説明

コークスプッシング及び石炭装入プロセスの際にコークス炉室内において負圧を生成させるための方法

本発明は、コークス炉室から煙道ガスを抽出するための方法に関し、この方法において、コークスケークのコークス炉室からの排出及びコークス炉室への装入のプロセスの際に発生する煙道ガスが、コークスケークの上方の頂部空間で生成される真空によって抽出される。コークス炉室の上方の頂部空間におけるこの真空は、コークス炉室の側部壁又はコークスケークを通る流路を介して生成される。有利な実施形態では、真空は、二次加熱室において生成され、例えば、コークス炉室ドアの開放時に接続ラインの遮断装置を開放することによって二次加熱室に接続される真空供給槽から再び抽出されることができる。本発明による方法は、煙道ガスの大気中への望ましくない放出を回避する。本発明はまた、この方法を実施することができる装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際、コークス炉室内において負圧を生成させるための方法に関し、これにより、特にコークス炉室の装入及びプッシング工程の際に発生する有害な煙道ガスをコークス炉室から吸引し、これらのガスが周囲環境に漏洩するのを防止する。本発明はまた、コークス炉室内において負圧を生成させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスは往々にして、水平に装入されるコークス炉室において製造され、石炭装入に引き続き、石炭から使用可能なコークスを製造するコークス化プロセスが行われる。この構造型式では、問題のないコークスガスの発生を確保するために、石炭のない空間が、コークスケークの上方に設けられる。加熱時に石炭から漏れるコークス炉ガスが、この石炭のない空間に集められ、空気を入れることによって焼却される。あらゆる側からのコークスケークの均一な加熱を確保するため、部分的に燃焼したコークスガスは、コークス炉室の側壁に置かれた特別な流路に案内され、実際のコークス炉室の下方に配置された二次加熱空間に通される。そこで、コークスガスは、さらなる量の空気を入れることによって完全に焼却される。これにより、コークスケークもまた、下方から、かくしてあらゆる側から加熱される。この種のコークス炉は、燃焼熱の使用に応じて、「熱回収」又は「非回収」コークス炉と呼ばれる。典型的な構造型式は、米国特許第4344820A号明細書及び同4287024A号明細書に開示されている。
【0003】
一般に、コークス炉室の作動は、周期的に繰り返して運転される。一定時間の後、石炭の乾留が終了し、コークスがコークス炉室から除去される。これは、コークスプッシングの周期において、コークスをさらに移送するために車両内に移すこと又は冷却装置内に移すことによって行われる。その後、コークス炉室には、再び、新たな石炭が装入される。一般的にコークス炉室がちょうど石炭の限界量に対する容量を提供するので、幾つかのコークス炉室を統合してコークス炉のバンクが形成される。その結果、コークスを連続的に製造することができる。
【0004】
コークスプッシング及び石炭装入の工程の際、コークス炉室のドアが開放されなければならない。例えば、炉のドアの開放が早すぎると、非燃焼煙道ガスは、開放したドア又は一次空気の開口から周囲環境に漏洩する。炉が空になると、炉に、予熱されていない石炭が再び装入される。石炭が炉に装入されると、炉空間が1100℃〜1400℃の範囲に及ぶ高温であるため、粗ガスの多量の発生と焼却が自然発生的に生ずる。これは、コークス作成プロセス開始時に発生する多量の煙道ガスによるものである。従来の構造型式では、これらの煙道ガスは、際限なく大気に漏洩し得る。これは、石炭装入時にドアが開放していると、閉鎖ドアが設けられた燃焼チャンバ内の負圧を維持することができないからである。石炭装入工程時に漏れる煙道ガスの量はまた、周囲環境に対して負担となり、運転要員を危険にさらす。この理由のため、従来技術では、このような煙道ガスの好ましくない漏れを回避しようとして、多数の試験や実験が行われてきた。
【0005】
