コージェネレーションシステム
【課題】貯留タンク内の温度成層の乱れといった、熱回収回路の流量を増加することに起因する不具合を確実に防止しつつ、凍結防止運転を実施可能なコージェネレーションシステムを提供する。
【解決手段】燃料電池を内蔵していて電気エネルギーと熱エネルギーとを同時に発生させる発電部と、湯水を貯留する貯留タンクと、貯留タンク及び発電部とを含んで環状に結ぶ熱回収回路とを有し、発電部で発生させた熱によって湯水を加熱するコージェネレーションシステムで凍結防止運転を実施する。そのとき、所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施し、前記流量増加可否判断の判断結果に基づいて、熱回収回路の湯水の流量を増加させる。
【解決手段】燃料電池を内蔵していて電気エネルギーと熱エネルギーとを同時に発生させる発電部と、湯水を貯留する貯留タンクと、貯留タンク及び発電部とを含んで環状に結ぶ熱回収回路とを有し、発電部で発生させた熱によって湯水を加熱するコージェネレーションシステムで凍結防止運転を実施する。そのとき、所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施し、前記流量増加可否判断の判断結果に基づいて、熱回収回路の湯水の流量を増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を使用したコージェネレーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力を発電すると共に、その際に発生する排熱を給湯や暖房等に利用できるコージェネレーションシステムが知られている。そして、この種のシステムに採用される発電手段としては、燃料電池によるものや、ガスエンジンによるものがある。近年では、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCとも言う)が実用化されている(例えば、特許文献1)。このSOFCは、ガスエンジンとは異なり、二酸化炭素を排出せず、ガスエンジンや公知の他の種類の燃料電池(例えば、溶融炭酸塩形燃料電池、リン酸形燃料電池、固体高分子形燃料電池)よりも高い発電効率を有するという利点がある。
【0003】
このようなコージェネレーションシステムには、一般家庭で使用されるものがある。そして、家庭用のコージェネレーションシステムは、電力と熱とを同時に発生させている。ここで、電力については、発生させる時刻と消費すべき時刻が概ね合致している。また、発電量と消費量についてもある程度のバランスがとれている。
これに対して熱は、発生する時刻と、消費する時刻が甚だしくずれている場合が多い。また単位時間あたりにおける発熱能力と、消費時における単位時間当たりの熱の必要量は大きく相違する。
即ち、家庭において、熱を消費する時刻は限られている。また、家庭において、熱需要が最も高いのは風呂であり、風呂では短時間の間に大きな熱量を消費する。
【0004】
そこで、家庭用のコージェネレーションシステムでは、貯留タンクを設け、発生した熱によって湯を作り、この湯を貯留タンクに溜置く構成が採用されている。
即ち、家庭用のコージェネレーションシステムでは、発電部と貯留タンクとを備え、両者の間を環状に結ぶ熱回収用回路が設けられている。そして発電部で発生した熱によって熱回収用回路を流れる湯水を昇温し、貯留タンクに溜める(以下、蓄熱運転ともいう)。
【0005】
加えて、貯留タンクを備えた家庭用のコージェネレーションシステムの一形態として、貯留タンクに温度成層を形成させるものが知られている。
【0006】
具体的に説明すると、温度成層を形成させる形態のコージェネレーションシステムでは、蓄熱運転の際に貯留タンクの下部から湯水を取り出し、発電部を経由して貯留タンクに湯水を戻す。その結果、高温の湯水が貯留タンクの上部から供給される。
【0007】
ここで、周知の通り、高温の湯水は、低温の湯水よりも密度が低いので、貯留タンクに高温の湯水を供給すると、高温の湯水は上方に溜まり、低温の湯水は底側にたまる。
【0008】
即ち、高温の湯水を貯留タンクの上部側から供給すると、貯留タンク内で高温の湯水が溜まった領域と、低温の湯水が溜まった領域とに明確に分かれ、貯留タンクの内部に温度成層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−159869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記したSOFCには、発熱温度は高いがその排熱量が少ないという特徴がある。したがって、蓄熱運転で湯水の温度を昇温させるとき、熱回収用回路を流れる湯水の流速を極めて遅くすることにより、循環流量を少なくして運転しなければならない。
【0011】
ところが、熱回収用回路を流れる湯水の流速を極めて遅くすると、あたかも熱回収用回路に湯水が滞留しているような状態となる。この場合、冬季に外気の温度が極めて低くなる寒冷地でコージェネレーションシステムを運用すると、外気によって冷却されることにより、熱回収用回路の湯水が凍結してしまうおそれがある。
【0012】
そこで、熱回収用回路の湯水が凍結する可能性のある条件下において、一時的に熱回収用回路を流れる湯水の流速を速くして、凍結を防止するという方策が考えられる。
【0013】
しかしながら、単純に熱回収用回路を流れる湯水の流速を速くすると、十分に加熱されていない低温の湯水が貯留タンクの上部から流れ込んでしまい、上記した貯留タンクの内部に形成される温度成層が乱れてしまうという問題がある。即ち、低温の湯水が貯留タンクの上部から流れ込んでしまうことにより、貯留タンク内で対流が生じ、内部の湯水の温度が一様になってしまうという問題がある。
【0014】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、貯留タンクの内部に形成した温度成層を乱すことなく、凍結防止運転を実施可能なコージェネレーションシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、燃料電池を内蔵していて電気エネルギーと熱エネルギーとを同時に発生させる発電部を有し、前記発電部で発生させた熱によって湯水を加熱するコージェネレーションシステムにおいて、湯水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンク及び発電部を含んで環状に結ぶ熱回収回路とを有し、発電部の熱によって加熱された湯水の貯留タンクへの供給と、発電部と貯留タンクの間での湯水の循環とが熱回収回路を介して実施されるものであって、所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施するものであり、前記流量増加可否判断の判断結果に基づいて熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施することを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0016】
本発明のコージェネレーションシステムでは、所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施する。そして、流量増加可否判断の判断結果に基づいて熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施する。このことにより、コージェネレーションシステムの通常運転に悪影響を及ぼさない場合に限って、熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施することができる。したがって、熱回収回路の流量を増加することに起因する不具合、例えば、温度成層の乱れ等の不具合を防止しつつ、凍結防止運転を実施することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記流量増加可否判断は、熱回収回路で流量を増加させた場合の熱回収回路を流れる湯水の温度と、所定温度とを比較するものであることを特徴とする請求項1に記載のコージェネレーションシステムである。
【0018】
本発明のコージェネレーションシステムは、熱回収回路で流量を増加させた場合における湯水の温度に基づいて流量増加可否判断を実施する。つまり、流量を増加した状況を模擬的に現出し、想定される流量増加時の温度に基づいて流量増加可否判断を実施するため、精度の高い流量増加可否判断が可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記流量増加可否判断において流量増加可能と判断された場合、熱回収回路を流れる湯水の目標温度を前記所定温度とすることを特徴とする請求項2に記載のコージェネレーションシステムである。
【0020】
かかる構成によると、熱回収回路を流れる湯水の流量を増加させても、熱回収回路を流れる湯水の温度が所定温度以下に低下することがない。そのため、温度の低い湯水が熱回収回路から貯留タンクに流入してしまうことがなく、貯留タンク内の温度成層の乱れ等の熱回収回路を流れる湯水の温度低下によって発生し得る不具合を確実に防止できる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記熱回収回路は凍結防止ヒータを備えており、凍結防止運転の実施中に凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0022】
本発明のコージェネレーションシステムは、凍結防止ヒータを備えており、凍結防止運転の実施中に凍結防止ヒータを作動させることができる。そのため、例え熱回収回路の湯水の流量を増加させるだけでは湯水の凍結を防止できない場合であっても、凍結防止ヒータで湯水を加熱することで湯水を昇温することで、確実に湯水の温度低下を防止することができる。さらに、熱回収回路の湯水の流量を増加させることができない場合であっても、同様に、凍結防止ヒータによる湯水の昇温により湯水の凍結を確実に防止できる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、発電ユニットと、少なくとも前記貯留タンクを備えた排熱貯湯ユニットとを備え、前記発電ユニットを制御する発電ユニット制御部と、前記排熱貯湯ユニットを制御する排熱貯湯ユニット制御部とを有し、発電ユニット制御部は、前記流量増加可否判断を実施すると共に、流量増加可否判断の判断結果に基づく情報を排熱貯湯ユニット制御部に送信するものであり、排熱貯湯ユニット制御部は、発電ユニット制御部から送信された情報に基づいて前記凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項4に記載のコージェネレーションシステムである。
【0024】
本発明のコージェネレーションシステムは、発電ユニットと排熱貯湯ユニットとをそれぞれ別の制御部が制御する構成であってもよい。即ち、発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部とがそれぞれ発電ユニットと排熱貯湯ユニットとを制御する構成であってもよい。そして、発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部とが信号を互いに送受信することにより、流量増加可否判断の判断結果に基づいて凍結防止ヒータを作動させてもよい。即ち、発電ユニットと排熱貯湯ユニットとをそれぞれ制御する別の制御部が信号を互いに送受信することによって凍結防止運転を実施する構成であってもよい。
このように、2つのユニットをそれぞれ別の制御部が制御する構成によると、2つのユニットを1つの制御部が制御する構成に比べて、各ユニットの設置位置の自由度が高いという利点がある。具体的に説明すると、例えば、発電ユニットと排熱貯湯ユニットとを離れた位置に配置した場合、2つのユニットを1つの制御部が制御する構成であると、制御部から各ユニットまで配線を伸ばしたりする必要が有る。このことにより、2つのユニットの設置位置に制限ができてしまう。対して、2つのユニットを別の制御部が制御し、情報を互いに送受信する構成によると、そのような制限が発生することがないため、各ユニットの設置位置の自由度が高い。
【0025】
請求項6に記載の発明は、前記貯留タンクの下部から排出させた湯水を発電部で発生させた熱によって加熱し、加熱された湯水を上部側から貯留タンクに戻すことによって、貯留タンクに温度成層を形成させるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0026】
本発明のコージェネレーションシステムは、前記貯留タンクの下部から排出させた湯水を発電部で発生させた熱によって加熱し、加熱された湯水を上部側から貯留タンクに戻すことによって、貯留タンクに温度成層を形成させる構成であってよい。
【0027】
請求項7に記載の発明は、前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の目標温度となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0028】
かかる構成によると、貯湯タンクに流入させる湯水が所定の目標温度となるように循環ポンプの回転数を制御する。そのため、低温の湯水を貯湯タンクに流入させてしまうことがなく、貯湯タンク内の温度成層が乱れることがない。
【0029】
請求項8に記載の発明は、前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の流速となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0030】
かかる構成によると、熱回収回路を流れる湯水の流速が所定の流速となるように循環ポンプのモータの回転数を制御する。即ち、確実に凍結を防止できる速さで熱回収回路に湯水を流すことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、貯留タンク内の温度成層の乱れ等のような、熱回収回路の流量を増加することに起因する不具合を確実に防止しつつ、凍結防止運転を実施可能なコージェネレーションシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るコージェネレーションシステムを示す作動原理図である。
【図2】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、熱回収用回路を黒塗りで示した図である。
【図3】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、給湯経路を黒塗りで示した図である。
【図4】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、熱供給経路を黒塗りで示した図である。
【図5】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、通常の蓄熱運転モードにおける湯水の流れを黒塗りで示した図である。
【図6】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、燃料電池が低温時の蓄熱運転モードにおける湯水の流れを黒塗りで示した図である。
【図7】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、貯留タンク内の湯水を用いて給湯運転を行う場合の湯水の流れを黒塗りで示した図である。なお、蓄熱運転における湯水の流れをハッチングで表し、区別している。
【図8】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、貯留タンク内の湯水を用いて追い焚き用熱交換器に湯水を供給する際の湯水の流れを黒塗りで示した図である。なお、蓄熱運転における湯水の流れをハッチングで表し、区別している。
【図9】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、貯留タンク内の湯水を用いて熱器具用熱交換器に湯水を供給する際の湯水の流れを黒塗りで示した図である。なお、蓄熱運転における湯水の流れをハッチングで表し、区別している。
【図10】図1のコージェネレーションシステムの凍結防止運転において、発電ユニット制御部が実施する動作手順を示すフローチャートである。
【図11】図1のコージェネレーションシステムの凍結防止運転において、排熱貯湯ユニット制御部が実施する動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の第1実施形態に係るコージェネレーションシステム1について説明する。
【0034】
本実施形態のコージェネレーションシステム1は、図1で示されるように、発電ユニット2と、熱回収装置3(排熱貯湯ユニット)とを組み合わせたものであり、これらを往復配管5によって接続して形成されている。
