けた掻き込みリールを具備して、掻き込みリールにより穀稈を掻込みながら収穫する普通型のコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、普通型のコンバインの一形態として特許文献1に開示されたものがある。かかるコンバインは刈取部を有しており、刈取部は、穀稈を掻込む掻き込みリールと、掻き込みリールにより掻き込まれた穀稈の根元部を刈り取る刈刃と、刈刃により刈り取られた穀稈を左右一側方へ横送りするオーガと、オーガにより横送りされた穀稈を後方へ搬送するプラットフォームを具備している。
【0003】
掻き込みリールは、左右一対のリール支持アームの先端部間にリール支軸を介して回転自在に支持されている。そして、掻き込みリールは、左右一対の回転支持体と、両回転支持体間に架設した複数のタインバーと、各タインバーに取り付けた複数のタインとを具備している。
【0004】
回転支持体は、リール支軸に取り付けた回転中心片と、回転中心片から円周方向に均等間隔を開けて放射状に突出形成した五本の支持アームと、各支持アームの先端部に取り付けたブロック体と、周方向に隣接するブロック体同士を連結する帯板状連結片とから形成している。
【0005】
そして、ブロック体には、放射線方向と機体の幅方向(左右方向)に開口する凹部を形成している。左右に対向するブロック体の凹部にはタインバーの左右側端部を嵌入させて、タインバーを横架状態となし、凹部の開口部は帯板状連結片の端部で閉塞して、タインバーを凹部内で回転自在に保持している。この際、帯板状連結片には外方から中心方向にボルトをブロック体に螺着することで、帯板状連結片をブロック体に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−39025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記した掻き込みリール構造では、帯板状連結片をブロック体に取り付けているボルトが放射線方向に突出しているために、刈取作業時に突出状態で回転するボルトが穀稈に引っ掛かり、刈取効率を低減させるという不具合があった。また、掻き込みリールの構造の簡易化や部品点数の削減による製造コストの低減が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、回転支持体の穀稈への引っ掛かりを防止することができるとともに、掻き込みリールの構造の簡易化や部品点数の削減を図ることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明に係るコンバインは、圃場に植立した穀稈を掻き込む掻き込みリールを備えたコンバインであって、掻き込みリールは、リール支軸に取り付けた一対の回転支持体と、両回転支持体の周縁部間に横架した複数のタインバーと、各タインバーに垂下状に取り付けて穀稈に掻込作用する複数のタインとを具備し、回転支持体は、周縁部を多角形に形成した板状体となし、各角部にはタインバーの側端部を配置するためのタインバー配置用凹部を形成して、タインバー配置用凹部にタインバー枢支体を介してタインバーの側端部を取り付け、タインバー枢支体は、タインバー配置用凹部に側方から連結したことを特徴とする。
【0010】
かかるコンバインでは、タインバー配置用凹部にタインバー枢支体を側方から連結することで、回転支持体の周端面から放射線方向に突起状部が形成されないようにしているため、回転支持体に穀稈が引っ掛って、刈取効率を低減させるという不具合が発生するのを防止することができる。しかも、回転支持体にタインバー枢支体を介してタインバーを簡単かつ堅実に取り付けることができる。
【0011】
請求項2の発明に係るコンバインは、請求項1記載の発明に係るコンバインであって、前記回転支持体の各角部は、タインバー配置用凹部の周縁部を薄肉板状に形成し、この周縁部にタインバー枢支体に形成した連結用耳片を側方から重合状態に連結したことを特徴とする。
【0012】
かかるコンバインでは、タインバー配置用凹部の周縁部に形成した薄肉板状にタインバー枢支体の連結用耳片を側方から重合状態に連結することができるため、タインバー枢支体が回転支持体の放射線方向はもとより、回転支持体の外側方にも大きく張り出さないようにして、刈取前の穀稈が引っ掛からないようにすることができる。
【0013】
請求項3の発明に係るコンバインは、請求項1又は2記載の発明に係るコンバインであって、前記回転支持体は、前記リール支軸に取り付けるハブ部と、ハブ部から放射線方向に伸延する複数のスポーク部と、周方向に隣接するスポーク部の先端部同士を連結する連結部とを一体的に形成したことを特徴とする。
