説明

コンパクト容器

【課題】より使用性のよいコンパクト容器を提供すること。
【解決手段】化粧料を収納する容器本体10と、容器本体10の上部を覆う蓋体20と、を有するコンパクト容器1であって、蓋体20は、容器本体10に対してスライドして開閉するように取り付けられ、容器本体10に対して取り外し可能に取り付けられ、後方で軸支された2枚の板状体21、22で構成され該板状体の内面にはいずれも鏡M1、M2が付帯されることを特徴とするコンパクト容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料を収納するコンパクト容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクト容器には、スライド機構を有し、複数の段を形成することで複数の機能を持たせたコンパクト容器がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、コンパクト容器の側面にスライド機構を設け、蓋体となる部分と、化粧料が収納される部分(3段)と、鏡が付帯される部分とが水平に重なるように、互いに連結されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−252130
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、鏡が付帯される部分と化粧料が収納される部分とが、互いに水平に連結されている。この構成のコンパクト容器を用いる場合、使用者は化粧料が落ちないようにコンパクト容器を水平に保つ必要があるが、コンパクト容器を水平に保った状態では鏡も水平に保たれることになる。このため、使用者は鏡を見る場合に、上から覗き込むようにせねばならず、使用しにくいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、より使用性のよいコンパクト容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのコンパクト容器は次の構成である。
【0007】
(1)
化粧料を収納する容器本体と、前記容器本体の上部を覆う蓋体と、を有するコンパクト容器であって、前記蓋体は、前記容器本体に対してスライドして開閉するように取り付けられ、前記容器本体に対して取り外し可能に取り付けられ、後方で軸支された2枚の板状体で構成され該板状体の内面にはいずれも鏡が付帯されることを特徴とするコンパクト容器。
【0008】
(2)
前記容器本体には、前記蓋体に対して付勢される可撓片が形成され、前記蓋体には、前記可撓片が係合固定される係合溝及び前記蓋体が前記容器本体に対してスライドする際に当接する当接溝が形成されることを特徴とする(1)に記載のコンパクト容器。
【0009】
(3)
前記蓋体における前記2枚の板状体の前方には、前記板状体を互いに係止するため、前記板状体の一方に係止突起が形成され他方に係止溝が形成され、前記板状体における前記係止突起又は前記係止溝の側部には、前記板状体の端部を後方に押圧して前記端部を撓ませることで前記係止突起又は前記係止溝を移動させるための間隙が形成されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のコンパクト容器。
【発明の効果】
【0010】
(1)の構成においては、蓋体が容器本体に対してスライドして開閉するように取り付けられ、且つ後方で軸支された2枚の板状体で構成される。また、板状体のそれぞれには、鏡が付帯される。すると、容器本体から蓋体を取り外していない状態において、板状体に対して蝶着された板状体を起こすことで、片方の鏡を使用者に向けることができる。これにより、容器本体に対して水平にスライドして開閉させる仕組みの構成であっても、鏡を覗き込むようにみて化粧をする必要はない。したがって、より使用性を向上させることができる。
【0011】
また、蓋体が容器本体から取り外すことができ、且つ板状体と板状体とは後方が軸支されて蝶着された構成である。このため、蓋体を容器本体から取り外せば、2つの鏡を用いて合わせ鏡として用いることができ、1枚の鏡では見えない角度をも見ることができることとなり、より使用性を向上させることができる。
【0012】
(2)の構成においては、容器本体に可撓片が形成される一方、蓋体には当接溝が形成される。すると、蓋体の当接溝は下方から容器本体の可撓片によって付勢されることになる。このようにすると、蓋体を前後にスライドさせる際に、蓋体に容器本体から適度な摩擦抵抗が加えられ、蓋体のがたつきを防止し、蓋体に円滑なスライド動作をさせることができる。
