説明

コーティング装置

【課題】 表面が平滑な球状のコーティング層を塊状食品に形成することができると共に、コーティングの作業効率を向上することができるコーティング装置を提供する。
【解決手段】 塊状食品50を載置する搬送面12を有する搬送板10と、搬送板10を振動させる振動装置と、搬送板10の上方に配置され、塊状食品50に液状コーティング剤41を噴射する噴射装置40とを備え、前記振動装置によって搬送板10を振動させることにより、塊状食品50を搬送面10に沿って移送しながら、噴射装置40によって液状コーティング剤41を噴射することにより、皮膜を塊状食品50の表面に形成することが可能なコーティング装置であって、搬送面12には、溝部13が形成され、溝部13の底面には、搬送板を貫通する貫通孔15が設けられているコーティング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一口サイズのアイスクリームのような冷菓やチョコレートボールのような菓子などの塊状食品の表面を、例えば、グレーズ剤、糖液、果汁、油脂などの液状コーティング剤によりコーティングすることが知られている(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
塊状食品の表面に液状コーティング剤をコーティングするには、例えば、以下のようにして行われている。すなわち、塊状食品を収容した容器を左右に振動させて塊状食品を回転旋回させると共に、当該容器の上方に設けられた噴射装置から液状コーティング剤を噴霧することにより行われている。
【特許文献1】特公昭58−49145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法により液状コーティング剤を塊状食品にコーティングする場合、以下に示すような問題があった。すなわち、塊状食品を収容した容器を左右に振動させても、塊状食品が容器底面上を横滑りしてしまい、上手く回転させることが困難であり、液状コーティング剤が偏って塊状食品に付着し、表面が平滑な球状のコーティング層を形成することが困難であるという問題があった。
【0005】
また、噴射装置から噴射された液状コーティング剤が容器の底面に溜まった場合に、当該底面に溜まった液状コーティング剤を除去するためには、コーティング作業を中止して、ヘラなどの器具により液状コーティング剤をかき集めなければならず、作業効率が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、表面が平滑な球状のコーティング層を塊状食品に形成することができると共に、コーティングの作業効率を向上することができるコーティング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、塊状食品を載置する搬送面を有する搬送板と、前記搬送板を振動させる振動装置と、前記搬送板の上方に配置され、塊状食品に液状コーティング剤を噴射する噴射装置とを備え、前記振動装置によって前記搬送板を振動させることにより、塊状食品を前記搬送面に沿って移送しながら、前記噴射装置によって液状コーティング剤を噴射することにより、皮膜を塊状食品の表面に形成することが可能なコーティング装置であって、前記搬送面には、溝部が形成され、該溝部の底面には、前記搬送板を貫通する貫通孔が設けられているコーティング装置により達成される。
【0008】
このコーティング装置において、前記溝部は、前記搬送板において、塊状食品の移送方向に対して垂直な方向に延びるように複数形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記溝部は、前記貫通孔に向けて案内する傾斜部を有していることが好ましい。
【0010】
また、前記搬送面は、塊状食品の移送方向に向けて下り勾配の傾斜面とされていることが好ましい。
【0011】
また、前記溝部の幅は、2mmから100mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面が平滑な球状のコーティング層を塊状食品に形成することができると共に、コーティングの作業効率を向上することができるコーティング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のコーティング装置について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコーティング装置1を示す概略構成図である。図2は、本発明の一実施形態に係るコーティング装置1を構成する搬送板10の平面図であり、図3はそのA−A断面図である。また、図4は図2の要部拡大平面図であり、図5はそのB−B断面図、図6は図4のC−C断面図である。
【0014】