【0014】
かかるコンバインでは、回転支持体の適度な剛性を確保したまま軽量化を図ることができる。また、回転支持体さらには掻き込みリールの部品点数を削減して、製造コストを低減することができる。
【0015】
請求項4の発明に係るコンバインは、請求項1〜3のいずれか1項記載の発明に係るコンバインであって、前記タインバーは、前記リール支軸と平行して伸延するパイプ状に形成して、両端部にはその軸線と直交する方向に貫通する貫通孔を形成し、前記タインバー枢支体に形成したボス部にタインバーの両端部を貫通させて、ボス部の外側方位置にて貫通孔に抜け止めピンを貫通させて、タインバーを抜け止めしたことを特徴とする。
【0016】
かかるコンバインでは、抜け止めピンを抜き差しするだけでタインバーを簡単に取り付け・取り外し(着脱)することができる。その結果、タインバーの組み付け作業とメンテナンス作業が楽になる。同時に、タインバーの取付構造の簡易化と部品点数の削減を図ることができる。この点からも製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は次のような効果を奏する。すなわち、本発明では、回転支持体への穀稈の引っ掛かりを防止することができて、刈取効率を良好に確保することができる。そして、掻き込みリールの構造の簡易化や部品点数の削減を図ることができて、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る普通型コンバインの左側面図。
【図2】本発明に係る普通型コンバインの右側面図。
【図3】刈取部の側面図。
【図4】刈取部の正面図。
【図5】刈取部の平面図。
【図6】回転支持体の外側面側からの斜視図。
【図7】回転支持体の内側面側からの斜視図。
【図8】回転支持体の正面図(外側面図)。
【図9】回転支持体の背面図(内側面図)。
【図10】回転支持体の左側面図(前端面図)。
【図11】回転支持体の平面図(上端面図)。
【図12】回転支持体の底面図(下端面図)。
【図13】図8のI-I線断面図。
【図14】図9のII-II線断面図。
【図15】回転支持体へのタインバーの取付構造を示す分解斜視図。
【図16】タインの斜視図。
【図17】タインの正面図(外側面図)。
【図18】タインの背面図(内側面図)。
【図19】タインの左側面図(前面図)。
【図20】タインの右側面図(後面図)。
【図21】タインの平面図(上面図)。
【図22】タインの底面図(下面図)。
【図23】タインの取付説明斜視図。
【図24】タインの取付説明平面図。
【図25】タインの姿勢保持説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ式の走行部2,2の直上方に機体3を配置して、機体3の前方に刈取部4を取り付けている。機体3には、左側に脱穀部5と選別部6を上下段に配置し、これらの直後方に排藁処理部7を配置する一方、右側に運転部8と穀粒貯留部9と原動機部10を前後方向に順次配置している。11は原動機部10に設けたエンジン、12は穀粒貯留部9に連通連設した袋詰め用搬出体、13は穀粒貯留部9に連通連設した搬出オーガである。
【0021】
刈取部4は、フィーダハウス20とプラットフォーム21と刈刃装置22と左右一対のデバイダ23,23と掻き込みリール24とを具備している。
【0022】
具体的には、図3〜図5に示すように、フィーダハウス20は前後方向に伸延する四角形筒状に形成して、内部には刈り取った穀稈を前方から後方に搬送する搬送コンベア(図示せず)を配設している。そして、フィーダハウス20は運転部8の左側下方に配置するとともに、機体3の前部に後端部を昇降自在に枢支して、昇降油圧シリンダ26により昇降位置調節可能としている。
【0023】
プラットフォーム21は、機体3の左右幅と略同一幅で前方が開口するケーシング状に形成して、フィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)に左側部を連通連結し、内部に左右方向に回動軸芯を向けた掻込オーガ25を横架している。掻込オーガ25は後述する刈刃装置22により刈り取られた穀稈をプラットフォーム21内に掻き込むとともに、フィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)内に横送り搬入するようにしている。
【0024】
刈刃装置22は、左右方向に伸延するバリカン型に形成しており、プラットフォーム21の前端下部に、その前端全幅にわたって配設している。そして、植立穀稈の株元部を刈り取るようにしている。
