説明

コークス炉ガスの冷却装置およびその方法

【課題】 安定して効率よくコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置を提供する。
【解決手段】 コークス炉ガスが塔本体210の下部から上部へ流通可能に、塔本体210の下部に第1の冷却室230を、上部に第2の冷却室240を区画形成する。第1の冷却室230の底部から55℃以上で回収して冷却し第1の冷却室230の上部から48℃以上で散水する状態に、タールを含有する第1の循環冷却水301を第1の冷却装置300で循環冷却し、コークス炉ガスを50℃以上まで冷却する。第2の冷却室240でタールを含有しない第2の循環冷却水401を第2の冷却装置400で循環冷却し、コークス炉ガスを35℃以下に冷却する。タールの粘性が増大せず、コークス炉ガス中の不純物を第1の循環冷却水301で効率よく分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉から生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭を乾留してコークスを製造する際に生成するコークス炉ガスを冷却する方法として、ドライメーンでアンモニア水フラッシングにより断熱飽和温度まで冷却したコークス炉ガスを各種冷却方法により30℃〜35℃程度に冷却し、次工程のコークス炉ガス排送機へ導入している。そして、ドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却する方法として、いわゆるコンビネーション冷却法、すなわち間接熱交換器による冷却および直接冷却塔による冷却を組み合わせて冷却する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のものは、ドライメーンで80℃〜85℃に冷却されたコークス炉ガスを間接式プライマリー・ガス・クーラーで、コークス炉ガス中のナフタレンが析出しない温度の約50℃まで間接冷却した後、充填物が充填され上部からタールが添加された循環冷却水をスプレーする直接式プライマリー・ガス・クーラーに導入し、循環冷却水と直接接触させて30℃〜35℃間で冷却する。循環冷却水は、コークス炉ガスとの接触により、コークス炉ガス中のナフタレンを添加されたタールにて吸収溶解し、安水デカンタにて抜出し、塔内の充填物層の閉塞を防止している。
【0004】
【特許文献1】特開平6−73386号公報(第2頁右欄−第3頁右欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のような従来の冷却方法では、循環冷却水の温度が50℃以下に設定する必要があることから、循環冷却水中のタールの粘度が大きくなり、安定した循環が困難である。また、コークス炉ガス中に混入するダスト分により、充填物層が閉塞するおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置およびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコークス炉ガスの冷却装置は、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置であって、前記コークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能な塔本体と、前記塔本体の中間部から循環冷却水を導入して前記コークス炉ガスと接触させ前記塔本体の下部から回収して循環冷却し前記塔本体の下部に前記導入されたコークス炉ガスを冷却する第1の冷却領域を形成する第1の冷却手段と、前記塔本体の上部から循環冷却水を導入して前記第1の冷却領域を流過した前記コークス炉ガスと接触させ前記塔本体の中間部から回収して循環冷却し前記塔本体の上部に前記コークス炉ガスを冷却する第2の冷却領域を形成する第2の冷却手段と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
この発明では、第1の冷却手段により、コークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能な塔本体の中間部より循環冷却水を導入しコークス炉ガスと接触させて塔本体の下部から循環冷却水を回収して循環冷却し、塔本体の下部にコークス炉ガスを冷却する第1の冷却領域を形成させる。さらに、第2の冷却手段により、塔本体の上部より循環冷却水を導入し第1の冷却領域を流過したコークス炉ガスと接触させ塔本体の中間部から回収して循環冷却し、塔本体の上部にコークス炉ガスを冷却する第2の冷却領域を形成させる。このように、複数の冷却領域でそれぞれ独立して循環冷却水を循環冷却する構成が得られることとなり、各冷却領域でそれぞれ適切にコークス炉ガスの冷却が分担されることとなる。このことにより、第1の冷却領域では、循環冷却される循環冷却水によりコークス炉ガス中のダスト分がコークス炉ガスから分離され、循環冷却水中に取り込んだダスト分は別途処理すればよいので、ダスト分による塔本体の閉塞、さらにはダストを核としてコークス炉ガス中のナフタレンなどの不純物が析出することによる塔本体の閉塞などの不都合が防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。そして、循環冷却水として例えばタールを含有させることにより、コークス炉ガス中に含まれるナフタレンを循環冷却水中のタールに吸収溶解させて別途処理すればよいので、第1の冷却領域でナフタレンが析出しない程度の温度までコークス炉ガスを冷却させ、ある程度ナフタレンが除去されたコークス炉ガスを第2の冷却領域でさらに冷却することで、塔本体内にナフタレンが析出して閉塞するなどの不都合を防止しつつ十分に冷却でき、安定して効率よく処理される。また、例えば第1の冷却領域でナフタレンなどの不純物が析出しない程度にコークス炉ガスを循環冷却水で洗浄しつつ冷却させる処理条件に設定することが容易となり、このことにより、ナフタレンを除去するために添加するタールの粘性が増大することによる循環経路上での閉塞なども生じず、安定した冷却が得られる。さらには、第1の冷却領域で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分で、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られることとなる。これらのように、各冷却領域でそれぞれ適切にコークス炉ガスを冷却させることが容易で、このことにより安定した効率のよいコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0009】
