説明

コンパクト容器用中皿

【課題】簡易な構成で効果の高い衝撃吸収性を有するコンパクト容器用中皿の提供の提供。
【解決手段】化粧料を充填し、コンパクト容器の収納凹部に収納可能な中皿であって、該中皿の外壁面および/または外底面の一部あるいは全部に、短繊維を静電植毛したことを特徴とするコンパクト容器用中皿。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化された粉末化粧料や粉末含有化粧料など外部からの衝撃に対して破損しやすい化粧料を充填保持するコンパクト容器用の中皿の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンパクト容器に収納されて使用される固形化粧料は、中皿に化粧料を充填・固形化し、これをコンパクト容器に収納するものが多い。また、固形化粧料は、その特性として、パフや塗布具による取れやすさが要求されるため、適度な硬さと、崩れやすさ、柔らかさを兼ね備えたものとなっている。そのため、化粧料自体が外部からの衝撃や振動に弱い場合があり、運搬や落下により容器に加わった衝撃がそのまま中皿から内容物の化粧料へ伝わることにより、化粧料に割れや剥がれなどの破損を生じることがある。特に、ソフトな感触を得るために固形化粧料の硬度を低く抑えるとその傾向が大きくなり、化粧料としての感触の広がりを求める上で障害となっていた。さらに、化粧料を充填した中皿を詰め替え用のレフィル製品とし、お客様がコンパクト容器に装着するタイプの製品においては、コンパクト容器への装着時に手が滑るなどして中皿を落し、化粧料に衝撃を与える場合があった。
【0003】
したがって、固形化粧料を充填保持する中皿と、かかる中皿を取り付け収納するためのコンパクト容器の収納凹部との間に、外部からの衝撃を吸収するための緩衝材を設けることが提案されている。具体的には、特許文献1に開示されているように、ゲル素材等からなる面状の衝撃吸収材を介在させたり、あるいは、特許文献2に開示されているように、中皿の4隅部に球状のシリコーンゲルを介在させることにより中皿をフローティング構造とするものが提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のようにゲル素材等の特殊素材を使用すると、組み立て時の部品数が増えて製造コストがかさみやすく、さらに、組み立て自体にも煩雑な工程を要する場合が多い。したがって、より効率的で衝撃吸収効果の高い方法が望まれていた。
【特許文献1】特開2007−167341
【特許文献2】特開2007−29234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、従来のコンパクト容器収納型化粧料のかかる欠点を克服し、より効率的で効果の高い衝撃吸収性を有するコンパクト容器用中皿の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、化粧料を充填し、コンパクト容器の収納凹部に収納可能な中皿であって、該中皿の外壁面および/または外底面の一部あるいは全部に、短繊維を静電植毛したことを特徴とするコンパクト容器用中皿である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンパクト容器用中皿は、中皿の外面に短繊維を静電植毛することにより、かかる植毛部がコンパクト容器外からの衝撃や振動を吸収して緩衝材の役割を果たすため、振動や落下等に起因する固形化粧料の破損の可能性が低くなる。このように外部からの衝撃への耐衝撃性の向上により、より低い硬度の固形化粧料が製造可能となることで、従来にないソフトな感触の化粧料を提供することが可能となる。さらに、詰め替え用レフィル製品の中皿をコンパクト容器に装着するとき、万が一中皿を落した場合においても、中皿への衝撃を低減しやすく、固形化粧料が破損する可能性が低くなる。
【0008】
また、本発明のコンパクト容器用中皿は、従来の緩衝機構付き容器と比較しても簡易な構成であるため、製造が容易であり、組み立て時の部品数も少なく製造コストも抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)本発明のコンパクト容器用中皿の第1態様の斜視図、(B)同平面図、(C)同正面図、(D)同底面図、(E)同A―A’端面図
【図2】(A)本発明のコンパクト容器用中皿の第2態様の平面図、(B)同正面図、(C)同底面図、(D)同 B―B’端面図
【図3】(A)本発明のコンパクト容器用中皿の第3態様の平面図、(B)同正面図、(C)同底面図、(D)同C―C’端面図
【図4】(A)本発明のコンパクト容器用中皿の第4態様の平面図、(B)同正面図、(C)同底面図、(D)同 D―D’端面図