【0013】
(3)の構成の構成においては、係止溝と係止突起の係合を外すための構成として、係止突起又は係止溝の後方側の側部に間隙を形成することとしている。このように、板状体に間隙を設けることのみで係止を外す構成とすることで、他の部材を用いることなく、係止及び係止の解除をすることができる。このため、部材点数を削減し、製作工程を削減するため、生産性がよくなる。また、間隙の手前にある板状体の端部を押圧するのみで係止を解除することができ、使用性を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図を用いて本実施形態のコンパクト容器1を説明する。図1はコンパクト容器1の構成を示す斜視図である。図2はコンパクト容器1の分離時の構成を示す斜視図であり、(a)が容器本体10と蓋体20との分離時の斜視図であり、(b)が分離した蓋体20を裏面から見た斜視図である。図3はコンパクト容器1の断面図及び側面図であり、(a)がコンパクト容器1の側面から見た断面図(及び可撓片12部分の上面図)であり、(b)が後方からみた側面図である。図4はコンパクト容器1の変形例の構成を示す斜視図である。
【0015】
(コンパクト容器1の概略構成)
図1及び図2を用いて、コンパクト容器1の概略構成を説明する。コンパクト容器1は、化粧料や塗布具を収納する容器本体10と、容器本体10の上部を覆う蓋体20とから構成される。
【0016】
本実施形態のコンパクト容器1は、蓋体20が容器本体10に対してスライドして開閉するように構成される。また、図2(a)に示すように、蓋体20は容器本体10から取り外して使用することができる。次に、容器本体10や蓋体20の各部を説明する。
【0017】
(コンパクト容器1の詳細構成)
図1乃至図3を用いて、コンパクト容器1の各部を詳細に説明する。
【0018】
容器本体10は、図1に示すように、化粧料を収納する収納部10Aや、チップ、ブラシ、パフ、スポンジ等の塗布具を収納する収納部10Bを有する。また、容器本体10は、上面が開口となっており、側面に蓋体20を水平方向にスライド移動させるスライド溝11が形成される。
【0019】
容器本体10の後方の上面には、図2及び図3に示すように、可撓片12が形成される。この可撓片12の突出部12bの頂部は、容器本体10の天面10aよりも上方へ突出している。また、可撓片12は、容器本体10と一体的に可撓性のある合成樹脂から構成されており、可撓片12の周囲には切欠12aがある。このような構成であるため、切欠12aの内部の部分は、可撓片12に対して上方からの押圧力が加わると撓み、可撓片12はこの押圧力に抗して上方に付勢される。
【0020】
蓋体20は、図1乃至図3に示すように、後方をピン等の軸30により軸支された2枚の板状体(上部の板状体21、下部の板状体22)から構成される。板状体21及び板状体22の内面には、いずれもそれぞれ鏡M1、M2が付帯される。鏡M1、M2は、どちらも通常の鏡としてもよいが、どちらか一方を拡大鏡としてもよい。
【0021】
また、板状体21の内面の前方には、板状体22と係止するための係止溝21aが形成される。同様に、板状体22の内面の前方には、板状体21と係止するための係止突起22aが形成される。また、係止突起22aの後方側の側部に、係止突起22aと隣接するようにして、板状体22を貫通するように形成された間隙22bが形成される。この間隙22bがあることにより、使用者が板状体22の端部22cを前方から後方に押圧すると、間隙22bよりも前方にある板状体22の端部22cが後方側に撓む。すると係止突起22aも同時に後方に移動し、係止溝21aと係止突起22aとの係止が外れる。これにより、板状体21が開くことになる。
【0022】
蓋体20の板状体22の側面には、容器本体10のスライド溝11に嵌まり込み、スライド可能に構成されるスライド突部23が形成される。ここで、スライド突部23とスライド溝11との間には、適度な間隙が形成される。これにより、蓋体20は容器本体10に対してスライド可能に構成される。
【0023】
また、本実施形態においては更に、円滑にスライドさせるために次に説明するような構成がある。具体的には、図2(b)に示すように、板状体22の裏面において、コンパクト容器1の前方側から後方側にかけて3つの溝が形成される。
【0024】
