説明

コーティング剤

【課題】 塩化ビニル樹脂に代表されるハロゲン化物質を全く必要とせず、従来の金属製ファスナー用コーティング剤と同等以上の性能を有し、更に従来品では不十分であった耐ブロッキング性が改善され、結果として生産性向上及び環境に与える負荷の低減の一助となる金属製ファスナー用コーティング剤の提供。
【解決手段】 金属製ファスナー素材の複数が整列された金属製ファスナーにおいて、隣接する金属製ファスナー素材同士を接合させ得るコーティング剤であって、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム100重量部及び軟化点が120℃以上の樹脂10〜100重量部を有機溶剤に溶解して含むことを特徴とするコーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム、特定の軟化点を有する樹脂及び有機溶剤を含む金属製ファスナー(特にステープル)用のコーティング剤に関するものであり、特にハロゲン及びその化合物を必須成分としないので、このコーティング剤で各金属製ファスナー素材を連結することにより環境負荷の少ない金属製ファスナー接合体を提供できる。
【背景技術】
【0002】
金属製ステープルは、複数枚の紙同士や複数個の構造材同士を互いに結合する針として作用するものであり、一般家庭や事務所等で使用される文具用ステープル、住宅や家具等に使用される工業用ステープル、各種のダンボール箱等に使用される封緘用ステープルに大別される。一定本数の金属素材が結合されたステープルを一本ずつ打ち出し、目的物を結束せしめるのに使用する器具をステープラーと呼ぶ。また、金属製の釘であるピンネイルやフィニッシュネイルは天井仕上げ材としての吸音ボードなどの内装化粧板を天井などに留める釘として使用される。このピンネイルやフィニッシュネイルを使用する器具はタッカと呼ばれ駆動源が手動式、電気式、エア式のものが存在している。本願では前記ピンネイルやフィニッシュネイルと、上記のステープルとを総称しファスナーというが、以下は便宜上ステープルの従来技術について説明するが、この説明はピンネイルやフィニッシュネイルの従来技術にもあてはまる。
金属製ステープル用のコーティング剤にはステープルをステープラーに収納するまではある一定本数の結合状態を保つ保持力が求められ、加えて取り扱い時に各ステープルが容易に脱離しない柔軟性も必要となる。一方で、ステープラーによる綴じ動作時には、打ち出される一本のステープルのみがステープル結合体より容易に切断されることが求められる。更にはステープルの生産時及び市場流通時に、コーティング剤を塗布したステープル結合体の面同士が接触し貼り付いてしまうことのない様に、耐ブロッキング性にも優れている必要がある。
【0003】
上記の相反する要求を満足させるために、現在コーティング剤として溶剤形ゴム系接着剤が主として使用されている。金属製ステープルに使用されている代表的な溶剤形ゴム系接着剤としては、溶媒である有機溶剤の他に、ニトリルゴム及び塩ビ又は塩ビ・酢ビ共重合樹脂を配合したものが一般的である。しかし、従来の溶剤形ゴム系接着剤は、上記要求性能を完全に満たすものはなく、特にステープルの性能を重視した場合には、耐ブロッキング性を向上させるために、通常のコーティング剤の上に更に皮膜の固いラッカー系コーティング剤を塗布したり、塗布量を厳しく管理する必要があるため、生産性が劣るという問題があった。
【0004】
従来の溶剤形ゴム系接着剤の別の大きな問題は、成分の一つである塩ビ(塩化ビニル樹脂)が、低温(850℃以下)で燃焼された場合、人体もしくは環境に有害なダイオキシンを発生する可能性が報告されていることである。一般的に使用されている塩化ビニル樹脂と酢酸ビニル樹脂との共重合物である塩ビ・酢ビ共重合樹脂であっても同様の懸念は拭いきれない。
【0005】
このような状況から、性能を犠牲にすることなく、塩化ビニル樹脂等のハロゲン含有化合物を必要としない金属製ステープル用コーティング剤の供給が求められ始めている。この要求性能に対し塩化ビニル樹脂を含まないコーティング剤として、例えばウレタン系ホットメルト接着剤(特許文献1)やアクリル樹脂系接着剤(特許文献2)などが知られているが、ステープルに要求される金属素材を結束しなおかつ取り扱い時容易に割れることのない柔軟性と、結束された金属素材をステープラーにより一本ずつ容易に切断せしめる適度なせん断力を兼ね備えたコーティング剤は未だ得られていない。
【特許文献1】特開平10−29384号公報
【特許文献2】特開2003−90313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、塩化ビニル樹脂に代表されるハロゲン化物質を全く必要とせず、従来の金属製ファスナー用コーティング剤と同等以上の性能を有し、更に従来品では不十分であった耐ブロッキング性が改善され、結果として生産性向上の一助となる金属製ファスナー用コーティング剤を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
