説明

コーティング用組成物

【課題】 プラスチック成形品表面に塗布し、硬化させることで密着性、耐擦傷性、耐熱水性および可撓性などにすぐれた保護皮膜を形成することができるコーティング用組成物を提供する。
【解決手段】 (A)一般式RSi(ORで表される少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン65〜90重量%と、(B)一般式Si(ORで表される少なくとも1種のテトラアルコキシシラン1〜10重量%と、(C)γ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン1〜10重量%と、(D)一般式(RO)3−XSi−R−SiR(OR3−Yで表される少なくとも1種のオルガノアルコキシジシラン3〜20重量%と、の混合物の加水分解・縮合生成物からなるコーティング用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラスチック成形品等の表面に塗布し、硬化させることにより、該成形品表面に耐擦傷性、耐汚染性さらに耐薬品性にすぐれた保護皮膜を形成することができるコーティング用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、ガラスに比べて軽量で、加工性などがよいという利点を有することから、近年その使用用途が拡大しつつある。しかしながら、プラスチックの表面は非常に傷がつきやすく、擦過が繰り返されることによって外観が損なわれるため、該表面にハードコート層を設けるなどして耐擦傷性の向上を図っている。
【0003】
プラスチック成形品、殊にポリアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂製成形品の表面の耐擦傷性を向上させる方法としては、シロキサン系化合物の加水分解物を成形品の表面に塗布して硬化皮膜を形成させる方法が提案され、サングラスレンズ、度付きレンズ、光学レンズ、自動車メーターカバーなどにおいて実用に供されている(特許文献1および2)。
【特許文献1】特開昭56−22365号公報
【特許文献2】特開昭61−166824号公報
【0004】
また、組み立て加工の工程を経る場合などは、耐擦傷性とともに可撓性が必要とされ、シロキサン系化合物の加水分解物として、二官能性シラン化合物、三官能性シラン化合物および四官能性シラン化合物を併用し、各成分の量比を調整したり、硬質の高分子化合物を添加することが一般的に行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年プラスチック成形品、なかでもディスプレーなどは、その大型化に伴い、組み立て加工時や使用時の変形が大きくなり、従来よりも可撓性にすぐれる品質が要求されてきており、従来の二官能性シラン化合物、三官能性シラン化合物および四官能性シラン化合物で形成される硬化皮膜では、これらの要求に応えるのは困難であった。
【0006】
つまり、上記したこれら公知のコーティング組成物は可撓性に乏しいため、ポリカーボネート樹脂のような柔軟な樹脂にコーティングした場合、加工時または使用時に皮膜にクラックが生じやすい欠点があり、また、これらを解決するために高分子化合物等、異種の化合物を添加したものは、シラン化合物のみで形成される硬化皮膜に比べて硬度が劣るため可撓性は改善されるものの、耐擦傷が不十分となり、また長期保存された場合、液安定性に劣るなどの問題があった。
【0007】
本発明者らは上記に鑑みて、特にポリカーボネート樹脂よりなる成形品に対して良好な密着性を具備し、可撓性にすぐれ、かつ該成形品の表面に高硬度とすぐれた耐摩耗性、耐薬品性、透明性を有する保護皮膜を容易に形成することができるコーティング用組成物を得るべく鋭意検討を重ねた結果、二官能性シラン化合物、三官能性シラン化合物および四官能性シラン化合物に加え、非反応性の炭化水素基を介してなる4〜6官能性の多官能性シラン化合物を併用するならば、耐擦傷性を損なうことなく可撓性にすぐれた皮膜を得ることができ、かつ長期の液安定性にすぐれるコーティング用組成物が得られることを見出し、この発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、(A)一般式RSi(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン65〜90重量%と、(B)一般式Si(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のテトラアルコキシシラン1〜10重量%と、(C)γ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン1〜10重量%と、(D)一般式(RO)3−XSi−R−SiR(OR3−Y(但し、Rは炭素数1〜12の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、X、Yは0または1である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシジシラン3〜20重量%と、の混合物の加水分解・縮合生成物とからなるコーティング用組成物を特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、(A)一般式RSi(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン65〜90重量%と、(B)一般式Si(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のテトラアルコキシシラン1〜10重量%と、(C)γ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン1〜10重量%と、(D)一般式(RO)3−XSi−R−SiR(OR3−Y(但し、Rは炭素数1〜12の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基、R、R炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、X、Yは0または1である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシジシラン3〜20重量%と、からなる混合物の加水分解・縮合生成物に対して、(E)炭素数1〜8の脂肪族アルコールに分散されたコロイド状シリカを固形分対比で2〜25重量%用いてなるコーティング用組成物を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、(A)、(B)、(C)、(D)の特定したシラン化合物よりなる混合物の加水分解・縮合生成物に、硬化触媒、溶剤を加えてコーティング用組成物とすることにより、該組成物よりなる塗膜は、耐擦傷性、耐汚染性、耐薬品性、可撓性および耐溶剤性などにすぐれているので、特にポリカーボネート樹脂よりなる成形品あるいは成形プレートの表面保護用として有用である。