【0025】
左右一対のデバイダ23,23は、それぞれプラットフォーム21の左右側壁から前方へ突設して、機体の前進走行に伴って植立穀稈を刈取側と非刈取側とに分草するようにしている。
【0026】
掻き込みリール24は、左右一対のデバイダ23,23間の上方に掻込回転自在に配置して、両デバイダ23,23により分草された刈取側の植立穀稈をプラットフォーム21側に回転しながら掻き込むようにしている。
【0027】
このように構成した刈取部4は、左右一対のデバイダ23,23により分草した植立穀稈を分草して、その分草した刈取側の植立穀稈を掻き込みリール24により掻き込むとともに、その掻き込まれた植立穀稈の株元部を刈刃装置22により刈り取って、プラットフォーム21内に掻き込むようにしている。そして、プラットフォーム21内に掻き込まれた穀稈を掻込オーガ25によりフィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)に横送り搬入させ、さらには、全穀稈をフィーダハウス20内の搬送コンベアにより後方の機体3に配設した脱穀部5に搬入(投入)するようにしている。
【0028】
次に、掻き込みリール24の構成を具体的に説明する。すなわち、掻き込みリール24は、図3〜図5に示すように、プラットフォーム21の後端上部に左右方向に軸線を向けたアーム支軸30を横架している。アーム支軸30の左右側端部には前後方向に伸延する左右一対の支持アーム31,31の基端部(後端部)を枢支している。そして、各支持アーム31の中途部とプラットフォーム21の側壁との間にリール昇降シリンダ32を介設して、アーム支軸30を中心に両支持アーム31,31を昇降可能としている。
【0029】
両支持アーム31,31の先端部(前端部)間には、左右方向に伸延するリール支軸33をその軸芯廻りに回転自在に軸架するとともに、リール支軸33を前後方向に始端対位置調節自在としている。リール支軸33の左右側端部には、左右一対の回転支持体34,34を左右に対向させてそれらの中心部を取り付けている。両回転支持体34,34は、金属製の板状体を正五角形状に形成して、左右に対向する各角部(頂部)間にタインバー枢支体35を介して左右方向に伸延するパイプ(円管)状のタインバー36をその軸線廻りに回転自在に横架している。
【0030】
各タインバー36には、左右方向に一定の間隔を開けて複数のタイン37を垂下状に取り付けている。右側の回転支持体34の外側方にはリール支軸33の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転するタイン姿勢保持用回転支持体38を配置している。
【0031】
そして、タイン姿勢保持用回転支持体38は、回転支持体34と略同形状に形成して、各角部(頂部)にリンク枢支体39を取り付け、リンク枢支体39と近接するタインバー36の右側端とをリンク40を介して連結してタイン姿勢保持機構41を形成している。
【0032】
このようにして、タイン姿勢保持機構41は、回転移動するタイン37の内、少なくとも植立穀稈に作用するタイン37は所定の垂下姿勢に保持して、かかる垂下姿勢に保持されたタイン37が植立穀稈に掻き込み作用するようにしている。
【0033】
アーム支軸30の右側端とリール支軸33の右側端との間には、エンジン11に連動連結した伝動機構42を介設して、リール支軸33を図25の左側面視にて反時計廻りRに回転させるようにしている。
【0034】
このようにして、リール支軸33を図25の左側面視にて反時計廻りRに回転させると、リール支軸33に取り付けた左右一対の回転支持体34,34も反時計廻りRに回転して、両回転支持体34,34間にタインバー36を介して取り付けたタイン37は回転支持体34の外周廻りに移動する。この際、タイン姿勢保持機構41により各タイン37は垂下姿勢を保持したまま移動して、植立穀稈に堅実に掻き込み作用する。
【0035】
次に、タインバー36の取付構造とタイン37の取付構造を具体的に説明する。
【0036】
(タインバー36の取付構造)
まず、タインバー36を直接支持する回転支持体34について、図6〜図14を参照しながら説明する。回転支持体34は、正多角形(本実施形態では正五角形)に形成した薄肉金属板の中心部に円形口50を形成し、円形口50の周囲に五個の逆三角形口51を略均等に間隔を開けて形成している。
【0037】