また、コージェネレーションシステム1は、発電ユニット2と熱回収装置3内の機器を結ぶ主要な流路として、熱回収用回路12と、給湯経路21と、熱供給経路22とを有しており、さらにこれらの流路を相互に連通する複数の短絡路が設けられている。
【0035】
発電ユニット2は、主たる構成要素である燃料電池6と、燃料電池6を冷却する冷却手段7とを備えている。
【0036】
燃料電池6は、高温で作動する燃料電池を使用しており、本実施形態では、固体酸化物形燃料電池(所謂SOFC)が採用されている。
【0037】
冷却手段7は、湯水が流れる発電側流路8と、その発電側流路8に配された発電側熱交換器10及び発電側循環ポンプ11を有する。
【0038】
発電側循環ポンプ11(循環ポンプ)は、往復配管5を構成要素に持つ熱回収用回路12(図2)に湯水を循環させるための装置である。発電側循環ポンプ11は、渦巻きポンプであり、図示しないモータを備えている。そして、モータの回転数を可変させることにより、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を増減できる。
【0039】
即ち、発電ユニット2は、外部に設けられた電力負荷に対して、電力を供給するための発電デバイスとしての機能と、その電力供給に伴って発生する熱によって、発電側熱交換器10を通過する湯水を加熱する熱エネルギー発生デバイスとしての機能も備えた構成である。
【0040】
熱回収装置3は、主要な構成要素として、貯留タンク15と、補助熱源機16と、熱量を外部に供給可能な二つの熱供給用熱交換器17,18を備えている。この二つの熱供給用熱交換器は、具体的には熱器具用熱交換器17と風呂追い焚き用熱交換器18となっている。
【0041】
貯留タンク15は、湯水を貯留するための密閉タンクであり、その内部において湯水の温度成層を形成することができる。そして、貯留タンク15は、頂部に設けられた頂部接続部25,26と、底部に設けられた底部接続部27,28に対して、熱回収用回路12、給湯経路21及び熱供給経路22を構成する配管を接続している。なお、頂部接続部25,26及び底部接続部27,28は、本実施形態の様にそれぞれ2口設けられていることが推奨されるが、それぞれ1口であってもよい。
【0042】
さらに貯留タンク15は、内部に貯留される湯水の水位上昇方向(高さ方向)に複数(本実施形態では4つ)のタンク温度センサ30a〜30dを配した構成とされている。タンク温度センサ30a〜30dは、それぞれ貯留タンク15内の湯水の温度を検知するための温度検知手段として機能すると共に、貯留タンク15内に所定温度あるいは所定の温度範囲の湯水の残留量を検知するための残量検知手段としての役割も果たす。
【0043】
ここで、一般的に貯留タンク内に湯水を貯留する場合、その湯水の温度差が所定の閾値(摂氏約10度程度)以上であると、湯水が温度ごとに層状に分かれる。そのため、熱回収用回路12を通過する湯水が、貯留タンク15内の湯水の温度に対して前記閾値温度以上の高温に加熱され、貯留タンク15内の湯水を掻き乱さない程度にゆっくりと戻されると、貯留タンク15内に貯留されている湯水が温度ごとに層状に分かれる(温度成層)。即ち、貯留タンク15内の上部に蓄積した高温層と下部に蓄積した低温層が形成される。
従って、貯留タンク15に設置されたタンク温度センサ30a〜30dの検知温度を調べることにより、貯留タンク15内に所望の温度範囲に加熱された湯水がどれだけ貯留されているかを検知することができる。
【0044】
詳しくは後述するが、本実施形態のコージェネレーションシステム1では、貯留タンク15の底部から取り出された低温の湯水が熱回収用回路12に排出され、発電ユニット2の発電側熱交換器10を通過することによって熱交換・加熱され、貯留タンク15の頂部側にゆっくりと戻される構成とされている。
【0045】
補助熱源機16は、従来公知の給湯器と同様である。補助熱源機16は、ガスや灯油等の燃料を燃焼するためのバーナ31と補助熱源側熱交換器32とを内蔵しており、燃料の燃焼により発生した熱エネルギーを利用して湯水を加熱するものである。
【0046】
次に、本実施形態のコージェネレーションシステム1における主要な流路について説明する。
【0047】
本実施形態のコージェネレーションシステム1には、前記した様に、主に熱回収用回路12、給湯経路21及び熱供給経路22が備えられている。以下、各流路について説明する。
【0048】
まず、熱回収用回路12について説明する。
熱回収用回路12は、図2の黒塗りに示すように、発電ユニット2内の発電側循環ポンプ11及び発電側熱交換器10と、熱回収装置3内の貯留タンク15を含んだ環状に結ばれた流路であり、発電側熱交換器10と貯留タンク15との間で湯水を循環可能な流路である。具体的には、熱回収用回路12は、貯留タンク15から発電側熱交換器10に向かって湯水が流れる熱回収往き流路37と、発電側熱交換器10から貯留タンク15に向かって湯水が流れる熱回収戻り流路38と、貯留タンク15を迂回する熱回収バイパス流路40を有する。
即ち、熱回収往き流路37の上流側が貯留タンク15の底部接続部27に接続され、熱回収戻り流路38の下流側が貯留タンク15の頂部接続部25に接続されている。さらに両者の中間部分を短絡するように熱回収バイパス流路40が接続されて熱回収用回路12が形成されている。
【0049】
また、熱回収往き流路37には、中途に流路の切り替えを可能とした流路切り替え手段たる三方弁41と、湯水の温度を検知するラジエター用温度センサ47と、凍結防止ヒータ44と、放熱手段たるラジエター42とが設けられている。さらに、熱回収往き流路37には、発電ユニット2の内部に位置する部分と熱回収装置3の内部に位置する部分とに、それぞれ熱回収側往き流路温度センサ43と、発電側往き流路温度センサ49が設けられている。
【0050】
三方弁41は、3つのポート41a〜41cを有し、2経路に流路を切り換えることができるものである。即ち、この三方弁41は、ポート41aとポート41cが連通すると他のポート41bが閉塞し、熱回収往き流路37を流通可能状態にすることができる。また、三方弁41は、ポート41bとポート41cが連通すると他のポート41aが閉塞し、熱回収バイパス流路40を流通可能状態にすることができる。
【0051】
凍結防止ヒータ44は、ヒータとして平板状に成形したアルミナやセラミックスに発熱体を内蔵した所謂セラミックヒータである。この凍結防止ヒータは、通電による発熱によって熱回収往き流路37を形成する配管等を加熱することが可能となっている。より具体的には、熱回収往き流路37を形成する配管等を加熱することにより、熱回収往き流路37を流れる湯水を加熱することができる。
【0052】
ラジエター42は、ファン45を備えており、空冷効果で通過する湯水の温度を降下させるものが採用されている。ラジエター42のファン45は、ラジエター用温度センサ47の検知温度に基づいて動力を制御することができる。
【0053】
熱回収側往き流路温度センサ43は、熱回収往き流路37を流れる湯水の温度を検知するものである。より具体的には、熱回収装置3側から発電ユニット2側へ湯水を導入するとき、熱回収装置3において外部へ送り出される直前の湯水の温度を検知するものである。
【0054】
発電側往き流路温度センサ49は、熱回収往き流路37を流れる湯水の温度を検知するものであり、より具体的には、発電ユニット2へ導入された直後の湯水の温度を検知するものである。
【0055】
熱回収戻り流路38には、中途に発電側戻り流路温度センサ48と、熱回収側戻り流路温度センサ46とが設けられている。これらはいずれも熱回収戻り流路38に接続された熱回収バイパス流路40の接続部よりも上流側(発電側熱交換器10側)に配されており、上流側から発電側戻り流路温度センサ48、熱回収側戻り流路温度センサ46の順に配されている。またこのとき、発電側戻り流路温度センサ48は発電ユニット2の内部に位置する部分に配されており、熱回収側戻り流路温度センサ46は熱回収装置3の内部に位置する部分に配されている。
【0056】
発電側戻り流路温度センサ48は、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度を検知するものであり、より具体的には、発電ユニット2で加熱された直後の湯水の温度を検知することができる。換言すると、発電ユニット2側から熱回収装置3側へ湯水を戻すとき、発電ユニット2において外部へ送り出される直前の湯水の温度を検知するものである。
【0057】
熱回収側戻り流路温度センサ46は、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度を検知するものであり、より具体的には、熱回収装置3へ戻された直後の湯水の温度を検知するものである。
【0058】
続いて、給湯経路21について説明する。
給湯経路21は、外部に所望の温度の湯水を出湯するための流路である。即ち、給湯経路21は、図3の黒塗りに示すように、給水源を基準に、貯留タンク15よりも上流側に位置する給水流路50と、貯留タンク15よりも下流側に位置する出湯流路51で構成されている。
【0059】
給水流路50は、貯留タンク15の底部接続部28に接続されている。これにより、コージェネレーションシステム1は、外部から供給される低温の湯水を貯留タンク15の底部側から導入可能な構成とされている。
【0060】
給水流路50の中途には、給水源側から順に、外部から供給された湯水の温度を検知する給水温度センサ52と、逆止弁53と、流路切り替え手段たる三方弁55が設けられている。
【0061】
三方弁55は、前記した熱回収用回路12(図2参照)における三方弁41の構造とほぼ同様であり、3つのポート55a〜55cを有する。即ち、この三方弁55は、ポート55aとポート55bが連通すると他のポート55cが閉塞し、給水流路50の上流側(給水源側)に位置する上流側給水流路50aと、給水流路50の下流側(貯留タンク15側)に位置する下流側給水流路50bとの流通を可能とする。また、ポート55aとポート55cが連通すると他のポート55bが閉塞し、上流側給水流路50aとタンク迂回流路56の流通を可能とする。
【0062】
出湯流路51は、貯留タンク15の頂部接続部26に接続されて、給湯栓あるいは追い焚き循環流路35に導く流路である。即ち、出湯流路51の中途には、追い焚き循環流路35に連通した風呂側分岐路57が接続されている。
【0063】
また、出湯流路51の中途には、上流側から順に、高温側温度センサ58と、3つのポートを備えた湯水混合弁60と、流量センサ61と、比例弁62と、出湯温度センサ63が設けられている。なお、湯水混合弁60には、給水流路50から分岐した給水分岐路65が接続されている。給水分岐路65は、出湯流路51を流れる湯水に外部から供給される湯水を合流させるための流路である。
【0064】
給水分岐路65の中流には、出湯流路51側から給水源側に向けて湯水が逆流するのを防止するための逆止弁66が設けられている。その下流で、湯水混合弁60に接続している。
【0065】
即ち、出湯流路51を通過する湯水は、湯水混合弁60で高温の湯水と低温の湯水が混ざって所望の温度に調整され、比例弁62で所望の流量に制御される。
【0066】
続いて、熱供給経路22について説明する。
熱供給経路22は、図4の黒塗りに示すように、熱器具用熱交換器17を設けた熱器具用流路67と、風呂追い焚き用熱交換器18を設けた風呂追い焚き用流路68とを含むように形成された循環流路である。
【0067】
具体的には、熱供給経路22は、前記した出湯流路51(図3参照)から分岐した流路で、出湯分岐流路70と、熱交往き流路71と、熱交往き流路71から分岐した熱器具用流路67及び風呂追い焚き用流路68と、熱交戻り流路72とによって形成された流路である。より分かり易く説明するため、熱供給経路22を流れる湯水に注目すれば、貯留タンク15の頂部接続部26から排出された湯水は、出湯流路51から分岐部54を介して、出湯分岐流路70に導入され、合流部92を通過して熱交往き流路71に導入される。そして、熱交往き流路71から分岐部82で分岐して、熱器具用流路67及び風呂追い焚き用流路68を通過する。その後、合流部83で合流し、熱交戻り流路72を介して、再び貯留タンク15に導入される。
【0068】
出湯分岐流路70には、中途に上流側(貯留タンク15側)から順番に、流路切り替え手段たる三方弁73と、循環ポンプ76と、補助熱源入水温度センサ77と、補助熱源流量センサ78と、補助熱源用三方弁80と、補助熱源出湯温度センサ81が設けられている。
【0069】
循環ポンプ76は、熱供給経路22に湯水を循環させる際に起動されるものであり、補助熱源入水温度センサ77及び補助熱源流量センサ78は、補助熱源機16に入水する湯水の温度及び流量を検知するものであり、補助熱源出湯温度センサ81は、補助熱源機16から出湯した湯水の温度を検知するものである。即ち、これらの各センサで検知された情報に基づいて、補助熱源機16の燃焼量が決定される。
【0070】
三方弁73は、3つのポート73a〜73cを有し、貯留タンク15の湯水を出湯分岐流路70側に流す流路を開放したり、タンク迂回流路56の湯水を出湯分岐流路70内に流す流路を開放したりすることができる。同様に、補助熱源用三方弁80も、3つのポート80a〜80cを有し、出湯分岐流路70内の湯水を補助熱源機16側に流す流路を開放したり、補助熱源機16を迂回する流路を開放したりすることができる。
【0071】
熱交往き流路71は、出湯分岐流路70の下流側端部に接続された合流部92から熱器具用流路67及び風呂追い焚き用流路68への分岐部82までの流路である。
【0072】
熱器具用流路67は、分岐部82から熱器具用熱交換器17を通って、熱交戻り流路72への合流部83までの流路である。熱器具用流路67は、熱器具用熱交換器17の下流側に電磁弁85が設けられている。
【0073】
風呂追い焚き用流路68は、分岐部82から風呂追い焚き用熱交換器18を通って、熱交戻り流路72への合流部83までの流路である。風呂追い焚き用流路68は、風呂追い焚き用熱交換器18の下流側に電磁弁86が設けられている。
【0074】
熱交戻り流路72は、合流部83から貯留タンク15までの流路である。
【0075】
熱交戻り流路72は、中途に温度センサ93と、流量センサ95と、前記した三方弁55が設けられている。
【0076】
出湯分岐流路70の三方弁73,80、熱器具用流路67の電磁弁85、風呂追い焚き用流路68の電磁弁86、並びに熱交戻り流路72における三方弁55のそれぞれの開閉状態が制御されると共に、循環ポンプ76の動作が制御されることで、熱供給経路22内における水流が制御される。
【0077】
また、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、上記した流路の他、図1のように貯留タンク15を迂回するタンク迂回流路56や、熱供給経路22から分岐した分岐路87を有する。
【0078】
タンク迂回流路56は、給水流路50から分岐した流路で、三方弁55のポート55cを通過した湯水が、出湯分岐流路70に設けられた三方弁73のポート73cに通じる流路である。即ち、タンク迂回流路56を通過した湯水は、貯留タンク15に導入されることなく出湯分岐流路70に流入することができる。
【0079】
タンク迂回流路56の中途には、温度センサ101が設けられている。
【0080】
分岐路87は、補助熱源出湯温度センサ81よりも下流側に接続されており、具体的には出湯分岐流路70と熱交往き流路71の接続部分である合流部92に接続されている。また、分岐路87の中途には、合流部92側から順に、温度センサ102と比例弁91が設けられている。
【0081】
また、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、図示しない制御手段によって動作が制御されている。この制御手段に具備された部品は、従来公知のコージェネレーションシステムが備えているものと同様であり、例えばCPUや所定の制御プログラムが内蔵されたメモリなどを備えた構成とすることができる。制御手段は、各部に設けられたセンサ類の検知信号や、メモリに記憶されているデータ等に基づいて、コージェネレーションシステム1の各部に設けられた弁や発電ユニット2、補助熱源機16等の動作を制御し、コージェネレーションシステム1の総合エネルギー効率の最適化を図る構成とされている。
【0082】
このコージェネレーションシステム1の制御手段は、主に発電ユニット2を制御する発電ユニット制御部と、主に熱回収装置3を制御する排熱貯湯ユニット制御部とを有している。
【0083】
発電ユニット制御部は、発電側往き流路温度センサ49、発電側戻り流路温度センサ48等の発電ユニット2に設けられた各センサが検知した値を取得可能となっている。また、発電ユニット制御部は、各センサから取得した値や排熱貯湯ユニット制御部から受信した信号に基づいて、発電側循環ポンプ11等の発電ユニット2に設けられた各種機器の動作を制御することができる。