米国特許第3844901A号明細書は含塵高温ガスの吸引装置を記載しており、前記装置は、排出源の上方に先端が置かれ支持ピラーによって支持されたテーパ状屋根と、屋根の上部域によって形成された熱膨張域とを備え、屋根の上部域に置かれ屋根の長さ全体にわたって延びる吸引流路が設けられ、吸引流路の横断面が吸引源の方へ拡幅しており、吸引流路には、吸引流路の長さ全体にわたって恒常的な吸引負圧を確保するため、空気取入口が設けられている。この設計は、あらゆる方法及び化学プロセスに対して請求されているが、特に、吸引流路の開口部を前記屋根の先端に配置して煙道ガスが屋根内に排出されるように、コークス炉室のドアの上方に屋根が置かれた水平なコークス炉室に適している。この屋根は、コークス炉室の前面全体に沿って延びている。この構造体は定置式であり、コークス炉室のドアの前にかなりの空間が必要となり、前記空間は、コークス炉の装入機用として利用できない。
【0006】
英国特許第365934号明細書は、コークスケークの上方に炉の自由空間を備えたコークス炉室を記載しており、コークスケークには、石炭乾留時に発生するガスを回収するため、コークス炉室の天井の開口を通る流路が設けられ、これらのガスが接続パイプを通して全てのコークス炉室に連結されているガス収集パイプ内に吸引され、接続パイプとガス収集パイプとの間に、圧力を制御するための装置が配置されている。この発明の一実施形態では、コークスケークの上方の炉の自由空間の圧力は、吸引圧力を調整することによって、石炭乾留プロセスの関連した段階に適合される。
【0007】
コークスプッシング及び石炭装入の際の煙道ガスの吸引は、記載されていない。さらに、石炭乾留プロセスの前にコークスケーク内への流路を具体化するのはコストがかかる。したがって、コークスプッシング及び石炭装入時に発生する煙道ガスを、この工程の際にコークスケークの上方の炉の自由空間において確立される負圧によって吸収するのが好都合である。一次及び二次加熱空間における負圧の生成は、従来技術において既に開示されてきた。煙道ガスの吸引のため、負圧を調節しなければならない。これは、この目的のため、一定期間の間のみ、負圧を増大させるからである。
【0008】
英国特許第447036号明細書は、コークス作成レトルト状に加熱された石炭を蒸留し乾留するための方法を開示しており、これらのコークス作成レトルトが、コークス炉バンクを形成するように列をなして配置され、石炭が、600℃の温度が得られるまで、乾燥し蒸留するように次第に加熱され、これにより冷却される。レトルトには、負圧によってコークスガスの吸引に利用することもできる垂直な伝熱ダクトを設けることができる。前記伝熱ダクトは、プロセスの一実施形態においてコークス作成レトルトの下の煙道ガス流路に接続される。このようにして、煙道ガス流路を介して負圧をコークス作成レトルトの炉の自由空間内に吸い込むことができる。これにより、コークスガスの制御された利用を伴う石炭乾留を達成することができる。コークスプッシング及び石炭装入の際の煙道ガスの特別な吸い込みのためのプロセス工程は、開示されていない。
【0009】
コークス炉室における負圧の調整も、従来技術において開示されてきた。欧州特許第1230321B1号明細書は、コークス炉バッテリーにおいて石炭乾留時に発生する高温の粗ガスを排出するための方法を記載しており、粗ガスが、600℃〜1000℃の温度で炉チャンバから回収され、粗ガス温度を低下させることなしに高温ガス収集本管に導入され、炉チャンバ内の圧力は、炉室からの粗ガスの出口と高温ガス収集本管との間に配置され、高温ガス流を遮断し絞る装置によって、高温ガス収集本管の圧力レベルとは別個に測定され調節され、その位置は、割り当てられた炉室において測定された圧力の関数として制御され、高温ガス収集本管からのガスは、蒸気ボイラコントロール又はスプリットリアクタに通される。この発明のプロセスによって、石炭乾留時に発生する高温の粗ガスを、さらなる処理を行うことなく、粗ガス温度を完全焼却又は熱分解単位に至るまで減少させることなく、炉室におけるコークス作成プロセスに影響を及ぼすことなしに、供給することができる。高温ガス収集本管は、真空を生成するため、僅かな負圧に維持される。このプロセスは、コークスプッシング及び石炭装入の際の、煙道ガスの迅速な吸い込みのためのプロセス工程を開示していない。
【0010】
上述のプロセス又は装置の欠点は、ガスの吸引のための特別なプロセス工程が提供されていないことである。しかしながら、このプロセス工程は、特にこの目的のために提供されなければならない。これは、コークス炉室のドアが開放されているとき、汚染物質を伴ったかなりの量の煙道ガスが、コークスプッシング及び石炭装入のわずかな瞬間に大気中に漏れ得るからである。
【0011】
