説明

コンバイン

【課題】コンバインにおけるディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置としてDOCとDPFを用いた技術において、排藁への着火の危険性を少なくする。
【解決手段】走行車台(2)上の左右一側に脱穀装置(5)を設け、他側にグレンタンク(4)を設けたコンバインにおいて、脱穀装置(5)とグレンタンク(4)との間の部位に、DOC(9)とDPF(10)を前側からこの順に配置し、グレンタンク(4)の前側に設けたエンジン(7)に一端を接続した前部排気管(8)の他端をDOC(9)の上部に接続し、該DOC(9)の内部を通過してDPF(10)から外部へ排出する後部排気管(11)をDPF(10)の下部に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来コンバインは、ディーゼルエンジンを搭載しており、その排気ガス浄化装置として、窒素酸化物を昇温させて吸着除去するDOC(Diesel Oxidation Catalyst)と、窒素酸化物に尿素を触媒として加水分解されたアンモニアを窒素酸化物に反応させて窒素酸化物を無害な窒素に変えるSCR(Selective Catalytic Reduction)17とにより構成した公知技術が特許文献1に記載されている。
【0003】
また、排気ガス通路に配置した酸化触媒コンバータ(以下、「DOC」という)の酸化触媒の作用により排気ガス中のNOからNO2を生成し、このNO2を酸化材としてディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPF」という)で捕集した排気ガス中の黒煙などの粒子状物質を焼却除去する技術が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−24510号公報
【特許文献2】特許2006−97652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DPFは、内部に備えるフィルタによって捕集された粒子状物質を焼却除去するために高温状態となって、コンバインが収穫作業中に圃場へ放出する排藁に排気ガスを吹き付けて発火する危険性がある。
【0006】
本発明は、コンバインにおけるディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置としてDOCとDPFを用いた技術において、排藁への着火の危険性を少なくするDOCとDPFの配置及び制御を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車台(2)上の左右一側に脱穀装置(5)を設け、他側にグレンタンク(4)を設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置(5)とグレンタンク(4)との間の部位に、DOC(9)とDPF(10)を前側からこの順に配置し、前記グレンタンク(4)の前側に設けたエンジン(7)に一端を接続した前部排気管(8)の他端をDOC(9)の上部に接続し、該DOC(9)の内部を通過してDPF(10)から外部へ排出する後部排気管(11)をDPF(10)の下部に接続したことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記DOC(9)の前端を側面視においてグレンタンク(4)の前面(4f)に近接させて配置し、前記前部排気管(8)をDOC(9)の前端部近傍の部位に接続した請求項1記載のコンバインとした。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記後部排気管(11)内に外気を吸入し、吸入した外気を旋回させながら後部排気管(11)内の排気ガスと混合して排出する排気冷却装置(12)を設けた請求項1又は請求項2に記載のコンバインとした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、機体の走行速度が所定速度以上である場合にのみ、前記DPF(10)内の排気ガス温度を上昇させて該DPF(10)に捕集された粒子状物質を燃焼させる再生制御を行う構成とした請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のコンバインとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、高温になるDPF(10)が走行車台(2)上の脱穀装置(5)とグレンタンク(4)との間の空間に配置されているため、排藁と接触しにくく、エンジン(7)に一端を接続した前部排気管(8)の他端をDOC(9)の上部に接続しているため、DOC(9)に高温の排気を送る前部排気管(8)への藁屑の付着を防止することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、DOC(9)の前端を側面視においてグレンタンク(4)の前面(4f)に近接させ、前記前部排気管(8)を、DOC(9)の前端部近傍の部位に接続しているので、排藁や藁屑の発火を効果的に防止できるものでありながら、前部排気管(8)における熱損失を低減し、DOC(9)及びDPF(10)による排気浄化効率を高めることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、後部排気管(11)を通って外部に放出される排気ガスの温度を低下させることができ、放出された排気ガスによる排藁や藁屑の発火を更に効果的に防止することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果に加えて、コンバインが停止した状態や低速で走行しながら行う場合に、排気ガス温度を上昇させる再生処理を行わないので、後部排気管(11)の終端部から排出される排気ガスによる危険性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】排気管の拡大平面図である。
【図3】コンバインのエンジン搭載状態を示す側面図である。
【図4】コンバインのエンジン搭載状態を示す平面図である。
【図5】エンジンルームの拡大側面図である。