そして、本発明では、前記第1の冷却手段は、タールを含有する前記循環冷却水を前記塔本体の下部から回収する温度が55℃以上となる状態に循環冷却する構成とすることが好ましい。この発明では、第1の冷却手段により、タールを含有する循環冷却水を用い、この循環冷却水における塔本体の下部から回収する温度を55℃以上となるように循環冷却させるので、ドライレーンで処理されて塔本体の下部に導入される80℃〜85℃のコークス炉ガスは、このコークス炉ガス中に含まれるナフタレンが循環冷却水にて急激に冷却されて析出することなく、第1の冷却手段で循環冷却する循環冷却水中のタールに吸収溶解させて除去されるとともに、コークス炉ガス中のダスト分も循環冷却水にて補足して除去することが容易に得られる。このことにより、第2の冷却領域で利用する循環冷却水がダスト分などで汚染されにくく、またタールを含有させるなどの特別な循環冷却水を用いなくてもよく、第1の冷却領域で循環させる循環冷却水を循環冷却する際に洗浄したり交換したりする処理を実施すればよく、循環冷却水の処理量の低減により、効率的なコークス炉ガスの冷却が得られる。また、第1の冷却領域で循環冷却する循環冷却水の温度をある程度まで循環冷却するのみでよくなり、循環時に含有するタールの粘度が増大することによる循環経路上でのタールによる閉塞などが防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。さらには、第1の冷却領域で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分となり、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0010】
また、本発明では、前記第1の冷却手段は、前記コークス炉ガスが50℃以上の温度で流過する前記第1の冷却領域を形成する状態に、タールを含有する前記循環冷却水を循環冷却する構成とすることが好ましい。この発明では、第1の冷却手段により、タールを含有する循環冷却水を用い、第1の冷却領域をコークス炉ガスが50℃以上の温度で流通する状態に循環冷却水を循環冷却するので、ドライレーンで処理されて塔本体の下部に導入される80℃〜85℃のコークス炉ガスは、このコークス炉ガス中に含まれるナフタレンが循環冷却水にて急激に冷却されて析出することなく、第1の冷却手段で循環冷却する循環冷却水中のタールに吸収溶解させて除去されるとともに、コークス炉ガス中のダスト分も循環冷却水にて補足して除去することが容易に得られる。このことにより、第2の冷却領域で利用する循環冷却水がダスト分などで汚染されにくく、またタールを含有させるなどの特別な循環冷却水を用いなくてもよく、第1の冷却領域で循環させる循環冷却水を循環冷却する際に洗浄したり交換したりする処理を実施すればよく、循環冷却水の処理量の低減により、効率的なコークス炉ガスの冷却が得られる。また、第1の冷却領域で循環冷却する循環冷却水の温度をある程度まで循環冷却するのみでよくなり、循環時に含有するタールの粘度が増大することによる循環経路上でのタールによる閉塞などが防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。さらには、第1の冷却領域で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分となり、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0011】
さらに、本発明では、前記第1の冷却手段は、前記塔本体に導入する前記循環冷却水の温度が48℃以上となる状態に前記循環冷却水を循環冷却する構成とすることが好ましい。この発明では、第1の冷却手段により、塔本体に導入する循環冷却水の温度が48℃以上となる状態に循環冷却水を循環冷却するので、ドライレーンで処理されて塔本体の下部に導入される80℃〜85℃のコークス炉ガスは、このコークス炉ガス中に含まれるナフタレンが循環冷却水にて急激に冷却されて析出することなく、第1の冷却手段で循環冷却する循環冷却水中のタールに吸収溶解させて除去するとともに、コークス炉ガス中のダスト分も循環冷却水にて補足されて除去される。このことにより、第2の冷却領域で利用する循環冷却水がダスト分などで汚染されにくく、またタールを含有させるなどの特別な循環冷却水を用いなくてもよく、第1の冷却領域で循環させる循環冷却水を循環冷却する際に洗浄したり交換したりする処理を実施すればよく、循環冷却水の処理量の低減により、効率的なコークス炉ガスの冷却が得られる。また、第1の冷却領域で循環冷却する循環冷却水の温度をある程度まで循環冷却するのみでよくなり、循環時に含有するタールの粘度が増大することによる循環経路上でのタールによる閉塞などが防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。さらには、第1の冷却領域で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分となり、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0012】
そして、本発明では、前記塔本体は、少なくとも前記第2の冷却手段にて形成する前記第2の冷却領域の位置に充填層を有した構成とすることが好ましい。この発明では、少なくとも第2の冷却手段にて形成する塔本体の第2の冷却領域の位置に充填層を設けるので、第2の冷却手段で循環する循環冷却水とコークス炉ガスとの接触効率が向上し、効率よくコークス炉ガスが冷却され、塔本体の小型化や製造性の向上、製造コストの低減などが容易に得られる。さらに、第1の冷却手段により形成する第1の冷却領域に充填層を設けても、ナフタレンなどが析出しない条件で冷却させることが容易であることから、安定した第1の冷却領域でのコークス炉ガスの冷却の効率化も容易に得られ、塔本体の小型化や製造性の向上、製造コストの低減などがより容易に得られる。
【0013】
本発明のコークス炉ガスの冷却装置は、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置であって、前記コークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能に上下方向で複数の冷却室が区画形成された塔本体と、前記冷却室に対応して複数設けられ、前記各冷却室内にそれぞれ導入し前記コークス炉ガスと接触させた循環冷却水をそれぞれ回収して循環冷却する冷却手段と、を具備したことを特徴とする。
【0014】
この発明では、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能な塔本体に上下方向で複数の冷却室を区画形成し、各冷却室に対応して複数設けた冷却手段により、各冷却室内にそれぞれ循環冷却水を導入してコークス炉ガスと接触させて回収し循環冷却させる。このことにより、複数の冷却室でそれぞれ独立して循環冷却水を循環冷却するので、各冷却室でそれぞれ適切にコークス炉ガスを分担して冷却させる設定が容易に得られる。このため、塔本体の下部における比較的に高い温度のコークス炉ガスを冷却する冷却室では、循環冷却する循環冷却水によりコークス炉ガス中のダスト分をコークス炉ガスから分離し、循環冷却水中に取り込んだダスト分を別途処理すればよいので、ダスト分による塔本体の閉塞、さらにはダストを核としてコークス炉ガス中のナフタレンなどの不純物が析出することによる塔本体の閉塞などの不都合が防止されることとなり、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。