まず、最も前方には、係合溝22dが形成される。係合溝22dは、奥行きが短く深さが容器本体10の可撓片12のうち突出部12bが天面10aから突出している部分の高さよりも深い。このため、可撓片12の頂部が係合溝22dに当接せず、係合溝22dと可撓片12とが係合固定する。
【0025】
次に、中央には、前後方向に当接溝22eが延設される。当接溝22eは、奥行きが長く深さが可撓片12の高さよりも浅い。このため、蓋体20が容器本体10上をスライドする間、前述のように撓むことにより上方に付勢される可撓片12は、当接溝22eに当接する。
【0026】
最後に、最も後方には、係合溝22fが形成される。係合溝22fも奥行きが短く深さが容器本体10の可撓片12のうち突出部12bが天面10aから突出している部分の高さよりも深い。このため、可撓片12の頂部が係合溝22fに当接せず、係合溝22fと可撓片12とが係合固定する。
【0027】
(コンパクト容器1の動作)
この3つの溝により、コンパクト容器1は次のような動作をする。コンパクト容器1の未使用時には、図3(a)に示すように、容器本体10の可撓片12の突出部12bが蓋体20の係合溝22fに係合する。この場合において、係合溝22fは蓋体20を容器本体10に留めておくストッパの役割を果たす。
【0028】
ここで、使用者が蓋体20を持って後方側に力を加えると、可撓片12の突出部12bと係合溝22fとの係合が外れ、可撓片12の突出部12bは、当接溝22eと当接するようになる。この状態において、可撓片12の突出部12bは、下方に撓みつつ当接溝22eと当接し、当接溝22eを付勢する。これにより、蓋体20が容器本体10の前後にスライドされるとき、適度な摩擦抵抗が容器本体10から蓋体20に付与される。
【0029】
そして、蓋体20を更に後方にスライドさせていくと、可撓片12の突出部12bは当接溝22eと係合溝22dとの間の凸部に当たる。この状態で使用者が後方に力を加えると、可撓片12が前記凸部を乗り越えて係合溝22dに係合することとなる。このように可撓片12の突出部12bが係合溝22dに係合すると、蓋体20は容器本体10の後方で止まる。以上のように、係合溝22dはストッパの役割を果たす。
【0030】
さらにこの状態で使用者が後方に力を加えると、可撓片12が係合溝22dを超え、蓋体20が容器本体10から外れる。
【0031】
(コンパクト容器1の使用時の作用効果について)
以上のような構成により、使用時の状態を説明しつつ作用効果を詳細に説明する。
【0032】
まず、蓋体20が容器本体10に対してスライドして開閉するように取り付けられ、且つ後方で軸支された2枚の板状体21、22で構成される。板状体21、22のそれぞれには、鏡M1、M2が付帯される。すると、図1に示すように、容器本体10から蓋体20を取り外していない状態において、板状体22に対して蝶着された板状体21を起こすことで、鏡M1を使用者に向けることができる。これにより、容器本体10に対して水平にスライドして開閉させる仕組みの構成であっても、鏡M2を覗き込むようにみて化粧をする必要はない。したがって、より使用性を向上させることができる。
【0033】
また、図2に示すように蓋体20が容器本体10から取り外すことができ、且つ板状体21と板状体22とは後方が軸支され蝶着された構成である。このため、蓋体20を容器本体10から取り外せば、鏡M1と鏡M2とで合わせ鏡として用いることができ、1枚の鏡では見えない角度をも見ることができることとなり、より使用性を向上させることができる。
【0034】
更に、板状体21の鏡M1と板状体22の鏡M2とは、収納時に互いに向き合って収納される。このとき、鏡の面と化粧料とは向き合わない。このため、収納部10Aに収納された化粧料がつくことはなく、一般的な形態のコンパクト容器と比較して、収納時の鏡M1、M2の汚れを防止することができる。尚、ここでいう一般的な形態のコンパクト容器とは、容器本体と内面に鏡を貼着した蓋体とを後方で蝶着したものをいう。
【0035】
本実施形態においては、容器本体10に可撓片12が形成され、蓋体20に可撓片12の突出部12bが天面10aより突出した部分の高さよりも深さが浅い当接溝22eが形成される。したがって、蓋体20はスライドする際に、両側面のスライド突部23を容器本体10のスライド溝11に嵌め込みつつ、下方から可撓片12の突出部12bによって付勢される。このようにすると、蓋体20を容器本体10の前後にスライドさせる際に、蓋体20に容器本体10から適度な摩擦抵抗が加えられ、蓋体20のがたつきを防止し、蓋体20に円滑なスライド動作をさせることができる。