【0084】
排熱貯湯ユニット制御部は、熱回収側往き流路温度センサ43、熱回収側戻り流路温度センサ46等の熱回収装置3に設けられた各センサが検知した値を取得可能となっている。また、排熱貯湯ユニット制御部は、各センサから取得した値や発電ユニット制御部から受信した信号に基づいて、凍結防止ヒータ44等の発電ユニット2に設けられた各種機器の動作を制御することができる。
【0085】
即ち、これら発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部とは、互いに信号を送受信可能となっている。具体的には、それぞれが取得したセンサ類の検知信号に基づいて、発電ユニット2又は熱回収装置3に設けられた機器を操作するための信号を送受信可能となっている。
【0086】
続いて、本実施形態のコージェネレーションシステム1の通常の運転モードにおける動作について説明する。なお、本実施形態のコージェネレーションシステム1の通常の運転動作は、公知技術とほぼ同様であるため、簡単に説明する。
【0087】
本実施形態のコージェネレーションシステム1は、蓄熱運転を単独で行う蓄熱運転モードと、給湯運転モードと追い焚き運転モードと暖房運転モードとを含む運転モード群から選択される熱消費のための動作運転モードと、を選択して運転を行うことができる。
以下に各運転モードについて説明する。
【0088】
(蓄熱運転モード)
蓄熱運転モードは、発電側循環ポンプ11を作動させることにより、熱回収用回路12内に水流を発生させ、発電ユニット2の動作に伴って発生する排熱を回収して湯水を加熱し、この湯水を貯留タンク15に貯留する蓄熱運転を行う運転モードである。即ち、動作運転の要求がない場合に、蓄熱運転を単独で行う運転モードである。言い換えると、待機モードと言える。
【0089】
即ち、コージェネレーションシステム1が蓄熱運転モードで動作する場合、図示しない制御手段から発信される制御信号に基づいて、三方弁41が熱回収バイパス流路40に対して閉じ(ポート41bを閉じる)、熱回収往き流路37及び熱回収戻り流路38に対して開いた状態に制御される。そのため、熱回収用回路12内においては、図5の黒塗りに示すように、貯留タンク15の底部接続部27を始点として、発電ユニット2を介して貯留タンク15の頂部接続部25に向かうように湯水の循環流が発生する。一方、発電ユニット2では、燃料電池6が発電することで発熱するため、発電側熱交換器10が昇温する。即ち、発電ユニット2に導入された湯水は、燃料電池6の排熱によって加熱され、その加熱された湯水は熱回収戻り流路38を通過して、貯留タンク15の上部側(頂部接続部25)に戻される。そして、このような動作が連続的に行われることで、貯留タンク15に加熱された湯水が徐々に貯留される。
このとき、特に限定されるものではないが、熱回収回路12を流れる湯水の流量は、100cc/min以上300cc/min以下、又は、100cc/minよりやや少ない量から、300cc/minまでの量となっている。
【0090】
ここで、本実施形態の蓄熱運転モードでは、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合、熱回収戻り流路38で湯水を循環させる動作を行う。即ち、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合、貯留タンク15に湯水を戻してしまうと貯留タンク15内の温度成層が乱れてしまう。したがって、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合、三方弁41の開放するポートを切り換えて、熱回収戻り流路38から熱回収バイパス流路40側に湯水が流れるように制御する。より具体的には、図6の黒塗りに示すように、熱回収往き流路37における三方弁41よりも上流側の水流を停止し、熱回収用回路12の流路であって貯留タンク15を迂回した流路に湯水を流して、さらに発電ユニット2で湯水を加熱する。そして、このような動作は、戻り側温度センサ46が所定の温度以上を検知するまで継続される。
【0091】
即ち、発電ユニット2の動作に伴って発生する排熱を回収して湯水を加熱し、この湯水を貯留タンク15に貯留する運転は、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が所定温度以上であることを条件として実施する。対して、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合には、三方弁41の開放するポートを切り換えて、熱回収戻り流路38内で湯水を循環させる運転を実施し、熱回収戻り流路38から貯留タンク15に湯水が流れないように制御する。
【0092】
(給湯運転モード)
給湯運転モードを実施している間は、図7のハッチングのように、蓄熱運転が常時行われている。即ち、SOFCを用いたコージェネレーションシステム1が給湯運転モードで動作する場合、蓄熱運転と給湯運転の両方の運転が行われる。
【0093】
このとき、給湯栓等が操作されると、外部の給水源から供給された低温の湯水の一部が貯留タンク15に底部接続部28から流入する。これにより、貯留タンク15の頂部に滞留する高温の湯水が出湯流路51へ排出される。
【0094】
また、外部の給水源から供給された低温の湯水は、給水分岐路65にも流れ込む。このことにより、湯水混合弁60を介して出湯流路51に導入される。
【0095】
即ち、給湯運転モードにおいては、図7の黒塗りに示すように、蓄熱運転に加えて、貯留タンク15に貯留された高温の湯水と、給水分岐路65を通過した低温の湯水とが合流するように水流を形成し、所定の温度に調整されて給湯栓(浴槽への落とし込みも含む)から給湯される。
【0096】
(追い焚き運転モード)
追い焚き運転モードの実施中においても、図8のハッチングのように、蓄熱運転が常時行われている。即ち、SOFCを用いたコージェネレーションシステム1が追い焚き運転モードで動作する場合、蓄熱運転と、高温の湯水を追い焚き用熱交換器18に供給する追い焚き運転を共に実施する。
【0097】
このとき、追い焚き用熱交換器18に高温の湯水を供給すると共に、浴槽内の湯水を追い焚き循環流路35で循環させる(図8の黒塗り参照)。このことにより、熱供給経路22(風呂追い焚き用流路68)を循環する高温の湯水と、追い焚き循環流路35を循環する浴槽内の湯水とが熱交換する。結果、浴槽内の湯水が所望の温度まで加熱される。
【0098】
(暖房運転モード)
暖房運転モードの実施中においても、図9のハッチングのように、蓄熱運転が常時行われている。即ち、SOFCを用いたコージェネレーションシステム1が暖房運転モードで動作する場合、蓄熱運転と、高温の湯水を熱器具用熱交換器17に供給する暖房運転を共に実施する。
【0099】
このとき、熱器具用熱交換器17に高温の湯水を供給すると共に、暖房循環流路36内に湯水(図示しない暖房機器に熱を供給するための熱媒体)の循環流を発生させる。(図9の黒塗り参照)。このことにより、熱供給経路22(熱器具用流路67)を循環する高温の湯水と、暖房循環流路36を循環する熱媒体となる湯水とが熱交換する。結果、図示しない暖房機器に熱が供給される。
【0100】
以上が通常の熱消費のための運転モードの動作の説明である。
【0101】
ここで、上記したように、SOFCは発熱温度が高いが排熱量が少ないという特徴を持つ。そのため、本実施形態では、蓄熱運転モードを実施するときに熱回収用回路12を流れる湯水の流量を少なくする。そして、そのことで湯水をゆっくりと循環させ、湯水を十分に加熱している。また、上記したように、蓄熱運転モードにおいて貯留タンク15に湯水を戻すとき、貯留タンク15内の温度成層を維持するため、貯留タンク15内の湯水を掻き乱さない程度にゆっくりと戻す必要がある。こういった観点からも、蓄熱運転モードにおいて熱回収用回路12に湯水を流すとき、流量を少なくし、ゆっくりと湯水を流す必要がある。
【0102】
しかしながら、コージェネレーションシステム1を寒冷地で使用するとき、熱回収用回路12でゆっくりと湯水を流すと、外気の温度低下によって、熱回収用回路12を流れる湯水が凍結してしまうことが懸念される。即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の流速が極めて遅いと、湯水はあたかも熱回収用回路12に滞留しているような状態となる。このとき、外気温度が低下してしまうと、熱回収用回路12内の湯水が凍結してしまうことが考えられる。
【0103】
そこで、本実施形態のコージェネレーションシステム1では、外気の温度低下による、熱回収用回路12を流れる湯水の凍結を防止するため、凍結防止運転を実施する。本実施形態の特徴的な動作である凍結防止運転について、以下で詳細に説明する。
【0104】
本実施形態の凍結防止運転は、発電ユニット2又は熱回収装置3において熱回収用回路12を流れる湯水の温度低下が検知されたことを条件に開始される。そして、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作のいずれかを実施する。
【0105】
第1の凍結防止動作とは、凍結防止ヒータ44を作動させた状態で、熱回収用回路12に湯水を流す動作である。より具体的には、第1の凍結防止動作は、燃料電池が発電していない場合に実施される動作であって、熱回収往き流路37、熱回収戻り流路38、熱回収バイパス流路40によって形成される循環回路(図6の黒塗り参照)に湯水を流す。このとき、循環回路を流れる湯水の流量は、蓄熱運転モード時の湯水の流量の平均値(例えば、200cc/min未満の流量であり、以下通常時の流量とも称す)より多くなっており、熱回収用回路12における湯水の凍結を十分に防止可能な流量(例えば1L/min)となっている。
【0106】
第2の凍結防止動作とは、凍結予防ヒータ44を停止させた状態で、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)より増加させる動作である。より具体的には、燃料電池が発電中であって、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が比較的に高いときに実施される動作である。即ち、湯水の流量が比較的高く、湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)から増加させても、貯留タンク15に流れ込む湯水が低温とならない場合に実施される。なお、本実施形態では、第2の凍結防止動作の実施時における湯水の流量は、200cc/min以上であり、1L/min以下となっていることが好ましい。即ち、第1の凍結防止動作の流量より少なく、通常時の流量より多くしており、且つ湯水の凍結を十分に防止可能な流量としている。
【0107】
第3の凍結防止動作とは、凍結予防ヒータ44を作動させた状態で、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)とする動作である。より具体的には、燃料電池が発電中であって、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が比較的に低いときに実施される動作である。即ち、湯水の流量が比較的低く、湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)から増加させてしまうと、貯留タンク15に流れ込む湯水が低温となってしまう場合に実施される。
【0108】
具体的に説明すると、凍結防止運転が開始されたとき、燃料電池6が発電中でなければ、第1の凍結防止動作を実施する。
【0109】
これに対して、凍結防止運転が開始されたとき、燃料電池6が発電中であれば、熱回収用回路12を流れる湯水の流量の増加が可能か否かを判別する。即ち、仮に流量を増加した場合に、貯留タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta(例えば摂氏40℃)以上となるか否かを判別する。
【0110】
そして、判別の結果、流量を増加しても貯留タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta以上となることが確認された場合、第2の凍結防止動作を実施する。また、湯水の流量を増加すると、貯留タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Taより低くなってしまう場合、第3の凍結防止動作を実施する。
【0111】
本実施形態の凍結防止運転につき、図10,11を参照しつつ、以下でさらに詳細に説明する。
【0112】
まず、発電ユニット制御部によって制御される発電ユニット2側での凍結防止運転時の動作について説明する。
【0113】
発電側往き流路温度センサ49によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb(例えば摂氏3℃)以下であることが検知された場合、又は発電側戻り流路温度センサ48によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知された場合、又は排熱貯湯ユニット制御部から送信された凍結対応指示の信号が検知された場合、のいずれかの場合(ステップ101でYesの場合)にステップ102へ移行して凍結防止運転を開始する。
【0114】
ここで、詳しくは後述するが、熱回収装置3側では、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることを検知したとき、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結対応指示の信号を発信する。即ち、発電ユニット2又は熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が低温(所定温度Tb以下)であることが検知された場合に、凍結防止運転が開始される。
【0115】
凍結防止運転が開始されると、発電ユニット制御部によって燃料電池6が発電中か否かが判別される(ステップ102)。
【0116】
そして、燃料電池6が発電中でない場合(ステップ102でNoの場合)、第1の凍結防止動作を実施する(ステップ110)。即ち、発電側循環ポンプ11を起動して、熱回収用回路12に規定の流量Q1(例えば、1L/min)で湯水を流す。そしてさらに、発電ユニット制御部が排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結防止ヒータ44の作動を指示する信号を送信する。このとき、詳しくは後述するが、熱回収装置3で凍結防止ヒータ44が起動する。
なお、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、導入後、稼動を開始すると燃料電池6が発電し続けるものであるが、何らかの要因により発電が停止してしまったとき、第1の凍結防止動作(ステップ110の処理)を実施する。
【0117】
対して、燃料電池6が発電中の場合(ステップ102でYesの場合)、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を検知する(ステップ103)。そして、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が熱回収用回路12内で湯水が凍結しない程度に十分な流量であることが確認されると(ステップ103でYesの場合)、ステップ101に戻り、ステップ101以降の処理を実施する。
これに対して、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が比較的少ない場合、即ち、熱回収用回路12内で湯水が凍結してしまうおそれがある場合、コージェネレーションシステム1は、流量増加可否判断を実施する(ステップ104)。具体的に説明すると、熱回収用回路12を流れる湯水の流量をその時の流量(凍結防止運転実施前の流量であって通常時の流量、例えば、200cc/min)から規定の流量Q2(例えば、200cc/min以上である所定の流量)まで増加させたと仮定した場合に、貯湯タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta(例えば摂氏40℃)以上となるか否かを判断する。そして、仮に湯水の流量を増加しても、貯湯タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta以上となることが予測される場合、流量増加可能と判断する(ステップ105でYes)。対して、仮に湯水の流量を増加すると、貯湯タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Taより低くなることが予測される場合、流量増加不可と判断する(ステップ105でNo)。