【0011】
また請求項2に記載した発明によれば、(A)、(B)、(C)、(D)の特定したシラン化合物よりなる混合物の加水分解・縮合生成物に、硬化触媒、溶剤を加えてなる請求項1に記載した組成物に対して、さらに炭素数1〜8の脂肪族アルコールに分散されたコロイド状シリカ(E)を、固形分対比で2〜25重量%加えた組成物としたことによって、上記請求項1の組成物よりなる皮膜の性能に加えて、可撓性がさらに向上し、かつ耐久性などの性能をも具備した皮膜を得ることができるのである。
【0012】
これらのことから、この発明のコーティング用組成物は、サングラス、視力矯正用眼鏡、保護眼鏡、レジャー用水中眼鏡、自動車部品、電機部品、建材品など大型な部材を含めて広範囲な用途に利用することができる。また、このほかナイロン、ポリエチレンテレフタレートなど各種のプラスチック、木材、金属、セラミック、紙、不織布などの材料表面にも適用することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明について詳細に説明する。この発明において、一般式RSi(ORで表される(A)成分中のRおよびRで表される炭素数1〜4の飽和炭化水素基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基を包含し、またRで表される炭素数1〜4の不飽和炭化水素基としては、ビニル、アリルなどのアルケニル基を包含する。
【0014】
そして、一般式RSi(ORで表される(A)成分としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン等が用いられる。
【0015】
一般式Si(ORで表される(B)成分としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
【0016】
また、(C)成分のγ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシランとしては、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
一般式(RO)3−XSi−R−SiR(OR3−Yで示される(D)成分中のRで表される炭素数1〜12の飽和炭化水素基としては、具体的にはエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレンなどのアルキレン基またはポリメチレン基があり、R、R、RおよびRで表される炭素数1〜4の飽和炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル基が挙げられる。また、RおよびRで表される炭素数1〜4の不飽和炭化水素基としては、ビニル、アリルなどのアルケニル基を包含する。
【0018】
そして、上記一般式で示される(D)成分としては、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,12−ビス(トリメトキシシリル)ドデカン、1,12−ビス(トリエトキシシリル)ドデカン等が挙げられる。
【0019】
この発明は、上記一般式中の(A)成分を65〜90重量%、(B)成分を1〜10重量%、(C)成分を1〜10重量%、さらに(D)成分を3〜20重量%という特定比率で混合して、加水分解・縮合を行うものであるが、その特性を損なわない範囲で、上記した以外のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの三官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどの二官能性シラン化合物を併用することもできる。
【0020】
この発明のコーティング用組成物を得るに用いる上記した各成分の混合比率ついて説明すると、(B)成分を1〜10重量%(好ましくは2〜8重量%)とするのは、1重量%より少ないと、得られた組成物をポリカーボネート樹脂成形品に被覆したときに、硬さ、耐擦傷性等が不十分となり、また10重量%より多く用いると、可撓性が低下し、加工時および使用時に基材が変形した場合にクラックが生じやすくなるためである。
【0021】
(C)成分を1〜10重量%(好ましくは2〜8重量%)とするのは、1重量%より少ないと、得られた組成物をポリカーボネート樹脂成形品に被覆したときに、密着性および可撓性が低下し、また10重量%より多く用いると、硬さ、耐擦傷性等が低下するためである。
【0022】
(D)成分を3〜20重量%(好ましくは4〜15重量%)とするのは、3重量%より少ないと、得られた組成物をポリカーボネート樹脂成形品に被覆したときに、硬さ、耐擦傷性等が不十分であり、また20重量%より多く用いると、可撓性が低下し、加工時および使用時に基材が変形したときにクラックが生じやすくなるためである。
【0023】
この発明では、上記(A)、(B)、(C)、(D)の特定したシラン化合物よりなる混合物の加水分解・縮合生成物に、硬化触媒、溶剤を加えてなる組成物に対して、さらに(E)成分として、炭素数1〜8の脂肪族アルコールに分散されたコロイド状シリカを加えて組成物とすることにより、該組成物からなる塗膜は、上記した性能にさらに柔軟性、耐久性などを付与することができる。この炭素数1〜8の脂肪族アルコールに分散されたコロイド状シリカ(E)は、上記(A)、(B)、(C)、(D)の特定したシラン化合物よりなる混合物の加水分解・縮合生成物に対して固形分対比で2〜25重量%用いることが好ましい。この量が2重量%より少ないと、それによる柔軟性、耐久性などの付与効果が小さく、また25重量%より多く加えると、硬さを低下させる恐れがあるためである。