そして、塔本体の下部における比較的に高い温度のコークス炉ガスを冷却する冷却室で利用する循環冷却水として例えばタールを含有させることにより、コークス炉ガス中に含まれるナフタレンを循環冷却水中のタールに吸収溶解させて別途処理すればよいので、塔本体の下部に位置する冷却室でナフタレンが析出しない程度の温度までコークス炉ガスを冷却させ、ある程度ナフタレンが除去されたコークス炉ガスを塔本体の上部に位置する冷却室でさらに冷却することで、塔本体内にナフタレンが析出して閉塞するなどの不都合を防止しつつ十分に冷却でき、安定して効率よく処理することが得られる。また、例えば塔本体の下部に位置する冷却室でナフタレンなどの不純物が析出しない程度にコークス炉ガスを循環冷却水で洗浄しつつ冷却させる処理条件に設定することが容易となり、このことにより、ナフタレンを除去するために添加するタールの粘性が増大することによる循環経路上での閉塞なども生じず、安定した冷却が得られる。さらには、塔本体の下部に位置する冷却室で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分で、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られることとなる。これらのように、各冷却室でそれぞれ適切にコークス炉ガスを冷却させることが容易で、このことにより安定した効率のよいコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0015】
そして、本発明では、前記塔本体の最下部に位置する前記冷却室を流通する前記コークス炉ガスと接触させた前記循環冷却水を回収して循環冷却する前記冷却手段は、前記最下部に位置する冷却室から回収する温度が55℃以上となる状態に、タールを含有する前記循環冷却水を循環冷却する構成とすることが好ましい。この発明では、塔本体の最下部に位置する冷却室を流通するコークス炉ガスと接触させる循環冷却水としてタールを含有する循環冷却水を用い、この循環冷却水を最下部に位置する冷却室から回収する温度が55℃以上となる状態に循環冷却するので、上述した請求項2に記載の発明と同様に、効率よく安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0016】
また、本発明では、前記塔本体の最下部に位置する前記冷却室を流通する前記コークス炉ガスと接触させた前記循環冷却水を回収して循環冷却する前記冷却手段は、前記最下部に位置する前記冷却室を流出する前記コークス炉ガスの温度が50℃以上となる状態に、タールを含有する前記循環冷却水を循環冷却する構成とすることが好ましい。この発明では、塔本体の最下部に位置する冷却室を流通するコークス炉ガスと接触させる循環冷却水としてタールを含有する循環冷却水を用い、この循環冷却水を最下部に位置する冷却室を流出するコークス炉ガスの温度が50℃以上となる状態に循環冷却するので、上述した請求項3に記載の発明と同様に、効率よく安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0017】
さらに、本発明では、前記塔本体の最下部に位置する前記冷却室を流通する前記コークス炉ガスと接触させた前記循環冷却水を回収して循環冷却する前記冷却手段は、前記最下部に位置する前記冷却室に導入する前記循環冷却水の温度が48℃以上となる状態に循環冷却する構成とすることが好ましい。この発明では、塔本体の最下部に位置する冷却室に導入する循環冷却水の温度が48℃以上となる状態に循環冷却するので、上述した請求項4に記載の発明と同様に、効率よく安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0018】
そして、本発明では、前記冷却室の少なくともいずれか1つは、充填物が充填された構成とすることが好ましい。この発明では、少なくともいずれか1つの冷却室に充填物を充填することにより、流過するコークス炉ガスとの接触効率が向上し、効率よくコークス炉ガスが冷却され、塔本体の小型化や製造性の向上、製造コストの低減などが容易に得られる。さらに、比較的にコークス炉ガスの温度が高い塔本体の下部に位置する冷却室では、ナフタレンなどが析出しない条件でコークス炉ガスを冷却させる設定が容易であることから、安定した塔本体の下部に位置する冷却室でのコークス炉ガスの冷却の効率化も容易に得られ、塔本体の小型化や製造性の向上、製造コストの低減などがより容易に得られる。
【0019】
本発明のコークス炉ガスの冷却方法は、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却方法であって、タールを含有する循環冷却水を前記コークス炉ガスと接触されて前記循環冷却水の温度が55℃以上で回収する状態に循環冷却する第1の冷却工程と、この第1の冷却工程で冷却された前記コークス炉ガスと循環冷却水を接触させて回収し循環冷却する第2の冷却工程と、を実施することを特徴とする。
【0020】
この発明では、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスにタールを含有する循環冷却水を接触させてコークス炉ガスを冷却し、この循環冷却水の温度が55℃以上で回収する状態に循環冷却する第1の冷却工程を実施する。そして、この第1の冷却工程で循環冷却水の接触により冷却されたコークス炉ガスと循環冷却水と接触させて冷却し、循環冷却水を回収して循環冷却する第2の冷却工程を実施する。このことにより、請求項2および請求項7に記載の発明と同様に、効率よく安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。すなわち、ドライレーンで処理された80℃〜85℃のコークス炉ガスを、第1の冷却工程でコークス炉ガス中に含まれるナフタレンが循環冷却水にて急激に冷却されて析出することなく、第1の冷却手段で循環冷却する循環冷却水中のタールに吸収溶解させて除去されるとともに、コークス炉ガス中のダスト分も循環冷却水にて補足して除去することが容易に得られる。このことにより、第2の冷却工程で利用する循環冷却水がダスト分などで汚染されにくく、またタールを含有させるなどの特別な循環冷却水を用いなくてもよく、第1の冷却工程で循環させる循環冷却水を循環冷却する際に洗浄したり交換したりする処理を実施すればよく、循環冷却水の処理量の低減により、効率的なコークス炉ガスの冷却が得られる。また、第1の冷却工程で循環冷却する循環冷却水の温度をある程度まで循環冷却するのみでよくなり、循環時に含有するタールの粘度が増大することによる循環経路上でのタールによる閉塞などが防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。さらには、第1の冷却工程で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分となり、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0021】