したがって、本発明の課題は、コークス炉室内において通常運転時と比較して増大した負圧を炉内で生成させ調節することによって、コークスプッシング及び石炭装入時に発生する煙道ガスを吸い込んでコークス炉室内に戻すための方法を提供することである。上昇した負圧という語は、大気圧力と比較してさらに減少した圧力を意味するものと理解すべきである。吸引は、吸引が完了し排出物がなくなるように、短時間内に比較的大きな負圧を利用できるように行わなければならない。
【0012】
本発明は、コークス炉室の天井の空間が通気用として機能する装置に利用されることが多いので、コークス炉室の天井の構造体を必要としないという利点も有するであろう。コークス炉室の天井の空間が吸引装置用として必要とされない場合には、装入し、清浄にし、又はプロセス制御するための構造体を、コークス炉室の天井に設けてもよい。
【0013】
本発明は、この課題を、コークス炉室のドアを開放し、一次加熱空間とも呼ばれるコークスケークの上方の炉の自由空間においてコークスケーク又は石炭ケークをプッシングし装入する期間の間、上昇した負圧が炉内に生成されるように、二次加熱空間から流路を経て側壁を通して吸い込みを行う負圧の吸い込みシステムによって解決する。
【0014】
例えば、吸引側で流路に接続された特別な吸い込み装置によって、これを達成することができる。コークス炉室のドアが開放しているとき、一次加熱空間内の圧力は、このように低下され、ドアの開放後のコークスプッシングの際に発生する煙道ガスが、大気に漏れる代わりに、一次加熱空間の内部に吸引される。この方法及びこれと関連した装置によって、空間は、コークス炉室の天井にもコークス炉室のドアの前にも必要とされない。
【0015】
請求項は、特に、コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室内において負圧を生成させるための方法であって、
・コークス炉室に、石炭乾留のため石炭の層が充填され、これにより、煙道ガスが生成され、
・石炭装入の後、石炭が、石炭乾留のため加熱され、
・これらの揮発性石炭成分が、この目的に役立つことを意図した炉の自由空間において石炭装入のすぐ上方に半化学量論的に供給された空気によって部分的に酸化され、非燃焼揮発性石炭成分並びに部分的な酸化の際に生成されるガスを燃焼させるための燃焼システムがコークス炉室の下に配置され、
・コークス炉室の側壁に流路を有し、これらの流路が、コークス炉室の上部のコークスがないガス側の部分を、コークス炉室の下の燃焼システムと接続する方法において、
・負圧が、石炭ケークの上方の炉の自由空間においてこれらの流路を通して生成され、負圧が、時限的な石炭装入又はコークスプッシング工程の際に発生する炉の自由空間から煙道ガスを吸い込む働きをする
ことを特徴とする方法に関する。
【0016】
本発明を有利に実施するために、吸い込み工程は、コークス炉室のドアの開放の5分前に開始され、コークス炉室のドアの閉鎖の30分後に終了する。煙道ガスのコークス炉室からの最適な吸引は、このように確保される。本発明の典型的な実施形態では、吸い込み工程は、ドアの閉鎖後、4時間まで継続される。煙道ガスには、すすが含まれるかもしれない。
【0017】
簡単な構造型式では、流路を吸い込み装置の吸引側に接続して一次加熱空間内に負圧が作り出されるように、側壁に流路を設け、コークス炉室を吸引方向の端部側に配置し、負圧を直接形成することが考えられる。しかしながら、好都合な態様では、コークス炉室を吸引方向の端部側に配置した状態で、コークス炉室の下に置かれた二次加熱空間において負圧を低下させ、この負圧を、側壁の流路いわゆる「降下」流路を介して一次加熱空間内に吸い込ませる。
【0018】
煙道ガスの完全な吸引に要する典型的な負圧は、コークス炉室のドアの近くの一次加熱空間において−20Pa〜−50Paの範囲である。この負圧を得るため、二次加熱空間からの廃ガスの排出及び一次加熱空間内への空気の供給を、一時的に遮断することができる。本発明の幾つかの実施形態では、−120Paまでの負圧を得ることもできる。この本発明の吸引された煙道ガスをさらに任意の目的に使用することができる。
【0019】
例えば、別の実施形態では、コークス炉室を吸引方向の端部側に配置し、コークス炉室のドアの開放時に弁を経て二次加熱空間に開放されるように連結され、コークスケークの上方の炉の自由空間において短時間の間、負圧を生成する真空受槽を用いるのが好都合である。このようにして、コークスケークの上方の炉の自由空間における負圧は、流路を介して二次加熱空間から吸い込まれる。
