コンパクト容器
【課題】蓋体の開閉操作が容易であり、容器の小型化を図ることのできるコンパクト容器の提供をその目的とする。
【解決手段】蓋体2の凹部13が、被係合部14より手前側に設けられ、容器本体1の凹所6が左右の垂直部6a,6bと、奥側垂直部7と、この奥側垂直部7から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面8と、さらにその手前側の水平底壁面9とで形成されており、平板状体のフックピース12の下端が閉蓋状態で、上記水平底壁面9に当接するよう位置決めされるようにした。
【解決手段】蓋体2の凹部13が、被係合部14より手前側に設けられ、容器本体1の凹所6が左右の垂直部6a,6bと、奥側垂直部7と、この奥側垂直部7から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面8と、さらにその手前側の水平底壁面9とで形成されており、平板状体のフックピース12の下端が閉蓋状態で、上記水平底壁面9に当接するよう位置決めされるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化を図ることのできる、操作性に優れるコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンパクト容器として、容器本体の前端縁部の凹所に、摺動自在のフックピースを設け、このフックピースを奥側に押圧すると、蓋体と容器本体との係止が解除され、蓋体が上方へ開くようになっているものが知られている。しかしながら、このコンパクト容器では、フックピースが容器本体の前端縁部に設けられているため、開蓋状態にするための操作手順としては、例えば、左手の親指でフックピースを押圧して上記係止を解除した後に、右手の親指で蓋体を充分な角度まで押し上げる、というような二動作が必要であり、操作性に欠ける、という問題がある。また、フックピースが容器本体の前端縁部に設けられているため、容器本体の前端縁部にフックピースを収める余分なスペースが必要となり、コンパクト容器の小型化を図りにくい、という問題もある。
【0003】
上記操作性に欠ける、という問題を解消するため、例えば、図13(a)に示すようなコンパクト容器が提案されている(特許文献1参照)。このコンパクト容器は、容器本体41の前端縁部に切欠凹所45を形成するとともに、この切欠凹所45の奥部に第1の係合突起43を設け、蓋体40の前端縁部にフックピース42を取付けるとともに第2の係合突起44を設け、蓋体40を容器本体41に対して閉じた時に上記第1の係合突起43と上記第2の係合突起44とが係止するようになっており、蓋体40側に取付けられたフックピース42を奥側に押すことにより、上記係止を解消して開蓋状態にすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−51686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に例示されるような、フックピース42を蓋体40側に設けたコンパクト容器では、フックピース42の回動中心42aが、これを製造する金型の関係で、第2の係合突起44に対して奥側に設けられている。これは、樹脂成形体の多くが射出成形機によって製造されているが、上記フックピース42の取付け部分のように、金型の型締型開方向に対して垂直方向に突出する、いわゆるアンダーカット部を有するものは、そのままでは脱型できないため、分割型を組み合わせたり、型の一部を進退させたりすることによって、上記アンダーカット部を無理なく脱型することが必要であることに起因する。すなわち、フックピース42の取付け部分は、フックピース42をはめ込むための凹部内に、アンダーカット部となる第2の係合突起44を設ける必要があり、その金型構造が複雑となるため、凹部内にアンダーカット部を有するフックピース42の取付け部分を、蓋体40の前端ぎりぎりに設けることができない。
【0006】
このように、フックピース42が蓋体40に取付けられた従来のコンパクト容器では、凹部内のアンダーカット部分を、蓋体の前端ぎりぎりに設けることができず、フックピース42の取付け位置が、第2の係合突起44に対して奥側に設けられている。この構成によれば、閉蓋状態からフックピース42を奥側に押圧するときの力が、図13(a)に示すように、まず、容器本体41の切欠凹所45の底部に向かって、白抜き矢印で示すように、斜め下向きに働くため、フックピース42によって蓋体40を持ち上げる方向とは逆の方向になる。したがって、フックピース42の揺動方向に押圧する力を、上向きの力として充分に利用することができず、開蓋に必要以上に強い力が要求される。よって、片手で開蓋ができるという点での利便性は向上したものの、対象ユーザーである女性にとっては、かえって操作性が悪いという問題が生じている。また、フックピース42の取付け位置が、第2の係合突起に対して奥側に設けられており、開蓋時に、奥側へ押圧されるフックピース42が、第2の係合突起44に当たって揺動が制限されるのを回避するため、フックピース42と第2の係合突起44との間に揺動に必要な充分の空間を設ける必要がある。したがって、容器本体41の前端縁部にフックピース42を設けるスペースが不要になっても、上記蓋体40側のフックピース42揺動のために、比較的大きなスペースが新たに必要となるため、コンパクト容器の小型化を充分に達成したとはいえない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、蓋体の開閉操作が容易で、しかも余分なスペースが不要で、容器の小型化を図ることのできるコンパクト容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のコンパクト容器は、容器本体の後端縁部に蓋体が開閉自在に取付けられ、上記容器本体の前端縁部に凹所が設けられ、その凹所内に係合部が形成され、上記蓋体の前端縁部に被係合部が形成されているとともに、フックピースを取付ける凹部が設けられ、その凹部にフックピースが揺動自在に取付けられており、上記係合部と上記被係合部との係合により閉蓋状態が保持され、上記フックピースを奥側に押圧し、揺動させることによって前記係合が解除され、開蓋状態になるコンパクト容器であって、上記容器本体の凹所が、奥側および左右の垂直部と、この奥側垂直部から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面と、さらにその手前側の水平底壁面とで形成され、その奥側垂直部に蓋体の被係合部と係合する係合部が形成されており、上記フックピースが平板状体からなり、その上端部に左右方向に延びる係合軸部が形成され、その下端が閉蓋状態において上記凹所の水平底壁面に当接するよう位置決めされているとともに、上記蓋体のフックピース取付け用凹部の左右内壁面に、フックピースの係合軸部と係合する係合凹部が形成され、この係合凹部が蓋体の被係合部より手前側に位置決めされており、閉蓋状態において上記フックピースを奥側に押圧することにより、その下端を上記凹所の底壁面に沿った状態で揺動させ、蓋体前端縁部を持ち上げて前記係合を解除するようになっていることをその要旨とする。