本発明のコークス炉ガスの冷却方法は、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却方法であって、タールを含有する循環冷却水を前記コークス炉ガスと接触させ前記コークス炉ガスを50℃以上の温度に冷却させて回収する状態に前記循環冷却水を循環冷却する第1の冷却工程と、この第1の冷却工程で冷却された前記コークス炉ガスと循環冷却水を接触させて回収し循環冷却する第2の冷却工程と、を実施することを特徴とする。
【0022】
この発明では、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスにタールを含有する循環冷却水を接触させてコークス炉ガスを50℃以上の温度に冷却し、この接触させた循環冷却水は回収して循環冷却する第1の冷却工程を実施する。そして、この第1の冷却工程で循環冷却水の接触により冷却されたコークス炉ガスと循環冷却水と接触させて冷却し、循環冷却水を回収して循環冷却する第2の冷却工程を実施する。このことにより、請求項3および請求項8に記載の発明と同様に、効率よく安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。すなわち、ドライレーンで処理された80℃〜85℃のコークス炉ガスを、第1の冷却工程でコークス炉ガス中に含まれるナフタレンが循環冷却水にて急激に冷却されて析出することなく、第1の冷却手段で循環冷却する循環冷却水中のタールに吸収溶解させて除去されるとともに、コークス炉ガス中のダスト分も循環冷却水にて補足して除去することが容易に得られる。このことにより、第2の冷却工程で利用する循環冷却水がダスト分などで汚染されにくく、またタールを含有させるなどの特別な循環冷却水を用いなくてもよく、第1の冷却工程で循環させる循環冷却水を循環冷却する際に洗浄したり交換したりする処理を実施すればよく、循環冷却水の処理量の低減により、効率的なコークス炉ガスの冷却が得られる。また、第1の冷却工程で循環冷却する循環冷却水の温度をある程度まで循環冷却するのみでよくなり、循環時に含有するタールの粘度が増大することによる循環経路上でのタールによる閉塞などが防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。さらには、第1の冷却工程で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分となり、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られる。
【0023】
本発明のコークス炉ガスの冷却方法は、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却方法であって、タールを含有し温度が48℃以上の循環冷却水を前記コークス炉ガスと接触させて回収し循環冷却する第1の冷却工程と、この第1の冷却工程で冷却された前記コークス炉ガスと循環冷却水を接触させて回収し循環冷却する第2の冷却工程と、を実施することを特徴とする。
【0024】
この発明では、コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスに48℃以上の循環冷却水を接触されてコークス炉ガスを冷却し、この接触させた循環冷却水は回収して循環冷却する第1の冷却工程を実施する。そして、この第1の冷却工程で循環冷却水の接触により冷却されたコークス炉ガスと循環冷却水と接触させて冷却し、循環冷却水を回収して循環冷却する第2の冷却工程を実施する。このことにより、請求項4および請求項9に記載の発明と同様に、効率よく安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。すなわち、ドライレーンで処理された80℃〜85℃のコークス炉ガスを、第1の冷却工程でコークス炉ガス中に含まれるナフタレンが循環冷却水にて急激に冷却されて析出することなく、第1の冷却手段で循環冷却する循環冷却水中のタールに吸収溶解させて除去するとともに、コークス炉ガス中のダスト分も循環冷却水にて補足されて除去される。このことにより、第2の冷却領域で利用する循環冷却水がダスト分などで汚染されにくく、またタールを含有させるなどの特別な循環冷却水を用いなくてもよく、第1の冷却領域で循環させる循環冷却水を循環冷却する際に洗浄したり交換したりする処理を実施すればよく、循環冷却水の処理量の低減により、効率的なコークス炉ガスの冷却が得られる。また、第1の冷却領域で循環冷却する循環冷却水の温度をある程度まで循環冷却するのみでよくなり、循環時に含有するタールの粘度が増大することによる循環経路上でのタールによる閉塞などが防止され、安定したコークス炉ガスの冷却が得られる。さらには、第1の冷却領域で利用する循環冷却水が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分となり、循環冷却水を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、コストの低減、環境保護などが容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスの冷却が得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コークス炉ガスを多段で適宜分担して適切に冷却させることにより、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のコークス炉ガスの冷却装置における一実施の形態ついて図面を参照して説明する。図1は、本発明における一実施の形態に係るコークス炉ガスの冷却装置の概略構成を示す概念図である。
【0027】
〔コークス炉ガスの冷却装置の構成〕
図1において、100はコークス炉ガスの冷却装置で、このコークス炉ガスの冷却装置100は、図示しないコークス炉で生成され、図示しないドライメーンでアンモニア水フラッシングにより処理されて断熱飽和温度65℃〜85℃程度まで冷却されたコークス炉ガスを、例えばコークス炉ガス排送機へ導入するために、30℃〜35℃程度まで直接冷却、すなわち循環冷却水をコークス炉ガスと接触されて冷却するものである。そして、コークス炉ガスの冷却装置100は、直接式冷却塔200と、第1の冷却手段としての第1の冷却装置300と、第2の冷却手段としての第2の冷却装置400と、などを備えている。
【0028】
そして、直接式冷却塔200は、塔本体210を備えている。この塔本体210は、例えば略円筒状に形成され、軸方向が鉛直方向に略沿う状態に立設される。そして、塔本体210の下部側面には、ドライメーンで処理されたコークス炉ガスが導入される導入口211が設けられている。また、塔本体210の上部、例えば頂部には、塔本体210内に導入されたコークス炉ガスが排出される排出口212が設けられている。さらに、塔本体210内には、略中間部に位置して、コークス炉ガスが流通可能な流通口221を有する区画壁220が設けられている。そして、塔本体210内には、区画壁220により、上下方向で複数、例えば2つ、すなわち区画壁220の下側である塔本体210の下部側に第1の冷却領域となる第1の冷却室230が区画形成されるとともに、区画壁220の上側である塔本体210の上部側に第2の冷却領域となる第2の冷却室240が区画形成されている。そして、直接式冷却塔200には、第1の冷却室230に図示しない充填物が充填された第1の充填層231が設けられ、第2の冷却室240に同様に第2の充填層241が設けられている。これら第1の充填層231および第2の充填層241は、塔本体210の上下方向における所定の領域で、コークス炉ガスが塔本体210内を直線的に上方へ流通することを阻害する状態に充填物が充填されて構築されている。