(1)金属製ファスナー素材の複数が整列された金属製ファスナーにおいて、隣接する金属製ファスナー素材同士を接合させるためのコーティング剤であって、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム100重量部及び軟化点が120℃以上の樹脂10〜100重量部を有機溶剤に溶解して含むことを特徴とするコーティング剤;
(2)軟化点が120℃以上の樹脂が芳香族系炭化水素と脂肪族系炭化水素との共重合樹脂であることを特徴とする(1)記載のコーティング剤;
(3)ステープルせん断試験における数値が10〜40Nとなることを特徴とする(1)又は(2)記載のコーティング剤;
(4)ブロッキング試験における数値が50N以下となることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載のコーティング剤;
(5)ハロゲンもしくはハロゲン化合物を含まないことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載のコーティング剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーティング剤は、塩化ビニル樹脂に代表されるハロゲン化物質を全く必要とせず、従来のファスナー用コーティング剤と同等以上の性能を有している。更に、本発明のコーティング剤は、従来品では不十分であった耐ブロッキング性が改善される。したがって、本発明によれば、ファスナーの生産性を向上でき、環境に与える負荷を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、金属製ファスナー素材の複数が整列された金属製ファスナーにおいて、隣接する金属製ファスナー素材同士を接合させ得るコーティング剤である。金属製ファスナーには、文具用ファスナー、工業用ファスナーや封緘用ファスナーが含まれるが、好ましくは文具用ファスナーである。なお、本発明はファスナーの中でもステープル接合体に特に好適に用いることができる。本発明のコーティング剤は、個々の金属製のファスナー素材を接合するとともに、ファスナー結合体の全体又は一部をコーティングするものである。
【0010】
本発明のコーティング剤は、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム、軟化点が120℃以上の樹脂及び有機溶剤を含む。
【0011】
本発明における酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴムは、スチレン誘導体とブタジエンの共重合体に無水マレイン酸等を付加したものおよびスチレンとブタジエンの共重合体の水素添加物に無水マレイン酸等を付加したものである。スチレンとブタジエンの共重合体の水素添加物の無水マレイン酸付加品は、タフテックM1911、M1913、M1943という商品名で旭化成株式会社から市販されており入手可能である。
【0012】
酸基を含有することにより金属素材同士の密着性が向上する。本発明では酸基による酸価は特に限定されないが、酸価が低いと金属素材への高い密着効果が得られず、また酸価が高いとコーティング剤にしたときの粘度安定性が悪くなってしまうので、好ましくは5〜15、特に10程度が好ましい。
【0013】
また、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴムにおけるスチレンの割合においても本発明では特に限定されないが、スチレンの量が多いと皮膜は硬くなり、またスチレン量が少ないと接着強さが低下するので、重量比で20〜40%、特に30%程度がバランスが取れて好ましい。
【0014】
本発明における軟化点が120℃以上の樹脂は、軟化点が120℃以上の樹脂であれば特に限定されないが、例えば、芳香族系炭化水素と脂肪族系炭化水素との共重合体、脂環族系飽和炭化水素樹脂、重合ロジンエステル、テルペン系水添樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ロジンフェノール樹脂やテルペンフェノール樹脂等があり、好ましくは、芳香族系炭化水素と脂肪族系炭化水素との共重合体、脂環族系飽和炭化水素樹脂、重合ロジンエステル、テルペン系水添樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ロジンフェノール樹脂であり、さらに好ましくは芳香族系炭化水素と脂肪族系炭化水素との共重合体である。
【0015】
芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との共重合体は、例えば、三井化学株式会社からFTR6125なる商品名で、東邦化学株式会社からトーホーハイレジン♯130、♯150なる商品名で市販されている。
【0016】
脂環族系飽和炭化水素樹脂は、例えば、荒川化学株式会社からアルコンP140、M−135なる商品名で市販されている。
【0017】
重合ロジンエステルは、例えば、荒川化学株式会社からペンセルD−125、D−135、D−160、KKなる商品名で市販されている。