【0009】
本発明者らは、蓋体側にフックピースを取付けるコンパクト容器に関して、操作性の向上および小型化を図ることを目的に、研究を重ねた。そして、その過程で、蓋体の前端の手前側ぎりぎりにフックピースを取付けるための凹部を設けることができれば、フックピースを奥側に押圧するための大きな力が不要となり、コンパクト容器の開閉の操作性が向上するとともに、フックピースと蓋体の被係合部との間のスペースが狭くても、フックピースの動きが制限されず、コンパクト容器の小型化が図れるのではないかと想起した。そこで、蓋体の前端の手前側ぎりぎりにフックピースを取付けるための凹部を容易に設けることができないか、さらに研究を重ねた。その結果、金型を工夫することにより、上記凹部を有する蓋体を、簡単に脱型できることを突き止め、本発明に至った。すなわち、本発明は、従来、蓋体の前端ぎりぎりに複数の凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を容易に設けることができない、という常識を打破してなされたものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明のコンパクト容器は、従来の常識とは全く異なり、蓋体のフックピース取付け用凹部が、被係合部より手前側の前端ぎりぎりに形成されている。このため、閉蓋状態において、この部分に取付けられたフックピースを奥側に押圧するときの力が、図13(b)の白抜き矢印で示すように、これを斜め上方向に押し上げるように働き、フックピースを揺動させる力が、そのまま蓋体を持ち上げる力となる。そのため、従来の同種のコンパクト容器の開蓋時に必要とされる強い力が不要となり、操作性が向上している。また、フックピースが平板状体からなるため、揺動のためのスペースも狭くてすむ。そして、上記容器本体の凹所が奥側および左右の垂直部と、この奥側垂直部から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面と、さらにその手前側の水平底壁面とで形成され、フックピースの下端が、閉蓋状態において上記水平底壁面に当接するよう位置決めされているため、携帯時にコンパクト容器を落下させる等の衝撃によって上下方向から力が加わっても、その力によってフックピースが揺動することがなく、開蓋することがない。
【0011】
また、本発明のなかでも、平板状フックピースの下端が、その下端縁から奥側に向かって延びる凸部を含んでいるものは、閉蓋状態において、その下端が上記凹所の水平壁と当接する部分がより広くなるため、より衝撃に対して強いコンパクト容器となる。
【0012】
そして、本発明のなかでも、上記平板状フックピースの、蓋体の被係合部に対応する部分が、薄肉に切り欠かれているものは、フックピースの揺動に必要な空間をさらに少なくすることができる。
【0013】
なお、本発明において、「奥側」、「手前側」とは、コンパクト容器のフックピースが取付けられる面を正面としておいた場合に、その正面側を「手前側」といい、背面側(ヒンジ部によって蓋体が容器本体に取付けられる側)を「奥側」という。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例の斜視図である。
【図2】上記実施例の閉蓋状態の斜視図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】上記実施例におけるフックピースの説明図である。
【図5】(a)は、図4のY−Y断面図、(b)は、図2のX−X断面における容器本体の部分拡大図である。
【図6】上記実施例における蓋体の部分的な拡大説明図である。
【図7】上記実施例における蓋体およびフックピースの部分的な拡大説明図である。
【図8】上記実施例における蓋体およびフックピースの部分的な拡大説明図である。
【図9】上記実施例における蓋体およびフックピースの部分的な拡大説明図である。
【図10】上記実施例における蓋体の製法の説明図である。
【図11】上記実施例における蓋体の製法の説明図である。
【図12】上記実施例における蓋体の製法の説明図である。
【図13】(a)は、従来容器の部分的な説明図である。(b)は、本発明の一実施例の部分的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明を実施するための形態であるコンパクト容器Aの斜視図であり、1は容器本体、2は蓋体である。上記容器本体1は、平面視が8cm×8cmの略正方形の形状で、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)製である。蓋体2は容器本体1の上面全体を蓋する形状で、同じくPET製である。なお、上記蓋体2の後端部には、下向きにヒンジ部3が突設されており、このヒンジ部3が容器本体1の後端の溝部4と係合することにより、蓋体2が上方に開くようになっている。図2は、閉蓋時のコンパクト容器の斜視図である。なお、図1および図2において、各部分は模式的であり、実際の大きさとは異なっている(以下の図においても同じ)。
【0017】
上記容器本体1は、図1および図2のX−Xの断面図である図3に示すように、化粧料が充填された中皿等を収容するための収容凹部5が設けられ、容器本体1の前端縁中央部分には、凹所6が形成されている。この凹所6は、左右の垂直部6a,6bと、奥側垂直部7と、この奥側垂直部7から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面8と、さらにその手前側の水平底壁面9とを有している。上記奥側垂直部7の上部には、この部分の一部拡大図である図5(b)に示すように、係合部10が形成されており、上記傾斜底壁面8の傾斜角αは、水平底壁面9に対し、約45°に形成されている。また、上記水平底壁面9の長さiは、2.5mmに形成されている。