【0118】
このとき、流量増加可否判断は適宜実施してよいが、一例として、流量を増加した場合の温度Txを算出し、所定温度Ta(例えば摂氏40℃)以上であるか否かを判別する方法がある。具体的には、まず、凍結防止運転実施時の熱回収用回路12を流れる湯水の流量と、発電側往き流路温度センサ49、発電側戻り流路温度センサ48が取得した温度から、燃料電池6で排出された熱量を演算する。次に、演算した熱量と、増加させた場合の仮の流量から、流量を増加した場合の温度Txを算出する。そして、算出した温度Txが所定温度Ta以上であるか比較するという方法である。なお、算出した温度Txが所定温度Ta以上であれば流量増加可能と判断し、算出した温度Txが所定温度Taより低ければ流量増加不可と判断する。
【0119】
そして、流量増加可否判断で流量増加可能と判断された場合(ステップ105でYesの場合)、第2の凍結防止動作を実施する(ステップ106)。第2の凍結防止動作では、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(凍結防止運転開始時の流量であって、例えば、200cc/min)から規定の流量Q2まで増加させる。
【0120】
ここで、規定の流量Q2とは、通常時の流量(凍結防止運転開始時の流量でもあり、例えば、200cc/min)以上であって、適宜の流量となっている。
【0121】
また、第2の凍結防止動作では、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を停止させる信号を送信する。このとき、詳しくは後述するが、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が停止した状態であれば、凍結防止ヒータ44に停止した状態をそのまま維持する。また、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が作動中であれば停止する。
【0122】
ところで、第2の凍結防止動作を実施するとき、熱回収用回路12を流れる湯水の流量がすでに凍結防止運転によって変更されていた場合でも、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を上記規定の流量Q2とする。即ち、この場合も同様に、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を規定の流量Q2に変更し、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を停止させる信号を送信する。
【0123】
また、流量増加可否判断で流量増加不可と判断された場合(ステップ105でNoの場合)、第3の凍結防止動作を実施する(ステップ109)。即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)に維持しつつ、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を作動させる信号を送信する。このとき、詳しくは後述するが、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が停止中であれば凍結防止ヒータ44を作動させる。また、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が作動中であれば作動した状態を維持する。
【0124】
ところで、第3の凍結防止動作を実施するとき、熱回収用回路12を流れる湯水の流量がすでに凍結防止運転によって変更されていた場合であっても、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)に戻し、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を作動させる信号を送信する。
【0125】
そして、発電ユニット2且つ熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc(例えば摂氏7℃)以上であることが検知されるまで(ステップ107でNoである間)、ステップ102以降の処理を実施する。
【0126】
対して、発電側往き流路温度センサ49によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つ発電側戻り流路温度センサ48によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つ排熱貯湯ユニット制御部から送信された凍結防止動作の停止を指示する信号が検知された場合(ステップ107でYesの場合)に、ステップ108へ移行して凍結防止運転を停止する。
【0127】
ここで、凍結防止運転の停止条件となる所定温度Tc(例えば摂氏7℃)と凍結防止運転の開始条件となる所定温度Tb(例えば摂氏3℃)の間には差が設けられている。より詳細には、凍結防止運転の停止条件となる所定温度Tcは、凍結防止運転の開始条件となる所定温度Tbを上回っている。
【0128】
そして、詳しくは後述するが、熱回収装置3側では、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることを検知したとき、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結防止運転の停止を指示する信号を発信する。即ち、発電ユニット2且つ熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が高温(所定温度Tc以上)であることが検知された場合に、凍結防止運転が停止される。
【0129】
具体的には、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を停止させる信号を送信すると共に、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)に戻す(ステップ108)。そして、発電ユニット2又は熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が低温(所定温度Tb以下)であることが検知されるまで(ステップ101でYesとなるまで)待機する。
【0130】
以上で、発電ユニット2側での凍結防止運転時の動作について説明を終了する。
【0131】
続いて、排熱貯湯ユニット制御部によって制御される熱回収装置3側での凍結防止運転時の動作について説明する。
【0132】
熱回収装置3では、熱回収側往き流路温度センサ43によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb(例えば摂氏3℃)以下であることが検知された場合、又は熱回収側戻り流路温度センサ46によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知された場合、又はラジエター用温度センサ47によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知された場合(ステップ201でYesの場合)、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結対応指示の信号を発信する。即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が低温(所定温度Tb以下)であることを検知したとき、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結対応指示の信号を発信する。
【0133】
また、熱回収装置3では、凍結防止運転が実施されている間、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を作動させる信号を受信すると(ステップ203でYesの場合)、凍結防止ヒータ44を作動させる(ステップ204)。具体的には、凍結防止ヒータ44に通電し、凍結防止ヒータ44によって熱回収往き流路37を形成する配管等を加熱する。そして、熱回収往き流路37を流れる湯水を昇温する。
【0134】
対して、凍結防止運転が実施されている間、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を停止させる信号を受信すると(ステップ203でNoの場合)、凍結防止ヒータ44を停止させる(ステップ207)。
【0135】
なお、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を作動させる信号を受信したとき、凍結防止ヒータ44が停止中であれば作動させ、凍結防止ヒータ44が作動中であれば作動した状態を維持させる。同様に、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を停止させる信号を受信したとき、凍結防止ヒータ44が作動中であれば停止させ、凍結防止ヒータ44が停止中であれば停止した状態を維持させる。
【0136】
そして、熱回収装置3では、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc(例えば摂氏7℃)以上であることが検知されるまで(ステップ205でNoである間)、ステップ202以降の処理を実施する。
【0137】
対して、熱回収側往き流路温度センサ43によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つ熱回収側戻り流路温度センサ46によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つラジエター用温度センサ47によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合(ステップ205でYesの場合)、凍結防止ヒータ44を停止し、発電ユニット制御部に凍結防止動作の停止を指示する信号を送信する。そして、熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知されるまで(ステップ201でYesとなるまで)待機する。
【0138】
以上で、熱回収装置3側での凍結防止運転時の動作について説明を終了する。
【0139】
上記したように、本実施形態において熱回収用回路12を流れる湯水の流量は、通常時の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)と第3の凍結防止動作時の流量が同一(略同一)となっている。そして、第2の凍結防止動作時の流量Q2が第3の凍結防止動作時の流量以上となっている。またさらに、第1の凍結防止動作時の流量(1L/min)が第2の凍結防止動作時の流量Q2より多くなっている。
即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の流量は、通常時又は第3の凍結防止動作時、第2の凍結防止動作時、第1の凍結防止動作時の順に多くなっている。
したがって、第1の凍結防止動作において、熱回収用回路12を流れる湯水の流量の目標とされる所定の流量Q1が、第2の凍結防止動作において、熱回収用回路12を流れる湯水の流量の目標とされる所定の流量Q2より大きくなっている。そしてさらに、当該所定の流量Q2が通常時の流量より大きくなっている。
【0140】
また上記したように、本実施形態では、発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部との間で各種信号を送受信することにより、凍結防止運転を実施する。具体的には、発電ユニット2又は熱回収装置3のいずれかで、熱回収用回路12を流れる湯水の温度低下が確認された場合に凍結防止運転を開始する。そして、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作のいずれかを実施すると共に、これらの動作で必要に応じて凍結防止ヒータ44を作動、停止する。そして、熱回収用回路12を流れる湯水の温度上昇が確認された場合に凍結防止運転を停止する。
【0141】
上記した実施形態では、蓄熱運転モード時において熱回収用回路12を流れる湯水の流量を100cc/min弱から300cc/minとし、蓄熱運転モード時の動作及び凍結防止運転を湯水の流量に基づいて制御する例、即ち、流量を優先させて温度を成り行きで制御する例を示したが、本発明のコージェネレーションシステムはこれに限るものではない。
例えば、湯水の温度に基づいて蓄熱運転モード時の動作又は凍結防止運転の制御を実施してもよい。即ち、温度を優先させて流量を成り行きとする制御を実施してもよい。具体的には、蓄熱運転モードを実施するとき、所定の目標温度を設定し、設定した目標温度となるように発電側循環ポンプ11のモータの回転を制御することによって、湯水の流量を可変させてもよい。また、凍結防止運転を実施するとき、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作でそれぞれ異なる目標温度を設定し、その目標温度となるように発電側循環ポンプ11のモータの回転を制御してもよい。
【0142】
さらにまた、湯水の流速に基づいて蓄熱運転モード時の動作又は凍結防止運転の制御を実施してもよい。例えば、熱回収用回路12を構成する配管の径と、熱回収用回路12を流れる湯水の流量から、熱回収用回路12を流れる湯水が所定の流速になるように凍結防止運転を実施してもよい。このとき、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作の順に流速が速くなるように動作させてもよい。
【0143】
上記した実施形態では、凍結防止ヒータとして、セラミックヒータを採用した例を示したが、本発明のコージェネレーションシステムで採用する凍結防止ヒータはこれに限るものではない。例えば、凍結防止ヒータは帯状の抵抗器等の加熱素子であってもよく、このような凍結防止ヒータを配管(熱回収往き流路37を形成する配管)に巻き付けて取付ける構成であってもよい。また、可撓性を備えた板体と、電熱線等の発熱体によって形成されるヒータであってもよい。つまり、熱回収往き流路37を流れる湯水を加熱できればよい。
【符号の説明】
【0144】
1 コージェネレーションシステム
2 発電ユニット(発電部)
3 熱回収装置(排熱貯湯ユニット)
12 熱回収用回路
15 貯留タンク
44 凍結防止ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を使用したコージェネレーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力を発電すると共に、その際に発生する排熱を給湯や暖房等に利用できるコージェネレーションシステムが知られている。そして、この種のシステムに採用される発電手段としては、燃料電池によるものや、ガスエンジンによるものがある。近年では、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCとも言う)が実用化されている(例えば、特許文献1)。このSOFCは、ガスエンジンとは異なり、二酸化炭素を排出せず、ガスエンジンや公知の他の種類の燃料電池(例えば、溶融炭酸塩形燃料電池、リン酸形燃料電池、固体高分子形燃料電池)よりも高い発電効率を有するという利点がある。
【0003】
このようなコージェネレーションシステムには、一般家庭で使用されるものがある。そして、家庭用のコージェネレーションシステムは、電力と熱とを同時に発生させている。ここで、電力については、発生させる時刻と消費すべき時刻が概ね合致している。また、発電量と消費量についてもある程度のバランスがとれている。
これに対して熱は、発生する時刻と、消費する時刻が甚だしくずれている場合が多い。また単位時間あたりにおける発熱能力と、消費時における単位時間当たりの熱の必要量は大きく相違する。
即ち、家庭において、熱を消費する時刻は限られている。また、家庭において、熱需要が最も高いのは風呂であり、風呂では短時間の間に大きな熱量を消費する。
【0004】
そこで、家庭用のコージェネレーションシステムでは、貯留タンクを設け、発生した熱によって湯を作り、この湯を貯留タンクに溜置く構成が採用されている。
即ち、家庭用のコージェネレーションシステムでは、発電部と貯留タンクとを備え、両者の間を環状に結ぶ熱回収用回路が設けられている。そして発電部で発生した熱によって熱回収用回路を流れる湯水を昇温し、貯留タンクに溜める(以下、蓄熱運転ともいう)。
【0005】
加えて、貯留タンクを備えた家庭用のコージェネレーションシステムの一形態として、貯留タンクに温度成層を形成させるものが知られている。
【0006】
具体的に説明すると、温度成層を形成させる形態のコージェネレーションシステムでは、蓄熱運転の際に貯留タンクの下部から湯水を取り出し、発電部を経由して貯留タンクに湯水を戻す。その結果、高温の湯水が貯留タンクの上部から供給される。
