説明

コーティング用組成物及びそれにより得られる塗膜

【課題】耐水性のケイ酸質塗膜を形成するコーティング用組成物を提供する。
【解決手段】アルカリケイ酸塩の結合剤が形成する膜を耐水性にするために、結合剤に放射性物質を組み合わせて用いることを特徴とし、さらに、無機充填材、無機体質顔料、無機着色顔料、添加剤及び水等を追加して組み合わせて用い、耐水性と同時に耐酸性と不燃性を兼備した塗膜を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用組成物に関し、さらに詳しくは、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属、コンクリート、セラミック、石材、セメント製品、木材、紙、布、等の基材の表面に、或いは、無機系の塗膜の表面に塗布し、自然乾燥又は低温で短時間の加熱乾燥をするだけで、耐水性、耐酸性及び不燃性を備えた塗膜を形成させることができ、コンクリート建造物の腐蝕防止、金属の腐蝕防止、火災時の延焼及び煙害防止等に寄与するコーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材表面に、耐水性、耐酸性及び不燃性を兼備した塗膜を形成するためのコーティング用組成物(以下、単に「組成物」と呼称する)が種々提案されており、アルカリケイ酸塩の結合剤を用いた組成物が各種開示されている。
【0003】
つまり、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウム等のアルカリケイ酸塩は、自然乾燥又は加熱(500〜800℃)により、乾燥膜又は硬化膜を形成することが知られており、耐酸性及び不燃性の塗膜を形成させるための結合剤として用いられているが、アルカリケイ酸塩が常温で乾燥して形成する膜は耐水性に欠けるという問題点があった。そこで、アルカリケイ酸塩を結合剤とする組成物が形成する膜を耐水性にするために、組成物に、酸性又は塩基性の物質を、硬化剤として、組み合わせて用いる方法が提案された。つまり、アルカリケイ酸塩は、強酸性溶液中ではアルカリ性を示し、純水中でのケイ酸の水和物は酸として作用する(「水ガラス」マイヤー著、奥田進訳:株式会社コロナ社発行昭和25年初版、60頁参照)ので、酸性及び塩基性の物質は硬化剤として有用であった。
【0004】
しかし、硬化剤を併用する方法では以下の様な問題点があった。即ち、硬化剤を配した組成物は、固化するために、長期保存性に欠けるから、コーティング作業時の都度毎に、組成物に硬化剤を混合して用いなければならないという操作上の煩雑があった。
【0005】
ここで、硬化剤を組み合わせた組成物は、短時間でゲル状になり、流動性を失う性質があること及び、組成物がゲル状になる速度は、硬化剤の種類、硬化剤の添加量温度条件の影響を受けること、等が知られている。そのため、硬化剤を配した組成物をコーティングする際には、組成物がゲル状になると塗布作業に支障をきたすので、ゲル状となる速度を遅延させるために、硬化剤の種類を選定又は硬化剤の添加量を増減する等の調整作業が必要となるという、取り扱い上の煩雑さがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、(1)硬化塗膜を形成させるために、コーティング作業の都度毎に、硬化剤の種類を選択し、硬化剤量を計量し、さらに、組成物に添加混合するという、従来必要としていたこれらの操作、作業を省略でき、(2)大気(水蒸気及び炭酸ガス)を遮断することで、長期間安定的に保存することができ、(3)大気に接触させるだけで硬化塗膜を形成し、常温又は低温加熱(40〜100℃)により、硬化させることができ、(4)耐水性で不燃性に優れた塗膜を形成し、(5)マイナスイオンを発生する機能を備えた塗膜を形成し、消臭、抗菌、有機物分解等に効果する、(6)組成物が急速にゲル化しないので、作業性がよい、などの特徴を有し、従来では、十分に対応できなかったコーティングの用途に使用できる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)一般式MO・nSiO(但し、Mはアルカリ金属のNa, K, 及びLiであり、nは自然数)で表されるアルカリケイ酸塩に、(b)放射性物質を組み合わせて成り、(a)のアルカリケイ酸塩が形成する膜を耐水性にさせることを特徴とするコーティング組成物である。また、本発明は、前記(a)のアルカリケイ酸塩をSiO換算で、1〜25重量部、(b)の放射性物質を0.1〜30重量部、にさらに加えて、(c)無機充填材を0〜70重量部、(d)水を3〜90重量部[但し、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%]を含むことを特徴とするコーティング用組成物である。すなわち、(a)のアルカリケイ酸塩の結合剤に、(b)放射性物質を混合して作用させ、耐水性の結合膜を形成させることを骨子とするものであり、(a)をSiO換算で、1〜25重量部、(b)放射性物質を0.1〜30重量部、(c)無機充填材を0〜70重量部、(d)水を3〜90重量部、[但し、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%]を含むコーティング用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーティング用組成物によれば、以下の様な効果が得られる。