【0024】
この発明では、得られた組成物による塗膜の可染性などの性能を向上させるために、必要に応じて有機高分子化合物を配合することができる。そのような有機高分子化合物としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂などがあり、なかでもアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、メラミン樹脂が好ましく、その量は耐擦傷性等の点から上記(A)、(B)、(C)、(D)の特定したシラン化合物よりなる混合物の加水分解・縮合生成物に対して固形分対比で0.1〜5重量%が適当である。
【0025】
次に、この発明のコーティング用組成物においては、その硬化速度を上げ、また成形品との密着性をより一層向上させる目的で硬化触媒を使用することができるが、そのような硬化触媒としては、特にシラノール基の脱水縮合に有効なものがよく、例えば、三フッ化ホウ素およびその電子供与体との錯体、ZnCl、AlClなど各種のルイス酸およびその錯体、酢酸ナトリウム、ナフテン酸コバルトなどの有機酸金属塩、ホウフッ化金属塩類、ホウ酸有機エステル類、有機チタネートエステル類、クロムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネートなどの金属アセチルアセトネート類、n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミンなどのアミン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5のような二環式アミジンまたはその塩、などが挙げられるが、なかでも二環式アミジンまたはその塩が特に好ましく、通常上記(A)、(B)、(C)、(D)の特定したシラン化合物よりなる混合物の固形分に対して0.01〜5重量%用いればよい。
【0026】
この発明のコーティング組成物は、有機溶剤溶液の形態でプラスチック成形品表面に塗布される。溶剤としては、従来からこの種組成物に用いられている水、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、酢酸、ジオキサン、トルエン、キシレン等の1種単独もしくは2種以上の混合溶剤として用いればよい。なかでもメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類およびこれらの混合物を主体とする溶剤が好適である。
【0027】
この発明のコーティング用組成物またはその溶剤溶液には、さらに必要に応じて公知の各種の添加剤、例えばゲル化防止剤、塗膜平滑性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤などを任意に添加することができる。
【0028】
代表的なゲル化防止剤としては、蟻酸、酢酸等の有機カルボン酸類を、塗膜平滑性向上剤としては、低級アルキレンオキサイドと低級ジアルキルシロキサンとの共重合体等のシリコーン系界面活性剤、着色剤としては、各種の染料や顔料が挙げられる。また、増粘、密着性向上、光沢調整、硬度の向上および耐久性向上などを目的として各種の有機ポリマー微粉末、無機フィラーなどを添加することもできる。
【0029】
この発明のコーティング用組成物をプラスチック成形品に塗布する方法としては、常法に従い、浸漬法、吹き付け法、ロールコート法などの各種方法により行えばよく、また塗布後の塗膜の硬化も、常法に従い、基材が熱変形を受けない温度、通常70〜130℃程度の温度で加熱することにより容易に行うことができる。
【0030】
プラスチック成形品表面にこの発明のコーティング用組成物を塗布する際の塗布量、即ち塗膜厚さは、被塗布材料の使用目的に応じて適宜に選択でき、自動車、電機部品、光学機器、建材などの通常の使用目的には、約1〜10μm程度とすればよく、これにより耐摩耗性等の所期の性能を発現する保護皮膜を形成することができる。
【0031】
以下、実施例によりこの発明を詳細に説明するが、この発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
【0032】
実施例1
0.02N塩酸125部とイソプロピルアルコール245部、ブチルセロソルブ30部を混合し、これにメチルトリエトキシシラン300部、テトラエトキシシラン10部、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン35部および1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン75部からなる混合物を20〜25℃の温度で攪拌しながら徐々に滴下し、さらに50℃で3時間攪拌した。かくして得た混合液にシリコーン系界面活性剤(ビックケミージャパン社製、BYK−306)0.3部、酢酸20部および1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7を0.8部、室温で混合して、固形分23%、粘度8mPa・s/20℃のコーティング用組成物を得た。
【0033】
次いで、190mm×60mmで厚さ2mmのポリカーボネート押出し成形シート(筒中プラスチック工業社製、ポリカエース)に、上記で得たコーティング用組成物を20℃、65%RHの室内で、引き上げ速度20cm/minで浸漬法によって塗布し、その後120℃で120分熱風乾燥機で加熱硬化させて上記成形シート上に2μmの塗膜を形成した。
【0034】
かくして得た、この発明のコーティング用組成物よりなる塗膜を形成したシートについて、外観、密着性、耐擦傷性などの性能テストを行った。その結果は表1に示した。
【0035】
なお、性能テストの試験方法は次の通りである。
・ 外観:塗膜の透明性を目視で評価した。
・ 密着性:粘着テープ(ニチバン社製、セロテープ(登録商標))を塗膜面に強く貼り付け、90度の方向に急速に剥離して、塗膜の異常の有無を調べ、