【0020】
この場合には、真空受槽は、上昇した負圧の状態にあり、コークス炉室のドアが開放すると、二次加熱空間とすぐに接続されるであろう。これにより、一次加熱空間内の負圧は、コークス炉室からのガスの漏洩を確実に防止するのに十分である。コークス炉室の下の燃焼システムにおける負圧は、ロック可能な二次流路を経て二次加熱空間に連結される真空受槽によってこのように生成され、ロック可能な二次流路は、コークスケークの上方の炉の自由空間における負圧が流路を介して吸い込まれるように、吸引プロセスのために二次加熱空間に短距離に接続されている。吸引プロセスの後、真空受槽を適当な装置によって二次加熱空間から分離し、再び真空にすることができる。
【0021】
本発明の更なる実施形態では、燃焼システムにおける負圧は、コークス炉室の外側に配置された負圧収容真空ラインによって生成され、負圧が、流路を介してコークスケークの上方の炉の自由空間の分岐ラインから吸い込まれる。この真空ラインは、コークス炉室又はコークス炉バンクの付近の任意の箇所に配置することができる。例えば、コークス炉室のドアの下への配置が可能である。しかし、コークス炉室の天井への配置も可能である。
【0022】
本発明はまた、負圧を吸い込む前記コークス炉室の下の燃焼システムにおいて別の流路を介して負圧を吸い込むブロワによって、コークス炉室の下の燃焼システムにおいて負圧を生成させることも実施可能である。その際、ブロワの動作を制御する装置によって、負圧を制御することができる。受槽は、この目的のために必ずしも必要とされない。
【0023】
請求項はまた、コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室内において負圧を生成させるための装置であって、前記装置は、
・コークス炉室に、乾留するためにコークスケークを装入することができ、コークスケークの上方に、装入後に乾留用の石炭が加温される炉の自由空間が設けられ、
・側壁が、負圧を吸い込むのに適した流路を収容し、
・非燃焼揮発性石炭成分並びに部分的な酸化の際に生成されるガスを燃焼させるための燃焼システムが、コークス炉室の下に配置され、
・コークス炉室の側壁が流路を含み、これらの流路が、コークス炉室の上部のコークスがないガス側の部分を、コークス炉室の下の燃焼システムと接続する装置において、
・コークス炉室の下の燃焼システムが、燃焼システムに負圧を装入することができる外方に延びた二次流路を装備しており、
・コークスケークの上方の炉の自由空間に、燃焼システム及び流路を介して負圧を装入することができ、
・外方に延びた二次流路のうち少なくとも1つが、調整装置を装備している
ことを特徴とする装置に関する。
【0024】
要求される真空に対する真空受槽又は吸い込み装置の大きさに応じて、真空受槽と二次加熱空間との接続のロッキング機構がそれに対応して構成される。真空受槽が小さく、上昇した負圧を吸収するのに備える場合には、ロッキング機構は、迅速かつ完全に開放しなければならない。この場合には、例えば、スライドゲートが適当である。ロッキング機構は、真空受槽と二次加熱空間との間の二次流路をすぐに完全に開放し、二次加熱空間及びそれらの間に位置する流路を介して一次加熱空間内に十分な負圧を生成する。しかしながら、真空受槽の容積が所要の負圧に対して大きい場合には、例えば微妙な投入のためには、スピンドルが十分であろう。
【0025】
コークスプッシング及び石炭装入工程の際にコークス炉室内の負圧を制御するための独創的な装置の一実施形態では、請求項は、真空用の調節装置を有し、二次加熱空間を吸い込み装置の吸引側と接続し、調節装置がスライドゲートである流路に関する。
【0026】
コークスプッシング及び石炭装入工程の際にコークス炉室内の負圧を制御するための別の実施形態では、請求項は、調節装置として、スライドゲートの代わりに、スピンドルを
利用する流路に関する。最後にコークスプッシング及び石炭装入工程の際にコークス炉室内の負圧を制御するための別の実施形態では、請求項は、調節装置としてフラップを利用する流路に関する。しかしながら、原則的に、側壁に設けた流路を介して二次流路を通して所望のレベルで所望の要求期間内で一次加熱空間内の真空の調整を行うあらゆる調節装置が、適当であると思われる。
【0027】