【図5】(A)本発明のコンパクト容器用中皿の第5態様の平面図、(B)同正面図、(C)同底面図、(D)同E―E’端面図
【図6】(A)本発明の第5態様のコンパクト容器用中皿およびそれに対応するコンパクト容器の斜視図、(B)同コンパクト容器の部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のコンパクト容器用中皿の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0011】
図1(A)は、本発明のコンパクト容器用中皿の第1態様の斜視図、図1(B)は同平面図、図1(C)は同正面図、図1(D)は同底面図、図1(E)は同A―A’端面図である。図中、1は中皿、11は底部、12は周壁部、13は収納部、14は植毛部、111は外底面、121は外壁面をそれぞれ示す。
【0012】
本発明のコンパクト容器用中皿1は、有底皿状の容器であり、底部11および周壁部12に区画された収納部13内に固形化粧料を充填保持する。そして、第1の実施態様では、図1に示すように、中皿1の外底面111と外壁面121の全面を覆うように、短繊維を静電植毛処理した植毛部14が形成されている。ここで、静電植毛処理は周知慣用の方法により行うことができ、具体的には、静電植毛する範囲に接着剤を塗布し、植毛加工を行った後、乾燥工程を経てエアガン等で余剰の短繊維を除去し、クリアコート等による仕上げを行う方法を例示することができるが、静電植毛を行うことができれば、これに限定されるものではない。
【0013】
静電植毛に使用される短繊維としては、静電植毛用の短繊維として使用可能なものであれば特に限定されないが、例としてはナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリブチレンテフタレート等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の再生繊維、羊毛、絹、綿、木綿、麻等の天然繊維等が挙げられる。短繊維の形状としては、長さ0.3〜2mm、太さ1.0〜5デシテックスのものが好ましく、長さ0.4〜1.5mm、太さ1.1〜4.4デシテックスのものが特に好ましい。また、植毛される短繊維の密度としては、5000〜50000本/cmが好ましい。
【0014】
第1の実施態様のように、外底面111と外壁面121の全面に植毛部14を形成した中皿について、コンパクト容器への固定方法は、例えば収納凹部21の内周壁面と植毛された短繊維との摩擦力を利用することができる。具体的には、中皿1をコンパクト容器の収納凹部に収納したときの中皿1の外壁面121と収納凹部の内周壁面の間の距離よりも、外壁面121に施される短繊維の長さを長くする。これにより、短繊維の集合体とコンパクト容器の収納凹部の内周壁面との間で摩擦抵抗が生じ、中皿1をコンパクト容器内に安定的に保持することが可能となる。なお、本実施態様の中皿の固定手段はこれに限らず、後述するような係止手段を採用してもよい。さらに、他の固定手段として、ホットメルト接着剤等の接着剤により接着固定してもよい。
【0015】
図2は、本発明のコンパクト容器用中皿の第2の実施態様を表す。図に示すように、本実施態様のものは、中皿1の外底面111と外壁面121の一部に植毛部14が形成されている。具体的には、中皿1の四隅の角にあたる外底面111および外壁面121の部分に植毛部14が形成され、外底面111のほぼ中央で植毛部14が形成されていない部分には、中皿1をコンパクト容器の収納凹部に接着固定するため両面に接着性を有する接着シート15が貼付されている。この接着シート15は、特にその素材を限定するものではないが、エラストマー等の弾性素材を用いたものであれば、植毛部14の緩衝効果を妨げず、あるいは両者相俟ってより効果的に、中皿1を外部からの衝撃に対して保護することができるため好ましい。なお、外壁面121の植毛部14が形成されていない部分には、後述するようなコンパクト容器への係止手段を設けても良く、その場合は、接着シート15は必ずしも必要でなく、植毛部14が形成されていない外壁面121や外底面111に、植毛部14による緩衝効果を妨げない範囲内で、他の非接着性の緩衝材を併せて設けても良い。
【0016】
図3は、本発明のコンパクト容器用中皿の第3の実施態様を表す。図に示すように、本実施態様のものは、中皿1の外底面111の中央部を除く周辺部と、外壁面121の全部に植毛部14が形成されている。そして、外底面111のほぼ中央の植毛部14が形成されていない部分には、中皿1をコンパクト容器の収納凹部に接着固定するための接着シート15が貼付されている。なお、中皿1を収納凹部に固定する他の手段を有する場合、かかる接着シート15は必ずしも必要でなく、非接着性の他の緩衝材を設けても良い。