【0018】
テルペン系水添樹脂は、例えば、ヤスハラケミカル株式会社からクリアロンP−125、P−135、P−150なる商品名で市販されている。
【0019】
芳香族炭化水素樹脂は、例えば、東ソー株式会社からペトコール130、140、150なる商品名で市販されている。
【0020】
ロジンフェノール樹脂は、例えば、ハリマ化成株式会社からネオトール125、145PKなる商品名で市販されている。
【0021】
軟化点が120℃以上の樹脂としては、芳香族系炭化水素と脂肪族系炭化水素との共重合樹脂が特に好ましい。ベースとなる酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴムとの相溶性が良いからである。スチレン部分とブタジエン部分およびブタジエン部分が水素添加された部分において、極性の高いスチレン部分に対しては芳香族系炭化水素樹脂の相溶性が良好であり、極性の低いブタジエン部分およびブタジエンの水素添加部分に対しては脂肪族系炭化水素樹脂の相溶性が良好であることに起因し、脂肪族と芳香族を共重合した樹脂においては前述の極性の高い部分と低い部分の両方に対しての優れた相溶性を有すると想定される。
【0022】
本発明のコーティング剤は、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム100重量部に対して、軟化点が120℃以上の樹脂を10〜100重量部、より好ましくは10〜70重量部含む。
【0023】
本発明における有機溶剤は、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム及び軟化点が120℃以上の樹脂を溶解し得る有機溶剤又は有機溶剤の混合物であれば特に限定されないが、非ハロゲン溶剤が好ましい。本発明における有機溶剤は、好ましくは、2種以上の有機溶剤の混合物である。2種以上の有機溶媒を混合することによって、溶解性、粘度及び乾燥速度などをコントロールすることが容易となる。
【0024】
溶剤の設計に関してはDu Pont社が水素結合指数と溶解度パラメーターの相関図表を用いてクロロプレンゴムを溶解する方法を紹介している。この方法をスチレンブタジエン系ゴムに適用することにより、所望の水素結合指数と溶解度パラメーターの値を有する混合溶剤を得ることができる。溶解度パラメーターからポリマーの溶剤を設計する方法は古くから知られていたが、同じ溶解度パラメーターの溶剤であっても化学的種類や溶解力が非常に異なることがあり、溶解度パラメーターのみでは不充分であった。Du Pont社では各種溶剤を水素結合力の大きさによって極性の強い溶剤、中位の溶剤、弱い溶剤に分類し、水素結合力の低い低極性溶剤を1として高い溶剤を10として割りつけて、これを水素結合指数として表した。この水素結合指数と溶解度パラメーターの値を使用して所望の値の溶剤を作図や計算で求めることができ、「接着百科」にも記載されている。例えば、溶剤A,B,Cの3成分系における水素化結合指数及び溶解度パラメーターの計算方法は下記表1のようである。なお、有機溶媒の代表例の水素化結合指数及び溶解度パラメーターを表2に示す。
【0025】
また、溶解度パラメーターと水素結合指数は、ポリマーの溶解性を判断するのみならず、溶解して得られたコーティング剤の粘度にも影響を及ぼす。酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴムの溶剤型接着剤(コーティング剤)は一般的には低温になると極めて粘度が高くなる。しかし、水素結合指数と溶解度パラメーターを適宜選択することによってこのような問題を改善することもできる。水素結合指数は、例えば、2.3〜3.8、特に2.3〜3.5が挙げられ、溶解度パラメーターは、例えば、7.9〜8.9、特に8.3〜8.7が挙げられる。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
本発明のコーティング剤は、これを塗布して接着したステープルのせん断試験における測定値が10〜40Nとなることが好ましい。10N以下では、接着したステープルが包装時や流通過程でばらけてしまい、一方、40N以上では、金属素材同士の接着が強すぎて、1本ずつを容易に切り離すことができない。ステープルせん断試験は、JIS S 6036(ステープラ用つづり貼り)に記載の10号のステープラ用1連つづり針を作り、実際に使用されるときと同様にそのつづり針の1本を真上から力を加えて1本を切り離す力を測定する(図1)。
【0029】
本発明のコーティング剤は、ブロッキング試験における数値が50N以下、特に15N以下となることがこと望ましい。ステープル製造においては、製造工程(後述する)中で接着物をボビンにて巻きとって、次工程でコの字形状に成型する時に巻取り物をほぐすが、数値が50N以上のコーティング剤ではほぐす際にベルト状接着物の破損を招いて工程不良を引起してしまう。また流通段階においてコの字形状に成型されたステープルが包装用の箱やステープル同士がくっついてしまうからである。このような問題は、ピンネイルやフィニッシュネイルの場合にも起こり得る。ブロッキング試験は幅25mmで長さ100mm、厚み1.6mmの2枚の鉄板のそれぞれにバーコーター#70でコーティング剤を塗布し、23±2℃の条件で24時間静置する。コーティング剤の塗布面同士を50mmの長さで重ね合わせてクリップでとめ、50±2℃の条件で3時間保持した後に、23±2℃の条件で1時間冷却し、図2の方法で200mm/min.の速度で接着強さを測定できる。