【0018】
上記蓋体2は、内側に鏡11が装着され、前端縁部にフックピース12を揺動自在に取付けるための凹部13が設けられている(図1に戻る)。この凹部13について、より詳しく説明すると、蓋体の部分的な拡大説明図である図6に示すように、凹部13の奥側に、被係合部14が形成されている。また、被係合部14の左右には、フックピース12の係合軸部19を取付けるための係合凹部16と、これを保持するための突起である保持部17とが設けられている。保持部17は、アンダーカット部18を有し、この部分が、凹部13内に取付けたフックピース12の抜け落ち防止効果を果たすようになっている。
【0019】
上記フックピース12は、容器本体1および蓋体2と同様にPET製であり、図4に示すように、平板状体に形成されており、その上端部に左右方向に延びる係合軸部19を有している。なお、その断面図を図5(a)に示す。そして、その裏面の中央部分が、蓋体の被係合部14に対応する部分が薄肉に切り欠かれた縦溝部20に形成されているとともに、この切り欠かれた部分以外の下端縁が、表面とは逆の方向に向かって延びる凸部12aに形成されている(図7参照)。この凸部12aの突出幅hは、約1.5mmである(図5(a)参照)。そして、フックピース12の係合軸部19を、蓋体の係合凹部16にはめ込むことにより(図7および図8参照)、図9に示すように、フックピース12を前後に揺動可能に蓋体2に取付けることができる。
【0020】
上記凹部13を有する蓋体2は、例えば、係合凹部16およびアンダーカット部18を有する保持部17部分を形成するための傾斜型27(図10参照)と、被係合部14を形成するための傾斜型32(図11参照)等を備えた特殊な金型を用いて形成することができる。
【0021】
すなわち、この金型は、図10および図11に示すように、主に蓋体2の係合凹部16およびアンダーカット部18を有する保持部17部分を賦形するための傾斜型27と、主に蓋体2の被係合部14を賦形するための傾斜型32とを備えている。また、これらの他、主として表面を賦形するためのキャビティ型21と、主として裏面を賦形するためのコア型30と、コア型30の下方に配置されているベース台23等を備えている。
【0022】
上記コア型30は、コアエレメント28と、これを支受するガイドエレメント29とを合わせた構造になっており、コア型30を進退方向に貫通するガイド孔31,34が並んで設けられている。また、上記傾斜型27が、上記ガイド孔31に挿通されその側面がガイド孔31の傾斜に沿ってスライド自在に配置されており、上記傾斜型32が、上記ガイド孔34に挿通されその側面がガイド孔34の傾斜に沿ってスライド自在に配置されている。
【0023】
そして、傾斜型27,32の下端部は、前記ベース台23に設けられた摺動用のガイドブロック26,33に、それぞれ摺動自在な状態で係止されている。なお、上記ベース台23は、ガイドブロック26,33を取付けるために、上下2枚のベースプレート24,25を組み合わせた構造になっており、不動の台座36に、昇降自在に取付けられている。
【0024】
上記ガイドブロック26は、その傾斜型27の摺動面26aが手前側(図10において左側)に向かって30°の下り傾斜に形成されており、傾斜型27が、後述するように、ガイド孔31の傾斜に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型27の下端面が、30°の傾斜角を維持した姿勢のまま斜めに摺動するようになっている(図10参照)。また、上記ガイドブロック33は、傾斜型32が、ガイド孔34の傾斜に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型32の下端面が、水平方向に摺動するようになっている(図11参照)。
【0025】
上記凹部13を有する蓋体2は、上記の金型を用い、例えば、つぎのようにして得ることができる。
【0026】
すなわち、上記傾斜型27,32が、蓋体2に対して図12のように配置された金型を、射出成形機に取付け、型締めすることにより、キャビティ型21とコア型30とを互いに閉じ合わせる(図10,図11参照)。このとき、ガイド孔31,34内に挿通された傾斜型27,32は、ガイド孔31,34の傾斜面によって、コア型30に押し付けられた状態になり、閉じ合わせられる。これにより、上記キャビティ型21とコア型30と傾斜型27,32とで、蓋体2(係合凹部16およびアンダーカット部18を有する保持部17部分および被係合部14部分を含む)を賦形するための空間が形成される。
【0027】
そこで、上記賦形用空間内に、所定の経路(図示せず)を経由して、樹脂材料を高圧で射出し、冷却することにより、目的とする、凹部13を有する形状の蓋体2を得ることができる。
【0028】
そして、型開きにより上記蓋体2を取り出す際には、まず、ベース台23を上昇させることにより傾斜型27,32を上昇させ、同時に上記コア型30も上昇させる。つぎに、傾斜型27,32をコア型30よりさらに上昇させる。この動作に伴い、コア型30のガイド孔31,34から、傾斜型27,32の上端部が上方に突出するとともに、傾斜型27,32の側面が、上記ガイド孔31,34の傾斜面に沿ってスライドし、矢印で示すように、上記傾斜型27,32がそれぞれ後方に開く。これにより、上記蓋体2が型抜き可能な状態になり、取り出すことができる。なお、上記傾斜型27が後方に開く際、傾斜型27は、その下端部が、ガイドブロック26の傾斜した摺動面26aに沿って摺動するため、その傾斜姿勢が後方に30°傾斜した姿勢を保った状態のまま後方に開くようになっている。このため、アンダーカット部を有する部分の型抜きを、30°斜め方向に、安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0029】