コーティング装置1は、図1に示すように、塊状食品50を載置する搬送面12を有する搬送板10と、搬送板10を振動させるための図示しない振動装置と、搬送板10の上方に配置され、塊状食品50に液状コーティング剤41を噴射する噴射装置40とを備えている。このコーティング装置1は、振動装置によって搬送板10を矢示T方向に振動させて、搬送板10上の塊状食品50を転がしながら、搬送面12に沿って図1の左から右方向(移送方向S)に移送し、噴射装置40によって液状コーティング剤41を噴射することにより、塊状食品50の表面に液状コーティング剤41の皮膜をコーティングすることが可能である。
【0015】
搬送板10は、図2および図3に示すように、平面視矩形状の搬送板本体11と、側壁30,31,32とを備えている。
【0016】
搬送板本体11の上面は、搬送板10上の塊状食品50を移送方向Sに移送する搬送面12であり、移送方向Sに向けて下り勾配の傾斜面となるように形成されている。搬送面12には、図4および図5に示すように、複数の溝部13が形成されている。これら溝部13は、搬送板10上において。塊状食品50の移送方向Sに対して垂直方向に延びるように形成されている。各溝部13は、縦断面視において凵形状となるように形成されており、その深さdは、後述する溝部13の幅w1の略半分の寸法となるように形成することが好ましい。また、図6に示すように、各溝部13の底面14は水平となるように形成されている。各溝部13の底面14には、搬送板10の上面側から下面側に貫通する複数の貫通孔15が所定間隔を空けて形成されている。
【0017】
側壁30,31,32は、図1および図2に示すように、搬送板10上の塊状食品50が落下しないようにするための部材であり、それぞれ塊状食品50の移送方向Sに対して上流側に位置する搬送板本体11の側縁35および塊状食品50の移送方向Sに平行な搬送板本体11の両側縁36,37に設けられている。
【0018】
図示しない振動装置は、搬送板10に接続しており、当該搬送板10を矢示T方向(塊状食品50の移送方向Sに沿う方向)に直線振動させるように構成されている。この振動装置としては、例えば、クランク機構を用いた往復運動装置を例示することができる。また、この振動装置の型式は特に限定されないが、振動の振幅や振動サイクルなどを可変制御可能に構成することが好ましい。
【0019】
噴射装置40は、長手方向に複数の孔43が形成されたパイプ42と、液状コーティング剤41を収容する図示しないタンクと、タンクに収容されている液状コーティング剤41をパイプ42に供給するための図示しないポンプとを備えている。パイプ42は、搬送板10の搬送面12に設けられた溝部13と略平行となるように、搬送板10の上方所定位置に配置されており、パイプ42に形成された孔43を介して液状コーティング剤41を搬送板10上の塊状食品50に向けて噴射できるように構成されている。なお、噴射装置40は、搬送板10上の塊状食品50に向けて液状コーティング剤41を噴射できる構成であれば、その型式は特に限定されないが、液状コーティング剤41の流量などを可変制御可能に構成することが好ましい。
【0020】
このように構成されたコーティング装置1を用いて、例えば、液状コーティング剤41としてグレーズ剤を使用して、一口サイズのアイスクリームやシャーベットのような塊状食品50の表面に当該グレーズ剤のコーティングを施し、球状菓子(球状冷菓)を形成する方法について図1を用いて、以下に説明する。なお、グレーズ剤とは、球状冷菓の風味の変化を防ぐと共に、球状冷菓にヒートショック耐性を付与するための増粘多糖類の水溶液である。また、冷菓には、公正取引委員会の認定を受け業界の自主規約として定められている「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」にいう「アイスクリーム」、「アイスミルク」、「ラクトアイス」、「氷菓」を含む。
【0021】
まず、図示しない振動装置を作動させて、搬送板10を矢示T方向(塊状食品50の移送方向Sに沿う方向)に振動させる。振動装置の振動条件は、例えば、振幅を4cm〜10cm、振幅回数を60回/分〜200回/分に設定することが好ましい。
【0022】
次に、−20℃〜−100℃程度に冷却した塊状食品50を搬送板10上に供給する。搬送板10に供給された塊状食品50は、振動装置によって連続的に振動が与えられている搬送板10の搬送面12を振動方向(矢示T方向)に転がりながら、搬送板10の下流側(図1の右側)に移送される。その状態で液状コーティング剤41を噴射装置40から噴射することにより、塊状食品50の表面に液状コーティング剤41をコーティングする。塊状食品50の表面に付着した液状コーティング剤41は、塊状食品50の冷熱により凍結し当該塊状食品50の表面に密着する。
【0023】