【0030】
本発明のコーティング剤は、ハロゲンもしくはハロゲン化合物を必須の成分としないので、これらを含まない組成物とすることができ、このようなコーティング剤は環境上特に好ましい。
【0031】
金属ステープルの製造は、多数の線材を集線し、本発明のコーティング剤で接着した後に連続してコの字成型機(製針加工機)に投入する方法や、接着物を一度巻取り、巻取り物を数種類の成型機で成型する方法があるが、後者の方法が多品種のステープルを生産する上で効率的な方法である。この方法の製造工程は図3のa及びbの2工程からなる。この工程aでは、材料ドラムに巻かれたステープル素材を連結されるステープル本数に応じて集線案内して本発明のコーティング剤塗布装置に案内する。案内されたステープル素材は水平状態で重ならない状態で塗布装置を通過し、各隣接するステープル素材間とその上下面に接着剤を塗布される。接着剤が塗布されたステープル素材は次の乾燥装置に送られて、乾燥硬化される。乾燥硬化されたステープル素材は適切な巻き長さでボビンに巻き取られるように切断される。このようにして所定幅に接着されたステープル素材のボビンが得られる。工程bでは、ボビンからステープル素材を引き出し、これを成型機(製針加工機)でコの字に成型し、切断する。
また、上ではステープルを例に説明したが、ピンネイルやフィニッシュネイルの接合体は、成型機(製針加工機)にてコ字状に成形される前のような平板状のステープル接合体と同様に接合された後、ピンネイル又はフィニッシュネイル接合体の一側端に打ち込み先端部を、他側端に打撃頭部がプレス機能を持つ製釘用の加工機により形成されることで得られるものである。
【実施例】
【0032】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
ステンレス製の容器にシクロヘキサン108重量部、ノルマルヘキサン36重量部、メチルエチルケトン95重量部、アセトン35重量部の有機溶剤混合物にタフテックM1913(旭化成ケミカルズ(株)製のスチレン・ブタジエン共重合体の水素添加物の無水マレイン酸付加品:酸価10;スチレン含量30重量%)の100重量部とFTR6125(三井化学(株)製の芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との共重合体;軟化点125℃)の10重量部を攪拌しながら加えて3時間攪拌して溶解してコーティング剤を製造した。
【0033】
(実施例2〜9及び比較例3〜10)
実施例1と同様にタフテックM1913に表3と表4に記載された樹脂を同表に記載した有機溶剤混合物に実施例1と同様に溶解して、コーティング剤を製造した。なお、アルコンM100、アルコンP140は、脂肪族飽和炭化水素樹脂であり、トーホーハイレジン♯90、トーホーハイレジン130、トーホーハイレジン150は、脂肪族系炭化水素と芳香族系炭化水素の共重合樹脂であり、ペンセルKKは、重合ロジンエステルであり、クリアロンM115は、テルペン系水添樹脂であり、ペトコールLXは、芳香族系炭化水素樹脂であり、ネオトール145PKは、ロジンフェノール樹脂である。
【0034】
(比較例1)
タフテックM1913の代わりにアサプレンT−411(旭化成ケミカルズ(株)製の酸基を含有しないスチレンが30重量%であるスチレン・ブタジエン共重合体のブロックゴム)を使用した以外は実施例2と同様にしてコーティング剤を製造した。
【0035】
(比較例2)
タフテックM1913の代わりにタフプレンA(旭化成ケミカルズ(株)製の酸基を含有しないスチレンが40重量%であるスチレン・ブタジエン共重合体のブロックゴム)を使用した以外は実施例2と同様にしてコーティング剤を製造した。
【0036】
(比較例11)
タフテックM1913の代わりにニポール1001(日本ゼオン(株)の酸基を含有しないアクリロニトリルブタジエンゴム)を使用し、表4の配合に従ってコーティング剤を製造した。
【0037】
(比較例12)
タフテックM1913の代わりにニポール1072(日本ゼオン(株)の酸基を含有するアクリロニトリルブタジエンゴム)を使用し、表4の配合に従ってコーティング剤を製造した。
【0038】
(性能試験)
表3と表4に記載された実施例1〜9及び比較例1〜12のコーティング剤の軟化点試験、はく離接着強さ試験、耐ブロッキング性試験、皮膜柔軟性試験を以下のように行なった。
【0039】
軟化点試験:JIS K 6833に準じて綿帆布にコーティング剤をガラス棒で塗布し、乾燥後に再度塗布して綿帆布の目止めの処理を行った後に、3回目のコーティング剤を塗布し、直ちに貼り合わせて12時間圧着を行った後に解圧して室温に6日静置する。接着面積が25mm×25mmになるように切断し、500gの重りを吊るして38℃で15分間おいた後に5分間で2℃の勾配で昇温していき落下する温度を測定した。評価は、○:90℃以上;△:85〜90℃;×:85℃以下とした。