このようにして得られた蓋体2は、その前端ぎりぎりに、凹部内にさらにアンダーカット部を有する、すなわち、複数の凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有する、フックピース取付け用の凹部13が設けられている。そして、この凹部13が、被係合部14より手前側に位置決めされているため、コンパクト容器Aは、すでに図13(b)を用いて説明したように、開蓋状態にするためにフックピース12を奥側へ押圧する力が軽くなり、操作性が向上する。また、上記容器本体1の凹所6が、奥側垂直部7および左右の垂直部6a,6bと、奥側垂直部7から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面8と、さらにその手前側の水平底壁面9とで形成され、フックピース12の下端が閉蓋状態で、上記水平底壁面9に当接するよう位置決めされているため、上下方向から力が加わっても、その力がフックピース12を揺動させることがほとんどなく、携帯時にコンパクト容器Aを落下させる等の衝撃によって開蓋することがない。
【0030】
そして、フックピース12が平板状体からなり、その左右の側端部に左右方向に延びる係合軸部19が形成されているため、フックピース12を設けるスペースが最小化され、揺動に必要なスペースも狭くてすむ。また、フックピース12の奥側面の一部が、蓋体2の被係合部14に対応する部分が、薄肉に切り欠かかれた縦溝部20に形成されているため、フックピース12の揺動に必要なスペースをさらに狭くすることができ、より省スペース化を図ることができる。さらに、フックピース12が、その下端縁から奥側に延びる凸部12aを含んでいるため、容器本体1の凹所6の水平底壁面9と当接する面積が広くなり、コンパクト容器Aを落下させる等の衝撃を与えても簡単に開蓋せず、より衝撃に対して強いものとなる。
【0031】
上記の例において、容器本体1、蓋体2およびフックピース12は、いずれもPETからなるが、その他の可撓性を有する合成樹脂等を用いることができ、それぞれを同一の樹脂または異なる樹脂からなるようにしてもよい。なかでも、合成樹脂として、PET,メタクリル樹脂(PMMA),アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS),アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS),ポリプロピレン(PP)を用いると、成形性,耐久性,軽量性の点で好ましい。
【0032】
上記の例において、容器本体1の凹所6における傾斜底壁面8の傾斜角αは、水平底壁面9に対して約45°に形成されているが、35°〜55°の範囲で形成することが好ましい。なかでも、40°〜50°の範囲に形成すると、開蓋時にフックピース12の下端部を、上記傾斜底壁面8に沿って動かしやすくなるため、よりスムーズな開蓋が行えるようになるため、より好ましい。
【0033】
上記の例において、容器本体1の凹所6における水平底壁面9の長さiは、2.5mmに形成されているが、2〜4mmの範囲で形成することが好ましい。なかでも、2〜3mmの範囲に形成することがより好ましい。すなわち、短か過ぎると、フックピース12の下端が閉蓋状態で当接しにくい傾向がみられ、逆に、長過ぎると意味なくスペースを取ることになり、容器の小型化に反する傾向がみられるためである。
【0034】
上記の例において、フックピース12の裏面の中央部分が、蓋体2の被係合部14に対応する部分を切欠いた縦溝部20に形成されているが、コンパクト容器のサイズやその厚みによっては、被係合部14との間に充分なスペースを設けることが可能であるため、その場合には設けなくてもよい。また、フックピース12の下端縁が奥側に向かって延びる凸部12aを含み、その突出幅hが約1.5mmに形成されているが、突出幅hは、0.5〜2.5mmの範囲で形成することが好ましい。なかでも、フックピース12の揺動し易さと、容器本体1の凹所6の水平底壁面9との当接面積の点から、1.0〜2.0mmの範囲に形成することがより好ましい。なお、フックピース12の下端自体が、上記水平底壁面9と充分に当接している場合には、凸部12aを設けなくてもよい。
【0035】
本発明のコンパクト容器は、フックピースの揺動中心、すなわち、蓋体の、フックピースの係合軸部と係合する係合凹部が、蓋体の被係合部より手前側に設けられることを最大の特徴としている。したがって、蓋体の係合凹部を、被係合部より手前側に設けることができれば、必ずしも前記の金型を用いる必要はなく、その形成方法は任意である。
【0036】
なお、本発明のコンパクト容器の形状は、図1に示すような略四角形だけでなく、略楕円形、略台形等、様々の形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、蓋体の開閉操作が容易であり、小型化が求められるコンパクト容器に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 容器本体
2 蓋体
6 凹所
6a,6b 左右の垂直部
7 奥側垂直部
8 傾斜底壁面
9 水平底壁面
12 フックピース
13 凹部
14 被係合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化を図ることのできる、操作性に優れるコンパクト容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンパクト容器として、容器本体の前端縁部の凹所に、摺動自在のフックピースを設け、このフックピースを奥側に押圧すると、蓋体と容器本体との係止が解除され、蓋体が上方へ開くようになっているものが知られている。しかしながら、このコンパクト容器では、フックピースが容器本体の前端縁部に設けられているため、開蓋状態にするための操作手順としては、例えば、左手の親指でフックピースを押圧して上記係止を解除した後に、右手の親指で蓋体を充分な角度まで押し上げる、というような二動作が必要であり、操作性に欠ける、という問題がある。また、フックピースが容器本体の前端縁部に設けられているため、容器本体の前端縁部にフックピースを収める余分なスペースが必要となり、コンパクト容器の小型化を図りにくい、という問題もある。
【0003】