搬送面12には溝部13が形成されているため、振動装置の矢示T方向の振動によって、当該溝部13の角13aが塊状食品50に当接し、当該角13aを支点として塊状食品50を確実に回転させ搬送面12上を転がせることができる。その結果、塊状食品50の表面全体に液状コーティング剤41を付着させることができる。
【0024】
また、塊状食品50が搬送面12を転がることにより、塊状食品50に付着した液状コーティング剤41のコーティング層の表面は、搬送面12との接触によってならされ、その真球度が高められることになる。その結果、液状コーティング剤41が塗布される塊状食品50の形状に関係なく、コーティング層の表面が平滑な球状の球状菓子を形成することができる。なお、球状菓子は、完全な球体である必要はなく、楕円球体であってもよい。
【0025】
また、搬送板10の搬送面12は、図3に示すように移送方向Sに向けて下り勾配の傾斜面となるように形成されているので、搬送板10上の塊状食品50を搬送板10の振動により転がしながら搬送方向Sに向けて確実に移送することができる。その結果、塊状食品50が搬送面12で滞留するいわゆるブロッキングの発生を防止することができると共に、塊状食品50同士が液状コーティング剤41を介して結合することをかなり防止することができる。
【0026】
液状コーティング剤41のコーティングが形成され、搬送板10の下流端まで移送された球状菓子は、その後、包装工程などの工程へとコンベヤなどを介して搬送される。このように、塊状食品50を転がせてその表面に液状コーティング剤41のコーティング層を形成しながら搬送板の下流端に移送することができるため、コーティング処理が終了した塊状食品50を順次後工程に搬送することが可能となり、コーティングの作業効率を向上させることができる。
【0027】
一方、噴射装置40から噴射され、塊状食品50の表面に皮膜として付着しなかった液状コーティング剤41は、搬送面12に溜まることとなるが、搬送面12は、移送方向Sに向けて下り勾配となる傾斜面となるように形成されているため、搬送面12に溜まった液状コーティング剤41は、傾斜面(搬送面12)に沿って溝部13内に確実に流入する。
【0028】
また、搬送面12から溝部13内に流入してきた液状コーティング剤41、および、噴射装置40から溝部13内に直接流入してきた液状コーティング剤41は、溝部13の底面14に設けられた貫通孔15を介して搬送板10外に排出され、例えば、搬送板10の下方に容器などを配置することにより、余分な液状コーティング剤41を回収することができる。このように、液状コーティング剤41のコーティング作業を行いながら搬送面12に溜まった液状コーティング剤41を回収することが可能となるため、従来のようにコーティング作業を中止して、ヘラなどの器具により液状コーティング剤41をかき集めて回収する必要は無く、コーティングの作業効率を向上させることができる。
【0029】
ここで、貫通孔15は、各溝部13内に液状コーティング剤41が溜まる程度の数および径とすることが好ましい。このように構成することにより、各溝部13内に溜まった液状コーティング剤41が塊状食品50と接触することが可能となり、液状コーティング剤41の塊状食品50へのコーティングを効率的に行うことが可能となる。
【0030】
また、図1に示す溝部の幅w1は、例えば、一口サイズのアイスクリームやシャーベットの球状菓子を形成する場合には、2mmから30mmの範囲が好ましく、特に、2mmから20mmの範囲がより好ましい。本実施形態においては、溝部13の幅w1を6mmとしている。この数値範囲外でも使用することはできるが、溝部13の幅w1が小さすぎると、溝部13の底面14に設けられる貫通孔15が小さくなり、搬送面12に溜まった液状コーティング剤41を回収することが困難になるおそれがある。一方、溝部13の幅w1が大きすぎると、塊状食品50が溝部13の角13aに引っ掛かり、搬送面12に沿って転がることが困難となり、球状菓子の表面を平滑な球状に仕上げることが困難になるおそれがある。なお、りんご大の大きさの塊状食品50に液状コーティング剤41をコーティングするような場合には、溝部の幅w1は、例えば、2mmから100mmの範囲が好ましい。
【0031】
また、図3に示す搬送板10の搬送面12の傾斜角θは、水平面に対して1°から15°の範囲が好ましく、特に、1°から3°の範囲がより好ましい。本実施形態においては、傾斜角θを1.5°としている。この数値範囲外でも使用することはできるが、傾斜角θが小さすぎると、塊状食品50を下流側(図3の右側)に移送させることが困難になるおそれがある。一方、傾斜角θが大きすぎると、塊状食品50が勢いよく下流側に移動してしまい、球状菓子の表面を平滑な球状に仕上げることが困難になるおそれがある。
【0032】