【0040】
はく離接着強さ試験:軟化点試験と同様に綿帆布に予めコーティング剤を2回塗布して綿帆布の目止めの処理を行った後に、3回目のコーティング剤をガラス棒で塗布し、亜鉛メッキ鋼板にはバーコーター#70でコーティング剤を塗布して直ちに貼り合わせて12時間圧着した。解圧して室温に6日静置した後に23±2℃の雰囲気下で引張速度200mm/min.で180度はく離接着強さを測定した。評価は、◎:1.5kN/m以上、○:1.2〜1.5kN/m、×:1.2kN/m以下、とした。
【0041】
耐ブロッキング性試験:試験方法は前述した。評価は、◎:15 N以下、○:15〜50N、×:50N以上、に基づいた。
【0042】
ステープルせん断試験:試験方法は前述した。評価は、○:10〜40N、×:10未満又は40超、に基づいた。
【0043】
皮膜柔軟性試験:400μのアプリケーターで離型紙の上でコーティング剤を塗布し、23±2℃下で7日間養生してコーティング剤の皮膜を作り、幅25mmにカットし、これを180度に折り曲げて、折り目を折り紙を折る要領で折り目を押さえ、元の状態に開いて戻し、折り目に割れや破断が生じるかを観察した。評価は、○:割れや破断がない、×:割れや破断がある、とした。
【0044】
総合評価:評価は、○:全ての試験項目の中に×がない、×:試験項目の1項目以上に×がある、とした。
表3及び4に性能評価の結果を示した。なお、表中の溶剤混合物の水素結合指数と溶解度パラメーターは、表2に記載されたそれぞれの溶剤の水素結合指数と溶解度パラメーターの数値より算出した。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
(実施例10〜19及び比較例13〜15)
表5及び6に記載された溶剤組成にて、実施例2と同様にして、実施例10〜19及び比較例13〜15のコーティング剤を製造した。予め粘度が低いことが予想された配合においては若干不揮発分の調整を行った。
なお、表中の混合溶剤の水素結合指数と溶解度パラメーターは、表2に記載されたそれぞれの溶剤の水素結合指数と溶解度パラメーターの数値より算出した。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のコーティング剤により、塩化ビニル樹脂に代表されるハロゲン化物質を全く必要とせず、従来のステープル用コーティング剤と同等以上の性能を有し、更に、従来品では不十分であった耐ブロッキング性が改善された金属製ステープルを製造できるので、生産性を向上でき、環境に与える負荷を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】金属ステープルのせん断試験の試験装置の模式図である。
【図2】金属ステープルのブロッキング試験装置の模式図である。
【図3】金属ステープルの製造方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1:固定台
2:ステープラー
3:ストッパー
4:応力計
11:固定台
12:鋼板
13:コーティング剤
21:材料ドラム
22:集線案内
23:塗布装置
24:乾燥装置
25:巻き取りボビン
26:製針加工機
27:ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ファスナー素材の複数が整列された金属製ファスナーにおいて、隣接する金属製ファスナー素材同士を接合させるためのコーティング剤であって、酸基を含有するスチレンブタジエン系ゴム100重量部及び軟化点が120℃以上の樹脂10〜100重量部を有機溶剤に溶解して含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項2】
軟化点が120℃以上の樹脂が芳香族系炭化水素と脂肪族系炭化水素との共重合樹脂であることを特徴とする請求項1記載のコーティング剤。
【請求項3】
ステープルせん断試験における数値が10〜40Nとなることを特徴とする請求項1又は2記載のコーティング剤。
【請求項4】
ブロッキング試験における数値が50N以下となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコーティング剤。
【請求項5】
ハロゲンもしくはハロゲン化合物を含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のコーティング剤。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−286810(P2009−286810A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137439(P2008−137439)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】