上記操作性に欠ける、という問題を解消するため、例えば、図13(a)に示すようなコンパクト容器が提案されている(特許文献1参照)。このコンパクト容器は、容器本体41の前端縁部に切欠凹所45を形成するとともに、この切欠凹所45の奥部に第1の係合突起43を設け、蓋体40の前端縁部にフックピース42を取付けるとともに第2の係合突起44を設け、蓋体40を容器本体41に対して閉じた時に上記第1の係合突起43と上記第2の係合突起44とが係止するようになっており、蓋体40側に取付けられたフックピース42を奥側に押すことにより、上記係止を解消して開蓋状態にすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−51686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に例示されるような、フックピース42を蓋体40側に設けたコンパクト容器では、フックピース42の回動中心42aが、これを製造する金型の関係で、第2の係合突起44に対して奥側に設けられている。これは、樹脂成形体の多くが射出成形機によって製造されているが、上記フックピース42の取付け部分のように、金型の型締型開方向に対して垂直方向に突出する、いわゆるアンダーカット部を有するものは、そのままでは脱型できないため、分割型を組み合わせたり、型の一部を進退させたりすることによって、上記アンダーカット部を無理なく脱型することが必要であることに起因する。すなわち、フックピース42の取付け部分は、フックピース42をはめ込むための凹部内に、アンダーカット部となる第2の係合突起44を設ける必要があり、その金型構造が複雑となるため、凹部内にアンダーカット部を有するフックピース42の取付け部分を、蓋体40の前端ぎりぎりに設けることができない。
【0006】
このように、フックピース42が蓋体40に取付けられた従来のコンパクト容器では、凹部内のアンダーカット部分を、蓋体の前端ぎりぎりに設けることができず、フックピース42の取付け位置が、第2の係合突起44に対して奥側に設けられている。この構成によれば、閉蓋状態からフックピース42を奥側に押圧するときの力が、図13(a)に示すように、まず、容器本体41の切欠凹所45の底部に向かって、白抜き矢印で示すように、斜め下向きに働くため、フックピース42によって蓋体40を持ち上げる方向とは逆の方向になる。したがって、フックピース42の揺動方向に押圧する力を、上向きの力として充分に利用することができず、開蓋に必要以上に強い力が要求される。よって、片手で開蓋ができるという点での利便性は向上したものの、対象ユーザーである女性にとっては、かえって操作性が悪いという問題が生じている。また、フックピース42の取付け位置が、第2の係合突起に対して奥側に設けられており、開蓋時に、奥側へ押圧されるフックピース42が、第2の係合突起44に当たって揺動が制限されるのを回避するため、フックピース42と第2の係合突起44との間に揺動に必要な充分の空間を設ける必要がある。したがって、容器本体41の前端縁部にフックピース42を設けるスペースが不要になっても、上記蓋体40側のフックピース42揺動のために、比較的大きなスペースが新たに必要となるため、コンパクト容器の小型化を充分に達成したとはいえない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、蓋体の開閉操作が容易で、しかも余分なスペースが不要で、容器の小型化を図ることのできるコンパクト容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のコンパクト容器は、容器本体の後端縁部に蓋体が開閉自在に取付けられ、上記容器本体の前端縁部に凹所が設けられ、その凹所内に係合部が形成され、上記蓋体の前端縁部に被係合部が形成されているとともに、フックピースを取付ける凹部が設けられ、その凹部にフックピースが揺動自在に取付けられており、上記係合部と上記被係合部との係合により閉蓋状態が保持され、上記フックピースを奥側に押圧し、揺動させることによって前記係合が解除され、開蓋状態になるコンパクト容器であって、上記容器本体の凹所が、奥側および左右の垂直部と、この奥側垂直部から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面と、さらにその手前側の水平底壁面とで形成され、その奥側垂直部に蓋体の被係合部と係合する係合部が形成されており、上記フックピースが平板状体からなり、その上端部に左右方向に延びる係合軸部が形成され、その下端が閉蓋状態において上記凹所の水平底壁面に当接するよう位置決めされているとともに、上記蓋体のフックピース取付け用凹部の左右内壁面に、フックピースの係合軸部と係合する係合凹部が形成され、この係合凹部が蓋体の被係合部より手前側に位置決めされており、閉蓋状態において上記フックピースを奥側に押圧することにより、その下端を上記凹所の底壁面に沿った状態で揺動させ、蓋体前端縁部を持ち上げて前記係合を解除するようになっていることをその要旨とする。
【0009】
本発明者らは、蓋体側にフックピースを取付けるコンパクト容器に関して、操作性の向上および小型化を図ることを目的に、研究を重ねた。そして、その過程で、蓋体の前端の手前側ぎりぎりにフックピースを取付けるための凹部を設けることができれば、フックピースを奥側に押圧するための大きな力が不要となり、コンパクト容器の開閉の操作性が向上するとともに、フックピースと蓋体の被係合部との間のスペースが狭くても、フックピースの動きが制限されず、コンパクト容器の小型化が図れるのではないかと想起した。そこで、蓋体の前端の手前側ぎりぎりにフックピースを取付けるための凹部を容易に設けることができないか、さらに研究を重ねた。その結果、金型を工夫することにより、上記凹部を有する蓋体を、簡単に脱型できることを突き止め、本発明に至った。すなわち、本発明は、従来、蓋体の前端ぎりぎりに複数の凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を容易に設けることができない、という常識を打破してなされたものである。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明のコンパクト容器は、従来の常識とは全く異なり、蓋体のフックピース取付け用凹部が、被係合部より手前側の前端ぎりぎりに形成されている。このため、閉蓋状態において、この部分に取付けられたフックピースを奥側に押圧するときの力が、図13(b)の白抜き矢印で示すように、これを斜め上方向に押し上げるように働き、フックピースを揺動させる力が、そのまま蓋体を持ち上げる力となる。そのため、従来の同種のコンパクト容器の開蓋時に必要とされる強い力が不要となり、操作性が向上している。また、フックピースが平板状体からなるため、揺動のためのスペースも狭くてすむ。そして、上記容器本体の凹所が奥側および左右の垂直部と、この奥側垂直部から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面と、さらにその手前側の水平底壁面とで形成され、フックピースの下端が、閉蓋状態において上記水平底壁面に当接するよう位置決めされているため、携帯時にコンパクト容器を落下させる等の衝撃によって上下方向から力が加わっても、その力によってフックピースが揺動することがなく、開蓋することがない。