(1)アルカリケイ酸塩を結合剤とする耐水性の膜を形成し、可燃性の物質を含んでいないから、不燃性の塗膜を形成する。そのため、本組成物は、木材、紙及び布等の可燃性基材の表面に塗布して用い、基材に難燃性を付与する用途に使用できる。(2)コンクリート、スレート板、石材等の多孔質の基材に塗布して浸透させ、或いは亜鉛、鉄、ステンレス等の金属基材の表面に塗付するなどの方法で、硬質、不燃性で、かつ、透明又は着色の塗膜を形成させることができるので、基材を火炎、磨耗から保護し、或いは着色を施すに適している。(3)有機質結合剤の形成膜は、マイナスイオンの有機結合手切断作用により化学分解されるので、放射性物質と混合、併用すると劣化させられ、やがて、崩壊することが知られている。しかし、本発明の組成物は、アルカリケイ酸塩の形成膜は無機質であり、マイナスイオンにより崩壊しないので、コンクリート、石材、金属、木材、紙、布等の基材に塗布し、マイナスイオン発生機能を備えた塗膜を形成させるに最適である。つまり、不燃及び消臭に作用させるコーティングの用途に使用できる。(4)コーティングする際に、硬化剤を配する必要がないので、硬化剤の計量及び混合に関わる煩わしさを排除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のコーティング用組成物の構成要素について詳細に説明する。(a)アルカリケイ酸塩:本発明に用いる(a)アルカリケイ酸塩は、一般式MO・nSiO(但し、Mはアルカリ金属のNa, K, 及びLiであり、nは自然数) で表されるケイ酸塩化合物であって、具体的には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウム等であって、常温又は加熱により乾燥させると、薄膜を形成し、結合剤の働きをするものである。但し、(a)アルカリケイ酸塩は、通常、水溶液の形態で用いられる。そのため、(a)の単独成分を常温又は低温加熱により乾燥させて得られる膜は、脱水して得られる固化物の膜であり、耐水性に欠ける。そのために、(a)を結合剤とする組成物は、耐水性を要する用途のコーティングには適さない。
【0010】
本発明は、(a)アルカリケイ酸塩に(b)成分の放射性物質を組み合わせると、耐水性の膜が得られるという発見に基づくものであり、(a)成分に特定の硬化剤(後述)を組み合わせる操作を省略できる。つまり、(a)アルカリケイ酸塩を結合剤とする組成物に(b)を組み合わせて用いると、(b)は酸性又は塩基性の何れにも属さない物質であるが、組成物の形成塗膜を耐水性にさせるという現象が生じる。ここで、(b)放射性物質が(a)成分の形成膜を耐水性にさせる原因は特定できないが、次の様な作用が影響していると推測される。(b)放射性物質は、大気中で、水蒸気塊と炭酸ガスに、同時的に、接触すると、放射線化学反応を生じること及び、その反応の過程(放射線化学反応過程)で、(b)の接触面に、過酸化水素(HO)が生じ、マイナスイオン(H)が大気中に放出されること、等が知られているから、(a)アルカリケイ酸塩は、放射線化学反応過程で生じた過酸化水素、マイナスイオン或いは炭酸ガス(炭酸ガスの二重結合電子)等が単体又は複合して作用することにより、耐水性のケイ酸(前記、マイヤー著書、項「ケイ酸の重合」参照)を形成する。
【0011】
本発明の(a)成分の割合は、SiO換算で、0.1〜30重量部、好ましくは、0.5〜20重量部である。0.5重量部未満では、結合力が不足することがあり、20重量部を超えると、塗膜が耐水性になるまでに長時間を要することがある。
【0012】
(b)放射性物質:本発明に用いる(b)放射性物質は、放射線を発生する天然の鉱石或いはセラミックの形態のものであり、天然鉱石として、ウラン系列、アクチニウム系列、トリウム系列等に属する元素を内蔵する物質である。また、これらの物質を用いて調整したセラミックスも挙げることができる。
【0013】
(b)放射性物質は、組成物の結合剤である(a)アルカリケイ酸塩に放射線を作用させて、(a)成分の固化膜を耐水性にさせるために必要である。
【0014】
(b)放射性物質としては、繊維状又は粒子状のものが望ましく、限定的ではないが、平均粒子長さ又は平均粒子径が100μm以下、さらに好ましくは、5μm以下のものを用いる。平均粒子長さ又は平均粒子径が、0.1μm以下では、基材に浸透させる用途の組成物に好都合であり、10μmを超えると、塗膜が粗面になることがある。
【0015】
(b)放射性物質は、放射線の強さが370ベクレル/g以下であって、取り扱いに関わる法令の規制に該当しないものを用いることが安全上望ましい。具体的には、放射線当量が0.5〜10μSv(但し、放射性物質から5mm隔てた位置にガイガーカウンターを設置して測定した値)のものを用いることが好ましく、0.5μSv以下では、(a)成分が形成する膜を耐水性にさせるに長時間を要し、実用的でない。また、10μSv以上では、放射線の人体に対する有害性を考慮し、使用を避けたほうがよい。
【0016】
組成物中における(b)放射性物質の成分割合は、(b)の放射線当量の大きさにより異なるが、放射線当量が3〜8μSv(但し、前記測定方法による測定値)のものを基準として、0.2〜20重量部、さらに好ましくは、0.5〜10重量部である。一方、10重量部を超えても、組成物の塗膜を耐水性にさせる速度に大差を生じないので不経済となる。
【0017】
また、塗膜を速やかに耐水性にさせるためには、(b)成分の添加量を組成物中のSiO量に応じて、比例的に、増加させることが好ましい。