また、上記において、液状コーティング剤41としてグレーズ剤を用いた場合におけるコーティング方法について説明したが、液状コーティング剤41として、グレーズ剤の他に、油脂、果汁、洋酒、液状チョコレート、乳化剤、着香料などを使用することもできる。また、塊状食品50として、チョコレートボールなどの菓子を採用することもできる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、図7の断面図(図4のC−C断面に相当)に示すように、各溝部13は、貫通孔15に向けて案内する傾斜部16を備えるように構成してもよい。図7においては、溝部13の底面14を一方の端部側17から他方の端部側18に傾斜させて傾斜部16を構成している。このような構成により、溝部13に溜まった液状コーティング剤41を傾斜部16に沿って各貫通孔15に案内することができ、液状コーティング剤41の回収を確実に行うことが可能となる。
【0034】
また、本実施形態においては、貫通孔15は、図4に示すように、平面視円形の孔であるが、例えば、平面視において矩形状であってもよく、また、長円状であってもよい。
【0035】
また、搬送板10の搬送面12に形成する各溝部13は、図5に示すように、縦断面視において凵形状であるが、この形状に特に限定されるものではなく、例えば、図8の断面図(図4のB−B断面に相当)に示すようにU形状となるように形成してもよい。
【0036】
また、本実施形態においては、溝部13は、搬送板10において、塊状食品50の移送方向Sに垂直な方向に延びるように複数形成されているが、例えば、平面視において、碁盤の目状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るコーティング装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコーティング装置を構成する搬送板の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】図4のC−C断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るコーティング装置を構成する搬送板の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るコーティング装置を構成する搬送板の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 コーティング装置
10 搬送板
11 搬送板本体
12 搬送面
13 溝部
15 貫通孔
40 噴射装置
50 塊状食品
S 塊状食品の移送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状食品を載置する搬送面を有する搬送板と、前記搬送板を振動させる振動装置と、前記搬送板の上方に配置され、塊状食品に液状コーティング剤を噴射する噴射装置とを備え、前記振動装置によって前記搬送板を振動させることにより、塊状食品を前記搬送面に沿って移送しながら、前記噴射装置によって液状コーティング剤を噴射することにより、皮膜を塊状食品の表面に形成することが可能なコーティング装置であって、
前記搬送面には、溝部が形成され、該溝部の底面には、前記搬送板を貫通する貫通孔が設けられているコーティング装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記搬送板において、塊状食品の移送方向に対して垂直な方向に延びるように複数形成されている請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記溝部は、前記貫通孔に向けて案内する傾斜部を有している請求項1または2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記搬送面は、塊状食品の移送方向に向けて下り勾配の傾斜面とされている請求項1から3のいずれかに記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記溝部の幅は、2mmから100mmである請求項1から4のいずれかに記載のコーティング装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のコーティング装置により、塊状食品に液状コーティング剤をコーティングして形成された球状菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−296290(P2006−296290A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122545(P2005−122545)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】