【0011】
また、本発明のなかでも、平板状フックピースの下端が、その下端縁から奥側に向かって延びる凸部を含んでいるものは、閉蓋状態において、その下端が上記凹所の水平壁と当接する部分がより広くなるため、より衝撃に対して強いコンパクト容器となる。
【0012】
そして、本発明のなかでも、上記平板状フックピースの、蓋体の被係合部に対応する部分が、薄肉に切り欠かれているものは、フックピースの揺動に必要な空間をさらに少なくすることができる。
【0013】
なお、本発明において、「奥側」、「手前側」とは、コンパクト容器のフックピースが取付けられる面を正面としておいた場合に、その正面側を「手前側」といい、背面側(ヒンジ部によって蓋体が容器本体に取付けられる側)を「奥側」という。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例の斜視図である。
【図2】上記実施例の閉蓋状態の斜視図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】上記実施例におけるフックピースの説明図である。
【図5】(a)は、図4のY−Y断面図、(b)は、図2のX−X断面における容器本体の部分拡大図である。
【図6】上記実施例における蓋体の部分的な拡大説明図である。
【図7】上記実施例における蓋体およびフックピースの部分的な拡大説明図である。
【図8】上記実施例における蓋体およびフックピースの部分的な拡大説明図である。
【図9】上記実施例における蓋体およびフックピースの部分的な拡大説明図である。
【図10】上記実施例における蓋体の製法の説明図である。
【図11】上記実施例における蓋体の製法の説明図である。
【図12】上記実施例における蓋体の製法の説明図である。
【図13】(a)は、従来容器の部分的な説明図である。(b)は、本発明の一実施例の部分的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明を実施するための形態であるコンパクト容器Aの斜視図であり、1は容器本体、2は蓋体である。上記容器本体1は、平面視が8cm×8cmの略正方形の形状で、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)製である。蓋体2は容器本体1の上面全体を蓋する形状で、同じくPET製である。なお、上記蓋体2の後端部には、下向きにヒンジ部3が突設されており、このヒンジ部3が容器本体1の後端の溝部4と係合することにより、蓋体2が上方に開くようになっている。図2は、閉蓋時のコンパクト容器の斜視図である。なお、図1および図2において、各部分は模式的であり、実際の大きさとは異なっている(以下の図においても同じ)。
【0017】
上記容器本体1は、図1および図2のX−Xの断面図である図3に示すように、化粧料が充填された中皿等を収容するための収容凹部5が設けられ、容器本体1の前端縁中央部分には、凹所6が形成されている。この凹所6は、左右の垂直部6a,6bと、奥側垂直部7と、この奥側垂直部7から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面8と、さらにその手前側の水平底壁面9とを有している。上記奥側垂直部7の上部には、この部分の一部拡大図である図5(b)に示すように、係合部10が形成されており、上記傾斜底壁面8の傾斜角αは、水平底壁面9に対し、約45°に形成されている。また、上記水平底壁面9の長さiは、2.5mmに形成されている。
【0018】
上記蓋体2は、内側に鏡11が装着され、前端縁部にフックピース12を揺動自在に取付けるための凹部13が設けられている(図1に戻る)。この凹部13について、より詳しく説明すると、蓋体の部分的な拡大説明図である図6に示すように、凹部13の奥側に、被係合部14が形成されている。また、被係合部14の左右には、フックピース12の係合軸部19を取付けるための係合凹部16と、これを保持するための突起である保持部17とが設けられている。保持部17は、アンダーカット部18を有し、この部分が、凹部13内に取付けたフックピース12の抜け落ち防止効果を果たすようになっている。
【0019】
上記フックピース12は、容器本体1および蓋体2と同様にPET製であり、図4に示すように、平板状体に形成されており、その上端部に左右方向に延びる係合軸部19を有している。なお、その断面図を図5(a)に示す。そして、その裏面の中央部分が、蓋体の被係合部14に対応する部分が薄肉に切り欠かれた縦溝部20に形成されているとともに、この切り欠かれた部分以外の下端縁が、表面とは逆の方向に向かって延びる凸部12aに形成されている(図7参照)。この凸部12aの突出幅hは、約1.5mmである(図5(a)参照)。そして、フックピース12の係合軸部19を、蓋体の係合凹部16にはめ込むことにより(図7および図8参照)、図9に示すように、フックピース12を前後に揺動可能に蓋体2に取付けることができる。
【0020】
上記凹部13を有する蓋体2は、例えば、係合凹部16およびアンダーカット部18を有する保持部17部分を形成するための傾斜型27(図10参照)と、被係合部14を形成するための傾斜型32(図11参照)等を備えた特殊な金型を用いて形成することができる。
【0021】
すなわち、この金型は、図10および図11に示すように、主に蓋体2の係合凹部16およびアンダーカット部18を有する保持部17部分を賦形するための傾斜型27と、主に蓋体2の被係合部14を賦形するための傾斜型32とを備えている。また、これらの他、主として表面を賦形するためのキャビティ型21と、主として裏面を賦形するためのコア型30と、コア型30の下方に配置されているベース台23等を備えている。
【0022】