【0036】
また、係合溝22d及び係合溝22fを設けたことで、コンパクト容器1を開けて蓋体20を容器本体10から取り外す前や、コンパクト容器1を閉じて収納するときに、容器本体10の可撓片12が撓んで、蓋体20の係合溝22d、22fに適度な強度で嵌まり込む。このため、蓋体20が容器本体10から脱落することを防ぐことができ且つ取り外しも可能となり、より使用性を向上させることができる。
【0037】
本実施形態においては、蓋体20の2つの板状体21、22に形成される、係止溝21aと係止突起22aとの係合を外すための構成として、係止突起22aの後方側に間隙22bを形成することとしている。このように、板状体22に間隙22bを設けることのみで係止を外す構成とすることで、従来用いられていたようなフックピース等の他の部材を用いることなく、板状体21と板状体22の部材のみで係止及び係止の解除をすることができる。したがって、係止を解除するための部材を別途作る必要がなく、係止を解除するための部材を組み立てる必要もなくなる。このため、部材点数を削減し、製作工程を削減するため、生産性がよくなる。また、間隙22bの手前にある板状体22の端部22cを押圧するのみで係止溝21aと係止突起22aの係止を解除することができるようになり、使用性を向上させる。
【0038】
また、本実施形態においては、板状体21と板状体22の内面は鏡M1、M2のみとしたが、これに限るものではない。例えば、変形例として図4に示すように、板状体21の内面に、鏡M1の他、化粧料を収納する収納部20Aを形成することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、化粧料容器以外にも、蓋体が容器本体にスライド可能に構成された容器全般に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】コンパクト容器1の構成を示す斜視図。
【図2】コンパクト容器1の分離時の構成を示す斜視図。
【図3】コンパクト容器1の断面図及び側面図。
【図4】コンパクト容器1の変形例の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0041】
M1…鏡、M2…鏡、1…コンパクト容器、10…容器本体、10A…収納部、10B…収納部、10a…天面、11…スライド溝、12…可撓片、12a…切欠、12b…突出部、20…蓋体、20A…収納部、21…板状体、21a…係止溝、22…板状体、22a…係止突起、22b…間隙、22c…端部、22d…係合溝、22e…当接溝、22f…係合溝、23…スライド突部、30…軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収納する容器本体と、前記容器本体の上部を覆う蓋体と、を有するコンパクト容器であって、
前記蓋体は、
前記容器本体に対してスライドして開閉するように取り付けられ、
前記容器本体に対して取り外し可能に取り付けられ、
後方で軸支された2枚の板状体で構成され該板状体の内面にはいずれも鏡が付帯されることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
前記容器本体には、前記蓋体に対して付勢される可撓片が形成され、
前記蓋体には、前記可撓片が係合固定される係合溝及び前記蓋体が前記容器本体に対してスライドする際に当接する当接溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載のコンパクト容器。
【請求項3】
前記蓋体における前記2枚の板状体の前方には、前記板状体を互いに係止するため、前記板状体の一方に係止突起が形成され他方に係止溝が形成され、
前記板状体における前記係止突起又は前記係止溝の側部には、前記板状体の端部を後方に押圧して前記端部を撓ませることで前記係止突起又は前記係止溝を移動させるための間隙が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンパクト容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−228984(P2008−228984A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72684(P2007−72684)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】