【0029】
また、塔本体210の底部には、第1の冷却室230に導入された循環冷却水である第1の循環冷却水301を集水する第1の集水部235が設けられている。さらに、塔本体210の中間部には、区画壁220の上面側に位置して、第2の冷却室240に導入された循環冷却水である第2の循環冷却水401を集水する第2の集水部245が設けられている。
【0030】
第1の冷却装置300は、直接式冷却塔200の第1の冷却室230に第1の循環冷却水301を導入し第1の冷却室230を流通するコークス炉ガスと接触させて冷却させ、第1の循環冷却水301を回収して循環冷却する。ここで、第1の冷却装置300は、タールとしての例えばコールタールが1〜6%含有する濃縮アンモニア水を第1の循環冷却水として循環冷却する。なお、タールとしては、コールタールに限らず、木タール、石油タールなどを用いてもよい。また、濃縮アンモニア水に限らず、水道水や地下水など、添加物を含まない通常の水を用いたり、タールに代えてナフタレンを溶解する有機溶媒などを添加したものなどを用いてもよい。
【0031】
そして、第1の冷却装置300は、第1の循環冷却水301を第1の冷却水により冷却する第1の冷却器310を備えている。この第1の冷却器310は、第1の冷却水が流入する第1冷却取水口311Aおよび第1の冷却水が流出する第1冷却出水口311Bを有する第1の冷却水室311と、この第1の冷却水室311に接触し第1の循環冷却水301が流入する第1凝縮液流入口312Aおよび第1の循環冷却水301が流出する第1凝縮液流出口312Bを有する第1の循環冷却水室312とを内部に区画し、第1の冷却水により第1の循環冷却水301を冷却する。そして、第1の冷却器310で用いる第1の冷却水は、例えば通常の水、あるいは防腐剤などが添加された調整水などが用いられ、気化熱により冷却するいわゆるクーリングタワーなどで循環冷却される。この第1の冷却器310は、鋼材などにて形成されるが、耐処理処理が施されていることが好ましい。
【0032】
また、第1の冷却器310の第1凝縮液流入口312Aには、一端が塔本体210の第1の集水部235に連結され集水された第1の循環冷却水301を塔本体210外へ流出する第1のポンプ321を有した第1の排出管320の他端が接続されている。また、第1の冷却器310の第1凝縮液流出口312Bには、第1の冷却室230の上部に配設されて第1の冷却室230内すなわち第1の充填層231へ散水する状態に第1の循環冷却水301を導入する第1のノズル部331が一端に接続された第1の循環管330の他端が接続されている。また、第1の排出管320には、第1の集水部235で集水して搬送する第1の循環冷却水301の一部を系外へ流出する第1の抜取管340が接続されているとともに、搬送する第1の循環冷却水301に略同質の第1の循環冷却水301であるタールを含有する濃縮アンモニア水を添加・すなわち補充する第1の補充管350が接続されている。なお、第1の抜取管340で抜き取った第1の循環冷却水301は、系外となる例えばアンモニア水デカンタなどの図示しない処理装置にて処理され、第1の循環冷却水301に混入するダスト分や溶解しているナフタレンを除去する処理が施される。この処理された第1の循環冷却水301は、第1の補充管350により返送したり、別途浄化処理されて河川などに排水したり工業用水として利用したりするなどしてもよい。
【0033】
そして、この第1の冷却装置300は、第1の集水部235で集水され第1の排出管320により直接式冷却塔200から流出する際の温度が55℃以上となる条件で循環冷却する。すなわち、第1の冷却室230から第2の冷却室240へ流出する際のコークス炉ガスの温度が50℃以上となるように循環冷却する。また、第1のノズル部331から流出する第1の循環冷却水301の温度が48℃以上となる条件で循環冷却することが好ましい。なお、第1のノズル部331から第1の循環冷却水301の温度が48℃以上で、第1の冷却室230から第2の冷却室240へ流出する際のコークス炉ガスの温度が50℃以上となるように循環冷却してもよい。
【0034】
第2の冷却装置400は、直接式冷却塔200の第2の冷却室240に第2の循環冷却水401を導入し第2の冷却室240を流通するコークス炉ガスと接触させて冷却させ、第2の循環冷却水401を回収して循環冷却する。ここで、第2の冷却装置400で循環冷却する第2の循環冷却水401は、通常の水などが用いられるが、上述したように、タールを含有しない濃縮アンモニア水、さらにはナフタレンを吸収溶解するための有機溶媒などが添加されたものを用いるなどしてもよい。なお、タールが添加されていないものを用いる。
【0035】
そして、第2の冷却装置400は、第2の循環冷却水401を第2の冷却水により冷却する第1の冷却器410を備えている。この第2の冷却器410は、第2の冷却水が流入する第2冷却取水口411Aおよび第2の冷却水が流出する第2冷却出水口411Bを有する第2の冷却水室411と、この第2の冷却水室311に接触し第2の循環冷却水401が流入する第2凝縮液流入口412Aおよび第2の循環冷却水401が流出する第2凝縮液流出口412Bを有する第2の循環冷却水室412とを内部に区画し、第2の冷却水により第2の循環冷却水401を冷却する。この冷却は、直接式冷却塔200からコークス炉ガスが35℃以下で排出口212から排出される条件で、第2の循環冷却水401を循環冷却する。そして、第2の冷却器410で用いる第2の冷却水は、例えば海水が用いられる。なお、第1の冷却水と同様に、通常の水、あるいは防腐剤などが添加された調整水などが用いられ、気化熱により冷却するいわゆるクーリングタワーなどで循環冷却させてもよい。そして、この第2の冷却器410は、海水にて浸食されない例えばチタン鋼などにて形成される。
【0036】
また、第2の冷却器410の第2凝縮液流入口412Aには、一端が塔本体210の第2の集水部245に連結され集水された第2の循環冷却水401を塔本体210外へ流出する第2のポンプ421を有した第2の排出管420の他端が接続されている。また、第2の冷却器410の第1凝縮液流出口412Bには、第2の冷却室240の上部に配設されて第2の冷却室240内すなわち第2の充填層241へ散水する状態に第2の循環冷却水401を導入する第2のノズル部431が一端に接続された第2の循環管430の他端が接続されている。また、第2の排出管420には、第2の集水部245で集水して搬送する第2の循環冷却水401の一部を系外へ流出する第2の抜取管440が接続されているとともに、搬送する第2の循環冷却水401に略同質の第2の循環冷却水401であるタールを含有する濃縮アンモニア水を添加・すなわち補充する第2の補充管450が接続されている。なお、第2の抜取管440で抜き取った第2の循環冷却水401は、系外である図示しない処理装置にて処理され、第2の循環冷却水401に混入するダスト分や溶解したナフタレンなどの不純物を除去する処理が施される。この処理された第2の循環冷却水401は、第2の補充管450により返送したり、別途浄化処理されて河川などに排水したり工業用水として利用したりするなどしてもよい。