【0007】
ここで、周知の通り、高温の湯水は、低温の湯水よりも密度が低いので、貯留タンクに高温の湯水を供給すると、高温の湯水は上方に溜まり、低温の湯水は底側にたまる。
【0008】
即ち、高温の湯水を貯留タンクの上部側から供給すると、貯留タンク内で高温の湯水が溜まった領域と、低温の湯水が溜まった領域とに明確に分かれ、貯留タンクの内部に温度成層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−159869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記したSOFCには、発熱温度は高いがその排熱量が少ないという特徴がある。したがって、蓄熱運転で湯水の温度を昇温させるとき、熱回収用回路を流れる湯水の流速を極めて遅くすることにより、循環流量を少なくして運転しなければならない。
【0011】
ところが、熱回収用回路を流れる湯水の流速を極めて遅くすると、あたかも熱回収用回路に湯水が滞留しているような状態となる。この場合、冬季に外気の温度が極めて低くなる寒冷地でコージェネレーションシステムを運用すると、外気によって冷却されることにより、熱回収用回路の湯水が凍結してしまうおそれがある。
【0012】
そこで、熱回収用回路の湯水が凍結する可能性のある条件下において、一時的に熱回収用回路を流れる湯水の流速を速くして、凍結を防止するという方策が考えられる。
【0013】
しかしながら、単純に熱回収用回路を流れる湯水の流速を速くすると、十分に加熱されていない低温の湯水が貯留タンクの上部から流れ込んでしまい、上記した貯留タンクの内部に形成される温度成層が乱れてしまうという問題がある。即ち、低温の湯水が貯留タンクの上部から流れ込んでしまうことにより、貯留タンク内で対流が生じ、内部の湯水の温度が一様になってしまうという問題がある。
【0014】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、貯留タンクの内部に形成した温度成層を乱すことなく、凍結防止運転を実施可能なコージェネレーションシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、燃料電池を内蔵していて電気エネルギーと熱エネルギーとを同時に発生させる発電部を有し、前記発電部で発生させた熱によって湯水を加熱するコージェネレーションシステムにおいて、湯水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンク及び発電部を含んで環状に結ぶ熱回収回路とを有し、発電部の熱によって加熱された湯水の貯留タンクへの供給と、発電部と貯留タンクの間での湯水の循環とが熱回収回路を介して実施されるものであって、所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施するものであり、前記流量増加可否判断の判断結果に基づいて熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施することを特徴とするコージェネレーションシステムである。
【0016】
本発明のコージェネレーションシステムでは、所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施する。そして、流量増加可否判断の判断結果に基づいて熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施する。このことにより、コージェネレーションシステムの通常運転に悪影響を及ぼさない場合に限って、熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施することができる。したがって、熱回収回路の流量を増加することに起因する不具合、例えば、温度成層の乱れ等の不具合を防止しつつ、凍結防止運転を実施することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記流量増加可否判断は、熱回収回路で流量を増加させた場合の熱回収回路を流れる湯水の温度と、所定温度とを比較するものであることを特徴とする請求項1に記載のコージェネレーションシステムである。
【0018】
本発明のコージェネレーションシステムは、熱回収回路で流量を増加させた場合における湯水の温度に基づいて流量増加可否判断を実施する。つまり、流量を増加した状況を模擬的に現出し、想定される流量増加時の温度に基づいて流量増加可否判断を実施するため、精度の高い流量増加可否判断が可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記流量増加可否判断において流量増加可能と判断された場合、熱回収回路を流れる湯水の目標温度を前記所定温度とすることを特徴とする請求項2に記載のコージェネレーションシステムである。
【0020】
かかる構成によると、熱回収回路を流れる湯水の流量を増加させても、熱回収回路を流れる湯水の温度が所定温度以下に低下することがない。そのため、温度の低い湯水が熱回収回路から貯留タンクに流入してしまうことがなく、貯留タンク内の温度成層の乱れ等の熱回収回路を流れる湯水の温度低下によって発生し得る不具合を確実に防止できる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、前記熱回収回路は凍結防止ヒータを備えており、凍結防止運転の実施中に凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0022】
本発明のコージェネレーションシステムは、凍結防止ヒータを備えており、凍結防止運転の実施中に凍結防止ヒータを作動させることができる。そのため、例え熱回収回路の湯水の流量を増加させるだけでは湯水の凍結を防止できない場合であっても、凍結防止ヒータで湯水を加熱することで湯水を昇温することで、確実に湯水の温度低下を防止することができる。さらに、熱回収回路の湯水の流量を増加させることができない場合であっても、同様に、凍結防止ヒータによる湯水の昇温により湯水の凍結を確実に防止できる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、発電ユニットと、少なくとも前記貯留タンクを備えた排熱貯湯ユニットとを備え、前記発電ユニットを制御する発電ユニット制御部と、前記排熱貯湯ユニットを制御する排熱貯湯ユニット制御部とを有し、発電ユニット制御部は、前記流量増加可否判断を実施すると共に、流量増加可否判断の判断結果に基づく情報を排熱貯湯ユニット制御部に送信するものであり、排熱貯湯ユニット制御部は、発電ユニット制御部から送信された情報に基づいて前記凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項4に記載のコージェネレーションシステムである。
【0024】
本発明のコージェネレーションシステムは、発電ユニットと排熱貯湯ユニットとをそれぞれ別の制御部が制御する構成であってもよい。即ち、発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部とがそれぞれ発電ユニットと排熱貯湯ユニットとを制御する構成であってもよい。そして、発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部とが信号を互いに送受信することにより、流量増加可否判断の判断結果に基づいて凍結防止ヒータを作動させてもよい。即ち、発電ユニットと排熱貯湯ユニットとをそれぞれ制御する別の制御部が信号を互いに送受信することによって凍結防止運転を実施する構成であってもよい。
このように、2つのユニットをそれぞれ別の制御部が制御する構成によると、2つのユニットを1つの制御部が制御する構成に比べて、各ユニットの設置位置の自由度が高いという利点がある。具体的に説明すると、例えば、発電ユニットと排熱貯湯ユニットとを離れた位置に配置した場合、2つのユニットを1つの制御部が制御する構成であると、制御部から各ユニットまで配線を伸ばしたりする必要が有る。このことにより、2つのユニットの設置位置に制限ができてしまう。対して、2つのユニットを別の制御部が制御し、情報を互いに送受信する構成によると、そのような制限が発生することがないため、各ユニットの設置位置の自由度が高い。
【0025】
請求項6に記載の発明は、前記貯留タンクの下部から排出させた湯水を発電部で発生させた熱によって加熱し、加熱された湯水を上部側から貯留タンクに戻すことによって、貯留タンクに温度成層を形成させるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0026】
本発明のコージェネレーションシステムは、前記貯留タンクの下部から排出させた湯水を発電部で発生させた熱によって加熱し、加熱された湯水を上部側から貯留タンクに戻すことによって、貯留タンクに温度成層を形成させる構成であってよい。
【0027】
請求項7に記載の発明は、前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の目標温度となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0028】
かかる構成によると、貯湯タンクに流入させる湯水が所定の目標温度となるように循環ポンプの回転数を制御する。そのため、低温の湯水を貯湯タンクに流入させてしまうことがなく、貯湯タンク内の温度成層が乱れることがない。
【0029】
請求項8に記載の発明は、前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の流速となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステムである。
【0030】
かかる構成によると、熱回収回路を流れる湯水の流速が所定の流速となるように循環ポンプのモータの回転数を制御する。即ち、確実に凍結を防止できる速さで熱回収回路に湯水を流すことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、貯留タンク内の温度成層の乱れ等のような、熱回収回路の流量を増加することに起因する不具合を確実に防止しつつ、凍結防止運転を実施可能なコージェネレーションシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るコージェネレーションシステムを示す作動原理図である。
【図2】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、熱回収用回路を黒塗りで示した図である。
【図3】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、給湯経路を黒塗りで示した図である。
【図4】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、熱供給経路を黒塗りで示した図である。
【図5】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、通常の蓄熱運転モードにおける湯水の流れを黒塗りで示した図である。
【図6】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、燃料電池が低温時の蓄熱運転モードにおける湯水の流れを黒塗りで示した図である。
【図7】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、貯留タンク内の湯水を用いて給湯運転を行う場合の湯水の流れを黒塗りで示した図である。なお、蓄熱運転における湯水の流れをハッチングで表し、区別している。
【図8】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、貯留タンク内の湯水を用いて追い焚き用熱交換器に湯水を供給する際の湯水の流れを黒塗りで示した図である。なお、蓄熱運転における湯水の流れをハッチングで表し、区別している。
【図9】図1のコージェネレーションシステムの作動原理図であり、貯留タンク内の湯水を用いて熱器具用熱交換器に湯水を供給する際の湯水の流れを黒塗りで示した図である。なお、蓄熱運転における湯水の流れをハッチングで表し、区別している。
【図10】図1のコージェネレーションシステムの凍結防止運転において、発電ユニット制御部が実施する動作手順を示すフローチャートである。
【図11】図1のコージェネレーションシステムの凍結防止運転において、排熱貯湯ユニット制御部が実施する動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明の第1実施形態に係るコージェネレーションシステム1について説明する。
【0034】
本実施形態のコージェネレーションシステム1は、図1で示されるように、発電ユニット2と、熱回収装置3(排熱貯湯ユニット)とを組み合わせたものであり、これらを往復配管5によって接続して形成されている。
また、コージェネレーションシステム1は、発電ユニット2と熱回収装置3内の機器を結ぶ主要な流路として、熱回収用回路12と、給湯経路21と、熱供給経路22とを有しており、さらにこれらの流路を相互に連通する複数の短絡路が設けられている。
【0035】
発電ユニット2は、主たる構成要素である燃料電池6と、燃料電池6を冷却する冷却手段7とを備えている。
【0036】
燃料電池6は、高温で作動する燃料電池を使用しており、本実施形態では、固体酸化物形燃料電池(所謂SOFC)が採用されている。
【0037】
冷却手段7は、湯水が流れる発電側流路8と、その発電側流路8に配された発電側熱交換器10及び発電側循環ポンプ11を有する。
【0038】
発電側循環ポンプ11(循環ポンプ)は、往復配管5を構成要素に持つ熱回収用回路12(図2)に湯水を循環させるための装置である。発電側循環ポンプ11は、渦巻きポンプであり、図示しないモータを備えている。そして、モータの回転数を可変させることにより、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を増減できる。
【0039】
即ち、発電ユニット2は、外部に設けられた電力負荷に対して、電力を供給するための発電デバイスとしての機能と、その電力供給に伴って発生する熱によって、発電側熱交換器10を通過する湯水を加熱する熱エネルギー発生デバイスとしての機能も備えた構成である。
【0040】
熱回収装置3は、主要な構成要素として、貯留タンク15と、補助熱源機16と、熱量を外部に供給可能な二つの熱供給用熱交換器17,18を備えている。この二つの熱供給用熱交換器は、具体的には熱器具用熱交換器17と風呂追い焚き用熱交換器18となっている。
【0041】
貯留タンク15は、湯水を貯留するための密閉タンクであり、その内部において湯水の温度成層を形成することができる。そして、貯留タンク15は、頂部に設けられた頂部接続部25,26と、底部に設けられた底部接続部27,28に対して、熱回収用回路12、給湯経路21及び熱供給経路22を構成する配管を接続している。なお、頂部接続部25,26及び底部接続部27,28は、本実施形態の様にそれぞれ2口設けられていることが推奨されるが、それぞれ1口であってもよい。
【0042】
さらに貯留タンク15は、内部に貯留される湯水の水位上昇方向(高さ方向)に複数(本実施形態では4つ)のタンク温度センサ30a〜30dを配した構成とされている。タンク温度センサ30a〜30dは、それぞれ貯留タンク15内の湯水の温度を検知するための温度検知手段として機能すると共に、貯留タンク15内に所定温度あるいは所定の温度範囲の湯水の残留量を検知するための残量検知手段としての役割も果たす。
【0043】
ここで、一般的に貯留タンク内に湯水を貯留する場合、その湯水の温度差が所定の閾値(摂氏約10度程度)以上であると、湯水が温度ごとに層状に分かれる。そのため、熱回収用回路12を通過する湯水が、貯留タンク15内の湯水の温度に対して前記閾値温度以上の高温に加熱され、貯留タンク15内の湯水を掻き乱さない程度にゆっくりと戻されると、貯留タンク15内に貯留されている湯水が温度ごとに層状に分かれる(温度成層)。即ち、貯留タンク15内の上部に蓄積した高温層と下部に蓄積した低温層が形成される。
従って、貯留タンク15に設置されたタンク温度センサ30a〜30dの検知温度を調べることにより、貯留タンク15内に所望の温度範囲に加熱された湯水がどれだけ貯留されているかを検知することができる。
【0044】
詳しくは後述するが、本実施形態のコージェネレーションシステム1では、貯留タンク15の底部から取り出された低温の湯水が熱回収用回路12に排出され、発電ユニット2の発電側熱交換器10を通過することによって熱交換・加熱され、貯留タンク15の頂部側にゆっくりと戻される構成とされている。