【0018】
(c)無機充填材:本発明に用いる(c)無機充填材は、非水溶性で粒子状もしくは繊維状のものが好ましく、平均粒子長さ又は平均粒子径が0.1〜100μm、さらに好ましくは0.5〜30μmのものを用いる。一方、0.5μm未満では、組成物を基材に浸透させて用いるときに有用であるが、逆に、30μmを超えると、塗膜が粗面になることがある。
【0019】
(c)無機充填材として、無機体質顔料、無機顔料、金属粉等を挙げることができ、必要に応じて、これらの群から選ばれた一種類又は2種類以上のものを用いる。
【0020】
具体的には、無機体質顔料として、シリカ、タルク、ムライト、炭化ケイ素、カオリン、及び各種のウイスカー等を挙げることができ、無機顔料として、チタン、クロム、鉄、マンガン、コバルト等の酸化物及び、これらとアルミニウムとの2種合成酸化物を挙げることができる。さらに、金属粉として、スズ、亜鉛、ステンレス、ニッケル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
(c)無機充填材の組成物中における成分の割合は、0〜70重量部が好ましく、さらに好ましくは、0〜40重量部である。40重量部を超えると、組成物の流動性が低下して、塗膜に凹凸が生じたり、作業性が低下することがある。
【0022】
また、(c)の無機充填材は、組成物が形成する塗膜の厚みを維持或いは、塗膜
に着色を施すために必要である。そのため、組成物を基材に浸透させて用いるとき、或いは、着色を要しないときには、(c)成分を省略できる。
【0023】
(d)水:本発明に用いる(d)水は、組成物の粘度調整、(b)放射性物質及び(c)無機充填材の分散に必要な成分であり、イオン水、蒸留水、水道水を使用できる。
【0024】
(d)水の組成物中における成分割合は、3〜90重量部が好ましく、さらに好ましくは、30〜70重量部である。30重量部以下では、組成物中の(a)アルカリケイ酸塩、(b)放射性物質或いは(c)無機充填材等の成分の比率が高められ、基材への浸透性又は施工性の低下、さらには、塗膜が速やかに耐水性にならない等の弊害が生じ、また、(d)が70重量部を超えると、結合力が低下して塗膜が脆くなることがある。なお、(d)は(a)成分に含まれる水も包含する。
【0025】
本発明は、(a)アルカリケイ酸塩に(b)放射性物質を作用させ、組成物の形成する塗膜を耐水性とするものである。そのため、本発明の組成物は、大気中に曝されて水蒸気塊と炭酸ガスに接触しないと不溶性固化物にならないから、長期保存性に優れており、組成物を密封するだけでよく、また、組成物の使用に際しては、硬化剤の選択、硬化剤の計量及び硬化剤の混合、等に関わる操作、作業が省略できる等の特徴を有している。
つまり、従来では、(a)アルカリケイ酸塩の形成膜を耐水性にするために、酸性又は塩基性の物質を、(a)成分と組み合わせ、硬化剤として用いており、具体的には、塩酸、アルミン酸、燐酸等の酸性物質又は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化鉄、重晶石、アルミニウム塩等の塩基性物質を(a)成分に混合して用いた。しかし、これらの硬化剤を(a)成分を結合剤とする組成物と組み合わせ、混合すると、組成物は、ゲル化してしまう。そのため、組成物の流動性が消失するので作業性が低下すること、硬化剤を配した状態の組成物を長期保存できないこと、等の不都合があったが、本発明は、上記問題点を解決させるものである。
【0026】
本発明の組成物が形成する塗膜は、耐水性、耐酸性及び不燃性であり、さらに、マイナスイオン発生機能を備えているので、様々な用途に用いることができる。例えば、金属及びコンクリートの耐蝕・耐候性化粧膜、不燃性化粧膜、熱劣化防止膜或いは、木材及び紙等の難燃化膜、等に用いることができ、さらに、これらの膜から発生するマイナスイオンを消臭及び油脂分解等の分野に活用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、特許請求の範囲を超えない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の単位(部)及び記号(%)は、特に断らない限り、重量を基準とする。
【0028】
なお、表中の成分記号は以下のものを表す。
(a)アルカリケイ酸塩
N :Jケイ酸ソーダ3号(SiO濃度=約30%)日本化学工業株式会社製
K :1Kケイ酸カリウム(SiO濃度=約30%)日本化学工業株式会社製
L :ケイ酸リチウム45(SiO濃度=約20%)日本化学工業株式会社製
(b)放射性物質
M :モナサイト(monazite)鉱石(セラやまいち製、天然の放射性物質、平均粒子 1μm、放射線当量=5〜7μSv/測定距離5mm)
S :セラミック(組成:モナサイト38%、アナターゼ型酸化チタン28%、陶土34%。平均粒子径1μm、放射線当量=2〜4μSv/測定距離5mm)
(c)無機充填材
C :酸化クロム(平均粒子径=0.5μm、緑色着色剤)
T :タルク(平均粒子径=1μm)
Z :亜鉛粉(平均粒子径=2μm)
(d)水
W :イオン水
【0029】
実験1:表1−1、1−2及び1−3に示す30種類の組成物を調整した。なお、調整には攪拌機を用い、表示の配合成分を入れ、毎分200回転にて20分間攪拌した後に取出し、さらに、100メッシュの篩目を濾過させた。
【0030】
【表1−1】