【0037】
〔コークス炉ガスの冷却装置の動作〕
次に、上記実施の形態におけるコークス炉ガスの冷却装置100の動作を説明する。
(コークス炉ガスの冷却処理)
まず、上記実施の形態におけるコークス炉ガスの冷却装置100の動作として、コークス炉ガスを冷却する冷却動作を説明する。
【0038】
コークス炉ガスで生成され、ドライメーンで処理されたコークス炉ガスは、直接式冷却塔200の導入口211から、第1の冷却装置300で循環冷却された第1の循環冷却水301が散水されている第1の冷却室230に流入する。そして、コークス炉ガスは、第1の冷却室230を第1の充填層231の充填物間を縫うように上方へ流過する。この第1の冷却室230の流通の際、コークス炉ガスは、第1の循環冷却水301と接触して第1の冷却室230を流過するまでに約50℃まで冷却される。そして、この第1の循環冷却水301との接触により、コークス炉ガス中のダスト分が第1の循環冷却水301に補足されるとともに、コークス炉ガス中のナフタレンが第1の循環冷却水301中のタールに吸収溶解されて、コークス炉ガスから分離される。そして、第1のノズル部331から散水される第1の循環冷却水301は48℃以上であるが、この位置ではコークス炉ガス中のナフタレンが十分に除去されているので、散水直後の第1の循環冷却水301にコークス炉ガスが接触しても、ナフタレンが析出し、塔本体210内に析出することが防止される。
【0039】
そして、第1の冷却室230流過して第2の冷却室240に流入したコークス炉ガスは、第1の冷却室230の場合と同様に、第2の充填層241の充填物間を縫うように上方へ流過する。この第2の冷却室240の流過の際、コークス炉ガスは、第2の循環冷却水401と接触して約30℃〜35℃程度まで冷却され、排出口212から系外へ排気される。そして、この第2の循環冷却水401との接触により、コークス炉ガス中に残留するダスト分が第2の循環冷却水401に補足されるとともに、残留するナフタレンがタールに吸収溶解されてコークス炉ガスから十分に除去され、塔本体210内に析出することなく、十分に冷却されて系外へ排気される。
【0040】
また、第1の冷却室230でコークス炉ガスと接触された第1の循環冷却水301は、第1の集水部235で集水され、第1の排出管320から第1の冷却器310へ搬送される。この搬送の際、第1の循環冷却水301の一部が第1の抜取管340から抜き取られて別途処理されるとともに、第1の補充管350から抜き取られる分量で新たに第1の循環冷却水301が補充される。そして、第1の循環冷却水301は、第1の冷却器310で、第1の冷却水により約48℃程度まで冷却され、第1の循環管330から第1の冷却室へ返送され、第1のノズル部331から散水されて循環冷却される。同様に、第2の冷却室230でコークス炉ガスと接触された第1の循環冷却水401は、第2の集水部245で集水され、第2の排出管420から第2の冷却器410へ、一部新しい第2の循環冷却水と置換されて搬送され、海水により適宜冷却され、第2の循環管430を介して第2の冷却室240へ返送され、循環冷却される。
【0041】
(コークス炉ガスの冷却装置の作用)
次に、上述した実施の形態のコークス炉ガスの冷却装置の動作として、他の冷却方法とを比較した作用について説明する。
【0042】
比較する冷却装置としては、いわゆるコンビネーション冷却方式の装置を比較例1、1つの直接式冷却塔を用いて直接冷却する装置を比較例2とし、同様の冷却効率で冷却した際の装置形態について比較した。
【0043】
比較例1の冷却装置500は、図2に示すように、ドライメーンで処理されたコークス炉ガスを、海水により間接的に50℃まで冷却する間接式プライマリー・ガス・クーラー510と、この間接式プライマリー・ガス・クーラー510で冷却されたコークス炉ガスをタールが添加された循環冷却水と接触させて直接的に35℃まで冷却する冷却塔520と、循環冷却水を循環冷却する冷却装置530と、を備えた構成としている。そして、冷却塔520は、本実施の形態のコークス炉ガスの冷却装置100における直接式冷却塔200の第2の冷却室240と同様に、中間部に充填層521を有している。また、冷却装置530は、第2の冷却装置400と同様に、冷却塔520の塔底部で集水して塔上部からノズル531にて散水させて循環するとともに、海水により循環冷却水を冷却する構成としている。
【0044】
比較例2の冷却装置600は、図3に示すように、ドライメーンで処理されたコークス炉ガスを、タールが添加された循環冷却水と接触させて直接的に35℃まで冷却する直接冷却塔610と、循環冷却水を海水にて循環冷却する海水冷却装置620と、を備えた構成としている。そして、直接冷却塔610は、図2の冷却装置500の冷却塔520と同様に、中間部に充填層611を有している。また、直接冷却塔610は、図2に示す冷却装置500の冷却装置530と同様に、直接冷却塔610の塔底部で集水して塔上部からノズル621で散水させて循環するとともに、海水により循環冷却水を冷却する構成としている。
【0045】
そして、冷却処理として、65℃のコークス炉ガスを60000Nm3/hrの流量で35℃まで冷却する場合について比較する。なお、コークス炉ガスを海水により間接的に冷却する際の総括伝熱係数は、コークス炉ガス中の不純物を考慮して、175W/(m2・°K)(150kcal/(m2・hr・℃))、コークス炉ガスを循環冷却水で直接的に冷却する際の総括伝熱係数は、同様に不純物を考慮し、290W/(m2・°K)(250kcal/(m2・hr・℃))とした。また、海水は26℃、本実施の形態のコークス炉ガスの冷却装置100における第1の冷却水は32℃とした。これらの条件に基づいて設定される装置構成は、以下の表1に示す形態となる。また、各装置構成の装置コストは、材料費に基づいて、以下の表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
この表2に示す結果から、比較例2では、コークス炉ガスの熱量の全部を循環冷却水で冷却する海水冷却装置620では、表1に示すように大型化し、表2に示すように装置コストが増大してしまう。また、比較例1では、ある程度コークス炉ガスを冷却しておくための間接式プライマリー・ガス・クーラー510では、間接式で冷却効率が下がるため、大型化することにより、本実施の形態で塔本体210の高さ寸法が高くなる分より、装置コストが増大してしまうこととなる。このように、コークス炉ガスを同様に冷却する構成では、本実施の形態のものが、安価に提供できることがわかる。
【0049】