○:異常なし、×:異常あり、で判定した。
(3)耐擦傷性:スチールウール(日本スチールウール社製、#0000)で塗膜面を摩擦し、傷のつき具合から、A:強く摩擦しても傷が全くつかない、B:強く摩擦すると、僅かに傷がつく、C:弱い摩擦でも傷がつく、の3段階で判定した。
・ 可撓性:塗膜面を外側にして試料を直径40mmおよび60mmの鋼鉄製円筒面に強く押し付けた後、塗膜のクラック発生の有無を調べ、
◎:40mmでクラック発生がない、○:60mmでクラック発生がない、
×:60mmでクラック発生がみられる、の3段階評価を行った。
・ 耐熱水性:80℃の熱水に60分塗膜を浸漬した後取り出し、外観と密着性を調べた。
・ 液安定性:30℃で3ケ月間保存した後のゲル化、液分離の有無を評価し、
○:変化なし、△:僅かに上澄みまたは沈殿がみられる、×:ゲル化し、明らかに上澄みまたは沈殿がみられる、の3段階評価を行った。
【0036】
実施例2〜4
上記実施例1と同様の方法で表1に示した実施例2〜4の配合で、それぞれコーティング用組成物を調製した。そして、実施例1と同じようにしてポリカーボネート成形プレートに塗布し、加熱硬化して塗膜を形成した後、上記の性能テストを実施例1におけると同様にして行った。その結果は表1に示した。
【0037】
実施例5
(E)成分として、固形分濃度30%のイソプロパノール分散コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名IPA−ST)を加えたほかは、表1に示す配合で、かつ実施例1と同様の方法で、コーティング用組成物を調製した。そして、実施例1と同じようにしてポリカーボネート成形プレートに塗布し、加熱硬化して塗膜を形成した後、上記の性能テストを実施例1におけると同様にして行った。その結果は表1に示した。
比較例1〜3
【0038】
表1に示す比較例1〜3の配合で、実施例1と同様の方法でそれぞれコーティング用組成物を調製した。そして、実施例1と同じようにしてポリカーボネート成形プレートに塗布し、加熱硬化して塗膜を形成した後、上記の性能テストを実施例1におけると同様にして行った。その結果は表1に示した。
比較例4
【0039】
(E)成分として、固形分濃度30%のイソプロパノール分散コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名IPA−ST)を加え、得られた混合液に、ポリアクリル酸エステル共重合樹脂(セイコー化成社製、ラックスキンA−40、固形分30%)を添加した以外は表1の比較例4の配合で、実施例1と同様の方法でコーティング用組成物を調製した。そして、実施例1と同じようにしてポリカーボネート成形プレートに塗布し、加熱硬化して塗膜を形成した後、上記の性能テストを実施例1におけると同様にして行った。その結果は表1に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
以上のテスト結果から、表1に見られるように、この発明のコーティング用組成物で必須とする(A)〜(E)の成分のうちの何れかを欠く比較例の塗膜あるいはこれらの成分を、この発明で規定する範囲外の量比で用いた比較例の塗膜に比べ、この発明のコーティング用組成物を用いた塗膜は全ての性能においてすぐれていることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式RSi(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン65〜90重量%と、
(B)一般式Si(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のテトラアルコキシシラン1〜10重量%と、
(C)γ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン1〜10重量%と、
(D)一般式(RO)3−XSi−R−SiR(OR3−Y(但し、Rは炭素数1〜12の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、X、Yは0または1である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシジシラン3〜20重量%と、の混合物の加水分解・縮合生成物とからなることを特徴とするコーティング用組成物。
【請求項2】
(A)一般式RSi(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン65〜90重量%と、
(B)一般式Si(OR(但し、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基である)で表される少なくとも1種のテトラアルコキシシラン1〜10重量%と、
(C)γ−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン1〜10重量%と、
(D)一般式(RO)3−XSi−R−SiR(OR3−Y(但し、Rは炭素数1〜12の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和炭化水素基、R、Rは炭素数1〜4の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、X、Yは0または1である)で表される少なくとも1種のオルガノアルコキシジシラン3〜20重量%と、
からなる混合物の加水分解・縮合生成物に対して、
(E)炭素数1〜8の脂肪族アルコールに分散されたコロイド状シリカを固形分対比で2〜25重量%用いることを特徴とするコーティング用組成物。



【公開番号】特開2006−193537(P2006−193537A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3324(P2005−3324)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000107952)セイコー化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】