【0031】
【表1−2】

【0032】
【表1−3】

【0033】
次に、上記表1―1〜1−3に示した30種類の組成物を、あらかじめ重量を測定してある鉄板(寸法70×150×1.2mm)3枚づつにスプレイで塗布し、室内(室温25℃、相対湿度58%)に5日間放置して乾燥させて塗膜を形成させてから、再度重量を測定し、鉄板に付着した組成物の量(g)を算出した。次に、各鉄板を蒸留水に浸漬し、24時間経過後に、鉄板を水中から取出し、乾燥器に入れて乾燥させてから、各々の重量を測定し、鉄板に付着した組成物の減量を算出し、3枚の鉄板に塗布した組成物の平均減量(%)を算出した。その結果を表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
実験1により、放射性物質はアルカリケイ酸塩の形成膜を不溶性にさせる効果があることが判明した。
【0036】
実験2:実験1と同一の組成物を乾燥したスレート板(寸法:300×300×5mm)に塗布し、3日間室内に放置し、乾燥させてから、マイナスイオン測定器(ITC−201A/アルプス電気株式会社製)を設置し、塗膜から生じるマイナスイオン量を測定した。その結果を表5に示す。
但し、表示のマイナスイオン量の数値(個/cc)は、室内に存在する自然発生のマイナスイオン量をあらかじめ測定しておき、塗膜から生じたマイナスイオン量の測定値を補正したものである。
【0037】
【表5】