また、冷却されたコークス炉ガス中のダスト濃度〔g/Nm3〕を測定した。なお、冷却前におけるコークス炉ガスのダスト濃度を1.0として比較する。その結果、比較例1では0.8、比較例2では0.9、本実施の形態では0.1であった。ところで、コールタールの粘度は、図4にも示すように、50℃より温度が低くなると急激に粘度が増大することがわかる。また、循環冷却水がダストを補足することにより、循環冷却水は粘度が増大することとなる。また、仮に50℃で回収する場合、第1の冷却室230へ導入する第1の循環冷却水301は50℃より低い温度まで冷却することとなり、冷却後の第1の循環冷却水301におけるタールの粘性が増大することとなる。このため、粘度が比較的に安定して低くなる特に55℃以上に第1の循環冷却水301の温度を維持することが、安定して集水して循環冷却させるために必要であることがわかる。
【0050】
このことから、比較例1では、コークス炉ガスが冷却塔520に50℃で流入することとなり、それまでは間接的に冷却されていることから、ダスト分が十分に除去されておらず、ダスト濃度が比較的に低減できないものと考えられる。このことにより、比較例1では、冷却塔520でタールの粘度の増大により、充填層521などでコークス炉ガスの流過時の圧損が増大し、さらには閉塞するなどにより冷却処理を停止して充填層521を洗浄するなどの保守管理の頻度も増大し、効率よく冷却できなくなるおそれがある。また、比較例2でも、コークス炉ガスが冷却されて50℃以下となる位置で、タールの粘度が増大し、比較例1と同様に、ダスト濃度が比較的に低減できないとともに、効率よく冷却できなくなるおそれがある。一方、本実施の形態では、タールの粘度が増大する前に第1の冷却室230である程度のダスト濃度が低減され、第2の冷却室240では水温が低くなっても循環冷却が安定するタールを含有しない循環冷却水により十分に冷却されることとなり、ダスト濃度を十分に低減できるとともに、効率よく冷却できることがわかる。
【0051】
〔コークス炉ガスの冷却装置の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態では、第1の冷却装置300により、コークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能な塔本体210の中間部より第1の循環冷却水301を導入しコークス炉ガスと接触させて塔本体210の下部から第1の循環冷却水301を回収して循環冷却し、コークス炉ガスを冷却する第1の冷却室230を塔本体210の下部に形成する。さらに、第2の冷却装置400により、塔本体210の上部より第2の循環冷却水401を導入し第1の冷却室230を流過したコークス炉ガスと接触させ塔本体210の中間部から回収して循環冷却し、コークス炉ガスを冷却する第2の冷却室240を塔本体210の上部に形成する。このため、複数の冷却室230,240でそれぞれ独立して第1の循環冷却水301および第2の循環冷却水401を循環冷却する構成として、各冷却室230,240でそれぞれ適切にコークス炉ガスの冷却を分担されることで、コークス炉ガス中のダストやナフタレンなどの不純物を良好に除去しつつ、ナフタレンを除去するために添加するタールの粘性が増大せずに良好に循環冷却させることで、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却できる。
【0052】
すなわち、第1の冷却室230では、循環冷却される第1の循環冷却水301によりコークス炉ガス中のダスト分がコークス炉ガスから分離され、第1の循環冷却水301中に取り込んだダスト分は別途処理装置などで処理すればよいので、ダスト分による塔本体210の閉塞、さらにはダストを核としてコークス炉ガス中のナフタレンなどの不純物が析出することによる塔本体210の閉塞などの不都合も防止でき、安定してコークス炉ガスを冷却することができる。そして、第1の循環冷却水301として例えばタールを含有させることにより、コークス炉ガス中に含まれるナフタレンを第1の循環冷却水301中のタールに吸収溶解させて別途処理することにより、、第1の冷却室230でナフタレンが析出しない程度の温度、すなわちコークス炉ガスの温度が50℃以上となるまでコークス炉ガスを冷却させ、ある程度ナフタレンが除去されたコークス炉ガスを第2の冷却室240でさらに冷却することで、塔本体210内にナフタレンが析出して閉塞するなどの不都合を防止しつつ十分に冷却でき、安定して効率よく冷却できる。また、独立して循環冷却するため、例えば第1の冷却室230でナフタレンなどの不純物が析出しない程度にコークス炉ガスを第1の循環冷却水301で洗浄しつつ冷却させる処理条件に設定することが容易にでき、ナフタレンを除去するために添加するタールの粘性が増大することによる循環経路上での閉塞なども生じず、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却できる。さらには、第1の冷却室230で利用する第1の循環冷却水301が、夏期でも海水にて冷却することなく気化熱を利用した冷却でも十分で、第1の循環冷却水301を循環冷却する構成の簡略化や製造性の向上、装置コストや運転コストの低減、熱交換して暖まった海水を戻すことによる環境への影響を防止した環境保護なども容易に得られ、効率よく良好にコークス炉ガスを冷却できる。
【0053】
そして、第1の冷却装置300により、タールを含有する第1の循環冷却水301を用い、この第1の循環冷却水301における塔本体210の下部から回収する温度を55℃以上となるように循環冷却しているので、第1の冷却室230で不純物が閉塞せず良好に循環冷却させるための温度管理が、例えば塔本体210の底部に設けた温度計にて検出する温度に基づいて制御するのみで容易にできる。さらに、55℃で回収するので、上述したように、不純物の閉塞やタールの粘度の増大などによる循環不良などを防止して、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却できる。
【0054】
また、第1の冷却装置300により、タールを含有する第1の循環冷却水301を、第1の冷却室230をコークス炉ガスが50℃以上の温度で流通する状態に循環冷却している。すなわち、回収した55℃以上の第1の循環冷却水301を極端に冷却する必要がなく、クーリングタワーなどの簡単な構成で第1の冷却水にて効率よく冷却して循環させればよく、すなわちタールの粘性が増大しない温度まで冷却すればよいので、効率よく第1の循環冷却水301を冷却できるとともに、上述したように、不純物の閉塞やタールの粘度の増大などによる循環不良などを防止でき、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却できる。
【0055】
さらに、第1の冷却装置300により、塔本体210に導入する第1の循環冷却水301の温度が48℃以上となる状態に循環冷却している。このため、上述したように、タールの粘性が増大することなく循環冷却でき、良好にダスト分やナフタレンなどを除去でき、クーリングタワーなどの簡単な構成で第1の冷却水にて効率よく冷却でき、安定して効率よくコークス炉ガスを冷却できる。
【0056】
〔実施の形態の変形〕
なお、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0057】
すなわち、第1の冷却室230と第2の冷却室240の2つに冷却領域が区画される構成で説明したが、3つ以上の複数に区画し、それぞれで独立して循環冷却水を循環冷却する構成としてもよい。