【0045】
補助熱源機16は、従来公知の給湯器と同様である。補助熱源機16は、ガスや灯油等の燃料を燃焼するためのバーナ31と補助熱源側熱交換器32とを内蔵しており、燃料の燃焼により発生した熱エネルギーを利用して湯水を加熱するものである。
【0046】
次に、本実施形態のコージェネレーションシステム1における主要な流路について説明する。
【0047】
本実施形態のコージェネレーションシステム1には、前記した様に、主に熱回収用回路12、給湯経路21及び熱供給経路22が備えられている。以下、各流路について説明する。
【0048】
まず、熱回収用回路12について説明する。
熱回収用回路12は、図2の黒塗りに示すように、発電ユニット2内の発電側循環ポンプ11及び発電側熱交換器10と、熱回収装置3内の貯留タンク15を含んだ環状に結ばれた流路であり、発電側熱交換器10と貯留タンク15との間で湯水を循環可能な流路である。具体的には、熱回収用回路12は、貯留タンク15から発電側熱交換器10に向かって湯水が流れる熱回収往き流路37と、発電側熱交換器10から貯留タンク15に向かって湯水が流れる熱回収戻り流路38と、貯留タンク15を迂回する熱回収バイパス流路40を有する。
即ち、熱回収往き流路37の上流側が貯留タンク15の底部接続部27に接続され、熱回収戻り流路38の下流側が貯留タンク15の頂部接続部25に接続されている。さらに両者の中間部分を短絡するように熱回収バイパス流路40が接続されて熱回収用回路12が形成されている。
【0049】
また、熱回収往き流路37には、中途に流路の切り替えを可能とした流路切り替え手段たる三方弁41と、湯水の温度を検知するラジエター用温度センサ47と、凍結防止ヒータ44と、放熱手段たるラジエター42とが設けられている。さらに、熱回収往き流路37には、発電ユニット2の内部に位置する部分と熱回収装置3の内部に位置する部分とに、それぞれ熱回収側往き流路温度センサ43と、発電側往き流路温度センサ49が設けられている。
【0050】
三方弁41は、3つのポート41a〜41cを有し、2経路に流路を切り換えることができるものである。即ち、この三方弁41は、ポート41aとポート41cが連通すると他のポート41bが閉塞し、熱回収往き流路37を流通可能状態にすることができる。また、三方弁41は、ポート41bとポート41cが連通すると他のポート41aが閉塞し、熱回収バイパス流路40を流通可能状態にすることができる。
【0051】
凍結防止ヒータ44は、ヒータとして平板状に成形したアルミナやセラミックスに発熱体を内蔵した所謂セラミックヒータである。この凍結防止ヒータは、通電による発熱によって熱回収往き流路37を形成する配管等を加熱することが可能となっている。より具体的には、熱回収往き流路37を形成する配管等を加熱することにより、熱回収往き流路37を流れる湯水を加熱することができる。
【0052】
ラジエター42は、ファン45を備えており、空冷効果で通過する湯水の温度を降下させるものが採用されている。ラジエター42のファン45は、ラジエター用温度センサ47の検知温度に基づいて動力を制御することができる。
【0053】
熱回収側往き流路温度センサ43は、熱回収往き流路37を流れる湯水の温度を検知するものである。より具体的には、熱回収装置3側から発電ユニット2側へ湯水を導入するとき、熱回収装置3において外部へ送り出される直前の湯水の温度を検知するものである。
【0054】
発電側往き流路温度センサ49は、熱回収往き流路37を流れる湯水の温度を検知するものであり、より具体的には、発電ユニット2へ導入された直後の湯水の温度を検知するものである。
【0055】
熱回収戻り流路38には、中途に発電側戻り流路温度センサ48と、熱回収側戻り流路温度センサ46とが設けられている。これらはいずれも熱回収戻り流路38に接続された熱回収バイパス流路40の接続部よりも上流側(発電側熱交換器10側)に配されており、上流側から発電側戻り流路温度センサ48、熱回収側戻り流路温度センサ46の順に配されている。またこのとき、発電側戻り流路温度センサ48は発電ユニット2の内部に位置する部分に配されており、熱回収側戻り流路温度センサ46は熱回収装置3の内部に位置する部分に配されている。
【0056】
発電側戻り流路温度センサ48は、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度を検知するものであり、より具体的には、発電ユニット2で加熱された直後の湯水の温度を検知することができる。換言すると、発電ユニット2側から熱回収装置3側へ湯水を戻すとき、発電ユニット2において外部へ送り出される直前の湯水の温度を検知するものである。
【0057】
熱回収側戻り流路温度センサ46は、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度を検知するものであり、より具体的には、熱回収装置3へ戻された直後の湯水の温度を検知するものである。
【0058】
続いて、給湯経路21について説明する。
給湯経路21は、外部に所望の温度の湯水を出湯するための流路である。即ち、給湯経路21は、図3の黒塗りに示すように、給水源を基準に、貯留タンク15よりも上流側に位置する給水流路50と、貯留タンク15よりも下流側に位置する出湯流路51で構成されている。
【0059】
給水流路50は、貯留タンク15の底部接続部28に接続されている。これにより、コージェネレーションシステム1は、外部から供給される低温の湯水を貯留タンク15の底部側から導入可能な構成とされている。
【0060】
給水流路50の中途には、給水源側から順に、外部から供給された湯水の温度を検知する給水温度センサ52と、逆止弁53と、流路切り替え手段たる三方弁55が設けられている。
【0061】
三方弁55は、前記した熱回収用回路12(図2参照)における三方弁41の構造とほぼ同様であり、3つのポート55a〜55cを有する。即ち、この三方弁55は、ポート55aとポート55bが連通すると他のポート55cが閉塞し、給水流路50の上流側(給水源側)に位置する上流側給水流路50aと、給水流路50の下流側(貯留タンク15側)に位置する下流側給水流路50bとの流通を可能とする。また、ポート55aとポート55cが連通すると他のポート55bが閉塞し、上流側給水流路50aとタンク迂回流路56の流通を可能とする。
【0062】
出湯流路51は、貯留タンク15の頂部接続部26に接続されて、給湯栓あるいは追い焚き循環流路35に導く流路である。即ち、出湯流路51の中途には、追い焚き循環流路35に連通した風呂側分岐路57が接続されている。
【0063】
また、出湯流路51の中途には、上流側から順に、高温側温度センサ58と、3つのポートを備えた湯水混合弁60と、流量センサ61と、比例弁62と、出湯温度センサ63が設けられている。なお、湯水混合弁60には、給水流路50から分岐した給水分岐路65が接続されている。給水分岐路65は、出湯流路51を流れる湯水に外部から供給される湯水を合流させるための流路である。
【0064】
給水分岐路65の中流には、出湯流路51側から給水源側に向けて湯水が逆流するのを防止するための逆止弁66が設けられている。その下流で、湯水混合弁60に接続している。
【0065】
即ち、出湯流路51を通過する湯水は、湯水混合弁60で高温の湯水と低温の湯水が混ざって所望の温度に調整され、比例弁62で所望の流量に制御される。
【0066】
続いて、熱供給経路22について説明する。
熱供給経路22は、図4の黒塗りに示すように、熱器具用熱交換器17を設けた熱器具用流路67と、風呂追い焚き用熱交換器18を設けた風呂追い焚き用流路68とを含むように形成された循環流路である。
【0067】
具体的には、熱供給経路22は、前記した出湯流路51(図3参照)から分岐した流路で、出湯分岐流路70と、熱交往き流路71と、熱交往き流路71から分岐した熱器具用流路67及び風呂追い焚き用流路68と、熱交戻り流路72とによって形成された流路である。より分かり易く説明するため、熱供給経路22を流れる湯水に注目すれば、貯留タンク15の頂部接続部26から排出された湯水は、出湯流路51から分岐部54を介して、出湯分岐流路70に導入され、合流部92を通過して熱交往き流路71に導入される。そして、熱交往き流路71から分岐部82で分岐して、熱器具用流路67及び風呂追い焚き用流路68を通過する。その後、合流部83で合流し、熱交戻り流路72を介して、再び貯留タンク15に導入される。
【0068】
出湯分岐流路70には、中途に上流側(貯留タンク15側)から順番に、流路切り替え手段たる三方弁73と、循環ポンプ76と、補助熱源入水温度センサ77と、補助熱源流量センサ78と、補助熱源用三方弁80と、補助熱源出湯温度センサ81が設けられている。
【0069】
循環ポンプ76は、熱供給経路22に湯水を循環させる際に起動されるものであり、補助熱源入水温度センサ77及び補助熱源流量センサ78は、補助熱源機16に入水する湯水の温度及び流量を検知するものであり、補助熱源出湯温度センサ81は、補助熱源機16から出湯した湯水の温度を検知するものである。即ち、これらの各センサで検知された情報に基づいて、補助熱源機16の燃焼量が決定される。
【0070】
三方弁73は、3つのポート73a〜73cを有し、貯留タンク15の湯水を出湯分岐流路70側に流す流路を開放したり、タンク迂回流路56の湯水を出湯分岐流路70内に流す流路を開放したりすることができる。同様に、補助熱源用三方弁80も、3つのポート80a〜80cを有し、出湯分岐流路70内の湯水を補助熱源機16側に流す流路を開放したり、補助熱源機16を迂回する流路を開放したりすることができる。
【0071】
熱交往き流路71は、出湯分岐流路70の下流側端部に接続された合流部92から熱器具用流路67及び風呂追い焚き用流路68への分岐部82までの流路である。
【0072】
熱器具用流路67は、分岐部82から熱器具用熱交換器17を通って、熱交戻り流路72への合流部83までの流路である。熱器具用流路67は、熱器具用熱交換器17の下流側に電磁弁85が設けられている。
【0073】
風呂追い焚き用流路68は、分岐部82から風呂追い焚き用熱交換器18を通って、熱交戻り流路72への合流部83までの流路である。風呂追い焚き用流路68は、風呂追い焚き用熱交換器18の下流側に電磁弁86が設けられている。
【0074】
熱交戻り流路72は、合流部83から貯留タンク15までの流路である。
【0075】
熱交戻り流路72は、中途に温度センサ93と、流量センサ95と、前記した三方弁55が設けられている。
【0076】
出湯分岐流路70の三方弁73,80、熱器具用流路67の電磁弁85、風呂追い焚き用流路68の電磁弁86、並びに熱交戻り流路72における三方弁55のそれぞれの開閉状態が制御されると共に、循環ポンプ76の動作が制御されることで、熱供給経路22内における水流が制御される。
【0077】
また、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、上記した流路の他、図1のように貯留タンク15を迂回するタンク迂回流路56や、熱供給経路22から分岐した分岐路87を有する。
【0078】
タンク迂回流路56は、給水流路50から分岐した流路で、三方弁55のポート55cを通過した湯水が、出湯分岐流路70に設けられた三方弁73のポート73cに通じる流路である。即ち、タンク迂回流路56を通過した湯水は、貯留タンク15に導入されることなく出湯分岐流路70に流入することができる。
【0079】
タンク迂回流路56の中途には、温度センサ101が設けられている。
【0080】
分岐路87は、補助熱源出湯温度センサ81よりも下流側に接続されており、具体的には出湯分岐流路70と熱交往き流路71の接続部分である合流部92に接続されている。また、分岐路87の中途には、合流部92側から順に、温度センサ102と比例弁91が設けられている。
【0081】
また、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、図示しない制御手段によって動作が制御されている。この制御手段に具備された部品は、従来公知のコージェネレーションシステムが備えているものと同様であり、例えばCPUや所定の制御プログラムが内蔵されたメモリなどを備えた構成とすることができる。制御手段は、各部に設けられたセンサ類の検知信号や、メモリに記憶されているデータ等に基づいて、コージェネレーションシステム1の各部に設けられた弁や発電ユニット2、補助熱源機16等の動作を制御し、コージェネレーションシステム1の総合エネルギー効率の最適化を図る構成とされている。
【0082】
このコージェネレーションシステム1の制御手段は、主に発電ユニット2を制御する発電ユニット制御部と、主に熱回収装置3を制御する排熱貯湯ユニット制御部とを有している。
【0083】
発電ユニット制御部は、発電側往き流路温度センサ49、発電側戻り流路温度センサ48等の発電ユニット2に設けられた各センサが検知した値を取得可能となっている。また、発電ユニット制御部は、各センサから取得した値や排熱貯湯ユニット制御部から受信した信号に基づいて、発電側循環ポンプ11等の発電ユニット2に設けられた各種機器の動作を制御することができる。
【0084】
排熱貯湯ユニット制御部は、熱回収側往き流路温度センサ43、熱回収側戻り流路温度センサ46等の熱回収装置3に設けられた各センサが検知した値を取得可能となっている。また、排熱貯湯ユニット制御部は、各センサから取得した値や発電ユニット制御部から受信した信号に基づいて、凍結防止ヒータ44等の発電ユニット2に設けられた各種機器の動作を制御することができる。
【0085】
即ち、これら発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部とは、互いに信号を送受信可能となっている。具体的には、それぞれが取得したセンサ類の検知信号に基づいて、発電ユニット2又は熱回収装置3に設けられた機器を操作するための信号を送受信可能となっている。
【0086】
続いて、本実施形態のコージェネレーションシステム1の通常の運転モードにおける動作について説明する。なお、本実施形態のコージェネレーションシステム1の通常の運転動作は、公知技術とほぼ同様であるため、簡単に説明する。
【0087】
本実施形態のコージェネレーションシステム1は、蓄熱運転を単独で行う蓄熱運転モードと、給湯運転モードと追い焚き運転モードと暖房運転モードとを含む運転モード群から選択される熱消費のための動作運転モードと、を選択して運転を行うことができる。
以下に各運転モードについて説明する。
【0088】
(蓄熱運転モード)
蓄熱運転モードは、発電側循環ポンプ11を作動させることにより、熱回収用回路12内に水流を発生させ、発電ユニット2の動作に伴って発生する排熱を回収して湯水を加熱し、この湯水を貯留タンク15に貯留する蓄熱運転を行う運転モードである。即ち、動作運転の要求がない場合に、蓄熱運転を単独で行う運転モードである。言い換えると、待機モードと言える。
【0089】
即ち、コージェネレーションシステム1が蓄熱運転モードで動作する場合、図示しない制御手段から発信される制御信号に基づいて、三方弁41が熱回収バイパス流路40に対して閉じ(ポート41bを閉じる)、熱回収往き流路37及び熱回収戻り流路38に対して開いた状態に制御される。そのため、熱回収用回路12内においては、図5の黒塗りに示すように、貯留タンク15の底部接続部27を始点として、発電ユニット2を介して貯留タンク15の頂部接続部25に向かうように湯水の循環流が発生する。一方、発電ユニット2では、燃料電池6が発電することで発熱するため、発電側熱交換器10が昇温する。即ち、発電ユニット2に導入された湯水は、燃料電池6の排熱によって加熱され、その加熱された湯水は熱回収戻り流路38を通過して、貯留タンク15の上部側(頂部接続部25)に戻される。そして、このような動作が連続的に行われることで、貯留タンク15に加熱された湯水が徐々に貯留される。
このとき、特に限定されるものではないが、熱回収回路12を流れる湯水の流量は、100cc/min以上300cc/min以下、又は、100cc/minよりやや少ない量から、300cc/minまでの量となっている。
【0090】
ここで、本実施形態の蓄熱運転モードでは、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合、熱回収戻り流路38で湯水を循環させる動作を行う。即ち、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合、貯留タンク15に湯水を戻してしまうと貯留タンク15内の温度成層が乱れてしまう。したがって、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合、三方弁41の開放するポートを切り換えて、熱回収戻り流路38から熱回収バイパス流路40側に湯水が流れるように制御する。より具体的には、図6の黒塗りに示すように、熱回収往き流路37における三方弁41よりも上流側の水流を停止し、熱回収用回路12の流路であって貯留タンク15を迂回した流路に湯水を流して、さらに発電ユニット2で湯水を加熱する。そして、このような動作は、戻り側温度センサ46が所定の温度以上を検知するまで継続される。