この目的のために利用される本発明の方法及び装置の利点は、コークス炉室のドアの開放時に、負圧がコークスケークの上方の炉の自由空間にすぐに生成され、ドアの開放の後にコークスプッシング時に発生する煙道ガスが、大気中に放出される代わりに、一次加熱空間の内部に吸い込まれることであり、これによって得られる本方法及び装置は、コークス炉室の天井にもコークス炉室のドアの前にも、空間を必要としない。環境及びプラント要員に対して危険を及ぼす大気中への望ましくない排出及び煙道ガスの放出が、このようにして回避される。
【0028】
以下、2つの図面によって、本発明の装置について説明する。これらの図面は、本発明の装置の設計及び構造に対する実施形態の例を示しているにすぎず、本発明の装置は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、一次加熱空間と二次加熱空間とを備えたコークス炉室の側面図である。
【図2】図2は、一次加熱空間と二次加熱空間とを備えたコークス炉室の別の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、一次加熱空間(2)と、二次加熱空間(3)とを備えたコークス炉室(1)の側面図を示している。石炭乾留時に発生するガスが一次加熱空間(2)内に流れ、そこでガスは部分的に燃焼され、部分的に燃焼されたコークスガスは、コークス炉室(1)の側壁又はコークスケーク(5)内の流路(4)を介して、コークスケーク(5)の下に配置された二次加熱空間(3)内に流れる。そこで、ガスは完全に燃焼されて、下方からコークスケーク(5)を加熱する。完全燃焼したコークスガスは、遮断装置(6a)を備え、廃ガス流路(6b)内で終わる廃ガス排出部(6)に通される。一次加熱空間(2)の「降下」流路の開口(4a)も図1に示されており、この流路を通して、負圧が吸い込まれる(4b)。ここで、コークス炉室のドア(7)がコークスプッシング及び石炭装入のために開放している場合には、この場合には、Uチューブ形カバー(8)をもつ天井に設けられた一次空気用開口を介して行われる一次空気の供給は、適当な一次空気用遮断装置(8a)によって遮断される。二次加熱空間(3)からの廃ガス排出部(6)への排出も、適当な廃ガス用遮断装置(6a)を介して遮断される。二次空気の二次加熱空間(9)内への供給用の開口のところのロッキング装置(9)は、この工程に対しては遮断される。例えば真空受槽(11)用のスライドゲートとなるかもしれない弁(10a)は開放され、これにより二次流路(10)、二次加熱空間(3)及び流路(4)を介して一次加熱空間(2)内に負圧を生成する。本発明によれば、煙道ガスは、これにより、コークス炉室のドア(7)が開放されているとき、一次加熱空間(2)内に吸引される。この吸い込み工程の後、遮断装置(13a)を装備した真空ライン(13)を介して、真空ポンプ(12)によって、真空受槽(11)内の真空を復旧させることができる。
【0031】
図2は、一次加熱空間(2)と、二次加熱空間(3)とを備えたコークス炉室(1)の側面図を示しており、このコークス炉室では、真空生成及び圧力調整を行う真空ライン(14)がさらに、コークス炉室(1)の天井に配置されており、その例が、英国特許出願公開第365934A号明細書に記載されている。特に、この真空ラインは、作動時にコークス炉室(1)内の圧力を調整する目的のため機能する。そのような趣旨のため、すべてのコークス炉室に接続された真空ライン(14)が、コークス炉室(1)の天井に配置されている。真空ライン(14)は、コークス炉室(1)に固定するために、保持装置(14a)を装備している。コークス炉室(1)の一次加熱空間(2)内の圧力は、作動中、弁(14c)及び圧力調整装置(14d)を含む接続ライン(14b)を介して制御される。この実施形態では、真空吸い込み段階の際に圧力調整装置(14d)がコークス炉室(1)に接続されないように、接続ライン用弁(14c)は、「降下」パイプ(4)による吸い込み段階の際に遮断される。この実施形態では、コークスケーク(5)を押し出すことができるように、コークス炉室(1)のドア(7)は開放される。図2に示されるように、壁(7a)がコークス炉室のドア(7)の上方にある。本発明によれば、コークス炉室のドア(7)が開放しているこの期間に、煙道ガスを再びコークス炉室(1)内に吸引するために、負圧が「降下」流路(4)を介して吸い込まれる。