そして、かかる外形状の回転支持体34は、五つの角部(頂部)52を除くほぼ全体的を外方に凸条となすエンボス加工を施すことで、リール支軸33に取り付けるリング状のハブ部53と、ハブ部53から放射線方向に直状に伸延する五本のスポーク部54と、周方向に隣接するスポーク部の先端部同士を連結する直状の連結部55とを一体成形している。56はスポーク部54の中央部に長手方向に伸延させてエンボス加工した凹条部である。このようにして、回転支持体34の構成部品点数削減化と軽量化と高剛性化を実現している。
【0038】
角部(頂部)52は、外側面がスポーク部54や連結部55の外側面に対して内側方に位置して段付き凹状面を形成する連結用板状片52aとなしている。そして、連結用板状片52aの中途部に、タインバー36の側端部を配置するためのタインバー配置用凹部52bを形成しており、タインバー配置用凹部52bは放射線方向と左右側方に開口する凹状に形成している。52cは連結用板状片52aに左右方向に開口させて形成したボルト孔であり、タインバー配置用凹部52bを間に挟んで二箇所に形成している。
【0039】
角部(頂部)52の連結用板状片52aには、図15に示すように、タインバー枢支体35を介してタインバー36の側端部を着脱自在に取り付けるようにしている。
【0040】
すなわち、タインバー枢支体35は、タインバー36をその軸線廻りに回転自在に支持する筒状のボス部61と、ボス部61の外周面から外方へ張り出し状に突設した一対の連結用耳片62,62とから形成している。そして、両連結用耳片62,62の内側面側に位置するボス部61の外周面には、図24に示すように、タインバー配置用凹部52bを形成する連結用板状片52aの周縁部を嵌入させるための嵌入溝61aを形成している。嵌入溝61aの一側壁は連結用耳片62,62が形成しており、タインバー配置用凹部52bに嵌入溝61aを介してタインバー枢支体35を嵌入させた際には、連結用板状片52aの外側面に連結用耳片62,62の内側面が面接触して内外側に重合状態となるようにしている。この際、連結用耳片62,62には左右方向に開口するボルト孔62a,62aが形成されており、これらボルト孔62a,62aは連結用板状片52aに形成したボルト孔52c,52cと左右方向に整合するようにしている。
【0041】
したがって、整合したボルト孔52c,62aに外側方から連結ボルト63を挿通して連結ボルト63の先端部にナット64を螺着することで、連結用板状片52aにタインバー36の側端部を挿通したタインバー枢支体35を取り付けることができる。この際、タインバー36の側端部にはその軸芯と直交する方向に貫通孔70が形成されており、タインバー枢支体35のボス部61にタインバー36の側端部を挿通して、ボス部61の外側端面よりも外側方へ貫通孔70を配置するとともに、貫通孔70中に抜け止めピン71を挿通して、抜け止めピン71をボス部61の外側端面にワッシャ72を介して当接することで、タインバー36がタインバー枢支体35から抜けないようにすることができる。また、反対の手順をたどることで、連結用板状片52aからタインバー36を取り外すことができる。その結果、連結用板状片52aにタインバー枢支体35を介してタインバー36の側端部を簡単に着脱自在に取り付けることができる。
【0042】
しかも、連結用板状片52aにタインバー配置用凹部52bを介してタインバー枢支体35を側方から連結することで、回転支持体34の周端面から放射線方向に取付部品等による突起状部が形成されるのを回避することができる。そのため、回転支持体34に穀稈が突起状部に引っ掛って、刈取効率を低減させるという不具合が発生するのを防止することができる。
【0043】
また、連結用板状片52aの外側面は、スポーク部54や連結部55の外側面に対して内側方に位置する段付き凹状面となしており、かかる連結用板状片52aの外側面にタインバー枢支体35を左右重合状態に連結しているため、回転支持体34の放射線方向はもとより、回転支持体34の外側方にも取付部材等が大きく張り出さないようにして、これらに植立穀稈が引っ掛かるのを回避することができる。
【0044】
(タイン37の取付構造)
タインバー36にはタイン37を1本ずつ着脱自在に取り付けるようにしている。すなわち、タイン37は、図16〜図22に示すように、穀稈に作用するタイン本片80と、タイン本片80の基端部(上端部)80aを伸延させて弦巻状に屈曲形成したコイル部形成片81と、コイル部形成片81から延設してタインバー36の周面に嵌合してタイン本片80の姿勢を保持する凹状の嵌合片82と、嵌合片82に延設してタインバー36に形成された係止孔73に抜き差し自在に挿入して係止する係止片83とを、バネ鋼鋼材である一本の丸棒材を屈曲させて一体的に形成している。