【0017】
図4は、本発明のコンパクト容器用中皿の第4の実施態様を表す。図に示すように、本実施態様のものは、中皿1の外壁面121の全部に植毛部14が形成されているが、外底面111には形成されていない。そして、外底面111には、弾性を有するゲル素材接着シート16が貼付されている。 このゲル素材接着シート16は中皿1を収納凹部に固定するとともに、外部からの衝撃を吸収する役割を果たすが、中皿1を収納凹部に固定する他の手段を有する場合、かかるゲル素材接着シート16の代わりに非接着性のゲル素材やエラストマー製の他の緩衝材を設けても良い。
【0018】
図5は、本発明のコンパクト容器用中皿の第5の実施態様を表す。図に示すように、本実施態様のものは、中皿1の外底面111の全部に植毛部14が形成されているが、外壁面121には形成されていない。そして、外壁面121には、中皿1をコンパクト容器に係合保持するための係止凹部17が設けられている。
【0019】
図6に示すように、本実施態様の中皿1に対応するコンパクト容器2は、収納凹部21の内壁面に係止突起211を有する。かかる係止突起211は、図6(B)に示すように、収納凹部21の内壁面の一部をコの字に切り欠いて形成した片部の先端側に設けられ、中皿1を収納凹部21に取り付ける際には、コンパクト容器が有する弾性により適宜片部が撓むことで係止突起211が外側に移動して中皿1を容易に挿入可能としている。そして、中皿1が収納凹部21内の固定位置に納まると、撓んでいた片部が復元して係止突起211が中皿1の係止凹部17に係合し、中皿1を固定する。
【0020】
以上の各実施態様のものは、中皿1が平面視で略正方形に形成されているが、形状はこれに限らず、長方形、円形、楕円形など適宜選択することができる。また、中皿1の材料としては、アルミニウム等の金属やポリエチレン等の合成樹脂を適宜使用することができる。
【0021】
本発明のコンパクト容器用中皿1に充填される固形化粧料としては、例えばファンデーション、粉白粉、頬紅、アイシャドウ、眉墨、口紅等、粉末の固形化工程を経て調製した化粧料や、粉末を含有する固形化粧料が好ましい。この粉末の固形化工程としては、粉末状化粧料のプレス成型やスラリー充填による成型等の工程を挙げることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 … … 中皿
2 … … コンパクト容器
11 … … 底部
12 … … 周壁部
13 … … 収納部
14 … … 植毛部
15 … … 接着シート
16 … … ゲル素材接着シート
17 … … 係止凹部
21 … … 収納凹部
22 … … パフ収納部
23 … … 蓋部
111 … … 外底面
121 … … 外壁面
211 … … 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を充填し、コンパクト容器の収納凹部に収納可能な中皿であって、該中皿の外壁面および/または外底面の一部あるいは全部に、短繊維を静電植毛したことを特徴とするコンパクト容器用中皿。
【請求項2】
前記コンパクト容器の収納凹部に収納された前記中皿の外壁面と、該収納凹部の内周壁面との間の距離よりも、前記中皿の外壁面に静電植毛される短繊維の長さを長く形成したことを特徴とする請求項1に記載のコンパクト容器用中皿。
【請求項3】
前記短繊維が静電植毛されていない前記中皿の外壁面および/または外底面に、中皿とコンパクト容器の接着手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンパクト容器用中皿。
【請求項4】
前記短繊維が静電植毛されていない前記中皿の外壁面および/または外底面に、弾性素材による緩衝手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のコンパクト容器用中皿。
【請求項5】
前記静電植毛がされていない前記中皿の外壁面に、コンパクト容器の収納凹部内に形成した係止突起を係合可能な係止凹部を設け、中皿をコンパクト容器に収納したときに該係止突起が該係止凹部に係合することにより中皿をコンパクト容器に着脱自在に固定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のコンパクト容器用中皿。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−125497(P2012−125497A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281627(P2010−281627)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)