Uチューブ形開口(8a)を天井に設ける代わりに、開放できるフラップ(8d)を装備した簡単な開口(8c)が設置される。これらのドアのうち一方(7b)は装入のため開放され、他方のドア(7)は、コークス炉室(1)を閉鎖する。図2に示されるように、コークスケーク(5)の装入は、プッシング装置(15a)を備えた車両(16)によって行われる。車両(15)は、平坦な地盤面(16)に配置されたローラ(15b)上に載っている。この実施形態では、廃ガス流路(6b)は、地盤の下方に配置されており、二次流路(10)の供給路が廃ガス流路の遮断弁(6a)の上流に置かれている。この場合には開放されている弁(10b)が設けられている。これにより、二次流路(10)は、真空受槽(11)に接続され、真空受槽から負圧を吸い込む。コークス炉室(1)は、吸引装置の端に置かれ、二次加熱空間(3)及び「降下」流路(4)を介して接続されている。
【符号の説明】
【0032】
1 コークス炉室
2 一次加熱空間
3 二次加熱空間
4 流路
4a 「降下」流路の開口
4b 吸い込まれる負圧
5 コークスケーク
6 廃ガス排出部
6a 廃ガス用遮断装置
6b 廃ガス流路
7 コークス炉室のドア
7a コークス炉室のドアの上方のコークス炉室壁
7b ドアのうち装入のために開放されている第1のドア
8a Uチューブ形カバーをもつ天井に設けられた一次空気用開口
8b 一次空気用遮断装置
8c 天井に設けられた一次空気用開口
8d 天井の一次空気用開口をロックするためのフラップ
9 二次空気供給路用の開口のところのロッキング装置
9a 二次空気供給路用の開口のところのロッキング装置
10 二次流路
10a 二次流路用遮断装置
10b この場合には開放している二次流路用弁
11 真空受槽
12 真空ポンプ
13 真空ライン
13a 真空ライン用遮断装置
14 真空ライン
14a 真空ライン用保持装置
14b 真空ライン用接続ライン
14c 接続ライン用弁
14d 圧力調整装置
15 車両
15a プッシング装置
15b ローラ
16 平坦な地盤面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において負圧を生成させるための方法であって、
・前記コークス炉室(1)に、石炭乾留のため石炭(5)の層が充填され、これにより、煙道ガスが生成され、
・石炭装入の後、前記石炭(5)が、石炭乾留のため加熱され、
・これらの揮発性石炭成分が、この目的に役立つことを意図した炉の自由空間(2)において前記石炭装入(5)のすぐ上方に半化学量論的に供給された空気によって部分的に酸化され、非燃焼揮発性石炭成分並びに部分的な酸化の際に生成されるガスを燃焼させるための燃焼システム(3)が前記コークス炉室(1)の下に配置され、
・前記コークス炉室(1)の側壁もしくは前記コークスケーク(5)又はその側壁及び前記コークスケーク(5)が流路(4)を含み、これらの流路(4)が、前記コークス炉室(1)の上部のコークスがないガス側の部分を、前記コークス炉室(1)の下の前記燃焼システム(3)と接続する方法において、
・負圧が、前記石炭ケーク(5)の上方の前記炉の自由空間(2)においてこれらの流路(4)を通して生成され、前記負圧が、時限的な石炭装入又はコークスプッシング工程の際に発生する前記煙道ガスを前記炉の自由空間(2)から吸い込む働きをすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための方法において、
前記負圧を生成させるための前記工程が、ドア(7)の開放前の5分に開始し、前記ドア(7)の閉鎖の30分後に終了する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための方法において、
前記負圧が、前記コークス炉室(1)の下の前記燃焼システム(3)で生成され、前記コークス炉室(1)が、吸引方向の端部側に置かれ、前記コークスケーク(5)の上方の前記炉の自由空間(2)における前記負圧が、前記流路(4)を通して吸い込まれることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための方法において、
前記燃焼システム(3)における前記負圧が、前記コークス炉室(1)の外側に配置された負圧収容真空ライン(14)によって生成され、前記負圧が、前記流路(4)を介して前記コークスケーク(5)の上方の前記炉の自由空間(2)の分岐ラインから吸い込まれることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための方法において、