【0045】
タイン本片80は上下方向に伸延させて形成するとともに、下部を前方に凸状(「く」の字状)に折曲させて形成している。かかるタイン本片80はタインバー36から鉛直下方向に垂下させた姿勢が保持されるようにして、タイン本片80が植立穀稈をプラットフォーム21内に掻き込み作用するようにしている。
【0046】
コイル部形成片81は、タイン本片80の基端部(上端部)80aを前上方に向けて伸延させるとともに、タイン本片80の基端部80aよりも前方位置にて二重リングの弦巻状に屈曲させて形成している。二重リングの内径はタインバー36の外径W1と略同径に形成している(図25参照)。コイル部形成片81は、植立穀稈に前方から後方に掻込作用するタイン本片80の基端部80aに一体成形して、植立穀稈により後方から前方へ反作用Fを受けるタイン本片80が垂下姿勢を保持するように弾性付勢している。
【0047】
嵌合片82は、後方へ膨出する半円弧状に屈曲させて形成している。つまり、タイン本片80の基端部80a位置から上方へ伸延させるとともに、タインバー36の背面(後半部周面)に沿う湾曲状に伸延させ、さらに、その先端部82aをタイン本片80の基端部80a位置よりもやや前方位置まで伸延させている。そして、嵌合片82の先端部82aとコイル部形成片81の上端部81aとにより嵌合開口部84を形成している。ここで、図25に示すように、嵌合開口部84の開口幅W2はタインバー36の外径W1以下に形成するとともに、嵌合片82の半円弧径W3はタインバー36の外径W1以上に形成している。
【0048】
このようにして、嵌合片82は、タインバー36の後方から、つまり、タイン37が植立穀稈により後方から前方へ反作用Fを受ける方向(穀稈に掻込作用する方向とは反対方向)からタインバーの周面に嵌合させるようにしている。この際、嵌合開口部84の開口幅W2はタインバー36の外径W1以下に形成している。そのため、バネ鋼鋼材により成形している嵌合片82の先端部82aとコイル部形成片81の上端部81aの弾性付勢力に抗して嵌合開口部84をタインバー36の外径と同径となるまで開口させることで、タインバー36に嵌合片82を後方から嵌合させるとともに、嵌合開口部84によるタインバー36を上下方向から挟持付勢することができる。したがって、タインバー36に嵌合片82を堅実に嵌合させて、同状態に保持させることができる。
【0049】
係止片83は、嵌合片82の先端部82aを同一平面内で後方へUターンさせるように湾曲状に伸延させるとともに、鉛直下方へ略直角に折曲させて、先端部がコイル部形成片81の上端部81a側方位置まで達するように、直状に伸延させて形成している。ここで、係止片83とタイン本片80の基端部(上端部)80aは、図17に示すように、側面視にて略同一軸芯線上に配置している。そして、係止片83は、嵌合片82の嵌合方向(後方から前方へ略水平に嵌合させる方向)とは略直交する上方から、タインバー36に形成された係止孔73に挿入して係止されるようにしている。
【0050】
このようにタイン37を形成することで、仮にタイン37が圃場を引っ掻いた際にも、タイン37への荷重(反作用F)は嵌合片82の嵌合方向に作用するため、嵌合片82はタインバー36から外れる虞がない。そして、バネ鋼鋼材性の嵌合片82によるタインバー36への嵌合を堅実にして、同状態を保持させることができるため、タイン37の姿勢保持と、タイン37による穀稈への掻き込み効率を良好に確保することができる。
【0051】
次に、タインバー36にタイン37を取り付ける方法について、図23及び図24を参照しながら説明する。
【0052】
図23及び図24(a)に示すように、係止孔73に係止片83を上方から挿入する。この際、コイル部形成片81はタインバー36の後下方に配置する。つまり、嵌合開口部84がタインバー36の軸線方向(左右方向)に開口するように位置させる。
【0053】
続いて、図23及び図24(b)に示すように、上下方向に軸線を向けている係止片83を中心に、コイル部形成片81を前方へ90℃回転させる。この際、嵌合開口部84がタインバー36の後半部周面に弾性付勢状態にて嵌合されるため、係止片83が上方へ抜けるのを規制することができる。
【0054】
このように、タインバー36にタイン37を簡単かつ堅実に取り付けることができる。また、反対に手順を辿ることで、タインバー36からタイン37を簡単に取り外すことができる。この際、ボルト・ナット等の取り付け具は必要としない。
【0055】