【0091】
即ち、発電ユニット2の動作に伴って発生する排熱を回収して湯水を加熱し、この湯水を貯留タンク15に貯留する運転は、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が所定温度以上であることを条件として実施する。対して、熱回収戻り流路38を流れる湯水の温度が低い場合には、三方弁41の開放するポートを切り換えて、熱回収戻り流路38内で湯水を循環させる運転を実施し、熱回収戻り流路38から貯留タンク15に湯水が流れないように制御する。
【0092】
(給湯運転モード)
給湯運転モードを実施している間は、図7のハッチングのように、蓄熱運転が常時行われている。即ち、SOFCを用いたコージェネレーションシステム1が給湯運転モードで動作する場合、蓄熱運転と給湯運転の両方の運転が行われる。
【0093】
このとき、給湯栓等が操作されると、外部の給水源から供給された低温の湯水の一部が貯留タンク15に底部接続部28から流入する。これにより、貯留タンク15の頂部に滞留する高温の湯水が出湯流路51へ排出される。
【0094】
また、外部の給水源から供給された低温の湯水は、給水分岐路65にも流れ込む。このことにより、湯水混合弁60を介して出湯流路51に導入される。
【0095】
即ち、給湯運転モードにおいては、図7の黒塗りに示すように、蓄熱運転に加えて、貯留タンク15に貯留された高温の湯水と、給水分岐路65を通過した低温の湯水とが合流するように水流を形成し、所定の温度に調整されて給湯栓(浴槽への落とし込みも含む)から給湯される。
【0096】
(追い焚き運転モード)
追い焚き運転モードの実施中においても、図8のハッチングのように、蓄熱運転が常時行われている。即ち、SOFCを用いたコージェネレーションシステム1が追い焚き運転モードで動作する場合、蓄熱運転と、高温の湯水を追い焚き用熱交換器18に供給する追い焚き運転を共に実施する。
【0097】
このとき、追い焚き用熱交換器18に高温の湯水を供給すると共に、浴槽内の湯水を追い焚き循環流路35で循環させる(図8の黒塗り参照)。このことにより、熱供給経路22(風呂追い焚き用流路68)を循環する高温の湯水と、追い焚き循環流路35を循環する浴槽内の湯水とが熱交換する。結果、浴槽内の湯水が所望の温度まで加熱される。
【0098】
(暖房運転モード)
暖房運転モードの実施中においても、図9のハッチングのように、蓄熱運転が常時行われている。即ち、SOFCを用いたコージェネレーションシステム1が暖房運転モードで動作する場合、蓄熱運転と、高温の湯水を熱器具用熱交換器17に供給する暖房運転を共に実施する。
【0099】
このとき、熱器具用熱交換器17に高温の湯水を供給すると共に、暖房循環流路36内に湯水(図示しない暖房機器に熱を供給するための熱媒体)の循環流を発生させる。(図9の黒塗り参照)。このことにより、熱供給経路22(熱器具用流路67)を循環する高温の湯水と、暖房循環流路36を循環する熱媒体となる湯水とが熱交換する。結果、図示しない暖房機器に熱が供給される。
【0100】
以上が通常の熱消費のための運転モードの動作の説明である。
【0101】
ここで、上記したように、SOFCは発熱温度が高いが排熱量が少ないという特徴を持つ。そのため、本実施形態では、蓄熱運転モードを実施するときに熱回収用回路12を流れる湯水の流量を少なくする。そして、そのことで湯水をゆっくりと循環させ、湯水を十分に加熱している。また、上記したように、蓄熱運転モードにおいて貯留タンク15に湯水を戻すとき、貯留タンク15内の温度成層を維持するため、貯留タンク15内の湯水を掻き乱さない程度にゆっくりと戻す必要がある。こういった観点からも、蓄熱運転モードにおいて熱回収用回路12に湯水を流すとき、流量を少なくし、ゆっくりと湯水を流す必要がある。
【0102】
しかしながら、コージェネレーションシステム1を寒冷地で使用するとき、熱回収用回路12でゆっくりと湯水を流すと、外気の温度低下によって、熱回収用回路12を流れる湯水が凍結してしまうことが懸念される。即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の流速が極めて遅いと、湯水はあたかも熱回収用回路12に滞留しているような状態となる。このとき、外気温度が低下してしまうと、熱回収用回路12内の湯水が凍結してしまうことが考えられる。
【0103】
そこで、本実施形態のコージェネレーションシステム1では、外気の温度低下による、熱回収用回路12を流れる湯水の凍結を防止するため、凍結防止運転を実施する。本実施形態の特徴的な動作である凍結防止運転について、以下で詳細に説明する。
【0104】
本実施形態の凍結防止運転は、発電ユニット2又は熱回収装置3において熱回収用回路12を流れる湯水の温度低下が検知されたことを条件に開始される。そして、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作のいずれかを実施する。
【0105】
第1の凍結防止動作とは、凍結防止ヒータ44を作動させた状態で、熱回収用回路12に湯水を流す動作である。より具体的には、第1の凍結防止動作は、燃料電池が発電していない場合に実施される動作であって、熱回収往き流路37、熱回収戻り流路38、熱回収バイパス流路40によって形成される循環回路(図6の黒塗り参照)に湯水を流す。このとき、循環回路を流れる湯水の流量は、蓄熱運転モード時の湯水の流量の平均値(例えば、200cc/min未満の流量であり、以下通常時の流量とも称す)より多くなっており、熱回収用回路12における湯水の凍結を十分に防止可能な流量(例えば1L/min)となっている。
【0106】
第2の凍結防止動作とは、凍結予防ヒータ44を停止させた状態で、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)より増加させる動作である。より具体的には、燃料電池が発電中であって、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が比較的に高いときに実施される動作である。即ち、湯水の流量が比較的高く、湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)から増加させても、貯留タンク15に流れ込む湯水が低温とならない場合に実施される。なお、本実施形態では、第2の凍結防止動作の実施時における湯水の流量は、200cc/min以上であり、1L/min以下となっていることが好ましい。即ち、第1の凍結防止動作の流量より少なく、通常時の流量より多くしており、且つ湯水の凍結を十分に防止可能な流量としている。
【0107】
第3の凍結防止動作とは、凍結予防ヒータ44を作動させた状態で、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)とする動作である。より具体的には、燃料電池が発電中であって、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が比較的に低いときに実施される動作である。即ち、湯水の流量が比較的低く、湯水の流量を通常時の流量(例えば、200cc/min未満の流量)から増加させてしまうと、貯留タンク15に流れ込む湯水が低温となってしまう場合に実施される。
【0108】
具体的に説明すると、凍結防止運転が開始されたとき、燃料電池6が発電中でなければ、第1の凍結防止動作を実施する。
【0109】
これに対して、凍結防止運転が開始されたとき、燃料電池6が発電中であれば、熱回収用回路12を流れる湯水の流量の増加が可能か否かを判別する。即ち、仮に流量を増加した場合に、貯留タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta(例えば摂氏40℃)以上となるか否かを判別する。
【0110】
そして、判別の結果、流量を増加しても貯留タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta以上となることが確認された場合、第2の凍結防止動作を実施する。また、湯水の流量を増加すると、貯留タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Taより低くなってしまう場合、第3の凍結防止動作を実施する。
【0111】
本実施形態の凍結防止運転につき、図10,11を参照しつつ、以下でさらに詳細に説明する。
【0112】
まず、発電ユニット制御部によって制御される発電ユニット2側での凍結防止運転時の動作について説明する。
【0113】
発電側往き流路温度センサ49によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb(例えば摂氏3℃)以下であることが検知された場合、又は発電側戻り流路温度センサ48によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知された場合、又は排熱貯湯ユニット制御部から送信された凍結対応指示の信号が検知された場合、のいずれかの場合(ステップ101でYesの場合)にステップ102へ移行して凍結防止運転を開始する。
【0114】
ここで、詳しくは後述するが、熱回収装置3側では、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることを検知したとき、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結対応指示の信号を発信する。即ち、発電ユニット2又は熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が低温(所定温度Tb以下)であることが検知された場合に、凍結防止運転が開始される。
【0115】
凍結防止運転が開始されると、発電ユニット制御部によって燃料電池6が発電中か否かが判別される(ステップ102)。
【0116】
そして、燃料電池6が発電中でない場合(ステップ102でNoの場合)、第1の凍結防止動作を実施する(ステップ110)。即ち、発電側循環ポンプ11を起動して、熱回収用回路12に規定の流量Q1(例えば、1L/min)で湯水を流す。そしてさらに、発電ユニット制御部が排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結防止ヒータ44の作動を指示する信号を送信する。このとき、詳しくは後述するが、熱回収装置3で凍結防止ヒータ44が起動する。
なお、本実施形態のコージェネレーションシステム1は、導入後、稼動を開始すると燃料電池6が発電し続けるものであるが、何らかの要因により発電が停止してしまったとき、第1の凍結防止動作(ステップ110の処理)を実施する。
【0117】
対して、燃料電池6が発電中の場合(ステップ102でYesの場合)、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を検知する(ステップ103)。そして、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が熱回収用回路12内で湯水が凍結しない程度に十分な流量であることが確認されると(ステップ103でYesの場合)、ステップ101に戻り、ステップ101以降の処理を実施する。
これに対して、熱回収用回路12を流れる湯水の流量が比較的少ない場合、即ち、熱回収用回路12内で湯水が凍結してしまうおそれがある場合、コージェネレーションシステム1は、流量増加可否判断を実施する(ステップ104)。具体的に説明すると、熱回収用回路12を流れる湯水の流量をその時の流量(凍結防止運転実施前の流量であって通常時の流量、例えば、200cc/min)から規定の流量Q2(例えば、200cc/min以上である所定の流量)まで増加させたと仮定した場合に、貯湯タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta(例えば摂氏40℃)以上となるか否かを判断する。そして、仮に湯水の流量を増加しても、貯湯タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Ta以上となることが予測される場合、流量増加可能と判断する(ステップ105でYes)。対して、仮に湯水の流量を増加すると、貯湯タンク15に流入する湯水の温度が所定温度Taより低くなることが予測される場合、流量増加不可と判断する(ステップ105でNo)。
【0118】
このとき、流量増加可否判断は適宜実施してよいが、一例として、流量を増加した場合の温度Txを算出し、所定温度Ta(例えば摂氏40℃)以上であるか否かを判別する方法がある。具体的には、まず、凍結防止運転実施時の熱回収用回路12を流れる湯水の流量と、発電側往き流路温度センサ49、発電側戻り流路温度センサ48が取得した温度から、燃料電池6で排出された熱量を演算する。次に、演算した熱量と、増加させた場合の仮の流量から、流量を増加した場合の温度Txを算出する。そして、算出した温度Txが所定温度Ta以上であるか比較するという方法である。なお、算出した温度Txが所定温度Ta以上であれば流量増加可能と判断し、算出した温度Txが所定温度Taより低ければ流量増加不可と判断する。
【0119】
そして、流量増加可否判断で流量増加可能と判断された場合(ステップ105でYesの場合)、第2の凍結防止動作を実施する(ステップ106)。第2の凍結防止動作では、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(凍結防止運転開始時の流量であって、例えば、200cc/min)から規定の流量Q2まで増加させる。
【0120】
ここで、規定の流量Q2とは、通常時の流量(凍結防止運転開始時の流量でもあり、例えば、200cc/min)以上であって、適宜の流量となっている。
【0121】
また、第2の凍結防止動作では、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を停止させる信号を送信する。このとき、詳しくは後述するが、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が停止した状態であれば、凍結防止ヒータ44に停止した状態をそのまま維持する。また、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が作動中であれば停止する。
【0122】
ところで、第2の凍結防止動作を実施するとき、熱回収用回路12を流れる湯水の流量がすでに凍結防止運転によって変更されていた場合でも、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を上記規定の流量Q2とする。即ち、この場合も同様に、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を規定の流量Q2に変更し、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を停止させる信号を送信する。
【0123】
また、流量増加可否判断で流量増加不可と判断された場合(ステップ105でNoの場合)、第3の凍結防止動作を実施する(ステップ109)。即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)に維持しつつ、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を作動させる信号を送信する。このとき、詳しくは後述するが、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が停止中であれば凍結防止ヒータ44を作動させる。また、熱回収装置3において凍結防止ヒータ44が作動中であれば作動した状態を維持する。
【0124】
ところで、第3の凍結防止動作を実施するとき、熱回収用回路12を流れる湯水の流量がすでに凍結防止運転によって変更されていた場合であっても、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)に戻し、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を作動させる信号を送信する。
【0125】
そして、発電ユニット2且つ熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc(例えば摂氏7℃)以上であることが検知されるまで(ステップ107でNoである間)、ステップ102以降の処理を実施する。
【0126】