上記コア型30は、コアエレメント28と、これを支受するガイドエレメント29とを合わせた構造になっており、コア型30を進退方向に貫通するガイド孔31,34が並んで設けられている。また、上記傾斜型27が、上記ガイド孔31に挿通されその側面がガイド孔31の傾斜に沿ってスライド自在に配置されており、上記傾斜型32が、上記ガイド孔34に挿通されその側面がガイド孔34の傾斜に沿ってスライド自在に配置されている。
【0023】
そして、傾斜型27,32の下端部は、前記ベース台23に設けられた摺動用のガイドブロック26,33に、それぞれ摺動自在な状態で係止されている。なお、上記ベース台23は、ガイドブロック26,33を取付けるために、上下2枚のベースプレート24,25を組み合わせた構造になっており、不動の台座36に、昇降自在に取付けられている。
【0024】
上記ガイドブロック26は、その傾斜型27の摺動面26aが手前側(図10において左側)に向かって30°の下り傾斜に形成されており、傾斜型27が、後述するように、ガイド孔31の傾斜に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型27の下端面が、30°の傾斜角を維持した姿勢のまま斜めに摺動するようになっている(図10参照)。また、上記ガイドブロック33は、傾斜型32が、ガイド孔34の傾斜に沿ってスライドすると、その動作に伴い、傾斜型32の下端面が、水平方向に摺動するようになっている(図11参照)。
【0025】
上記凹部13を有する蓋体2は、上記の金型を用い、例えば、つぎのようにして得ることができる。
【0026】
すなわち、上記傾斜型27,32が、蓋体2に対して図12のように配置された金型を、射出成形機に取付け、型締めすることにより、キャビティ型21とコア型30とを互いに閉じ合わせる(図10,図11参照)。このとき、ガイド孔31,34内に挿通された傾斜型27,32は、ガイド孔31,34の傾斜面によって、コア型30に押し付けられた状態になり、閉じ合わせられる。これにより、上記キャビティ型21とコア型30と傾斜型27,32とで、蓋体2(係合凹部16およびアンダーカット部18を有する保持部17部分および被係合部14部分を含む)を賦形するための空間が形成される。
【0027】
そこで、上記賦形用空間内に、所定の経路(図示せず)を経由して、樹脂材料を高圧で射出し、冷却することにより、目的とする、凹部13を有する形状の蓋体2を得ることができる。
【0028】
そして、型開きにより上記蓋体2を取り出す際には、まず、ベース台23を上昇させることにより傾斜型27,32を上昇させ、同時に上記コア型30も上昇させる。つぎに、傾斜型27,32をコア型30よりさらに上昇させる。この動作に伴い、コア型30のガイド孔31,34から、傾斜型27,32の上端部が上方に突出するとともに、傾斜型27,32の側面が、上記ガイド孔31,34の傾斜面に沿ってスライドし、矢印で示すように、上記傾斜型27,32がそれぞれ後方に開く。これにより、上記蓋体2が型抜き可能な状態になり、取り出すことができる。なお、上記傾斜型27が後方に開く際、傾斜型27は、その下端部が、ガイドブロック26の傾斜した摺動面26aに沿って摺動するため、その傾斜姿勢が後方に30°傾斜した姿勢を保った状態のまま後方に開くようになっている。このため、アンダーカット部を有する部分の型抜きを、30°斜め方向に、安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0029】
このようにして得られた蓋体2は、その前端ぎりぎりに、凹部内にさらにアンダーカット部を有する、すなわち、複数の凹凸の方向が異なる複数のアンダーカット部を有する、フックピース取付け用の凹部13が設けられている。そして、この凹部13が、被係合部14より手前側に位置決めされているため、コンパクト容器Aは、すでに図13(b)を用いて説明したように、開蓋状態にするためにフックピース12を奥側へ押圧する力が軽くなり、操作性が向上する。また、上記容器本体1の凹所6が、奥側垂直部7および左右の垂直部6a,6bと、奥側垂直部7から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面8と、さらにその手前側の水平底壁面9とで形成され、フックピース12の下端が閉蓋状態で、上記水平底壁面9に当接するよう位置決めされているため、上下方向から力が加わっても、その力がフックピース12を揺動させることがほとんどなく、携帯時にコンパクト容器Aを落下させる等の衝撃によって開蓋することがない。
【0030】
そして、フックピース12が平板状体からなり、その左右の側端部に左右方向に延びる係合軸部19が形成されているため、フックピース12を設けるスペースが最小化され、揺動に必要なスペースも狭くてすむ。また、フックピース12の奥側面の一部が、蓋体2の被係合部14に対応する部分が、薄肉に切り欠かかれた縦溝部20に形成されているため、フックピース12の揺動に必要なスペースをさらに狭くすることができ、より省スペース化を図ることができる。さらに、フックピース12が、その下端縁から奥側に延びる凸部12aを含んでいるため、容器本体1の凹所6の水平底壁面9と当接する面積が広くなり、コンパクト容器Aを落下させる等の衝撃を与えても簡単に開蓋せず、より衝撃に対して強いものとなる。
【0031】
上記の例において、容器本体1、蓋体2およびフックピース12は、いずれもPETからなるが、その他の可撓性を有する合成樹脂等を用いることができ、それぞれを同一の樹脂または異なる樹脂からなるようにしてもよい。なかでも、合成樹脂として、PET,メタクリル樹脂(PMMA),アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS),アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS),ポリプロピレン(PP)を用いると、成形性,耐久性,軽量性の点で好ましい。
【0032】
上記の例において、容器本体1の凹所6における傾斜底壁面8の傾斜角αは、水平底壁面9に対して約45°に形成されているが、35°〜55°の範囲で形成することが好ましい。なかでも、40°〜50°の範囲に形成すると、開蓋時にフックピース12の下端部を、上記傾斜底壁面8に沿って動かしやすくなるため、よりスムーズな開蓋が行えるようになるため、より好ましい。