前記負圧が、前記コークス炉室(1)の下の前記燃焼システム(3)でブロワ(12)によって生成され、前記コークス炉室(1)が、吸引方向の端部側に置かれ、前記ブロワが、前記コークス炉室(1)の下の前記燃焼システム(3)において別の流路(10)を介して前記負圧を吸い込み、前記負圧が調整装置(10a)によって制御されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための方法において、
前記コークス炉室(1)の下の前記燃焼システム(3)における前記負圧が、吸引プロセスのため二次加熱空間(3)に近距離で接続されたロック可能な二次流路(10)を介して二次加熱空間(3)に連結されている真空受槽(11)によって生成され、前記コークスケーク(5)の上方の前記炉の自由空間(3)における負圧が、前記流路(4)を介して吸い込まれ、前記コークス炉室(1)が、吸引方向の端部側に配置されていることを特徴とする方法。
【請求項7】
コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において負圧を生成させるための装置であって、
・コークス炉室(1)に、乾留するためにコークスケーク(5)を装入することができ、前記コークスケーク(5)の上方に、装入後に乾留用の石炭(5)が加温される炉の自由空間(2)が設けられ、
・前記コークス炉室(1)の側壁もしくは前記コークスケーク(5)又はその側壁及び前記コークスケーク(5)が、負圧を吸い込むのに適した流路(4)を収容し、
・非燃焼揮発性石炭成分並びに部分的な酸化の際に生成されるガスを燃焼させるための燃焼システム(3)が、前記コークス炉室(1)の下に配置され、
・前記コークス炉室(1)の側壁もしくは前記コークスケーク(5)又はその側壁及び前記コークスケーク(5)が流路(4)を含み、これらの流路(4)が、前記コークス炉室(1)の上部のコークスがないガス側の部分を、前記コークス炉室の下の前記燃焼システム(3)と接続する装置において、
・前記コークス炉室(1)の下の前記燃焼システム(3)が、前記燃焼システムに負圧を装入することができる外方に延びた二次流路(10)を装備しており、
・前記コークスケーク(5)の上方の前記炉の自由空間(2)に、前記燃焼システム及び前記流路(4)を介して負圧を装入することができ、
・前記外方に延びた二次流路(10)のうち少なくとも1つが、調整装置(10a)を装備している
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための装置において、
前記調整装置(10a)がスライドゲートであることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項7に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための装置において、
前記調整装置(10a)がスピンドルであることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項7に記載の前記コークスプッシング及び石炭装入のプロセスの際にコークス炉室(1)内において前記負圧を制御するための装置において、
前記調整装置(10a)がフラップであることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510910(P2013−510910A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538217(P2012−538217)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006603
【国際公開番号】WO2011/057719
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(502099418)ティッセンクルップ ウーデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Uhde GmbH
【住所又は居所原語表記】Friedrich−Uhde−Strasse 15, D−44141 Dortmund, Germany