対して、発電側往き流路温度センサ49によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つ発電側戻り流路温度センサ48によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つ排熱貯湯ユニット制御部から送信された凍結防止動作の停止を指示する信号が検知された場合(ステップ107でYesの場合)に、ステップ108へ移行して凍結防止運転を停止する。
【0127】
ここで、凍結防止運転の停止条件となる所定温度Tc(例えば摂氏7℃)と凍結防止運転の開始条件となる所定温度Tb(例えば摂氏3℃)の間には差が設けられている。より詳細には、凍結防止運転の停止条件となる所定温度Tcは、凍結防止運転の開始条件となる所定温度Tbを上回っている。
【0128】
そして、詳しくは後述するが、熱回収装置3側では、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることを検知したとき、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結防止運転の停止を指示する信号を発信する。即ち、発電ユニット2且つ熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が高温(所定温度Tc以上)であることが検知された場合に、凍結防止運転が停止される。
【0129】
具体的には、排熱貯湯ユニット制御部に対して凍結予防ヒータ44を停止させる信号を送信すると共に、熱回収用回路12を流れる湯水の流量を通常時の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)に戻す(ステップ108)。そして、発電ユニット2又は熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が低温(所定温度Tb以下)であることが検知されるまで(ステップ101でYesとなるまで)待機する。
【0130】
以上で、発電ユニット2側での凍結防止運転時の動作について説明を終了する。
【0131】
続いて、排熱貯湯ユニット制御部によって制御される熱回収装置3側での凍結防止運転時の動作について説明する。
【0132】
熱回収装置3では、熱回収側往き流路温度センサ43によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb(例えば摂氏3℃)以下であることが検知された場合、又は熱回収側戻り流路温度センサ46によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知された場合、又はラジエター用温度センサ47によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知された場合(ステップ201でYesの場合)、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結対応指示の信号を発信する。即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が低温(所定温度Tb以下)であることを検知したとき、排熱貯湯ユニット制御部が発電ユニット2側の発電ユニット制御部に凍結対応指示の信号を発信する。
【0133】
また、熱回収装置3では、凍結防止運転が実施されている間、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を作動させる信号を受信すると(ステップ203でYesの場合)、凍結防止ヒータ44を作動させる(ステップ204)。具体的には、凍結防止ヒータ44に通電し、凍結防止ヒータ44によって熱回収往き流路37を形成する配管等を加熱する。そして、熱回収往き流路37を流れる湯水を昇温する。
【0134】
対して、凍結防止運転が実施されている間、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を停止させる信号を受信すると(ステップ203でNoの場合)、凍結防止ヒータ44を停止させる(ステップ207)。
【0135】
なお、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を作動させる信号を受信したとき、凍結防止ヒータ44が停止中であれば作動させ、凍結防止ヒータ44が作動中であれば作動した状態を維持させる。同様に、発電ユニット制御部が送信した凍結防止ヒータ44を停止させる信号を受信したとき、凍結防止ヒータ44が作動中であれば停止させ、凍結防止ヒータ44が停止中であれば停止した状態を維持させる。
【0136】
そして、熱回収装置3では、熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc(例えば摂氏7℃)以上であることが検知されるまで(ステップ205でNoである間)、ステップ202以降の処理を実施する。
【0137】
対して、熱回収側往き流路温度センサ43によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つ熱回収側戻り流路温度センサ46によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合、且つラジエター用温度センサ47によって熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tc以上であることが検知された場合(ステップ205でYesの場合)、凍結防止ヒータ44を停止し、発電ユニット制御部に凍結防止動作の停止を指示する信号を送信する。そして、熱回収装置3で熱回収用回路12を流れる湯水の温度が所定温度Tb以下であることが検知されるまで(ステップ201でYesとなるまで)待機する。
【0138】
以上で、熱回収装置3側での凍結防止運転時の動作について説明を終了する。
【0139】
上記したように、本実施形態において熱回収用回路12を流れる湯水の流量は、通常時の流量(凍結防止運転開始前の流量でもあり、例えば、200cc/min)と第3の凍結防止動作時の流量が同一(略同一)となっている。そして、第2の凍結防止動作時の流量Q2が第3の凍結防止動作時の流量以上となっている。またさらに、第1の凍結防止動作時の流量(1L/min)が第2の凍結防止動作時の流量Q2より多くなっている。
即ち、熱回収用回路12を流れる湯水の流量は、通常時又は第3の凍結防止動作時、第2の凍結防止動作時、第1の凍結防止動作時の順に多くなっている。
したがって、第1の凍結防止動作において、熱回収用回路12を流れる湯水の流量の目標とされる所定の流量Q1が、第2の凍結防止動作において、熱回収用回路12を流れる湯水の流量の目標とされる所定の流量Q2より大きくなっている。そしてさらに、当該所定の流量Q2が通常時の流量より大きくなっている。
【0140】
また上記したように、本実施形態では、発電ユニット制御部と排熱貯湯ユニット制御部との間で各種信号を送受信することにより、凍結防止運転を実施する。具体的には、発電ユニット2又は熱回収装置3のいずれかで、熱回収用回路12を流れる湯水の温度低下が確認された場合に凍結防止運転を開始する。そして、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作のいずれかを実施すると共に、これらの動作で必要に応じて凍結防止ヒータ44を作動、停止する。そして、熱回収用回路12を流れる湯水の温度上昇が確認された場合に凍結防止運転を停止する。
【0141】
上記した実施形態では、蓄熱運転モード時において熱回収用回路12を流れる湯水の流量を100cc/min弱から300cc/minとし、蓄熱運転モード時の動作及び凍結防止運転を湯水の流量に基づいて制御する例、即ち、流量を優先させて温度を成り行きで制御する例を示したが、本発明のコージェネレーションシステムはこれに限るものではない。
例えば、湯水の温度に基づいて蓄熱運転モード時の動作又は凍結防止運転の制御を実施してもよい。即ち、温度を優先させて流量を成り行きとする制御を実施してもよい。具体的には、蓄熱運転モードを実施するとき、所定の目標温度を設定し、設定した目標温度となるように発電側循環ポンプ11のモータの回転を制御することによって、湯水の流量を可変させてもよい。また、凍結防止運転を実施するとき、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作でそれぞれ異なる目標温度を設定し、その目標温度となるように発電側循環ポンプ11のモータの回転を制御してもよい。
【0142】
さらにまた、湯水の流速に基づいて蓄熱運転モード時の動作又は凍結防止運転の制御を実施してもよい。例えば、熱回収用回路12を構成する配管の径と、熱回収用回路12を流れる湯水の流量から、熱回収用回路12を流れる湯水が所定の流速になるように凍結防止運転を実施してもよい。このとき、第1の凍結防止動作、第2の凍結防止動作、第3の凍結防止動作の順に流速が速くなるように動作させてもよい。
【0143】
上記した実施形態では、凍結防止ヒータとして、セラミックヒータを採用した例を示したが、本発明のコージェネレーションシステムで採用する凍結防止ヒータはこれに限るものではない。例えば、凍結防止ヒータは帯状の抵抗器等の加熱素子であってもよく、このような凍結防止ヒータを配管(熱回収往き流路37を形成する配管)に巻き付けて取付ける構成であってもよい。また、可撓性を備えた板体と、電熱線等の発熱体によって形成されるヒータであってもよい。つまり、熱回収往き流路37を流れる湯水を加熱できればよい。
【符号の説明】
【0144】
1 コージェネレーションシステム
2 発電ユニット(発電部)
3 熱回収装置(排熱貯湯ユニット)
12 熱回収用回路
15 貯留タンク
44 凍結防止ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を内蔵していて電気エネルギーと熱エネルギーとを同時に発生させる発電部を有し、前記発電部で発生させた熱によって湯水を加熱するコージェネレーションシステムにおいて、
湯水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンク及び発電部を含んで環状に結ぶ熱回収回路とを有し、
発電部の熱によって加熱された湯水の貯留タンクへの供給と、発電部と貯留タンクの間での湯水の循環とが熱回収回路を介して実施されるものであって、
所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施するものであり、前記流量増加可否判断の判断結果に基づいて熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施することを特徴とするコージェネレーションシステム。
【請求項2】
前記流量増加可否判断は、熱回収回路で流量を増加させた場合の熱回収回路を流れる湯水の温度と、所定温度とを比較するものであることを特徴とする請求項1に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項3】
前記流量増加可否判断において流量増加可能と判断された場合、熱回収回路を流れる湯水の目標温度を前記所定温度とすることを特徴とする請求項2に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項4】
前記熱回収回路は凍結防止ヒータを備えており、
凍結防止運転の実施中に凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項5】
発電ユニットと、少なくとも前記貯留タンクを備えた排熱貯湯ユニットとを備え、
前記発電ユニットを制御する発電ユニット制御部と、前記排熱貯湯ユニットを制御する排熱貯湯ユニット制御部とを有し、
発電ユニット制御部は、前記流量増加可否判断を実施すると共に、流量増加可否判断の判断結果に基づく情報を排熱貯湯ユニット制御部に送信するものであり、排熱貯湯ユニット制御部は、発電ユニット制御部から送信された情報に基づいて前記凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項4に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項6】
前記貯留タンクの下部から排出させた湯水を発電部で発生させた熱によって加熱し、加熱された湯水を上部側から貯留タンクに戻すことによって、貯留タンクに温度成層を形成させるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項7】
前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の目標温度となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項8】
前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の流速となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項1】
燃料電池を内蔵していて電気エネルギーと熱エネルギーとを同時に発生させる発電部を有し、前記発電部で発生させた熱によって湯水を加熱するコージェネレーションシステムにおいて、
湯水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンク及び発電部を含んで環状に結ぶ熱回収回路とを有し、
発電部の熱によって加熱された湯水の貯留タンクへの供給と、発電部と貯留タンクの間での湯水の循環とが熱回収回路を介して実施されるものであって、
所定の位置の温度低下を条件として、前記熱回収回路の湯水の流量を増加可能であるか否かを判断する流量増加可否判断を実施するものであり、前記流量増加可否判断の判断結果に基づいて熱回収回路の湯水の流量を増加させる凍結防止運転を実施することを特徴とするコージェネレーションシステム。
【請求項2】
前記流量増加可否判断は、熱回収回路で流量を増加させた場合の熱回収回路を流れる湯水の温度と、所定温度とを比較するものであることを特徴とする請求項1に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項3】
前記流量増加可否判断において流量増加可能と判断された場合、熱回収回路を流れる湯水の目標温度を前記所定温度とすることを特徴とする請求項2に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項4】
前記熱回収回路は凍結防止ヒータを備えており、
凍結防止運転の実施中に凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項5】
発電ユニットと、少なくとも前記貯留タンクを備えた排熱貯湯ユニットとを備え、
前記発電ユニットを制御する発電ユニット制御部と、前記排熱貯湯ユニットを制御する排熱貯湯ユニット制御部とを有し、
発電ユニット制御部は、前記流量増加可否判断を実施すると共に、流量増加可否判断の判断結果に基づく情報を排熱貯湯ユニット制御部に送信するものであり、排熱貯湯ユニット制御部は、発電ユニット制御部から送信された情報に基づいて前記凍結防止ヒータを作動させることを特徴とする請求項4に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項6】
前記貯留タンクの下部から排出させた湯水を発電部で発生させた熱によって加熱し、加熱された湯水を上部側から貯留タンクに戻すことによって、貯留タンクに温度成層を形成させるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項7】
前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の目標温度となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【請求項8】
前記凍結防止運転において、熱回収回路の湯水の流量を増加させるとき、所定の流速となるように循環ポンプのモータの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコージェネレーションシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−29288(P2013−29288A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167201(P2011−167201)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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