【0033】
上記の例において、容器本体1の凹所6における水平底壁面9の長さiは、2.5mmに形成されているが、2〜4mmの範囲で形成することが好ましい。なかでも、2〜3mmの範囲に形成することがより好ましい。すなわち、短か過ぎると、フックピース12の下端が閉蓋状態で当接しにくい傾向がみられ、逆に、長過ぎると意味なくスペースを取ることになり、容器の小型化に反する傾向がみられるためである。
【0034】
上記の例において、フックピース12の裏面の中央部分が、蓋体2の被係合部14に対応する部分を切欠いた縦溝部20に形成されているが、コンパクト容器のサイズやその厚みによっては、被係合部14との間に充分なスペースを設けることが可能であるため、その場合には設けなくてもよい。また、フックピース12の下端縁が奥側に向かって延びる凸部12aを含み、その突出幅hが約1.5mmに形成されているが、突出幅hは、0.5〜2.5mmの範囲で形成することが好ましい。なかでも、フックピース12の揺動し易さと、容器本体1の凹所6の水平底壁面9との当接面積の点から、1.0〜2.0mmの範囲に形成することがより好ましい。なお、フックピース12の下端自体が、上記水平底壁面9と充分に当接している場合には、凸部12aを設けなくてもよい。
【0035】
本発明のコンパクト容器は、フックピースの揺動中心、すなわち、蓋体の、フックピースの係合軸部と係合する係合凹部が、蓋体の被係合部より手前側に設けられることを最大の特徴としている。したがって、蓋体の係合凹部を、被係合部より手前側に設けることができれば、必ずしも前記の金型を用いる必要はなく、その形成方法は任意である。
【0036】
なお、本発明のコンパクト容器の形状は、図1に示すような略四角形だけでなく、略楕円形、略台形等、様々の形状とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、蓋体の開閉操作が容易であり、小型化が求められるコンパクト容器に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 容器本体
2 蓋体
6 凹所
6a,6b 左右の垂直部
7 奥側垂直部
8 傾斜底壁面
9 水平底壁面
12 フックピース
13 凹部
14 被係合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の後端縁部に蓋体が開閉自在に取付けられ、上記容器本体の前端縁部に凹所が設けられ、その凹所内に係合部が形成され、上記蓋体の前端縁部に被係合部が形成されているとともに、フックピースを取付ける凹部が設けられ、その凹部にフックピースが揺動自在に取付けられており、上記係合部と上記被係合部との係合により閉蓋状態が保持され、上記フックピースを奥側に押圧し、揺動させることによって前記係合が解除され、開蓋状態になるコンパクト容器であって、上記容器本体の凹所が、奥側および左右の垂直部と、この奥側垂直部から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面と、さらにその手前側の水平底壁面とで形成され、その奥側垂直部に蓋体の被係合部と係合する係合部が形成されており、上記フックピースが平板状体からなり、その上端部に左右方向に延びる係合軸部が形成され、その下端が閉蓋状態において上記凹所の水平底壁面に当接するよう位置決めされているとともに、上記蓋体のフックピース取付け用凹部の左右内壁面に、フックピースの係合軸部と係合する係合凹部が形成され、この係合凹部が蓋体の被係合部より手前側に位置決めされており、閉蓋状態において上記フックピースを奥側に押圧することにより、その下端を上記凹所の底壁面に沿った状態で揺動させ、蓋体前端縁部を持ち上げて前記係合を解除するようになっていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
上記平板状フックピースの下端が、その下端縁から奥側に向かって延びる凸部を含んでいる請求項1記載のコンパクト容器。
【請求項3】
上記平板状フックピースの、蓋体の被係合部に対応する部分が、薄肉に切り欠かれている請求項1または2記載のコンパクト容器。
【請求項1】
容器本体の後端縁部に蓋体が開閉自在に取付けられ、上記容器本体の前端縁部に凹所が設けられ、その凹所内に係合部が形成され、上記蓋体の前端縁部に被係合部が形成されているとともに、フックピースを取付ける凹部が設けられ、その凹部にフックピースが揺動自在に取付けられており、上記係合部と上記被係合部との係合により閉蓋状態が保持され、上記フックピースを奥側に押圧し、揺動させることによって前記係合が解除され、開蓋状態になるコンパクト容器であって、上記容器本体の凹所が、奥側および左右の垂直部と、この奥側垂直部から手前側に向かって下り傾斜となる傾斜底壁面と、さらにその手前側の水平底壁面とで形成され、その奥側垂直部に蓋体の被係合部と係合する係合部が形成されており、上記フックピースが平板状体からなり、その上端部に左右方向に延びる係合軸部が形成され、その下端が閉蓋状態において上記凹所の水平底壁面に当接するよう位置決めされているとともに、上記蓋体のフックピース取付け用凹部の左右内壁面に、フックピースの係合軸部と係合する係合凹部が形成され、この係合凹部が蓋体の被係合部より手前側に位置決めされており、閉蓋状態において上記フックピースを奥側に押圧することにより、その下端を上記凹所の底壁面に沿った状態で揺動させ、蓋体前端縁部を持ち上げて前記係合を解除するようになっていることを特徴とするコンパクト容器。
【請求項2】
上記平板状フックピースの下端が、その下端縁から奥側に向かって延びる凸部を含んでいる請求項1記載のコンパクト容器。
【請求項3】
上記平板状フックピースの、蓋体の被係合部に対応する部分が、薄肉に切り欠かれている請求項1または2記載のコンパクト容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−61021(P2012−61021A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205273(P2010−205273)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
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