【0058】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態におけるコークス炉ガスの冷却装置の概略構成を示す概念図である。
【図2】本発明のコークス炉ガスの冷却装置の作用を説明するために比較する比較例1における冷却装置の概略構成を示す概念図である。
【図3】本発明のコークス炉ガスの冷却装置の作用を説明するために比較する比較例2における冷却装置の概略構成を示す概念図である。
【図4】本発明のコークス炉ガスの冷却装置の作用を説明するためのコールタールの粘度と温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
100……コークス炉ガスの冷却装置
210……塔本体
230……第1の冷却領域となる第1の冷却室
231……第1の充填層
240……第2の冷却領域となる第2の冷却室
241……第2の充填層
300……第1の冷却手段である第1の冷却装置
301……第1の循環冷却水
400……第2の冷却手段である第2の冷却装置
401……第2の循環冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記コークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能な塔本体と、
前記塔本体の中間部から循環冷却水を導入して前記コークス炉ガスと接触させ前記塔本体の下部から回収して循環冷却し前記塔本体の下部に前記導入されたコークス炉ガスを冷却する第1の冷却領域を形成する第1の冷却手段と、
前記塔本体の上部から循環冷却水を導入して前記第1の冷却領域を流過した前記コークス炉ガスと接触させ前記塔本体の中間部から回収して循環冷却し前記塔本体の上部に前記コークス炉ガスを冷却する第2の冷却領域を形成する第2の冷却手段と、
を具備したことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記第1の冷却手段は、タールを含有する前記循環冷却水を前記塔本体の下部から回収する温度が55℃以上となる状態に循環冷却する
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記第1の冷却手段は、前記コークス炉ガスが50℃以上の温度で流過する前記第1の冷却領域を形成する状態に、タールを含有する前記循環冷却水を循環冷却する
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記第1の冷却手段は、前記塔本体に導入する前記循環冷却水の温度が48℃以上となる状態に前記循環冷却水を循環冷却する
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記塔本体は、少なくとも前記第2の冷却手段にて形成する前記第2の冷却領域の位置に充填層を有した
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項6】
コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記コークス炉ガスが下部から導入され上部から排出可能に上下方向で複数の冷却室が区画形成された塔本体と、
前記冷却室に対応して複数設けられ、前記各冷却室内にそれぞれ導入し前記コークス炉ガスと接触させた循環冷却水をそれぞれ回収して循環冷却する冷却手段と、
を具備したことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項7】
請求項6に記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記塔本体の最下部に位置する前記冷却室を流通する前記コークス炉ガスと接触させた前記循環冷却水を回収して循環冷却する前記冷却手段は、前記最下部に位置する冷却室から回収する温度が55℃以上となる状態に、タールを含有する前記循環冷却水を循環冷却する
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項8】
請求項6に記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記塔本体の最下部に位置する前記冷却室を流通する前記コークス炉ガスと接触させた前記循環冷却水を回収して循環冷却する前記冷却手段は、前記最下部に位置する前記冷却室を流出する前記コークス炉ガスの温度が50℃以上となる状態に、タールを含有する前記循環冷却水を循環冷却する
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記塔本体の最下部に位置する前記冷却室を流通する前記コークス炉ガスと接触させた前記循環冷却水を回収して循環冷却する前記冷却手段は、前記最下部に位置する前記冷却室に導入する前記循環冷却水の温度が48℃以上となる状態に循環冷却する
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のいずれかに記載のコークス炉ガスの冷却装置であって、
前記冷却室の少なくともいずれか1つは、充填物が充填された
ことを特徴としたコークス炉ガスの冷却装置。
【請求項11】
コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却方法であって、
タールを含有する循環冷却水を前記コークス炉ガスと接触されて前記循環冷却水の温度が55℃以上で回収する状態に循環冷却する第1の冷却工程と、
この第1の冷却工程で冷却された前記コークス炉ガスと循環冷却水を接触させて回収し循環冷却する第2の冷却工程と、を実施する
ことを特徴とするコークス炉ガスの冷却方法。
【請求項12】
コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却方法であって、
タールを含有する循環冷却水を前記コークス炉ガスと接触させ前記コークス炉ガスを50℃以上の温度に冷却させて回収する状態に前記循環冷却水を循環冷却する第1の冷却工程と、
この第1の冷却工程で冷却された前記コークス炉ガスと循環冷却水を接触させて回収し循環冷却する第2の冷却工程と、を実施する
ことを特徴とするコークス炉ガスの冷却方法。
【請求項13】
コークス炉で生成されドライメーンで処理されたコークス炉ガスを冷却するコークス炉ガスの冷却方法であって、
タールを含有し温度が48℃以上の循環冷却水を前記コークス炉ガスと接触させて回収し循環冷却する第1の冷却工程と、
この第1の冷却工程で冷却された前記コークス炉ガスと循環冷却水を接触させて回収し循環冷却する第2の冷却工程と、を実施する
ことを特徴とするコークス炉ガスの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−8991(P2007−8991A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188720(P2005−188720)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)