【図6】エンジンルームの拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。なお、左右とはコンバイン側から前方に向かって左と右をいうものとする。
図1はコンバインの側面図を示し、クローラ走行装置1を装備した走行車台2の前部右側にキャビン3を搭載し、このキャビン3の後部にグレンタンク4を搭載し、該グレンタンク4の左側に脱穀装置5を搭載している。走行車台2の前側には刈取装置6を昇降可能に装着し、この刈取装置6で刈り取った穀稈をキャビン3の左側に設ける穀稈搬送装置で脱穀装置5に搬送する。
【0017】
エンジン7は、キャビン3の下部で走行車台2に搭載し、その前部排気管8をDOC9の前側上部に繋ぎ、DOC9からDPF10を通してDPF10の後下部に接続した後部排気管11から排気ガスを排出する。後部排気管11の後部には排気管冷却装置12を装着している。この排気管冷却装置12は、後部排気管11の外周に設ける吸気口12aから後部排気管11を囲んで排気口12b側に空気を誘導し、後部排気管11の外周に螺旋状に形成した誘導フィン11aで空気を後部排気管11の周囲で旋回させながら後方へ送って後部排気管11から地面に吹き出す排気ガスを冷却する。
【0018】
DOC9とDPF10の配置位置は、左側の脱穀装置5と右側のグレンタンク4の間で、かつピッチング油圧シリンダ13の左側で、走行車台2の左右及び前後の中央に位置して、キャビン3内の操縦席から離れている。そして、DOC9の前端部は、グレンタンク4の前面4fに近接している。このようなDPF10の位置は、脱穀装置5の唐箕が吸い込む空気を暖めて収穫する穀流を乾燥する効果がある。
【0019】
なお、ピッチング油圧シリンダ13は、クローラ走行装置1の左右高さを調整する油圧シリンダである。
DPF10は、フィルターで捕集した排気ガス中の黒煙などの粒子状物質が所定量以上になるとポスト噴射によってDPF11内に送り込んだ未燃焼ガスを燃焼させたり、エンジン7の吸気バルブを絞ることでDPF11内の温度を上昇させて再生処理を自動的に行うが、走行速度が所定速度以下であると、一定箇所に高温の排気ガスが排出されて排藁に着火する危険性があるので、再生処理を行わないように制御する。
【0020】
図5と図6は、エンジン7の右側を覆う原動カバー14の部分を示し、原動カバー14が上下のヒンジ15,16で取り付けられ、前側が開く構成である。原動カバー14の側面は上ネット部17と中間ネット部18と下ネット部19で構成され、中間ネット部18の外側に可動ルーバー21がルーバー駆動モータ21でルーバーを開閉するように設けられ、排塵ブロア19からブロアホース20で風が可動ルーバー21に吹き付けるように設けられている。22はエンジン7のクーリングファンである。
【0021】
ルーバー駆動モータ21と排塵ブロア19とブロアホース20が上下のヒンジ15,16の間に設けられた構成で、原動カバー14の開閉が支障なく行える。
図中の23はエアークリーナーで、キャビン3の上方に設けるプレクリーナー26から上部ダクト25と下部ダクト24を通して外気を吸気する。
【0022】
プレクリーナー26は、収穫作業中にはエンジン7の熱気を吸わないようにキャビン3の右側部上方に位置させ、コンバインを納屋に収納する場合には機体の中央上方に位置させるように、上部ダクト25と下部ダクト24の間に屈曲して回動可能な継手を連結している。継手はOリングでシールして締め付けなくても空気漏れを無くしている。また、継手は下部ダクト24の垂直穴部に上部ダクト25の下端を差し込んでノブボルトで回り止めをするようにする。
【0023】
エンジン7を覆うキャビン3は、前方へ回動したり側方へ回動したりしてエンジン7の周りを広く開放して保守点検を行いやすくするが、このキャビン3の開放でエンジン7の起動回路を開放する起動停止スイッチを設けてエンジンキーで起動操作しても起動しないようにするが、起動停止スイッチの回路遮断を一時的に接続する起動停止回避具を設け、この起動停止回避具で起動可能にした状態でブレーキぺダル踏みながらエンジンキーを回すとエンジン7が起動するようにすると、起動停止回避具を操作したことで十分な注意を払いながら起動操作をすることになって、保守点検時のエンジン起動を安全に行えるようになる。
【符号の説明】
【0024】
2 走行車台
4 グレンタンク
5 脱穀装置
7 エンジン
9 DOC
10 DPF
11 排気管(後部排気管)
12 排気管冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車台(2)上の左右一側に脱穀装置(5)を設け、他側にグレンタンク(4)を設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置(5)とグレンタンク(4)との間の部位に、DOC(9)とDPF(10)を前側からこの順に配置し、前記グレンタンク(4)の前側に設けたエンジン(7)に一端を接続した前部排気管(8)の他端をDOC(9)の上部に接続し、該DOC(9)の内部を通過してDPF(10)から外部へ排出する後部排気管(11)をDPF(10)の下部に接続したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記DOC(9)の前端を側面視においてグレンタンク(4)の前面(4f)に近接させて配置し、前記前部排気管(8)をDOC(9)の前端部近傍の部位に接続した請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記後部排気管(11)内に外気を吸入し、吸入した外気を旋回させながら後部排気管(11)内の排気ガスと混合して排出する排気冷却装置(12)を設けた請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
機体の走行速度が所定速度以上である場合にのみ、前記DPF(10)内の排気ガス温度を上昇させて該DPF(10)に捕集された粒子状物質を燃焼させる再生制御を行う構成とした請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48603(P2013−48603A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189273(P2011−189273)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】