次に、タインバー36へのタイン37の取付位置について説明するが、その取付位置はタイン37と刈刃装置22の穀稈案内片91bとの相対関係に係わるため、便宜上、まず刈刃装置22の構成を説明する。
【0056】
刈刃装置22は、図3及び図5に示すように、プラットフォーム21の前下端縁部にその左右幅前幅にわたって伸延する刈刃台90を取り付け、刈刃台90に多数の受刃91を前方(機体の前進方向)へ向けて突定し、受刃91上にて左右方向に伸延させて前端縁部を鋸刃状に形成した刈刃92を左右方向に一定幅にて往復摺動させることで、刈刃92と受刃91の相互作用にて植立穀稈の株元部が切断されるように構成している。受刃91は、基端部(後端部)の受刃本片91aと先端部(前端部)の穀稈案内片91bとから前後方向に伸延させ、かつ、前方へ先細り状に形成している。そして、多数の受刃91は、それぞれ左右幅方向に一定の間隔を開けて配置して、左右に隣接する受刃91,91の穀稈案内片91b,91b間に植立穀稈の株元部を案内して、その株元部を刈刃92により切断するようにしている。受刃本片91aには摺動溝(図示せず)を形成しており、摺動溝中を刈刃92が横断状に摺動するようにしている。
【0057】
タイン37のタイン本片80は、平面図である図5に示すように、左右に隣接する穀稈案内片91b,91b間の略中央部位置を示す仮想線Kと平面視で整合する位置に配置している。しかも、各タインバー36には多数のタイン37を左右方向に間隔を開けて取り付けるとともに、隣接するタインバー36同士に取り付けたタイン37同士は半ピッチずつずらして取り付けている。つまり、左右に隣接する穀稈案内片91b,91b同士の間隔をピッチPとすると、各タインバー37に多数取り付けるタイン37同士(具体的にはタイン本片80同士)は2つ分のピッチPを開け、隣接するタインバー37に取り付けるタイン37(具体的にはタイン本片80)相互の間隔は1つ分のピッチPを開けるようにしている。
【0058】
このように、各タイン37を左右に隣接する穀稈案内片91b,91b間の略中央部上方に配置しているため、各タイン37による植立穀稈の掻き込みが円滑かつ堅実になされる。そして、後続の刈刃装置22による植立穀稈の株元部の切断、さらには掻込オーガ25による掻込・搬送の各作業がスムーズになされる。
【符号の説明】
【0059】
1 コンバイン
24 掻き込みリール
33 リール支軸
34 回転支持体
35 タインバー枢支体
36 タインバー
37 タイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に植立した穀稈を掻き込む掻き込みリールを備えたコンバインであって、
掻き込みリールは、リール支軸に取り付けた一対の回転支持体と、両回転支持体の周縁部間に横架した複数のタインバーと、各タインバーに垂下状に取り付けて穀稈に掻込作用する複数のタインとを具備し、
回転支持体は、周縁部を多角形に形成した板状体となし、各角部にはタインバーの側端部を配置するためのタインバー配置用凹部を形成して、タインバー配置用凹部にタインバー枢支体を介してタインバーの側端部を取り付け、
タインバー枢支体は、タインバー配置用凹部に側方から連結したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記回転支持体の各角部は、タインバー配置用凹部の周縁部を薄肉板状に形成し、この周縁部にタインバー枢支体に形成した連結用耳片を側方から重合状態に連結したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記回転支持体は、前記リール支軸に取り付けるハブ部と、ハブ部から放射線方向に伸延する複数のスポーク部と、周方向に隣接するスポーク部の先端部同士を連結する連結部とを一体的に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記タインバーは、前記リール支軸と平行して伸延するパイプ状に形成して、両端部にはその軸線と直交する方向に貫通する貫通孔を形成し、
前記タインバー枢支体に形成したボス部にタインバーの両端部を貫通させて、ボス部の外側方位置にて貫通孔に抜け止めピンを貫通させて、タインバーを抜け止めしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−90570(P2012−90570A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240718(P2010−240718)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】