【0038】
実験3:本発明の組成物の形成する塗膜から発生するマイナスイオンの消臭作用の効果を調べるために、2個のテドラーバッグに所定濃度に調整したアンモニアガス3Lを注入し、そのうちの1個のテドラーバッグには、あらかじめ、実験1で調整した組成物35gを両面に塗布した画用紙(寸法:300×300×5 mm)を入れ、他の1個のテドラーバッグには何も入れない状態(ブランク)とした。それぞれのテドラーバッグのアンモニア濃度を経過時間毎に検知管で測定して比較した。組成物の種類及び測定結果を表6に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
実験3により、本発明の組成物の形成する塗膜は消臭作用を備えていることが判明した。
【0041】
実験4:本発明の組成物の形成する塗膜から発生するマイナスイオンが有機物を分解する作用の効果を調べるために、実験2で調整した組成物の塗膜に赤インク(有機染料)を滴下し、赤インクが分解され、消色される様子を肉眼で観察し、インクの色が消失するまでに要した日数を調べて表7に示した。なお、赤インクはパイロット社製のカートリッジスペアインク(品番IRF-12S-R)を蒸留水で15倍に希釈して用い、組成物の塗膜上にスポイドで0.2CCを滴下した。
【0042】
【表7】

【0043】
実験4により、本発明の組成物の形成する塗膜はマイナスイオンを発生し、有機染料の発色機能を消失せしめるという効果があり、有機物を分解する作用があることが判明した。
【0044】
実験5:本発明の組成物の形成塗膜から発生するマイナスイオンの抗菌作用の効果を調べるために、あらかじめ本発明の組成物(N−5、K−5、L−5)をコーティングしておいたステンレス板(寸法:70×70×1.8mm)の個々に、それぞれ、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を滴下し、1時間放置した後に綿棒で液菌を回収し、滴下時及び回収時の菌数を顕微鏡法で比べ、減菌率を算出するという方法で評価をした。
減菌率の算出方法
減菌率(%)=[(回収した菌液中の細菌数)÷(滴下時の菌液中の細菌数)]×100
実験の結果を表8に示す。但し、ブランクは組成物をコーティングしてないステンレス板を用いたときの減菌率である。
【0045】
【表8】

【0046】
実験5により、本発明の組成物の形成する塗膜は大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、MRSAに対して抗菌性を示すことが判明した。
【0047】
実験6:本発明の組成物をステンレス板(寸法:70×150×1.2 mm)に塗布し、室内で24時間放置して乾燥させた後、ガスバーナーの炎(温度:約800℃)に塗膜を60秒間曝し、発煙の有無、塗膜剥離の有無及び外観変化(燃焼痕跡の有無)について調べた結果を表9に示す。
【0048】
【表9】

【0049】
実験6により、本発明の組成物の形成膜は不燃性であることが判明した。
【0050】
実験7:本発明の組成物が形成する塗膜の硬度を測定した結果を表10に示す。なお、測定には硬度の異なる鉛筆を用い、塗膜の表面に鉛筆の芯をあてて引き掻き、塗膜に損傷痕を残さない範囲の鉛筆硬度の最大値を表示した。
【0051】
【表10】

【0052】
実験7により、本発明の組成物は硬質な塗膜を形成することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の組成物は、例えば、室内のコンクリート、石材、木材等にコーティングを施し、悪臭の除去、タバコのヤニの分解、シックハウス症候群の原因となる揮発性有機物の分解及び、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌、衛生維持、等に供することができ、また、金属にコーティングを施し、不燃性化粧膜を形成させ、上記作用をさせることができる。このように、本発明の組成物は従来では使用できなかった用途に広範囲に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式MO・nSiO(但し、Mはアルカリ金属のNa, K, 及びLiであり、nは自然数)で表されるアルカリケイ酸塩に、(b)放射性物質を組み合わせて成り、(a)のアルカリケイ酸塩が形成する膜を耐水性にさせることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記(a)のアルカリケイ酸塩をSiO換算で、1〜25重量部、(b)の放射性物質を0.1〜30重量部、にさらに加えて、(c)無機充填材を0〜70重量部、(d)水を3〜90重量部[但し、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%]を含むことを特徴とする請求項1記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
前記(b)の放射性物質は、放射能を有する鉱石又はセラミックの群から選ばれた少なくとも一種であって、平均粒子径又は平均長さが100μm以下の非水溶性物質であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
前記(c)の無機充填材は、平均粒子径又は平均長さが0.1〜100μmで、かつ、非水溶性である、無機の体質顔料、機能性顔料及び金属の群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコーティング用組成物によって形成された、耐水性、耐酸性及び不燃性を有する塗膜。